JPH08261328A - 金属ガスケット - Google Patents

金属ガスケット

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JPH08261328A
JPH08261328A JP7043923A JP4392395A JPH08261328A JP H08261328 A JPH08261328 A JP H08261328A JP 7043923 A JP7043923 A JP 7043923A JP 4392395 A JP4392395 A JP 4392395A JP H08261328 A JPH08261328 A JP H08261328A
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耕作 植田
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Japan Metal Gasket Co Ltd
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    • F16J15/08—Sealings between relatively-stationary surfaces with solid packing compressed between sealing surfaces with exclusively metal packing
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  • General Engineering & Computer Science (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 エンジンの運転に伴う振動振幅の影響による
疲労破壊を防止し、変形を抑制することができるとも
に、長期間にわたって安定した良好なシール性を確保す
ることができる金属ガスケットを提供すること。 【構成】 二枚の基板１１，１２とこれらの間の副板１
３とを有し、これらには同心円状に複数個のシリンダボ
ア孔１４が開設されている。そして、基板１１，１２に
はシリンダボア孔１４の周囲に沿ってビード１１ａ，１
２ａが形成される一方、副板１３はシリンダボア孔１４
の縁が折り返され、その折り返し端部１３ａの起点位置
Ｘが、両基板１１，１２のシリンダボア孔１４端部Ｙに
対し、金属ガスケット１０表面の同一垂直線上かあるい
は若干シリンダボア孔１４内側に位置するように形成さ
れ、折り返し端部１３ａ全体が両基板１１，１２のシリ
ンダボア孔１４端部Ｙよりもさらにシリンダボア孔１４
側に突出するようになっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関を構成するシ
リンダブロックとシリンダヘッドとの接合面に介装し
て、燃焼ガス，冷却水及び潤滑油等の流体の漏洩を防止
する金属ガスケットに関する。
【０００２】
【従来の技術】一般に、自動車用エンジンその他の内燃
機関を構成するシリンダブロックとこの上に取り付けた
シリンダヘッドとの接合面には、この接合面から燃焼ガ
ス，冷却水，潤滑油等の流体の漏洩を防止するため種々
のガスケットを介装し、ボルト等の締結具で双方を締め
付けることによりシール機能を付与している。従来、こ
のようなガスケットとしては、アスベスト材，化学繊維
材あるいはカーボンシート材等から形成した所謂ソフト
ガスケットが提供されているが、このソフトガスケット
は、その素材による不可避的な問題として、内燃機関の
運転に伴う経時劣化ならびに耐熱性の確保が困難である
といった欠点があるため、近年では、耐熱性，耐圧縮
性，耐久性に富み、良好な復元性（バネ特性）及び熱伝
導性を有する金属製のガスケットが広く使用されている
のは周知の通りである。
【０００３】このような金属ガスケットにおいて、燃焼
室，つまりシリンダボア周りのシールは特に重要であ
る。すなわち、この部分のシール性が不充分であると、
燃焼室内部の燃焼ガスの利用が不完全となり、圧力低下
となって現れるからである。したがって、金属ガスケッ
トの弾性基板には、このシリンダボアと連通するように
形成されたシリンダボア孔と同心円状にビードを設け、
この金属ガスケットが前記ボルト等の締結具によりシリ
ンダブロックとシリンダヘッドとの間で締め付けられる
ときに発生するビードの反発力を利用して、金属ガスケ
ットとシリンダブロックもしくはシリンダヘッドとの接
合面間に発生する面圧を高め、これにより前記シリンダ
ボア周りのシール性を向上している。
【０００４】前記ビードは、金属ガスケットがボルト等
