JPH08283934A - Itoスパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

Itoスパッタリングターゲット及びその製造方法

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JPH08283934A
JPH08283934A JP7087009A JP8700995A JPH08283934A JP H08283934 A JPH08283934 A JP H08283934A JP 7087009 A JP7087009 A JP 7087009A JP 8700995 A JP8700995 A JP 8700995A JP H08283934 A JPH08283934 A JP H08283934A
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JP
Japan
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ito
sputtering target
sintering
density
atmosphere
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JP7087009A
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English (en)
Inventor
Mutsuhisa Nagahama
睦久 永浜
Moriyoshi Kanamaru
守賀 金丸
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 特殊カプセル使用HIP 法(特開平5-155651号
公報)での如き複雑な処理を要さずに比較的簡単に製造
し得、低級酸化物である黒色のIn2Oを含まず、且つ相対
密度が特殊カプセル使用HIP 法の場合(88、93、96%)
と同等もしくはそれ以上であるITOスパッタリングタ
ーゲット及びその製造方法を提供する。 【構成】 酸化インジウム粉末及び酸化錫粉末を含む混
合粉末を予備焼結(例えば大気又は酸化雰囲気下で1400
〜1600℃で焼結)した後、分圧20%以下の酸素を含む雰
囲気下、1200℃を超える温度で熱間等方圧処理をし、I
TOスパッタリングターゲットを製造する方法、及び、
酸化錫を3〜15wt%含む酸化インジウム基混合粉末を焼
結してなるITOスパッタリングターゲットであって、
相対密度が99%以上であることを特徴とするもの。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ITOスパッタリング
ターゲット及びその製造方法に関し、詳細には、ITO
(:Indium Tin Oxide )よりなる透明(透光性)の導電
膜(以降、ITO透明導電膜という)を、スパッタリン
グ法によって形成する際に用いられるITO透明導電膜
形成用スパッタリングターゲット及びその製造方法に関
する。尚、ITOとはIndium Tin Oxideのこと(略称)
であり、この物質は酸化インジウムと酸化錫を出発原料
にしてなり、酸化インジウムに酸化錫をドープさせたも
のであって、組織的(結晶構造的)には酸化インジウム
中に錫が固溶した状態のものである。
【0002】
【従来の技術】ITO透明導電膜は、LCD(液晶)やEL
(エレクトロルミネッセンス)等の薄型ディスプレー用
表示デバイス駆動電極、太陽電池の透明電極、更には窓
ガラスへの熱線遮蔽コーティング、高速交通機関のウイ
ンドシールドの防曇・防氷、各種機材の帯電防止処理、
静電遮蔽コーティング等に用いられる。
【0003】かかるITO透明導電膜の製造方法には、
スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、スプレー熱
分解法等があるが、特に良質なITO透明導電膜が要求
される分野ではスパッタリング法が採用されている。
【0004】ITO透明導電膜の製造に際し、スパッタ
