JP3957231B2 - 導電性ミクロゲル分散体、及びその製造方法 - Google Patents

導電性ミクロゲル分散体、及びその製造方法 Download PDF

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  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温で長期保存しても極めて安定な自己ドープ型の導電性高分子のミクロゲルを含む導電性ミクロゲル分散体およびその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、電気、電子工業の分野において、加工的要求度が高い電極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形光学素子、光電変換素子、帯電防止剤ほか、各種導電材料あるいは光学材料として用いるのに適した安定な自己ドープ型導電性高分子のミクロゲル分散体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
π電子共役系の発達した重合体は、導電性のみならず金属/半導体転移における状態変化などの特異な物性のために工業的に注目され、多くの研究がなされてきた。特にポリアセチレンやポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン等の多くの導電性高分子は、剛直な主鎖骨格のため不溶不融である(Skotheim著、"Handbook of Conducting Polymers" 誌、Mercer Dekker 社発行、1986年)が、その側鎖にアルキル基等の置換基を導入した重合体は可溶性となり、その易加工性のため工業的に注目されてきている。
具体的な例としては、ポリチオフェン環の側鎖に長鎖アルキル基を導入して有機溶媒に可溶とした重合体(K.Jen ら、Journal of Chemical Society, Chemical Communication 誌、1346頁、1986年)や、スルホアルキル基を導入した水溶性の重合体(A.O.Patil ら、Journal of American Chemical Society誌、109 巻、1858頁、1987年)などが知られている。
【0003】
後者の例は水溶性の自己ドープ型ポリマーとして知られ、一般にはブレンステッド酸基がπ電子共役系ポリマーの主鎖に直接、またはスペーサーを介して間接的に共有結合されており、外来ドーパントの寄与なしに導電状態を示す点でも注目されてきた。このような例の報告としては他にも、E.E.Havinga らのポリチオフェン誘導体(Polymer Bulletin誌、18巻、277 頁、1987年)、Aldissi のポリチオフェン誘導体やポリピロール誘導体(米国特許4,880,508 号)、ポリアニリン芳香環に置換基としてカルボキシル基を共有結合させた重合体(特表平1-500835号)、ピロールのN位にスルホプロピル基が置換した重合体(Journal of Chemical Society, Chemical Communication 誌、621 頁、1987年)、N位にスルホプロピル基が置換したポリアニリン重合体(Journal of Chemical Society, Chemical Communication 誌、180 頁、1990年、および Synthetic Metal 誌、31巻、369 頁、1989年)、芳香環に直接スルホン酸基が置換したポリアニリン誘導体(Journal of American Chemical Society誌、112 巻、2800頁、1990年)、スルホン酸基を置換したイソチアナフテン重合体(特開平6 −49183 号および特開平7 −48436 号)などが製造法とともに開示されている。これらは水溶性であること、外来ドーパントの寄与なしに良好な導電状態を示すこと、容易に薄膜化できることなどから工業的に多くの利点があるが、溶液中における保存安定性の点でまだ改善の余地が残されている。
【0004】
水分散液の製造方法としては、ポリピロール類分散体の製造方法が特公平7−78116号に開示されている。その他の例としては、特開昭62−64862号、特開平2−240139号等にポリアニリン系水分散体の製造法が開示され、また、特開平2−258832号および特開平2−258833号には、成形性能の優れた安定なイソチアナフテン系化合物の水分散液の製造方法が開示されている。しかしながら、そこで開示されている高分子は何れも本質的に水不溶性の導電性高分子と外来ドーパントとなる界面活性剤との複合系であるため、ポリマー表面の湿潤性(親水性)に問題があった。
これらの問題点を解決するため、親水性が高く、かつ、ドープ状態の安定な水分散系ポリマーが望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、湿潤性(親水性)の高い表面を有する導電性ミクロゲルを提供することにある。さらには、自己ドープ型導電性高分子もしくはイソチアナフテン骨格をもった自己ドープ型ポリマーを含む、常温放置において安定性に優れた導電性ミクロゲル分散体およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、下記一般式(1)
【化4】
Figure 0003957231
で示される化学構造を有する自己ドープ型導電性高分子が0.05μm〜0.5μmのサイズのミクロゲルを形成することを発見し、溶媒中でミクロゲルの分散状態となることにより、自己ドープ特性を損なうことなく溶媒中での安定性が著しく向上することを見いだし本発明に至った。
さらに、前記ミクロゲル分散系における自己ドープ状態の安定性が分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子の構造体においても特有に存在できることを見い出し本発明に至った。
【0007】
すなわち本発明は以下のものを提供するものである。
[1] 分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子のミクロゲルを含むことを特徴とする導電性ミクロゲル分散体。
[2] 分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子のミクロゲルサイズが0.05μm〜0.5μmである前記[1]記載の導電性ミクロゲル分散体。
