JPH08236116A - 黒鉛前駆体炭素質挿入化合物およびその再充電可能電池の負極としての使用 - Google Patents

黒鉛前駆体炭素質挿入化合物およびその再充電可能電池の負極としての使用

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JPH08236116A
JPH08236116A JP7329017A JP32901795A JPH08236116A JP H08236116 A JPH08236116 A JP H08236116A JP 7329017 A JP7329017 A JP 7329017A JP 32901795 A JP32901795 A JP 32901795A JP H08236116 A JPH08236116 A JP H08236116A
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Sacken Ulrich Von
フォン ザッケン ウーリッヒ
Chung Chi-Min
チュング チーミン
Zheng Tao
チェング タオ
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ金属挿入に対する可逆的容量が高い
新規な炭素質挿入化合物を提供する。 【解決手段】 可逆的なリチウム挿入容量、不可逆的な
リチウム挿入容量、及び非水系電解質が利用できる表面
積をもつ黒鉛前駆体炭素質ホストからなり、 1)X線回折によって求められ、かつバックグラウンド
レベルによって割った{002}ピークの中心高さとし
て定義される実験パラメータRが2.2未満であり、 2)H/C原子比が0.1未満であり、そして 3)上記の利用できる表面積が、上記不可逆的容量が上
記可逆的容量の半分未満になる程度には十分に小さく、
かつ上記炭素質ホストにアルカリ金属原子を挿入した炭
素質挿入化合物である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は炭素質物質、特に黒鉛前
駆体炭素質物質の分野に関する。さらに、本発明は再充
電可能電池、特に炭素質負極物質からなる再充電可能電
池に関する。
【0002】
【従来の技術】黒鉛前駆体化合物を構成する群のなかに
は、一般に低温で、例えば、約2000℃未満で各種の
有機源から製造され、より高温で焼鈍された際に、黒鉛
化する傾向を示す炭素質物質がある。ところが、黒鉛前
駆体には硬質および軟質の両者があり、前者は3000
℃位の温度でも実質的に黒鉛化するのは難しいが、後者
は3000℃程度でほぼ完全に黒鉛化する。これら群に
属する化合物は、リチウムイオン電池やロッキングチェ
ア型電池の負極物質として非常に有利である。これら電
池は、消費者向けの電子機器用途における小型の再充電
可能電源の現在の水準を表しているものである。また、
従来からの再充電可能電池システム、すなわち、NiC
d、NiMH又は鉛酸電池のうちで最もエネルギー密度
(Wh/L)が高いものである。加えて、リチウム−イ
オン電池の動作電圧はほぼ3.5ボルトで、多くの場合
十分に高いので、単一の電池で多くの電子機器用途に対
応することができる。
【0003】リチウムイオン電池では、正極活物質およ
び負極活物質として異なる2種類の挿入化合物を使用す
る。挿入化合物とは、可逆的な挿入ゲスト原子、この場
合はリチウム原子のホスト固体物質として作用する化合
物である。ここで、挿入ホスト化合物の構造は挿入によ
って実質的に変化しない。リチウムイオン電池の場合、
負極物質からリチウムが抽出されると同時に、放電によ
りリチウムが電池の正極に挿入される。電池の再充電過
程は可逆的である。非水性電解質にイオンが溶解する
と、リチウム原子は一方の電極から他方の電極に移動、
すなわち「揺動」し、これに伴って、電子が、電池に対
して外部的な回路に流れる。リチウムイオン電池の場
合、各物質の挿入リチウムの化学的電位差が3〜4電子
ボルト、したがって電池では3〜4ボルトになるよう
に、2種類の電極物質を選択する。また、広い化学量論
的範囲にわたってリチウムを可逆的に挿入して、高容量
電池を実現する挿入物質を選択することも重要である。
【0004】LiCoO2/黒鉛前駆体炭素の電気化学
による3.6Vリチウムイオン電池は市販されている
(ソニー・エナージ・テック社)。この市販電池では、
炭素質負極が、6個の炭素原子に対して約0.65のL
iを可逆的に挿入できる。使用する黒鉛前駆体炭素は、
一見ではコークスに類似している無秩序形炭素である。
しかし、各種文献に記載されている様々な方法を使用す
ることによって、リチウムイオン電池の可逆的容量を大
きくできる。例えば、Elservier North
−Holland社から発行されたG.Pistoia
編の「リチウム電池、新素材および今後の展望」(19
93)の第1〜47頁でJ.R.Dahn等が記載して
いるように炭素質物質の結晶構造は、その可逆的リチウ
ム挿入性に影響を与える。一例として、黒鉛は6個の炭
素原子に対して1個のリチウム原子を可逆的に組み込む
ことができるが、これは電気化学的には372mAh/
gに対応する。物質の単位重量に対するこの電気化学的
容量は、当該物質の比容量と呼ばれている。黒鉛化炭素
および/又は黒鉛それ自体は、例えば、1992年3月
13日にドイツ、ミュエンステルで開催された第6回国
際リチウム電池会議で松下が発表したように、あるいは
米国特許第5,130,211号明細書に記載されてい
るように、ある一定の条件では使用することができる。
【0005】炭素質負極物質の比容量を大きくする別な
方法もあり、これらのなかには、炭素質化合物に他の元
素を添加することが含まれる。例えば、1993年6月
11日に出願されたカナダ特許出願第2,098,24
8号明細書(特開平7−73898号公報 発明者:J
effrey R.Dahn等、発明の名称:再充電可
能リチウム電池の負極として使用する電子受容体で置換
した炭素)には、炭素質化合物構造における炭素原子
を、ホウ素やアルミニウム等の電子受容体で置換するこ
とによって負極容量を大きくする手段が開示されてい
る。ここに開示されているように、炭素をホウ素で置換
した場合には、440mAh/gもの可逆的比容量が得
られている。また、1994年3月3日に出願されたカ
ナダ特許出願第2,122,770号明細書(特願平7
−108898号 発明者:Alfred M.Wil
son等、発明の名称:炭素質化合物および再充電可能
電池の負極)には、ナノオーダーで分散したケイ素原子
からなる黒鉛前駆体炭素質挿入化合物が開示され、55
0mAh/gの比容量が例示されている。同様に、19
94年7月8日に出願されたカナダ特許出願第2,12
7,621号明細書(特願平7−164100号 発明
者:Alfred M.Wilson等、発明の名称:
炭素質挿入化合物および再充電可能電池の負極)には、
シロキサン前駆体を熱分解して、ケイ素を含有する黒鉛
前駆体炭素質化合物を生成することによって約600m
Ah/gの比容量が得られることが開示されている。
【0006】最近、当業界では、適当な出発物質の熱分
解によって、極めて高い可逆性容量をもつ炭素質物質が
製造されている。マサチューセッツ州ボストンで開かれ
た第7回国際リチウム電池会議の拡大抄録、第212頁
でA.マブチ等が実証したところによれば、熱分解コー
ルタールピッチを使用した場合、約700℃の熱分解温
度で750mAh/gもの可逆的比容量が実現できる。
また、Science,264,556,(1994)
におけるK.サトウ等による発表によれば、ポリパラフ
ェニレンを700℃で加熱することによって、680m
Ah/gの可逆的容量をもつ、同様な炭素質物質が製造
されている。さらに、S.ヤタ等によるSynthet
ic Metals,62,153(1994)には、
同様な方法で製造された同様な物質が開示されている。
これらの値はいずれも純粋な黒鉛よりもはるかに大き
い。上記物質は、1,000mAh/gを越える第1回
放電容量によって裏付けられるように、不可逆的容量が
極めて高い。さらに、上記物質はいずれも電圧対リチウ
ムの、放電および充電間の、すなわちリチウムの挿入お
よび抽出間のヒステリシスが顕著である(すなわち、約
1ボルトである)。負極としてこのような物質を使用す
るリチウム−イオン電池では、この結果、放電および充
電間の電池電圧ヒステリシスが顕著になり、エネルギー
効率が望ましくない程に悪化する。
【0007】上記炭素質物質がなぜ極めて高い比容量を
もつのかはまだ解明されていない。(しかし、J.Da
hn等は、Electrochimica Acta,
第3巻,第9号,第1179〜1191ページ,(19
93)において、ある種の無秩序炭素が、内部に黒鉛層
を複数含んだ場合にリチウム吸着によって黒鉛の容量を
越える可能性について考察している。また、同文献にお
いて、K.サトウ等は、これら炭素質物質の極めて高い
比容量の説明としてLi二量体の生成を挙げている。こ
れら物質はいずれも約700℃の温度で製造され、結晶
性は、パラメータd002、Lc、a、及びLaが決定でき
るX線パターンを示す程十分である。これらパラメータ
の定義や決定法については、1988年にJohn W
iley&Sons社から発行されたK.Kinosh
ita等の「炭素、その電気化学的および物理化学的特
性」が参考になるはずである。また、H/C原子比が
0.1以上、時には0.2付近にあることから裏付けら
れるように、いずれも相当量の水素を含有している。最
後に、熱分解温度がより高くなると、比容量が小さくな
ると同時に、水素含有量が低くなると考えられる。マブ
チ等の上記文献では、約800℃以上の温度でピッチを
熱分解すると、比容量が450mAh/g以下になり、
H/Cも大きく低下する。同様な結果は、ヤタ等の上記
文献にもみられる。
【0008】また、上記文献には、熱分解後硬質な炭素
を形成する前駆体から製造された純粋な黒鉛の比容量よ
りも大きい比容量をもつ炭素質化合物が開示されてい
る。ところが、約700℃で熱分解した上記物質の極め
て高い比容量は明らかに実現されていない。カナダ、ト
ロントで1992年に開催された電気化学会の電池部会
における拡大抄録、書類番号25、第34頁では、A.
