JP4049839B2 - 帯電防止処理材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温で長期保存しても極めて安定な、自己ドープ型導電性高分子化合物を含む導電性ミクロゲル分散体の利用およびその用途、物品に関する。更に詳しくは、本発明は、電気、電子工業の分野において、加工的要求度が高い電極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形光学素子、光電変換素子、帯電防止剤ほか、各種導電材料あるいは光学材料として用いるのに適した安定な自己ドープ型導電性高分子化合物の用途に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
π電子共役系の発達した重合体は、導電性のみならず金属/半導体転移における状態変化などの特異な物性のために工業的に注目され、多くの研究がなされてきた。特にポリアセチレンやポリチオフェン、ポリピロール、ポリパラフェニレン等の多くの導電性高分子は、剛直な主鎖骨格のため不溶不融である(Skotheim著、"Handbook of Conducting Polymers" 誌、Mercer Dekker 社発行、1986年)が、その側鎖にアルキル基等の置換基を導入した重合体は可溶性となり、その易加工性のため工業的に注目されてきている。
具体的な例としては、ポリチオフェン環の側鎖に長鎖アルキル基を導入して有機溶媒に可溶とした重合体(K.Jen ら、Journal of Chemical Society, Chemical Communication 誌、1346頁、1986年)や、スルホアルキル基を導入した水溶性の重合体(A.O.Patil ら、Journal of American Chemical Society誌、109 巻、1858頁、1987年)などが知られている。
【0003】
後者の例は水溶性の自己ドープ型ポリマーとして知られ、一般にはブレンステッド酸基がπ電子共役系ポリマーの主鎖に直接、またはスペーサーを介して間接的に共有結合されており、外来ドーパントの寄与なしに導電状態を示す点でも注目されてきた。このような例の報告としては他にも、E.E.Havinga らのポリチオフェン誘導体やポリピロール誘導体(Polymer Bulletin誌、18巻、277 頁、1987年)、Aldissi のポリチオフェン誘導体やポリピロール誘導体(米国特許4,880,508 号)、ポリアニリン芳香環に置換基としてカルボキシル基を共有結合させた重合体(特表平1-500835号)、ピロールのN位にスルホプロピル基が置換した重合体(Journal of Chemical Society, Chemical Communication 誌、621 頁、1987年)、N位にスルホプロピル基が置換したポリアニリン重合体(Journal of Chemical Society, Chemical Communication 誌、180 頁、1990年、および Synthetic Metal 誌、31巻、369 頁、1989年)、芳香環に直接スルホン酸基が置換したポリアニリン誘導体(Journal of American Chemical Society誌、112 巻、2800頁、1990年)、スルホン酸基を置換したイソチアナフテン重合体(特開平6 −49183 号および特開平7-48436 号)などが製造法とともに開示されている。
【0004】
前記、ブレンステッド酸基がπ電子共役系ポリマーの主鎖に直接、またはスペーサーを介して間接的に共有結合した自己ドープ型ポリマーは、水溶性であること、外来ドーパントの寄与なしに安定な導電状態を示すこと、容易に薄膜化できその導電性は長期間にわたって安定であることなどから工業的に多くの利点がある。自己ドープ型導電性高分子の応用の一例として、荷電粒子線の照射を含む工程における帯電現象を防止する方法が開示されている特開平4−32848号が挙げられる。その他、自己ドープ型導電性高分子の主鎖構造がポリイソチアナフテン構造を有する特開平7−41756号やポリイミン構造を有する特開平4−349614号等が開示されている。
【0005】
上記自己ドープ型導電性高分子のうち、π電子共役系のポリマー主鎖にイソチアナフテン骨格、ピロール骨格もしくはアニリン骨格を有するポリマーは、酸化電位が比較的低いため容易にp型ドープされ易くそのため固体状態(例えば膜の状態)では導電状態が安定であるものの、水溶液状態で常温にて放置すると、溶液のpHが変化したり、塗布等の方法で形成した膜の表面抵抗の上昇(導電性の低下)が起こる。例えば荷電粒子線を照射する工程において帯電現象を防止する目的で使われる場合には極めてその影響が大きく、電子材料誌1990年12月p.48−54によれば、こうした帯電現象を防止するには表面抵抗が5×107 Ω/□以下であることが求められている。このため水溶液状態での保管には保管温度等の制限があった。
【0006】
一方、これまでに知られている水分散系のポリマー、例えば特開平2−258832号および特開平2−258833号で開示されているポリイソチアナフテン系ポリマーは、本質的に水不溶性のポリマーと外来ドーパントを含む水分散体であるため、ポリマー表面の湿潤性(親水性)に問題があった。特に、荷電粒子線の照射を含む工程における帯電現象を防止するために使用された場合、使用後の塗膜の水洗除去過程の煩雑さ等が問題となる。