[3] 自己ドープ型導電性高分子がドーパント能をもつブレンステッド酸基を有するモノマーユニットと該基を有しないモノマーユニットからなる共重合体であり、該基を有しないモノマーユニットのモル分率が0.01以上0.5以下であることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の導電性ミクロゲル分散体。
【0008】
[4] 自己ドープ型導電性高分子が、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−CO−イソチアナフテン)、ポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)、ポリ(ピロール−3−アルカンスルホン酸−co−ピロール)、ポリ(ピロール−N−アルカンスルホン酸−co−ピロール)、ポリ(アニリンスルホン酸−co−アニリン)、ポリ(アニリン−N−アルカンスルホン酸−co−アニリン)、ポリ(カルバゾール−N−アルカンスルホン酸−co−カルバゾール)、ポリ(フェニレン−オキシアルキレンスルホン酸−co−フェニレン)、ポリ(チオフェン−3−アルキルカルボン酸−co−チオフェン)、またはこれらの各種塩構造体および置換誘導体であることを特徴とする前記[3]に記載の導電性ミクロゲル分散体。
【0009】
[5] 一般式(1)
【化5】
Figure 0003957231
[式中、R1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価の置換基を表わす。R3 だけは上記の他にSO3 -Mであってもよい。隣合うR1 とR2 もしくはR3 とR4 は、互いにそれぞれの置換基内の任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている炭素原子を含む飽和または不飽和の環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。R1 、R2 、R3 およびR4 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。mは共重合体中のモノマーユニットのモル分率を表す少数であり、0.01≦m≦0. 5を満たす少数である。MはH+ 、NR5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、PR5678 +もしくはAsR5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチオン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンを表わし、R5 、R6 、R7 、R8 はそれぞれ独立にH、または炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキル基またはアリール基であってもよい。]
で示される化学構造を有する自己ドープ型導電性高分子を含むことを特徴とする前記[1]または[2]記載の導電性ミクロゲル分散体。
【0010】
[6] 一般式(1)におけるR2 および/またはR4 がHであることを特徴とする前記[5]記載の導電性ミクロゲル分散体。
[7] 一般式(1)で示される化学構造を有する自己ドープ型導電性高分子を含む0.1μm〜0.2μmのサイズのミクロゲルを0.1〜95%の存在率で含むことを特徴とする前記[5]または[6]記載の導電性ミクロゲル分散体。
【0011】
[8] 一般式(2)
【化6】
Figure 0003957231
[式中、R1 とR2 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価の置換基を表わす。隣合うR1 とR2 は、互いにそれぞれの置換基内の任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている炭素原子を含む飽和または不飽和の環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。隣合うR1 とR2 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。]
で示される化合物と下記一般式(3)
【化7】
Figure 0003957231
[式中、R3 とR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価の置換基を表わす。R3 だけは更にSO3 -Mであってもよい。隣合うR3 とR4 は、互いにそれぞれの置換基内の任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている原子を含む飽和または不飽和の環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。R3 とR4 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。MはH+ 、NR5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、PR5678 +もしくはAsR5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチオン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンを表わし、R5 、R6 、R7 、R8 はそれぞれ独立にH、または炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキル基またはアリール基であってもよい。]
で示される化合物との酸化重合において、一般式(2)で示される化合物の仕込モル分率を1〜50モル%とすることを特徴とする前記[5]記載の導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
【0012】
以下本発明について詳細に説明する。
分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子分散体として、安定なミクロゲル分散体を形成するポリマーとしては、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)、ポリ(ピロール−3−アルカンスルホン酸−co−ピロール)、ポリ(ピロール−N−アルカンスルホン酸−co−ピロール)、ポリ(アニリンスルホン酸−co−アニリン)、ポリ(アニリン−N−アルカンスルホン酸−co−アニリン)、ポリ(カルバゾール−N−アルカンスルホン酸−co−カルバゾール)、ポリ(フェニレン−オキシアルキレンスルホン酸−co−フェニレン)、ポリ(チオフェン−3−アルキルカルボン酸−co−チオフェン)およびこれら高分子体の各種塩構造体および置換誘導体が挙げられる。但し、該ポリマーはブレンステッド酸基を有するπ電子共役系導電性高分子であれば良く、化学構造には特に制限されない。該ポリマーの一例として前記一般式(1)で示される化学構造を有する導電性高分子が挙げられる。