オオマル等が、ポリフルフリルアルコールの熱分解によ
って比容量が約450mAh/gの、硬質な含リン炭素
質化合物を製造する方法を発表している。この場合、ポ
リフルフリルアルコールはリン酸の存在下で重合した単
量体から製造したものである。三菱ガス化学株式会社の
出願である特開平6−132031号公報には、イオウ
含有量が2.4%で、比容量が約500mAh/gの硬
質な炭素質化合物が開示されている。これら硬質な炭素
質化合物は、別な元素を添加してあり、いずれも十分な
温度で熱分解しているため、ほとんど水素を含んでいな
い。すなち、H/C原子比は実質的に0.1未満であ
る。これら硬質な炭素質化合物はいずれも極めて高い比
容量を示さず、また約700℃で熱分解した上記物質に
認められる望ましくない電圧ヒステリシスを示さない。
【0009】一方、別な容量の高い炭素質物質が最近製
造されているが、これらはリチウムに対して高い容量を
示し、電圧ヒステリシスはほとんどといってよい程認め
られない。1994年11月14〜16日に名古屋で開
かれた第35回電池シンポジウムで配布された書類2B
05で、Y.Takahashi等は約480mAh/
gの可逆的容量について述べているが、製造方法の細部
については何も示していない。同シンポジウムで配布さ
れた書類番号2B09で、N.Sonobe等は石油ピ
ッチから製造した、可逆的容量がほぼ500mAh/g
の硬質炭素物質について述べているが、合成方法につい
ては何も示していない。
【0010】特開平6−89721号公報では、硬質な
無秩序炭素の高い容量による利点がパラメータPS(積
層炭素の数)、nAVE(1積層体当たりの黒鉛シートの
数)、及びSI(積層係数)について説明している。開
示されているように、SIは局部的なバックグラウンド
に対する{002}ピークの高さによって定義される。
また、0.76未満のSI値をもつ炭素質化合物が請求
項に記載され、SI値の最小値としては0.67が例示
されている。リチウムに対する可逆的容量としては46
0mAh/g以下が得られている。ところが、電圧曲
線、したがって、ヒステリシス特性および不可逆的容量
についてはなにも記載がない。さらに、熱分解後の水素
含有量に関する説明やデータ、そして非水系電解質が利
用できる表面積に関する説明やデータも記載がない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、リチウムイ
オン電池の負極として好適な、リチウムを大量に挿入す
ることができる可逆容量が大きな炭素質挿入化合物を提
供することを課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、アルカリ金属
挿入に対する可逆的容量が高い新規な炭素質挿入化合
物、該挿入化合物の製造方法、及び該挿入化合物を使用
して得た一般的な電気化学装置における電極を提供する
ものである。アルカリ金属としてはリチウムが使用で
き、この場合、挿入化合物は低い不可逆的容量と小さい
挿入および抽出間の電圧ヒステリシスを持つことができ
る。本発明の炭素質挿入化合物は黒鉛前駆体炭素質ホス
トおよびこれに挿入したアルカリ金属の原子からなる。
リチウム−イオン電池に使用する場合、リチウムをアル
カリ金属として挿入できる。ホストのX線回折パターン
から求められ、かつバックグラウンドレベルで割った
{002}ピーク高さとして定義される実験パラメータ
Rは約2.2未満である。アルカリ金属の可逆的挿入の
化学量論的範囲を広くするために好ましいR値は約2未
満、特に好ましいのは約1.5未満である。ホストのH
/C原子比は約0.1未満である。黒鉛前駆体ホスト
の、非水電解質が利用できる表面積は、不可逆的容量が
可逆的容量の約1/2、特に約1/3になるように十分
小さい。非水電解質としては、エチレンカーボネートお
よびジエチルカーボネートからなる溶液が使用できる。
【0013】電気化学的方法を使用して、可逆的および
不可逆的容量を求め、次に利用できる表面積を推測する
のが好ましいが、他の物理的特性を使用しても、利用で
きる表面積を評価することができる。例えば、これら推
測値については、メチレンブルー吸着容量やBET法
(標準的な窒素吸着試験)表面積を使用することができ
る。炭素質ホストのメチレンブルー吸着容量がホスト1
gにつき約4マイクロモル未満や、BET法で求めた炭
素質ホストの表面積が約300m2/g 未満の場合、利
用できる表面積は十分小さく、容量条件を満足できる。
【0014】好適な炭素質ホストは、メチレンブルー吸
着に過度な影響がなくても、比較的緩やかな酸化によっ
て好適でなくなることがある。一方、BET法表面積は
実質的に広くなるが、原則的には、依然として許容と考
えられる範囲内にある。なお、緩やかに酸化された炭素
質ホストは、不活性ガスの存在下において約1,000
℃で熱分解された後に減量が5重量%以上になる程度に
は十分な酸素を表面に保持している。すなわち、製造
後、好適な炭素質ホストは酸化を受けないのが好まし
い。代表例についていえば、上記のような不活性熱分解
条件下における好適な炭素質ホストの減量は約5重量%
未満である。
【0015】黒鉛前駆体炭素質ホストは、一般に、約7
00℃以上の温度でエポキシ樹脂前駆体、フェノール樹
脂前駆体、炭水化物前駆体又は炭水化物含有前駆体を熱
分解し、これら前駆体から主に水素を除去することによ
って製造できる。しかし、ホストのX線回折パターンか
ら求められ、かつバックグラウンドレベルによって割っ
た{002}ピーク高さとして定義される実験パラメー
タRを約2.2未満に保つためには、熱分解温度はあま
り高くできない。その後、通常の化学的手段又は電気化
学的手段によって、アルカリ金属原子を挿入して、本発
明の挿入化合物を製造できる。
【0016】エポキシ樹脂前駆体を使用する場合、この
エポキシ樹脂前駆体はエポキシノボラック樹脂であれば
よく、硬化剤の配合量は0〜約40重量%である。硬化
剤としては、無水フタル酸を使用でき、約120℃でエ
ポキシを硬化してから、熱分解を行う。最高熱分解温度
は加熱速度を約1℃/分〜約20℃/分にすることによ
って達成できる。本発明の考えられる一つの実施例は、
約1100℃未満の最高温度で以下の化学式で表される
エポキシノボラック樹脂を熱分解することによって製造
できる。
【0017】
【化5】
【0018】代わりにエポキシ前駆体としては、ビスフ
ェノールAエポキシ樹脂を使用できる。最高熱分解温度
は加熱速度を約30℃/分にすることによって達成でき
る。本発明の考えられる一つの実施例は、約800℃の
温度で下記で表されるビスフェノールAエポキシ樹脂を
熱分解することによって製造できる。
【0019】
【化6】
【0020】フェノール樹脂前駆体を使用する場合、好
ましい熱分解温度は約800℃以上で、アルカリ金属の
可逆的挿入の化学量論的範囲を広げるために好ましい実
験パラメータRは約1.6未満である。フェノール樹脂
前駆体としてはノボラック系フェノール樹脂又はレゾー
ル系フェノール樹脂が使用できる。後者の場合、好まし
い熱分解温度は約900℃〜約1,100℃である。い
ずれの樹脂も、約150℃で硬化してから、熱分解す
る。また、いずれの場合も、熱分解温度は約1時間保持
される。
【0021】炭水化物前駆体又は炭水化物含有前駆体を
使用する場合、好ましい熱分解温度は約800℃以上
で、好ましい実験パラメータRは約2未満である。既に
述べた他の利点のほかに、このようなホストはタップ密
度が比較的高く、時には0.7g/mlを越えることが
ある。このような炭水化物前駆体又は炭水化物含有前駆
体は糖、デンプン、セルロース、及びこれらを含有する
物質からなる群から選択できる。特に、炭水化物前駆体
はショ糖、デンプン、あるいはレッドオーク(北米産カ
シワ)、かえで(メープル)、くるみ殻、セイヨウハシ
バミ殻、アーモンド殻、綿又は麦わらに含まれるセルロ
ースである。
【0022】熱分解温度は約900℃〜約1,100℃
で、熱分解時間は約1時間である。例えば、約25℃/
分の加熱速度で熱分解温度まで迅速に昇温するのが有利
である。また、濃硫酸などの酸で酸洗することによって
炭水化物を予め炭化してから、熱分解するのが有利であ
る。
【0023】本発明の化合物は、挿入物質を使用する各
種電気化学装置、例えば、スーパーキャパシター、エレ
クトロクロミック装置等の電極部分として使用できる。
これら化合物の好適な用途は電池の電極物質であり、特
に、リチウム挿入化合物正極と、非水溶媒混合物に溶解
したリチウム塩からなる非水電解質と、本発明の炭素質
挿入化合物で構成した負極とからなる非水リチウムイオ
ン電池である。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の挿入化合物は硬質な黒鉛
前駆体炭素質ホストからなり、これらホストの場合、炭
素原子層(graphene layer)の積層状態
が非常に弱く、水素含有量がほとんどなく、また通常の
非水系電解質溶液が利用できる表面積が小さい。上記化
合物の炭素質ホストは、適当な前駆体の熱分解生成物か
ら誘導できる。適当は前駆体は、水素がほとんど存在し
ないように、すなわち、H/C原子比が約0.1未満に
なるように熱分解し、にもかかわらずX線回折パターン
によって求められるパラメータRが約2.2を越えるま
では黒鉛化しないように熱分解する前駆体である。
【0025】本明細書では、このような無秩序構造を記
述するために実験パラメータRを使用し、このパラメー
タRは{002}ピークの位置に対応するブラッグ角度
でバックグラウンドレベルの評価値によって{002}
ピーク高さを割って求める。Rは、X線回折パターンに
ほとんど特徴が認められないこれら化合物の黒鉛化度を
定量化するのに好適な実験手段である。図1に、{00
2}ピーク付近の領域における黒鉛前駆体炭素の代表的
な、ほとんど特徴の認められないX線回折パターンに関
するRの定義を示す。{002}ピークの下ではある
が、そのごく近くにそって接線を引き、バックグラウン
ドを排除する。平行線が該ピークにちょうど交差する点
が、最大ピーク高さを定義する点である。すなわち、図
1の値Bが{002}ピーク高さを示し、また値Aが背
景評価値である。このように、Rを使用して、極めて無
秩序な物質における積層順序を判別することことができ
る。Rを再現性をもって定量的に求めるためには、回折
計のX線ビームのすべてを対象となる角度範囲、すなわ
ち銅ターゲットX線管を使用する場合には10〜35度
の範囲において炭素試料に限定する必要がある。Rは従
来文献における前記パラメータSIに関係がある。局部
バックグラウンドが比較的平坦な場合、および/又は
{002}ピークが背景に比較して比較的大きい場合、
SIはほぼ1−(1/R)に等しい。また、先行文献に
は、0.76未満のSI値が請求項に記載され、最小S
I値が0.67の炭素質物質が例示されている。近似換
算式を適用すると、これらの値はそれぞれ4.2および
3.0のR値に相当する。
【0026】この種類の挿入化合物はアルカリ金属挿入
に対する可逆的容量が高い。アルカリ金属がリチウムの
場合、挿入化合物はさらに不可逆的容量が小さく、挿入
および抽出間の電圧ヒステリシスが小さい。炭素質ホス
トの場合、これらの長所を生かすためには、通常の非水
電解質溶液が利用できる表面積を小さくする必要があ
る。これは、リチウムイオン電池を対象用途とする場合
に特に重要である。このような電池では、リチウムを消
費する電解質反応は負極表面で生じる。したがって、利
用できる表面積が大きい負極を使用すると、実質的に不
可逆的な容量が焼失し、また電解質が損失する結果にな
る。負極表面を電解質が利用できなくすれば、これら損
失は避けることができる。しかし、通常の非水電解質が
利用できる炭素質ホストの表面積は直接的には測定でき
ない。望ましくは、この表面積はリチウム−炭素挿入化
合物の測定した不可逆的容量によってある程度までは推
測可能である。リチウム−イオン電池に現実に使用する
場合、利用できる表面積は不可逆的容量が可逆的容量の
約1/2未満になるようにすることが望ましい。好まし
くは、不可逆的容量はさらに小さくてもよく、可逆的容
量の約1/3未満でもよい。
【0027】一般には、活性炭に使用されているメチレ
ンブルーの吸着に基づく利用可能な表面積を評価する方
法が使用できる。文献(例えば、1991年にニューヨ
ーク州のEllis Horwood社が発行した、
T.J.Kempによって翻訳されたH.Jankow
ska、A.Swiatkowski及びJ.Chom
a著Active Carbon”を参照)では、メチ
レンブルー(MB)は、等価な最小直線状寸法は1.5
nmであると考えられている。換言すれば、MBは直径
が1.5nm以上の細孔に浸透すると考えられる。非水
電解質溶液は等価な線状寸法がこれよりも短いが、一般
には、産業上の用途で対象とする寸法はこの程度であ
る。したがって、ある試料のある一定の面積がMBにと
って利用できない場合には、これらと同じ面積も電解質
にとって利用できないことになる。炭素質ホストのメチ
レンブルー吸着容量がホスト1gにつき約4マイクロモ
ル未満であると判明した場合、電解質が利用できる表面
積は十分に小さいことが多い。ところが、このメチレン
ブルー基準を満足する化合物を合成した場合でも、依然
として、電解質が利用できる表面積が許容できないほど
大きい。これは、後記の具体的実施例によって実証され
ている。
【0028】BET法は、窒素が吸着される表面積を測
定する従来からの方法である。この方法はまた炭素質ホ
ストの電解質が利用できる表面積を評価する手段でもあ
る。対応するBET法表面積値がホスト1gにつき約3
00m2 もあるときには、電解質が利用できる表面積は
十分に小さい。ところが、ホストが十分大きなBET表
面積値をもつと考えられる場合でも、電解質が利用でき
る表面積が十分に小さいことがある。
【0029】本発明によれば、わずかに酸化している本
発明の炭素質ホストは、前記メチレンブルー吸着値やB
ET基準値を越えない場合でも、あるいは顕著に越えな
い場合でも、電解質が利用できる表面積値が顕著に大き
くなることが見いだされた。すなわち、酸化は、これ以
外の点では好適な炭素質ホストを破壊する手段である。
また、酸化は、ホストの電解質が利用できる表面積が前
記評価方法によっては判別できない程度にホストの特性
を微調整する手段でもある。このような酸化の結果、表
面酸化物が生成するが、これは、不活性ガスの存在下高
温で、例えば、1,000℃で熱分解すると除去でき
る。これら環境下では、5%かそれ以上の減量が生じる
が、これはホストの酸化によって破壊された量である。
逆に、酸化後の減量が約5%未満ならば、これは炭素質
ホストが好適な状態にあること示すものである。これに
ついても、後記の具体的実施例で実証する。当業者には
知られているように、リチウム炭素質挿入化合物の容量
値は、選択する非水電解質に応じて変化する。ある種の
選択の場合、常に大きな不可逆的容量値が得られる。当
業界において不可逆的容量が小さいとして知られている
溶剤混合物はエチレンカーボネートとジエチルカーボネ
ートとからなる。この溶剤混合物を系とする電解質は、
電解質が利用できる表面積を評価するのに好適である。
各種の前駆体を熱分解して、アルカリ金属挿入に対し
て高い可逆的容量をもつ、前記の種類の炭素質ホストを
得ることができる。ある種のエポキシ、フェノール樹
脂、炭水化物及び/又は炭水化物含有化合物はいずれも
好適な前駆体である。これら好適な前駆体としては、約
700℃以上の温度で熱分解したときに、X線回折パタ
ーンによって求められる実験パラメータRが約2.2を
越えない程度に黒鉛化しない前駆体がある。
【0030】ここでエポキシについて説明すると、この
用語は、エポキシド基の反応性に基づく熱硬化性樹脂か
らなる群の総称である。定義については、1977年に
Van Nostrand Reinhold社から発
行された、The Condensed Chemic
al Dictionary,第9版を参照。この群に
属する通常の樹脂には、ビスフェノールAエポキシやエ
ポキシノボラック樹脂がある。これらは、700℃以上
で熱分解すると、リチウムの挿入又は抽出後に、大きな
電圧ヒステリシスを与えない黒鉛前駆体炭素質ホストに
なるので、特に好適な樹脂である。Rが2.2未満にな
るような温度で熱分解すると、これらホストはリチウム
に対して極めて高い比容量を示す。Rが小さくなる程、
リチウムに対する比容量が大きくなる。一般には、小さ
い値のRのほうが好ましい。これについては、Rが好ま
しくは約2未満、より好ましくは約1.5未満の後記の
エポキシ前駆体実施例において説明する。
【0031】フェノール樹脂も好適な前駆体であり、こ
の用途では、ある面においてはエポキシよりも有利であ
る。エポキシノボラック樹脂、例えば、Dow社のDE
N438(商標)を熱分解すると、分解生成物収率はほ
ぼ30%である。ところが、よく知られているように、
フェノール樹脂、あるいはフェノールホルムアルデヒド
樹脂も熱分解によって高収率で硬質炭素を生成できる。
これについては、例えば、E.Fitzer等のCar
bon”,7,643(1969)に述べられてい
る)。本明細書作成時、前者の価格は約5$/ポンド
(約9$/kg)で、後者は約1.00$/ポンド(約
2$/kg)であり、コストの面からみて、フェノール
樹脂前駆体の方が有利である。好適なフェノール樹脂前
駆体としては、ノボラック系やレゾール系の前駆体があ
る。後記のフェノール樹脂前駆体の実施例から明らかな
ように、約800℃以上の温度でこれら前駆体を熱分解
して、リチウムの挿入又は抽出後に、大きな電圧ヒステ
リシスを示さず、また低いH/C原子比に特徴がある黒
鉛前駆体炭素質ホストを得るのが好ましい。好ましいR
値として約1.6未満を例示している。これら実施例に
記載されているように、R値は小さいほうが好ましい。
【0032】ニューヨークのMcGraw−Hill社
のマグロウヒル科学技術用語辞典によれば、炭水化物は
糖類、デンプンやセルロースを始めとする炭素、水素及
び酸素からなる有機化合物群に属する化合物と定義され
ている。本発明の炭水化物前駆体は炭素、水素及び酸素
からなる炭水化物すべてを包含するものである。糖類に
は、単糖類(単純糖)、二糖類(ショ糖を始めとするよ
り複雑な糖類、グラニュー糖)及び多糖類が含まれる。
多糖類はデンプン群及びセルロース群のすべてを含むも
のである。デンプンはα−D−グルコースの重合体であ
り、一方セルロースはβ−D−グルコースの重合体であ
る。セルロースのグルコース環の相対配向はデンプンの
それとは異なっている。このような配向差をもつ異性体
又は化合物は生化学的過程では根本的に異なる振る舞い
を呈する。ところが、無機過程では、このような差は重
要ではない。例えば、異なる異性体の熱分解によって得
た挿入化合物の物理的特性及び電気化学的挙動は同じ傾
向を示す。前駆体として炭水化物を使用したほうが、エ
ポキシ前駆体及び/又はフェノール樹脂前駆体を使用す
るよりも有利なことがある。フェノール樹脂はエポキシ
に比べて比較的安く、また熱分解収率が高い(ほぼ60
%)が、熱分解過程で相当量のタール状残留物を発生す
る。この残留物は廃棄処理が難しく、また発癌性の可能
性もある。天然炭水化物は魅力のある前駆体である。と
いうのは、存在が豊富で、比較的安いからである。例え
ば、植物オーク(主にセルロースからなる)の価格は約
0.08$/ポンド(約0.18$/kg)である。熱
分解収率が20%であっても、生成物のコストは対応す
るフェノール樹脂誘導生成物のコストの約1/5であ
る。さらに、炭水化物前駆体から誘導される生成物は、
リチウム−イオン電池における高い容量エネルギー密度
に必要なタップ密度が高い。最後にいえば、炭水化物前
駆体は、フェノール樹脂前駆体に比較して、炭素1gに
つき発生するタール状残留物が少ない。
【0033】本発明者等は、800℃以上の温度で好適
な炭水化物前駆体や炭水化物含有前駆体を熱分解する
と、H/C原子比の低い(<0.1)黒鉛前駆体炭素質
ホストが得られることを見いだした。さらに、Rが2.
