JPH08214872A - 光学活性ジオールの製造法 - Google Patents

光学活性ジオールの製造法

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JPH08214872A
JPH08214872A JP4784895A JP4784895A JPH08214872A JP H08214872 A JPH08214872 A JP H08214872A JP 4784895 A JP4784895 A JP 4784895A JP 4784895 A JP4784895 A JP 4784895A JP H08214872 A JPH08214872 A JP H08214872A
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JP
Japan
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optically active
carbonic acid
acid ester
diol
cyclic carbonic
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JP4784895A
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Yoichi Kobayashi
洋一 小林
Kazumi Maeda
香寿美 前田
Masato Ohira
真人 大平
Takakazu Kojima
高和 児嶋
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Nippon Soda Co Ltd
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Nippon Soda Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】一般式〔I〕 【化1】 (式中nは1または2、Rは直鎖または分岐鎖状のC1
〜C11のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、C2〜C
11のアルケニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい芳
香族基を示す)で表される環状炭酸エステルを立体選択
的にジオールに変換する能力を有し、該環状炭酸エステ
ルに対し高度の耐性を示す、パラコッカス属に属する菌
を用いる光学活性ジオール類の製造法およびそれに用い
られる菌。 【効果】本発明により、農医薬の中間原料として有用で
ある光学活性ジオール類を経済的に有利に製造すること
ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は環状炭酸エステルを分解
する新規な微生物、およびその微生物を利用する光学活
性ジオールの製造法である。光学活性な1,2−ジオー
ル、1,3−ジオール類およびそれらの置換体は、医薬
・農薬に利用される生理活性化合物の合成中間体、ある
いは液晶等の機能性材料の原料として重要性が高い。
【0002】
【従来の技術および課題】2級水酸基を有する光学活性
ジオール類は、医薬・農薬に利用される光学活性な生理
活性化合物の基幹合成中間体としての利用が検討され
(E. Hungerbuehleret al. Helv. Chim. Acta 64, 146
7(1981))、また強磁性液晶用素材の原料としても期待
されている(特開平2-67252)。そのため経済的に高純
度の該化合物およびその誘導体を製造する方法の確立が
望まれている。光学活性ジオール類の製造法としては、
ジオール類から容易に合成できる環状炭酸エステルを原
料とし、それに酵素類を作用させて製造する方法がある
(特願平6ー87655)。この方法では環状炭酸エステルが
加水分解を受けた際に、エステルの酸部分である炭酸ガ
スが気体として系から除かれ、反応系が単純化されるた
め、簡便で経済的に優れていると考えられる。生成した
ジオール類を水溶液より分離精製する工程においては、
ジオール類を適切な有機溶媒で抽出する等の方法が用い
られるが、この場合ジオール類の濃度が高い方がエネル
ギーおよび溶媒等の消費が少なく、経済的に有利であ
る。これまでに、この不斉合成法に用いることの可能な
数種の微生物が見いだされたが、これらの微生物は基質
に対する耐性が低く、低濃度の環状炭酸エステル水溶液
中でしか使用できなかった。これらを用いて生成された
ジオールは低濃度の水溶液状態であり、従って分離精製
の点で難点があった。またこれらの微生物は反復使用に
対する耐性も低く、経済性に問題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高濃度の
環状炭酸エステルの存在下で光学選択的なジオール類を
生産する微生物を得るために、高濃度(5%)の環状炭
酸エステルを含む培地中で生育することを指標として、
環境中より新菌株の分離を行い、本発明であるパラコッ
カス(Paracoccus)属 NSB2010菌を得た。
【0004】本発明は、一般式〔I〕
【化5】 (式中、nは1または2、Rは直鎖または分岐鎖状のC
1〜C11のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、C2〜C
11のアルケニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい芳
香族基を示す)で表される環状炭酸エステルのエナンチ
オマー混合物を立体選択的にジオールに変換する能力を
有し、該環状炭酸エステルに対し高度の耐性を示す、パ
ラコッカス(Paracoccus)属に属する微生物の培養液、
該菌体、該菌体処理物または該菌体由来の酵素を用いて
一般式〔I〕
【化6】 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
る環状炭酸エステルのエナンチオマー混合物を立体選択
的に加水分解することを特徴とする、一般式〔II〕
【化7】RC* H(OH)(CH2)n OH 〔II〕 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
る光学活性ジオール類の製造法であり、そのために用い
られ、該環状炭酸エステルに対し高度の耐性を示すパラ
コッカス(Paracoccus)属新菌 NSB2010菌であ
る。
【0005】原料となる環状炭酸エステルは文献記載の
方法(J. Org. Chem., 24巻 1873頁(1959))により対
応するジオールから容易に合成できる。この原料化合物
は入手の容易な点でラセミ体(エナンチオマーの等量混
合物)が好ましいがエナンチオマー混合比率は特に限定
されるものではなく、いかなる混合比でもよい。
【0006】本発明であるパラコッカス属 NSB20
10菌は、50g/lの4−メチル−1,3−ジオキサ
ン−2−オンを含む寒天培地(グルコース5.0g/
l、酵母エキス5.0g/l、FeSO4・7H2O 0.