【0013】
一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、クロロメチル等のトリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群の一価の置換基から選ばれる。なお、R3 は更にSO3 -Mであってもよい。
【0014】
ここで、R1 、R2 、R3 およびR4 として特に有用な例としては、H(水素)、アルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、フェニルおよび置換フェニル基、スルホン酸基が挙げられる。これらの置換基を更に詳しく例示すれば、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、アリール、イソプロピル、ブチル、1−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エトキシエチル、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、アセトニル、フェナシル等、アルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ等、アルキルエステル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ、ブチロイルオキシ等のアシルオキシ基、置換フェニル基としてはフロロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0015】
なお、上記のR1 、R2 、R3 およびR4 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノ結合を任意に含有してもよい。また、隣合うR1 とR2 もしくはR3 とR4 は互いに任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている炭素原子を含む飽和または不飽和の環状構造(例えば炭化水素)または複素環を形成する二価基を形成してもよく、かかる二価基の例としてはブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ブタジエニレン、置換ブタジエニレン、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなどが挙げられる。
【0016】
一般式(1)におけるR1 、R2 、R3 およびR4 として望ましいのは、H、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルコキシ基であり、また、Hまたは炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が特に望ましい。
【0017】
一般式(1)において、MはH+ 、NR5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、PR5678 +もしくはAsR5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチオン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンを表わし、R5 、R6 、R7 、R8 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキルまたはアリール基であってもよい。
【0018】
かかるNR5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオンとしては、例えばNH4 +、NH(CH33 +、NH(C653 +、N(CH32 (CH2 OH)(CH2 −Z)+ 等の非置換またはアルキル置換もしくはアリール置換型カチオンが用いられる(但し、Zは化学式量が600以下の任意の置換基を表し、例えば、フェノキシ基、p−ジフェニレンオキシ基、p−アルコキシジフェニレンオキシ基、p−アルコキシフェニルアゾフェノキシ基等の置換基である。)。またPR5678 +もしくはAsR5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチオンとしては例えばPH4 +、PH(CH33 +、PH(C653 +、AsH4 +、AsH(CH33 +、AsH(C653 +等の非置換またはアルキル置換もしくはアリール置換型カチオンが用いられる。特定カチオンに変換するために、通常のイオン交換樹脂を用いてもよい。
【0019】
また、かかるR5 、R6 、R7 、R8 から選ばれる複数の置換基は、互いに任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている原子を含む飽和または不飽和の複素環を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。R5 、R6 、R7 およびR8 のアルキル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。前記二価基の例としてはブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ブタジエニレン、置換ブタジエニレン、メチレンジオキシ、エチレンジオキシなどが挙げられる。
【0020】
一般式(1)におけるMの望ましい例としては、H+ 、NR5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、Na+ 、Li+ またはK+ 等のアルカリ金属イオンが挙げられ、H+ 、NR5678 +が特に望ましい。
また一般式(1)における、R5 、R6 、R7 、R8 としては、それぞれ独立にHまたは炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が望ましい。
【0021】
本発明にかかわる前記一般式(1)で示される化学構造を有する自己ドープ型導電性高分子を含む導電性ミクロゲル分散体は、下記一般式(2)
【化8】
Figure 0003957231
