JP3381817B2 - 電線導体用高力銅合金及び電線用導体の製造方法 - Google Patents
電線導体用高力銅合金及び電線用導体の製造方法Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、引張強さ、伸び及
び耐屈曲性に優れた電線用導体の製造方法、及び、導電
用高力銅合金に関する。
び耐屈曲性に優れた電線用導体の製造方法、及び、導電
用高力銅合金に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車や航空機等の分野では、用いられ
る電線にも軽量性が求められる。特に自動車では最近車
載装置の電子化が著しく進み、それに伴い車内配線回路
数が増加し、これら電線の占有空間及び重量の増加を招
き問題となっている。自動車用電線の中でも微小電流回
路に用いられる電線は、機械的強度を確保するため、電
気的に要求される直径よりも太い導体(軟銅線)が用い
られている。ここで、電線の軽量化のために導体径を小
さくしても機械的強度を確保できるものとして硬銅線に
ついて検討がなされた。しかし、この硬銅線は伸びが著
しく小さいために端子圧着箇所で断線が生じやすく、信
頼性に劣ると云う欠点があった。
る電線にも軽量性が求められる。特に自動車では最近車
載装置の電子化が著しく進み、それに伴い車内配線回路
数が増加し、これら電線の占有空間及び重量の増加を招
き問題となっている。自動車用電線の中でも微小電流回
路に用いられる電線は、機械的強度を確保するため、電
気的に要求される直径よりも太い導体(軟銅線)が用い
られている。ここで、電線の軽量化のために導体径を小
さくしても機械的強度を確保できるものとして硬銅線に
ついて検討がなされた。しかし、この硬銅線は伸びが著
しく小さいために端子圧着箇所で断線が生じやすく、信
頼性に劣ると云う欠点があった。
【0003】これに対して、本発明者等はニッケル−ケ
イ素−インジウム−スズ−銅合金(以下「Ni−Si−
In−Sn銅合金」)を提案した(特開平3−6873
4号公報)。このものは銅母相中に固溶しているニッケ
ル、ケイ素が時効処理により微細に析出されており、そ
の結果、引張強度、伸度及び導電率に優れているもので
ある。しかし、高価なニッケルを2〜4重量%も使用す
るため、実際に電線の導体として用いるには材料コスト
が高いものとなっていた。また、時効効果型合金である
ため、通常の電線製造設備とは別に溶体化処理のための
設備が必要である。さらに熱処理温度に敏感で特性がば
らつきやすく、これを防ぐためには高度かつ高価な温度
制御管理設備が必要であると云った欠点があった。
イ素−インジウム−スズ−銅合金(以下「Ni−Si−
In−Sn銅合金」)を提案した(特開平3−6873
4号公報)。このものは銅母相中に固溶しているニッケ
ル、ケイ素が時効処理により微細に析出されており、そ
の結果、引張強度、伸度及び導電率に優れているもので
ある。しかし、高価なニッケルを2〜4重量%も使用す
るため、実際に電線の導体として用いるには材料コスト
が高いものとなっていた。また、時効効果型合金である
ため、通常の電線製造設備とは別に溶体化処理のための
設備が必要である。さらに熱処理温度に敏感で特性がば
らつきやすく、これを防ぐためには高度かつ高価な温度
制御管理設備が必要であると云った欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点、すなわち、高価なニッケルや煩雑な溶体処
理を不要としながら、高強度で高伸度、かつ、耐屈曲性
に優れた電線用導体を得ることができる電線導体用高力
銅合金を提供することを目的とする。
術の問題点、すなわち、高価なニッケルや煩雑な溶体処
理を不要としながら、高強度で高伸度、かつ、耐屈曲性
に優れた電線用導体を得ることができる電線導体用高力
銅合金を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の導電用高力銅合
金は、上記課題を解決するため、請求項1に記載の通
り、マグネシウムを0.05重量%以上0.25重量%
以下、スズを0.1重量%以上0.6重量%以下、燐を
0.02重量%以上0.08重量%以下、インジウムを