リング法が採用される場合、スパッタガスとしてはアル
ゴン−酸素混合ガスが用いられる。このとき、ガス中の
酸素濃度は、低抵抗であって且つ高透過率を有するIT
O透明導電膜が得られるような量に設定される。スパッ
タリングターゲットとしては、IT(:In-Sn合金)より
なるターゲット又はITOよりなるターゲット(ITO
ターゲット)が用いられるが、最近では酸化物焼結体よ
りなるITOターゲットが用いられる場合が多く、かか
るITOターゲットを用いる方法が主流となっている。
それは、かかるITOターゲットによる方が、膜性能及
び膜の均一性に優れたITO透明導電膜が得られ、しか
も成膜操作の簡便性に優れているからである。
【0005】ITOターゲットとして特に特性向上が望
まれる重要な特性の一つとして高密度化がある。即ち、
低密度なターゲットをスパッタリングに使用した場合、
放電電圧が上昇し、ターゲットの表面温度も上昇してく
る。そのため、ターゲット表面が還元されて低級酸化物
(酸素の結合比率の低い酸化物)となり、それにより黒
色化やノジュールの発生が起こってターゲットの使用効
率が低下したり、又、形成されるITO透明導電膜の抵
抗が高く、透過率が低くなり、膜特性が悪くなる。従っ
て、これらを防止することが望まれ、そのためにITO
ターゲットの高密度化が望まれており、現在では、相対
密度85%以上、更には相対密度90%以上の高密度ITO
ターゲットが望まれている。
【0006】かかる高密度ITOターゲットの製造方法
としてはホットプレス法や熱間等方圧処理法(熱間等方
圧加熱処理法)がある。この中、ホットプレス法は、成
形体を高圧不活性ガス下で焼結をする方法であり、相対
密度90%以上という高密度なITO焼結体(ターゲッ
ト)を得ることが可能であるものの、還元された低級酸
化物を含むものしか得られない。一方、熱間等方圧処理
法は、焼結体(予備焼結体)を高圧不活性雰囲気下で熱
間等方圧処理するため、本法においても還元された低級
酸化物を含むものしか得られない。これは、ITOを構
成しているIn2O3が非常に還元され易く、上記不活性ガ
ス下や不活性雰囲気下においては低級酸化物であるIn2O
(黒色)に還元されるためである。
【0007】このような低級酸化物であるIn2O(黒色)
を含む高密度ITOターゲットは黒色を呈しており、そ
のため、かかるターゲットをスパッタリングに使用する
と、形成されるITO透明導電膜の抵抗が高く、透過率
が低くなり、高透過率・低抵抗なITO透明導電膜を得
ることが難しいという問題点がある。尚、この対策とし
て、スパッタリングに際し、スパッタガスとして酸素濃
度の高いアルゴン−酸素混合ガスを用い、それによりI
TOターゲット自体の酸素量を補う方法があるが、本法
においては負に帯電した多量の酸素イオンが陽極にある
基板をスパッタしてしまうため、ダメージを受けたIT
O透明導電膜ができてしまうという欠点がある。
【0008】かかる問題点の解決をはかるべく検討され
たものとして、特開平5-155651号公報に記載された高密
度ITOターゲット(酸化物焼結体)の製造方法があ
る。本法は、酸化物となったときにITOよりも高い酸
素解離圧を示す金属等で内面を覆ったカプセルにITO
予備焼結体を封入し、熱間等方圧処理をする方法(以
降、特殊カプセル使用HIP 法という)であり、熱間等方
圧処理時のITO(In2O3)の還元を抑え、且つ高密度な
ITOターゲット(焼結体)を得ようとするものであ
る。このITOターゲットの密度については、実施例に
よれば相対密度88%、93%、96%であったと記載されて
いる。しかしながら、本法(特殊カプセル使用HIP 法)
は、上記の如く高い酸素解離圧を示す金属等で内面を覆
ったカプセルを使用して熱間等方圧処理をするという複
雑な処理、手段を必要とする点において難点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な事情
に着目してなされたものであって、その目的は従来のも
のがもつ以上のような問題点を解消し、前記特殊カプセ