[式中、R1 とR2 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価の置換基を表わす。隣合うR1 とR2 は、互いにそれぞれの置換基内の任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている炭素原子を含む飽和または不飽和の環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。R1 とR2 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。]
で表される化合物及び下記一般式(3)
【化9】
Figure 0003957231
[式中、R3 とR4 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価の置換基を表わす。R3 だけは更にSO3 -Mであってもよい。隣合うR3 とR4 は、互いにそれぞれの置換基内の任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている原子を含む飽和または不飽和の環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。R3 とR4 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。MはH+ 、NR5678 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、PR5678 +もしくはAsR5678 +で表わされるVb族元素の第4級カチオン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンを表わし、R5 、R6 、R7 、R8 はそれぞれ独立にH、または炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキル基またはアリール基であってもよい。]
で表される化合物、および酸化剤とを混合することによって製造できる。
【0022】
本発明にかかわる一般式(2)の化合物の具体例を示せば、1,3−ジヒドロイソチアナフテン,5−メチル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−エチル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−プロピル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−イソプロピル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−イソプロピレン−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−ヘキシル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−デシル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−フェニル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−トリフルオロメチル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−クロロ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−フルオロ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−シアノ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン,5−アミノカルボニル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−メトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−エトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−デシルオキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、4,5−メチレンジオキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、4,5−エチレンジオキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン等が挙げられる。
【0023】
一方、本発明にかかわる一般式(3)の化合物の具体例を示せば、特開平8ー3156号に記載の1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸、6−メチル−1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸、4,7−ジメトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸、6−メトキシカルボニル1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸等およびそのナトリウム塩や4級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0024】
一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物の混合比は、所望の0.05〜0.5μmのミクロゲルの含有率によって異なるために一概に規定できないが、一般式(2)で表される化合物のモル百分率において1モル%から50モル%の範囲内にあれば良い。更に望ましくは5モル%〜30モル%が好ましい。本発明に係わる自己ドープ型導電性高分子を含む分散体の安定性は、0.1〜0.2μmサイズのミクロゲル含有率が増加することによって、ミクロゲルの凝集状態における安定性およびπ電子共役構造の空気酸化に対する安定性が向上する。さらには、一般式(2)により表される化合物の仕込モル百分率を増加させることによっても向上するが、一般式(2)により表される化合物の仕込モル百分率が50モル%を越えるとミクロゲルの水分散性または溶解性が著しく低下し、もはや分散媒体に溶解しなくなるために好ましくない。
【0025】
本発明にかかわる酸化剤は、酸化性を有する遷移金属ハロゲン化物が好ましく、異なる遷移金属ハロゲン化物を併用してもよい。あるいは、遷移金属ハロゲン化物以外の酸化剤を単独に使用するか、もしくは遷移金属ハロゲン化物と併用することもできる。遷移金属ハロゲン化物としてより具体的には、塩化第二鉄、塩化モリブデンおよび塩化ルテニウム、塩化第二銅、硫酸第二鉄、硫酸第二銅等が挙げられる。遷移金属ハロゲン化物以外の酸化剤としてより具体的には、硫酸、三酸化硫黄、クロルスルホン酸等が挙げられる。
