JP2009292909A - 導電性コーティング組成物 - Google Patents

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文平 吉田
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Abstract

【課題】高い導電性と共に、耐熱性が優れる導電性コーティング組成物を提供する。
【解決手段】π共役系高分子(A)、ドーパント(B)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含むことを特徴とする導電性コーティング組成物であって、前記有機塩(C)がイミダゾリウムカチオン及び/又はピリジニウムカチオンを有する有機塩(C1)であることが好ましく、また、前記π共役系高分子(A)がポリアニリン、ポリチオフェン及びポリピロールからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性コーティング組成物に関する。更に詳しくは、π共役系高分子(A)を含む導電性コーティング組成物及びそれから得られる導電性皮膜に関する。
近年、エレクトロニクス材料におけるフレキシブル化のニーズが高まっている。これに伴い、π共役系高分子の導電機能材料、発光機能材料、トランジスタ機能材料、光電変換機能材料及び非光学系機能材料等への応用が盛んに研究されている。特に導電機能材料においては、コンデンサーや帯電防止剤として実用化されている。しかしながら、これらのπ共役系高分子の実用性を拡大するには、導電性の更なる向上を図るとともに、得られる導電性皮膜の耐熱性及び耐湿性といった環境安定性が大きな課題となっている。従来より、環境安定性の高い導電性皮膜を与えるπ共役系高分子導電性組成物としてはドーパントとしてスルホン酸基を有する化合物が適していることが知られている。例えば、特許文献1では、ドーパントとしてスルホン酸基を有する重縮合化合物を用いる方法が提案されている。
しかしながら、スルホン酸基を有するドーパントを使用した導電性組成物は酸性であるため、得られる皮膜がバインダー樹脂や基材を劣化させるという問題点を有し、また導電性も、例えばヨウ素をドーパントとした時と比較すると劣る傾向がある。
特開2007−224182号公報
そこで本発明は、耐熱性等の環境安定性を有しながら、酸性を示さず、高い導電性を有する皮膜を与える導電性コーティング組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、π共役系高分子(A)、ドーパント(B)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含むことを特徴とする導電性コーティング組成物;及び前記導電性コーティング組成物を基材にキャストして得られる導電性皮膜;である。
本発明の導電性コーティング組成物は、芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)の働きによって、ドーピングされたπ共役系高分子を安定化し、脱ドープ反応に伴う導電性の低下を抑制できることから、得られる皮膜は高温条件下でも優れた環境安定性と高い導電性を示す。更にスルホン酸等の酸性化合物を含まないことから、バインダー樹脂や基材を劣化させる心配がない。
以下、本発明を更に詳しく説明する。本発明におけるπ共役系高分子(A)は、ポリチオフェン、ポリアニリン又はポリピロー等の原料であるモノマーを重合することで得られる。重合方法としては、アニオン重合や酸化重合等公知の方法で行なうことが可能である。
本発明におけるポリチオフェンの原料モノマーとしては、チオフェン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−n−プロピルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン及び3−n−オクタドデシルチオフェン等の3−アルキルチオフェン;3−メトキシチオフェン等の3−アルコキシチオフェン;3−(2−メトキシエトキシ)チオフェン及び3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン等の3−アルコキシ−(ポリ)(重合度1〜4)エトキシチオフェン;並びに3−チオフェンエタノール及び3−チオフェンブタノール等の3−ヒドロキシアルキルチオフェン;が挙げられ、更にその他のチオフェンとして、3−フェニルチオフェン、3−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンアルデヒド、チオフェン−3−酢酸、3−チオフェンマロン酸、3−チオフェンメタノール、3−フルオロチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−ブロモ−4−メチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン及び3, 4−エチレンジオキシチオフェン等を挙げることができるがこれらに限定するものではない。これらを単独又は2種以上組み合わせて酸化重合又はアニオン重合によって、ポリチオフェンを製造することが可能である。
本発明におけるポリアニリンの原料モノマーとしては、アニリン骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、2−メチルアニリン、2−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、2−ブチルアニリン、2−ペンチルアニリン、2−ヘキシルアニリン、2−ヘプチルアニリン、2−オクチルアニリン、2−ノニルアニリン及び2−デシルアニリン等の2−アルキルアニリン;並びに2−フルオロアニリン、2−クロロアニリン及び2−ブロモアニリン等の2−ハロゲン化アニリン;が挙げられ、更にその他のアニリンとして、2−シアノアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジエチルアニリン、3,4−ブチレンアニリン、3,4−メチレンジオキシアニリン及び3,4−エチレンジオキシアニリン等を挙げることができる。これらを単独又は2種以上組み合わせて酸化重合又はアニオン重合によって、ポリアニリンを製造することが可能である。