0.02重量%以上0.2重量%以下、テルルを0.0
5重量%以上0.1重量%以下含有し、残部が銅よりな
り、マグネシウムの含有量とテルルの含有量との和に対
するスズの含有量の比が1以上である構成を有する。上
記本発明の電線導体用高力銅合金の上記構成は、 ・マグネシウムを最適な添加量で銅母相中に固溶させる
ことにより、添加による鋳造性の悪化を最小に留めなが
ら引張強さを向上させ、 ・スズを添加することで耐屈曲性を大幅に向上させ、一
層の引張強さ及び焼鈍後の伸びの向上を図ると共に、マ
グネシウムの添加による鋳造性の悪化を改善し、 ・燐の添加により、耐熱性を向上させ、かつ、さらなる
鋳造性の向上を図り、 ・インジウムを添加することにより引張強さを一層向上
させ、 ・テルルを添加することにより、伸び及び耐屈曲性のさ
らなる向上を図って、それぞれの添加量を最適化して得
られたものである。
金は、上記課題を解決するため、請求項1に記載の通
り、マグネシウムを0.05重量%以上0.25重量%
以下、スズを0.1重量%以上0.6重量%以下、燐を
0.02重量%以上0.08重量%以下、インジウムを
0.02重量%以上0.2重量%以下、テルルを0.0
5重量%以上0.1重量%以下含有し、残部が銅よりな
り、マグネシウムの含有量とテルルの含有量との和に対
するスズの含有量の比が1以上である構成を有する。上
記本発明の電線導体用高力銅合金の上記構成は、 ・マグネシウムを最適な添加量で銅母相中に固溶させる
ことにより、添加による鋳造性の悪化を最小に留めなが
ら引張強さを向上させ、 ・スズを添加することで耐屈曲性を大幅に向上させ、一
層の引張強さ及び焼鈍後の伸びの向上を図ると共に、マ
グネシウムの添加による鋳造性の悪化を改善し、 ・燐の添加により、耐熱性を向上させ、かつ、さらなる
鋳造性の向上を図り、 ・インジウムを添加することにより引張強さを一層向上
させ、 ・テルルを添加することにより、伸び及び耐屈曲性のさ
らなる向上を図って、それぞれの添加量を最適化して得
られたものである。
【0006】すなわち、本発明の導電性高力銅合金にお
いて、マグネシウムは0.05重量%以上0.25重量
%以下であることが必要である。マグネシウムは引張強
さを著しく向上させるが、含有量が0.05重量%未満
であると充分な効果が得られない。一方、含有量が0.
25重量%超では引張強さの向上効果は飽和してしま
い、また導電性の低下が大きくなり、かつ、鋳造性が悪
化して鋳巣等欠陥の発生が増加する。このような0.2
5重量%超の領域では特に連続鋳造時には鋳造割れが発
生しやすくなり、また、伸線時の断線が多発する。な
お、このとき表皮を面削してから伸線を行うことによっ
てある程度は防ぐことは可能ではあるが、それでも生産
性の低下は著しい。
いて、マグネシウムは0.05重量%以上0.25重量
%以下であることが必要である。マグネシウムは引張強
さを著しく向上させるが、含有量が0.05重量%未満
であると充分な効果が得られない。一方、含有量が0.
25重量%超では引張強さの向上効果は飽和してしま
い、また導電性の低下が大きくなり、かつ、鋳造性が悪
化して鋳巣等欠陥の発生が増加する。このような0.2
5重量%超の領域では特に連続鋳造時には鋳造割れが発
生しやすくなり、また、伸線時の断線が多発する。な
お、このとき表皮を面削してから伸線を行うことによっ
てある程度は防ぐことは可能ではあるが、それでも生産
性の低下は著しい。
【0007】スズ含有量は0.1重量%以上0.6重量
%以下であることが必要である。すなわち、スズを添加
することにより、上記マグネシウムの添加の結果生じた
鋳造性の低下を低減させることができ、また焼鈍後の伸
びを大幅に向上させる効果も得られる。しかし、0.1
重量%未満の添加では充分な効果が得られず、一方0.
6重量%を越えて添加しても引張強さ及び鋳造性の向上
効果は飽和し、逆に焼鈍後の伸び及び耐屈曲性が悪化
し、導電率の低下が大きくなり実用的ではなくなる。
%以下であることが必要である。すなわち、スズを添加
することにより、上記マグネシウムの添加の結果生じた
鋳造性の低下を低減させることができ、また焼鈍後の伸
びを大幅に向上させる効果も得られる。しかし、0.1
重量%未満の添加では充分な効果が得られず、一方0.
