JPH08205881A - タキサン型ジテルペンの製造方法 - Google Patents

タキサン型ジテルペンの製造方法

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JPH08205881A
JPH08205881A JP7045482A JP4548295A JPH08205881A JP H08205881 A JPH08205881 A JP H08205881A JP 7045482 A JP7045482 A JP 7045482A JP 4548295 A JP4548295 A JP 4548295A JP H08205881 A JPH08205881 A JP H08205881A
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JP
Japan
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taxane
type diterpene
producing
oxidizing agent
cultured
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Application number
JP7045482A
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English (en)
Inventor
Chuzo Suga
忠三 菅
Yasusuke Azuma
庸介 東
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Mitsui Petrochemical Industries Ltd
Original Assignee
Mitsui Petrochemical Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 タキサン型ジテルペンを産生する植物の細胞
又は組織を酸化剤の存在下に培養し、得られる培養物か
らタキサン型ジテルペンを回収することを特徴とするタ
キサン型ジテルペンの製造方法。 【効果】 本発明方法は、タキサン型ジテルペンの生産
性の向上を可能にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、卵巣癌、乳癌、肺癌等
の治療薬として有用であるタキソールを含むタキサン型
ジテルペンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】卵巣癌、乳癌、肺癌等の治療薬として有
用であるタキソール(Taxol) は、イチイ科イチイ属植物
であるタイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia NUTT) よ
り単離同定されたタキサン型ジテルペンであり、前記薬
理活性と関連する複雑なエステルグループを有してい
る。タキソールはタイヘイヨウイチイ植物体中のどの部
位にも存在し、その含量は樹皮で最も高いことが報告さ
れている。現在、タキソールは天然の又は栽培された植
物体から採取されているが、イチイ属植物は地上20cmの
高さに成長するのに10年以上かかる生育の遅い植物であ
り、また樹皮を剥ぐと木が枯れてしまうため、大量のタ
キソールを得ることは容易でない。もし、タキソール又
はタキソールの前駆物質であるバッカチンIII(baccatin
III) 等のタキサン型ジテルペンを組織培養を利用して
生産することができれば、樹木を伐採することなく、大
量のタキソールを容易に得ることができる。そのため、
イチイ属植物の培養細胞によるタキソ−ルの生産に関す
る研究が、既にいくつか行われている。
【0003】これまでに知られている植物培養細胞を利
用したタキソール生産技術の中で、タイヘイヨウイチイ
(Taxus brevifolia NUTT)培養細胞によるタキソール
生産法が米国で特許(米国特許第5019504号)になって
いるが、そのタキソール生産量は1〜3mg/lと記載され
ており、工業的生産には不十分である。また、従来の組
織培養技術では、細胞培養によるタキソールの生産性は
不安定であり、選抜で一次的には生産性の高い細胞が得
られるが、継代培養してその含量を維持することは難し
いという問題点を抱えている[E.R.M.Wickremesine et a