の締結具によりシリンダブロックとシリンダヘッドとの
間で締め付けられた際、これらの面圧により潰れる方向
に弾性変形するが、このビードが全屈するには比較的大
きな荷重が必要である。ところが、シリンダブロックと
シリンダヘッドとの接合面間では、前記ボルト等締結具
に近い位置においてはその締め付け力が大きく、逆に離
れた位置においてはその締め付け力が小さくなることが
余儀なくされている。これは、エンジンの軽量化のため
にシリンダヘッドの材質を剛性の低いアルミニウム合金
等にすることや、エンジンの小型化及び軽量化のために
燃焼室間の距離を小さくして、燃焼室間におけるシリン
ダヘッドの幅を小さくする等の原因により、結果として
シリンダヘッドの燃焼室間の部分の剛性が低下するから
である。
【０００５】一方、前記ビードは、ボルト等の締結具の
位置より離れた位置で形成されている。したがって、こ
のボルト等の締結具からの距離と、上述したエンジン剛
性の低下とにより、前記面圧によってもビードが全屈せ
ず、当該ビードにおいて傾斜が発生することになる。さ
らに詳しくは、ビードを形成した部位においては、エン
ジンの剛性とビードの反発力とが均衡しており、エンジ
ンの停止時においてはこの均衡を保ち続けるが、エンジ
ンの運転時においては燃焼工程で発生する燃焼室内圧の
増減に伴って金属ガスケットへの締め付け力が変化して
当該ビードに振動が発生し、さらにマスがもたらす振動
や各エンジン部材の温度変化による体積変化に伴っても
金属ガスケットへの締め付け力の変動が発生し、これら
の振動や締め付け力の変動によって、ビードがその弾性
力によって振動し、さらにこの振動によって屈曲が繰り
返されて疲労破壊が発生する可能性がある。
【０００６】そこで、例えば実公平４−１６０２６号公
報や、特公平５−６１５０３号公報では、上述したよう
な振動振幅の大きさを規制し、ビードの部位に疲労破壊
が発生するのを防止しようとする提案がなされている。
すなわち、実公平４−１６０２６号公報では、図１０に
示すように、基板１のビード２を形成した側，つまりビ
ード２の凸側に副板３を重ねるとともに、これらを例え
ばエンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッドの接
合面域外に張り出した部位（例えば後述の図９における
１０ａ）等において、数カ所で点溶接やはとめ等の手段
によって結合し、さらに副板３の端縁を基板１側に折り
返して折り返し部３ａを形成し、この折り返し部３ａを
ビード２の燃焼室寄りの起点２ａより燃焼室内側に位置
するようにして双方が重合しないようにしている。この
ような金属ガスケットは、折り返し部３ａの形成によっ
て、ビード２の潰れる側への全屈が防止されるととも
に、ビード２の復元性（バネ特性）の劣化が防止され、
これによって振幅は減少してビード２の疲労破壊が防止
されるとしている。
【０００７】一方、特公平５−６１５０３号公報では、
図１１に示すように、基板１のビード２を形成していな
い側，つまりビード２の凹側に副板３を重ねるととも
に、これらを上記と同様に接合面域外に張り出した部位
等において数カ所で結合し、さらに基板１の平坦部１ａ
を副板３の端縁で抱き込むように当該副板３の端縁を折
り返して積層している。このような構成であると、前記
積層端縁においては、基板１の他の部位より副板３の板
厚一枚分だけ厚さが厚くなり、したがって、この積層端
縁では高い面圧を確保することができる。これにより、
エンジンの運転に伴い燃焼室内で発生する高圧ガスを積
層端縁において初期シール（一次シール）し、さらにビ
ード２が潰れる側に変形して二次シールする構造となっ
て、たとえエンジンの運転により上述した変動が起こっ
て振幅が発生したとしても、副板３の折り返された端縁
によってビード２の潰れる側への変形は規制され、振幅
は減少してビード２の疲労破壊が防止されるとしてい
る。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の金属ガスケットは、以下に述べるような欠点を有し
ている。すなわち、実公平４−１６０２６号公報の金属
ガスケットは、副板３が薄い場合、基板１と副板３と
は、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面域外
に張り出した部位において数カ所で結合されているのみ
であるため、例えばエンジンを構成するシリンダブロッ
クが鋳鉄製で，シリンダヘッドがアルミニウム製である
ような場合、当該エンジンの運転・停止に伴う燃焼室内
の温度上昇・下降の繰り返しにより、エンジン部材の異
種材料の熱膨張差で、基板１より薄い副板３が変形した