【0026】
本発明のミクロゲル分散体に用いられる高分子の製造に用いられる溶媒は、モノマーを溶解する溶媒であれば特に限定されるものではなく、各々のモノマーを溶解する異なる溶媒の混合溶媒を用いても良い。例えばより具体的には、水、1,4−ジオキサンやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコ−ル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、硫酸等の鉱酸、酢酸などの有機酸等が挙げられ、更にそれらの混合溶媒を用いることもできる。
【0027】
本発明のミクロゲル分散体に用いられる高分子の製造法に係わる反応温度は、一般式(2)および一般式(3)により表される化合物などのモノマーの化学構造等によって異なるため一概に規定できないが、一般には−80℃から250℃の温度範囲で行われることが望ましく、特に−30℃から150℃の温度範囲で行われることがさらに望ましい。反応時間は、反応方法および反応温度、反応圧力あるいは一般式(2)および一般式(3)により表される化合物などのモノマーの化学構造等によって異なるので一概には規定できないが、通常は0.01時間から240時間が望ましい。反応圧力は常圧で行われることが好ましいが、10-5気圧以上100気圧以下で行うことができる。反応にかかわる化合物および酸化剤の濃度は、溶媒にそれぞれが溶解していればよく、0.01グラム/リットルから100グラム/リットルの範囲で行われることが望ましく、特に1グラム/リットルから10グラム/リットルがより望ましい。
【0028】
本発明の自己ドープ型導電性高分子を含むミクロゲル分散媒体としては、自己ドープ型導電性高分子を分散させ得る溶媒であれば特に限定されるものではないが、より具体的には水、1,4−ジオキサンやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコ−ル類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、硫酸等の鉱酸、酢酸などの有機酸等が挙げられる。
【0029】
本発明の自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体は、前記自己ドープ型導電性高分子化合物の他、少なくとも一種の界面活性剤を含んでもよい。これらは本発明の自己ドープ型導電性高分子化合物を含む水溶液に制限を与えるものではない。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。かかる界面活性剤を用いる場合には、該自己ドープ型導電性高分子化合物に対して重量比で0.001〜95倍量、望ましくは0.005〜20倍量、更に望ましくは0.01〜5倍量用いる。界面活性剤の量が0.001倍量未満であると、界面活性剤添加の効果がなくなる場合がある。95倍量より多いと良好な電子伝導性が確保できない場合がある。
【0030】
本発明の自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体は、前記一般式(1)で示される化学構造のMを変化させることにより、酸性からアルカリ性の間の任意のpHの値をとることが可能であり、単一のミクロゲル分散体中において二種以上のMを混在させることも可能である。より具体的には、Mがプロトンとアルカリ金属イオンやプロトンと第4級アンモニウムイオン等が挙げられる。また、前記自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体は、さらに酸やアルカリを添加して所望のpHに変化させることも可能である。
【0031】
前記、自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体は、塗布等の方法により導電性被膜として使用することもできる。膜を形成する塗布等の方法とは、具体的には、本発明の自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体を物品に塗布する、または物品に吹きつける、あるいはその物品を該水溶液にディッピングする(浸漬する)等、物品や仕様目的に応じて様々な方法が挙げられる。例えば物品上に塗布する際、塗布性等の被膜形成を改善するために、前記のように少なくとも一種の界面活性剤を含む本発明のミクロゲル分散体を用いることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
実施例、比較例における各種測定は以下のように行った。
水溶液のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計pH METER F−13((株)堀場製作所製)にて測定した。水溶液の硫酸イオン濃度は、イオンクロマトグラフィー DIONEX QIC(分離カラムAS−4A)(DIONEX Corporation製)にて測定した。水溶液の紫外可視近赤外吸収スペクトルは、水溶液0.5mlに対してヒドラジン一水和物1mlを加え、純水で100mlに希釈して、自記分光光度計U−3500型((株)日立製作所製)にて測定した。
また塗布膜の表面抵抗は、スピンナー 1H−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、水溶液をガラス基板に1500rpmで回転塗布し、膜厚0.02μmの導電性被膜を作製し、この塗布膜の表面抵抗を表面抵抗測定器メガレスタMODEL HT−301(シシド静電気(株)製)にて測定した値である。
【0033】
[実施例1]
前記一般式(1)におけるR1 、R2 、R3 、およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.35、MがH+ で表される自己ドープ型導電性高分子化合物を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