これらの問題点を解決するため、親水性の高い導電性高分子、かつ、ドープ状態の安定な自己ドープ型導電性高分子が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、湿潤性(親水性)の高い表面を有し、常温放置において安定性に優れた自己ドープ型導電性高分子もしくはイソチアナフテン骨格をもった自己ドープ型ポリマーを含む帯電防止剤の製造方法、それを利用した帯電防止処理方法、及びそれにより得られる帯電防止処理材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果、下記一般式(1)
【化3】
[式中、R 1 、R 2 、R 3 およびR 4 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和のアルキル、アルコキシまたはアルキルエステル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価の置換基を表わす。R 3 だけは上記の他にSO 3 - Mであってもよい。隣合うR 1 とR 2 もしくはR 3 とR 4 は、互いにそれぞれの置換基内の任意の置換位置で結合して、該置換基により置換されている炭素原子を含む飽和または不飽和の環状構造を形成する二価基を少なくとも1つ以上形成してもよい。R 1 、R 2 、R 3 およびR 4 のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル、エーテル、エステル、アミド、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、イミノなどの結合を任意に含んでもよい。mは共重合体中のモノマーユニットのモル分率を表す少数であり、0.01≦m≦0. 5を満たす少数である。MはH + 、NR 5 R 6 R 7 R 8 + で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、PR 5 R 6 R 7 R 8 + もしくはAsR 5 R 6 R 7 R 8 + で表わされるVb族元素の第4級カチオン、あるいはNa + 、Li + 、K + 等のアルカリ金属イオンを表わし、R 5 、R 6 、R 7 、R 8 はそれぞれ独立にH、または炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のごとき炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキル基またはアリール基であってもよい]
で示される化学構造を有する自己ドープ型導電性高分子が0.05μmから0.5μmのサイズのミクロゲルを形成することを発見し、溶媒中でミクロゲルの分散状態となることにより、自己ドープ特性を損なうことなく溶媒中での安定性が著しく向上することを見いだし本発明に至った。さらに、前記ミクロゲル分散系における自己ドープ状態の安定性が分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子の構造体においても特有に存在できることを見い出し本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は以下のものを提供するものである。
[1]分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子からなる導電性ミクロゲルの分散体であって、該導電性高分子が、該ブレンステッド酸基を有するモノマー単位と該ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位からなる共重合体であって、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−アルコキシイソチアナフテン)、ポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)、およびこれらの塩の中から選ばれた共重合体であり、これらの共重合体中の上記ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位のモル分率が0.01〜0.5であり、かつ、該導電性高分子のミクロゲルサイズが0.05μm〜0.5μmである導電性ミクロゲル分散体を用いて帯電防止処理することを特徴とする帯電防止処理材の製造方法。
[2]導電性ミクロゲル分散体が界面活性剤を含むことを特徴とする前記[1]記載の帯電防止処理材の製造方法。
[3]導電性ミクロゲル分散体が第4級アンモニウムイオンを含むことを特徴とする前記[1]または[2]記載の帯電防止処理材の製造方法。
[4]導電性ミクロゲル分散体が0.1μm〜0.2μmのサイズの導電性ミクロゲルを0.1〜95%の存在率で含むことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の帯電防止処理材の製造方法。
【0012】