l., World Congress on Cell and Tissue Culture(199
2)]。
【0004】一方、タキソール生産法のその他の先行技
術として、タキソール生合成前駆体であるバッカチンII
I からの半合成法がHoltonらの米国特許第5015744号明
細書に開示されている。植物の組織培養法を用いれば、
バッカチンIII 等の半合成法の原料の生産も可能であ
り、前記半合成法によるタキソール生産にも植物組織培
養法は大いに役に立つ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便
で効率的な植物組織培養によるタキサン型ジテルペンの
製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
の結果、タキサン型ジテルペン産生植物の培養細胞又は
培養組織の組織培養培地中に酸化剤を添加して組織培養
を行うことによって、培養物中のタキサン型ジテルペン
生産性が向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明は、タキサン型ジテルペンを
産生する植物の細胞又は組織を酸化剤の存在下に培養
し、得られる培養物からタキサン型ジテルペンを回収す
ることを特徴とするタキサン型ジテルペンの製造方法で
ある。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
製造方法の対象となるタキサン型ジテルペンとしては、
タキサン骨格を有するジテルペンであれば特に制限はな
く、例えばタキソール、10−デアセチルタキソール、7
−エピタキソ−ル、バッカチンIII、10−デアセチルバ
ッカチンIII、7−エピバッカチンIII、セファロマニ
ン、10−デアセチルセファロマニン、7−エピセファロ
マニン、タキサギフィン及びその類縁体、タキサン1a
及びその類縁体、キシロシルセファロマニン、キシロシ
ルタキソール等が挙げられる。
【0009】本発明の製造方法に用いられるタキサン型
ジテルペンを産生する植物としては、例えばセイヨウイ
チイ(Taxus baccata LINN)、イチイ(T. cuspidata SIE
B.etZUCC) 、キャラボク(T. cuspidata SIEB.et ZUCC v
ar. nana REHDER)、タイヘイヨウイチイ(T. brevifolia
NUTT)、カナダイチイ(T. canadiensis MARSH)、中国イ
チイ(T. chinensis)、T. media等のイチイ属植物が挙げ
られる。
【0010】前記植物の組織培養は、本発明により酸化
剤を添加すること以外は、従来から知られている方法に
よって行うことができる。本発明の対象となる酸化剤と
しては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二
硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム等のペルオ
キソ二硫酸塩;過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナ
トリウム等の過マンガン酸塩;過塩素酸アルミニウム、
過塩素酸アンモニウム、過塩素酸インジウム(III)、過
塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシ
ウム、過塩素酸銀、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネ
シウム、過塩素酸リチウム等の過塩素酸塩;過酸化水素
などの無機過酸化物を例示することができる。
【0011】これらの酸化剤は、通常水溶液の状態で培
地に加えられるが、エタノ−ル等の有機溶媒に溶解して
加えることもできるし、直接添加してもよい。酸化剤
は、培地における濃度が1〜10,000μMとすることが好
ましく、この中でも特に10〜1,000μMの範囲に調整す
ることが更に好ましい。酸化剤は、通常培養開始前に培
地に加えておくのが好ましいが、培養の途中に加えても
よい。また、酸化剤の添加処理は一度に行ってもよい
し、数回に分けて行ってもよい。
【0012】植物細胞培養物に酸化剤を添加して二次代
謝産物が誘導されることはこれまで全く知られておら
ず、タキサン型ジテルペンの生産量が本発明の方法によ
って増大することは予想外のことであった。本発明の方
法においては、酸化剤の他に、重金属を含む化合物、重
