JPH08209269A - 伸び特性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合金、及びその製造方法 - Google Patents

伸び特性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合金、及びその製造方法

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JPH08209269A
JPH08209269A JP1565395A JP1565395A JPH08209269A JP H08209269 A JPH08209269 A JP H08209269A JP 1565395 A JP1565395 A JP 1565395A JP 1565395 A JP1565395 A JP 1565395A JP H08209269 A JPH08209269 A JP H08209269A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 複雑な熱処理工程を必要とせず、導電率の低
下を招かないで屈曲性、伸び特性、引張強さを向上して
機械的衝撃に対し高強度を保ち、圧着端子部における屈
曲による断線を減少させた導電用高力銅合金を安価に製
造できるようにする。 【構成】 Mgを0.05〜0.25wt%、Snを
0.1〜0.6wt%、Pを0.02〜0.08wt
%、Inを0.02〜0.2wt%、Mnを0.05〜
0.15wt%含有し、残部が基本的に銅によって構成
し、前記MgとSnの含有比を(1):(1.0以上)
にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、銅合金に係り、特に、
例えば自動車用電線の導体等として用いた場合に適した
屈曲性、伸び特性を有する導電用高力銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から自動車の自動車用電線の導体と
しては軟銅線が主として用いられてきたが、各種計器類
等の車載装置について電子化が図られ、自動車内におけ
る電気、電子配線回路の数が著しく増加し、自動車用電
線による自動車内における占積空間の増加、自動車総重
量の増加を招いている。しかし、自動車の車体は、燃費
の向上の点から軽量であることが望ましく、車体の軽量
化を図る上から、自動車内の配線回路数の増加があって
も、車内における自動車用電線の電線占積空間の狭小
化、及び自動車用電線の総重量の増加の抑制の要望が強
まっている。そこで、自動車用電線を軽量化するため導
体外径を小さくしても機械的強度を確保できる材料とし
て硬銅線が検討されたが、硬銅線は材質的に伸びが著し
く小さいため、硬銅線を用いて端子間を圧着接合して
も、自動車走行中に生じる振動衝撃の外力による機械的
負荷が接合部に加わると、この接合部が損傷してしまう
ことがある。このように硬銅線を用いて端子間を圧着接
合すると、端子圧着箇所が機械的な弱点部となり外的衝
撃によって断線を生じやすく信頼性に乏しいという結果
を招来している。また、自動車用電線の使用重量を小さ
くすることは、導体径を小さくすることによって実現が
可能であるが、従来の如き軟銅線にあっては、導体外径
を小さくすると機械的強度が低下してしまう。そこで、
近年、導体外径を小さくしても、機械的強度を確保で
き、比較的良好な繰り返し屈曲強度及び導電性を有する
銅合金として、Ni−Si−In−Sn銅合金(特公平
5−27699号公報)が開発されている。このNi−
Si−In−Sn銅合金は、Cu母相中に固溶している
Ni、Siを時効硬化処理により微細に析出させて引張
強さ、伸び、導電率を向上させている。さらにIn、S
nをCu母相中に固溶させ引張強さを、さらに向上させ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のNi
−Si−In−Sn銅合金にあっては、高価なNiを多
量に使用(通常2〜3wt%)することになり、電線導
体としての材料のコストが高くなるという問題点を有し
ている。この導体材料のコスト高は、電線の価格に影響
を与え、電線価格の上昇は、使用数量が特に増加してい
る自動車部門において、自動車価格を押上げる結果とな
り兼ねず、価格競争の激しい自動車部門においては、自
動車の機能を下げずに自動車価格の低廉化を実現するこ
とが要求されている。それには、自動車のあらゆるパー
ツ類について、各パーツの性能を落とさず、コストダウ
ンを図ることが必要であり、エンジン制御の電子化に伴
い使用数量が特に増加している自動車用電線の場合も例
外ではない。また、従来のNi−Si−In−Sn銅合
金は、溶体化処理、時効硬化処理を行う時効硬化型銅合
金のため、通常の電線製造設備とは別に溶体化処理、時
効硬化処理のための設備を必要とし、加工コストがアッ
プするため、製品コストが大幅にアップすることにな
る。この時効硬化型銅合金の場合には、溶体化処理、時
効硬化処理を行う際に、熱処理の温度制御を正確に行わ
ないと、銅合金として良好な特性が得られない。ところ
が溶体化処理、時効硬化処理を行う際の熱処理の温度
は、正確に制御することが難しく、特性にバラツキが生
じ易くなっている。本発明の目的は、複雑な熱処理工程
を必要とせず、導電率の低下を招かないで屈曲性、伸び
特性、引張強さを向上して械的衝撃に対し高強度を保
ち、圧着端子部における屈曲による断線を減少させた導
電用高力銅合金を安価に製造できるようにすることにあ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
Mgを0.05〜0.25wt%、Snを0.1〜0.