特開平8−3156号に開示されている方法に従い製造した、1,3−ジヒドロ−5−イソチアナフテンスルホン酸ナトリウム1.4gと塩化第二鉄8.0gとの混合物中に、水1. 0g、1,4−ジオキサン2.0gおよび1,3−ジヒドロイソチアナフテン0. 34gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水200ml、およびアセトン40mlでよく洗い、乾燥して1.7gの黒色粉末を得た。この黒色粉末を100mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解し、沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。このミクロゲル分散体の導電性高分子水溶液を蒸発乾固し、得られたポリマー固体を分取、そして中和滴定により共重合体の一般式(1)中のスルホン酸置換した構造単位のモル分率を求めた。その結果、0.65(65モル%)であった。さらに、他の物性として重量平均分子量は7700、電気伝導度は2S/cmであった。ミクロゲル分散体を0.1μmと0.2μmの孔径を有するメンブランフィルタ−で各々濾過することで、0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところ、その含有率は73%であった。
【0034】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体3mlをガラス基板にスピン塗布して、乾燥することによってガラス表面に自己ドープ型導電性高分子薄膜を作製した。
上記導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、上記と同様に塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で5.0×105 Ω/□、1カ月後6.5×105 Ω/□、3カ月後では9.1×105 Ω/□であった。
【0035】
[実施例3]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.35、MがNH4 +で表される自己ドープ型導電性高分子化合物を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
実施例1の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体に1N NH4 OH水溶液を加え、pHを5.0に調製した。この操作によりスルホン酸基のH+ イオンの一部はNH4 +イオンに容易に交換される。これにより一般式(1)で示されるMの構造単位の一部はNH4 +で示される構造を有する導電性ミクロゲル分散体(pH=5.0)が得られた。
本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で5.0×105 Ω/□、1カ月後2.8×106 Ω/□、3カ月後では4.8×106 Ω/□であった。
【0036】
[実施例4]
前記一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.22、MがH+ で表される自己ドープ型導電性高分子化合物を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸ナトリウム9.0gと塩化第二鉄40.0gとの混合物中に、水5. 0g、1,4−ジオキサン10.0gおよび1,3−ジヒドロイソチアナフテン0. 57gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水1000mlで良く洗い不溶物を500mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解した。続いて沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。実施例1と同様の方法で測定した共重合体の一般式(1)で示されるスルホン酸置換構造単位のモル分率は0.78(78モル%)であった。その他の物性として、重量平均分子量は7400、電気伝導度は2S/cmであった。実施例1と同様の方法で0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところその含有率は41%であった。
本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で4.5×105 Ω/□、1カ月後は7.6×105 Ω/□、3カ月後では1.3×106 Ω/□であった。
【0037】
[実施例5]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.22、MがNH4 +で表される自己ドープ型導電性高分子化合物を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
実施例4と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体を実施例3と同様の方法で一般式(1)のMの構造の一部がNH4 +で示される構造を有する導電性ミクロゲル分散体(pH=5.0)が得られた。
本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で4.8×105 Ω/□、1カ月後は3.8×106 Ω/□、3カ月後では6.7×106 Ω/□であった。
【0038】
[実施例6]
前記一般式(1)のR1 がメトキシ基であり、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.21で表される自己ドープ型導電性高分子化合物を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸ナトリウム9.0gと塩化第二鉄40.0gとの混合物中に、水5. 0g、1,4−ジオキサン10.0gおよび5−メトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン0. 70gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水1000mlで良く洗い不溶物を500mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解した。続いて沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。実施例1と同様の方法で測定した共重合体の一般式(1)で示されるスルホン酸置換構造単位のモル分率は0.79(79モル%)であった。その他の物性として、重量平均分子量は7600、電気伝導度は1. 8S/cmであった。実施例1と同様の方法で0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところその存在率は48%であった。