金属を含む錯イオン類及び重金属イオンよりなる群から
選ばれた少なくとも一つを共存させると、本発明の効果
を高めることができる。この場合、酸化剤に対する重金
属のモル比は1/10〜500/lであることが好ましく、
5/1〜100/1であることが更に好ましい。
【0013】ここで用いる重金属類としては、銅族或い
は鉄族に属する重金属類であれば特に限定するものでは
ないが、銅族に属する重金属類としては特に銀を使用す
ることが好ましく、また鉄族に属する重金属類としては
コバルトを使用することが好ましい。更に、銀或いはコ
バルトを使用する際は、当該重金属類を含む化合物、当
該重金属類を含む錯イオン類、又は当該重金属イオンの
形で使用することが好ましい。また、これらの化合物等
は、それぞれ単独で使用してもよく、組み合わせて使用
してもよい。
【0014】銀を含む化合物としては、例えば硝酸銀、
硫酸銀、チオ硫酸銀、フッ化銀、塩素酸銀、過塩素酸
銀、酢酸銀、亜硫酸銀、ヘキサフルオロリン(V)酸
銀、テトラフルオロホウ酸銀、ジアミン銀(I)硫酸
塩、ジアミノ銀(I)酸カリウム等の化合物を例示する
ことができる。これらの中でも特に硝酸銀、硫酸銀、チ
オ硫酸銀等を好適な化合物として例示できる。
【0015】銀を含む錯イオン類としては、例えば [Ag
(S2O3)2]3-、[Ag(S2O3)3]5-、[Ag(NH3)2]+ 、[Ag(CN)2]
-、[Ag(CN)3]2-、[Ag(SCN)2]- 、[Ag(SCN)4]3-等の錯イ
オン類を例示することができる。これらの中でも特に
[Ag(S2O3)2 ]3-、[Ag(S2O3)3] 5-等を好適な錯イオン類
として例示できる。
【0016】コバルトを含む化合物としては、例えば塩
化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、フッ化コバ
ルト、過塩素酸コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバル
ト、セレン酸コバルト、チオシアン酸コバルト、酢酸コ
バルト、硫酸アンモニウムコバルト、硫酸コバルト(I
I)カリウム、ヘキサアンミンコバルト(III) 塩化物、
ペンタアンミンアクアコバルト(III) 塩化物、ニトロペ
ンタアンミンコバルト(III) 塩化物、ジクロロテトラア
ンミンコバルト(III) 塩化物半水和物、ジニトロテトラ
アンミンコバルト(III) 塩化物、カルボナトテトラアン
ミンコバルト(III) 塩化物、テトラニトロジアンミンコ
バルト(III) 酸アンモニウム、ヘキサニトロコバルト(I
II) 酸ナトリウム、トリス(エチレンジアミン)コバル
ト(III) 塩化物三水和物、ジクロロビス(エチレンジア
ミン)コバルト(III) 塩化物、トリス(オキサラト)コ
バルト(III) 酸カリウム三水和物、ヘキサシアノコバル
ト(III) 酸カリウム、(エチレンジアミンテトラアセタ
ト)コバルト(III) 酸カリウム二水和物、ヒドリドテト
ラカルボニルコバルト(I)、ジカルボニル(シクロペ
ンタジエニル)コバルト(I)、オクタカルボニル二コ
バルト(0)、ヘキサカルボニル(アセチレン)二コバ
ルト(0)、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト
(I)、(シクロペンタジエニル)(1,5-シクロオクタ
ジエン)コバルト(I)等の化合物類を例示することが
できる。これらの中でも特に塩化コバルト、硝酸コバル
ト、硫酸コバルト等を好適な化合物類として例示でき
る。
【0017】コバルトを含む錯イオン類としては、ペン
タアンミンアクアコバルトイオン、ニトロペンタアンミ
ンコバルトイオン、ジクロロテトラアンミンコバルトイ
オン、ジニトロテトラアンミンコバルトイオン、カルボ
ナトテトラアンミンコバルトイオン、テトラニトロジア
ンミンコバルトイオン、ヘキサニトロコバルトイオン、
トリス(エチレンジアミン)コバルトイオン、ジクロロ
ビス(エチレンジアミン)コバルトイオン、トリス(オ
キサラト)コバルトイオン、ヘキサシアノコバルトイオ
ン、(エチレンジアミンテトラアセタト)コバルトイオ
ン等の錯イオン類を例示することができる。
【0018】本発明における組織培養に用いられる培地
としては、従来から知られている植物の組織培養に用い
られる培地、例えばムラシゲ・スクーグ(1962年) [Mura
shige & Skoog] の培地、リンスマイヤー・スクーグ(19
