JPH08219149A - 保持器付きころ - Google Patents

保持器付きころ

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JPH08219149A
JPH08219149A JP7043447A JP4344795A JPH08219149A JP H08219149 A JPH08219149 A JP H08219149A JP 7043447 A JP7043447 A JP 7043447A JP 4344795 A JP4344795 A JP 4344795A JP H08219149 A JPH08219149 A JP H08219149A
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cage
pocket
projection
pillar
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 発熱を抑え、延いては焼付きの発生を防止
し、以て長寿命化を達成すると共に、他の種々の効果を
も併せ奏し得る保持器付きころを提供すること。 【構成】 外側保持用突出部の加工時に生じた凹部1
jを完全に除去すべく保持器1の外周側を切削して、該
外側保持用突出部1h1 の外面と保持器1の正規外径D
0 とが一致するようにしている。この構成により、保持
器1の柱部1cのころ案内面が摩耗しても、ころ2が外
側保持用突出部1h1 との接触に至らない。また、上記
凹部が残らない故、装着相手との接触面積が増大して接
触圧が小さくなる。これらのことから上記目的が達成さ
れる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は保持器付きころに関し、
特に長寿命化を達成した保持器付きころに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、オートバイ等に装備されるエンジ
ンのコネクティングロッド用として、軽量にして断面高
さが小さく大きな負荷容量及び剛性を有し、しかも高速
回転性能が良好であり、且つ厳しい潤滑条件のもとでの
使用が可能である等の特徴が生かされて保持器付きころ
が多く利用されている。
【0003】図8乃至図12に従来の保持器付きころの
一例を示す。なお、この保持器付きころは特開平5−1
18337号公報において開示されている。
【0004】図8乃至図10に示すように、この保持器
付きころは、複数のポケット101aが円周方向におい
て等間隔にて且つ軸方向に平行に形成された略円筒状の
保持器101と、該保持器101の肉厚よりも大径で該
各ポケット101aに挿入されたころ102(図9参
照)とからなる。該保持器101は、両端の円環部10
1bと、該両円環部101bと一体にして該円環部10
1bと共に上記ポケット101aを画定すべく円周方向
において並設された複数の柱部101cとを有してい
る。該各柱部101cの円周方向両側の端面は平滑なこ
ろ案内面101dとなっている。そして、該各柱部10
1cの軸方向における中央近傍及び両端近傍であって円
周方向両側には、内側保持用突出部101f及び外側保
持用突出部101gが夫々ポケット101aに臨むよう
に形成されており、これらの突出部によってころ102
が該ポケット101aから内外に脱落することが規制さ
れている。この構成によって、保持器101と各ころ1
02とが一体化され、エンジン等に対して当該保持器付
きころを取付け、あるいは取外しをする際の扱いが容易
となる。
【0005】上記の内側保持用突出部101f及び外側
保持用突出部101gは、次のように形成される。
【0006】すなわち、断面略M字状に加工された円筒
状の素材に打抜き加工を施すことによってポケット10
1aを形成してなる半完成品としての保持器101に対
し、内周側及び外周側からローレット加工軸(図示せ
ず)をあてがって所定圧力で押し付け、回転させること
により形成される。この形成方法によれば、図10から
明らかなように、柱部101cを円周方向に横切る線状
の溝101h、101iが内外に形成されると共に、該
溝101h、101iの縁部に歪みによる盛上がり10
1j、101kが生ずる。
【0007】本例の保持器付きころでは保持器101の
外周を装着相手(例えばコネクティングロッドの大端
部)の内周面(案内面)で案内させる設計とされ、それ
故に柱部101cの外側に上記盛上がり101kがある
と装着相手の案内面を損傷させることとなるので、図1
1及び図12において二点鎖線で示すように保持器10
1の外周側を研磨(寸法e1 にて示す)してこの盛上が
り101kを除去することが行われる。但し、溝101
iについてはその底部までは除去されることなく残さ
れ、主として該溝101iの底面よりも内側に形成され
る上記外側保持用突出部101gに研磨が及ぶことはな
い。
【0008】なお、柱部101cの内側に生じた盛上が
り101jに関しては、保持器101の内周が案内され
る訳ではない故、除去処理は行われない。また、図12
から明らかなように、保持器101は、上述の外周研磨
加工を施した状態で正規の外径D0 となるよう、素材の
外径D1 は該正規外径D0 に比して若干(上記寸法e
1 )大きく設定される。
【0009】かかる構成の保持器付きころにおいては、
その作動状態において、ころ102が柱部101cのこ
ろ案内面101dと接触し、ほぼピッチ円直径(P.