本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で5.2×105 Ω/□、1カ月後は7.9×105 Ω/□、3カ月後では1.5×106 Ω/□であった。
【0039】
[実施例7]
ポリ(チオフェン−3−プロパンスルホン酸−co−チオフェン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
チオフェン−3−プロパンスルホン酸ナトリウム8.0gと塩化第二鉄40.0gとの混合物中に、水5. 0g、1,4−ジオキサン10.0gおよびチオフェン0. 74gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水1000mlで良く洗い不溶物を500mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解した。続いて沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルを水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。実施例1と同様の方法で測定した共重合体のスルホン酸置換構造単位のモル分率は0.75(75モル%)であった。その他の物性として、重量平均分子量は9200、電気伝導度は1.5S/cmであった。実施例1と同様の方法で0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところその含有率は32%であった。
本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で4.5×105 Ω/□、1カ月後は5.4×105 Ω/□、3カ月後では7.8×105 Ω/□であった。
【0040】
[比較例1]
前記一般式(1)のR1 、R2 、R3 、およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.2、MがH+ で表される水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液は、特開平6−49183号に開示されている方法に従い製造した。実施例1と同様の方法でミクロゲルの含有率を測定したが、ミクロゲルの存在は認められなかった。
本法により製造した導電性高分子の水溶液を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で1.0×106 Ω/□、1カ月後は3.8×106 Ω/□、3カ月後では5.5×107 Ω/□であった。
【0041】
[比較例2]
前記一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0、MがNH4 +で表される導電性高分子化合物を含む水溶液は、実施例3と同様の方法で製造した。実施例1と同様の方法でミクロゲルの含有率を測定したが、ミクロゲルの存在は認められなかった。
本法により製造した導電性高分子の水溶液を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で1.0×106 Ω/□、1カ月後は4.7×107 Ω/□、3カ月後では5.0×108 Ω/□であった。
【0042】
比較例1で得られたpH=2.0の水溶液及び比較例2で得られたpH=5.0の水溶液のいずれもが、常温で水溶液状態で放置するとガラス塗膜の表面抵抗値が上昇した。この変化は、例えば特開平4-32848 号公報に記載のように、荷電粒子線を照射する工程において帯電現象を防止する目的で使われる場合には極めて影響が大きい。電子材料1990年12月p.48−54によれば、こうした帯電現象を防止するには表面抵抗が5×107 Ω/□以下であることが求められているので、pH=5.0の水溶液は1カ月常温放置後にはその効果がなくなることがわかる。pH=2.0のものも2カ月常温放置後には、上限に近づいている。
【0043】
【発明の効果】
イソチアナフテン骨格を含む自己ドープ型ポリマーなどのブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子は、ミクロゲルでない均一な水溶液で大気中常温下で長期間保存しておくと水溶液のpHが低下し、塗布後膜の表面抵抗値が上昇するという問題があった。
しかしながら、自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体とする構造体を用いることによって、大気中常温下で保存してから塗膜形成に用いても、保存前の場合に比べて塗膜の表面抵抗値が高くなる等の物性の低下を防止できることを見いだした。すなわち本発明によれば、水溶性の特性が期待される自己ドープ型導電性高分子であっても、水溶液中の状態を均一溶解状態からミクロゲル状にすることでπ−電子共役系鎖の酸化的劣化およびスルホン酸置換基の脱離を抑制することができ、その結果保存安定性の優れた均一ミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体を得ることができる。本発明のミクロゲル分散体は、塗布等の方法で高い導電性ある重合体として加工あるいは薄膜化することができ、そのため精密な加工の要求される電極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形光学素子、帯電防止材など各種導電材料あるいは光学材料として有用なものである。

Claims (1)

  1. 分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する導電性高分子が水に分散している導電性ミクロゲル分散体であって、該導電性高分子が、該ブレンステッド酸基を有するモノマー単位と該ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位からなる共重合体であって、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−アルコキシイソチアナフテン)およびポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)から選ばれた高分子であり、これらの共重合体中の上記ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位のモル分率が0.01〜0.5であり、かつ、該導電性高分子のミクロゲルサイズが0.05μm〜0.5μmであることを特徴とする導電性ミクロゲル分散体。
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