ル使用HIP 法での如き複雑な処理、手段を要することな
く比較的簡単に製造し得、低級酸化物である黒色のIn2O
を含まず、且つ前記特殊カプセル使用HIP 法と同等もし
くはそれ以上の高密度を有するITOスパッタリングタ
ーゲット及びその製造方法を提供しようとするものであ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明に係るITOスパッタリングターゲット及
びその製造方法は、次のような構成としている。即ち、
請求項1記載のITOスパッタリングターゲットは、酸
化錫を3〜15wt%含む酸化インジウム基混合粉末を焼結
してなるITO焼結体よりなるITOスパッタリングタ
ーゲットであって、前記ITO焼結体の相対密度が99%
以上であることを特徴とするITOスパッタリングター
ゲットである。
【0011】請求項2記載のITOスパッタリングター
ゲットの製造方法は、酸化インジウム粉末及び酸化錫粉
末を含む混合粉末を予備焼結した後、分圧20%以下の酸
素を含む雰囲気下、1200℃を超える温度で熱間等方圧加
熱処理をし、ITOよりなるスパッタリングターゲット
を製造することを特徴とするITOスパッタリングター
ゲットの製造方法である。
【0012】請求項3記載のITOスパッタリングター
ゲットの製造方法は、前記予備焼結を予備焼結温度:14
00〜1600℃にして行う請求項2記載のITOスパッタリ
ングターゲットの製造方法である。請求項4記載のIT
Oスパッタリングターゲットの製造方法は、前記予備焼
結の雰囲気を大気又は酸化雰囲気にする請求項2又は3
記載のITOスパッタリングターゲットの製造方法であ
る。
【0013】
【作用】本発明に係るITOスパッタリングターゲット
の製造方法は、前記の如く、酸化インジウム粉末及び酸
化錫粉末を含む混合粉末を予備焼結した後、分圧20%以
下の酸素を含む雰囲気下、1200℃を超える温度で熱間等
方圧加熱処理をし、ITOよりなるスパッタリングター
ゲットを製造するようにしている(請求項2記載の製造
方法)。
【0014】このように、本発明に係るITOスパッタ
リングターゲットの製造方法は、予備焼結後に熱間等方
圧加熱処理をするという方法であり、該熱間等方圧加熱
処理に際して前記特殊カプセル使用HIP 法での如き特別
なカプセルを必要としないので、前記特殊カプセル使用
HIP 法での如き複雑な処理、手段を要することなく比較
的簡単にITOスパッタリングターゲットを製造し得
る。
【0015】又、熱間等方圧加熱処理に際し、その雰囲
気を分圧20%以下の酸素を含む雰囲気としているので、
ITOの主成分であるIn2O3 の還元が起こらず(もしく
は極めて起こり難く)、そのため低級酸化物である黒色
のIn2Oを含まないITOスパッタリングターゲットが得
られる。
【0016】更に、前記雰囲気に起因してSnO2の還元も
起こらず、かかるIn2O3 及びSnO2の還元が起こらないこ
とにより、得られるITOスパッタリングターゲットは
緻密であって密度の高いものとなる。又、1200℃を超え
る温度で熱間等方圧加熱処理をしているので、予備焼結
後のもの(予備焼結体)に残留しているポアを熱間等方
圧加熱処理時に潰すことができ、そのため密度が高めら
れる。そして、これらの密度の向上効果により、相対密
度が90%以上のもの、例えば後述の実施例に示される如
く相対密度93%、95%、96%、97%、98%、99%、99.8
%のものが得られる。
【0017】従って、本発明に係るITOスパッタリン
グターゲットの製造方法によれば、前記特殊カプセル使
用HIP 法での如き複雑な処理、手段を要することなく比
較的簡単に製造し得、低級酸化物である黒色のIn2Oを含
まず、且つ前記特殊カプセル使用HIP 法の場合(相対密
度88%、93%、96%)と同等もしくはそれ以上の高密度
を有するITOスパッタリングターゲットが得られるよ
うになる。
【0018】ここで、熱間等方圧加熱処理に際し、その
雰囲気を分圧20%以下の酸素を含む雰囲気としているの
は、次の理由による。即ち、熱間等方圧加熱処理の雰囲