65年) [Linsmaier Skoog] の培地、ウッディー・プラン
ト・メディウム(1981年) [Woody Plant Medium]、ガン
ボルグ[Gamborg] のB−5培地、三井のM−9培地等が
挙げられる。
【0019】これら培地に植物ホルモンを添加し、更に
必要に応じて炭素源、無機成分、ビタミン類、アミノ酸
類等を添加することもできる。植物ホルモンとしては、
例えばインドール酢酸(IAA)、ナフタレン酢酸(NAA)、
2, 4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D) 等のオーキシ
ン類、カイネチン、ゼアチン、ジヒドロゼアチン等のサ
イトカイニン類が用いられる。
【0020】炭素源としては、ショ糖、マルトース、ラ
クトース等の二糖類、グルコース、フルクトース、ガラ
クトース等の単糖類、デンプン等の多糖類あるいはこれ
ら糖源の2種類以上を適当な比率で混合したものを使用
できる。
【0021】無機成分としては、例えばリン、窒素、カ
リウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マン
ガン、亜鉛、ホウ素、銅、モリブデン、塩素、ナトリウ
ム、ヨウ素、コバルト等が挙げられ、これらの成分は例
えば硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、
塩化カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カ
リウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナト
リウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸マンガン、硫酸
亜鉛、ホウ酸、硫酸銅、モリブデン酸ナトリウム、三酸
化モリブデン、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等の化合
物として添加できる。
【0022】ビタミン類としては、例えばビオチン、チ
アミン(ビタミンB1 )、ピリドキシン(ビタミン
6 )、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸等が
用いられる。アミノ酸類としては、例えばグリシン、フ
ェニルアラニン、ロイシン、グルタミン、システイン等
を添加できる。
【0023】一般に前記の各成分は、植物ホルモン類が
約0.01〜約10μM 、炭素源が約1〜約30g/l 、無機成分
が約0.1μM 〜約100mM、ビタミン類及びアミノ酸類がそ
れぞれ約0.1〜約100mg/l の濃度で用いられる。なお、
本発明には液体培地及び寒天やゲランガム等を通常0.1
〜1%含有する固形培地のいずれも使用できるが、通常
は液体培地が好ましい。
【0024】本発明における組織培養においては、前記
植物の根、生長点、葉、茎、種子、花粉、葯、がく等の
組織片又は細胞、あるいはこれらを前記培地又は他の従
来の培地によって組織培養して得られる培養細胞を使用
することができる。また本発明は、Agrobacterium tume
faciens又はAgrobacterium rhizogenesを植物組織に感
染することによって得られる腫瘍細胞及び/又は毛状根
にも適用できる。
【0025】これらの組織又は細胞を酸化剤の存在下に
組織培養すると、無添加又は無処理の場合と比較して、
タキサン型ジテルペンの生産性が高くなる。以上のよう
にして得られた培養組織、培養細胞、培地等の培養物か
ら、メタノール、ジクロロメタン等の有機溶媒による抽
出によってタキサン型ジテルペンを分離することができ
る。また、培地中に適当な吸着剤や有機溶媒を共存さ
せ、培養中連続的にタキサン型ジテルペンを回収するこ
ともできる。
【0026】本発明における組織培養の好ましい一例と
しては、次の方法が挙げられる。先ず、イチイ属に属す
る植物の植物体、例えば根、生長点、葉、茎、種子等か
ら採取される植物片を殺菌処理後、ゲランガムで固めた
ウッディー・プラント・メディウムの固体培地上に置床
し、10〜35℃で14〜60日程度経過させて組織片の一部を
カルス化させる。このようにして得られたカルスを継代
培養すると生育速度が漸次高まり安定化したカルスが得
られる。ここで、安定化したカルスとは、培養中にカル
スの一部がシュートや根に分化しないでカルスの状態を
保持する性質をもち細胞の生育速度が均質であるものを