C.D.:図12参照)上で案内され、内側保持用突出
部101f及び外側保持用突出部101gとは非接触に
て転動する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述した構成の保持器
付きころにおいては、ある程度の作動期間が経過するこ
と、あるいは使用条件等により柱部101cのころ案内
面101dの摩耗量が増大すると、ころ102が図12
において破線にて示すようにポケット101aの正規幅
Wを逸脱して円周方向にずれる(図12においてこのず
れ量を記号aで示している)状態になる。よって、該こ
ろ102が外側保持用突出部101gに対して図示のよ
うに接触することが懸念される。これは、当該保持器付
きころでは、図12において記号b1 にて示すころ10
2の上がり量、すなわち、ころ102をラジアル方向外
側に移動させて外側保持用突出部101gに接触させた
ときに保持器1の外径から該ころ102が突出する量が
元来比較的小さいことに基づく。なお、図12におい
て、記号C1 は、ポケット101aの円周方向両側に形
成された各外側保持用突出部101gに対するころ10
2の接触点103(図12参照)間の距離である。ま
た、同図において、記号d1 は、該両外側保持用突出部
101g同士の距離を示す。
【0011】上記のようにころ102が外側保持用突出
部101gに接触すると、この接触による発熱分が加算
されて比較的短時間で焼付きが生起してしまうという不
都合がある。
【0012】一方、当該保持器付きころにおいては、上
記外側保持用突出部101gを設ける際に形成される溝
101iが残存していることから、保持器101の外周
面と装着相手の内周面(案内面)との接触面積がこの溝
101i分だけ少なくなり、接触面の圧力が大きくなっ
て発熱が促され、また、該接触面の摩耗の進行が早まる
という問題も擁している。
【0013】本発明は、上記従来技術の欠点に鑑みてな
されたものであって、その目的とするところは、発熱を
抑え、延いては焼付きの発生を防止し、以て長寿命化を
達成すると共に、他の種々の効果をも併せ奏し得る保持
器付きころを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的達成
のために、両端の円環部及び該円環部各々と一体に円周
方向に並設されて該円環部と共に軸方向に平行なポケッ
トを画定する複数の柱部を有する略円筒状の保持器と、
該保持器の肉厚よりも大径にして前記ポケット各々に挿
入されたころとからなり、前記柱部の一部を加工するこ
とによって前記ポケットに臨むように突出させて前記こ
ろの外方への脱落を規制する外側保持用突出部を形成し
てなる保持器付きころにおいて、この加工により生じた
凹部を全て除去すべく前記保持器の外周側を切削して前
記外側保持用突出部の外面と正規外径とが一致するよう
にしたものである。
【0015】
【作用】上記構成によれば、上記外側保持用突出部が保
持器の外径に極く接近して位置することから、ころの上
がり量が増大すると共に、該外側保持用突出部に対応す
る保持器外周部分に凹部が残存しないが故に装着相手の
案内面との接触圧力が小さくなる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例としての保持器付きこ
ろについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0017】図1乃至図4に示すように、本発明に係る
保持器付きころは、略円筒状にして複数のポケット1a
が軸方向に平行にかつ円周方向において等間隔にて形成
された保持器1と、該ポケット1a各々に挿入された針
状ころ2とからなる。なお、該各ポケット1aはその幅
寸法が、後述する各保持用突出部間の寸法を除いてころ
2の外径寸法より僅かに大きく設定されている。また、
各ころ2の直径は保持器1の肉厚よりも大となってい
る。
【0018】保持器1は、両端の円環部1bと、該両円
環部1bを互いに結合しかつ該各円環部1bと共に上記
ポケット1aを画定すべく円周方向に並設された複数の
柱部1cとを、一体に成形してなる。
【0019】図3から明らかなように、各柱部1cはそ
の略全長にわたって外側面が両円環部1bの外周面と面