気に酸素が含まれていないと、ITOの主成分であるIn
2O3 及びSnO2の還元が起こり、そのため、得られるIT
Oスパッタリングターゲットは低級酸化物である黒色の
In2Oを含むものとなる他、ITOスパッタリングターゲ
ットの緻密化が阻害されて密度が低下して不充分とな
り、引いてはITOスパッタリングターゲットとしての
性能が低下し、高透過率・低抵抗なITO透明導電膜を
得ることが難しく、又、ターゲットの使用効率が低下す
るようになり、かかる点から酸素を含む雰囲気とする必
要がある。しかし、分圧20%超の酸素を含む雰囲気にす
ると、燃焼及び/又は爆発が生じる危険性があり、その
防止は熱間等方圧加熱処理装置において不可能であり、
従って、分圧20%以下の酸素を含む雰囲気とする必要が
あるからである。
【0019】熱間等方圧加熱処理温度を1200℃を超える
温度としているのは、1200℃以下とすると、予備焼結後
のもの(予備焼結体)に残留しているポアを熱間等方圧
加熱処理時に潰すことができず、密度が高められず、そ
のため、得られるITOスパッタリングターゲットは密
度が低くて不充分となるからである。
【0020】前記予備焼結に際し、予備焼結温度:1400
〜1600℃にすると、得られるITOスパッタリングター
ゲットの密度をより確実に高くできる。予備焼結温度:
1400℃未満にすると、予備焼結後のもの(予備焼結体)
に残留するポアが連続してオープンポア状態となり、引
いては熱間等方圧加熱処理時にポアが潰され難くなるた
めに密度が高められ難くなり、一方、予備焼結温度:16
00℃超にすると、予備焼結体に残留するポアのサイズが
大きくなり、引いては熱間等方圧加熱処理時にポアが潰
され難くなるために密度が高められ難くなるという傾向
にある。かかる点から、予備焼結温度は1400〜1600℃に
することが望ましい(請求項3記載の製造方法)。更に
は、1400〜1500℃にすることが望ましく、そうするとI
TOスパッタリングターゲットの密度をより高くでき、
相対密度が97%以上のもの、例えば後述の実施例に示さ
れる如く理論密度に近い相対密度99.8%のものを得るこ
とができる。
【0021】前記予備焼結の雰囲気は大気又は酸化雰囲
気にすることが望ましい(請求項4記載の製造方法)。
そうすると、予備焼結の際、ITOの分解及び還元を確
実に防止することができるからである。即ち、予備焼結
の雰囲気を還元雰囲気にすると、ITOの成分であるSn
O2がSnO2→ SnO(気体)+1/2 O2という反応により分解
(気化)してSnO2量が変化(減少)し、そのため、SnO2
量を制御し難くて所定量のSnを含むものが得られなくな
り、又、ITOの成分であるIn2O3 の還元が起こり、そ
のため、黒色のIn2Oを含むものとなり、更には、これら
SnO2の分解及びIn2O3 の還元により密度が低いITOス
パッタリングターゲットとなる傾向にある。これに対
し、予備焼結の雰囲気を大気又は酸化雰囲気にすると、
上記の如きSnO2の分解及びIn2O3 の還元を確実に防止し
得、それらによる不都合の発生を確実に回避できるよう
になるからである。
【0022】以上の如き製造方法によれば、前記特殊カ
プセル使用HIP 法の場合(相対密度88%、93%、96%)
よりも高い密度を有するITOスパッタリングターゲッ
トを得ることが可能である。かかる高密度を有するIT
Oスパッタリングターゲットは、高密度に起因して非常
に優れた特性(性能)を有しており、その密度が高いほ
どITOスパッタリングターゲットとしての性能が高く
なる。特に、相対密度:99%以上という理論密度に近い
密度を有する超高密度のITOスパッタリングターゲッ
トであって、出発原料の混合粉末中での酸化錫量を3〜
15wt%としたものは、従来にみられない顕著に優れた性
能を有している。
【0023】かかる点から、本発明に係るITOスパッ
タリングターゲット(請求項1記載のITOスパッタリ
ングターゲット)は、酸化錫を3〜15wt%含む酸化イン
ジウム基混合粉末を焼結してなるITO焼結体よりなる