6重量%を越えて添加しても引張強さ及び鋳造性の向上
効果は飽和し、逆に焼鈍後の伸び及び耐屈曲性が悪化
し、導電率の低下が大きくなり実用的ではなくなる。
【0008】また、燐添加量は0.02重量%以上0.
08重量%以下であることが必要である。燐添加量が
0.02重量%以上であると、スズとの相乗効果によっ
て鋳造性が著しく向上し、マグネシウム添加の結果生じ
た鋳造性の低下をほぼ解消することができ、また、同時
に合金の耐熱性が大きく向上する。しかし、燐の添加量
が0.08重量%を超えると導電率の低下が大きくな
り、実用的な導電性材料として用いることができなくな
る。
08重量%以下であることが必要である。燐添加量が
0.02重量%以上であると、スズとの相乗効果によっ
て鋳造性が著しく向上し、マグネシウム添加の結果生じ
た鋳造性の低下をほぼ解消することができ、また、同時
に合金の耐熱性が大きく向上する。しかし、燐の添加量
が0.08重量%を超えると導電率の低下が大きくな
り、実用的な導電性材料として用いることができなくな
る。
【0009】インジウムの含有量は0.02重量%以上
0.2重量%以下であることが必要である。インジウム
の含有量が0.02重量%以上では引張強さが大幅に向
上するが、0.02重量%未満では充分な効果が得られ
ない。一方、0.2重量%を越えて添加しても引張強さ
は飽和してそれ以上の向上効果が得られず、かつ、導電
率の低下が著しい。なお、高価なインジウムを多量に添
加することは、コストアップを招き、実用的な導電性材
料として適さないものとなる。
0.2重量%以下であることが必要である。インジウム
の含有量が0.02重量%以上では引張強さが大幅に向
上するが、0.02重量%未満では充分な効果が得られ
ない。一方、0.2重量%を越えて添加しても引張強さ
は飽和してそれ以上の向上効果が得られず、かつ、導電
率の低下が著しい。なお、高価なインジウムを多量に添
加することは、コストアップを招き、実用的な導電性材
料として適さないものとなる。
【0010】また、テルルの含有量は0.05重量%以
上0.1重量%以下であることが必要である。テルルは
スズとの相乗効果により伸び及び耐屈曲性を向上させる
が、添加量が0.05重量%未満であると充分な効果が
得られず、また0.1重量%以上であると鋳造性を著し
く悪化させる。
上0.1重量%以下であることが必要である。テルルは
スズとの相乗効果により伸び及び耐屈曲性を向上させる
が、添加量が0.05重量%未満であると充分な効果が
得られず、また0.1重量%以上であると鋳造性を著し
く悪化させる。
【0011】なお、マグネシウム、テルル、スズの添加
量は鋳造性に大きく影響する。マグネシウムもテルルも
添加量が多くなると鋳造性が著しく悪化する。一方、ス
ズは鋳造性を改善させる効果を有している。良好な鋳造
性を確保するためにはマグネシウムの含有量とテルルの
含有量との和に対するスズの含有量の比が1以上である
ことが必要である。
量は鋳造性に大きく影響する。マグネシウムもテルルも
添加量が多くなると鋳造性が著しく悪化する。一方、ス
ズは鋳造性を改善させる効果を有している。良好な鋳造
性を確保するためにはマグネシウムの含有量とテルルの
含有量との和に対するスズの含有量の比が1以上である
ことが必要である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明に係る導電用高力銅合金を
用いて、下記のようにして、高強度で高伸度、かつ、耐
屈曲性に優れた電線用導体を得ることができる。すなわ
ち、本発明に係る導電用高力銅合金からなる鋳造物を冷
間圧延後伸線し(以下「第1伸線工程」と云う)、次い
で500℃以上600℃以下で焼鈍し、(以下「第1焼
鈍工程」と云う)し、その後に85%以上95%以下の
加工率で伸線し(以下「第2伸線工程」と云う)、35
0℃以上450℃以下で焼鈍する(以下「第2焼鈍工
程」と云う)。
用いて、下記のようにして、高強度で高伸度、かつ、耐
屈曲性に優れた電線用導体を得ることができる。すなわ
ち、本発明に係る導電用高力銅合金からなる鋳造物を冷
間圧延後伸線し(以下「第1伸線工程」と云う)、次い
で500℃以上600℃以下で焼鈍し、(以下「第1焼
鈍工程」と云う)し、その後に85%以上95%以下の
加工率で伸線し(以下「第2伸線工程」と云う)、35