一となるようになされている。この構成によれば、保持
器外周面はポケット部を除いて完全な円筒面となり、装
着相手としてのコネクティングロッド大端部(後述)の
内周面(案内面)との接触面積が極めて大となって接触
面の圧力が大幅に軽減され、発熱と該接触面の摩耗の抑
制に関して特に有効である。
【0020】同じく図3から明らかなように、柱部1c
には、その内側かつ軸方向中央に、ころ2のピッチ円直
径(P.C.D.)よりも外側まで達しかつポケット1
aの長さよりも短い略U字状の凹部1fが形成されてい
る。これにより、柱部1cは、円環部1bに各々連なる
両端の厚肉部1dと、該両厚肉部1d間に介在する中央
の薄肉部1eとを有する。この厚肉部1dは、その円周
方向両側面が平滑なころ案内面となっており、該ころ案
内面にてころ2に円滑に摺接して案内する。
【0021】上記の略U字状の凹部1fを形成した構成
によれば、前述のように柱部1cの外側面と円環部1b
の外周面とを互いに面一とした構成と相まって、柱部1
cが、両円環部1bの断面形状と共に門のような形を呈
する。このように保持器1が門形の断面形状を有するの
で、比較的大きな断面係数が確保され、軽量にして大き
な剛性が得られる。
【0022】なお、上記門形断面形状の構成において
は、ころ2が柱部1cの両端厚肉部1dによって案内さ
れる故、ころの倒れ、すなわちスキューが小さく抑えら
れ、軌道面との滑りが小さく発熱量も少ない。また、こ
の門形断面形状では、ころ2のピッチ円直径(P.C.
D.)に沿った柱部1cの幅寸法が比較的小さいから、
ころ2の組込み本数を増やすことができ、上述のように
剛性が大であることにも鑑みて、高負荷容量を必要とす
る際に用いて好適である。因に、図8乃至図12に従来
例として示した保持器付きころは、図9から特に明らか
なように、柱部101cが、両端の円環部101bの断
面形状と共にアルファベットのMを形成するようにその
中央部分が内径側に向けて屈曲しており、それ故にM形
と称される。このM形の保持器付きころでは、ころのピ
ッチ円直径に沿った柱部101cの幅寸法を本発明に係
る門形の保持器付きころと同じに設定した場合、組み込
めるころの本数は本発明のものに比べて少なくなる。ま
た、柱部101c自体も薄肉でしかも大きく屈曲してい
るところから、剛性が抑えられ、比較的低い負荷を受け
る場合に多く選定される。
【0023】図3及び図4に示すように、上記柱部1c
の両端部近傍、すなわち両厚肉部1dには、その内面側
両側に一対の内側保持用突出部1gが形成されており、
また、外面側にして該内側保持用突出部1gに対応する
部位に同じく一対の外側保持用突出部1h1 が形成され
ている。但し、図5には外側保持用突出部1h1 のみ示
している。これら内側保持用突出部1g及び外側保持用
突出部1h1 はポケット1aに臨むように突出してお
り、円周方向において隣り合う柱部1cの該保持用突出
部同士の距離がころ2の直径よりも僅かに小さいように
設定されている。これによってころ2が保持され、ポケ
ット1aからの内外への脱落が規制されている。
【0024】図1乃至図4に示すように、各柱部1cに
は、その軸方向における中央にして円周方向における両
側に、ポケット1aの一部を拡幅するように所定長の切
欠部1kが形成されている。このようにポケット1aの
一部を拡幅したことにより、当該保持器付きころが潤滑
剤(油)を取り入れる能力が向上している。特に、この
ように切欠部1kを保持器1の軸方向中央に形成したこ
とにより、図6に示す如くコネクティングロッド6の大
端部6aに当該保持器付きころを装着した場合の潤滑性
が優れている。
【0025】すなわち、図6の(a)に示した装着状態
で、当該保持器付きころへの潤滑剤の供給は、クランク
シャフト7のウェイト部7aに対向する大端部6aの軸
方向端面に形成されたサイドスリット6e(図6の
(b)も参照)と、大端部6aの軸方向中央に形成され
た中央スリット6b(図6の(b)も参照)とを通じて
行われる。これら各スリットのうち、大端部6aの中央
スリット6bからの供給量が比較的多く見込まれる。上
述したポケット1aの拡幅部分である切欠部1kは、こ
のように大端部6aの軸方向中央に形成されている潤滑
剤供給用の中央スリット6bに対応して位置するから、
