JPH08269179A - ポリエステルシート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 グリコール成分と酸成分とをそれぞれ特定す
ることにより、ガスバリア性、６０℃で１週間熱処理し
た後の耐衝撃性の優れたポリエステルシートを提供す
る。 【構成】 芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分の９５モ
ル％以上とする酸成分のうち２，６−ナフタレンジカル
ボン酸およびそのエステル形成誘導体が１０モル％以上
１００モル％以下である酸成分と、全グリコール成分の
うち１，４−シクロヘキサンジメタノールが１モル％以
上５０モル％以下であるポリエステル樹脂よりなるポリ
エステルシート。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステルシート、
さらに詳しくはガスバリア性および６０℃で熱処理した
後の衝撃強度の低下が少い食品包装用に適したポリエス
テルシートに関する。

【０００２】

【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート等に代表さ
れるポリエステルは、その透明性、機械的物性、寸法安
定性等の物理的特性、耐薬品性等の化学的特性にすぐれ
ており、各種フィルム、シート、容器として広く使用さ
れている。

【０００３】特に、食品包装分野においては内容物の品
質保持が要求され、保存期間中の食味の変化が問題にな
ってきている。このような内容物の変化に対しては、ガ
スバリア性に優れたシートを使用する必要がある、ガス
バリア性にすぐれたシートとしては、それ自体が高いガ
スバリア性を有するポリエチレンテレフタレート等のポ
リエステルがあげられる。

【０００４】また、ポリエステル樹脂は、成形時の白化
を防止するために酸成分あるいはグリコール成分を変性
したポリエステルが使用されている。ポリエステルの酸
成分をイソフタル酸で、あるいはグリコール成分をジエ
チレングリコールで変性したシートを、夏期に長期間保
管した場合、耐衝撃性が極端に低下しシート加工時ある
いは内容物充填時に割れが生じるという問題があるが、
グリコール成分を１，４−シクロヘキサンジメタノール
で変性した場合は、熱処理後も耐衝撃性を有することが
知られている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリエ
ステルの構成成分の一つであるグリコール成分を１，４
−シクロヘキサンジメタノールで変性した場合、ガスバ
リア性が低下し食品包装用として適さないという問題点
が生じる。したがって、本発明の目的は、ガスバリア性
とともに６０℃で１週間熱処理した後の耐衝撃性に優れ
たポリエステル共重合体を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の目
的を達成するため、ポリエステル共重合体のガスバリア
性、熱エージング後の耐衝撃性について鋭意検討した結
果、本発明に到達した。

【０００７】すなわち、本発明は、芳香族ジカルボン酸
成分を全酸成分の９５モル％以上とする酸成分のうち
２，６−ナフタレンジカルボン酸およびそのエステル形
成誘導体が１０モル％以上１００モル％以下である酸成
分と、全グリコール成分のうち１，４−シクロヘキサン
ジメタノールが１モル％以上５０モル％以下であるグリ
コール成分よりなるポリエステル樹脂よりなり、このポ
リエステル樹脂よりなるシートの酸素透過率が５０ｍｌ
／ｍ² ・２４ｈｒ以下、６０℃で１週間熱処理した後の
衝撃強度の低下が５０％以下であることを特徴とするポ
リエステルシートにある。

【０００８】本発明のポリエステルシートは、芳香族ジ
カルボン酸成分が全酸成分中９５モル％以上である酸成
分のうち２，６−ナフタレンジカルボン酸成分が１０モ
ル％以上１００モル％以下である酸成分と、全グリコー
ル成分のうち１，４−シクロヘキサンジメタノールが１
モル％以上５０モル％以下であるグリコール成分よりな
るポリエステル樹脂よりなるものである。

【０００９】ポリエステル樹脂を構成する２，６−ナフ
タレンジカルボン酸成分を含む芳香族ジカルボン酸成分
は、全酸成分のうち９５％以上であり、特段の理由がな
ければこれらのみからなっていてもよい。

【００１０】全酸成分のうち２，６−ナフタレンジカル
ボン酸成分は、１０モル％以上１００モル％以下である
ことが必要であり、好ましくは１５モル％以上７０モル
％以下である。これは２，６−ナフタレンジカルボン酸
成分が１５モル％未満では十分なガスバリア性が得られ
ないためであり、また７０モル％より多いと十分な重合
度が得られず、このため耐衝撃性が充分に得られないた
めである。

【００１１】２，６−ナフタレンジカルボン酸以外の芳
香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフ
タル酸、１，４−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジ
カルボン酸があげられ、中でもテレフタル酸が特に好ま
しい。２，６−ナフタレンジカルボン酸およびこれ以外
の芳香族ジカルボン酸のエステル形成誘導体としては、
芳香族ジカルボン酸のジアルキルエステル、ジアリール
エステル等があげられる。

【００１２】一方、ポリエステルを構成する全グリコー
ル成分のうち、１，４−シクロヘキサンジメタノールが
１モル％以上５０モル％以下であることが必要であり、
好ましくは３モル％以上３０モル以下である。これは
１，４−シクロヘキサンジメタノールが、全ジオール成
分中３モル％未満では６０℃で１週間熱処理した後の耐
衝撃性が十分でなく、また３０モル％より大きいとガス
バリア性の低下が大きくなるためである。

