JPH08259673A - 導電性高分子化合物水溶液およびその製造方法、保存方法 - Google Patents

導電性高分子化合物水溶液およびその製造方法、保存方法

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JPH08259673A
JPH08259673A JP6635395A JP6635395A JPH08259673A JP H08259673 A JPH08259673 A JP H08259673A JP 6635395 A JP6635395 A JP 6635395A JP 6635395 A JP6635395 A JP 6635395A JP H08259673 A JPH08259673 A JP H08259673A
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秀喜 友澤
Takashi Okubo
隆 大久保
Fusae Yamashita
房江 山下
Yoshiaki Ikenoue
芳章 池ノ上
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 常温で放置しても安定な、イソチアナフテン
骨格、ピロール骨格もしくはアニリン骨格を有する自己
ドープ型ポリマーの水溶液及び該水溶液の保存方法の提
供。 【構成】 イソチアナフテン骨格、ピロール骨格もしく
はアニリン骨格を有する自己ドープ型ポリマーを含み、
実質的に酸素を含有しない水溶液及びその製造方法。酸
素遮断状態における該水溶液の保存方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、常温で長期保存しても
極めて安定な導電性高分子化合物水溶液およびその製造
方法、保存方法に関する。更に詳しくは、本発明は、電
気、電子工業の分野において、加工的要求度が高い電
極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形光学
素子、光電変換素子、帯電防止剤ほか、各種導電材料あ
るいは光学材料として用いるのに適した安定な導電性高
分子化合物水溶液およびその製造方法、保存方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】π電子共役系の発達した重合体は、導電
性のみならず金属/半導体転移における状態変化などの
特異な物性のために工業的に注目され、多くの研究がな
されてきた。特にポリアセチレンやポリチオフェン、ポ
リピロール、ポリパラフェニレン等の多くの導電性高分
子は、剛直な主鎖骨格のため不溶不融である(Skotheim
著、"Handbook of Conducting Polymers" 誌、Mercer D
ekker 社発行、1986年)が、その側鎖にアルキル基等の
置換基を導入した重合体は可溶性となり、その易加工性
のため工業的に注目されてきている。
【0003】具体的な例としては、ポリチオフェンの側
鎖に長鎖アルキル基を導入して有機溶媒に可溶とした重
合体(K.Jen ら、Journal of Chemical Society, Chemi
calCommunication 誌、1346頁、1986年)や、アルキル
スルホン酸基を導入して水溶性の重合体(A.O.Patil
ら、Journal of American Chemical Society誌、109
巻、1858頁、1987年)などが知られている。
【0004】後者の例は水溶性の自己ドープ型ポリマー
として知られ、一般にはブレンステッド酸基がπ電子共
役系ポリマーの主鎖に直接、またはスペーサーを介して
間接的に共有結合されており、外来ドーパントの寄与な
しに導電状態を示す点でも注目されてきた。このような
例の報告としては他にも、E.E.Havinga らのポリチオフ
ェン誘導体(Polymer Bulletin誌、18巻、277 頁、1987
年)、Aldissi のポリチオフェン誘導体やポリピロール
誘導体(米国特許4,880,508 号)、ポリアニリン芳香環
に置換基としてカルボン酸基を共有結合させた重合体
(特許公表公報平1-500835号)、ピロールのN位にプロ
パンスルホン酸基が置換した重合体(Journal of Chemi
cal Society, Chemical Communication 誌、621 頁、19
87年)、N位にプロパンスルホン酸基が置換したポリア
ニリン重合体(Journal of Chemical Society, Chemica
l Communication 誌、180 頁、1990年、および Synthe
ticMetal 誌、31巻、369 頁、1989年)、芳香環に直接
スルホン酸基が置換したポリアニリン誘導体(Journal
of American Chemical Society誌、112 巻、2800頁、19
90年)、スルホン酸基を置換したイソチアナフテン重合
体(特開平6 −49183号)などが製造法とともに開示さ
れている。
【0005】以上のようにブレンステッド酸基がπ電子
共役系ポリマーの主鎖に直接、またはスペーサーを介し
て間接的に共有結合した自己ドープ型ポリマーは、水溶
性であること、外来ドーパントの寄与なしに導電状態を
示すこと、容易に薄膜化できその導電性は長期間にわた
って安定であることなどから工業的に多くの応用を目指
した研究がなされている。(自己ドープ型ポリマーの応
用例としては、荷電粒子線を照射する工程において帯電
現象を防止する特開平4-32848 号公報や特開平4-349614
号公報、さらに導電性複合材料に関する特開平4-328181
号公報や特開平6-145386号公報などをはじめ多数挙げら
れる。)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記自己
ドープ型ポリマーのうち、π電子共役系のポリマー主鎖
にイソチアナフテン骨格、ピロール骨格もしくはアニリ
ン骨格を有するポリマーは、酸化電位が比較的低いため
容易にp型ドープ(酸化)されやすく、そのため固体状
態(例えば膜の状態)では導電状態が安定であるもの
の、水溶液状態で常温にて放置すると物性が変化すると
いう問題を抱えていた(比較例1参照)。水溶液状態で
常温で放置した場合、溶液のpHの変化や塗布等の方法
で形成した膜の表面抵抗の上昇(導電性の低下)が物性
としては問題となる。このため水溶液状態での保管には
保管温度等の制限があった。
【0007】以上の問題点を解決し、保管方法の制限を
なくするために、常温にて放置しても安定な、イソチア
ナフテン骨格、ピロール骨格もしくはアニリン骨格を有
する自己ドープ型ポリマーの水溶液およびその製造方法
が望まれていた。さらにこの水溶液を冷蔵庫保管するこ
となく常温でも物性を安定に保つ保存方法が望まれてい
た。
【0008】
【発明の目的】本発明の第一の目的は、常温にて放置し
ても安定な、イソチアナフテン骨格、ピロール骨格もし
くはアニリン骨格を有する自己ドープ型ポリマーの水溶
液を提供することにある。本発明の第二の目的は、常温
にて放置しても安定な、イソチアナフテン骨格、ピロー
ル骨格もしくはアニリン骨格を有する自己ドープ型ポリ
マー水溶液の製造方法を提供することにある。本発明の
第三の目的は、常温にて放置しても安定な、イソチアナ
フテン骨格、ピロール骨格もしくはアニリン骨格を有す