0℃以上450℃以下で焼鈍する(以下「第2焼鈍工
程」と云う)。
【0013】上記第1焼鈍工程は、第1伸線工程の冷間
圧延及び伸線処理での加工組織を回復させ、かつ、第2
焼鈍工程の引張強さの低下を予防し、かつ、伸び及び耐
屈曲性を向上させるためである。この工程は水蒸気など
の非酸化性雰囲気で行うが、焼鈍温度(以下「第1焼鈍
温度」と云う)が500℃未満では充分な回復が行われ
ないために第2焼鈍工程で伸びが向上せず、一方600
℃超では、大気から非酸化性雰囲気中に混入する微量の
酸素によって酸化されるため変色が生じて外観評価が下
がり、また、同時に最適張力域の範囲が狭くなるため線
材の巻き取り張力の調整が困難になる。
圧延及び伸線処理での加工組織を回復させ、かつ、第2
焼鈍工程の引張強さの低下を予防し、かつ、伸び及び耐
屈曲性を向上させるためである。この工程は水蒸気など
の非酸化性雰囲気で行うが、焼鈍温度(以下「第1焼鈍
温度」と云う)が500℃未満では充分な回復が行われ
ないために第2焼鈍工程で伸びが向上せず、一方600
℃超では、大気から非酸化性雰囲気中に混入する微量の
酸素によって酸化されるため変色が生じて外観評価が下
がり、また、同時に最適張力域の範囲が狭くなるため線
材の巻き取り張力の調整が困難になる。
【0014】一方、第2伸線工程における加工率(断面
減少率)は85%以上95%以下であることが必要であ
る。この第2伸線工程は、第2焼鈍工程の引張強さの低
下を予防し、かつ伸び及び耐屈曲性を向上させるために
行うものであるが、加工率が85%未満では第2焼鈍工
程での引張強さの低下が大きくなり、また、加工率が9
5%超では第2焼鈍工程で伸び及び耐屈曲性を充分に向
上させることができない。また、第2焼鈍工程の温度
(以下「第2焼鈍温度」と云う)は350℃以上450
℃以下で行うことが必要である。なお、この工程も水蒸
気などの非酸化性雰囲気で行う。この工程は上述のよう
に、伸び及び耐屈曲性を向上させるために行うものであ
るが、処理温度が350℃未満ではこれら性能の充分な
向上効果が得られず、一方450℃超であると引張強さ
の低下が著しい。
減少率)は85%以上95%以下であることが必要であ
る。この第2伸線工程は、第2焼鈍工程の引張強さの低
下を予防し、かつ伸び及び耐屈曲性を向上させるために
行うものであるが、加工率が85%未満では第2焼鈍工
程での引張強さの低下が大きくなり、また、加工率が9
5%超では第2焼鈍工程で伸び及び耐屈曲性を充分に向
上させることができない。また、第2焼鈍工程の温度
(以下「第2焼鈍温度」と云う)は350℃以上450
℃以下で行うことが必要である。なお、この工程も水蒸
気などの非酸化性雰囲気で行う。この工程は上述のよう
に、伸び及び耐屈曲性を向上させるために行うものであ
るが、処理温度が350℃未満ではこれら性能の充分な
向上効果が得られず、一方450℃超であると引張強さ
の低下が著しい。
【0015】
【実施例】不活性ガス雰囲気下でグラファイト製坩堝を
用い、かつ、黒鉛粒による被覆を行いながら電気銅地金
を溶融後、表1中実施例1〜11として示した組成にな
るよう、それぞれマグネシウム(Mg)、スズ(Sn)
及びインジウム(In)については純金属の形態で添加
し、また、燐(P)及びテルル(Te)については母合
金の形態で添加して均一な溶湯を得て、これらを連続鋳
造してそれぞれ直径20mmの鋳造棒を得た(なお、表
1及び表2中、組成の銅(Cu)の欄に「残」で示した
のは、これら添加物(及び不可避的不純物)以外はすべ
て銅からなることを示す)。これら鋳造棒それぞれを冷
間圧延後、直径が3.2mmになるよう伸線し、次いで
550℃(第1焼鈍温度)で連続焼鈍した。更に直径が
1mmになるよう伸線し(加工率:90%)、その後3
90℃(第2焼鈍温度)で連続焼鈍し、実施例1〜11
に係る電線用導体を得た。なお、本発明における焼鈍温
度とは、熱効率を90%として仮定し、焼鈍電圧、焼鈍
速度、各銅合金線の導体抵抗から算出した値である。
用い、かつ、黒鉛粒による被覆を行いながら電気銅地金
を溶融後、表1中実施例1〜11として示した組成にな
るよう、それぞれマグネシウム(Mg)、スズ(Sn)
及びインジウム(In)については純金属の形態で添加
し、また、燐(P)及びテルル(Te)については母合
金の形態で添加して均一な溶湯を得て、これらを連続鋳
造してそれぞれ直径20mmの鋳造棒を得た(なお、表