6wt%、Pを0.02〜0.08wt%、Inを0.
02〜0.2wt%、Mnを0.05〜0.15wt%
含有し、残部が基本的に銅からなり、前記MgとSnの
含有比が、 Mg:Sn=(1):(1.0以上) にしたものである。
【0005】請求項2記載の発明は、Mgを0.05〜
0.25wt%、Snを0.1〜0.6wt%、Pを
0.02〜0.08wt%、Inを0.02〜0.2w
t%、Mnを0.05〜0.15wt%含有し、残部が
基本的に銅からなり、前記MgとSnの含有比が、 Mg:Sn=(1):(1.0以上) である銅合金を連続鋳造によって作製した鋳造棒を圧
延、伸線後に500〜600℃で連続焼鈍し、その後に
85〜95%の加工率で伸線し、最終熱処理を320〜
420℃で連続焼鈍して製造しようというものである。
【0006】
【作用】請求項1記載の発明は、MgをCu母相中に固
溶させ、引張強さを向上させると共に、Mgの最適添加
量を限定することで、Mgによる鋳造性の悪化を最小に
止め、Snを添加することで屈曲特性を大幅に向上させ
ると共に、一層の引張強さ、焼鈍後の伸びの向上を図
り、またMg添加による鋳造性の悪化を改善するもので
ある。そしてPを添加することにより、耐熱性を向上さ
せると共に、さらなる鋳造性の向上を図り、さらに、I
nの添加により引張強さを一層向上させ、Mnを添加す
ることにより伸び及び屈曲性のさらなる向上を図ったも
のである。
【0007】MgをCuに添加すると、鋳造時に鋳巣な
どが発生し易くなり、鋳造性が悪化することが従来より
知られており、特に、連続鋳造時には鋳造割れが発生し
やすく、この微小な鋳造割部が圧延又は伸線後の銅合金
の欠陥部となり、断線の原因となっていた。このためM
g銅合金の場合は、表皮を面削してから伸線を行うが、
断線が多発する場合がある。一方、Mgの添加は導電率
の低下が少ない割りに、引張強さの向上効果が非常に大
きい。このことから請求項1記載の発明において、Mg
の含有量を0.05〜0.25wt%としており、Mg
の含有量を0.05〜0.25wt%としたのは、Mg
の含有量が0.05wt%未満では、引張強さを向上さ
せる効果が小さく、Mgの含有量が0.25wt%を超
えても、引張強さを向上させる効果は飽和してしまい、
導電性が大幅に低下し、鋳造性が急速に悪化するからで
ある。
【0008】また、Snを添加することにより屈曲性が
大幅に向上し、引張強さを一層向上し、焼鈍後の伸びの
向上を図ると共にMgの添加により悪化した鋳造性を向
上させる。請求項1記載の発明において、Snの含有量
を0.1〜0.6wt%としたのは、Snの含有量が
0.1wt%未満では、屈曲性及び鋳造性を向上させる
効果が小さく、Snの含有量が0.6wt%を超えて
も、引張強さ及び鋳造性の向上効果が飽和してしまい、
焼鈍後の伸び、屈曲性が悪化し、導電性を大幅に低下さ
せるためである。
【0009】さらにPの添加は、Snとの相乗効果によ
って鋳造性を向上させる効果が非常に大きく、Mgの添
加による鋳造性の悪化を大きく改善でき、耐熱性も大き
く向上するが、導電率の低下が大きいため添加量は限定
される。したがって、請求項1記載の発明において、P
の含有量を0.02〜0.08wt%としており、Pの
含有量を0.02〜0.08wt%としたのは、Pの含
有量が0.02wt%未満では、耐熱性の向上に効果が
少なく、またMgの添加によって低下した鋳造性を改善
しきれず、Pの含有量が0.08wt%を超えると耐熱
性及び鋳造性は向上するが、導電性が大幅に低下して実
用的でないためである。
【0010】さらにまた、Inの添加は、引張強さを大
きく向上させる。請求項1記載の発明において、Inの
含有量を0.02〜0.2wt%としたのは、Inの含
有量が0.02wt%未満では、引張強さを向上させる
効果が小さく、Inの含有量が0.2wt%を超えると
引張強さの向上効果が飽和し、導電性が低下してしま
い、多量に添加することはInが高価であるため全体の
コストアップとなり実用的でないからである。
【0011】また、Mnの添加は、屈曲性を向上させ
る。請求項1記載の発明において、Mnの含有量を0.