る自己ドープ型ポリマー水溶液の保存方法を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、一般式
(I)
【化13】 一般式(II)
【化14】 一般式(III)
【化15】 一般式(IV)
【化16】 一般式(V)
【化17】 および一般式(VI)
【化18】 (式中、R1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立に
H、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和も
しくは不飽和アルキル、アルコキシまたはアルキルエス
テル基、ハロゲン、SO3 -M(但しR1 またはR2 の場
合にはMはH+ を表わす。)、ニトロ基、シアノ基、1
級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェ
ニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価
基を表わす。MはNR5678 +で表わされる第4
級アンモニウムのカチオン、PR5678 +、As
5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチ
オン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属
イオンを表わし、R5 、R6、R7 、R8 はそれぞれ独
立にH、または炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐
状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしく
は非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキ
シル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ
基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごと
き炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキルまたは
アリール基であってもよい。R1 とR2、またはR3
4 、あるいはR5 、R6 、R7 及びR8 から選ばれる
複数の置換基は、互いに任意の位置で結合して、該置換
基により置換されている原子を含む飽和または不飽和の
環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成し
てもよい。R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R
7 、R8 がアルキル基の場合、またはR1 、R2 、R
3 、R4 がアルコキシ基もしくはアルキルエステル基の
場合は、その鎖中には、カルボニル、エーテル、エステ
ル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、
イミノなどの結合を任意に含んでもよい。)で示される
化学構造の少なくとも一つを繰返し単位として含み且つ
主鎖がπ共役系二重結合を有する水溶性導電性高分子化
合物を含み、実質的に酸素を含有しない水溶液により達
成される。
【0010】さらに第2の目的は、前記一般式(I)〜
(VI)(式中、R1 、R2 、R3、R4 およびMは前
記と同じである。)で示される化学構造の少なくとも一
つを繰返し単位として含み且つ主鎖がπ共役系二重結合
を有する水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液を、脱
酸素処理することを特徴とする導電性高分子化合物水溶
液の製造方法により達成される。
【0011】第3の目的は、前述の一般式(I)〜(V
I)(式中、R1 、R2 、R3 、R4 およびMは前記と
同じである。)で示される化学構造の少なくとも一つを
繰返し単位として含み且つ主鎖がπ共役系二重結合を有
する水溶性導電性高分子化合物を含み、実質的に酸素を
含有しない水溶液を、酸素遮断状態で保存することを特
徴とする導電性高分子化合物水溶液の保存方法により達
成される。
【0012】本発明において、繰り返し単位として含む
とは、必ずしもその単位を連続して含む必要はなく、ラ
ンダムコポリマーあるいはブロックコポリマーのように
不規則、不連続に含む場合も包含している。以下本発明
を詳細に説明する。
【0013】本発明において用いられる主鎖がπ共役系
二重結合を有する水溶性導電性高分子化合物とは、前記
一般式(I)乃至(VI)で示される化学構造の少なく
とも一つを繰返し単位として含む水溶性導電性高分子化
合物である。該水溶性導電性高分子化合物とは、前記一
般式(I)乃至(VI)で示される化学構造のいずれか
一つを繰返し単位とする単独重合体からなる水溶性導電
性高分子であっても、あるいは、該化学構造の少なくと
も一つを繰返し単位として重合体中の全繰返し単位の5
モル%(モル分率として0.05)以上有し、それ以外
の該化学構造または該化学構造以外の化学構造を繰返し
単位として含む共重合体からなる水溶性導電性高分子化
合物であっても、前記該化学構造のうち2つ以上を繰返
し単位として含み且つ該化学構造以外の繰返し単位を含
む共重合体からなる水溶性導電性高分子化合物であって
もよい。前記の水溶性導電性高分子化合物に含まれる一
般式(I)乃至(VI)で示される化学構造の少なくと
も一つからなる繰返し単位の重合体中のモル分率は、
0.05以上であればよいが、0.10以上であること
が望ましく、0.25以上であることが更に望ましい。
かかる導電性高分子化合物の中で、一般式(I)乃至
(VI)で示される化学構造のいずれか一つのみを含む
単独または共重合体中の場合には、その化学構造からな
る繰返し単位のモル分率が、0.50以上、あるいは該
化学構造の2つ以上を含む共重合体の場合には、該化学
構造からなる2つ以上の繰返し単位のモル分率の合計が
0.50以上であるものが特に望ましい。
【0014】一般式(I)乃至(VI)の、R1 、R
2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至
20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和アル
キル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲ
ン、SO3 -M(但しR1 またはR2 の場合にはMはH+
を表わす。)、ニトロ基、シアノ基、脂肪族あるいは芳
香属等の1級、2級または3級アミノ基、クロロメチル
等のトリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基
からなる群の一価基から選ばれる。
【0015】ここで、R1 、R2 、R3 およびR4 とし
て特に有用な例としては、H(水素)、アルキル基、ア
ルコキシ基、アルキルエステル基、フェニルおよび置換
フェニル基、SO3 -M(但しR1 またはR2 の場合には
MはH+ を表わす。)が挙げられる。これらの置換基を
更に詳しく例示すれば、アルキル基としてはメチル、エ
チル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、1−
ブテニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、
ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシ
ル、ヘキサデシル、エトキシエチル、メトキシエチル、
メトキシエトキシエチル、アセトニル、フェナシル等、
アルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキ
シ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキ
シルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、メトキ
シエトキシ、メトキシエトキシエトキシ等、アルキルエ
ステル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカル
ボニル、ブトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル
基、アセトキシ、ブチロイルオキシ等のアシルオキシ
基、置換フェニル基としてはフルオロフェニル基、クロ
ロフェニル基、ブロモフェニル基、メチルフェニル基、
メトキシフェニル基等が挙げられる。上記のR1 、R
2 、R3 およびR4 がアルキル基、アルコキシ基または
アルキルエステル基の場合は、その鎖中には、カルボニ
ル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフ
ィニル、スルホニル、イミノ結合を任意に含有してもよ
い。
【0016】一般式(I)乃至(VI)の、R1 、R
2 、R3 およびR4 の前記の置換基の中で、H、炭素数
1乃至20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または
アルコキシ基が望ましく、また、Hまたは炭素数1乃至
20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が特に望ま
しい。
【0017】R1 とR2 、またはR3 とR4 は互いに任
意の位置で結合して、該置換基により置換されている原
子を含む飽和または不飽和の、例えば炭化水素の、環状
構造または複素環を形成する二価基を形成してもよく、
かかる二価基の例としてはブチレン、ペンチレン、ヘキ
シレン、ブタジエニレン、置換ブタジエニレン、メチレ
ンジオキシなどが挙げられる。
【0018】一般式(II)、一般式(IV)および一
般式(VI)において、MはNR5678 +で表わ
される第4級アンモニウムのカチオン、PR567
8 + 、AsR5678 +で表わされるVb族元素
の第4級カチオン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等の
アルカリ金属イオンを表わし、R5 、R6 、R7 、R8
はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至30の直鎖状もしく
は分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換
もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒ
ドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン
基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ
基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキ
ルまたはアリール基であってもよい。
【0019】かかるNR5678 +で表わされる第
4級アンモニウムのカチオンとしては、例えばNH4 +
NH(CH33 +、NH(C653 +、NH(CH
32(CH2 OH)(CH2 −Z)+ 等の非置換また
はアルキル置換もしくはアリール置換型カチオンが用い
られる(但し、Zは化学式量が600以下の任意の置換
基を表し、例えば、フェノキシ基、p−ジフェニレンオ
キシ基、p−アルコキシジフェニレンオキシ基、p−ア
ルコキシフェニルアゾフェノキシ基等の置換基であ
る。)。またPR5678 +、AsR567
8 +で表わされるVb族元素の第4級カチオンとしては例
えばPH4 +、PH(CH33 +、PH(C653 +
AsH4 +、AsH(CH33 +、AsH(C653 +
等の非置換またはアルキル置換もしくはアリール置換型
カチオンが用いられる。特定カチオンに変換するため
に、通常のイオン交換樹脂を用いてもよい。
【0020】また、かかるR5 、R6 、R7 及びR8
ら選ばれる複数の置換基は、互いに任意の位置で結合し
て、該置換基により置換されている原子を含む飽和また
は不飽和の複素環を形成する二価基を少なくとも1つ以
上形成してもよい。R5 、R6 、R7 、R8 がアルキル
基の場合は、その鎖中には、カルボニル、エーテル、エ
ステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニ
ル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。前記二価
基の例としてはブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ブ
タジエニレン、置換ブタジエニレン、メチレンジオキシ
などが挙げられる。
【0021】一般式(II)、一般式(IV)および一
般式(VI)において、望ましいMの例としては、NR
5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチ
オン、Na+ 、Li+ またはK+ 等のアルカリ金属イオ
ンが挙げられ、、NR5678 +が特に望ましい。
【0022】また一般式(II)、一般式(IV)およ
び一般式(VI)において、R5 、R6 、R7 およびR
8 としては、それぞれ独立にHまたは炭素数1乃至30
の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が望ましい。
【0023】本発明において、R1 〜R8 及びMの記号
で表される原子団は互いに完全に独立である。すなわ
ち、異なる一般式における場合は勿論のこと、同一の一
般式において重複して用いられている場合も独立であ
る。例えば一般式(I)の繰り返し単位と一般式(II
I)の繰り返し単位を含む共重合体の場合でも、一般式
(I)におけるR1 がHであっても、一般式(III)
におけるR1 はHである必要はない。また、例えば化学
式(VI)においてSO3 -MのMがNH4 +であっても、
3 (=SO3 -Mの場合)のMがNH4 +である必要はな
い。
【0024】本発明に用いられる水溶性導電性高分子化
合物が共重合体の場合には、一般式(I)乃至(VI)
で示される化学構造以外の繰返し単位として、ビニレ
ン、チエニレン、ピロリレン、フェニレン、イミノフェ
ニレン、イソチアナフテニレン、フリレン、カルバゾリ
レンおよびこれらの置換誘導体構造があげられる。
【0025】係る共重合体においては、上記一般式
(I)乃至(VI)で示される化学構造以外の繰返し単
位(スルホン酸基を有しない繰り返し単位)は、共重合