本発明におけるポリピロールの原料モノマーとしては、ピロール骨格を有する化合物が挙げられる。例えば、3−メチルピロール、3−ヘキシルピロール及び3−ヘプチルピロール等の3−アルキルピロール;並びに3−フルオロピロール、3−クロロピロール及び3−ブロモピロール等の3−ハロゲン化ピロールが挙げられる。
なお、前記ポリチオフェンの原料モノマー、ポリアニリンの原料モノマー及びポリピロールの原料モノマーのうちの2種以上を使用して得られる、例えばチオフェン/アニリン共重合体、及びチオフェン/ピロール共重合体等の共重合体も本発明におけるπ共役系高分子(A)に含まれる。
前記ポリチオフェンの原料モノマー、ポリアニリンの原料モノマー及びポリピロールの原料モノマーのうち、試薬として市販されているものには、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−n−プロピルチオフェン、3−n−ブチルチオフェン、3−n−ペンチルチオフェン、3−n−ヘキシルチオフェン、3−n−ヘプチルチオフェン、3−n−オクチルチオフェン、3−n−ノニルチオフェン、3−n−デシルチオフェン、3−n−ウンデシルチオフェン、3−n−ドデシルチオフェン、3−n−オクタドデシルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−フェニルチオフェン、3−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンアルデヒド、チオフェン−3−酢酸、3−チオフェンマロン酸、3−チオフェンメタノール、3−フルオロチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−ブロモ−4−メチルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジエチルチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、2−メチルアニリン、2−エチルアニリン、2−プロピルアニリン、2−ブチルアニリン、2−ペンチルアニリン、2−ヘキシルアニリン、2−ヘプチルアニリン、2−オクチルアニリン、2−ノニルアニリン、2−デシルアニリン、2−フルオロアニリン、2−クロロアニリン、2−ブロモアニリン、2−シアノアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジエチルアニリン、3−メチルピロール、3−ヘキシルピロール、3−ヘプチルピロール、3−フルオロピロール、3−クロロピロール及び3−ブロモピロール等がある。また、3−(2−メトキシエトキシ)チオフェン及び3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン等の3−アルコキシ−(ポリ)(重合度1〜4)エトキシチオフェン並びに3−チオフェンエタノール及び3−チオフェンブタノール等の3−ヒドロキシアルキルチオフェン等は、3−ブロモチオフェンを出発物質として、ナトリウムアルコキサイドを反応させて製造することができ、例えば“Chem.Mater.,Vol.17,No.13,2005,pp.3317−3319”に詳細な製造方法が開示されている。
π共役系高分子(A)を得るためのアニオン重合としては、例えば、アルカリ金属類(リチウム、ナトリウム及びカリウム)、金属アルキル化合物(エチルリチウム、ブチルリチウム、ブチルナトリウム及びブチルカリウム等)、強アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド及びリチウムエトキシド等) 並びに3級アミン類(ピリジン、ピコリン及びキノリン等)を開始剤として用い、無溶剤又は溶剤存在下、低温ないし加熱条件下で行う方法が挙げられる。
π共役系高分子(A)を得るための酸化重合としては、電解酸化重合及び化学酸化重合が挙げられる。電解酸化重合は、重合しようとするモノマーを電解質溶液に溶解し、電解質溶液に電極対を浸漬し、電圧を印加して電気化学的に陽極酸化重合して導電性高分子を製造する方法である。電解酸化重合に用いられる電極としては、例えば、白金、パラジウム、金、銀、ニッケル、チタン、タンタル、ニオブ等の金属又はこれらに類した導電性材料や炭素材料の電極を用いることができる。また、電解酸化重合の電解液に用いられる溶媒としては、一般に電気化学反応に用いられる溶媒、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ニトロベンゼン、テトラヒドロフラン、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド等及びそれらの混合溶媒が挙げられる。
化学酸化重合は酸化剤を用いる重合法であり、酸化剤としては金属系酸化剤と非金属系酸化剤があり、酸化させることが可能であれば特に限定はない。金属系酸化剤としては、例えば、鉄(III)塩、モリブテン(V)塩及びルテニウム(VIII)塩等が挙げられる。非金属系酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル及び過酸化水素等の過酸化物、ペルオキシホウ酸ナトリウム、ペルオキシホウ酸、ペルオキシ硫酸、ペルオキシ硫酸アンモニウム、ペルオキシ硫酸及びペルオキシ硫酸水素カリウム等のペルオキシ酸類、過塩素酸及び過塩素酸銅等の過塩素酸類、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリム及び次亜塩素酸カリウム等の塩素酸類が挙げれられる。
ドーパント(B)としては、例えば、ハロゲン、芳香環含有スルホン酸、有機酸化剤、プロトン酸、ルイス酸及び遷移金属ハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