り、皺等が発生して燃焼室側にはみ出したり、折り返し
部３ａに亀裂が発生したりする可能性がある。一方、副
板３が厚い場合、当該副板３の折り返し端部は、完全に
平坦な状態とはならず、一方あるいは両方の接合面側に
若干盛り上がった状態となる。これによって、当該折り
返し端部は、ボルト等の締結具による締め付け力によっ
ても全屈し難くなり、折り返し端部の副板３における厚
さ方向上下端で大きい荷重を受けることになるため、シ
リンダブロックもしくはシリンダヘッドにおける燃焼室
周りのシール面を凹ませることがある一方、膨大な荷重
を付加して全屈状態にすると、折り返し端部が破損して
しまう可能性がある。
【０００９】また、特公平５−６１５０３号公報の金属
ガスケットは、上記と同様に、基板１と副板３とがシリ
ンダブロックとシリンダヘッドとの接合面域外の数カ所
で結合されているのみであり、また折り返し部３ａは、
金属ガスケットのエンジンへの組み付け時にシリンダブ
ロックあるいはシリンダヘッドの接合面に直接接触する
ことになるため、上述したようなエンジンの運転・停止
に伴う燃焼室内の温度上昇・下降の繰り返しにより、エ
ンジン部材が異種材料からなる場合の熱膨張差で、基板
１より薄い副板３が変形したり、皺等が発生して燃焼室
側にはみ出したり、折り返し部３ａに亀裂が発生したり
する可能性がある。
【００１０】本発明は、上記の欠点を克服し得るもので
あって、その目的は、エンジンの運転に伴う振動振幅の
影響による疲労破壊を防止し、変形を抑制することがで
きるともに、長期間にわたって安定した良好なシール性
を確保することができる金属ガスケットを提供すること
にある。
【００１１】
【課題を解決するための手段】本発明の金属ガスケット
のうち、請求項１に記載の発明は、少なくとも燃焼室用
孔が開設された弾性金属板からなり且つ前記燃焼室用孔
の周りに沿ったビードが形成されてなる少なくとも一枚
の基板と、前記燃焼室用孔に合わせて燃焼室用孔を開設
した別の金属板からなる副板とを重ねてなり、シリンダ
ブロックとシリンダヘッドとの間に介装してこれらの接
合面間をシールする金属ガスケットにおいて、前記副板
の燃焼室用孔の縁を折り返し、この折り返し端部を前記
基板の燃焼室用孔端部より燃焼室内側に位置させるとと
もに、前記折り返された副板の縁を、前記ビードの前記
燃焼室用孔寄りの起点より燃焼室内側に位置させたこと
を特徴としている。
【００１２】請求項２に記載の発明は、請求項１に記載
の発明において、前記副板を、前記基板に燃焼室用孔を
打ち抜く際の打ち抜き方向始点側に配設したことを特徴
としている。請求項３に記載の発明は、請求項１又は請
求項２に記載の発明において、前記折り返し端部を、前
記燃焼室用孔の全周にわたって位置させたことを特徴と
している。
【００１３】請求項４に記載の発明は、請求項１ないし
請求項３のいずれかに記載の発明において、前記燃焼室
用孔の隣接する部位における前記折り返しにシム板を抱
き込ませたことを特徴としている。
【００１４】
【作用】本発明の金属ガスケットのうち、請求項１に記
載の発明によれば、エンジンへ装着されて締め付けられ
た際に、基板の燃焼室用孔端部と副板の折り返しとが、
エンジンの燃焼室全周にわたって折り返し幅の折り返し
端部を除く全域で均一に接触するため、充分な締め付け
面圧を確保し得る。特に、例えばシリンダヘッドがアル
ミニウム製で，シリンダブロックが鋳鉄製であるような
異種材料の組み合わせからなるエンジンであっても、当
該エンジンの停止時及び運転時に伴った温度変化による
熱膨張差に対して、基板と副板との位置ずれが防止さ
れ、折り返し端部の割れ，皺等の発生が防止される。ま
た、副板の折り返し端部が基板の燃焼室用孔端部より燃
焼室内側に位置しているから、エンジンへ装着されて締
め付けられた際には、この折り返し端部の起点に基板の
燃焼室用孔端部が当接することにより、当該折り返し端
部がストッパの効果を果たし、基板と副板との位置ずれ
が防止される。
【００１５】ところで、金属板に孔を開設するには、殆
どの場合打ち抜きプレス加工によって行われるが、この
ようにして開設された孔において、その打ち抜き方向始
点側の端縁は当該孔の内面側にだれ込み、逆に打ち抜き
方向終点側の端縁は金属板表面側に隆起した状態となる
のは良く知られている。この点に着目してなされたのが
請求項２に記載の発明であって、副板を基板の燃焼室用
孔の開設方向始点側に配設することで、副板の折り返し
端部と基板の燃焼室用孔のだれ込み端縁とが適合して、
一層安定した副板の保持が実現される。
【００１６】請求項３に記載の発明によれば、折り返し
端部が燃焼室用孔の全周にわたって位置しているから、
エンジンへ装着されて締め付けられた際には、この折り