潤滑剤が効率良く流入し、潤滑性、耐焼付き性が良好で
ある。
【0026】なお、図6において参照符号5で示すのは
クランクピンである。また、該クランクピン5と上記大
端部6aについては図4にも示している。
【0027】上記構成の保持器付きころは、次のように
製作される。なお、保持器1の材質については例えば浸
炭用鋼(SCM415、STKM13)等が選定され、
ころ2に関しては軸受用鋼(SUJ2など)等が用いら
れる。
【0028】保持器1については、まず、上記材質より
なる長尺のパイプ状材料を所定長さに切断することによ
り円筒状の素材を用意する。そして、断面を門形に旋削
加工された円筒状の素材に打抜き加工を施すことによっ
てポケット1aを形成し、更に、内周側及び外周側から
ローレット加工軸(図示せず)をあてがって所定圧力で
押し付け、回転させることによって内側保持用突出部1
g及び原外側保持用突出部1hを形成する。このローレ
ット加工により、図3及び図5に示すように、柱部1c
を円周方向に横切る凹部としての線状の溝1i及び1j
が内外に形成される。この後、熱処理が施される。
【0029】続いて、図3及び図5において二点鎖線で
示すように保持器1の外周側を研削(寸法e2 にて示
す)して、ローレット加工により生じた上記の溝1jを
全て除去することが行われる。図5から明らかなよう
に、保持器1は、この外周研削加工が完了した状態で正
規の外径D0 となるよう、研削前の素材の外径D2 は該
正規外径D0 に対して予めこの研削代e2 を加えた値に
設定される。また、図3及び図5に示すように、上述の
ようにローレット加工を施すことによって形成された原
外側保持用突出部1hはこの研削加工によってその外側
部分1h2 を削り取られ、残余の部分が前述の正規の外
側保持用突出部1h1 となる。従って、この正規の外側
保持用突出部1h1 の外面と保持器1の正規外径D0
が一致している。
【0030】なお、本実施例においては、ローレット加
工により保持器外周側に生じた上記溝1jを除去すべく
行われる研削加工によって原外側保持用突出部1hの外
側部分1h2 を削り取るものとしているが、次のように
してもよい。
【0031】すなわち、図5において、溝1jの底面、
つまり原外側保持用突出部1hの外面がそのまま保持器
1の正規外径D0 と一致するように素材の外径を設定
し、該溝1jの底面まで削り込んだら研削を終了するも
のである。この構成によれば、ローレット加工によって
形成した原外側保持用突出部1hがそのまま正規の外側
保持用突出部となる。要するに、上記溝1jをその一部
をも余すことなく除去すればよい訳である。
【0032】上述のようにして保持器1の成形が完了し
たら、該保持器1の外面に銅及び/または銀めっきを施
す。これにより、特に保持器外径面の案内面に対するな
じみ性が良好となる。
【0033】一方、ころ2については、詳述はしない
が、前述の材質よりなる線状の材料を所定長さに切断す
ることにより針状の素材を用意し、この素材に対して研
磨処理、熱処理等を施して得る。このようにして得られ
たころ2を、保持器1のポケット1a内に圧入によって
挿入し、当該保持器付きころが完成する。
【0034】図4及び図6は上記した構成の保持器付き
ころをコネクティングロッドの大端部6aとクランクピ
ン5との間に介装した使用状態を示すものであるが、こ
の使用状態においては、ころ2が柱部1cの厚肉部1d
(図3等も参照)に形成されたころ案内面と円滑に接触
し、ほぼピッチ円直径(P.C.D.)上で案内され、
内側保持用突出部1g及び外側保持用突出部1h1 に接
触することなく転動するようになされている。また、保
持器1の円周面がクランクピン5に接触する前に大端部
6aの内周面(案内面)に保持器1の外周面が接触する
ように寸法設定がなされている。すなわち、当該保持器
付きころにおいては、保持器1の外周をコネクティング
ロッド大端部6aの内周面(案内面)で案内させる設計
となされている。当該保持器付きころにおいては、この
ように、保持器1の内周側は案内されないし、また、保
持器付きころが回転中にはころ2が遠心力によって外側
に振り回されて内側保持用突出部1gと接触することが
ない故、保持器内周側に形成された内側保持用突出部1
g及び溝1iに関しては、研削処理は行われない。