ITOスパッタリングターゲットであって、前記ITO
焼結体の相対密度が99%以上であることを特徴とするも
のとしており、次の如き作用効果を奏し、顕著に優れた
性能を発揮することができる。
【0024】ITO焼結体即ちITOスパッタリングタ
ーゲットの相対密度が99%以上であることにより、以下
3点の特性が向上する。 ITOスパッタリングターゲット自体の熱伝導率が
高くなる。そのため、スパッタリング時における冷却水
のターゲット冷却能力が高まり、ターゲットを温度上昇
による還元から防ぐことができる。よって、ITOスパ
ッタリングターゲットの黒色化(低級酸化物化)を抑え
ることができ、ターゲット寿命を伸ばすことができる。 ITOスパッタリングターゲット自体のバルク抵抗
も低下させることができるので、成膜時の放電電圧を下
げることができ、そのためスパッタガスによるITO透
明導電膜の損傷を抑えることができる。 ITOスパッタリングターゲット表面が滑らかにな
り、異常放電を防ぐことができる。即ち、ターゲット表
面の凹凸が大きい場合、ターゲットに電圧を印加した時
に凸部分に電界集中が起こり、アーク放電が起こり易く
なってアーキングの発生原因となる。これに対し、ター
ゲット自体の密度が高い場合、ミクロ的にもかなり表面
が滑らかになり、そのため電界集中を起こすような凸部
分がなくなり、従って、アーキングが発生し難く、安定
な成膜を行うことができる。
【0025】出発原料の酸化インジウム基混合粉末での
酸化錫量が3〜15wt%であるので、それを焼結してなる
ITO焼結体即ちITOスパッタリングターゲットはSn
量:3〜15wt%である。かかるITOスパッタリングタ
ーゲットによりスパッタリングを行うと、得られるIT
O透明導電膜はSnが3〜15wt%固溶したものとなり、そ
のため比抵抗が小さくて優れたITO透明導電膜が得ら
れる。ここで、上記酸化錫量が3wt%未満の場合、及
び、15wt%超の場合、ITO透明導電膜の比抵抗が高く
なって不充分となるので、酸化錫量:3〜15wt%として
いる。この酸化錫量について特に好ましい範囲は4〜10
wt%であり、そうすると比抵抗をより低くできる。
【0026】上記本発明に係るITOスパッタリングタ
ーゲットにおける酸化インジウム基混合粉末の焼結の方
法は、特には限定されず、ITO焼結体即ちITOスパ
ッタリングターゲットの相対密度を99%以上とし得る焼
結方法であればよく、かかる焼結方法としては、例えば
前記本発明に係るITOスパッタリングターゲットの製
造方法での如き予備焼結及び熱間等方圧加熱処理を経る
焼結方法がある。尚、この熱間等方圧加熱処理は、被処
理物をカプセルに封入した後、加熱して熱間状態とし、
その状態で静水圧等により等方加圧するという処理であ
り、これは焼結方法の一種であり、上記予備焼結に対し
ては本焼結にあたる。
【0027】尚、ITO焼結体の相対密度とは、出発原
料の混合粉末の密度に対するITO焼結体の密度の比率
(%)のことであり、(ITO焼結体の密度/出発原料
の混合粉末の密度)×100 =ITO焼結体の相対密度
(%)という式より求められる値である。ここで、混合
粉末の密度は、粉末自体の密度であり、各粉末の混合割
合により相違する。この混合粉末が酸化インジウム粉末
のみであることは、本発明においては有り得ないが、も
し混合粉末が酸化インジウム粉末のみであるとすれば、
酸化インジウム粉末自体の密度が混合粉末の密度とな
る。
【0028】
【実施例】
(実施例1)酸化錫粉末を10wt%含む酸化インジウム基
混合粉末(In2O3-10wt%SnO2)に対してバインダー:2
wt%を添加配合し、振動ミルで2時間混合し、得られた
スラリーを造粒した後、4トン/cm2 の圧力で冷間静水
圧成形した。このようにして得られた成形体について、
400 ℃で2時間加熱して脱脂処理した後、大気雰囲気中
で1400〜1600℃に5時間加熱して予備焼結した。しかる
後、この予備焼結体について、アルゴンと酸素との混合
ガス(酸素分圧20%)の雰囲気下で、温度:1000〜1400
℃、圧力:1トン/cm2 で1時間加熱加圧する熱間等方