2未満になるように熱分解すると、リチウムに対する比
容量が極めて高いホストになることも見いだした。Rが
小さくなる程、リチウムに対する比容量が大きくなる。
後記の炭水化物前駆体実施例から明らかなように、大き
な可逆的容量を与える、R値が約2未満の熱分解生成物
を製造できる。また、これら生成物は、メチレンブルー
吸着値が4マイクロモル/g未満で、BET値が300
2/g 未満な上に、大きな不可逆的容量を示さず、ま
たリチウムの挿入又は抽出後に大きな電圧ヒステリシス
も示さない。0.7g/mlものタップ密度も実現でき
る。
【0034】使用する前駆体に関係なく、炭素の望まし
くない酸化物の生成を未然に防ぐためには、制御された
雰囲気下で熱分解を実施する必要がある。好適な反応装
置は通常の管炉に装入した、例えば、石英からなる反応
管で構成する。この管炉内では、内部の雰囲気を制御す
る目的で、出入り口の接続部を封止しておく。従って、
不活性ガスが流れている状態で、あるいは減圧又は高圧
状態で反応管内で前駆体を熱分解できる。熱分解生成物
の電解質が利用できる表面積は比較的小さくなければな
らない。したがって、一般的には、熱分解時に前駆体が
酸化するのは望ましくない。というのは、酸化が生じる
と、酸化部分の面積が大きくなることが予想されるから
である。また、熱分解による副生気体には望ましくない
酸化性ガスが含まれているが、これらは直ちに除去する
のが望ましい。
【0035】また、一般的には、生成物の黒鉛化を最小
限に抑制するために、炉温度を比較的高い加熱速度で熱
分解温度まで昇温させ、かつ熱分解時間を最短化するの
が望ましい。エポキシ前駆体やフェノール樹脂前駆体の
場合には、すぐれた生成物収率を確実にするために、理
想的には、単に蒸発するだけでなく、両者を実質的に熱
分解する必要がある。この問題は好ましい前駆体を選択
する際に考える必要がある。したがって、熱分解前に、
前駆体を硬化、すなわち架橋するのが有利である。この
硬化の程度は、熱分解前駆体に望まれる最終特性に影響
する重大な要因である。したがって、熱処理として幾つ
かの温度段階における均熱時間の設定を考えるのが有利
である。例えば、最終的に熱分解温度に加熱する前に、
低温均熱を使用して、前駆体を硬化してもよい。あるい
は、熱分解前に、加熱速度を変えて硬化度を制御しても
よい。炭水化物前駆体の場合、熱分解前に、炭水化物を
低温で予め炭化しておくのが有利である。この実施手段
としては、強酸で炭水化物を酸洗してから、該強酸を洗
い落とせばよい。
【0036】製造状態では、上記生成物には、アルカリ
金属を挿入していない。アルカリ金属原子、特にLi原
子は、リチウム電池やリチウム−イオン電池で常用され
ている通常の化学的手段や電気化学的手段によって製造
後に挿入できる。一般的には、このような化合物は電極
用途には粉末形態で使用するので、熱分解生成物は通常
粉砕する必要がある。本発明の方法で製造した電極物質
を使用した場合、各種の実施態様、特に各種の電池構成
が可能である。リチウム金属負極を使用する実験用の小
形電池については、後記の実施例で説明するが、ここで
リチウム−イオン形電池の好ましい構成について述べ
る。従来よりの渦巻き形電池は図2の横断面図に示す通
りである。正極箔1、負極箔2及びセパレータとして作
用する2枚の微細孔性ポリオレフィンシート3を渦巻き
状に巻くことによってゼリーロール体4を形成する。
【0037】正極箔は薄いアルミニウム箔に、リチウム
処理遷移金属酸化物などの好適な粉末状、代表的な粒度
は約10μm、正極物質と所望に応じて使用する他の粉
末状正極物質と結合剤と導電性希釈剤との混合物を被覆
して形成する。被覆方法の代表例についていえば、まず
結合剤を適当な液体媒体に溶解する。次に、他の粉末状
固体成分とともにこの溶液を使用して、スラリーを形成
してから、基材箔にこのスラリーを均一に被覆した後、
媒体溶剤を蒸発除去する。場合によっては、アルミニウ
ム箔基材の両側をこのように被覆処理してから、正極箔
をカレンダー処理してもよい。負極箔の形成方法も上記
と同様であるが、この場合には、正極物質の代わりに本
発明の粉末状、同様に代表的な粒度は約10μmの炭素
質挿入化合物を使用し、そしてアルミニウムの代わりに
通常は薄い銅箔を使用する。また、代表例についていえ
ば、負極箔が常に確実に正極箔に対向するように、負極
箔は正極箔よりも僅かに広くする。
【0038】ゼリーロール体4を通常の電池缶10に挿
入する。ヘッダー11及びガスケット12を使用して、
電池15を封止する。所望ならば、ヘッダーに安全装置
を組み込むことも可能である。また、安全ガス抜き孔兼
圧力動作式遮断装置を使用することも可能である。図2
にこのような構成を示すが、詳細は、1993年6月2
5日に出願されたカナダ特許出願第2,099,657
号明細書(発明者:Alexander H.Rive
rs−Bowerman、発明の名称:電気化学電池及
びその製造方法)に記載されている。さらに、ヘッダー
には正熱係数サーミスタ(PTC)を組み込んで、電池
の短絡電流性能を制限することが可能である。ヘッダー
11の外面は正端子として使用され、一方、電池缶10
は負端子として作用する。内部電極と外部端子を接続す
るために、適正な正極タブ6及び負極タブ7を接続す
る。内部短絡を未然に防ぐために、適正な絶縁片8及び
9を挿入してもよい。電池を封止するために、ヘッダー
11を電池缶10にかしめ固定する前に、電解質5を加
えて、ゼリーロール体4の細孔空間を充填する。
【0039】当業者なら理解できるように、成分物質の
種類及び量は、成分物質特性、所望性能及び安全条件に
基づいて選択する必要がある。後記実施例で製造した化
合物は、市販されている多くの代表的な炭素質負極物質
に比較して、リチウムに対する不可逆的容量がいくぶん
大きいと同時に、可逆的容量も大きい。また、実施例化
合物の最高タップ密度も、代表的な負極物質のそれより
もいくぶん低い。これは、電池を設計する際に、考慮す
る必要がある。一般的に、少なくとも電池の第1回再充
電を含む電気的状態の調整工程は組み立て過程の一部で
ある。同様に、電池動作パラメータ、例えば、電圧、電
流及び温度範囲を設定すると同時に、適正な状態の調整
工程の決定の際にも、当業者が必要である。本発明の電
池の場合、上記以外の構成、成分、例えば、直方体の形
態も可能である。コイン型電池などの小形電池も可能で
あり、このような小形電池の全体的な構成は後記の実験
用のコイン型電池の実施例に記載されている。
【0040】良くも悪くも本発明者等は理論にこだわら
ないが、この種の硬質な炭素質ホスト化合物に関して、
構造的特性がどのように電気化学的特性に関係するか
を、したがって、電気化学的用途においてどのような構
造的特性が望ましいのかを以下説明する。理解を容易に
するために、以下の説明はリチウム挿入化合物に制限す
るが、適当な場合には、他のアルカリ金属にも適用され
るものである。
【0041】550℃〜750℃の低温熱分解によって
製造された従来技術による炭素質物質における実質的な
水素の存在は、極めて大きい比容量と相関関係がある
が、挿入電圧および抽出電圧間の大きなヒステリシスに
も相関関係がある。これら作用には、挿入リチウムと水
素との結合もある。ところが、水素がほとんど存在しな
い硬質炭素質物質でも、比容量は黒鉛の比容量以上であ
る。これら硬質炭素質物質の前駆体における黒鉛シート
は架橋しているため、前駆体を熱分解すると、黒鉛構造
における層の秩序的な積層が妨害される。積層状態のよ
くない炭素原子層が存在すると、各層の両側面にリチウ
ムが吸着することがある。原子スケールでみた場合、こ
れら表面は炭素粒子内部に存在することになる。黒鉛で
は、各層は平行な状態で秩序よく積層し、これらの間に
リチウムが挿入できるので、LiC6 の組成が可能にな
る(これは約370mAh/gに相当し、炭素原子シー
トにつき1層のリチウム層が挿入されることに相当す
る)。積層状態のよくない物質では、場合によっては、
未分化のリチウム層が炭素原子シートの両側に存在する
結果、組成がほとんどLi26(約740mAh/gに
相当)になる。このように、炭素質物質における炭素原
子シートの数は比容量に対して重要なことがある。
【0042】かなり無秩序な積層間における炭素内部の
炭素原子シートの平均数Nに関する情報はX線回折によ
って求めることができる。この平均数Nに平均層間隔を
乗じた値をLcと呼ぶ。従って、Nが約1で、Lcが極め
て小さい、例えば、約5未満の炭素質物質を製造するの
が望ましい場合もある。通常、粉末X線回折実験で測定
した{002}ブラッグピークを使用して、Lc及びN
を求める。N=1では、{002}ピークは存在しな
い。理由は、干渉を作るべき平行な積層炭素原子層が認
められないからである。このような炭素は「カードの
家」のように、単層炭素原子シートが配設されたものと
考えることもできる。Nが大きくなると1組のカードを
積層し始めると、{002}ピークの高さが高くなり、
幅が狭くなる。同時に、Nが大きくなると、ピークの低
角度側のバックグラウンドが小さくなる。本明細書で
は、実験パラメータRはこのような構造を記述する目的
で使用する。また、これを使用すると、極めて無秩序な
物質の積層順序を判別できる。R値が極めて小さい(約
1)の物質はN値が1付近である。また、Rが5付近の
物質はNがかなり大きく、場合によっては約10であ
る。このように、試料のRの増大は平均Nの増大として
説明できる。
【0043】このような無秩序炭素の「カードの家」構
造は構造中にかなりの空隙や細孔が存在していることを
暗黙に示唆するものである。特に開口についての細孔
数、大きさ及び形状は単層シートの両側におけるリチウ
ム吸着性に関係があり、また電解質が利用できる表面積
に影響すると考えられる。例えば、比較的多数の単層シ
ートは、シート間に比較的多数の「細孔」が存在してい
ることを意味する。好ましい細孔の大きさは、両側にリ
チウムを吸着する程度は大きいが、非水電解質は利用で
きないナノメータの大きさである。
【0044】細孔はビン形であり、その首開口部は電解
質を内部から締め出すほど小さいが、同じ細孔の内部は
依然として電解質を簡単に受入れる程度には大きい。こ
のようなビン形細孔を数多くもつ試料は、測定方法に応
じて、表面積が比較的大きくなることもあるし、あるい
は比較的小さくなることもある。例えば、細孔開度の大
きさが窒素は十分に受入れるがメチレンブルーは受入れ
ない場合、窒素は内部の細孔表面に吸着できるが、メチ
レンブルーは吸着できない。さらに、細孔開度に微妙な
差がある場合には、電気化学的結果に劇的な差が生じ
る。ある試料について、BET法によって求めた内部細
孔表面積が巨大(>>300m2/g )な場合、これは
より大きなメチレンブルー分子が利用できないと考えら
れる。非水系電解質の有効サイズが窒素とメチレンブル
ーとの中間にある場合、細孔開度の大きさにおける微妙
な差にもよるが、このような試料の電解質が利用できる
表面積は巨大か無視できるかのいずれかである。
【0045】細孔の大きさ及びその開度を徐々に大きく
するために考えられる手段のひとつは、酸素含有雰囲気
中で試料を加熱することによって少量を焼失させること
である。活性炭に関する従前の研究(1971年ニュー
ヨークのMarcel Dekker社から発行された
J.S.Mattson等によるActivatedC
arbon”及びP.A.Thrower編、F.Ro
driguez−Reinoso等によるChemis
try and Physics of Carbo
n”,第21巻,第1頁)の示すところによれば、細孔
の大きさ及び形状はいずれも物理的及び化学的方法によ
って取り扱うことができる。なお、大半の活性炭は電気
化学的リチウム挿入ホスト物質としては許容できない。
理由は細孔の大きさが(マイクロメータースケールでみ
た場合に)余りにも大きすぎるからである。従って、酸
化が内部細孔表面積及び細孔開度の臨界的大きさを増分
的に大きくする手段である。この点に関する結果の一部
については、後記の具体的実施例に示しかつ説明する。
【0046】炭素の細孔構造研究には、小角X線散乱法
が広く使用されている(例えば、H.Peterlik
等によるCarbon,32,(1994),第939
頁参照)。相当数の微小孔が存在していると、小角度で
X線が実質的に散乱する。したがって、本発明の炭素質
ホストもこのような散乱を示すと予想されるが、逆に、
このような散乱が認められない場合は、後記の具体的実
施例に示すように、微小孔が存在していないことを示
す。なお、細孔は独立細孔、すなわち、開口がないもの
であり、このような細孔からなる物質は依然として実質
的なX線散乱を示す。このように、炭素質ホストは、多
くの細孔が独立細孔の場合には、これに相当するホスト
と比較して、細孔容量が大きく、Rの値が小さく、小角
散乱が少なく、にもかかわらずリチウム容量が小さく、
また不可逆的容量も小さい。
【0047】1955年にニューヨークのWiley
and Sons社から発行されたA.Guinier
による「X線の小角散乱」に記載されているGuini
erの理論及び式を使用すると、小角散乱強度から細孔
の大きさを求めることができる。ただし、均質な球状細
孔の大きさとランダムに存在する細孔を仮定する。細孔
の半径RSの旋回半径Rgに対する関係式は次の通りであ