[5] 分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子からなる導電性ミクロゲルの分散体であって、該導電性高分子が、該ブレンステッド酸基を有するモノマー単位と該ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位からなる共重合体であって、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−アルコキシイソチアナフテン)、ポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)、およびこれらの塩の中から選ばれた共重合体であり、これらの共重合体中の上記ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位のモル分率が0.01〜0.5であり、かつ、該導電性高分子のミクロゲルサイズが0.05μm〜0.5μmである導電性ミクロゲル分散体を用いることを特徴とする帯電防止処理方法。
[6]導電性ミクロゲル分散体が界面活性剤を含むことを特徴とする前記[5]記載の帯電防止処理方法。
[7]導電性ミクロゲル分散体が第4級アンモニウムイオンを含むことを特徴とする前記[5]または[6]記載の帯電防止処理方法。
【0015】
[8]導電性ミクロゲル分散体が0.1μm〜0.2μmのサイズの導電性ミクロゲを0.1〜95%の存在率で含むことを特徴とする前記[5]〜[7]のいずれかに記載の帯電防止処理方法。
[9]前記[1]〜[8]のいずれかに記載の方法を使用することにより得られる帯電防止処理材。
[10] 半導体製造にかかわることを特徴とする前記[9]に記載の帯電防止処理材。
【0016】
以下本発明について詳細に説明する。分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子を含む分散体は、保存安定性に優れた特徴を有するミクロゲル分散体を形成する。具体的なポリマーとしては、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−アルコキシイソチアナフテン)およびポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)が挙げられる。上記アルコキシイソチアナフテンとしては、炭素数1〜20のアルコキシ基を有するイソチアナフテンがあげあられる。
【0020】
上記自己ドープ型導電性高分子中のスルホン酸基は、塩の形態であってもよい。すなわち、前記一般式(1)において、MはH+ 、NR5 R6 R7 R8 +で表わされる第4級アンモニウムのカチオン、PR5 R6 R7 R8 +もしくはAsR5 R6 R7 R8 +で表わされるVb族元素の第4級カチオン、あるいはNa+ 、Li+ 、K+ 等のアルカリ金属イオンであってよい。ここで、R5 、R6 、R7 、R8 はそれぞれ独立にH、炭素数1乃至30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わす。
【0023】
本発明にかかわる、自己ドープ型導電性高分子を含む導電性ミクロゲル分散体は、1,3−ジヒドロイソチアナフテンまたはアルコキシ置換基を有する1,3−ジヒドロイソチアナフテン、例えば5−メトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−エトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、5−デシルオキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン、4,5−メチレンジオキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテンなど、またはチオフェン(以下、これらの化合物を「第1の化合物」という)と、特開平8ー3156号に記載の1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸、またはチオフェン−3−プロパンスルホン酸、またはそれらのナトリウム塩や4級アンモニウム塩などの塩(以下、これらのスルホン酸基含有化合物を「第2の化合物」という)と、酸化剤とを混合することによって製造できる。
【0024】
第1の化合物と第2の化合物の混合比は、所望の0.05〜0.5μmのミクロゲルの存在率によって異なるために一概に規定できないが、第1の化合物のモル百分率において1モル%から50モル%の範囲内にあれば良い。更に望ましくは5モル%〜30モル%が好ましい。本発明に係わる自己ドープ型導電性高分子を含む分散体の安定性は、0.1〜0.2μmサイズのミクロゲル存在率が増加することによって、ミクロゲルの凝集状態における安定性およびπ電子共役構造の空気酸化に対する安定性が向上する。さらには、第1の化合物の仕込モル百分率を増加させることによっても向上するが、第1の化合物の仕込モル百分率が50モル%を越えるとミクロゲルの水分散性または溶解性が著しく低下し、もはや分散媒体に溶解しなくなるために好ましくない。
【0027】
上記製造において使用する酸化剤は、酸化性を有する遷移金属ハロゲン化物が好ましく、異なる遷移金属ハロゲン化物を併用してもよい。あるいは、遷移金属ハロゲン化物以外の酸化剤を単独に使用するか、もしくは遷移金属ハロゲン化物と併用することもできる。遷移金属ハロゲン化物としてより具体的には、塩化第二鉄、塩化モリブデンおよび塩化ルテニウム、塩化第二銅、硫酸第二鉄、硫酸第二銅等が挙げられる。遷移金属ハロゲン化物以外の酸化剤としてより具体的には、硫酸、三酸化硫黄、クロルスルホン酸等が挙げられる。
【0028】