【0035】上述したように、当該保持器付きころにお
いては、外側保持用突出部の加工時に生じた凹部として
の溝1jを完全に除去すべく保持器1の外周側を研削し
て、該外側保持用突出部の外面と保持器1の正規外径D
0 (図5参照)とが一致するようにしている。
【0036】この構成によれば、図5から特に明らかな
ように、外側保持用突出部1h1 が保持器1の外周面に
極く接近して位置し、保持器1に対するころ2のラジア
ル方向外側への突出量b2 、すなわち上がり量を大きく
とることができる。言い換えれば、ポケット1aの円周
方向両側に形成された各外側保持用突出部1h1 に対す
るころ2の接触点13(図5参照)が保持器の外周面側
に上がっていることである。なお、図5に示すように、
該接触点13間の距離c2 は、該両外側保持用突出部1
1 同士の距離d2 とほぼ一致している。
【0037】上記構成を採用したことによって、下記の
効果が得られる。
【0038】すなわち、上記構成の保持器付きころにお
いては、ある程度の作動期間が経過すること、あるいは
使用条件により柱部1cのころ案内面の摩耗量が増大す
ると、ころ2が図5において破線にて示すようにポケッ
ト1aの正規幅Wを逸脱して円周方向にずれる(図5に
おいてこのずれ量を記号aで示している)状態になる。
よって、ころ2は外側保持用突出部1h1 に接近する。
【0039】本発明に係る保持器付きころにおいては、
上記のように、外側保持用突出部1h1 が保持器1の外
周面に極く接近して位置しているから、このように保持
器1の柱部1cのころ案内面が摩耗しても、ころ2が該
外側保持用突出部1h1 に接触することがないか、ある
いは接触するまでの時間、すなわち発熱、焼付きに至る
までの時間が延長され、寿命が長くなる。
【0040】また、外側保持用突出部1h1 を設けるた
めに形成された上記の溝1jについても完全に除去され
るから、保持器1の外周面と装着相手としてのコネクテ
ィングロッド大端部6aの内周面(案内面)との接触面
積が増大して接触面の圧力が小さくなり、発熱と該接触
面の摩耗が抑えられる。
【0041】更に、上記構成によれば、上記正規外径D
0 に加えて上記溝1jの深さ分以上の研削代(e2 )を
持った状態、すなわち厚肉で剛性の大きな円筒状素材に
対してポケット1a及び外側保持用突出部1h1 及び内
側保持用突出部1gの加工を施すこととなるため、該加
工により生ずる歪が小さく抑えられ、ポケット1a、外
側保持用突出部1h1 及び内側保持用突出部1gの寸法
精度が向上している。
【0042】また、上記外側保持用突出部1h1 及び内
側保持用突出部1gは、柱部1cの全長のうち剛性が比
較的大きな両端の厚肉部1dに形成される。従って、ロ
ーレット加工による加圧に基づく保持器1の変形量が小
さくて済み、ポケット1aの寸法を高精度に保つことが
できる。
【0043】ここで、本実施例の保持器付きころに関し
て、上述したころ2の上がり量b2(図5参照)と、保
持器1の外周面積すなわちコネクティングロッド大端部
との接触面積について、実際に供試体を製作して測定し
た結果を示す。また、この本発明に係る保持器付きころ
の数値と比較するために、保持器外周面の研削処理を行
わない別の供試体をも製作して、そのころの上がり量と
保持器の外周面積を測定したのでその結果も示す。但
し、言うまでもなく、この比較用の別の供試体は、ロー
レット加工を施す以前の円筒状素材の外径が既に正規外
径D0 となされた。
【0044】該両供試体は、図3に示した各主要寸法が
下記のように設定されている。また、ころ数は16に設
定された。 FW :内接円径=22mm EW :外接円径=29mm BC :保持器幅=17mm ころ直径=3.5mm ころ長さ=13.8mm
【0045】上記寸法設定の結果、本発明に係る供試体
では、上がり量b2 は約0.7乃至1.0mmの数値が
得られ、研削処理を行わない供試体では上がり量は約
0.4乃至0.7mmとなった。すなわち、本発明に係
る供試体においては、非研削の供試体に比し、上がり量
2 を平均で約0.3mm大きくすることができた。
【0046】例えば跨座型車両(オートバイ等)に装備
されるエンジンのコネクティングロッド用としては、一
般にころの直径が約3乃至4mmの保持器付きころが選