る。 Rg=(3/5)1/2S また、波動ベクトルqにおける強度Iqの旋回半径に対
する関係式は次の通りである。 Iq∝NV2exp(−q2g 2/3) ただし、Nは細孔数、Vは細孔容量である。したがっ
て、この理論はln(Iq)とq2との関係が直線になる
ことを予言している。上記仮定は一般には成立しないも
のであるが、このような直線的関係は、以下の本発明実
施例で確認された。これは、これら実施例がほぼ均一な
大きさの細孔からなることを示唆している。一般的にい
って、均一な細孔の大きさが好ましい。というのは、小
さくなると、すなわち、通常の原子間距離の範囲にある
と、可逆的容量への寄与が小さいからであり、また大き
くなると、すなわち>30Åであると、電解質がより利
用しやすくなり、結果として以下の具体的実施例に示す
ように容量が不可逆的になるからである。
【0048】A.マブチ等のJ.Electroch
m.Soc.,第142巻,第4号,1995年4月号
には、相当量の水素を含むメソカーボンの微小ビーズに
ついて小角散乱データから誘導した旋回半径値が示され
ている。有効な細孔大きさは比較的非常に大きく、Rg
がほぼ37Å以上で、化合物はリチウムの挿入および抽
出後の電圧曲線において顕著なヒステリシスを示す。
【0049】
【実施例】以下に、実施例によって本発明の特徴を説明
する。
【0050】一般的には、炭素質物質は不活性気体下の
熱分解によって炭化水素前駆体又は重合体前駆体から製
造した。特に断らない限り、前駆体を秤量し、この秤量
した量の前駆体を直接アルミナボートに装填し、ステン
レス鋼か石英からなる管に挿入した。約30分間不活性
気体で管をフラッシュ処理してから、管状炉に挿入し
た。炉温度、すなわち、試料温度を最終熱分解温度まで
昇温し、この温度に1時間保持した。加熱速度は重要で
あることが多く、これらの場合でも、プログラム可能な
温度制御器を使用して、加熱速度を注意深く制御した。
【0051】粉末X線回折を使用して試料を特性化し
た。使用した回折計は、銅ターゲットX線管と回折ビー
ムモノクロメーターを備えたSiemens D500
0回折計であった。回折計の動作方式はブラッグ−ブレ
ンターノ擬合焦方式である。ステンレス鋼ブロック体の
深さ2mmの凹部に粉末を充填し、表面を水平にするこ
とによって試料を作製した。使用した入射スリットにつ
いては、10〜35度の散乱角度範囲においてX線ビー
ムが確実に試料を照射するように選択した。測定の間、
スリットの幅を一定に維持した。これによって、測定R
値の再現性が確実になった。なお、ある実施例では、測
定されたR値は前記とはわずかに異なっていた。エポキ
シ前駆体及フェノール樹脂前駆体に関する本発明の実施
例、従来例1及び2、活性炭に関する具体的実施例にお
いては、{002}ピーク位置は、バックグラウンドを
除くというよりは、バックグラウンドを含んだピーク位
置とした。求められたR値への作用は実際的な用途では
小さく、以下の実施例では無視できるものである。
【0052】既に述べたように、透過モードで動作する
前記回折計を使用して、小角X線散乱データを集めた。
カプトン(デュポン社 商品名)窓を備えた矩形フレー
ム体に粉末を充填して試料を作製した。作製した試料の
厚みは約1.5mmにした。入射スリット、散乱防止体
及び受光スリットをそれぞれ最小値、0.1°、0.1
°および0.1mmに設定した。この装置では、約0.
035Å-2の波動ベクトルqに相当する約0.5°の最
小散乱角度に達した。2θ=1°で散乱した強度を測定
し、試料質量で割って、試料の細孔数×容量2の相対値
を求めた。この値をI1とした。ln(強度)対q2とし
てプロットした小角散乱データに当てはめた直線及び前
記関係式を使用してRgを求めた。
【0053】標準的なCHN分析を試料の空気中燃焼後
のガスクロマトグラフィー分析を使用して、試料の炭
素、水素及び窒素含有量を求めた。このようにして求め
た重量パーセントの標準偏差は±0.3%であった。い
ずれの場合も、炭素含有量は試料重量の90%以上で、
水素含有量は3.3%未満であった。H/C原子比は水
素および炭素の重量パーセント比を求め、これに12を
乗ずることによって炭素の水素に対する質量比を評価し
た。いずれの試料も窒素含有量は低く、実験結果を示す
表には必ずしも記載はしていない。また、試料の酸素含
有量は分析しなかった。
【0054】既に述べたように、前記の「Active
Carbon」に記載されているのと同様な従来方法
の変形法を使用して、メチレンブルー(MB)の吸着容
量を求めた。試験に先立ち、130℃で試料を乾燥し
た。以下の実施例のほとんどで、Micro-Liquid Laborat
ory Cleaner(商標) を使用して調製した標準的な実験
室用洗剤である1〜2mlの0.2%界面活性剤溶液及
び約5mlの脱イオン水とともに、約0.1gの試料を
フラスコに入れた。数工程で水和化メチレンブルーの
1.5g/l(リットル)の滴定溶液を使用して滴定を
行った。第1溶液量を加え、5分間激しく震盪した。第
1回の溶液量は、試料の評価吸着容量に応じて最小の
0.1mlか、あるいは1.0mlにした。得られた混
合物を次にメチレンブルーの0.4mg/l基準溶液と
視覚比較した。混合物が基準溶液よりも澄明な場合に
は、さらに1.0mlの滴定溶液を加え、上記手順を繰
り返した。基準溶液のほうが混合物よりも澄明な場合に
は、吸着を最長で三日間続けた。混合物が再度基準溶液
よりも澄明になった場合には、段階的な滴定を続けた。
これ以外では、測定を終了し、吸着容量を、最後の段階
的添加直後のメチレンブルーの滴定量とした。試験した
試料の場合には、一般的に、5分間隔で滴定メチレンブ
ルーを吸着させた。ただし、最後の数段階の添加につい
てはこの限りではなかった。炭水化物前駆体実施例、及
び焼失及び小角散乱に関する具体的実施例でも、1mM
メチレンブルー滴定溶液を使用し、段階的な添加では一
定の濃度を使用しなかった以外は、上記と同じ手順を使
用した。
【0055】まづ、従来からのBET法を試みて、いく
つかの硬質炭素質生成物の表面積を窒素吸着法に基づい
て求めたが、この方法では、信頼性よく表面積を求める
ことはできなかった。分析中、吸着が長時間ゆっくりと
進んだ。試料の相当な表面積において、窒素はこの表面
積を利用できることはできたが、困難であった。このよ
うに、従来からのBET法を使用した場合、吸着値の信
頼性には問題があることがわかった。かわりに、変形法
を使用した。すなわち、Micromeritics Flowsorb 2300
表面積分析装置を使用して、一点BET表面積測定法を
実施した。各測定を行う前に、不活性気体下で数時間炭
素試料を140℃で脱気した。窒素30%を含むヘリウ
ムとの混合気体を使用して77°Kにおける試料への窒
素の吸着を数時間進めた。吸着の終了時点は、試料前後
の気体の流れの熱伝導率が等しくなった時点とし、この
時点では気体組成は同じある。窒素の吸着量は試料温度
を室温まで昇温したときに脱着した量によって求めた。
各試料について測定値を2個求め、脱着値の平均値とし
て結果を示した。通常、±3%の以内の精度で、測定値
を再現性よく得ることができた。次に、標準的な方法を
使用して、窒素分子が利用できる試料の比表面積を算出
した。既に説明したように、Quantachrome Dual Autota
p装置を使用して、タップ密度を測定した。10ml毎
に目盛りのついたシリンダーに試料を入れ、標準的なタ
ッピングを500回行った。
【0056】実験用のコイン型電池を使用して、リチウ
ムに対する比容量を始めとする試料の電気化学的特性を
求めた。これら電池は通常の2325ハードウエアを使
用して組み立て、組み立ては、J.R.Dahn等によ
るElectrochimica Acta,38,1
179(1993)に記載されているように、アルゴン
を充填したグローブボックス内で行った。図3は、コイ
ン型電池の分解図である。分析を目的として、これら電
池では、試料を正極として使用し、リチウム金属負極に
対向配置した。ステンレス鋼キャップ21及び特殊な耐
酸化性ケース30が容器になり、それぞれ正負端子とし
て作用する。封止材として使用するガスケット22によ
って、両端子を分離する。軟鋼製の円板ばね23及びス
テンレス円板24によってリチウム負極25、セパレー
タ26及び試料正極27からなる積層体に機械的圧力を
加える。電池封止後に約15バールの圧力が加わるよう
に、円板ばねを選択した。リチウム負極25としては、
厚みが125μmの金属箔を使用した。セパレータとし
ては、Celgard2502(セラニーズ社製)微細
孔ポリプロピレン膜を使用した。電解質28としては、
30/70容量比のエチレンカーボネートとジエチルカ
ーボネート混合溶媒に溶解した1MのLiPF6 塩の溶
液を使用した。
【0057】粉末状試料化合物にSuper S(En
sagri社の商標)カーボンブラック導電性希釈剤を
加えたものと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)結合
剤をいずれの量も試料重量の約5重量%となる混合物を
薄い銅箔に均一被覆して、試料正極27を作製した。す
なわち、粉末状試料とカーボンブラックをまずN−メチ
ルピロリドン(NMP)の20%PVDFの溶液に加え
て、最終電極体の5%がPVDFになるようにスラリー
を生成した。次に、スラリー粘度が平滑なシロップ状粘
度になるまで、過剰のNMPを加えた。展開器を使用し
て、スラリーを小さな、予め秤量したCu箔片、面積が
約1.5cm2 に展開し、約90℃で空気中においてN
MPを蒸発除去した。試料正極体を乾燥後、約25バー
ルの圧力で平板間で圧縮した。次に、これら電極を秤量
し、箔、PVDF及びカーボンブラックの重量を差し引
いて、電極活物質量を求めた。代表的な電極は厚みが1
00μmで、活物質量は15mgであった。
【0058】このように、実施例では、本来、負極とし
て用いる本発明の炭素質挿入化合物を正極として用い、
リチウム金属を負極としたが、これは、リチウムイオン
の供給源として金属リチウムを使用することによって、
炭素質挿入化合物へのリチウムの挿入と取り出し過程
を、炭素質負極とリチウム挿入した複合酸化物を正極と
した電池に比べて単純化し、より明白に本発明の炭素質
挿入化合物の特性を証明することを意図したものであ
る。そして、本発明の実施例におけるリチウム負極に対
する正極としての使用により、本来の目的であるリチウ
ムイオン電池における負極としての有用性が十分に証明
されることは当業者には明白であります。
【0059】コイン型電池の組立後、グローブボックス
から電池を取出し、30±1℃で温度調整し、±1%の
電流安定性で定電流充放電試験器を使用して充放電し
た。電圧変化が0.005V以上になる毎に、データを
集めた。特に断わらない限り、電池の初期の2サイクル
の間は、電流を活物質1gにつき18.5mAに調節し
た。実施例の炭素の放電容量の多くはリチウム金属の電
位に極めて近い。このように、全体の可逆的容量を求め
るためには、特別な試験方法が必要である。したがっ
て、一定の時間、定電流でコイン型電池を放電した。こ
の時間については、電池の電圧がLiに対して0ボルト
未満になるように、また炭素電極にリチウムめっきが生
じるように選択した。なお、使用する定電流によって過
電圧が生じるため、電池電圧が0ボルト未満になっても
直ちにはリチウムめっきは生じないが、その後まもなく
してほぼ−0.02Vでめっきが生じ、めっきの開始後
電池の電圧がわずかに高くなる領域と、これに続く電圧
が一定な、あるいはほぼ一定な領域に特徴がある。リチ
ウムめっきの開始は、以下の実施例に示すように、明瞭
かつ簡単に知ることができる。炭素電極のリチウムめっ
きは数時間続いた後、電流が反転する。めっきリチウム
がまず剥離してから、挿入リチウムが炭素から取り出さ
れる。充電率が小さい、すなわち活物質1gにつき37
mA未満ならば、これら2つの過程は判別が容易であ
る。可逆的容量は、リチウムめっきおよびめっきの剥離
を除く、2回目の放電容量と2回目の充電容量の平均と
して算出した。1回目の放電で不可逆的過程が生じるの
で、この計算には、1回目の放電容量を使用しなかっ
た。
【0060】従来例1 リン酸、シュウ酸、ホウ酸のいずれかを存在させた状態
でフルフリルアルコールから熱硬化性重合体を調製した
後、前記のA.Omaruの文献に記載されている方法
に従って1,100℃以下間での温度で熱分解していく
つかの試料を作製した。これら試料すべてについて上記
のようにしてR値を求めた。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】表1から明らかなように、従来例の高容量
の硬質炭素試料のR値はいずれも2.2以上である。 従来例2 前記したA.マブチ等の文献に記載されている従来例物
質を複製するために、呉羽化学工業製のKSRAWグレ
ード(商標)石油ピッチを使用した。このピッチを55
0℃〜950℃の温度で熱分解することによって一連の
軟質炭素試料を作製した。これら炭素試料のH/C原子
比を前記と同様にして求め、結果を図4に示す。なお、
後述するエポキシ前駆体から誘導した本発明実施例試料
のH/C原子比も併記する。これら試料のいくつかにつ
いて{002}ピーク付近のX線回折パターンを前駆体
自体のパターンとともに図5に示す。なお、図示を明瞭