返し端部の起点に基板の燃焼室用孔端部が当接すること
による当該折り返し端部のストッパ効果が一層確実とな
り、したがって基板と副板との位置ずれが一層確実に防
止される。
【００１７】請求項４に記載の発明によれば、特にシリ
ンダブロック及びシリンダヘッドの剛性が小さい場合に
は、燃焼室用孔の隣接する部位においてボルト等の締結
具で締め付けた際の面圧が低くなるが、ここに抱き込ま
せたシム板により、前記面圧が均一化される。
【００１８】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図１ないし図９は、本発明の実施例を示す図
であって、これらの図において、図９は金属ガスケット
１０の平面構成図，図１（ａ）は図９のＩ−Ｉ線断面図
である。これらの図に示すように、金属ガスケット１０
は、ステンレス鋼等の弾性金属板からなる二枚の基板１
１，１２と、両基板１１，１２間でこれらより薄い金属
板からなる副板１３とを有し、これらは、例えばエンジ
ンのシリンダブロック及びシリンダヘッドの接合面域外
に張り出した部位１０ａ等において、数カ所で点溶接や
はとめ等の手段によって結合されており、いずれにも同
心円状に以下に述べる孔が開設されている。なお、これ
ら基板１１，１２の表面には、シリンダブロック及びシ
リンダヘッドの接合面粗さに対応したミクロシール剤等
が塗布されていてもよい。
【００１９】前記孔は、シリンダブロックのシリンダボ
ア（燃焼室）に対応した複数個のシリンダボア孔１４
と、前記シリンダブロックとシリンダヘッドとを結合す
る締結ボルトの配設位置に対応したボルト孔１５と、図
示しないピストン等の各摺動部分に潤滑油を供給するオ
イルギャラリ等に対応した油孔１６と、燃料の燃焼やピ
ストン等の摺動によって温度上昇するシリンダブロッ
ク，シリンダヘッドに冷却水を供給するウォータジャケ
ットの内側の部分に位置した水孔１７と、からなる。勿
論、これらの孔１４〜１７は、この金属ガスケット１０
をシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装して
エンジンを構築したとき、前記エンジンの各部位に連通
するようになっている。
【００２０】両基板１１，１２において、図１で上側の
基板１１は、これに開設されたシリンダボア孔１４の周
囲に沿ってビード１１ａが形成され、このビード１１ａ
は、基板１１の一部を下に隆起させて断面弧状に湾曲さ
せた所謂フルビードをなしている。また、図１で下側の
基板１２にも同様にビード１２ａが、この場合には当該
基板１２の一部を上に隆起させて形成されており、した
がって、これら基板１１，１２に形成したビード１１
ａ，１２ａは、その凸側が副板１３を介して対向した状
態となっている。また、これらビード１１ａ，１２ａ
は、同一の径でシリンダボア孔１４と同心円状に形成さ
れているが、双方の径を相違させてもよいし、双方の幅
を相互に相違させてもよい。
【００２１】両基板１１，１２のシリンダボア孔１４端
部は同一の位置にあって、これらの間にある副板１３
は、これに開設されたシリンダボア孔１４の縁がこの例
では基板１２側に折り返されている。そして、この折り
返しの折り返し端部１３ａとは逆側の端縁，つまり折り
返しを形成する以前の副板１３のシリンダボア孔１４の
縁１３ｂは、ビード１２ａ，１２ａのシリンダボア孔１
４寄りの起点よりもシリンダボア孔１４内側に位置して
おり、したがって折り返しとビード１２ａ，１２ａとは
重なり合わないようになっている。
【００２２】ここで、上記したような折り返しを形成す
ると、その折り返し端部１３ａは完全に平坦な状態とは
ならない場合が多い。すなわち、折り返し端部１３ａの
折り返し起点から副板１３の他の平坦な面よりも盛り上
がった状態になってしまう。これは、金属板に折り返し
を形成するにあたっては不可避的な現象であり、この折
り返し端部１３ａを潰して平坦な状態とするには過大な
荷重が必要であるとともに、過大な荷重を付加すると当
該折り返し端部１３ａにおいて亀裂破損が生じる可能性
もある。因みに、板厚が０．３mm以上であれば、端部を
潰して平坦にするのは非常に困難となることが確認され
ている。
【００２３】したがって、この金属ガスケット１０にお
いては、折り返し端部１３ａの起点位置Ｘが、両基板１
１，１２のシリンダボア孔１４端部Ｙに対し、金属ガス
ケット１０表面の同一垂直線上かあるいは若干シリンダ
ボア孔１４内側に位置するように形成し、折り返し端部
１３ａ全体が両基板１１，１２のシリンダボア孔１４端
部Ｙよりもさらにシリンダボア孔１４側に突出するよう
にしている。
【００２４】また、一般に金属板に孔を開設するには、