1及び表2中、組成の銅(Cu)の欄に「残」で示した
のは、これら添加物(及び不可避的不純物)以外はすべ
て銅からなることを示す)。これら鋳造棒それぞれを冷
間圧延後、直径が3.2mmになるよう伸線し、次いで
550℃(第1焼鈍温度)で連続焼鈍した。更に直径が
1mmになるよう伸線し(加工率:90%)、その後3
90℃(第2焼鈍温度)で連続焼鈍し、実施例1〜11
に係る電線用導体を得た。なお、本発明における焼鈍温
度とは、熱効率を90%として仮定し、焼鈍電圧、焼鈍
速度、各銅合金線の導体抵抗から算出した値である。
【0016】従来技術に係る比較例として、次のように
して得たNi−Si−In−Sn銅合金からなる電線用
導体について検討を行った。すなわち、不活性ガス雰囲
気下でグラファイト製坩堝を用い、かつ、黒鉛粒による
被覆を行いながら電気銅地金を溶融後、インジウム、ニ
ッケル(Ni)及びスズを純金属の形態で、また、シリ
コン(Si)を母合金の形態で、それぞれ0.16重量
%、2.6重量%、0.23重量%及び0.55重量%
となるよう添加して均一な溶湯とし、これらを連続鋳造
して直径20mmの鋳造棒とした。これを冷間延伸及び
伸線により直径3.2mmとした後、不活性ガス雰囲気
中900℃で1時間加熱保持後、水冷して溶体化処理を
施した。その後、直径が1mmになるよう伸線し、さら
に不活性ガス雰囲気中470℃で6時間の時効処理を行
った(比較例1)。
して得たNi−Si−In−Sn銅合金からなる電線用
導体について検討を行った。すなわち、不活性ガス雰囲
気下でグラファイト製坩堝を用い、かつ、黒鉛粒による
被覆を行いながら電気銅地金を溶融後、インジウム、ニ
ッケル(Ni)及びスズを純金属の形態で、また、シリ
コン(Si)を母合金の形態で、それぞれ0.16重量
%、2.6重量%、0.23重量%及び0.55重量%
となるよう添加して均一な溶湯とし、これらを連続鋳造
して直径20mmの鋳造棒とした。これを冷間延伸及び
伸線により直径3.2mmとした後、不活性ガス雰囲気
中900℃で1時間加熱保持後、水冷して溶体化処理を
施した。その後、直径が1mmになるよう伸線し、さら
に不活性ガス雰囲気中470℃で6時間の時効処理を行
った(比較例1)。
【0017】また、同じく従来技術に係る比較例として
通常の無酸素銅である硬銅からなる直径1mmの電線用
導体(比較例2)を準備した。さらに、比較例3とし
て、無酸素銅に不活性ガス雰囲気中300℃・2時間の
焼鈍処理を行って得た直径1mmの電線用導体を準備し
た。
通常の無酸素銅である硬銅からなる直径1mmの電線用
導体(比較例2)を準備した。さらに、比較例3とし
て、無酸素銅に不活性ガス雰囲気中300℃・2時間の
焼鈍処理を行って得た直径1mmの電線用導体を準備し
た。
【0018】また、本発明に係る導電用高力銅合金の組
成が最適化されたものであることを示すため、実施例1
〜11と同様に、ただし、それぞれ表2に示す組成にな
るようにして、比較例4〜13の電線用導体を作製し
た。さらに、比較例14〜18として、実施例11で用
いたのと同様の組成の鋳造棒を用い、ただし、第1焼鈍
温度、加工率、或いは第2焼鈍温度を変えてそれぞれ表
2に示すような条件で直径1mmの電線用導体を作製し
た。
成が最適化されたものであることを示すため、実施例1
〜11と同様に、ただし、それぞれ表2に示す組成にな
るようにして、比較例4〜13の電線用導体を作製し
た。さらに、比較例14〜18として、実施例11で用
いたのと同様の組成の鋳造棒を用い、ただし、第1焼鈍
温度、加工率、或いは第2焼鈍温度を変えてそれぞれ表
2に示すような条件で直径1mmの電線用導体を作製し
た。
【0019】これら実施例1〜11及び比較例1〜18
の電線用導体について、引張強さ、伸び、導電率、耐屈
曲性及び伸縮加工性について評価を行った。結果を表1
及び表2に示した。なお、表1及び表2において「Sn
/(Mg+Te)」として示したのは、マグネシウムの
含有量とテルルとの含有量との和に対するスズの含有量
の比である
の電線用導体について、引張強さ、伸び、導電率、耐屈
曲性及び伸縮加工性について評価を行った。結果を表1
及び表2に示した。なお、表1及び表2において「Sn
/(Mg+Te)」として示したのは、マグネシウムの
含有量とテルルとの含有量との和に対するスズの含有量