定され、上記供試体のものはこれに相当する。この供試
体を実際に当該エンジンに装着して実験を行ったとこ
ろ、上記上がり量b2 の最小値を上記の如く約0.7m
mとすれば所要の効果が得られることが判明した。
【0047】一方、外周面積、すなわち接触面積につい
ては、非研削の供試体のそれが575mm2 であるのに
対し、本発明に係る供試体では641mm2 となり、1
1.5%増加させることができた。従って、本発明に係
る供試体は、回転中の保持器外径接触面の圧力について
は、非切削のものに比し、10.3%減少することが判
明した。
【0048】図7は、本発明の第2実施例としての保持
器付きころの要部の縦断面を示すものである。なお、こ
の第2実施例としての保持器付きころは、以下に説明す
る部分以外は図1乃至図6に示した第1実施例としての
保持器付きころと同様に構成されており、従って、全体
としての説明は省略して要部のみの説明に留める。ま
た、以下の説明において、該第1実施例の保持器付きこ
ろの構成部分と同一又は対応する構成部分については同
じ参照符号を付して示している。
【0049】図示のように、当該保持器付きころにおい
ては、保持器1の厚みが上記第1実施例の保持器付きこ
ろの保持器の厚みに比して薄くなされ、内側保持用突出
部は形成されてはおらず、外側保持用突出部1h1 のみ
形成されている。この外側保持用突出部1h1 の形成方
法に関しては第1実施例のものと同様である。このよう
に、ころ2の脱落規制を外方についてのみ行った保持器
付きころにおいても前述した第1実施例の保持器付きこ
ろと同様に、所要の効果は奏される。
【0050】なお、前述の第1実施例のもののように、
ころ2の脱落規制を内外共に施した保持器付きころにお
いては、ころ2は保持器1と一体化され、コネクティン
グロッド等に装着する際の取扱いが容易となる。
【0051】なお、上記各実施例では、保持器1の外側
保持用突出部1h1 (第1実施例における内側保持用突
出部1gについても)に関して、ローレット加工による
カシメによって形成し、このカシメによって生じた溝1
j(1i)を除去する場合を示したが、この他、成形型
によって該突出部を形成した後、それによってできた形
成くぼみ部を完全になくなるまで外径面の研削を施すこ
ととしてもよい。
【0052】また、上記各実施例の保持器付きころは門
形断面形状のものであるが、本発明は他にM形のものな
ど、種々の保持器付きころにも適用可能であることは勿
論である。
【0053】また、上記各実施例では、ローレット加工
により生じた溝を除去すべく研削加工を行っているが、
広義には切削であればよい。
【0054】更に、上記各実施例においては、保持器1
に関してその全体が円筒状として一体に形成されている
が、二つ割り構造、すなわち、一対の半環状の分割体を
互いに接合する構成としてもよい。図6に示したクラン
クシャフト7については、クランクピン5とウェイト部
7aとが別体のものと一体のものとがあり、完全円筒状
の一体成形の保持器はこの別体形式のクランクシャフト
では組み込めるが、一体形式のクランクシャフトへの組
込みは不可能である。二つ割り構造の保持器を用いれ
ば、クランクシャフトが別体形式、一体形式に拘らず組
み込むことができる。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による保持
器付きころにおいては、外側保持用突出部の加工時に生
じた凹部を完全に除去すべく保持器の外周側を切削し
て、該外側保持用突出部の外面と保持器の正規外径とが
一致するようにしている。かかる構成によれば、外側保
持用突出部が保持器の外周面に極く接近して位置し、保
持器に対するころのラジアル方向外側への突出量、すな
わち上がり量を大きくとることができる。従って、保持
器の柱部のころ案内面が摩耗しても、ころが外側保持用
突出部に接触することがないか、あるいは接触するまで
の時間、すなわち発熱、焼付きに至るまでの時間が延長
され、寿命が長くなる。また、外側保持用突出部を設け
るために形成された上記凹部についても完全に除去され
る故、保持器外周面と装着相手(例えばコネクティング
ロッド大端部)の内周面(案内面)との接触面積が増大
して接触面の圧力が小さくなり、発熱と該接触面の摩耗