圧加熱処理をして、ITO焼結体(即ちITOスパッタ
リングターゲット)を得た。これらITO焼結体はいづ
れも低級酸化物である黒色のIn2Oを含まないものである
ことが確認された。
【0029】次に、上記ITO焼結体について相対密度
の測定を行った。即ち、ITO焼結体の密度をアルキメ
デス法により測定し、この密度の測定値:ρ1(g/cm2)
と、出発原料である上記混合粉末(In2O3-10wt%SnO2
の密度:ρ0(7.155g/cm2) とから下記式を用いてITO
焼結体の相対密度を求めた。 (ρ1 /ρ0 )× 100=ITO焼結体の相対密度(%)
【0030】上記ITO焼結体の相対密度の測定結果を
図1に示す。図1からわかる如く、予備焼結温度:1450
℃、1500℃、1550℃のいづれの場合も、熱間等方圧加熱
処理の際の加熱温度(T1)が1000℃或いは1200℃のもの
では予備焼結体の密度と殆ど変わらなかったが、T1:14
00℃のものでは予備焼結体よりも密度が高く、熱間等方
圧加熱処理によって緻密化しており、それらITO焼結
体の相対密度は93%、98%、99.8%であり、前記特殊カ
プセル使用HIP 法の場合(相対密度88%、93%、96%)
と同等もしくはそれ以上の高密度を有している。
【0031】これらT1:1400℃のものの中、予備焼結温
度:1450℃であつたものが特に相対密度が高くて99.8%
であり、理論密度に極めて近い水準にある。このことか
ら、大気雰囲気下において1450℃で予備焼結したもの
を、分圧20%の酸素を含む雰囲気下においてT1:1400℃
で熱間等方圧加熱処理をすれば、相対密度99.8%と殆ど
理論密度に等しいITO焼結体が得られることがわか
る。
【0032】尚、前記T1:1400℃の熱間等方圧加熱処理
による緻密化の効果は、予備焼結温度の高い方が小さい
が、この原因はポアの大きさが影響したものと考えられ
る。
【0033】(実施例2)実施例1と同様の成形体(冷
間静水圧成形後のもの)について同様の脱脂処理をした
後、大気雰囲気中で1200〜1700℃に5時間加熱して予備
焼結したところ、1700℃では成形体が溶けてしまった。
そこで、それ以外のもの(1200〜1600℃で予備焼結した
もの)について、アルゴンと酸素との混合ガス(酸素分
圧20%)の雰囲気下で、温度:1400℃、圧力:2トン/
cm2 で1時間加熱加圧する熱間等方圧加熱処理をして、
ITO焼結体(即ちITOスパッタリングターゲット)
を得た。これらITO焼結体はいづれも低級酸化物であ
る黒色のIn2Oを含まないものであることが確認された。
【0034】次に、上記ITO焼結体について相対密度
の測定を行った。その結果を図2に示す。図2からわか
る如く、予備焼結温度:1200℃、1300℃のものでは予備
焼結後の密度が低く、又、熱間等方圧加熱処理(T1:14
00℃)による緻密化の効果も小さかった。これに対し、
予備焼結温度:1400℃、1500℃、1600℃のものでは予備
焼結後の密度が比較的高く85%以上であり、又、熱間等
方圧加熱処理(T1:1400℃)による緻密化の効果も大き
く、相対密度:99%、97%、95%のITO焼結体が得ら
れた。これらは、前記特殊カプセル使用HIP 法よりも高
い水準にある。
【0035】(実施例3)実施例1と同様の成形体(冷
間静水圧成形後のもの)について同様の脱脂処理をした
後、酸素雰囲気中で1200〜1700℃に5時間加熱して予備
焼結したところ、1700℃では成形体が溶けてしまった。
そこで、それ以外のもの(1200〜1600℃で予備焼結した
もの)について、アルゴンと酸素との混合ガス(酸素分
圧20%)の雰囲気下で、温度:1400℃、圧力:2トン/
cm2 で1時間加熱加圧する熱間等方圧加熱処理をして、
ITO焼結体を得た。これらITO焼結体はいづれも低
級酸化物である黒色のIn2Oを含まないものであることが
確認された。
【0036】次に、上記ITO焼結体について相対密度
の測定を行った。その結果を図3に示す。図3からわか
る如く、予備焼結温度:1200℃、1300℃のものでは予備