殆どの場合打ち抜きプレス加工によって行われるが、こ
のようにして開設された孔において、その打ち抜き方向
始点側の端縁は当該孔の内面側にだれ込み、逆に打ち抜
き方向終点側の端縁は金属板表面側に隆起した状態とな
る現象が起こる。この点を考慮し、この金属ガスケット
１０においては、図２に示すように、副板１３を基板１
１，１２のシリンダボア孔１４における開設方向始点側
に配設し、副板１３の折り返し端部１３ａの起点位置Ｘ
と基板１１，１２のシリンダボア孔１４のだれ込み端縁
１４ａとが適合するようにしている。
【００２５】次に、上記の構成からなる金属ガスケット
１０の作用について説明する。金属ガスケット１０は、
図１（ｂ）に示すように、エンジンを構成するシリンダ
ブロック６とシリンダヘッド５との接合面間に介装さ
れ、シリンダブロック６に対してシリンダヘッド５をボ
ルト等の締結具で締め付ける際に潰れる方向に変形し、
特にビード１１ａ，１２ａが潰れて弾性変形をきたすこ
とによるそれ自身の弾性復元力によって、シリンダブロ
ック６とシリンダヘッド５との接合面に圧接してこれら
の間をシールする。
【００２６】このとき、副板１３の折り返し端部１３ａ
は、前記変形によって基板１１，１２の内側の面と副板
１３の折り返しとが接触した際にも、これらの接触面よ
りシリンダボア孔１４側に突出し、結果としてシリンダ
ブロック６及びシリンダヘッド５のいずれの接合面にも
接触せず、これらの間で基板１１，１２ならびに折り返
しの板厚分によって構成された空間に位置した状態とな
る。したがって、シリンダブロック６とシリンダヘッド
５とのシリンダボア周りのシール面には、基板１１，１
２の端部と副板１３の折り返しとが全周にわたって均一
に接触することとなり、しかも副板１３の折り返しの起
点Ｘと基板１１，１２のシリンダボア孔１４のだれ込み
端縁１４ａとが当接することにより、折り返し端部１３
ａがストッパの効果を果たし、基板１１，１２のシリン
ダボア内側への位置ずれが防止される。
【００２７】これによって、例えばシリンダブロック６
が鋳鉄製で，シリンダヘッド５がアルミニウム製である
ような異種材料の組み合わせでなるエンジンにおいて、
当該エンジンの運転に伴う燃焼室内の温度変化が生じた
際に起こるシリンダブロック６とシリンダヘッド５との
熱膨張差に対しても、基板１１，１２と副板１３とが位
置ずれをきたすことがない。また、エンジンの振動振幅
による折り返し端部１３ａの割れ，ずれによる皺等の発
生を防止でき、折り返しの位置ずれ変形を防止すること
もできる。
【００２８】さて、これまでの説明では、断面が図１に
示されるような金属ガスケット１０について説明してき
たが、勿論この図１に示される例以外にも、多種多様な
金属ガスケットを構成することができる。以下は、これ
らの例を図３〜図６を参照しつつ説明する。図３（ａ）
に示す金属ガスケット２０は、前記金属ガスケット１０
が二枚の基板１１，１２と副板１３とを有していたのに
対し、一枚の基板１２と副板１３とを有するものであ
り、したがって金属ガスケット１０から基板１１を除い
た以外は同一構成となっている。但し、この金属ガスケ
ット２０にあっては、副板１３の折り返し端部１３ａ
が、基板１２側にのみ盛り上がった状態となっている。
【００２９】この金属ガスケット２０をエンジンに介装
して締め付けた状態の断面を図３（ｂ）に示すが、この
場合も前記金属ガスケット１０と同様に、副板１３の折
り返し端部１３ａは、締め付け面圧による変形によって
基板１２の内側の面と副板１３の折り返しとが接触した
際にも、これらの接触面よりシリンダボア孔１４側に突
出し、結果としてシリンダブロック６及びシリンダヘッ
ド５のいずれの接合面にも接触せず、これらの間で基板
１２ならびに折り返しの板厚分によって構成された空間
に位置した状態となる。したがって、シリンダブロック
６とシリンダヘッド５とのシリンダボア周りのシール面
には、基板１２の端部と副板１３の折り返しとが全周に
わたって均一に接触することとなり、しかも副板１３の
折り返しの起点Ｘと基板１２のシリンダボア孔１４のだ
れ込み端縁１４ａとが当接することにより、折り返し端
部１３ａがストッパの効果を果たし、基板１２のシリン
ダボア内側への位置ずれが防止される。
【００３０】また、図４に示す金属ガスケット３０は、
前記金属ガスケット１０において、基板１１，１２に形
成したビード１１ａ，１２ａを、その凸側が副板１３を
介して対向した状態となるように重ねていたのに対し、
これとは反対に基板１１，１２に形成したビード１１
ａ，１２ａを、その凹側が副板１３を介して対向した状
態となるように重ねた構成となっている。また、図５に
示す金属ガスケット４０は、前記金属ガスケット１０に