05〜0.15wt%としたのは、Mnの含有量が0.
05wt%未満では、伸び特性及び屈曲性を向上させる
効果が小さく、Mnの含有量が0.15wt%を超える
と伸び特性及び屈曲性の向上効果が飽和し、導電性が低
下してしまうためである。
【0012】ここで鋳造性を低下させるMgと鋳造性を
向上させるSnの添加比率は、Mg−Sn−P−In−
Mn銅合金の鋳造性に大きく影響するため、Mgの添加
量1に対してSnの添加量を1.0以上の比率にする必
要がある。MgとSnの添加比率が、 Mg>Sn であると、Mg−Sn−P−In−Mn銅合金の鋳造性
の改善はできない。
【0013】請求項2記載の発明は、連続鋳造によって
作製したMgを0.05〜0.25wt%、Snを0.
1〜0.6wt%、Pを0.02〜0.08wt%、I
nを0.02〜0.2wt%、Mnを0.05〜0.1
wt%含有し、残部が基本的に銅からなり、前記Mgと
Snの含有比が、 Mg:Sn=(1):(1.0以上) である銅合金の鋳造棒を圧延、伸線後に500〜600
℃で連続焼鈍し、その後に85〜95%の加工率で伸線
し、最終熱処理を320〜420℃で連続焼鈍して製造
することにより、複雑な熱処理工程(溶体化処理、時効
硬化処理)を必要としない固溶強化型の銅合金で、特に
伸び特性、屈曲特性、伸線加工特性に優れ、引張強さに
も優れた、安価な銅合金を得ることができる。
【0014】連続鋳造で作製した鋳造棒を、圧延、伸線
後に連続焼鈍するのは、圧延及び伸線での加工組織を回
復させ、最終熱処理で引張強さを低下することなく伸び
及び屈曲性を向上させるためである。そして、連続焼鈍
の焼鈍温度を500〜600℃としたのは、焼鈍温度が
500℃を下回る温度では圧延及び伸線での加工組織を
十分回復させることができないために最終熱処理で伸び
が十分に向上せず、焼鈍温度が600℃を超えると焼鈍
処理中の変色が著しく、線材としての巻き取り張力の調
整が困難となるためである。また、500〜600℃焼
鈍した後に伸線するのは、最終熱処理で引張強さを大幅
に低下させることなく、伸び及び屈曲性を向上させるた
めである。そして、この伸線の加工率を85〜95%に
したのは、加工率が85%を下回ると、最終熱処理後に
おいて十分な引張強さが確保できず、95%を超える加
工率では最終熱処理後において伸び及び屈曲性が十分に
向上しないためである。さらに、連続焼鈍して最終熱処
理を施すのは、伸び及び屈曲性を向上するためである。
そして、この連続焼鈍の焼鈍温度を320〜420℃と
したのは、焼鈍温度が320℃を下回る温度では伸びが
十分に向上せず、420℃を超える焼鈍温度では引張強
さが低下するためである。
【0015】
【実施例】以下、本願請求項1記載の発明に係る伸び特
性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合金の具体的実施
例について比較例、従来例と比較して説明する。本願請
求項1記載の発明の実施例として、不活性ガス雰囲気に
保たれたグラファイト製の坩堝炉で、黒鉛粒被覆下にて
電気銅地金を溶解した後、Mg,Sn,Inを純金属の
形態で、P,Mnを母合金の形態で添加して均一な溶湯
を得る。これを連続鋳造により表1に示す如き各実施例
(No1〜No11)の組成の20mmφの鋳造棒を作製
した。これらを冷間圧延後、伸線機によって3.2mmφ
に伸線し、550℃で連続焼鈍した。これを、さらに伸
線機によって1.0mmφに伸線した後、不活性ガス雰囲
気の電気炉を用い、400℃で連続焼鈍した。その後、
導電率、引張強さ、伸び、屈曲性を測定した。
【0016】従来例1は、不活性ガス雰囲気に保たれた
グラファイト製の坩堝炉で、黒鉛粒被覆下にて電気銅地
金を溶解した後、Ni,Sn,Inを純金属の形態で、
Siを母合金の形態で添加して均一な溶湯を得る。これ
を連続鋳造により表1に示す如き組成の20mmφの鋳造
棒を作製した。これを冷間圧延後、伸線機によって3.