体組成中のモル分率として0.95未満、即ち重合体の
全繰返し単位の95モル%未満であればよく、それ以上
の場合には重合体の共重合組成にもよるが、多くの場合
水溶性を示さなくなるなどの理由から本発明に係る水溶
性の導電性化合物として好ましくない。水溶性等の点
で、望ましい共重合体はかかるモル分率が0.90未満
のものであり、0.75未満のものがさらに望ましい。
【0026】本発明において、用いられる水溶性導電性
高分子化合物の分子量は、特に限定されないが、塗布等
の方法で膜を形成する工程を含むような方法で使用され
る場合には、2000以上であることが望ましく、また
塗布等の方法で膜を形成した後除去する工程を含むよう
な方法で使用される場合には、良好な除去性を有する分
子量であればよく、例えば百万程度以下であればよい。
分子量が2000未満の低分子の化合物であっては、塗
布等の方法で膜を好適に形成させることができないこと
があり、あるいは高分子自体の導電性も小さく好ましく
ないことがある。また、分子量が百万を越える高分子化
合物であっては、その溶解性あるいは除去性の面で問題
となることがある。
【0027】本発明の水溶性導電性高分子化合物を含む
水溶液において、前記水溶性導電性高分子化合物等の固
体成分の濃度には特に制限はない。固体成分より水の方
が重量比で多い場合としては、本発明の水溶性導電性高
分子化合物を含む水溶液を塗布等の方法で膜を形成して
使用する場合が挙げられ、その場合、固体成分の濃度は
0.001重量%以上50重量%未満の範囲が好適であ
り、望ましくは0.01〜20重量%、さらに望ましく
は0.1〜5重量%である。50重量%より濃度が高く
なると、均一な溶液が得られないことがある。一方、固
体成分より水の方が重量比で少ない場合としては、本発
明の水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液を、そのま
ま固体または湿潤状態で製造または使用する場合が挙げ
られ、その場合、水分の量は重量比で固体成分100に
対して100以下の範囲が好適であり、望ましくは50
以下、更に望ましくは25以下である。かかる重量比が
100より大きくなると、固体または湿潤状態としての
取り扱い上不都合をきたすことがある。
【0028】本発明の水溶性導電性高分子化合物を含む
水溶液は、上述の一般式(I)乃至(VI)で示される
化学構造の少なくとも一つを繰返し単位として含み且つ
主鎖がπ共役系二重結合を有する水溶性導電性高分子化
合物の他、少なくとも一種の界面活性剤、他の水溶性高
分子あるいは他の水溶性化合物を含んでもよい。これら
は本発明の水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液に制
限を与えるものではない。界面活性剤としては、例え
ば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオ
ン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面
活性剤等が挙げられる。かかる界面活性剤を用いる場合
には、該水溶性導電性高分子化合物に対して重量比で
0.001〜95倍量、望ましくは0.005〜20倍
量、更に望ましくは0.01〜5倍量用いる。界面活性
剤の量が0.001倍量未満であると、界面活性剤添加
の効果がなくなる場合がある。95倍量より多いと、良
好な電子伝導性が確保できない場合がある。水溶性高分
子としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、
セルロース系の親水性高分子、ポリアクリルアミドある
いはアクリルアミド共重合体、ポリアクリル酸、アクリ
ル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、あるいはこれ
らの誘導体等が挙げられる。この場合、該水溶性導電性
高分子化合物は良好な導電性の確保のために、他の水溶
性高分子に対して5重量%以上、望ましくは10重量%
以上、さらに望ましくは20重量%以上にする。
【0029】本発明の水溶性導電性高分子化合物を含む
水溶液は、前記一般式(I)および一般式(II)で示
される化学構造の含有比を変化させることにより、酸性
〜アルカリ性の間の任意のpHの値をとることが可能で
ある。前記一般式(I)で示される化学構造の含有比が
大きくなれば酸性が強くなり、一般式(II)で示され
る化学構造の含有比が大きくなればアルカリ性が強くな
る。同様に前記一般式(III)および一般式(I
V)、または一般式(V)および一般式(VI)におい
て同様に化学構造の含有比を変化させて、任意のpHの
値をとることも可能である。また上記導電性高分子化合
物を含む水溶液は、さらに酸やアルカリを添加してpH
の値を変化させることも可能である。
【0030】前述のように前記水溶性導電性高分子化合
物を含む水溶液は、常温で長期保存すると、溶液のpH
が低下し、また溶液で保存した後塗布等の方法で形成し
た膜の表面抵抗が上昇するという問題があった。本発明
者らの鋭意検討の結果、溶液のpHの低下は硫酸イオン
濃度の増加と対応し、膜の表面抵抗の上昇は、紫外可視
近赤外吸収スペクトルの変化と対応していることを発見
した(比較例1参照)。硫酸イオンの増加は前記水溶性
導電性高分子化合物の脱スルホン反応を示唆し、紫外可
視近赤外吸収スペクトルの変化はπ電子共役系の劣化
(酸化されすぎによるものと考えられる)を示唆してい
る。通常このような反応をおさえる方法としては冷蔵保
存等により保管温度を低下する方法が用いられるが、使
用上の大きな制約となり、常温保存が望まれているのは
前述の通りである。
【0031】本発明者らは鋭意検討の結果、前記水溶性
導電性高分子化合物を含み、実質的に酸素を含有しない
水溶液を用いることによって、常温でも上記の物性変化
を防止できることを発見し、本発明に至った。すなわち
本発明によれば、常温で保存した場合にも、塗布等の方
法で形成した膜の表面抵抗の上昇を防止できるだけでな
く、溶液のpHの低下を防止することができる。
【0032】前記水溶性導電性高分子化合物を含み、実
質的に酸素を含有しない水溶液は、前記水溶性導電性高
分子化合物を含む固体を酸素遮断雰囲気中で実質的に酸
素を含有しない水等に溶解させても得られるし、また前
記水溶性導電性高分子化合物を含み、実質的に酸素を含
有する水溶液に脱酸素処理を加えても得られる。
【0033】水等を脱酸素する方法としては、酸素遮断
雰囲気中(例えば不活性ガス中)で不活性ガスをバブリ
ングさせてもよく、また酸素遮断雰囲気中(例えば不活
性ガス中)で水等を撹拌するだけでも容易に脱酸素化で
きる。その他加熱脱気や真空脱気のような機械式脱気、
水素添加、還元剤添加や電気化学的脱気のような溶存酸
素除去法、膜式脱気などいかなる方法を用いてもよい
(参考文献としては表面実装技術誌、1993年8月
号、42頁が挙げられる)。このうちでは、操作性、導
電性高分子化合物に影響を与える不純物を含まないこと
及びコスト面などから酸素遮断雰囲気中(例えば不活性
ガス中)で水等を撹拌する方法および膜式脱気法が望ま
しい。通常の水は常温、大気下では5〜9ppmの酸素
を含んでいるが、上記脱酸素法により容易に0.01p
pm未満に下げることができる。本発明において用いら
れる実質的に酸素を含有しない水等は、通常溶存酸素濃