01g/l、MnSO4・4〜6H2O 0.01g/
l、MgSO4・7H2O 1.0g/lを含む)上で生
育する微生物として環境中より分離した新菌株である。
【0007】パラコッカス属 NSB2010菌の菌学
的性質を以下に示す。
【表1】 細菌の形および大きさ: 球菌、直径0.7〜1.0μm グラム染色性 : 陰性 運動性 : 無 硝酸塩の還元 : + 亜硝酸塩の還元 : + 脱窒反応 : − 色素の生成 : +(微弱な蛍光色素を生成することがある) ゼラチンの液化 : 20℃で液化する オキシダーゼ : + カタラーゼ : + ウレアーゼ : − 生育の範囲 : 温度 5〜37℃で生育する pH pH5.1〜9.0で生育する 食塩濃度 0〜6.0%で生育する 酸素に対する態度 : 好気的 O−Fテスト : − DNAのGC含量 : 71% 無機窒素の利用 : 硝酸塩、アンモニウム塩を利用可能 炭素化合物の資化性 : メタノール、メチルアミンを資化する
【0008】以上の菌学的性質をバージーズ マニュア
ル オブ システマティック バクテリオロジー(Berg
ey's Manual of Systematic Bacteriology)に基づいて
検索した結果、本菌はパラコッカス(Paracoccus)属に
該当する新菌と判断された。本菌は、4−メチル−1,
3−ジオキサン−2−オンに作用して、対応する(R)−
1,3−ブタンジオールに変換する能力を持つ。そこで
本発明者らは、本菌をパラコッカス(Paracoccus sp.)N
SB2010菌と命名し、工業技術院生命工学工業技術
研究所に寄託した(FERM P-14751)。
【0009】本発明の菌の培養のために用いられる培地
は、微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機イオン、
さらに必要ならば有機栄養源を含む通常の培地である。
炭素源としては、グルコース等の炭水化物、エタノール
等のアルコール類、有機酸、その他が適宜使用される。
窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム塩,アミノ酸そ
の他が用いられる。無機イオンとしては、カルシウムイ
オン、マグネシウムイオン、鉄イオン、その他が必要に
応じ使用される。有機栄養源としては、ビタミン、アミ
ノ酸等およびこれらを含有するコーンスティープリカ
ー、酵母エキス、ポリペプトン、肉エキス、その他が適
宜用いられる。培養は好気的条件下に、pH6ないし
8、温度25ないし37℃の適当な範囲に制御しつつ行
えばよい。本発明の菌を用いての環状炭酸エステルから
のジオール類の製造において、環状炭酸エステルに微生
物を作用させる方法は、環状炭酸エステルを含む培地中
で微生物を培養してもよいし、菌体または菌体処理物を
水溶液中で環状炭酸エステルに接触させてもよい。微生
物を培養することにより環状炭酸エステルをジオールに
変換させる方法としては、培養当初より環状炭酸エステ
ルを含む培地を用いてもよいし、また培養途中に環状炭
酸エステルを培地に添加してもよい。環状炭酸エステル
の濃度を0.1〜50%、好ましくは5〜30%とし
て、上記の方法により1ないし10日間培養を行うこと
により、高濃度の光学活性ジオールが生成蓄積される。
一方、微生物の菌体または菌体処理物を水溶液中にて環
状炭酸エステルと接触させて作用させる場合には、上記
の方法により6ないし48時間程度培養を行い、微生物
を十分増殖させることにより菌体を得る。菌体の使用法
としては、菌体を含む培養液をそのまま使用してもよい
し、また菌体を培養液より分離回収したのち洗浄しても