焼結後の密度が低く、又、熱間等方圧加熱処理(T1:14
00℃)による緻密化の効果も小さかった。これに対し、
予備焼結温度:1400℃、1500℃、1600℃のものでは予備
焼結後の密度が比較的高く90%以上であり、又、熱間等
方圧加熱処理(T1:1400℃)による緻密化の効果も大き
く、相対密度:99%、98%、96%のITO焼結体が得ら
れた。これらは、前記特殊カプセル使用HIP 法よりも高
い水準にある。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、特殊カプセル使用HIP
法(特開平5-155651号公報に記載の方法)での如き複雑
な処理、手段を要することなく比較的簡単に製造し得、
低級酸化物である黒色のIn2Oを含まず、且つ前記特殊カ
プセル使用HIP 法の場合(相対密度88%、93%、96%)
と同等もしくはそれ以上の高密度を有するITOスパッ
タリングターゲットが得られるようになる。そして、か
かるITOスパッタリングターゲットによれば、その使
用初期の時点から高透過率・低抵抗なITO透明導電膜
を得ることができ、又、ターゲットの経時劣化である黒
色化やノジュールの発生が抑制され、そのため、ターゲ
ット使用効率の低下が生じず、又、高透過率・低抵抗な
ITO透明導電膜を安定して得ることができる。
【0038】特に、相対密度:99%以上の超高密度を有
するITOスパッタリングターゲットを得ることも可能
であり、かかる超高密度のITOスパッタリングターゲ
ットによれば、ターゲット自体の熱伝導率が高いことに
起因してターゲット寿命を大幅に向上でき、又、ターゲ
ット自体のバルク抵抗が低いことに起因してスパッタガ
スによるITO透明導電膜の損傷を抑えることができ、
更に、ターゲット表面が滑らかになることに起因して異
常放電を防ぐことができ、アーキングが発生し難く、安
定な成膜を行うことができるようになるという従来にみ
られない顕著に優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1に係る予備焼結温度とITO焼結体
(予備焼結後、熱間等方圧加熱処理後)の相対密度との
関係を示す図である。
【図2】 実施例2に係る予備焼結温度とITO焼結体
(予備焼結後、熱間等方圧加熱処理後)の相対密度との
関係を示す図である。
【図3】 実施例3に係る予備焼結温度とITO焼結体
(予備焼結後、熱間等方圧加熱処理後)の相対密度との
関係を示す図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化錫を3〜15wt%含む酸化インジウム
    基混合粉末を焼結してなるITO焼結体よりなるITO
    スパッタリングターゲットであって、前記ITO焼結体
    の相対密度が99%以上であることを特徴とするITOス
    パッタリングターゲット。
  2. 【請求項2】 酸化インジウム粉末及び酸化錫粉末を含
    む混合粉末を予備焼結した後、分圧20%以下の酸素を含
    む雰囲気下、1200℃を超える温度で熱間等方圧加熱処理
    をし、ITOよりなるスパッタリングターゲットを製造
    することを特徴とするITOスパッタリングターゲット
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記予備焼結を予備焼結温度:1400〜16
    00℃にして行う請求項2記載のITOスパッタリングタ
    ーゲットの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記予備焼結の雰囲気を大気又は酸化雰
    囲気にする請求項2又は3記載のITOスパッタリング
    ターゲットの製造方法。
JP7087009A 1995-04-12 1995-04-12 Itoスパッタリングターゲット及びその製造方法 Pending JPH08283934A (ja)

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