加えて、副板１３の折り返しを形成した側であって且つ
当該折り返し以外の面に、この副板１３の厚さより薄い
別の金属板からなるシム板１８を配した構成となってい
る。さらに、図７に示す金属ガスケット５０は、図５に
示した形態の金属ガスケット４０において、シム板１８
の端縁が副板１３の折り返し端部１３ａの起点位置Ｘま
で延在し、当該シム板１８が副板１３の折り返しを覆う
ように構成されており、シム板１８の端縁と、折り返し
端部１３ａの起点位置Ｘと、基板１１，１２のシリンダ
ボア孔１４端部Ｙとが、金属ガスケット５０表面の同一
垂直線上に位置するようになっている。
【００３１】これらいずれの金属ガスケット３０，４
０，５０においても、前記金属ガスケット１０，２０と
同様の効果を得ることができ、特に金属ガスケット４０
にあっては、締め付け力による副板１３の面圧方向の変
形をシム板１８によって抑制することができ、一層良好
なシール性を確保することができる。なお、図６には、
前記金属ガスケット４０において、基板１１，１２及び
副板１３の厚さを厚くし、ビード１１ａ，１２ａの曲率
を小さくし（すなわち高さを低くし）、副板１３の折り
返しの幅を小さくした例を示している。これは、金属ガ
スケット４０に限らず、他の全ての金属ガスケットにも
該当することであるが、締め付け面圧の大きさ，エンジ
ン部材の性状あるいはシリンダボア内に発生するガス圧
の大きさ等に対応して、ガスケット寸法の変化が可能で
ある典型的な例を示している。
【００３２】なお、シリンダボア孔１４の隣接する部位
には、図８（ａ）にその平面を示すような軟質の金属材
からなるシム板１８を、図８（ｂ）に示すように抱き込
ませるとよい。すなわち、特にシリンダブロック及びシ
リンダヘッドの剛性が小さい場合には、図８（ｂ）に示
すようなシリンダボアの隣接する部位において、ボルト
等の締結具で締め付けた際に面圧が低くなる傾向がある
が、ここにシム板１８を抱き込ませることにより、特に
締め付け面圧の低いシリンダボア間にあっても充分なシ
ール性を確保することができる。
【００３３】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の金属ガスケットによれば、エンジンの運転に伴う振動
振幅の影響による疲労破壊を防止し、変形抑制を実現す
ることができるとともに、長期間にわたって安定した良
好なシール性を確保することができる。
【００３４】特に、請求項１に記載の発明によれば、基
板の燃焼室用孔端部と副板の折り返しとが、エンジンの
燃焼室全周にわたって折り返し幅の折り返し端部を除く
全域で均一に接触するため、充分な締め付け面圧を確保
することができ、したがって基板と副板との位置ずれを
防止し、折り返し端部の割れ，皺等の発生を防止するこ
とができる。また、折り返し端部の起点に基板の燃焼室
用孔端部を当接させて当該折り返し端部にストッパの作
用を持たせることができるので、これによっても基板と
副板との位置ずれを一層防止することができる。
【００３５】請求項２に記載の発明によれば、副板の折
り返し端部と基板の燃焼室用孔のだれ込み端縁とを適合
させることができ、これによって一層安定した副板の保
持を実現することができる。請求項３に記載の発明によ
れば、折り返し端部のストッパ効果が一層確実にするこ
とができる。
【００３６】請求項４に記載の発明によれば、ボルト等
の締結具で締め付けた際の面圧を均一化することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明に係る金属ガスケットの一例を示す図で
あり、同図（ａ）は要部断面図，同図（ｂ）はエンジン
への組み付け状態を示す断面図である。
【図２】図１（ａ）の詳細図である。
【図３】本発明に係る金属ガスケットの他の例を示す図
であり、同図（ａ）は要部断面図，同図（ｂ）はエンジ
ンへの組み付け状態を示す断面図である。
【図４】本発明に係る金属ガスケットの他の例を示す要
部断面図である。
【図５】本発明に係る金属ガスケットの他の例を示す要
部断面図である。
【図６】本発明に係る金属ガスケットの他の例を示す要
部断面図である。
【図７】本発明に係る金属ガスケットの他の例を示す要
部断面図である。
【図８】本発明に係る金属ガスケットにおいてシリンダ
ボア孔間にシム板を抱き込ませた例を示す図であり、同
図（ａ）はシム板の平面図，同図（ｂ）は同図（ａ）の
シム板を抱き込ませた状態のシリンダボア孔間の拡大図
である。
【図９】本発明に係る金属ガスケットの平面構成図であ
る。
【図１０】従来の金属ガスケットの一例を示す要部断面
図である。
【図１１】従来の金属ガスケットの他の例を示す要部断
面図である。
【符号の説明】