の比である
【0020】なお、引張強さ及び伸びはJIS・C30
02に準拠し、引張速度50mm/minで測定した。
また、導電率も同様にJIS・C3002に準拠して測
定した値である。また、耐屈曲性については次のように
して評価した。図1に示すような治具1にサンプル2
(電線用導体)の一端を挟持させ、他端に2kgfの引
張荷重Wを与えながら、(a)→(b)→(c)→
(d)に示すように左右90°曲げを行い、これの一連
の動作を1回として、これを破断するまで繰り返してそ
の回数を耐屈曲度とした。また、伸縮加工性はバリの有
無によって判断した。すなわち、伸縮加工性に劣る試料
では、鋳造時に生じた欠陥部が圧延時に解消することな
く残留し、その結果、伸線後のサンプルの表面に微小な
ひび(バリ)が生じる。このバリを目視及び指先で触覚
して検出した。
02に準拠し、引張速度50mm/minで測定した。
また、導電率も同様にJIS・C3002に準拠して測
定した値である。また、耐屈曲性については次のように
して評価した。図1に示すような治具1にサンプル2
(電線用導体)の一端を挟持させ、他端に2kgfの引
張荷重Wを与えながら、(a)→(b)→(c)→
(d)に示すように左右90°曲げを行い、これの一連
の動作を1回として、これを破断するまで繰り返してそ
の回数を耐屈曲度とした。また、伸縮加工性はバリの有
無によって判断した。すなわち、伸縮加工性に劣る試料
では、鋳造時に生じた欠陥部が圧延時に解消することな
く残留し、その結果、伸線後のサンプルの表面に微小な
ひび(バリ)が生じる。このバリを目視及び指先で触覚
して検出した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】表1より明らかなように、本発明に係る導
電用高力銅合金による電線用導体(実施例1〜11)
は、従来技術に係るNi−Si−In−Sn銅合金(比
較例1)と比較すると、導電率、伸び及び耐屈曲性にお
いて非常に優れている。なお、このものの引張強さはN
i−Si−In−Sn銅合金(比較例1)より若干低い
ものの、硬銅線並のレベルにあり充分な値である。ここ
で特筆すべきは耐屈曲性が非常に高いことであり、軟銅
よりも良い値が得られている。なお、表2の比較例4〜
18により、本発明の構成要件(組成及び処理条件)が
1つでも満たされない場合、本発明の効果が得られない
ことが判る。
電用高力銅合金による電線用導体(実施例1〜11)
は、従来技術に係るNi−Si−In−Sn銅合金(比
較例1)と比較すると、導電率、伸び及び耐屈曲性にお
いて非常に優れている。なお、このものの引張強さはN
i−Si−In−Sn銅合金(比較例1)より若干低い
ものの、硬銅線並のレベルにあり充分な値である。ここ
で特筆すべきは耐屈曲性が非常に高いことであり、軟銅
よりも良い値が得られている。なお、表2の比較例4〜
18により、本発明の構成要件(組成及び処理条件)が
1つでも満たされない場合、本発明の効果が得られない
ことが判る。
【0025】
【発明の効果】本発明の導電用高力銅合金からなる電線
用導体は、硬銅と同レベルの引張強度を有しながら導電
率、伸び及び耐屈曲性に優れ、従ってこのような導体を
有する電線はその占積空間及び重量を共に少ないものと
することができる。またこの電線用導体は原料コストが
低い上、さらに、第1焼鈍工程及び第2焼鈍工程共に比
較的温度が低いため温度管理が容易であり、また、高価
な炉を必要とせず通常の電線製造工程で用いられている
連続焼鈍機で実施することができるので、低コストで生
産することが可能である。本発明の導電用高力銅合金か
らなる電線用導体は、上記のような利点を有するので、
この導体を用いた電線を用いることによって、自動車・
航空機等の特に軽量性を求められる分野は勿論、一般の
電子機器等に応用した場合にも優れた軽量化効果が得ら
れ、また可動部に用いた場合その耐屈曲性によって高い
信頼性が得られるものである。
用導体は、硬銅と同レベルの引張強度を有しながら導電
率、伸び及び耐屈曲性に優れ、従ってこのような導体を
有する電線はその占積空間及び重量を共に少ないものと
することができる。またこの電線用導体は原料コストが
低い上、さらに、第1焼鈍工程及び第2焼鈍工程共に比
較的温度が低いため温度管理が容易であり、また、高価
な炉を必要とせず通常の電線製造工程で用いられている