にするために、これらパターンは2,000カウントだ
けオフセットしてある。これら炭素試料のR値及びH/
Cデータを表2に示す。いずれの試料もR<2.2、H
/C<0.1を満足しない。
【0063】
【表2】
【0064】上記の試料のうちいくつかを使用して実験
用のコイン型電池を作製した。これら電池の第2サイク
ルについて、電圧対容量を図6にプロットする。図6b
では、図示を明瞭にするために、0.05Vだけプロッ
トを順次上にずらしてある。図6aは0ボルト付近の図
6bを拡大して図示したものである。図6aから理解で
きるように、サイクル中に、550℃におけるデータに
ついては矢印で示すようにリチウムめっきが開始し、リ
チウムの取り除きが終了している。図6aでは、図示を
明瞭にするために、データを0.1Vだけ順次上にずら
してある。700℃かそれ以下で熱分解した各試料の、
既に説明したように算出した最大比容量は約650mA
h/gである。700℃以上で熱分解した試料は容量が
かなり小さく、900℃で熱分解した試料については約
400mAh/g以下であった。特に、低温で熱分解し
た試料については、電圧プロットにおいて顕著なヒステ
リシスが認めることができる。従来例による容量が極め
て高い炭素試料は、約700℃以上で熱分解した場合に
は、その極めて高い容量を失うと考えられる。また、こ
れら試料については、大きな比容量と大きなH/C比と
の間に相関関係がある考えられる。
【0065】(活性炭に関する具体的実施例)活性炭と
して、米国、マサチューセッツ州のSpectraco
rp社製のM20E及びM30(商標)グレード活性炭
を使用した。各活性炭の一部についてはそのまま分析
し、一部については分析の前に1000℃で熱分解し
た。さらに、ポリフッ化ビニリデン(PVDF、米国、
Aldrich Chemical社)を1,000℃
で熱分解した。これら各試料について、R、H/C、C
HN及び比容量値を前記と同様にして求めた。各活性炭
試料について、Rは約1.1で、H/C原子比は非常に
小さく(<0.03)であった。入手した状態のもの、
そして1000℃で熱分解した状態のM20E試料に関
する、{002}ピーク付近のX線回折パターンを図7
に示す。熱分解PVDF試料はRが約1.3で、H/C
原子比は0.053であった。これら試料すべてについ
て通常のBET法によって求めた表面積は比較的大きく
(>100m2/g )であった。また、メチレンブルー
に対する吸着容量も比較的大きい。M20EおよびM3
0活性炭は、入手した状態ではメチレンブルー吸着容量
が400マイクロモル/g以上であり、滴定の続行は不
必要と考えられた。熱分解したPVDF炭素試料のメチ
レンブルー吸着容量は約200マイクロモル/gであっ
た。試料はいずれも大きな比容量を示したが、電圧プロ
ットのヒステリシスは相当なもので、第1回放電後に相
当な不可逆的容量を示した。例えば、図8に、1,00
0℃で熱分解したM30活性炭を含む電池に関する第2
サイクルの電圧対容量をプロットしたものである。比容
量は約550mAh/gで、ヒステリシスも顕著であ
る。図9に、1,000℃で熱分解したM30活性炭を
含む同じ電池に関する第1サイクルの電圧対容量プロッ
トを示す。第1回放電容量は巨大で約2,000mAh
/gであるため、不可逆的容量が相当な程度大きい。
【0066】本実施例から明らかなように、本発明以外
の前駆体から誘導した幾つかの硬質炭素は、700℃以
上の温度で熱分解した場合には、R<2.2で、H/C
<0.1であるにもかかわらず、本発明の長所である、
低いヒステリシスおよび不可逆的容量を与えない。これ
ら硬質炭素はBET法による表面積が大きく、またメチ
レンブルー吸着容量も比較的大きい(>>4マイクロモ
ル/炭素1g)。
【0067】(本発明の実施例) エポキシ前駆体 エポキシ実施例1 前駆体として、Dow438(米国、Dow Chem
ical社の商標)エポキシノボラック樹脂を使用し
て、一連の試料を作製した。通常通り、異なる量の無水
フタル酸硬化剤と樹脂を混合し、熱分解する前に、約1
20℃で混合物を硬化して、硬質なプラスチック状態に
した。700℃〜1100℃の温度で熱分解を実施し
た。その後、前記したようにして、試料の大部分につい
て、R、H/C、CHNおよび比容量を求めた。所望の
試験に応じて、活物質1gにつき電流をそれぞれ7.4
mA、18.5mA、37mAに調節した。また、いく
つかの代表的な試料について、BETおよびメチレンブ
ルー吸着容量を通常のようにして求めた。これら試料を
対応する値とともに表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】図10において、700℃で熱分解した試
料番号E1についての電圧対容量をプロットし、同じ温
度で熱分解した従来例2のピッチ試料のそれと比較す
る。これら2つのプロットはほとんど同じ挙動を示す。
ただし、試料E1を使用した電池はリチウムめっき量が
多かった。図4から明らかなように、図10の2つの試
料はH/C比がほとんど同じである。図11には、1,
600カウントだけオフセットした、試料E1、E2お
よびE3のX線回折パターンを示す。これらから明らか
なように、試料番号E1はRが図5の対応するピッチ試
料よりもかなり小さい。また、{002}ピークが低角
度バックグラウンドの肩部のみに相当することによって
裏付けられるように、試料E1の場合、炭素原子層の積
層数が非常に少ない。図11および図5には、高温で熱
分解した場合に認められるこれら構造的な差が示されて
いる。
【0070】図12は、試料E1、E2、E3、および
E4に関する電圧対容量を示したものである。これらは
それぞれ図12a及び12bにおいて0.05ボルト及
び0.1ボルトだけオフセットしてある。これら試料い
ずれもR<2.2であった。試料E1は電圧プロットに
おいてかなりのヒステリシスを示す。熱分解温度が高く
なると、試料E1の充電時1.0V付近で利用できる容
量が0V付近まで下がるため、ほぼ900℃〜1,00
0℃の可逆的サイクルではヒステリシスがほとんど認め
られない。さらに、従来例2の熱分解ピッチとは異な
り、試料E3およびE4の場合、900℃〜1,000
℃の熱分解温度で大きな比容量が維持される。
【0071】また、図13は、試料E5、E6、E7お
よびE9に関する電圧対容量を示したものである。図1
3aおよび図13bにおいてそれぞれ0.05ボルトお
よび0.1ボルトだけオフセットしている。また、これ
ら図のものには、1,000℃〜1,100℃で熱分解
した試料についてRと比容量との関係も示す。Rが増加
すると、比容量が小さくなる。図14には、図13で示
した試料について、{002}ピーク付近のX線回折パ
ターンを示す。図示を明瞭にするため、3,000カウ
ントだけ、パターンを順次上にオフセットしている。ま
た、図15に、いずれも900℃〜1,100℃で熱分
解した試料について、比容量対Rをしめしている。いず
れの試料もヒステリシスのほとんど認められない電圧曲
線を示し、またいずれもH/C<0.1であった。ここ
でも同様に、Rが増加すると、比容量が小さくなる。
【0072】図16に、試料E7を使用した実験用のコ
イン型電池の第1回充放電を示す。この電池は、第1回
放電容量が約625mAh/gで、第1回再充電容量は
約465mAh/gである。従って、試料E7の不可逆
的容量は約160mAh/gに過ぎないが、これは実際
のリチウムイオン電池においては許容範囲にあると考え
られる。試料E7について、通常のBET法で測定した
表面積は217m2/gであった。この表面積のすべて
を電解質が利用できならば、例えば、米国特許第5,0
28,500号公報の開示からみて不可逆的容量がこの
ような小さい値にならないと思われる。しかし、試験に
使用したこの試料や他の本発明試料はいずれもメチレン
ブルー吸着容量は比較的低く(<5マイクロモル/g)
である。このように、本発明の挿入化合物は比容量が極
めて高く、また電圧ヒステリシスも不可逆的容量も許容
できるものである。
【0073】エポキシ実施例2 前駆体としてDow D.E.R.667 (米国、Dow
Chemical社の商標)ビスフェノールA系エポ
キシ樹脂を使用して、試料を作製した。本実施例では、
硬化剤は使用しなかった。熱分解を実施する際には、ま
ず250℃で2時間加熱してから、30℃/分の昇温速
度で800℃まで加熱した後、2時間保持した。この試
料のRは約1.52であった。次に、実験用のコイン型
電池を作製し、比容量値を求めた。これら電池のうち一
つについて、電圧対容量プロットを図17に示す。図1
7a及び図17bにおいては0.05ボルト及び0.1
ボルトだけプロットをオフセットしている。比容量は4
10mAh/gであった。不可逆的容量はわずか約16
0mAh/gで、電圧ヒステリシスは許容できるもので
ある。このように、ビスフェノールA系エポキシ樹脂を
使用して本発明の挿入化合物を製造することは可能であ
る。
【0074】(フェノール樹脂前駆体) フェノール樹脂実施例1 前駆体として異なる3種類のフェノール樹脂を使用し
て、一連の試料を作製した。2種類は塩基触媒系、ある
いはレゾール系フェノール樹脂で、残りの1種は酸触媒
系、あるいはノボラック系フェノール樹脂である。使用
したこれら3種類の前駆体は次の通りである。 A)レゾール系製品#11760、製造元:Plenc
o,PlasticsEngineering社、所在
地:米国、WI53082−0758、シーボーイガン B)レゾール系製品#29217、製造元:Oxych
em,Occidental Chemical社、D
urez Engineering Material
s、所在地:米国、テキサス州75244、ダラス、5
005LBJフリーウエイ C)ノボラック系製品#12116、製造元:上記Pl
enco これらフェノール樹脂前駆体はいずれも粉末状で入手し
た。それぞれについて、約150℃〜約160℃で30
分間加熱して粉末を硬化してから、熱分解した。硬化工
程終了時には、固形体が得られた。自動粉砕機で固形体
を粉末化した。この粉末化硬化樹脂を、アルゴン気流下
の管状炉で熱分解した。3時間かけて、試料を室温から
所望の熱分解温度に加熱し、この温度に1時間保持し
た。次に、炉電力を止め、アルゴン気流下の管状炉内部
で室温付近まで試料を冷却した。冷却時間は数時間であ
った。
【0075】熱分解は700℃〜1100℃の温度で行
った。その後、試料を粉末化した。前記と同じようにし
て、試料の大半について、R、CHN分析によるH/C
及びコイン型電池試験による比容量を求めた。試料B1
000について求めたメチレンブルー吸着容量はホスト
1gにつき約1.6マイクロモルであった。熱分解前後
の試料重量から収率を求めた。これら測定結果を表4に
示す。各試料を使用して2つの電池を作製した。それぞ
れの実験結果は20mAh/g以内であり、表4に示し
た値はいずれも平均値である。
【0076】
【表4】
【0077】図18に、熱分解した、上記Aに属する一
連の前駆体に関する第1回の放電−充電サイクルを示
す。700℃及び800℃で加熱した試料の電圧分布に
おけるヒステリシスはかなり大きく、Li挿入電圧は0
V付近で、抽出電圧は1.0V付近である。この原因は
試料の高い水素含有量である。900℃に加熱すると、
ヒステリシスが実質的になくなり、試料は低電圧で相当
な容量を示す。図19に同じ前駆体の第2回サイクルを
示す。垂直な線が放電時におけるリチウムめっきの開
始、及び充電時におけるリチウムの取りだしの終了を示
す。900℃及び1,000℃に加熱した試料から作製
した電池は十分有望と考えられる。可逆的容量はそれぞ
れ約510mAh/g及び約450mAh/gである。
【0078】図20には、表4においてBに属する一連
の前駆体を熱分解したものに関する電圧と容量の関係を
示す。図20(a)は、第1回サイクルを示し、図20
(b)には第2回サイクルの電圧分布を示す。1,00
0℃で作製した試料は、可逆的容量が約560mAh/
gで、不可逆的容量はわずか約200mAh/gであ
る。これは、リチウムイオン電池の負極として使用する
のに極めて魅力のある物質である。
【0079】また、図21には、表4においてBに属す
る一連の前駆体を熱分解したものに関する電圧と容量の
関係を示す。図21(a)は、第1回サイクルを示し、
図21(b)には第2回サイクルの電圧分布を示す。9
00℃及び1,000℃で作製した試料は、可逆的容量
が450mAh/g付近にある。また、後者の不可逆的
容量はわずか130mAh/gである。
【0080】試料B1000からなる電池に関して、活
物質1gにつき37mAの電流で充放電サイクル試験を
実施した。図22に、この電池に関する容量対サイクル
数を示す。サイクル試験後、容量損失はほとんど認めら
れない。このように、本発明の挿入化合物は可逆的比容
量が極めて高く、また電圧ヒステリシスも不可逆的容量
も許容できるものである。
【0081】フェノール樹脂実施例2 前記実施例では、前記のBに属する前駆体から作製した
一連の試料が最も高い可逆的容量をもつことがわかっ
た。900℃〜1,100℃という狭い温度範囲で可逆
的容量及び不可逆的容量がどのように変化するかを調べ
るために、この前駆体からさらに別な試料を作製した。
これら試料を、前記と同様にして、コイン型電池で試験
し、電圧分布、不可逆的容量及び可逆的容量を求めた。