本発明の帯電防止剤である導電性ミクロゲル分散体に用いられる高分子の製造に用いられる溶媒は、モノマーを溶解する溶媒であれば特に限定されるものではなく、各々のモノマーを溶解する異なる溶媒の混合溶媒を用いても良い。例えばより具体的には、水、1,4−ジオキサンやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、硫酸等の鉱酸、酢酸などの有機酸等が挙げられ、更にそれらの混合溶媒を用いることもできる。
本発明の帯電防止剤である導電性ミクロゲル分散体に用いられる高分子の製造法に係わる反応温度は、一般式(2)および一般式(3)により表される化合物などのモノマーの化学構造等によって異なるため一概に規定できないが、一般には−80℃から250℃の温度範囲で行われることが望ましく、特に−30℃から150℃の温度範囲で行われることがさらに望ましい。反応時間は、反応方法および反応温度、反応圧力あるいは一般式(2)および一般式(3)により表される化合物などのモノマーの化学構造等によって異なるので一概には規定できないが、通常は0.01時間から240時間が望ましい。反応圧力は常圧で行われることが好ましいが、10ー5気圧以上100気圧以下で行うことができる。反応にかかわる化合物および酸化剤の濃度は、溶媒にそれぞれが溶解していればよく、0.01グラム/リットルから100グラム/リットルの範囲で行われることが望ましく、特に1グラム/リットルから10グラム/リットルがより望ましい。
【0029】
本発明で使用する導電性ミクロゲルを分散させる媒体としては、自己ドープ型導電性高分子を分散させ得る溶媒であれば特に限定されるものではないが、より具体的には水、1,4−ジオキサンやテトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、硫酸等の鉱酸、酢酸などの有機酸等が挙げられる。
【0030】
本発明の帯電防止剤である導電性ミクロゲル分散体は、前記自己ドープ型導電性高分子化合物の他、少なくとも一種の界面活性剤を含んでもよい。これらは本発明の自己ドープ型導電性高分子化合物を含む水溶液に制限を与えるものではない。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。かかる界面活性剤を用いる場合には、該自己ドープ型導電性高分子化合物に対して重量比で0.001〜95倍量、望ましくは0.005〜20倍量、更に望ましくは0.01〜5倍量用いる。界面活性剤の量が0.001倍量未満であると、界面活性剤添加の効果がなくなる場合がある。95倍量より多いと良好な電子伝導性が確保できない場合がある。
【0031】
本発明の帯電防止剤である導電性ミクロゲル分散体は、前記一般式(1)で示される化学構造のMを変化させることにより、酸性〜アルカリ性の間の任意のpHの値をとることが可能であり、単一のミクロゲル分散体中において二種以上のMを混在させることも可能である。より具体的には、Mがプロトンとアルカリ金属イオンやプロトンと第4級アンモニウムイオン等が挙げられる。また、前記自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体は、さらに酸やアルカリを添加して所望のpHに変化させることも可能である。
【0032】
本発明の帯電防止剤である導電性ミクロゲル分散体は、塗布等の従来の方法により導電性被膜として使用することもできる。膜を形成する塗布等の方法とは、具体的には、本発明の自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体を物品に塗布する、または物品に吹きつける、あるいは物品を該ミクロゲル分散体にディッピングする(浸漬する)等、物品や仕様目的に応じて様々な方法が挙げられる。例えば物品上に塗布する際、塗布性等の被膜形成を改善するために、前記のように少なくとも一種の界面活性剤を含む本発明の帯電防止剤であるミクロゲル分散体を用いることができる。
【0033】
本発明の帯電防止処理材を製造するため、導電性ミクロゲル分散体により帯電を防止される物品としては、帯電防止が要求される物品であれば特に制限されないが、具体的には繊維、不繊布、ダンボール紙や上質紙および再生紙等の紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアセタール類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリカーボネート類、ポリエーテル類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリウレタン系プラスチック、ジエン系プラスチック、天然ゴム系プラスチック、セルロース系プラスチック、ポリ四フッ化エチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、パーフルオロアルコキシ・フッ素樹脂等のフッ素樹脂等のフィルムや成形加工品および前記プラスチック類の表面改質処理により親水化したフィルムや成形加工品、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸・アクリルアミド共重合体等の吸水性高分子およびそのフィルムや成形加工品、シリコーン樹脂、液晶および液晶ポリマー、半導体製造に用いられるフォトマスク、ペリクル、位相シフター材料、表面にレジスト層を有するシリコンウエハー、シリコン酸化膜、酸化マグネシウム等の金属酸化物、LiNbO3 等の酸化物単結晶、AsGaやInP等の化合物半導体、石英ガラスおよび軟質ガラス、CRT基板等が挙げられる。これらの物品に使用された自己ドープ型導電性高分子化合物を含むミクロゲル分散体は必要に応じて水洗等の方法により除去して使用することも可能である。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