連続焼鈍機で実施することができるので、低コストで生
産することが可能である。本発明の導電用高力銅合金か
らなる電線用導体は、上記のような利点を有するので、
この導体を用いた電線を用いることによって、自動車・
航空機等の特に軽量性を求められる分野は勿論、一般の
電子機器等に応用した場合にも優れた軽量化効果が得ら
れ、また可動部に用いた場合その耐屈曲性によって高い
信頼性が得られるものである。
【図1】本発明の耐屈曲性試験の様子を示す図である。
1 治具
2 サンプル
Claims (2)
- 【請求項1】 マグネシウムを0.05重量%以上0.
25重量%以下、スズを0.1重量%以上0.6重量%
以下、燐を0.02重量%以上0.08重量%以下、イ
ンジウムを0.02重量%以上0.2重量%以下、テル
ルを0.05重量%以上0.1重量%以下含有し、残部
が銅よりなり、かつ、マグネシウムの含有量とテルルと
の含有量の和に対するスズの含有量の比が1以上である
ことを特徴とする電線導体用高力銅合金。 - 【請求項2】 マグネシウムを0.05重量%以上0.
25重量%以下、スズを0.1重量%以上0.6重量%
以下、燐を0.02重量%以上0.08重量%以下、イ
ンジウムを0.02重量%以上0.2重量%以下、テル
ルを0.05重量%以上0.1重量%以下含有し、残部
が銅よりなり、かつ、マグネシウムの含有量とテルルの
含有量との和に対するスズの含有量の比が1以上である
鋳造物を冷間圧延後伸線し、次いで500℃以上600
℃以下で焼鈍し、その後に85%以上95%以下の加工
率で伸線したのち、350℃以上450℃以下で焼鈍す
ることを特徴とする導電用高力銅合金からなる電線用導
体の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP03365696A JP3381817B2 (ja) | 1996-02-21 | 1996-02-21 | 電線導体用高力銅合金及び電線用導体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP03365696A JP3381817B2 (ja) | 1996-02-21 | 1996-02-21 | 電線導体用高力銅合金及び電線用導体の製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH09227970A JPH09227970A (ja) | 1997-09-02 |
| JP3381817B2 true JP3381817B2 (ja) | 2003-03-04 |
Family
ID=12392500
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP03365696A Expired - Fee Related JP3381817B2 (ja) | 1996-02-21 | 1996-02-21 | 電線導体用高力銅合金及び電線用導体の製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3381817B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| CN100445403C (zh) * | 2005-06-10 | 2008-12-24 | 日立电线株式会社 | 软质铜合金及软质铜合金线或板材 |
| CN105745340A (zh) * | 2013-12-19 | 2016-07-06 | 住友电气工业株式会社 | 铜合金线、铜合金绞合线、电线、带端子电线及铜合金线的制造方法 |
-
1996
- 1996-02-21 JP JP03365696A patent/JP3381817B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH09227970A (ja) | 1997-09-02 |
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|---|---|---|---|
| A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
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