５・・・・・・・・・・・シリンダヘッド ６・・・・・・・・・・・シリンダブロック １０，２０，３０，４０・金属ガスケット １１，１２・・・・・・・基板 １１ａ，１２ａ・・・・・ビード １３・・・・・・・・・・副板 １３ａ・・・・・・・・・折り返し端部 １３ｂ・・・・・・・・・（副板の）縁 １４・・・・・・・・・・シリンダボア孔 １４ａ・・・・・・・・・だれ込み端縁 １８・・・・・・・・・・シム板
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成８年６月１９日
【手続補正１】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】０００２
【補正方法】変更
【補正内容】
【０００２】
【従来の技術】一般に、自動車用エンジンその他の内燃
機関を構成するシリンダブロックとこの上に取り付けた
シリンダヘッドとの接合面には、この接合面から燃焼ガ
ス，冷却水，潤滑油等の流体の漏洩を防止するため種々
のガスケットを介装し、ボルト等の締結具でシリンダブ
ロックとシリンダヘッドの間を締め付けることによりシ
ール機能を付与している。従来、このようなガスケット
としては、アスベスト材，化学繊維材あるいはカーボン
シート材等から形成した所謂ソフトガスケットが提供さ
れているが、このソフトガスケットは、その素材による
不可避的な問題として、内燃機関の運転に伴う経時劣化
ならびに耐熱性の確保が困難であるといった欠点がある
ため、近年では、耐熱性，耐圧縮性，耐久性に富み、良
好な復元性（バネ特性）及び熱伝導性を有する金属製の
ガスケットが広く使用されているのは周知の通りであ
る。
【手続補正２】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】０００３
【補正方法】変更
【補正内容】
【０００３】このような金属ガスケットにおいて、燃焼
室，つまりシリンダボア周りのシールは特に重要であ
る。すなわち、この部分のシール性が不充分であると、
燃焼室内部の燃焼ガスの利用が不完全となり、圧力低下
となって現れるからである。したがって、金属ガスケッ
トの弾性基板には、このシリンダボアと連通するように
形成されたシリンダボア孔と同心円状にビードを設け、
この金属ガスケットが前記ボルト等の締結具によりシリ
ンダブロックとシリンダヘッドとの間で締め付けられる
ときに発生するビードの反発力を利用して、金属ガスケ
ットとシリンダブロックもしくはシリンダヘッドとの接
合面間に発生する面圧を高め、これにより前記シリンダ
ボア周りのシール性を向上させている。
【手続補正３】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】００１４
【補正方法】変更
【補正内容】
【００１４】
【作用】本発明の金属ガスケットのうち、請求項１に記
載の発明によれば、エンジンへ装着されて締め付けられ
た際に、基板の燃焼室用孔端部と副板の折り返しとが、
エンジンの燃焼室全周にわたって折り返し幅の折り返し
端部を除く全域で均一に接触するため、充分な締め付け
面圧を確保し得る。特に、例えばシリンダヘッドがアル
ミニウム製で，シリンダブロックが鋳鉄製であるような
異種材料の組み合わせからなるエンジンであっても、当
該エンジンの停止時及び運転時の温度変化による熱膨張
差に対して、基板と副板との位置ずれが防止され、折り
返し端部の割れ，皺等の発生が防止される。また、副板
の折り返し端部が基板の燃焼室用孔端部より燃焼室内側
に位置しているから、エンジンへ装着されて締め付けら
れた際には、この折り返し端部の起点に基板の燃焼室用
孔端部が当接することにより、当該折り返し端部がスト
ッパの効果を果たし、基板と副板との位置ずれが防止さ
れる。
【手続補正４】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】００１９
【補正方法】変更
【補正内容】
【００１９】前記孔は、図９に示すようにシリンダブロ
ックのシリンダボア（燃焼室）に対応した複数個のシリ
ンダボア孔１４と、前記シリンダブロックとシリンダヘ
ッドとを結合する締結ボルトの配設位置に対応したボル
ト孔１５と、図示しないピストン等の各摺動部分に潤滑
油を供給するオイルギャラリ等に対応した油孔１６と、
燃料の燃焼やピストン等の摺動によって温度上昇するシ
リンダブロック，シリンダヘッドに冷却水を供給するウ
ォータジャケットの内側の部分に位置した水孔１７と、
からなる。勿論、これらの孔１４〜１７は、この金属ガ
スケット１０をシリンダブロックとシリンダヘッドとの
間に介装してエンジンを構築したとき、前記エンジンの
各部位に連通するようになっている。