度が1ppm以下が好ましい。より大きな効果を期待す
る場合には、さらに0.1ppm以下がより望ましく、
またさらには0.01ppm未満が特に望ましい。実質
的に酸素を含有しない水等は、大気中に放置すると容易
に酸素が溶解し酸素濃度が上昇するので、酸素遮断雰囲
気中(例えば不活性ガス中)で保存する必要がある。
【0034】前記水溶性導電性高分子化合物を含み、実
質的に酸素を含有する水溶液に脱酸素処理を加える方法
としては、酸素遮断雰囲気中(例えば不活性ガス中)で
不活性ガスを水溶液中でバブリングさせる方法、酸素遮
断雰囲気中(例えば不活性ガス中)で水溶液を撹拌する
方法、限外濾過膜などを用いて溶媒の水を上記の方法で
得られた脱酸素水と置換する方法などが挙げられる。こ
のうち操作性、純度、コスト等の点から酸素遮断雰囲気
中(例えば不活性ガス中)で水溶液を撹拌する方法およ
び限外濾過膜などを用いて溶媒の水を上記の方法で得ら
れた脱酸素水と置換する方法が望ましいが、本発明はこ
れらの脱酸素方法に制約されるものではない。その他用
途に応じて水の場合と同様、加熱脱気や真空脱気のよう
な機械式脱気、水素添加、還元剤添加や電気化学的脱気
のような溶存酸素除去法を用いることも可能である。
【0035】前記水溶性導電性高分子化合物を含み、実
質的に酸素を含有しない水溶液を、酸素遮断状態で保存
する方法としては、例えば不活性ガス中のような酸素遮
断雰囲気中で保存する方法や、例えば延伸ポリビニルア
ルコールを含むフィルムやアルミニウム等の金属を蒸着
したフィルムなど酸素遮断フィルムでラップする方法が
挙げられる。前記水溶性導電性高分子化合物を含み、実
質的に酸素を含有しない水溶液も、実質的に酸素を含有
しない水等と同様に、大気中に放置すると容易に酸素が
溶解し酸素濃度が上昇する。この現象は密栓したポリプ
ロピレンボトル中に保管しておいても観測されるので、
上記のような酸素遮断対策が必要である。
【0036】前記水溶性導電性高分子化合物を含み、実
質的に酸素を含有しない水溶液は、塗布等の方法により
膜を形成し導電性被膜として使用することもできる。膜
を形成する塗布等の方法とは、具体的には、本発明の水
溶性導電性高分子化合物を含み、実質的に酸素を含有し
ない水溶液を物品に塗布する、あるいはその物品を該水
溶液にディッピング(浸漬する)、あるいは物品に吹き
つける等、物品や目的に応じて様々な方法が挙げられ
る。例えば物品上に塗布する際、塗布性等の被膜形成能
を改善するために、前記のように少なくとも一種の界面
活性剤を含む本発明の水溶液を用いることができる。
【0037】
【作用】前記導電性高分子化合物を含み、実質的に酸素
を含有しない水溶液は、水溶液状態で常温で放置して
も、硫酸イオン濃度の増加がみられず、従って溶液のp
Hが安定である。また同様に前記導電性高分子化合物を
含み、実質的に酸素を含有しない水溶液は、水溶液状態
で常温で放置しても、紫外可視近赤外吸収スペクトルに
変化がみられず、また塗布等の方法で形成した膜の表面
抵抗の上昇もなく安定である。さらに前記水溶性導電性
高分子化合物を含み、実質的に酸素を含有しない水溶液
を、酸素遮断状態で保存する方法により、酸素の侵入を
防ぎ水溶液状態での安定保存を可能とした。
【0038】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例を用いて
詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を制限
するものではない。本実施例および比較例に用いた水溶
性導電性高分子化合物を含む水溶液は、具体的には、 ;以下の式(Ia)
【化19】 で示される構造単位を繰返し単位として含み、該構造単
位以外の繰返し単位が1,3−イソチアナフテニレンで
ある共重合体を含む水溶液、 ;式(IIa)
【化20】 で示される構造単位を繰返し単位として含み、該構造単
位以外の繰返し単位が1,3−イソチアナフテニレンで
ある共重合体を含む水溶液、
【0039】;前記式(Ia)で示される構造単位を
繰返し単位とする単独重合体を含む水溶液、 ;前記式(IIa)で示される構造単位を繰返し単位
とする単独重合体を含む水溶液、 ;前記式(Ia)で示される構造単位を繰返し単位と
して含み、該構造単位以外の繰返し単位が前記式(II
a)で示される構造単位である共重合体を含む水溶液、
【0040】;式(IIb)
【化21】 で示される構造単位を繰返し単位として含み、該構造単
位以外の繰返し単位が5−デシルオキシ−1,3−イソ
チアナフテニレンである共重合体を含む水溶液、 ;式(IIIa)
【化22】 で示される重合体を含む水溶液、および;式(VI
a)
【化23】 で示される重合体を含む水溶液である。但し式中nは重
合度を表わす整数である。
【0041】上記水溶性導電性高分子化合物を含む水溶
液の製造方法を以下に示す。 ;(Ia)で示される構造単位を繰返し単位として含
み、該構造単位以外の繰返し単位が1,3−イソチアナ
フテニレンである共重合体の水溶性導電性高分子化合物
を含む水溶液を製造する方法 特開平6-49183 号公報に開示されている方法を参考に、
発煙硫酸(20% SO3 )1.5gを10℃に保持
し、1,3−ジヒドロイソチアナフテン825mgを撹
拌しながらゆっくりと加えた。放置して室温まで戻し1
時間撹拌を続けたところ、反応液は赤紫色を呈した。そ
の後、70℃に加熱すると反応液は濃紺色に変化し、3
0分後には固化した。反応混合物を100mlの0.1
N NaOH/メタノール中に投入し、沈降した重合物
を遠心分離した。重合物を水100mlに溶解し、透析
膜を通して不純物の硫酸ナトリウムを除去した。水溶液
から水を留去し、真空乾燥して濃青色共重合体430m
gを得た。
【0042】さらにこの共重合体200mgを水100
mlに溶解し、酸型のイオン交換樹脂(アンバーライト
IR−120B)でイオン交換処理することによって、
目的とする共重合体を含む水溶液を得た。中和滴定によ
ってスルホン酸基の定量を行ない、共重合体組成中にお
ける(Ia)で示される構造単位からなる繰返し単位の
モル分率を求めたところ、0.84(84モル%)であ
った。GPCにより分子量を測定すると、重量平均分子
量は15000であった。水を蒸発させ、乾燥して得ら
れた黒色共重合体の電気伝導度を四端子法で測定する
と、1S/cmであった。この黒色共重合体100mg
を水10mlに溶解して、(Ia)で示される構造単位
を繰返し単位として含み、該構造単位以外の繰返し単位
が1,3−イソチアナフテニレンである共重合体の水溶
性導電性高分子化合物を含む水溶液(pH=1.7)が
得られた。
【0043】;(IIa)で示される構造単位を繰返
し単位として含み、該構造単位以外の繰返し単位が1,
3−イソチアナフテニレンである共重合体の水溶性導電
性高分子化合物を含む水溶液を製造する方法 で得られた水溶液に、1N NH4 OH溶液4mlを
加えpH=9.4に調製した。この操作によりスルホン
酸基のH+ イオンはNH4 +イオンに容易に交換され、
(Ia)で示される構造単位は(IIa)で示される構
造単位に変換され、目的物の(IIa)で示される構造
単位を繰返し単位として含み、該構造単位以外の繰返し
単位が1,3−イソチアナフテニレンである共重合体の
水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液(pH=9.