2mmφに伸線した後、不活性ガス雰囲気炉で900℃で
1時間加熱保持後、水冷し溶体化処理を施した。その
後、1.0mmφまで伸線し、さらに不活性ガス雰囲気炉
で470℃で6時間の時効硬化処理を行った。その後、
導電率、引張強さ、伸び、屈曲性を測定した。硬銅は通
常の無酸素銅線である。また、軟銅は通常の無酸素銅線
を不活性ガス雰囲気炉で300℃で2時間の焼鈍処理を
行った後、導電率、引張強さ、伸び、屈曲性を測定し
た。表2に比較例(No1〜No10)が示されてお
り、この各比較例は、実施例と同様の製造方法によって
製造されたものである。なお、表1、2に示される各連
続焼鈍機における焼鈍温度は、熱効率を90%と仮定し
て、焼鈍電圧(V)、焼鈍速度(m/分)、各銅合金線
の導体抵抗(Ω)から産出したものである。また、表
1、2に示される各銅合金のそれぞれについての屈曲性
試験は、図1に示す如く、治具1に供試材2を挟持し、
他端を2kgの引張荷重Wを加えた状態で図1に図示
(A)→(B)→(C)→(D)と左右への90゜曲げ
を1回として破断するまで、繰返し行い、その破断する
までの曲げ回数で表した繰返し屈曲強度を屈曲性とし
た。なお、比較例の合金No1〜No10は、組成がM
g,Sn,P,In,Mnと本発明の合金No1〜No
11と同一の組成成分で構成されているが、比較例合金
の各組成の含有量が本発明の各組成の含有量とは異なっ
ている。
【0017】
【表 1】
【表 2】 表1の実施例(No1〜No11)は、従来例1のNi
−Si−In−Sn銅合金と比べて引張強さで若干劣る
が、導電率、伸び率、屈曲性(繰り返し屈曲強度)にお
いては良好な特性を有している。また、実施例(No1
〜No11)は、硬銅に比べると導電率は劣るものの引
張強さ、伸び率、屈曲性については大幅に向上している
ことが判る。
【0018】さらに、実施例(No1〜No11)は、
屈曲性に優れる軟銅と比較すると、屈曲性が軟銅と同等
以上の特性を有していることが判る。このように、表1
の実施例(No1〜No11)は、各従来例と比較する
と総合的に各従来例よりも優れた特性を有していること
が判る。
【0019】表2の比較例(No1〜No10)は、次
のようなものである。比較例1は、Mgの添加量が本願
請求項1記載の発明におけるMgの添加量の範囲の上限
以上であり、引張強さは良好であるが、導電率、伸び
率、屈曲性が低下する。また、Mg:Snの比率が1:
1.0以下のため伸線機における伸線加工性が悪化す
る。比較例2は、Mgの添加量が本願請求項1記載の発
明におけるMgの添加量の範囲の下限以下のため、引張
強さ、伸び率、屈曲性が大幅に劣る。比較例3は、Sn
の添加量が本願請求項1記載の発明におけるSnの添加
量の範囲の上限以上であり、引張強さは良好であるが、
導電率、伸び率及び屈曲性が著しく劣る。比較例4は、
Snの添加量が本願請求項1記載の発明におけるSnの
添加量の範囲の下限以下のため、導電率は良好である
が、引張強さ、伸び率、屈曲性が大幅に劣る。また、M
g:Snの比率が1:1.0以下のため伸線機における
伸線加工性が悪化する。比較例5は、Pの添加量が本願
請求項1記載の発明におけるPの添加量の範囲の上限以
上のため、導電率が大幅に劣る。比較例6は、Pの添加
量が本願請求項1記載の発明におけるPの添加量の範囲
の下限以下のため、導電率は良好であるが、伸線機にお
ける伸線加工性が悪化する。比較例7は、Inの添加量
が本願請求項1記載の発明におけるInの添加量の範囲
の上限以上のため、引張強さは良好であるが、導電率が
著しく劣る。比較例8は、Inの添加量が本願請求項1
記載の発明におけるInの添加量の範囲の下限以下のた
め、引張強さが劣る。比較例9は、Mnの添加量が本願
請求項1記載の発明におけるMnの添加量の範囲の上限