実施例、比較例における各種測定は以下のように行った。
水溶液のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計pH METER F−13((株)堀場製作所製)にて測定した。また塗布膜の表面抵抗は、スピンナー 1H−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、水溶液をガラス基板に1500rpmで回転塗布し、膜厚0.02μmの導電性被膜を作製し、この塗布膜の表面抵抗を表面抵抗測定器メガレスタMODEL HT−301(シシド静電気(株)製)にて測定した値である。
【0035】
[実施例1]
前記、一般式(1)におけるR1 、R2 、R3 、およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.35、MがH+ で表される自己ドープ型導電性高分子化合物、すなわち、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
特開平8−3156号に開示されている方法に従い製造した、1,3−ジヒドロ−5−イソチアナフテンスルホン酸ナトリウム1.4gと塩化第二鉄8.0gとの混合物中に、水1. 0g、1,4−ジオキサン2.0gおよび1,3−ジヒドロイソチアナフテン0. 34gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水200ml、およびアセトン40mlでよく洗い、乾燥して1.7gの黒色粉末を得た。この黒色粉末を100mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解し、沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。このミクロゲル分散体の導電性高分子水溶液を蒸発乾固し、得られたポリマー固体を分取、そして中和滴定により共重合体の一般式(1)中のスルホン酸置換した構造単位のモル分率を求めた。その結果、0.65(65モル%)であった。さらに、他の物性として重量平均分子量は7700、電気伝導度は2S/cmであった。ミクロゲル分散体を0.1μmと0.2μmの孔径を有するメンブランフィルターで各々濾過することで、0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところ、その存在率は73%であった。
【0036】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体3mlをガラス基板にスピン塗布して、乾燥することによってガラス表面に自己ドープ型導電性高分子薄膜を作製した。
上記導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、上記と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で5.0×105 Ω/□、1カ月後6.5×105 Ω/□、3カ月後では9.1×105 Ω/□であった。また、ガラス塗膜とした後の表面抵抗値の経時変化を調べたところ、初期値で5.0×105 Ω/□、1カ月後5.3×105 Ω/□、3カ月後6.1×105 Ω/□であった。
【0037】
[実施例3]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.35、MがNH4 +で表される自己ドープ型導電性高分子化合物、すなわち、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸アンモニウム−co−イソチアナフテン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
実施例1の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体に1N NH4 OH水溶液を加え、pHを5.0に調製した。この操作によりスルホン酸基のH+ の一部はNH4 +に容易に交換される。これにより一般式(1)で示されるMの構造単位の一部はNH4 +で示される構造を有する導電性ミクロゲル分散体(pH=5.0)が得られた。本法により製造した導電性ミクロゲル分散体水溶液を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で5.0×105 Ω/□、1カ月後2.8×106 Ω/□、3カ月後では4.8×106 Ω/□であった。
【0038】