4)が得られた。
【0044】;式(Ia)で示される構造単位を繰返
し単位とする単独重合体を含む水溶液を製造する方法 発煙硫酸(20% SO3 )4mlを20℃以下に保持
し、1,3−ジヒドロイソチアナフテン1.0gを撹拌
しながらゆっくりと加えた。放置して室温まで戻し4時
間撹拌を続けたところ、反応液は褐色を呈した。反応混
合物を氷水150mlに溶解し、塩化ナトリウム20g
を加え加温して均一に溶かし、ゆっくりと塩析させ、析
出物を遠心分離機により分離した。上澄液を除去後、真
空乾燥し、精製操作を経て、1,3−ジヒドロ−5−イ
ソチアナフテンスルホン酸ナトリウム(白色粉末)35
0mgを得た。
【0045】上記の方法に従い製造した、1,3−ジヒ
ドロ−5−イソチアナフテンスルホン酸ナトリウム2.
0gを塩化第二鉄10gと混合し、水4gを加えて撹拌
した。1時間後に得られた黒色の反応混合物を、水20
0ml、およびアセトン200mlでよく洗い、乾燥し
て0.9gの黒色粉末を得た。この黒色粉末を50ml
の0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解し、沈殿
物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換す
ることによって、目的とする単独重合体を含む水溶液
(pH=2.0)を得た。前述の方法と同様の方法で測
定した、重合体の式(Ia)で示される構造単位からな
る繰返し単位のモル分率は1.00(100モル%)、
重量平均分子量は12000、電気伝導度は2S/cm
であった。
【0046】;式(IIa)で示される構造単位を繰
返し単位とする単独重合体を含む水溶液を製造する方法 上記の製造で得られた水溶液に1N NH4 OH水溶
液を加え、pH=9.0に調製した。この操作によりス
ルホン酸基のH+ イオンはNH4 +イオンに容易に交換さ
れ、(Ia)で示される構造単位は(IIa)で示され
る構造単位に変換され、目的物の(IIa)で示される
構造単位を繰返し単位として含み、該構造単位以外の繰
返し単位がイソチアナフテニレンである共重合体の水溶
性導電性高分子化合物を含む水溶液(pH=9.0)が
得られた。
【0047】;式(Ia)で示される構造単位を繰返
し単位として含み、該構造単位以外の繰返し単位が前記
式(IIa)で示される構造単位である共重合体を含む
水溶液を製造する方法 上記の製造で得られた水溶液に1N NH4 OH水溶
液を加え、pHを5.0に調製した。この操作によりス
ルホン酸基のH+ イオンの一部はNH4 +イオンに容易に
交換される。これにより(Ia)で示される構造単位の
一部は(IIa)で示される構造単位に変換され、目的
物の水溶液(pH=5.0)が得られた。
【0048】;(IIb)で示される構造単位を繰返
し単位として含み、該構造単位以外の繰返し単位が5−
デシルオキシ−1,3−イソチアナフテニレンである共
重合体の水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液を製造
する方法 特開平6-49183 号公報に開示されている方法を参考にポ
リ(5−デシルオキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフ
テニレン)500mgを撹拌しながら、発煙硫酸(20
% SO3 )4mlをゆっくりと加えて80℃に加熱す
ると、反応液は濃青色を呈した。反応混合物200mg
を約500mlの水に溶解し、塩酸でpHを1.9に調
製し限外瀘過によって精製、濃縮した後、溶媒留去、真
空乾燥により黒色共重合体150mgを得た。また中和
滴定によってスルホン酸基の定量を行ない、共重合体組
成中における(IIb)の繰返し単位のモル分率を求め
たところ51モル%であった。GPCにより分子量を測
定すると、重量平均分子量は8000であった。さらに
この共重合体を含む水溶液をトリメチルアミンで中和し
pH=9.5に調製して目的物の水溶液を得た。
【0049】;(IIIa)で示される水溶性導電性
高分子化合物は、特開平6-145386号公報に開示されてい
る方法を用いて製造した。 ;(VIa)で示される水溶性導電性高分子化合物
は、特開平4-349614号公報に開示されている方法を用い
て製造した。
【0050】(比較例1)で得られた、(Ia)で示
される構造単位を繰返し単位とする単独重合体を含む水
溶液(pH=2.0)、で得られた、(IIa)で示
される構造単位を繰返し単位とする単独重合体を含む水
溶液(pH=9.0)、及びで得られた、(Ia)で
示される構造単位を繰返し単位として含み、該構造単位
以外の繰返し単位が前記式(IIa)で示される構造単
位である共重合体を含む水溶液(pH=5.0)を用い
て、水溶液状態のまま常温で放置しながら、重合体を含
む水溶液の経時変化をそのpH(図1)、その塗布膜の
表面抵抗(図2)、及びその水溶液の硫酸イオン濃度
(図3)を測定することにより調べ、さらに製造直後及
び3ヶ月後の水溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトル
(図4)を調べた。
【0051】水溶液のpHは、ガラス電極式水素イオン
濃度計pH METER F−13((株)堀場製作所
製)にて測定した。水溶液の硫酸イオン濃度は、イオン
クロマトグラフィー DIONEX QIC(分離カラ
ムAS−4A)(DIONEX Corporatio
n製)にて測定した。水溶液の紫外可視近赤外吸収スペ
クトルは、水溶液0.5mlに対してヒドラジン一水和
物1mlを加え、純水で100mlに希釈して、自記分
光光度計U−3500型((株)日立製作所製)にて測
定した。
【0052】また塗布膜の表面抵抗は、スピンナーIH
−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、
水溶液をガラス基板に1500rpmで回転塗布し、膜
厚0.02μmの導電性被膜を作製し、この塗布膜の表
面抵抗を表面抵抗測定器メガレスタMODEL HT−
301(シシド静電気(株)製)にて測定した値であ
る。
【0053】図1、2から明らかなようにで得られた