よいし、洗浄せずに使用してもよい。菌体処理物として
は、機械的破砕菌体、超音波で処理した菌体、凍結融解
を施した菌体、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、リゾ
チーム等の酵素で処理した菌体、界面活性剤やトルエン
等で処理した菌体、菌体の蛋白画分、菌体より精製した
酵素、その他が適宜用いられる。反応法としては、菌体
培養液、もしくは菌体または菌体の処理物を溶解または
懸濁した水溶液に環状炭酸エステルを添加し、温度5〜
40℃、好ましくは10〜30℃、pH4〜11、好ま
しくは5〜7に保ちつつ静置または攪拌すればよい。こ
の際適切な緩衝液を用いるのが望ましい。環状炭酸エス
テルの濃度は0.1〜50%、好ましくは5〜30%で
あり、必要ならば環状炭酸エステルは反応の間追補添加
される。この方法により1ないし24時間で、水溶液中
には高濃度の光学活性ジオールが生成蓄積される。また
菌体を使用する場合、反応後に菌体を分離回収し、水ま
たは適当な緩衝液で洗浄した後、再度同条件での反応に
用いることができる。菌体を反復使用すれば経済的に有
利である。以上の方法により生成された光学活性ジオー
ルは、適当な有機溶媒にて抽出し分別蒸留する等の方法
により分離精製することができる。本発明により得られ
るジオール水溶液は高濃度であるから、エネルギーおよ
び溶媒等の消費量を少なくして高効率でジオールを得る
ことができる。かくして多量の光学活性ジオールを経済
的に有利に製造することができる。
【0010】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
述べる。
【0011】実施例1 グルコース25g/l、コーンスティープリカー15g
/l、FeSO4・7H2O1.0g/l、 MnSO4
4〜6H2O1.0g/l、 MgSO4・7H2O 10
g/l、CaCl2 10g/lを含む培地100mlを
500ml容バッフル付き三角フラスコに入れ、121
℃で15分間滅菌した。これに上記組成寒天培地で30
℃にて一晩培養したパラコッカス属 NSB2010菌
(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号FERM P-1
4751)を1白金耳接種し、30℃で20時間振盪培養し
た。この培養液中より菌体を遠心分離により採取し、水
で1回洗浄し、菌体を集めた。この菌体(湿菌体量0.
10g相当)を、4−メチル−1,3−ジオキサン−2
−オン82mgを含む50mM2-モルホリノエタンス
ルホン酸緩衝液(pH5.5)1.0mlに添加して20
℃、20時間振盪し反応を行った。反応終了後、遠心分
離により菌体を除いた。高速液体クロマトグラフ法(屈
折率検出器)により21.0mgの1,3−ブタンジオ
ールの生成を確認した(収率32.0%)。生成した
1,3−ブタンジオールはR体であった(旋光度検出器
による測定で光学純度95%ee)。得られた水溶液
1.0mlに塩化ナトリウム0.35gを溶解し、トルエ
ン2.5mlで2回抽出し4−メチル−1,3−ジオキ
サン−2−オンを除いた後、酢酸エチル2.5mlで2
回抽出し純度95%の(R)−1,3−ブタンジオール2
0.0mg(光学純度95%ee)を得た。
【0012】実施例2 実施例1の方法により得たパラコッカス属 NSB20
10菌の菌体(湿菌体量0.10g相当)を、4−メチ
ル−1,3−ジオキサン−2−オン82mgを含む50
mM2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝液(pH5.