が抑えられる。更に、上記構成によれば、上記正規外径
に加えて上記凹部の深さ分以上の切削代を持った状態、
すなわち厚肉で剛性の大きな素材に対してポケット及び
外側保持用突出部(内側保持用突出部を設ける場合も同
様)の加工を施すこととなるため、該加工により生ずる
歪が小さく抑えられ、ポケット及び外側保持用突出部
(内側保持用突出部も)の寸法精度が向上している。加
えて、本発明による保持器付きころにおいては、保持器
の柱部各々について、その略全長にわたって外側面を円
環部の外周面と面一となしている。この構成によれば、
保持器外周面はポケット部を除き完全な円筒面となり、
上記装着相手との接触面積が極めて大となって接触面の
圧力が大幅に軽減され、前述した発熱と摩耗の抑制に関
して特に有効である。また、本発明による保持器付きこ
ろにおいては、上記柱部に関して、保持器軸方向におけ
る中央にして円周方向における両側に、ポケットの一部
を拡幅するように切欠部を形成している。このようにポ
ケットの一部を拡幅したことにより、当該保持器付きこ
ろが潤滑剤を取り入れる能力が向上している。特に、当
該保持器付きころをコネクティングロッド大端部に装着
した場合、該大端部の軸方向中央部に形成されている潤
滑剤供給用のスリットに対応してポケットの拡幅部分が
位置するから、潤滑剤が効率良く流入し、潤滑性、耐焼
付き性が良好である。更に、本発明による保持器付きこ
ろにおいては、上記柱部の内側かつ軸方向中央にころの
ピッチ円直径よりも外側まで達しかつポケットの長さよ
りも短い略U字状の凹部を形成することにより両端厚肉
部と中央薄肉部とを有するようになし、上記外側保持用
突出部を該両端厚肉部に形成している。この略U字状凹
部を形成した構成によれば、前述のように柱部の外側面
と円環部の外周面とを互いに面一とした構成と相まっ
て、柱部が、両円環部の断面形状と共に門のような形を
呈する。このように保持器が門形の断面形状を有するの
で、軽量にして大きな剛性が得られる。また、柱部の全
長のうち剛性が比較的大きな上記両端厚肉部に外側保持
用突出部(内側保持用突出部を形成する場合も同様)が
形成されるから、ローレット加工等による加圧に基づく
保持器の変形量が小さくて済み、ポケットの寸法を高精
度に保つことができる。なお、上記門形断面形状の構成
においては、ころが柱部の両端厚肉部によって案内され
る故、ころの倒れ、すなわちスキューが小さく抑えら
れ、軌道面との滑りが小さく発熱量も少ない。また、こ
の門形断面形状では、ころのピッチ円直径(P.C.
D.)に沿った柱部の幅寸法が比較的小さいから、ころ
の組込み本数を増やすことができ、上述のように剛性が
大であることにも鑑みて高負荷容量を必要とする際に用
いて好適である。因に、図8乃至図12に従来例として
示した保持器付きころは、図9から特に明らかなよう
に、柱部101cが、両端の円環部101bの断面形状
と共にアルファベットのMを形成するようにその中央部
分が内径側に向けて屈曲しており、それ故にM形と称さ
れる。このM形の保持器付きころでは、ころのピッチ円
直径に沿った柱部101cの幅寸法を本発明に係る門形
の保持器付きころと同じに設定した場合、組み込めるこ
ろの本数は本発明のもに比べて少なくなる。また、柱部
101c自体も薄肉でしかも大きく屈曲しているところ
から、剛性が抑えられ、比較的低い負荷を受ける場合に
多く選定される。次いで、本発明による保持器付きころ
においては、ポケットからのころの内方への脱落を規制
する内側保持用突出部も有する。従って、ころは内外の
保持用突出部によって保持されて保持器と一体化され、
コネクティングロッド等に当該保持器付きころを装着す
る際の取扱いが容易となっている。但し、該内側保持用
突出部の加工時に保持器内周側に形成された凹部に関し
ては、保持器付きころが回転中にはころが遠心力によっ
て外側に振り回されて該内側保持用突出部と接触するこ
とがないから、外側保持用突出部形成時の凹部のように
除去する必要はない。更に、本発明による保持器付きこ
ろにおいては、上記保持器が、一対の半環状分割体を互
いに接合してなる。図6に示したクランクシャフト7に
ついては、クランクピン5とウェイト部7aとが別体の
ものと一体のものとがあり、完全円筒状の一体成形の保
持器はこの別体形式のクランクシャフトでは組み込める