[実施例4]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 、およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.22、MがH+ で表される自己ドープ型導電性高分子化合物、すなわち、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸ナトリウム9.0gと塩化第二鉄40.0gとの混合物中に、水5. 0g、1,4−ジオキサン10.0gおよび1,3−ジヒドロイソチアナフテン0. 57gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水1000mlで良く洗い不溶物を500mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解した。続いて沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。実施例1と同様の方法で測定した共重合体の一般式(Ia)で示されるスルホン酸置換構造単位のモル分率は0.78(78モル%)であった。その他の物性として、重量平均分子量は7400、電気伝導度は2S/cm(4端子測定法)であった。実施例1と同様の方法で0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところその存在率は41%であった。本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で4.5×105 Ω/□、1カ月後は7.6×105 Ω/□、3カ月後では1.3×106 Ω/□であった。また、ガラス塗膜とした後の表面抵抗値の経時変化を調べたところ、初期値で4.5×105 Ω/□、1カ月後5.4×105 Ω/□、3カ月後6.7×105 Ω/□であった。
【0039】
[実施例5]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.22、MがNH4 +で表される自己ドープ型導電性高分子化合物、すなわち、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸アンモニウム−co−イソチアナフテン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
実施例4と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体を実施例3と同様の方法で処理して、一般式(1)のMの構造の一部がNH4 +で示される構造を有する導電性ミクロゲル分散体(pH=5.0)を得た。本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で4.8×105 Ω/□、1カ月後は3.8×106 Ω/□、3カ月後では6.7×106 Ω/□であった。
【0040】
[実施例6]
前記、一般式(1)のR1 がメトキシ基であり、R2 、R3 、R4 およびMがそれぞれ独立にHであり、m=0.21で表される自己ドープ型導電性高分子化合物、すなわち、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−メトキシイソチアナフテン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
1,3−ジヒドロイソチアナフテン−5−スルホン酸ナトリウム9.0gと塩化第二鉄40.0gとの混合物中に、水5. 0g、1,4−ジオキサン10.0gおよび5−メトキシ−1,3−ジヒドロイソチアナフテン0. 70gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水1000mlで良く洗い不溶物を500mlの0.1N NaOHに良く撹拌しながら溶解した。続いて沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。実施例1と同様の方法で測定した共重合体の一般式(1)で示されるスルホン酸置換構造単位のモル分率は0.79(79モル%)であった。その他の物性として、重量平均分子量は7600、電気伝導度は1. 8S/cmであった。実施例1と同様の方法で0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところその存在率は48%であった。本法により製造した導電性ミクロゲル分散体を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で5.2×105 Ω/□、1カ月後は7.9×105 Ω/□、3カ月後では1.5×106 Ω/□であった。また、ガラス塗膜とした後の表面抵抗値の経時変化を調べたところ、初期値で5.2×105 Ω/□、1カ月後は5.9×105 Ω/□、3カ月後は7.0×105 Ω/□であった。
【0041】
[実施例7]
ポリ(チオフェン−3−プロパンスルホン酸−co−チオフェン)を含む導電性ミクロゲル分散体の製造方法。
チオフェン−3−プロパンスルホン酸ナトリウム8.0gと塩化第二鉄40.0gとの混合物中に、水5. 0g、1,4−ジオキサン10.0gおよびチオフェン0. 74gの混合物を激しく振盪して加え撹拌した。30分後に得られた黒色の反応混合物を、水1000mlで良く洗い不溶物を500mlの0.1N−NaOHに良く撹拌しながら溶解した。続いて沈殿物を除去した後、酸型のイオン交換樹脂でイオン交換することによって目的とする導電性高分子を含むミクロゲルを水に分散した導電性ミクロゲル分散体(pH=1.9)を得た。実施例1と同様の方法で測定した共重合体のスルホン酸置換構造単位のモル分率は0.75(75モル%)であった。その他の物性として、重量平均分子量は9200、電気伝導度は1.5S/cmであった。実施例1と同様の膜濾過分別による方法で0.1〜0.2μmのミクロゲルの存在割合を求めたところその存在率は32%であった。