以上のため、導電率が大幅に劣る。比較例10は、Mn
の添加量が本願請求項1記載の発明におけるMnの添加
量の範囲の下限以下のため、伸び率及び屈曲性が劣る。
【0020】したがって、本発明に係る伸び特性及び屈
曲特性に優れた導電用高力銅合金の実施例によれば、自
動車用電線の導体に適した特性を有し、導体外径の小
型、軽量化に対応した機械的強度を確保し、圧着端子部
における引張り及び屈曲による断線を減少させることが
できる。また、本実施例によれば、製造コストも安価に
することができる。
【0021】次に、本願請求項2記載の発明に係る伸び
特性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合金の製造方法
の実施例について比較例と比較して説明する。請求項2
記載の発明に係る伸び特性及び屈曲特性に優れた導電用
高力銅合金の製造方法は、連続鋳造によって作製したM
gを0.05〜0.25wt%、Snを0.1〜0.6
wt%、Pを0.02〜0.08wt%、Inを0.0
2〜0.2wt%、Mnを0.05〜0.1wt%含有
し、残部が基本的に銅からなり、前記MgとSnの含有
比が、 Mg:Sn=(1):(1.0以上) である銅合金の鋳造棒を圧延、伸線後に500〜600
℃で連続焼鈍し、その後に85〜95%の加工率で伸線
し、最終熱処理を320〜420℃で連続焼鈍して製造
するものである。
【0022】このような伸び特性及び屈曲特性に優れた
導電用高力銅合金の製造法によって製造した導電用高力
銅合金の実施例と比較例とが表3に示されている。表3
における実施例(No12)と比較例(No11〜No
15)とは組成成分が同一でその製造方法を変えたもの
である。
【0023】
【表 3】 実施例12は表1の実施例11と同一の組成を有し、同
一の製造方法によって製造されたものである。すなわ
ち、実施例12は、不活性ガス雰囲気に保たれたグラフ
ァイト製の坩堝炉で、黒鉛粒被覆下にて電気銅地金を溶
解した後、Mg,Sn,Inを純金属の形態で、P,M
nを母合金の形態で添加して均一な溶湯を得、これを連
続鋳造により20mmφの鋳造棒を作製し、さらに冷間圧
延後、伸線機によって3.2mmφに伸線し、550℃で
連続焼鈍した後、伸線機によって1.0mmφに伸線し、
不活性ガス雰囲気の電気炉を用い、400℃で連続焼鈍
して製造したものである。この導電用高力銅合金の線材
について、各特性試験を行った結果、導電率が64.8
%IACS、引張強さが53.4kg/mm2 、伸び率が8.0
%、屈曲性が49回となっている。
【0024】比較例11は、中間焼鈍温度が350℃と
本願請求項2記載の発明における焼鈍温度範囲(500
〜600℃)の下限値以下であり、中間焼鈍温度が低い
ため中間焼鈍によって圧延及び伸線での加工組織を十分
回復させることができず、400℃で行う最終焼鈍によ
って引張強さが51.7kg/mm2 、伸び率が6.2%と
実施例12のように引張強さを低下させることなく、伸
び率を向上させることができない。比較例12は、中間
焼鈍から最終焼鈍までの伸線加工率が75%と本願請求
項2記載の発明における加工率範囲(85〜95%)の
下限値以下であり、比較例12によると引張強さが4
7.0kg/mm2 と最終熱処理後において伸線加工による
引張強さの向上が十分に得られない。比較例13は、中
間焼鈍から最終焼鈍までの伸線加工率が99%と本願請
求項2記載の発明における加工率範囲の上限値以上であ
り、最終焼鈍(400℃)によって引張強さが55.6
kg/mm2 と低下させることはないが、伸び率が6.0
%、屈曲性が41回と向上させるに至っていない。
【0025】比較例14は、最終焼鈍温度が320℃と
本願請求項2記載の発明における焼鈍温度範囲(320