各試料につき2つの電池を作製した。両電池の実験結果
の差は20mAh/g以内であった。 表5に、前記の
Bに属する前駆体から作製した全試料に関する平均比容
量をまとめて示す。また、図23に、これら試料を用い
て作製した電池に関する代表的な第2回サイクル電圧分
布を図示する。
【0082】
【表5】
【0083】これら挿入化合物の特性を最適化するため
には、熱分解温度を適正に選択することが重要と考えら
れる。 (炭水化物前駆体および炭水化物含有前駆体)各種炭水
化物を使用して、本発明の炭素質ホストを作製した。表
6に使用した前駆体を示し、併せて前駆体の入手先及び
形態を示す。
【0084】
【表6】
【0085】前駆体、典型的には一回の量を1〜25g
としてニッケル箔ボートに入れ、ステンレス鋼製か石英
製の炉管に載置した。加熱する前に、空気を除去するた
めに、アルゴン(超高純度品 Linde社)を用いて
管を30分間フラッシュ処理した。25℃/分の加熱速
度で室温から所望の熱分解温度に試料を加熱した後、こ
の熱分解温度に1時間保持した。炉電力を止め、アルゴ
ンが流れている炉管内部で試料を室温付近まで冷却した
(冷却時間は数時間であった)。収率を求めるために、
熱分解前後で試料を秤量した。一部の試料については、
1,200℃以上の温度で熱分解した。前記と同様にし
て、これら試料をまず1,100℃で熱分解した後、C
entorr Series10炉を使用して同様な方
法で熱分解を続けた。グラニュー糖(以下単に「砂糖」
と称す)のいくらかの試料を過剰な濃硫酸を使用する酸
洗によって予め炭化した。約50gの砂糖に約100c
cの濃硫酸を徐々に加えて混合した。得られた焼成体を
短時間破砕してから、沸騰水で洗浄し濾過して、固形物
を回収した。水道水を使用して、濾液のpHが同じ(約
6)になるまで水洗を繰返した。熱分解する前に、11
0℃で生成物を一夜乾燥した。これら試料について、砂
糖の初期重量で割った最終炭素量によって炭素収率を求
めた。これらの試料を「a−砂糖」試料とする。熱分解
試料を粉砕して粉末化して、前記と同様にして分析し
た。これら測定結果を表7、表8に示す。
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】ただし表7、表8において、熱分解温度は
℃、収率の*のものは、沸騰によって試料が試料ボート
からあふれ、評価が困難であるものを示している。ま
た、I1は試料1mg当たりのカウント数を示し、密度
はタップ密度を示し、MBは試料1g当たりのメチレン
ブルー吸着容量をマイクロモル単位で示している。表面
積は、BETによる測定値である。また、可逆容量、非
可逆容量は、それぞれ2個の電池についての測定値を列
挙している。実施例に示す簡単な熱分解方法でも、20
%付近の収率を容易に実現できた。800℃以上の加熱
温度でH/C比は0.1未満であった。タップ密度は
0.9g/ccに達するものが得られた。
【0089】図24に、熱分解温度の関数として、表7
に示した熱分解ショ糖試料(#1、2(BDHより入
手)、4、5、6及び7)の粉末X線回折パターンを示
す。これら試料はいずれの場合も、22度付近に{00
2}ブラッグピークが僅かに認められたが、これは「カ
ードの家」のように炭素の単層が積層したものを主構成
とする物質を示すものである。それぞれ44度及び80
度付近の{100}及び{110}ピークを使用して、
炭素原子シートの横方向範囲、すなわちこれらシートが
多少とも平坦な距離であるのを評価できる。横方向範囲
は、600℃で熱分解した試料については10Å付近か
ら、そして1,100℃で熱分解した試料については2
5Å付近からである。酸洗砂糖(#8〜13)から作製
した試料の回折パターンも同様な特性を示す。
【0090】図25に、デンプン及びセルロースを1,
000℃で熱分解して得た試料に関するX線回折パター
ンを示す。試料#18、17、16、15及び14につ
いては図25にパターンを上下にわたって示してある。
これらパターンは相互に類似し、また図24の試料#2
のパターンにも類似し構造的に類似していることを示唆
している。熱分解温度を高くすると、BET表面積が小
さくなる傾向がある。ただし、試料#3及び9は表面積
が異常に大きい。熱分解時、試料は水、CO2 、その他
の気体を発生する。アルゴン流量が低すぎる場合には、
これら気体が管に残留し、試料を酸化するので、表面積
が大きくなる。
【0091】前記と同様にして、これら熱分解試料を使
用して、実験用のコイン型電池を作製した。図26は7
00℃〜1,100℃で作製した試料#8、2、10、
11及び12から作製した電池の容量と電圧の関係を示
す図であり、第2サイクルの電圧対容量プロットを示
す。試料#8、2及び10は可逆的容量が大きく、しか
も電圧ヒステリシスがほとんど認められない。800℃
及びそれ以下で作製した試料は相当量の水素を含むの
で、電圧プラトーにおけるヒステリシスが大きい。にも
かかわらず、このような炭素は、十分に低いコストで製
造した場合には、ある種の電池用途では有用である。
【0092】表7のデータから明らかなように、不可逆
的容量は、熱分解温度が高くなると小さくなる。同じ温
度で作製した場合でも、試料#3及び9は、可逆的容量
が試料#2よりもはるかに小さい。この理由は、試料#
2と比較した場合、試料#3及び9のほうが表面積が大
きいことによって裏付けられるように、試料間の差にあ
る。
【0093】図27は、1000℃で熱分解したショ糖
前駆体、セルロース前駆体及び澱粉前駆体を使用して作
製した代表的な電池に関する第2回サイクルの電圧対容
量の特性を示す図である。試料#(比較用)、#18
(オーク)、#14(澱粉)、#16(くるみ殻)及び
#15(セイヨウハシバミ殻)のデータを示す。試料#
2、18及び14はすぐれた挙動を示し、他の試料の性
能も、熱分解による変化を通じて改善できる可能性が高
い。このように、オーク、澱粉やくるみ殻から作製した
熱分解生成物もショ糖から作製した生成物と同様な挙動
を示す。
【0094】前記と同様にして、電池のいくつかについ
て、サイクル試験を実施した。サイクル試験では、2.
0Vとリチウムめっき開始との間でそれぞれ74mA/
g及び37mA/gの充電電流を使用した。図28、図
29及び図30に、それぞれ試料#8、14及び18か
らなる電極を含む電池に関する容量対サイクル数を示
す。サイクル試験後も、これら電池は容量損失がほとん
どなく、500mAh/g付近のサイクル容量を維持す
る。試料#14(図29)を含む電池の性能が最も悪
い。この理由は、試料の高い不純物含有量であり、表7
に示したように、この試料の炭素含有量は高々91.7
重量%である。このように、炭水化物類一般を使用し
て、約800℃〜約1200℃の温度で熱分解すること
によって、すぐれた電気化学的特性をもつ挿入化合物を
製造できる。異なる種類の炭水化物から作製した試料で
はいくつかの違いが認められたが、これらの一つの理由
は、天然炭水化物源における不純物量の違いである。例
えば、木材試料や殻試料は含有するリグニン量及び/又
は油分量がかなり異なっている。
【0095】比較実施例 比較を目的として、エポキシ樹脂実施例1の試料E7の
特性、及びフェノール樹脂実施例1の試料B1000の
特性を表9に示す。
【0096】
【表9】
【0097】炭水化物前駆体試料#8及びフェノール樹
脂前駆体試料B1000で構成した電池の5及び6サイ
クルの電圧曲線を図31に示す。試料B1000は37
mA/gで放電、充電した。同じような曲線が得られ
る。図32では、図31の2個の電池に関して、5回目
の充電サイクル時における容量差を比較する。これらの
差は誤差内である。熱分解エポキシ樹脂、フェノール樹
脂及び/又は炭水化物から製造した挿入化合物は同じ物
理的特性、及び同じ電気化学的特性をもつことができ
る。
【0098】(再焼失に関する具体的実施例)20重量
%の4−アミノ安息香酸を用いて、第1の量のDEN4
38エポキシノボラック樹脂(Dow Chemica
l社)を170℃で硬化してから、1,000℃で熱分
解して、エポキシ実施例の試料E7と同様な炭素質物質
を作製してから、過剰な乾燥空気を流した状態で、炉管
内で試料(それぞれ約1g)を異なる酸化度に酸化し
た。これは、10℃/分の加熱速度で試料を異なる比最
大温度(Tmax)に加熱することによって行った。焼失
炭素量は、初期量と最終量との差(精度±0.1%)を
算出することによって求めた。
【0099】図33に、前記酸化試料のうち、焼失炭素
量(重量%)の異なる3種類の試料のX線回折パターン
を示す。焼失炭素量(重量%)とともに、回折ピーク強
度が小さくなり、一方、小角散乱における強度は焼失炭
素量(重量%)とともに大きくなる。また、回折ピーク
はX線散乱数が増えるとともに、弱くなると考えられ
る。小角度における強度向上は試料の多孔度増加に一致
する。いずれの場合も、ln(強度)対q2 の関係はほ
ぼ線形であった。また、得られたRg 値は、焼失炭素量
(重量%)とともに、細孔の大きさがやや大きくなるこ
とを示している。20重量%の無水フタル酸を使用し
て、第2の量のDEN438エポキシノボラック樹脂
(Dow Chemical社)を170℃で硬化して
から、1,000℃で熱分解して、エポキシ実施例の試
料E7と同様な炭素質物質を作製してから、過剰な乾燥
空気を流した状態で、炉管内で試料(それぞれ約1g)
を異なる酸化度に酸化した。これは、10℃/分の加熱
速度で試料を異なる比最大温度(Tmax )に加熱するこ
とによって行った。焼失炭素量は、初期量と最終量との
差(精度±0.1%)を算出することによって求めた。
本発明実施例と同様にして、物理的特性及び電気化学的
特性を求めた。表10に得られた値を示す。なお、可逆
的比容量及び不可逆的比容量は2個の供試電池から求め
た平均値である。
【0100】これら第2番目の熱分解試料を次にアルゴ
ン中において1,000℃で再加熱して、表面酸化物を
除去した。この再加熱後の減量を表10に示す。既に述
べたようにして、再加熱試料の比容量についてもこれを
求めた。
【0101】焼失炭素量がわずか数重量%であっても、
BET法によって測定した表面積は著しく大きくなっ
た。また、窒素吸着機構にも顕著な相違が認められた。
試料が窒素を完全に吸着する時間は漸減した。すなわ
ち、試料番号E1−1では約4時間必要であったが、試
料番号E1−8で1時間未満まで短くなった。対照的
に、約5重量%の炭素が焼失するまでは、メチレンブル
ー吸着値は顕著には大きくならなかった。細孔開口が大
きくなると、あるいは新たに開口が生じると、窒素の吸
着速度が速くなり、また窒素の吸着全量が増加すると考
えられる。また、より大きなメチレンブルー分子を受け
入れることできるほど細孔開口が大きくなるまでは、吸
着したメチレンブルー量における対応する増加は遅れ
る。
【0102】図34は前記の試料によって作製した電池
の第2サイクルに関する電圧対容量を示す図である。試
料番号E1−1(焼失量0%)及びE1−2(焼失量
0.7%)は容量が相当大きい低電圧のプラトー部、約
200mAh/gを示す。このプラトー部の容量は、炭
素焼失があると直ちに小さくなり、約5重量%の炭素焼
失で実質的になくなる。表10に示すように、可逆的容
量は炭素焼失が生じると最初は小さくなるが、炭素焼失
量が約10重量%になると、大きくなる。この後段の容
量増加は、酸化過程で生じる表面酸化物によって説明す
ることができる。図33bにおける試料番号E1−6
(焼失量28.2%)及びE1−8(焼失量54.6
%)に関する電圧プロットを詳しくみると、この容量増
加は0ボルト付近のリチウム挿入と1ボルト以上のリチ
ウム抽出に、すなわち電圧曲線における大きなヒステリ
シスに関係があることがわかる。このような大きなヒス
テリシス容量はリチウムイオン電池用途では好ましくな
い。不可逆的容量は、BET法表面積とほぼ線形関係に
ある焼失炭素量とともに大きくなり、またメチレンブル
ー吸着値が大きくなり始めるかなり前に大きくなる。こ
れはメチレンブルーよりも前に、電解質分子が細孔表面
に接近することを、即ち、電解質分子がメチレンブルー
分子よりも小さいことを示唆するものである。
【0103】再加熱試料の最大減量は試料番号E1−6
で生じるが、これはこの試料が最大の表面酸化物量を持
つことを示すものである。定性的にみれば、これは酸化
温度が高くなれば、表面酸化物が少なくなることを記載
している文献の研究と一致する。再加熱すると、試料の
可逆的容量と不可逆的容量の両者が約100mAh/g
まで小さくなり、表面酸化物が両者においてなんらかの
働きをしていること示している。試料番号E1−1に存
在している低電圧のプラトー部は、炭素焼失量がわずか
1.2重量%の試料番号E1−3の場合でも、再加熱後
回復しない。このように、酸化が最小限であっても、本
発明の化合物の性能に重大かつ不可逆的な悪影響を与え
る。表面酸化物の存在は、このような酸化が生じたこと
を表すものである。さらに、再加熱後に観察された減量
は、不活性ガス下にある炭素試料がこのような表面酸化
物の存在を許していることを示すものである。
【0104】さらに、既に説明したように、電解質それ
自体の代替物として窒素又はメチレンブルー分子を使用
して、電解質が利用できる表面積を定量化する場合には
問題がある。後者が大きさにおいて前者の中間にある場