pH=2.0の水溶液、で得られたpH=9.0の水
溶液及びで得られたpH=5.0の水溶液のいずれも
が、常温で水溶液状態で放置すると、pHが低下し、表
面抵抗が上昇した。この変化は、例えば特開平4-32848
号公報に記載のように、荷電粒子線を照射する工程にお
いて帯電現象を防止する目的で使われる場合には極めて
影響が大きい。電子材料1990年12月p.48−5
4によれば、こうした帯電現象を防止するには表面抵抗
が5×107 Ω/□以下であることが求められているの
で、pH=9.0およびpH=5.0の水溶液は1ヵ月
常温放置後にはその効果がなくなることがわかる。pH
=2.0のものも2カ月常温放置後には、上限に近づい
ている。また図3および、図4〜6から明らかなよう
に、これらの変化は水溶液の硫酸イオン濃度の上昇や、
水溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトルの変化に対応し
ていることがわかった。
【0054】(実施例1)比較例1で用いた、で得ら
れた、(Ia)で示される構造単位を繰返し単位とする
単独重合体を含む水溶液(pH=2.0)、で得られ
た、(IIa)で示される構造単位を繰返し単位とする
単独重合体を含む水溶液(pH=9.0)、及びで得
られた、(Ia)で示される構造単位を繰返し単位とし
て含み、該構造単位以外の繰返し単位が前記式(II
a)で示される構造単位である共重合体を含む水溶液
(pH=5.0)を各々窒素雰囲気に保ったグローブバ
ッグ中に置き、窒素ガスを30分間各水溶液中に吹込ん
でバブリングして脱酸素処理を加えた。この操作により
水溶液中の酸素濃度は5.12ppmから0.01pp
m未満に低下した。なお酸素濃度は、パーソナル溶存酸
素メータ90Series TOX−90i((株)東
興化学研究所製)にて測定した。
【0055】これらの実質的に酸素を含有しない水溶液
を、窒素雰囲気のままグローブボックス中で(脱酸素状
態で)常温で放置し、比較例1と同様に、重合体を含む
水溶液の経時変化をそのpH(図1)、その塗布膜の表
面抵抗(図2)、及びその水溶液の硫酸イオン濃度(図
3)を測定することにより調べ、さらに製造直後及び3
ヶ月後の水溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトル(図4
〜6)を調べた。水溶液中の酸素濃度は測定期間中0.
01ppm未満を保っていた。
【0056】図1〜6から明らかなように、比較例1で
観測された物性の変化は、脱酸素された水溶液では大幅
に抑えられていることがわかる。水溶液を脱酸素するこ
とによって、塗布膜の表面抵抗及び水溶液の紫外可視近
赤外吸収スペクトルの変化の抑制のみならず、水溶液の
pH及び硫酸イオン濃度の変化までも抑える効果が観測
されたことは特筆に値する。
【0057】(実施例2)で得られた、式(Ia)で
示される構造単位を繰返し単位として含み、該構造単位
以外の繰返し単位が1,3−イソチアナフテニレンであ
る共重合体を含む水溶液(pH=1.7)及びで得ら
れた、式(IIa)で示される構造単位を繰返し単位と
して含み、該構造単位以外の繰返し単位が1,3−イソ
チアナフテニレンである共重合体を含む水溶液(pH=
9.4)を窒素雰囲気に保ったグローブバッグ中に置
き、各溶液を撹拌することによって脱酸素処理を加え
た。この操作による水溶液中の酸素濃度の変化は図7の
通りであり、撹拌30分後には酸素濃度は0.01pp
m未満に低下した。
【0058】これらの実質的に酸素を含有しない水溶液
を、延伸ポリビニルアルコールを含む酸素遮断フィルム
(延伸ポリプロピレン20μm/延伸ポリビニルアルコ
ール(大倉工業製エバールXL)12μm/ポリエチレ
ン75μm)でラップして常温で放置し、実施例1と同
様の方法で、水溶液のpH、及び塗布膜の表面抵抗の経
時変化を調べた。酸素濃度は3ヵ月後も0.01ppm
未満であった。脱酸素処理を加えなかった場合と比較し
ながら、以下の表にまとめる。
【0059】 製造直後 脱酸素処理3ヵ月後 脱酸素なし3ヵ月後 表面抵抗(Ω/□) 1×106 2×106 5×107 pH 1.7 1.7 1.8 表面抵抗(Ω/□) 1×107 2×107 5×109 pH 9.4 8.0 3.5
【0060】(比較例2)実施例2と全く同様に、及
びで得られた水溶液に脱酸素処理を加えた。脱酸素さ
れた水溶液をポリプロピレン容器に密閉し、大気中で常
温で放置した。3ヵ月後には酸素濃度は5.40ppm
に達していた。また同様に水溶液のpH、及び塗布膜の
表面抵抗の経時変化を調べたところ、実施例2の脱酸素
なしの場合と同様の結果が得られた。
【0061】(実施例3)で得られた、式(IIb)
で示される構造単位を繰返し単位として含み、該構造単
位以外の繰返し単位が5−デシルオキシ−1,3−イソ
チアナフテニレンである共重合体を含む水溶液、で得
られた、式(IIIa)で示される重合体を含む水溶
液、およびで得られた、式(VIa)で示される重合
体を含む水溶液を各々脱気装置DOR、LDOシステム
(三浦工業(株)製)を用いて製造した脱酸素水による
希釈、限外濾過膜による濃縮を繰返すことによって、脱
酸素水と置換して、脱酸素処理した。酸素濃度は0.0
1ppm未満であった。
【0062】これらの実質的に酸素を含有しない水溶液
を、アルミ箔を含む酸素遮断フィルム(ポリエステル1
2μm/アルミ箔7μm/ポリエチレン40μm)でラ
ップして常温で放置し、実施例2と同様の方法で、水溶
液のpH、及び塗布膜の表面抵抗の経時変化を調べた。
酸素濃度は3ヵ月後も0.01ppm未満であった。実
施例2と同様に脱酸素処理を加えなかった場合と比較し
ながら、以下の表にまとめる。
【0063】 製造直後 脱酸素処理3ヵ月後 脱酸素なし3ヵ月後 表面抵抗(Ω/□) 3×107 4×107 1×1010 pH 9.5 7.8 3.0 表面抵抗(Ω/□) 3×106 6×106 1×108 pH 1.7 1.7 1.8 表面抵抗(Ω/□) 2×107 3×107 5×109 pH 8.0 7.5 3.2
【0064】
【発明の効果】以上説明したごとく、本発明の前記導電
性高分子化合物を含み、実質的に酸素を含有しない水溶