〜420℃)の下限値以下であり、引張強さは54.5
kg/mm2 と良好であるが、焼鈍効果が得られず、伸び率
が4.2%、屈曲性が38回と向上しない。比較例15
は、最終焼鈍温度が500℃と本願請求項2記載の発明
における焼鈍温度範囲の上限値以上となっており、比較
例15によると、導電率が66.3%IACS、伸び率が
8.2%、屈曲性が50回と良好であるが、引張強さが
43.2kg/mm2 と大幅に低下してしまう。
【0026】このように本実施例によれば、溶体化処
理、時効処理等の複雑な熱処理工程を省略することがで
き、溶体化処理に対する中間焼鈍及び時効処理に対する
最終焼鈍ともに、電線製造工程で通常使用されている連
続焼鈍機を用いた2回の熱処理で実施することができ、
硬銅以上の引張強さを有し、導電率は若干低下するが、
軟銅よりも優れた屈曲性を有し、従来のNi−Si−I
n−Sn銅合金と比べても、引張強さは低下するが伸び
率、導電率、屈曲性が優れ、添加元素もNi−Si−I
n−Sn銅合金と比べ廉価であり、製造工程も簡素化す
ることができる。
【0027】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、導電率の
低下を招かないで屈曲性、伸び特性、引張強さを向上し
て械的衝撃に対し高強度を保ち、圧着端子部における屈
曲による断線を減少させた導電用高力銅合金を得ること
ができる。
【0028】請求項2記載の発明によれば、複雑な熱処
理工程(溶体化処理、時効硬化処理)を必要としない固
溶強化型の銅合金で、特に屈曲特性、伸線加工特性に優
れ、引張強さ、伸びにも優れた、安価な銅合金を製造す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例及び比較例、従来例の屈曲試験
方法を示す図である。
【符号の説明】
1……………………………………治具 2……………………………………供試材

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mgを0.05〜0.25wt%、Sn
    を0.1〜0.6wt%、Pを0.02〜0.08wt
    %、Inを0.02〜0.2wt%、Mnを0.05〜
    0.15wt%含有し、残部が基本的に銅からなり、前
    記MgとSnの含有比が、 Mg:Sn=(1):(1.0以上) である伸び特性及び屈曲特性に優れた導電用高力銅合
    金。
  2. 【請求項2】 Mgを0.05〜0.25wt%、Sn
    を0.1〜0.6wt%、Pを0.02〜0.08wt
    %、Inを0.02〜0.2wt%、Mnを0.05〜
    0.15wt%含有し、残部が基本的に銅からなり、前
    記MgとSnの含有比が、 Mg:Sn=(1):(1.0以上) である銅合金を連続鋳造によって作製した鋳造棒を圧
    延、伸線後に500〜600℃で連続焼鈍し、その後に
    85〜95%の加工率で伸線し、最終熱処理を320〜
    420℃で連続焼鈍して製造する伸び特性及び屈曲特性
    に優れた導電用高力銅合金の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015093317A1 (ja) * 2013-12-19 2015-06-25 住友電気工業株式会社 銅合金線、銅合金撚線、電線、端子付き電線、及び銅合金線の製造方法
CN113201661A (zh) * 2021-04-25 2021-08-03 江苏青益金属科技股份有限公司 一种用于轿车座椅加热的合金丝材及其制备方法

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