【0042】
[実施例8]
実施例1で製造した導電性ミクロゲル分散体3mlをノボラックおよびジアゾナフトキノンから成るポジ型電子線レジスト上に1500rpmで回転塗布し、膜厚0.02μmの導電性被膜を作製した。Journal of Vacuum Science Technology誌B7巻1989年1519頁に記載の方法で、電子線を照射し、現像後位置ずれを測定したところ、位置ずれ量は0.05μm以下であり帯電による影響は全く観測されなかった。導電性被膜を用いなかった場合、帯電による位置ずれ量は2μm以上であった。なお導電性被膜は現像と同時に剥離除去できた。
【0043】
[実施例9]
実施例3で製造した導電性ミクロゲル分散体3mlをレジストとしてノボラック、感光剤およびブロモメチル基を有する酸発生剤から成るネガ型の化学増幅系電子線レジスト(シプレイ社製商品名SAL601)を用いた他は実施例8と全く同様にレジスト上に回転塗布し位置ずれを測定した。位置ずれ量は0.05μm以下であり、帯電防止効果は実施例8と同様であった。なお、導電性被膜を形成したレジストに電子線を照射した後のベークは導電性被膜を剥離除去する前に行われ、導電性被膜は水洗により完全に剥離除去することや、現像時に現像液により剥離除去することが可能であった。
【0044】
[実施例10]
実施例3と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体0.5mlにベンコット1枚(旭化成製ガーゼ、サイズ150mm×150mm)を1分間浸せきした後、水洗乾燥して青色の繊維表面に導電性高分子のミクロゲルが担持され帯電防止処理された材料が得られた。この材料の表面抵抗値は8.4×107 Ω/□であった。
【0045】
[実施例11]
実施例3と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体8mlを市販の紙製ダンボール箱(サイズ60cm×40cm×40cm)の表面にスプレー塗布して乾燥して得られた帯電が防止された材料の表面抵抗値は2.4×107 Ω/□であった。
【0046】
[実施例12]
実施例1と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体1mlを表面が親水化処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(サイズ:10cm×10cm×100μm)にバーコート塗布した。そして、乾燥して得られた帯電が防止された材料の表面抵抗値は1.5×105 Ω/□であった。
なお、バーコート塗布とは、基板上に塗布液を垂らし、バーコーター(ネジの様な溝のついた棒)を基板表面に沿って滑らしたり、転がしたりする事によって、溝に溜まった塗布液分を均一に基板に塗布する方法であり、本実施例においてはバーコーターとしてS.ETO & CO.製の8番を用いた。
以下の実施例においても同様である。
【0047】
[実施例13]
実施例1と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体1mlを表面が親水化処理されたポリ塩化ビニルフィルム(サイズ:10cm×10cm×100μm)にバーコート塗布した。そして、乾燥して得られた帯電が防止された材料の表面抵抗値は1.6×105 Ω/□であった。
【0048】
[実施例14]
実施例1と同様の方法で製造した導電性ミクロゲル分散体1mlを表面が親水化処理されたポリアクリレート板(サイズ:10cm×10cm×5mm)にバーコート塗布した。そして、乾燥して得られた帯電が防止された材料の表面抵抗値は1.4×105 Ω/□であった。
【0049】
[比較例1]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 、およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0.2、MがH+ で表される水溶性導電性高分子化合物を含む水溶液は、特開平6−49183号に開示されている方法に従い製造した。実施例1と同様の方法でミクロゲルの存在率を測定したが、ミクロゲルの存在は認められなかった。
本法により製造した導電性高分子の水溶液を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で1.0×106 Ω/□、1カ月後は3.8×106 Ω/□、3カ月後では5.5×107 Ω/□であった。
【0050】
[比較例2]
前記、一般式(1)のR1 、R2 、R3 およびR4 がそれぞれ独立にHであり、m=0、MがNH4 +で表される導電性高分子化合物を含む水溶液は、実施例2と同様の方法で製造した。実施例1と同様の膜濾過分別による方法でミクロゲルの存在率を測定したが、ミクロゲルは認められず、ポリマーは完全に溶解していた。
本法により製造した導電性高分子の水溶液を常温下に放置し、経時的にサンプリングして、実施例2と同様にガラス塗膜を作成し表面抵抗値を調べたところ、初期値で1.0×106 Ω/□、1カ月後は4.7×107 Ω/□、3カ月後では5.0×108 Ω/□であった。