合、試料は許容できるメチレンブルー吸着値をもつこと
はできるが、依然として、本発明の利点は示さない(例
えば、試料番号E1−3)。逆に、BET法表面積に許
容できる制限を設定することも難しい。というのは、試
料によっては、巨大な内部表面積を持つものも考えら
れ、この表面積は窒素は利用できるが、電解質は利用で
きない。なお、BET法表面積が212m2/g もあ
る、本発明の利点をもつ炭素を前記エポキシ樹脂を原料
とした実施例で作製したが、表面積が316m2/g の
試料番号E1−3には本発明の利点がない。
【0105】
【表10】
【0106】(小角散乱に関する具体的実施例)3種類
の前駆体物質、すなわち、1)ポリフッ化ビニリデン
(PVDF)、2)Crowley(商標)ピッチ、及
び3)フェノールレゾール樹脂(Occidental
Chemical社の製品No.29217)を10
00℃で熱分解し、上記と同様にして、それぞれについ
て小角X線散乱データを求めた。図35のa及びbに、
それぞれ各試料に関する強度対散乱角度、及びln(強
度)対q2プロットを示す。小角度でレゾール樹脂試料
は顕著な散乱強度を示し、図35bのデータは線形であ
り、これは、内部細孔の大きさが実質的に均一であるこ
とを示唆するものである。従って、これらデータをGu
inier式に当てはめることができる。すなわちRg
=5.5Å である。レゾール樹脂試料は、本発明の望
ましい電気化学的特性をすべて備えた、フェノール樹脂
実施例の試料B1000に類似している試料である。
【0107】熱分解PVDF試料もまた小角度で顕著な
散乱を示すが、図35bのデータは非線形で、これは、
熱分解フェノールレゾール樹脂の細孔よりも大きい細孔
を含む各種の細孔大きさが存在していることを示唆する
ものである。この試料のH/C原子比は0.053で、
Rは1.23であった。また、メチレンブルー吸着量は
40マイクロモル/g以上であった。可逆的容量及び不
可逆的容量はそれぞれ380mAh/g及び710mA
h/gであった。この試料の、電解質が利用できる表面
積は許容できない程大きかった。
【0108】Crowley(商標)ピッチは最小の小
角散乱を示すが、これは、この試料の細孔度が最小であ
ることを示すものである。この試料の物理的特性及び電
気化学的特性は、他の熱分解ケーキと同様である。この
試料のH/C原子比は0.04で、Rは8.79であっ
た。可逆的容量及び不可逆的容量はそれぞれ340mA
h/g及び100mAh/gであった。
【0109】前記の開示から当業者にとっては明らかな
ように、発明の精神あるいは範囲から逸脱せずに、本発
明を実施するさいには、数多くの変更あるいは変形が可
能である。例えば、2種類以上の前駆体からなる混合物
を使用して、化合物を製造することも可能である。さら
に、炭水化物前駆体は、木材、殻、綿や麦わら場合のよ
うに、炭水化物ではない物質を含んでいてもよい。即
ち、発明の範囲は、請求の範囲に記載された要旨に従っ
て解釈すべきである。
【0110】
【発明の効果】本発明の炭素質挿入化合物は、アルカリ
金属挿入に対する可逆的容量が高く、アルカリ金属がリ
チウムの場合、挿入化合物はさらに不可逆的容量が小さ
く、挿入および抽出間の電圧ヒステリシスが小さく、リ
チウムイオン電池に用いた場合には充放電特性の優れた
リチウムイオン電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の黒鉛前駆体炭素のX線回折パターンに
関するRの定義を説明する図である。
【図2】リチウムイオン巻回形電池を説明する横断面図
である。
【図3】実施例で使用した実験用のコイン型電池の分解
図である。
【図4】従来例およびエポキシ樹脂の実施例の試料につ
いてのH/C原子比対熱分解温度の関係を説明する図で
ある。
【図5】従来例2の試料のうちの{002}ピーク付近
におけるX線回折パターンを示す図である。
【図6】従来例2の電池のうちいくつかに関する電圧対
容量を説明する図である。
【図7】活性炭に関する具体的実施例のM20E活性炭
試料について{002}ピーク付近におけるX線回折パ
ターンを示す図である。
【図8】活性炭に関する具体的実施例の、1000℃で
熱分解したM30活性炭を含む電池に関する第2回サイ
クル時の電圧対容量を説明する図である。
【図9】活性炭に関する具体的実施例の、1000℃で
熱分解したM30活性炭を含む電池に関する第1回サイ
クル時の電圧対容量を説明する図である。
【図10】エポキシ実施例1の試料E1に関する第2回
サイクル時における電圧対容量を説明する図である。
【図11】エポキシ実施例1の試料E1、E2、E3に
関する{002}ピーク付近におけるX線回折パターン
示す図である。
【図12】エポキシ実施例1の試料に関する電圧対容量
を説明する図である。
【図13】エポキシ実施例2の試料に関する電圧対容量
を説明する図である。
【図14】図13についての試料に関する{002}ピ
ーク付近におけるX線回折パターンを示す図である。
【図15】エポキシ実施例1の試料に関する比容量対R
の関係を説明する図である。
【図16】エポキシ実施例1の試料E7からなる電池に
関する第1回充放電についての電圧対容量を説明する図
である。
【図17】エポキシ実施例2の電池に関する電圧対容量
を説明する図である。
【図18】フェノール樹脂実施例1においてAに属する
前駆体から作製した試料からなる電池に関するそれぞれ
第1回サイクルの電圧対容量を説明する図である。
【図19】フェノール樹脂実施例1においてAに属する
前駆体から作製した試料からなる電池に関するそれぞれ
第2回サイクルの電圧対容量を説明する図である。
【図20】フェノール樹脂実施例1においてBに属する
前駆体から作製した試料からなる電池に関するそれぞれ
第1回サイクル及び第2回サイクル時の電圧対容量を説
明する図である。
【図21】フェノール樹脂実施例1においてCに属する
前駆体から作製した試料からなる電池に関するそれぞれ
第1回サイクル及び第2回サイクル時の電圧対容量を説
明する図である。
【図22】フェノール樹脂実施例1の試料B1000か
らなる電池に関する容量対サイクル数の関係を示す図で
ある。
【図23】フェノール樹脂実施例2においてBに属する
前駆体から作製した試料からなる電池に関する第2回サ
イクル時の電圧対容量を説明する図である。
【図24】炭水化物前駆体実施例及び炭水化物含有前駆
体実施例における直接熱分解ショ糖試料に関する粉末X
線回折パターンを示す図である。
【図25】デンプン前駆体及びセルロース前駆体を10
00℃で熱分解して作製した試料に関する粉末X線回折
パターンを示す図である。
【図26】700℃〜1100℃で熱分解した試料から
なる電池に関する第2回サイクル時の電圧対容量を説明
する図である。
【図27】1,000℃で熱分解した試料からなる電池
に関する第2回サイクル時の電圧対容量を説明する図で
ある。
【図28】試料番号8から作製した電極を備えた2つの
電池に関する容量対サイクル数の関係を示す図である。
【図29】試料番号14から作製した電極を備えた2つ
の電池うち一つに関する容量対サイクル数の関係を示す
図である。
【図30】試料番号18から作製した電極を備えた2つ
の電池に関する容量対サイクル数の関係を示す図であ
る。
【図31】炭水化物前駆体試料番号8及びフェノールレ
ゾール樹脂前駆体試料B1000からなる電池に関する
サイクル5及び6における電圧分布を比較した図であ
る。
【図32】図30の2つの電池に関する第5サイクル充
電時における容量差対電圧関係を示す図である。
【図33】焼失に関する具体的実施例におけるいくつか
の酸化試料に関するX線回折パターンを示す図である。
【図34】焼失に関する具体的実施例における代表的な
電池の第2サイクルにおける電圧対容量を説明する図で
ある。
【図35】小角散乱に関する具体的実施例における試料
に関する強度対散乱角度及びln(強度)対q2の関係
を説明する図である。
【符号の説明】
1…正極箔、2…負極箔、3…微細孔性ポリオレフィン
シート、4…ゼリーロール体、5…電解質、6…正極タ
ブ、7…負極タブ、8,9…絶縁片、10…電池缶、1
1…ヘッダー、12…ガスケット、15…電池、21…
ステンレス鋼キャップ、22…ガスケット、23…円板
ばね、24…ステンレス円板、25…リチウム負極、2
6…セパレータ、27…試料正極、28…電解液、30
…耐酸化性ケース、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 アルフレッド マクドナルド ウィルソン カナダ ブリティッシュコロンビア州 バ ンクーバー ウエスト 16番 アベニュ 3578 (72)発明者 ジェフェリー レイモンド ダーン カナダ ブリティッシュコロンビア州 サ リー 80アベニュ 17127 (72)発明者 インフ リウ カナダ ブリティッシュコロンビア州 バ ーナビー セントーラス サー 9158 (72)発明者 ウーリッヒ フォン ザッケン カナダ ブリティッシュコロンビア州 コ キュートラムシャウネッシー ストリート 1316 (72)発明者 チーミン チュング カナダ ブリティッシュコロンビア州 コ キュートラムオースチン アベニュ 2551 (72)発明者 タオ チェング カナダ ブリティッシュコロンビア州 コ キュートラム540 ロチェスター アベニ ュ エーピーティー 315

Claims (69)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可逆的なリチウム挿入容量、不可逆的な
    リチウム挿入容量、および非水電解質が利用できる表面
    積をもつ黒鉛前駆体炭素質ホストからなり、 1)X線回折によって求められ、かつバックグラウンド
    レベルによって割った{002}ピークの中心高さとし
    て定義される実験パラメータRが2.2未満であり、 2)H/C原子比が0.1未満であり、そして 3)上記の利用できる表面積が、上記不可逆的容量が上
    記可逆的容量の半分未満になる程度には十分に小さく、
    かつ上記炭素質ホストにアルカリ金属原子を挿入したこ
    とを特徴とする炭素質挿入化合物。
  2. 【請求項2】 アルカリ金属がリチウムであることを特
    徴とする請求項1に記載の炭素質挿入化合物。
  3. 【請求項3】 利用できる表面積が、上記不可逆的容量
    が上記可逆的容量の1/3未満になる程度には十分に小
    さいことを特徴とする請求項1に記載の炭素質挿入化合
    物。
  4. 【請求項4】 炭素質ホストのメチレンブルー吸着容量
    がホスト1gに対して4マイクロモル未満であることを
    特徴とする請求項1に記載の炭素質挿入化合物。
  5. 【請求項5】 BET法によって求めた上記炭素質ホス
    トの表面積が300m2/g 未満であることを特徴とす
    る請求項1に記載の炭素質挿入化合物。
  6. 【請求項6】 不活性気体の存在下で1000℃におい
    て熱分解後、5重量%未満の炭素質ホストが焼失するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の炭素質挿入化合物。
  7. 【請求項7】 非水電解質がエチレンカーボネート、ジ
    エチルカーボネートの少なくともいずれかからなること
    を特徴とする請求項1に記載の炭素質挿入化合物。
  8. 【請求項8】 Rが2未満であることを特徴とする請求
    項1に記載の炭素質挿入化合物。
  9. 【請求項9】 Rが1.5未満であることを特徴とする
    請求項1に記載の炭素質挿入化合物。
  10. 【請求項10】 700℃以上の温度でエポキシ前駆
    体、フェノール樹脂前駆体、炭水化物前駆体または炭水
    化物含有前駆体を熱分解することによって得た黒鉛前駆
    体炭素質ホストからなり、X線回折パターンから求めら
    れ、かつバックグラウンドレベルによって割った{00
    2}ピーク高さとして定義される実験パラメータRが
    2.2未満であり、そして該炭素質ホストにアルカリ金
    属原子を挿入したことを特徴とする炭素質挿入化合物。
  11. 【請求項11】 黒鉛前駆体炭素質ホストのH/C原子
    比が0.1未満であることを特徴とする請求項10に記
    載の炭素質挿入化合物。
  12. 【請求項12】 炭素質ホストのメチレンブルー吸着容
    量がホスト1gに対して4マイクロモル未満であること
    を特徴とする請求項10に記載の炭素質挿入化合物。
  13. 【請求項13】 BET法によって求めた炭素質ホスト
    の表面積が300m2/g未満であることを特徴とする
    請求項10に記載の炭素質挿入化合物。
  14. 【請求項14】 アルカリ金属がリチウムであることを
    特徴とする請求項10に記載の炭素質挿入化合物。
  15. 【請求項15】 黒鉛前駆体炭素質ホストが可逆的なリ
    チウム挿入容量、不可逆的なリチウム挿入容量、および
    非水電解質が利用できる表面積を有することを特徴とす
    る請求項14に記載の炭素質挿入化合物。
  16. 【請求項16】 利用できる表面積が、上記不可逆的容
    量が上記可逆的容量の半分未満になる程度には十分に小
    さいことを特徴とする請求項15に記載の炭素質挿入化