液は、常温で放置しても、溶液のpH、塗布等の方法で
形成した膜の導電性の低下がみられず安定である。さら
に前記水溶性導電性高分子化合物を含み、実質的に酸素
を含有しない水溶液を、酸素遮断状態で保存する方法に
より、水溶液状態での冷蔵庫保管は必要としなくなっ
た。この安定な水溶液は、単体あるいは複合体として塗
布等の方法で高い導電性ある重合体として加工あるいは
薄膜化することができ、そのため精密な加工の要求され
る電極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形
光学素子、帯電防止剤など各種導電材料あるいは光学材
料として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】重合体を含む水溶液のpHの経時変化。
【図2】塗布膜の表面抵抗により表された重合体を含む
水溶液の経時変化。
【図3】重合体を含む水溶液の硫酸イオン濃度の経時変
化。
【図4】で得られた水溶液の製造直後及び3ヶ月後の
紫外可視近赤外吸収スペクトル。
【図5】で得られた水溶液の製造直後及び3ヶ月後の
紫外可視近赤外吸収スペクトル。
【図6】で得られた水溶液の製造直後及び3ヶ月後の
紫外可視近赤外吸収スペクトル。
【図7】脱酸素処理による水溶液中の酸素濃度の変化。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 池ノ上 芳章 千葉県千葉市緑区大野台1丁目1番1号 昭和電工株式会社総合研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I) 【化1】 一般式(II) 【化2】 一般式(III) 【化3】 一般式(IV) 【化4】 一般式(V) 【化5】 および一般式(VI) 【化6】 (式中、R1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立に
    H、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和も
    しくは不飽和アルキル、アルコキシまたはアルキルエス
    テル基、ハロゲン、SO3 -M(但しR1 またはR2 の場
    合にはMはH+ を表わす。)、ニトロ基、シアノ基、1
    級、2級または3級アミノ基、トリハロメチル基、フェ
    ニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価
    基を表わす。MはNR5678 +で表わされる第4
    級アンモニウムのカチオン、PR5678 +、As
    5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチ
    オン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属
    イオンを表わし、R5 、R6、R7 、R8 はそれぞれ独
    立にH、または炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐
    状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしく
    は非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキ
    シル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ
    基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごと
    き炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキルまたは
    アリール基であってもよい。R1 とR2、またはR3
    4 、あるいはR5 、R6 、R7 及びR8 から選ばれる
    複数の置換基は、互いに任意の位置で結合して、該置換
    基により置換されている原子を含む飽和または不飽和の
    環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成し
    てもよい。R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R
    7 、R8 がアルキル基の場合、またはR1 、R2 、R
    3 、R4 がアルコキシ基もしくはアルキルエステル基の
    場合は、その鎖中には、カルボニル、エーテル、エステ
    ル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、
    イミノなどの結合を任意に含んでもよい。)で示される
    化学構造の少なくとも一つを繰返し単位として含み且つ
    主鎖がπ共役系二重結合を有する水溶性導電性高分子化
    合物を含み、実質的に酸素を含有しない水溶液。
  2. 【請求項2】 溶存酸素濃度が1ppm以下である請求
    項1記載の水溶液。
  3. 【請求項3】 一般式(I) 【化7】 一般式(II) 【化8】 一般式(III) 【化9】 一般式(IV) 【化10】 一般式(V) 【化11】 および一般式(VI) 【化12】 (式中、R1 、R2 、R3 、R4 およびMは請求項1と
    同じである。)で示される化学構造の少なくとも一つを
    繰返し単位として含み且つ主鎖がπ共役系二重結合を有
    する水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液に、脱酸素
    処理を加えることを特徴とする実質的に酸素を含有しな
    い導電性高分子化合物水溶液の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1もしくは2記載の水溶液を、酸
    素遮断状態で保存することを特徴とする導電性高分子化
    合物水溶液の保存方法。
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