ハロゲンとしては、C12、Br2、I2、ICl3、IBr及びIF5等が挙げられる。芳香環含有スルホン酸としては、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸等が挙げられる。有機酸化剤としては、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、クロラニル酸及び2,3,6,7−テトラシアノ−1,4,5,8−テトラアザナフタレン等が挙げられる。プロトン酸としては、HF、HCl、HNO3、H2SO4、HBF4、HClO4、FSO3H、ClSO3H及びCF3SO3H等が挙げられる。ルイス酸としては、PF5、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、BBr3、SO3及びGaCl3等が挙げられる。遷移金属ハロゲン化物としては、NbF5、TaF5、MoF5、WF5、RuF5、BiF5、TiCl4、ZrCl4、MoCl5、MoCl3、WCl5、FeCl3、TeCl4、SnCl4、SeCl4、FeBr3及びSnI5等が挙げられる。
ドーパント(B)のうち、導電性の観点から好ましいのはハロゲン、芳香環含有スルホン酸及び有機酸化剤であり、更に好ましくはI2、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン及びクロラニル酸であり、特に好ましくはI2、p−トルエンスルホン酸、及びクロラニル酸である。
本発明の導電性コーティング組成物において、上記ドーパント(B)は、π共役系高分子(A)100重量部に対して、通常0.001重量部以上含まれていることが必要であり、好ましくは30〜1000重量部、更には50〜1000重量部含まれているとより好ましい。(B)が0.001重量部以上であると十分にドーピングができる傾向にあり、1000重量部以下であると、非導電成分の増加による導電率の低下が少ないので好ましい。
本発明における芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)[以下において、単に有機塩(C)又は(C)と表記する場合がある]は、芳香族性を示す複素環式カチオンとアニオンを有する有機塩であり、例えばイミダゾリウムカチオン及び/又はピリジニウムカチオンを有する有機塩が挙げられる。
イミダゾリウムカチオンを有する有機塩としては、一般式(1)で示される分子内塩、及び一般式(2)で示されるイオン塩が挙げられる。
Figure 2009292909
式中、R1及びR3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜15のアルキル基、R2は炭素数3〜6のアルキレン基、X−は1価のアニオンを表す。
Figure 2009292909
式中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜15のアルキル基、Y−は1価のアニオンを表す。
炭素数1〜15のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基及びペンタデシル基等が挙げられる。
炭素数3〜6のアルキレン基としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基及びヘキシレン基等が挙げられる。
1価のアニオンとしては、RSO3 -(Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基及び炭素数3〜6のアルキレン基)、HSO3 -、HSO4 -、HSOCl-、Br-、I-及びPF6 -等が挙げられる。
一般式(1)で示される分子内塩としては、1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩、1−メチル−3−(4−スルホブチル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩、1−エチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩及び1−エチル−3−(4−スルホブチル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩等が挙げられる。これらは、1−アルキルイミダゾールをアルキルスルホンと反応させることで得られ、例えば“Electrochemistry,No.2,136(2002)”に詳細な製造方法が開示されている。
一般式(2)で示されるイオン塩としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジメチルイミダゾリウムブロマイド、1,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド、1,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファイト、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファイト、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムクロライド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムブロマイド、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムヨージド及び1,2,3−トリメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファイト等が挙げられる。これらは、市販品として入手可能である。
ピリジニウムカチオンを有する有機塩としては、一般式(3)で示される分子内塩及び一般式(4)で示されるイオン塩が挙げられる。
Figure 2009292909
式中、R7は水素又は炭素数3〜6のアルキレン基、Z−は1価のアニオンを表す。
Figure 2009292909
式中、R8は水素又は炭素数1〜15のアルキル基、Q−は1価のアニオンを表す。
一般式(3)で示される分子内塩としては、1−(3−スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩、1−(4−スルホブチル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩、1−(5−スルホペンチル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩及び1−(6−スルホヘキシル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩等が挙げられる。これらは、市販品として入手可能である。