が、一体形式のクランクシャフトへの組込みは不可能で
ある。二つ割り構造の保持器を用いれば、クランクシャ
フトが別体形式、一体形式に拘らず組み込むことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の第1実施例としての保持器付
きころの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した保持器付きころの一部の
拡大図である。
【図3】図3は、図1に示した保持器付きころの一部
の、軸方向に平行な縦断面図である。
【図4】図4は、図1に示した保持器付きころの一部
の、軸方向に対して垂直な縦断面図である。
【図5】図5は、図1に示した保持器付きころの一部を
拡大した、軸方向に対して垂直な縦断面図である。
【図6】図6は、図1に示した保持器付きころをエンジ
ンのコネクティングロッドに装着した状態を示す図であ
る。
【図7】図7は、本発明の第2実施例としての保持器付
きころの一部の、軸方向に平行な縦断面図である。
【図8】図8は、従来の保持器付きころの一部の正面図
である。
【図9】図9は、図8に示した保持器付きころの、軸方
向に平行な縦断面図である。
【図10】図10は、図8に示した保持器付きころの一
部の、軸方向に平行な縦断面図である。
【図11】図11は、図8に示した保持器付きころの一
部の、軸方向に平行な縦断面図である。
【図12】図12は、図8に示した保持器付きころの一
部を拡大した、軸方向に対して垂直な縦断面図である。
【符号の説明】
1 保持器 1a ポケット 1b 円環部 1c 柱部 1d (両端の)厚肉部 1e (中央の)薄肉部 1f (略U字状の)凹部 1g 内側保持用突出部 1h1 外側保持用突出部 1i,1j 溝(凹部) 5 クランクピン 6 コネクティングロッド 6a 大端部 6b 中央スリット

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 両端の円環部及び該円環部各々と一体に
    円周方向に並設されて該円環部と共に軸方向に平行なポ
    ケットを画定する複数の柱部を有する略円筒状の保持器
    と、該保持器の肉厚よりも大径にして前記ポケット各々
    に挿入されたころとからなり、前記柱部の一部を加工す
    ることによって前記ポケットに臨むように突出させて前
    記ころの外方への脱落を規制する外側保持用突出部を形
    成し、この加工により生じた凹部を全て除去すべく前記
    保持器の外周側を切削して前記外側保持用突出部の外面
    と保持器の正規外径とが一致するようにしたことを特徴
    とする保持器付きころ。
  2. 【請求項2】 前記柱部各々をその略全長にわたって外
    側面を前記円環部の外周面と面一としたことを特徴とす
    る請求項1記載の保持器付きころ。
  3. 【請求項3】 前記柱部の前記軸方向における中央にし
    て前記円周方向における両側に、前記ポケットの一部を
    拡幅するように切欠部を形成してなることを特徴とする
    請求項1又は請求項2記載の保持器付きころ。
  4. 【請求項4】 前記柱部の内側かつ軸方向中央に前記こ
    ろのピッチ円直径よりも外側まで達しかつ前記ポケット
    の長さよりも短い略U字状の凹部を形成することにより
    両端厚肉部と中央薄肉部とを有するようになし、前記外
    側保持用突出部を該両端厚肉部に形成したことを特徴と
    する請求項1乃至請求項3のうちいずれか1記載の保持
    器付きころ。
  5. 【請求項5】 前記柱部の一部を加工することによって
    前記ポケットに臨むように突出させて前記ころの内方へ
    の脱落を規制する内側保持用突出部を形成したことを特
    徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1記載の
    保持器付きころ。
  6. 【請求項6】 前記保持器は、一対の半環状分割体を互
    いに接合してなることを特徴とする請求項1乃至請求項
    5のうちいずれか1記載の保持器付きころ。
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