比較例1で得られたpH=2.0の水溶液及び比較例2で得られたpH=5.0の水溶液のいずれもが、常温で水溶液状態で放置するとガラス塗膜の表面抵抗値が上昇した。電子材料誌1990年12月p.48−54によれば、荷電粒子線を照射する工程における帯電現象を防止するには表面抵抗が5×107 Ω/□以下であることが求められているので、pH=5.0の水溶液は1ヵ月常温放置後にはその効果がなくなることがわかる。pH=2.0のものも2カ月常温放置後には、上限に近づいている。
【0051】
【発明の効果】
イソチアナフテン骨格を含む自己ドープ型ポリマーなどのブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子は、ミクロゲルでない均一な水溶液で大気中常温下で長期間保存しておくと水溶液のpHが低下し、塗布後膜の表面抵抗値が上昇するという問題があった。
しかしながら、自己ドープ型導電性高分子化合物から成るミクロゲル分散体とする構造体を用いることによって、大気中常温下で保存してから塗膜形成に用いても、保存前の場合に比べて塗膜の表面抵抗値が高くなる等の物性変化を防止できることを見いだした。また、得られた塗膜自体の安定性も良好であり、本発明のミクロゲル分散体を用いて帯電防止処理した材料の安定性も良好である。すなわち本発明によれば、水溶性自己ドープ型導電性高分子であっても、水溶液中の状態を均一溶解状態からミクロゲル状構造体にすることでπ−電子共役系鎖の酸化的劣化およびスルホン酸置換基の脱離を抑制することができ、その結果保存安定性の優れた均一ミクロゲルが水に分散した導電性ミクロゲル分散体を得ることができ、この分散体は、塗布等の方法で高い導電性ある重合体として加工あるいは薄膜化することができ、そのため精密な加工の要求される電極、センサー、エレクトロニクス表示素子、非線形光学素子、帯電防止材など各種導電材料あるいは光学材料として幅広く利用できる。
Claims (10)
- 分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子からなる導電性ミクロゲルの分散体であって、該導電性高分子が、該ブレンステッド酸基を有するモノマー単位と該ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位からなる共重合体であって、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−アルコキシイソチアナフテン)、ポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)、およびこれらの塩の中から選ばれた共重合体であり、これらの共重合体中の上記ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位のモル分率が0.01〜0.5であり、かつ、該導電性高分子のミクロゲルサイズが0.05μm〜0.5μmである導電性ミクロゲル分散体を用いて帯電防止処理することを特徴とする帯電防止処理材の製造方法。
- 導電性ミクロゲル分散体が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1記載の帯電防止処理材の製造方法。
- 導電性ミクロゲル分散体が第4級アンモニウムイオンを含むことを特徴とする請求項1または2記載の帯電防止処理材の製造方法。
- 導電性ミクロゲル分散体が0.1μm〜0.2μmのサイズの導電性ミクロゲルを0.1〜95%の存在率で含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止処理材の製造方法。
- 分子内にドーパント能を持つブレンステッド酸基を有する自己ドープ型導電性高分子からなる導電性ミクロゲルの分散体であって、該導電性高分子が、該ブレンステッド酸基を有するモノマー単位と該ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位からなる共重合体であって、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−イソチアナフテン)、ポリ(イソチアナフテン−5−スルホン酸−co−アルコキシイソチアナフテン)、ポリ(チオフェン−3−アルカンスルホン酸−co−チオフェン)、およびこれらの塩の中から選ばれた共重合体であり、これらの共重合体中の上記ブレンステッド酸基を有しないモノマー単位のモル分率が0.01〜0.5であり、かつ、該導電性高分子のミクロゲルサイズが0.05μm〜0.5μmである導電性ミクロゲル分散体を用いることを特徴とする帯電防止処理方法。
- 導電性ミクロゲル分散体が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項5記載の帯電防止処理方法。
- 導電性ミクロゲル分散体が第4級アンモニウムイオンを含むことを特徴とする請求項5または6記載の帯電防止処理方法。
- 導電性ミクロゲル分散体が0.1μm〜0.2μmのサイズの導電性ミクロゲルを0.1〜95%の存在率で含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の帯電防止処理方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の方法を使用することにより得られる帯電防止処理材。
- 半導体製造にかかわることを特徴とする請求項9に記載の帯電防止処理材。
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