一般式(4)で示されるイオン塩としては、1−メチルピリジニウムクロライド、1−エチルピリジニウムクロライド、1−プロピルピリジニウムクロライド、1−ブチルピリジニウムクロライド、1−ペンチルピリジニウムクロライド、1−ヘキシルピリジニウムクロライド、1−メチルピリジニウムブロマイド、1−エチルピリジニウムブロマイド、1−プロピルピリジニウムブロマイド、1−ブチルピリジニウムブロマイド、1−ペンチルピリジニウムブロマイド、1−ヘキシルピリジニウムブロマイド、1−メチルピリジニウムヨージド、1−エチルピリジニウムヨージド、1−プロピルピリジニウムヨージド、1−ブチルピリジニウムヨージド、1−ペンチルピリジニウムヨージド、1−ヘキシルピリジニウムヨージド、1−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファイト、1−エチルピリジニウムヘキサフルオロホスファイト、1−プロピルピリジニウムヘキサフルオロホスファイト、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファイト、1−ペンチルピリジニウムヘキサフルオロホスファイト及び1−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスファイト等が挙げられる。これらは、市販品として入手可能である。
上記有機塩(C)は、π共役系高分子(A)100重量部に対して、0.001重量部以上含まれていることが必要であり、好ましくは5〜100重量部、更には10〜100重量部含まれているとより好ましい。(C)が0.001重量部以上であると耐熱性向上の効果が十分に発揮でき、100重量部以下であると非導電性成分の増加による導電率の低下が少ないので好ましい。
本発明の導電性コーティング組成物には、更に溶媒又は分散媒を含有してもよい。溶媒又は分散媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド及びクロロホルム等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びエチレングリコール等のプロトン性溶媒等が挙げられる。溶媒又は分散媒を使用する場合の使用量は、π共役系高分子(A)100重量部に対して、10万重量部以下であり、好ましくは10000重量部以下である。
本発明の導電性コーティング組成物の製造方法としては、(1)(A)〜(C)を溶媒もしくは分散媒に溶解又は分散させて液状の組成物を製造する方法、(2)(A)〜(C)をドライブレンドして粉体状のものを製造する方法及び(3)(A)〜(C)を溶融ブレンドする方法が挙げられる。キャストし易いという観点から好ましいのは(1)の液状の組成物を製造する方法である。
液状の導電性コーティング組成物を製造する時の溶解若しくは分散方法は特に限定されず、通常の混合に使用されるいずれの撹拌機をも使用できる。また、必要に応じて、サンドミル等の分散機により分散処理することも可能である。
ドライブレンドの装置としては、各種混合機や混練機を使用してブレンドできる。その中でもアジテート式の混合機であるヘンシェルミキサー又はスーパーミキサーが好ましい。
溶融ブレンドの装置としては、ニーダー、熱ロール又はエクストルーダー等のニ軸押出機のような混練機が使用できる。
本発明の導電性皮膜は、前記導電性コーティング組成物を基材にキャストして得られる導電性皮膜である。基材としては、プラスチック、ゴム、ガラス、金属、セラミックス及び紙等が挙げられる。
また、本発明の導電性皮膜は、前記(A)〜(C)を使用して、以下のように製造して得られる導電性皮膜であってもよい。
(1)π共役系高分子(A)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含有する溶液を基材にキャストし、更にドーパント(B)を含有する溶液に浸漬した後、引き上げて乾燥して得られる導電性皮膜。
(2)π共役系高分子(A)を含有する溶液を基材にキャストし、更にドーパント(B)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含有する溶液に浸漬した後、引き上げて乾燥して得られる導電性皮膜。
前記(1)及び(2)における基材としては前記の基材と同様のものが使用できる。また、溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド及びクロロホルム等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びエチレングリコール等のプロトン性溶媒等が使用できる。
本発明において、基材に導電性を付与するためには、表面に形成される導電性皮膜の厚さは、好ましくは0.02〜200μmである。更に好ましくは、0.02〜20μmである。特に好ましくは0.05〜10μmである。被膜の厚さが、0.02μmより薄いと十分な導電性が得られず、200μmを超えると形成時に被膜の切断や剥離が生じ、導電性が損なわれ易くなるなどの問題が生じる。
本発明の導電性組成物は、均一皮膜の形成が可能であり、形成される皮膜は導電性及び耐熱性が非常に優れており、各種帯電防止剤、電池、防食塗料、EMIシールド、光学用コート剤、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、帯電防止塗料、導電性塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー及び電気防食等の用途に使用することができる。
<実施例>
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
<製造例1>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}の合成:
攪拌器、温度計、冷却管及び滴下漏斗を取り付けた100mlの2口フラスコ中に、ジメチルホルムアミド25部、水素化ナトリウム1.85部を仕込み分散させた後、ジエチレングリコールモノメチルエーテル17.65部を30分かけて滴下した。得られた白濁溶液に3−ブロモチオフェン(アルドリッチ社製)5部と臭化銅(I)0.455部を加えた。オイルバスを用いて、110℃で1時間加熱した後、放冷し、飽和塩化アンモニウム水溶液30部を加えた。油層を分離し乾燥させた後、SiO2カラムクロマトグラムによりモノマーである3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン6部を得た(収率:97%)。攪拌器、温度計及び冷却管を取り付けた100mlの2口フラスコに、得られた3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン5部、塩化鉄(III)5部及びクロロホルム50部を仕込み、室温で2時間攪拌した。得られた混合物をエバポレーターで濃縮した後、クロロホルム150mlでソックスレー抽出を行い、ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}4.1部を得た(収率:82%)。
<製造例2>
ポリ(3−ドデシルチオフェン)の合成:
攪拌器、温度計及び冷却管を取り付けた100mlの2口フラスコ中に、3−ドデシルチオフェン(アルドリッチ社製)5部、塩化鉄(III)5部及びクロロホルム50部を仕込み、室温で2時間攪拌した。得られた混合物をエバポレーターで濃縮した後、クロロホルム150mlでソックスレー抽出を行い、ポリ(3−ドデシルチオフェン)3.7部を得た(収率:74%)。
<製造例3>
ポリ(2−メチルアニリン)の合成;
攪拌器、温度計、冷却管及び滴下漏斗を取り付けた250mlフラスコに2−メチルアニリン13.3部、1.33mol/Lの塩酸水溶液150部を仕込み、−5℃まで冷却した。次いで過硫酸アンモニウム15部を27部の蒸留水に溶かしたものを1時間かけて滴下した。滴下終了後、引き続き12時間撹拌した。沈殿したポリマーを濾別し洗浄液のpHが6になるまで洗浄した。続いてメタノールで洗浄液が無色になるまで洗浄を繰り返した後、室温で乾燥しポリ(2−メチルアニリン)5部を得た(収率38%)。
<製造例4>
ポリ(3−メチルピロール)の合成;
攪拌器、温度計、冷却管及び滴下漏斗を取り付けた250mlフラスコに蒸留水100部、ピロール4部を仕込み、0℃まで冷却した。次いで、塩化鉄(III)6水和物100部を蒸留水30部に溶解させたものを1時間かけて滴下した。温度を0〜5℃の範囲に保ちながら6時間攪拌した後、生成したポリマー沈殿物を濾別した。蒸留水で余剰の塩化鉄を除去し、ポリ(3−メチルピロール)2.8部を得た(収率70%)。
<実施例1>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}1.0部とヨウ素1.3部と1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩1.0部をアセトニトリル66部に溶解させた。この溶液をコーターを用いて、ガラス基板上にキャストし、室温で乾燥して薄膜を形成した。
<実施例2>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}10部と1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩10部をクロロホルム400部に溶かした。この溶液を用いてキャスト法で薄膜を形成した。この薄膜をヨウ素を25%の濃度で溶かしたメタノール溶液に120分間浸漬した。薄膜を引き上げて余剰のヨウ素と極性化合物をメタノールで洗浄した後、室温、大気下で乾燥させ薄膜を得た。
<実施例3>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}を10%の濃度でクロロホルム溶液に溶かし、この溶液を用いてキャスト法で薄膜を形成した。この薄膜をヨウ素と1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩をそれぞれ25%と20%の濃度で溶かしたメタノール溶液に120分間浸漬した。薄膜を引き上げて余剰のヨウ素と極性化合物をメタノールで洗浄した後、室温、大気下で乾燥させ、薄膜を得た。
<実施例4>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}の代わりにポリ(3−ドデシルチオフェン)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例5>
ヨウ素の代わりにクロラニル酸を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例6>
ヨウ素の代わりにパラトルエンスルホン酸を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例7>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩の代わりに1−エチル−3−(3−スルホヘキシル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例8>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩の代わりに1,3−ジメチルイミダゾリウムヨージドを使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例9>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩の代わりに1,2,3−トリメチルイミダゾリウムヨージドを使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例10>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩の代わりに1−(3−スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例11>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩の代わりに1−メチルピリジニウムクロライドを使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例12>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}の代わりに、製造例3で得られたポリ(2−メチルアニリン)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<実施例13>