5)1.0mlに添加し、更にエタノール50mgを添
加して、20℃、20時間振盪し反応を行った。反応終
了後、遠心分離により菌体を除いた。高速液体クロマト
グラフ法(屈折率検出器)により29.6mgの1,3
−ブタンジオールの生成を確認した(収率45.0
%)。生成した1,3−ブタンジオールはR体であった
(旋光度検出器による測定で光学純度96%ee)。得
られた水溶液1.0mlから実施例1の方法により純度
97%の(R)−1,3−ブタンジオール28.1mg
(光学純度96%ee)を得た。
【0013】実験例3 実施例1の方法により得たパラコッカス属 NSB20
10菌の菌体(湿菌体量41g相当)を、4−メチル−
1,3−ジオキサン−2−オン33gを含む25mMリ
ン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)400mlに添加
し、小型ジャーファーメンターを用いて攪拌(200回
転/分)・通気(2 l/分)しながら20℃に調節し
て20時間、反応を行った。反応終了後、遠心分離によ
り菌体と水溶液を分離した。菌体を水で1回洗浄し再び
上記と同じ反応に供した。この反応を4回反復した。こ
の反復反応で生成した(R)−1,3−ブタンジオールの
収率と光学純度を第1表に示す。4回の反復による収率
の実質的低下はみられなかった。得られた水溶液全16
00mlから実施例1の方法により純度97%の(R)−
1,3−ブタンジオール全44g(光学純度91%e
e)を得た。
【0014】
【表2】 第 1 表 反復反応結果 ─────────────────────────── 反復回数 収率(%) 光学純度(%) ─────────────────────────── 1 49.4 91 2 44.3 91 3 46.0 91 4 43.7 92 ───────────────────────────
【0015】実施例4 実施例1の方法により得たパラコッカス属 NSB20
10菌菌体(湿菌体6.23g相当)を25mM2-モル
ホリノエタンスルホン酸緩衝液(pH6.0)20ml
に懸濁し超音波破砕装置(クボタ製インソネーター20
0M)を用いて氷温下100Wで48分間処理し、遠心
して上清を回収した。上清0.1mlに4−メチル−
1,3−ジオキサン−2−オン3.5mgを加え、30
℃で1時間保温した。その結果、1,3−ブタンジオー
ル0.68mg(収率25%)を得た。これはR体であ
った(旋光度検出器による測定で光学純度92%e
e)。
【0016】実施例5 実施例4の遠心上清20mlに硫安を添加して25%飽
和とし、遠心分離により沈澱を除いた。上清にさらに硫
安を添加して50%飽和とし、遠心分離により沈澱を回
収した。沈澱を2mlの上記緩衝液で抽出し、抽出液に
塩化カルシウム(最終濃度5mM)を添加した。この溶
液0.1mlに4−メチル−1,3−ジオキサン−2−
オン3.5mgを加え、30℃で1時間保温した。その
結果、1,3−ブタンジオール0.87mg(収率32
%)を得た。これはR体であった(旋光度検出器による
測定で光学純度94%ee)。
【0017】
【発明の効果】本発明により、農医薬の中間原料として
有用である光学活性ジオール類を経済的に有利に製造す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:01) (72)発明者 児嶋 高和 神奈川県小田原市高田345 日本曹達株式 会社小田原研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式〔I〕 【化1】 (式中、nは1または2、Rは直鎖または分岐鎖状のC
    1〜C11のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、C2〜C
    11のアルケニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい芳
    香族基を示す)で表される環状炭酸エステルのエナンチ
    オマー混合物を立体選択的にジオールに変換する能力を
    有し、該環状炭酸エステルに対し高度の耐性を示す、パ
    ラコッカス(Paracoccus)属に属する微生物の培養液、
    該菌体、該菌体処理物または該菌体由来の酵素を用いて
    一般式〔I〕 【化2】 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
    る環状炭酸エステルのエナンチオマー混合物を立体選択
    的に加水分解することを特徴とする、一般式〔II〕 【化3】RC* H(OH)(CH2)n OH 〔II〕 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
    る光学活性ジオール類の製造法。
  2. 【請求項2】パラコッカス(Paracoccus)属に属し、一
    般式〔I〕 【化4】 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
    る環状炭酸エステルを加水分解する能力を有するNSB
    2010菌。
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