【手続補正５】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】００２１
【補正方法】変更
【補正内容】
【００２１】両基板１１，１２のシリンダボア孔１４端
部は同一の位置にあって、これらの間にある副板１３
は、これに開設されたシリンダボア孔１４の縁がこの例
では基板１２側に折り返されている。そして、この折り
返しの折り返し端部１３ａとは逆側の端縁，つまり折り
返しを形成する以前の副板１３のシリンダボア孔１４の
縁１３ｂは、ビード１１ａ，１２ａのシリンダボア孔１
４寄りの起点よりもシリンダボア孔１４内側に位置して
おり、したがって折り返しとビード１２ａ，１２ａとは
重なり合わないようになっている。
【手続補正６】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】００３０
【補正方法】変更
【補正内容】
【００３０】また、図４に示す金属ガスケット３０は、
前記金属ガスケット１０において、基板１１，１２に形
成したビード１１ａ，１２ａを、その凸側が副板１３を
介して対向した状態となるように重ねていたのに対し、
これとは反対に基板１１，１２に形成したビード１１
ａ，１２ａを、その凹側が副板１３を介して対向した状
態となるように重ねた構成となっている。また、図５に
示す金属ガスケット４０は、前記金属ガスケット１０に
加えて、副板１３の折り返しを形成した側であって且つ
当該折り返し以外の面に、この副板１３の厚さより薄い
別の金属板からなるシム板４１を配した構成となってい
る。さらに、図７に示す金属ガスケット５０は、図５に
示した形態の金属ガスケット４０において、シム板４１
の端縁が副板１３の折り返し端部１３ａの起点位置Ｘま
で延在し、当該シム板４１が副板１３の折り返しを覆う
ように構成されており、シム板４１の端縁と、折り返し
端部１３ａの起点位置Ｘと、基板１１，１２のシリンダ
ボア孔１４端部Ｙとが、金属ガスケット５０表面の同一
垂直線上に位置するようになっている。
【手続補正７】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】００３１
【補正方法】変更
【補正内容】
【００３１】これらいずれの金属ガスケット３０，４
０，５０においても、前記金属ガスケット１０，２０と
同様の効果を得ることができ、特に金属ガスケット４０
にあっては、締め付け力による副板１３の面圧方向の変
形をシム板４１によって抑制することができ、一層良好
なシール性を確保することができる。なお、図６には、
前記金属ガスケット４０において、基板１１，１２及び
副板１３の厚さを厚くし、ビード１１ａ，１２ａの曲率
を小さくし（すなわち高さを低くし）、副板１３の折り
返しの幅を小さくした例を示している。これは、金属ガ
スケット４０に限らず、他の全ての金属ガスケットにも
該当することであるが、締め付け面圧の大きさ，エンジ
ン部材の性状あるいはシリンダボア内に発生するガス圧
の大きさ等に対応して、ガスケット寸法の変化が可能で
ある典型的な例を示している。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 少なくとも燃焼室用孔が開設された弾性
    金属板からなり且つ前記燃焼室用孔の周りに沿ったビー
    ドが形成されてなる少なくとも一枚の基板と、前記燃焼
    室用孔に合わせて燃焼室用孔を開設した別の金属板から
    なる副板とを重ねてなり、シリンダブロックとシリンダ
    ヘッドとの間に介装してこれらの接合面間をシールする
    金属ガスケットにおいて、前記副板の燃焼室用孔の縁を
    折り返し、この折り返し端部を前記基板の燃焼室用孔端
    部より燃焼室内側に位置させるとともに、前記折り返さ
    れた副板の縁を、前記ビードの前記燃焼室用孔寄りの起
    点より燃焼室内側に位置させたことを特徴とする金属ガ
    スケット。
  2. 【請求項２】 前記副板を、前記基板に燃焼室用孔を打
    ち抜く際の打ち抜き方向始点側に配設したことを特徴と
    する請求項１に記載の金属ガスケット。
  3. 【請求項３】 前記折り返し端部を、前記燃焼室用孔の
    全周にわたって位置させたことを特徴とする請求項１又
    は請求項２に記載の金属ガスケット。
  4. 【請求項４】 前記燃焼室用孔の隣接する部位における
    前記折り返しにシム板を抱き込ませたことを特徴とする
    請求項１ないし請求項３のいずれかに記載の金属ガスケ
    ット。
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