ポリ{3−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ〕チオフェン}の代わりに、製造例4で得られたポリ(3−メチルピロール)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして薄膜を作製した。
<比較例1>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にしたが、凝集が起こり塗布しても薄膜は形成できなかった。
<比較例2>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩を加えなかったこと以外は、実施例2と同様にして薄膜を作製した。
<比較例3>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩を加えなかったこと以外は、実施例4と同様にして薄膜を作製した。
<比較例4>
1−メチル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド分子内塩を加えなかったこと以外は、実施例5と同様にして薄膜を作製した。
実施例1〜13及び比較例1〜4で得られた薄膜の膜厚を表1及び表2に示した。膜厚の測定はONOSOKKI社製デジタル膜厚計DG−925を用いて行った。
作製した薄膜の導電率は、Loresta GP TCP−T250(三菱化学社製)を使用して、4端子法で測定した。
<耐熱試験方法>
(1)耐熱試験前の導電率測定
ドーピングして10分以内に作製した皮膜の導電率を測定した。
(2)耐熱試験
皮膜を空気雰囲気下、150℃で1時間加熱した。
(3)耐熱試験後の導電率測定
室温になるまで放冷した後、導電率を測定した。
実施例1〜13で作成した本発明の導電性皮膜及び比較例1〜4で作成した導電性皮膜の(1)作製直後の導電率、(2)空気雰囲気下、150℃で1時間加熱した後の導電率を前記した方法で測定した。その結果を表1及び表2に示す。
Figure 2009292909
Figure 2009292909
芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を加えることで、耐熱性が著しく向上した。これは、導電性コーティング組成物中の極性を上げることで、π共役系高分子のドーピング状態を安定化させ、脱ドープ反応が抑制されるためと考えられる。
本発明の導電性コーティング組成物は、高い導電性と共に、耐熱性が優れているため、固体電解コンデンサー、帯電防止フィルム、電磁波シールド材、導電性接着剤、導電性塗料、配線材料、二次電池用電極材料、表示素子、過電流保護素子及び半導体素子等としても有用である。

Claims (9)

  1. π共役系高分子(A)、ドーパント(B)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含むことを特徴とする導電性コーティング組成物。
  2. 前記芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)がイミダゾリウムカチオン及び/又
    はピリジニウムカチオンを有する有機塩(C1)である請求項1記載の導電性コーティング組成物。
  3. 前記イミダゾリウムカチオンを有する有機塩が、一般式(1)で表される分子内塩又は一般式(2)で表されるイオン塩である請求項2記載の導電性コーティング組成物。
    Figure 2009292909
    (式中、R1及びR3はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜15のアルキル基、R2は炭素数3〜6のアルキレン基、X−は1価のアニオンを表す。)
    Figure 2009292909
    (式中、R4、R5及びR6はそれぞれ独立して水素又は炭素数1〜15のアルキル基、Y−は1価のアニオンを表す。)
  4. 前記ピリジニウムカチオンを有する有機塩が、一般式(3)で表される分子内塩又は一般式(4)で表されるイオン塩である請求項2記載の導電性コーティング組成物。
    Figure 2009292909
    (式中、R7は水素又は炭素数3〜6のアルキレン基、Z−は1価のアニオンを表す。)
    Figure 2009292909
    (式中、R8は水素又は炭素数1〜15のアルキル基、Q−は1価のアニオンを表す。)
  5. 前記π共役系高分子(A)がポリアニリン、ポリチオフェン及びポリピロールからなる
    群から選ばれる1種以上である請求項1〜4のいずれか記載の導電性コーティング組成物。
  6. 前記ドーパント(B)がハロゲン、有機酸化剤、プロトン酸、ルイス酸及び遷移金属ハロ
    ゲン化物からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれか記載の導電性コーティング組成物。
  7. 請求項1〜5のいずれか記載の導電性コーティング組成物を基材にキャストして得られる導電性皮膜。
  8. π共役系高分子(A)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含有する溶液を基材にキャストし、更にドーパント(B)を含有する溶液に浸漬した後、引き上げて乾燥して得られる導電性皮膜。
  9. π共役系高分子(A)を含有する溶液を基材にキャストし、更にドーパント(B)及び芳香族複素環式カチオンを有する有機塩(C)を含有する溶液に浸漬した後、引き上げて乾燥して得られる導電性皮膜。
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