【００１３】本発明において１，４−シクロヘキサンジ
メタノール以外のグリコール成分としては、エチレング
リコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げ
られ、特にエチレングリコールが好ましい。

【００１４】シートの製膜については、樹脂を１３０℃
で５時間真空乾燥を行なった後、一般的に用いられる製
膜機にて約２８０℃にて押出すことによって厚さ１００
〜２００μｍのシートが得られる。

【００１５】本発明において、ポリエステルシートには
特定の性能を付与するために各種添加剤を配合すること
もできる。添加剤の例としては、シリカ、タルク、カオ
リン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カー
ボンブラック等の顔料、紫外線吸収剤、離型剤、難燃剤
等があげられる。

【００１６】本発明のポリエステルシートは、酸素透過
率が５０ｍｌ／ｍｍ² ・２４ｈｒ以下、好ましくは３５
ｍｌ／ｍｍ² ・２４ｈｒであり、また、６０℃で１週間
熱処理した後の耐衝撃性の低下は５０％以下である。酸
化透過率が５０ｍｌ／ｍｍ²・２４ｈｒを超えるとガス
バリア性が低下し食品包装に用いた場合、保存期間中に
食味が変化するためである。さらに、このシートの６０
℃で１週間熱処理した後の衝撃強度の低下が５０％より
大きいと、シート加工時あるいは内容物充填時に割れが
生じ、食品包装用シートとして使用できない。なお、シ
ートの衝撃強度の低下を１週間熱処理した後としたの
は、保管時の温度４０〜８０℃、期間１週間前後である
ため、平均値として６０℃で１週間の熱処理を行なった
後の衝撃強度が食品包装用シートにとって重要なためで
ある。また、酸素透過率および耐衝撃性は、厚さ１５０
μｍのシートでの測定値である。

【００１７】

【実施例】以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明
する。実施例で用いた各物性の測定方法は次のとおりで
ある。

【００１８】［酸素透過率］厚さ１５０μｍのシートに
ついてＭｏｃｏｎ社製酸素透過率測定装置ＲＸ−ＴＲＡ
Ｎで測定した。

【００１９】［熱処理方法および衝撃強度測定法］厚さ
１５０μｍのシートについて熱処理、衝撃強度測定を行
なった。熱処理は、ＪＩＳ Ｋ７２１２に準じて６０℃
で１週間行なった。衝撃強度は、熱処理前および熱処理
後のシートについて、デュポン衝撃試験を行ない５０％
破壊エネルギーを測定した。衝撃強度の評価は、次式に
より衝撃強度低下率を算出し、衝撃強度低下率５０％以
下のものを○、３０％以上５０％未満のものを△、５０
％以上のものを×として判定した。

【００２０】

【数１】

【００２１】実施例１〜３、比較例１〜４ 表１に示した量の２，６−ナフタレンジカルボン酸ジメ
チルエステル（ＮＤＡ）とジメチルテレフタレート（Ｄ
ＭＴ）をあわせて１００モル部と、１，４−シクロヘキ
サンジメタノール（ＣＨＤＭ）とエチレングリコール
（ＥＧ）２００モル部を、精留塔および撹拌装置を備え
た反応容器に仕込み、エステル交換触媒として酢酸マン
ガン４水和物４００ｐｐｍ（対酸成分）を添加し、撹拌
を行いながら２６０℃まで徐々に昇温し、留出するメタ
ノールを系外に排出しながらエステル交換を行なって反
応率が９０％のビスヒドロキシエチルエステル化物を得
た。

【００２２】得られたビスヒドロキシエチルエステル重
縮合反応容器に移し、重縮合触媒として三酸化アンチモ
ン４００ｐｐｍ（対酸成分）、安定化剤としてトリメチ
ルフォスフェート２００ｐｐｍ（対酸成分）を添加し、
ついで３０分間で真空度を５ｍｍＨｇ以下とするととも
に２９０℃まで昇温し、重縮合反応を行ない所定の重合
度のポリエステル樹脂を得た。

【００２３】得られたポリエステル樹脂を水分率が１０
０ｐｐｍ以下になるように真空乾燥を行なったあと製膜
機で製膜し、厚さ１５０μｍのシートを得た。得られた
シートの、酸素透過率、および６０℃で１週間熱処理し
た後の衝撃強度の低下を測定した。その結果を一括に表
１に示した。

【００２４】

【表１】

【００２５】

【発明の効果】本発明のポリエステルシートは、ガスバ
リア性、および６０℃で１週間熱処理した後の耐衝撃性
に優れており、食品包装用のポリエステルシートとして
広く使用できるものである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 純 愛知県豊橋市牛川通四丁目１番地の２ 三 菱レイヨン株式会社豊橋事業所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 芳香族ジカルボン酸成分を全酸成分の９
   ５モル％以上とする酸成分のうち２，６−ナフタレンジ
   カルボン酸およびそのエステル形成誘導体が１０モル％
   以上１００モル％以下である酸成分と、全グリコール成
   分のうち１，４−シクロヘキサンジメタノールが１モル
   ％以上５０モル％以下であるポリエステル樹脂よりなる
   ポリエステルシート。
2. 【請求項２】 酸素透過率が５０ｍｌ／ｍ² ・２４ｈｒ
   以下、６０℃で１週間熱処理した後の衝撃強度の低下が
   ５０％以下であることを特徴とする請求項１記載のポリ
   エステルシート。