    合物。
  17. 【請求項17】 黒鉛前駆体炭素質ホストを、エポキシ
    ノボラック樹脂からなるエポキシ樹脂前駆体の熱分解に
    よって得たことを特徴とする請求項10に記載の炭素質
    挿入化合物。
  18. 【請求項18】 エポキシ樹脂前駆体が0〜40重量%
    の硬化剤を含むことを特徴とする請求項17に記載の炭
    素質挿入化合物。
  19. 【請求項19】 硬化剤が無水フタル酸であることを特
    徴とする請求項18に記載の炭素質挿入化合物。
  20. 【請求項20】 エポキシ樹脂前駆体を120℃で硬化
    してから、熱分解することを特徴とする請求項19に記
    載の炭素質挿入化合物。
  21. 【請求項21】 熱分解温度までの加熱速度が1℃/分
    〜20℃/分であることを特徴とする請求項17に記載
    の炭素質挿入化合物。
  22. 【請求項22】 黒鉛前駆体炭素質ホストを、ビスフェ
    ノールAエポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂前駆体の熱
    分解によって得たことを特徴とする請求項10に記載の
    炭素質挿入化合物。
  23. 【請求項23】 熱分解温度までの加熱速度が30℃/
    分であることを特徴とする請求項22に記載の炭素質系
    挿入化合物。
  24. 【請求項24】 黒鉛前駆体炭素質ホストを、800℃
    以上の温度でフェノール樹脂前駆体を熱分解することに
    よって得たことを特徴とする請求項10に記載の炭素質
    挿入化合物。
  25. 【請求項25】 Rが1.6未満であることを特徴とす
    る請求項24に記載の炭素質挿入化合物。
  26. 【請求項26】 フェノール樹脂前駆体を150℃で硬
    化してから、熱分解することを特徴とする請求項24に
    記載の炭素質挿入化合物。
  27. 【請求項27】 熱分解温度を1時間保持することを特
    徴とする請求項24に記載の炭素質挿入化合物。
  28. 【請求項28】 フェノール樹脂前駆体がノボラック系
    樹脂であることを特徴とする請求項24に記載の炭素質
    挿入化合物。
  29. 【請求項29】 フェノール樹脂前駆体がレゾール系樹
    脂であることを特徴とする請求項24に記載の炭素質挿
    入化合物。
  30. 【請求項30】 フェノール樹脂前駆体を900℃〜1
    100℃の温度範囲で熱分解することを特徴とする請求
    項29に記載の炭素質挿入化合物。
  31. 【請求項31】 黒鉛前駆体炭素質ホストを、800℃
    以上の温度で炭水化物前駆体又は炭水化物含有前駆体を
    熱分解することによって得たことを特徴とする請求項1
    0に記載の炭素質挿入化合物。
  32. 【請求項32】 炭素質ホストのタップ密度が0.7g
    /ml以上であることを特徴とする請求項31に記載の
    炭素質系挿入化合物。
  33. 【請求項33】 Rが2未満であることを特徴とする請
    求項31に記載の炭素質挿入化合物。
  34. 【請求項34】 炭水化物前駆体を900℃〜1100
    ℃の温度範囲で熱分解することを特徴とする請求項31
    に記載の炭素質挿入化合物。
  35. 【請求項35】 熱分解温度を約1時間保持することを
    特徴とする請求項34に記載の炭素質挿入化合物。
  36. 【請求項36】 熱分解温度までの加熱速度が25℃/
    分であることを特徴とする請求項34に記載の炭素質挿
    入化合物。
  37. 【請求項37】 炭水化物前駆体が糖であることを特徴
    とする請求項31に記載の炭素質挿入化合物。
  38. 【請求項38】 糖がショ糖であることを特徴とする請
    求項37に記載の炭素質挿入化合物。
  39. 【請求項39】 炭水化物前駆体がデンプンであること
    を特徴とする請求項31に記載の炭素質挿入化合物。
  40. 【請求項40】 炭水化物前駆体がセルロースであるこ
    とを特徴とする請求項31に記載の炭素質挿入化合物。
  41. 【請求項41】 セルロースを、レッドオーク、かえ
    で、くるみ殻、セイヨウハシバミ殻、アーモンド殻、綿
    及び麦わらからなるセルロース含有群から選択すること
    を特徴とする請求項40に記載の炭素質系挿入化合物。
  42. 【請求項42】 700℃以上で1100℃未満の温度
    で以下の化学式で表されるエポキシノボラック樹脂を熱
    分解することによって得た黒鉛前駆体炭素質ホストから
    なり、該炭素質ホストにリチウム原子を挿入した炭素質
    挿入化合物。 【化1】
  43. 【請求項43】 800℃の温度で下記で表されるビス
    フェノールAエポキシ樹脂を熱分解することによって得
    た黒鉛前駆体炭素質ホストからなり、該炭素質ホストに
    リチウム原子を挿入したことを特徴とする炭素質挿入化
    合物。 【化2】
  44. 【請求項44】 X線回折パターンから求められ、かつ
    バックグラウンドレベルによって割った{002}ピー
    ク高さとして定義される実験パラメータRが2.2未満
    になるように700℃以上の温度でエポキシ樹脂前駆体
    を、あるいは800℃以上の温度でフェノール樹脂前駆
    体を、あるいは800℃以上の温度で炭水化物前駆体又
    は炭水化物含有前駆体を熱分解することを特徴とする炭
    素質挿入化合物用の黒鉛前駆体炭素質ホストを製造する
    方法。
  45. 【請求項45】 X線回折パターンから求められ、かつ
    バックグラウンドレベルによって割った{002}ピー
    ク高さとして定義される実験パラメータRが2.2未満
    になるように700℃以上の温度でエポキシ樹脂前駆体
    を熱分解することことを特徴とする炭素質挿入化合物用
    の黒鉛前駆体炭素質ホストを製造する方法。
  46. 【請求項46】 エポキシ樹脂前駆体が下記の化学式で
    表されるエポキシノボラック樹脂で、 【化3】 この樹脂の熱分解を1,100℃より低い温度で行うこ
    とを特徴とする請求項45に記載の方法。
  47. 【請求項47】 エポキシ樹脂前駆体が下記の化学式で
    表されるビスフェノールAエポキシ樹脂で、 【化4】 あり、熱分解を800℃の温度で実施することを特徴と
    する請求項45に記載の方法。
  48. 【請求項48】 X線回折パターンから求められ、かつ
    バックグラウンドレベルによって割った{002}ピー
    ク高さとして定義される実験パラメータRが2.2未満
    になるように800℃の温度でフェノール樹脂前駆体を
    熱分解することからなることを特徴とする炭素質挿入化
    合物用の黒鉛前駆体炭素質ホストを製造する方法。
  49. 【請求項49】 フェノール樹脂前駆体がノボラック系
    樹脂であることを特徴とする請求項48に記載の方法。
  50. 【請求項50】 フェノール前駆体がレゾール系樹脂で
    あることを特徴とする請求項48に記載の方法。
  51. 【請求項51】 熱分解を900℃〜1100℃の温度
    範囲で実施することを特徴とする請求項50に記載の方
    法。
  52. 【請求項52】 X線回折パターンから求められ、かつ
    背景レベルによって割った{002}ピーク高さとして
    定義される実験パラメータRが2.2未満になるように
    800℃以上の温度で炭水化物前駆体又は炭水化物含有
    前駆体を熱分解することを特徴とする炭素質挿入化合物
    用の黒鉛前駆体炭素質ホストを製造する方法。
  53. 【請求項53】 炭水化物前駆体を糖、デンプン、及び
    セルロースからなる群から選択することを特徴とする請
    求項52に記載の方法。
  54. 【請求項54】 酸洗することによって炭水化物を予め
    炭化することを特徴とする請求項53に記載の方法。
  55. 【請求項55】 炭水化物がショ糖であることを特徴と
    する請求項54に記載の方法。
  56. 【請求項56】 酸が濃硫酸であることを特徴とする請
    求項55に記載の方法。
  57. 【請求項57】 電極を有する電気化学装置において、
    電極の一部分が請求項1、2、10、17、22、24
    又は31に記載の炭素質挿入化合物からなることを特徴
    とする電気化学装置。
  58. 【請求項58】 電極を有する電池において、電極の一
    部分が請求項1、2、10、17、22、24又は31
    に記載の炭素質系挿入化合物からなることを特徴とする
    電池。
  59. 【請求項59】 リチウム挿入化合物からなる正極と、
    非水溶媒の混合物に溶解したリチウム塩からなる非水電
    解質と、そして請求項1、10、17、22、24又は
    31に記載したアルカリ金属がLiである炭素質挿入化
    合物からなる負極とからなることを特徴とした非水電
    池。
  60. 【請求項60】 電気化学装置の電極における炭素質挿
    入化合物の使用において、X線回折パターンから求めら
    れ、かつバックグラウンドレベルによって割った{00
    2}ピーク高さとして定義される実験パラメータRが
    2.2未満になるように700℃以上の温度でエポキシ
    前駆体を、あるいは800℃以上の温度でフェノール樹
    脂前駆体を、あるいは800℃以上の温度で炭水化物前
    駆体又は炭水化物含有前駆体を熱分解して得た、アルカ
    リ金属の原子を挿入した黒鉛前駆体炭素質ホストからな
    る炭素質挿入化合物であることを特徴とする電気化学装
    置の電極における炭素質挿入化合物の使用。
  61. 【請求項61】 電気化学装置の電極における炭素質挿
    入化合物の使用において、X線回折パターンから求めら
    れ、かつバックグラウンドレベルによって割った{00
    2}ピーク高さとして定義される実験パラメータRが
    2.2未満になるように700℃以上の温度でエポキシ
    樹脂前駆体を熱分解して得た、アルカリ金属の原子を挿
    入した黒鉛前駆体炭素質ホストからなる炭素質挿入化合
    物であることを特徴とする電気化学装置の電極における
    炭素質挿入化合物の使用。
  62. 【請求項62】 エポキシ樹脂前駆体がノボラックエポ
    キシ樹脂であることを特徴とする請求項61に記載の電
    気化学装置の電極における炭素質挿入化合物の使用。
  63. 【請求項63】 エポキシ樹脂前駆体がビスフェノール
    Aエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項61に記
    載の電気化学装置の電極における炭素質挿入化合物の使
    用。
  64. 【請求項64】 電気化学装置の電極における炭素質挿
    入化合物の使用において、X線回折パターンから求めら
    れ、かつ背景レベルによって割った{002}ピーク高
    さとして定義される実験パラメータRが約2.2未満に
    なるように800℃以上の温度でフェノール樹脂前駆体
    を熱分解して得た、アルカリ金属の原子を挿入した黒鉛
    前駆体炭素質系ホストからなる炭素質系挿入化合物であ
    ることを特徴する電気化学装置の電極における炭素質挿
    入化合物の使用。
  65. 【請求項65】 フェノール樹脂前駆体がノボラック系
    樹脂であることを特徴とする請求項64に記載した電気
    化学装置の電極における炭素質挿入化合物の使用。
  66. 【請求項66】 フェノール樹脂前駆体がレゾール系樹
    脂であることを特徴とする請求項64に記載した電気化
    学装置の電極における炭素質挿入化合物の使用。
  67. 【請求項67】 電気化学装置の電極における炭素質挿
    入化合物の使用において、X線回折パターンから求めら
    れ、かつバックグラウンドレベルによって割った{00
    2}ピーク高さとして定義される実験パラメータRが
    2.2未満になるように800℃以上の温度で炭水化物
    前駆体または炭水化物含有前駆体を熱分解して得た、ア
    ルカリ金属の原子を挿入した黒鉛前駆体炭素質ホストで
    あることを特徴とする電気化学装置の電極における炭素
    質挿入化合物の使用。
  68. 【請求項68】 炭水化物前駆体を糖、澱粉及びセルロ
    ースからなる群から選択することを特徴とする請求項6
    7に記載した電気化学装置の電極における炭素質挿入化
    合物の使用。
  69. 【請求項69】 電気化学装置の電極における炭素質挿
    入化合物の使用において、アルカリ金属がリチウムであ
    り、電気化学装置がリチウム挿入化合物からなる正極
    と、非水性溶剤混合液に溶解したリチウム塩からなる非
    水性電解質と、そして上記炭素質挿入化合物からなる負
    極とで構成した非水性電池であることを特徴とする請求
    項61、64又は67に記載した電気化学装置の電極に
    おける炭素質挿入化合物の使用。
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