いう。
【0027】この安定化したカルスを増殖に適した液体
培地、例えばウッディー・プラント・メディウムの液体
培地に移して増殖させる。液体培地において更に生育速
度が高められる。本発明では、この安定化したカルス又
は該カルスを構成する細胞は、酸化剤の存在下、固体培
地又は液体培地で培養される。また、この安定化カルス
又は該カルスを構成する細胞は、比重の違いにより複数
の層に分け、少なくとも1つの層に含まれる細胞を酸化
剤を含有する培地で培養してもよい。
【0028】細胞を比重によって分離する方法として
は、一般に遠心分離用媒体を用いて密度勾配を作成し、
細胞を重層した後、遠心分離する方法が知られている。
遠心分離用媒体としては、Ficoll、Percoll(共にPharm
acia LKB Biotechnology 社製)、ショ糖、塩化セシウ
ム等が用いられる。密度勾配を形成する層の数に特に制
限はない。各層の比重差は、特に限定されるものではな
く、また各比重差は同じであっても異なっていてもよ
い。従って、この密度勾配の定義には勾配が連続的に変
化する場合(密度勾配を形成する層の数が無限大、各層
の比重差が0に近い状態)も含む。
【0029】このようにして密度勾配を形成し、細胞を
重層、遠心分離することにより細胞を比重の違いにより
複数の層に分けることができる。作成する層の比重は、
通常1.00〜1.20g/ml、好ましくは1.03〜1.11g/mlの範囲
である。培養の対象となる層としては、少なくとも1つ
の層を選択し、また全ての層を選択して培養してもよ
い。複数の層を選択して培養する場合、これらの複数の
層は、それぞれ個別に培養することもできるが、選択し
た複数の層のうちの2層以上の層を混合して培養するこ
ともできる。
【0030】タキサン型ジテルペン産生能の高い培養細
胞は、通常、比重が1.07以下の層に含まれる細胞を培養
して得られるが、培養する細胞や培養の条件により変動
する場合があり、必ずしもこの範囲に限定されるもので
はない。また、単に比重の違いによって分画しただけで
は、比重の高い層の細胞の方がタキサン型ジテルペン含
量が高くなる傾向が認められる。従って、より確実にタ
キサン型ジテルペン高産生培養細胞を取得するために
は、分画された全ての層の細胞を一定期間培養した後、
各層の細胞に含まれるタキサン型ジテルペン濃度を測定
し、それらの中からタキサン型ジテルペン高産生細胞を
含む層を選択することが望ましい。
【0031】また、例えば1.07g/mlのように、ある1つ
の特定の比重の遠心分離媒体を作成し、前述の方法で遠
心分離することによっても、培養細胞を比重の違いによ
り複数の層に分けることができる。本発明における組織
培養の培養温度としては、通常は約10〜約35℃、特に約
23〜約28℃が増殖速度が大きいので好適である。また、
培養期間としては、14〜42日間が好適である。
【0032】本発明における培養において液体培地を用
いた場合には、培養終了後に培養細胞をデカンテーショ
ン又は濾過等の方法によって培地から分離し、培養細胞
及び/又は培地から目的とするタキサン型ジテルペンを
有機溶媒による抽出等の方法によって分離することがで
きる。
【0033】
【実施例】以下、実施例、比較例及び参考例により本発
明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの
実施例に限定されるものではない。
【0034】(実施例1)ナフタレン酢酸を10-5M の濃
度になるように添加したウッディー・プラント・メディ
ウムの固体培地(ゲランガム0.25重量%)に、前もって
2%アンチホルミン溶液又は70%エタノール溶液等で滅
菌処理したセイヨウイチイ(Taxus baccataLINN)の茎の
一部を置床し、25℃で暗所にて静置培養してセイヨウイ
チイカルスを得た。次にこのカルス1g (新鮮重)を、
前記成分を同じ濃度で添加したウッディー・プラント・
メディウムの液体培地20ml入りの三角フラスコに移し、
ロータリーシェーカー上で旋回培養(振幅25mm、120rp
m)し、21日毎に植えつぎ、該カルスの生育速度を速め
た。
【0035】このようにして得られた培養細胞1g(新
鮮重)を、前記成分を同じ濃度で添加し、かつペルオキ
ソ二硫酸カリウムをその終濃度が1〜10,000μMになる
ように添加したウッディー・プラント・メディウムの液
体培地20ml入りの三角フラスコに移して25℃で21日間振
盪培養した。
【0036】培養終了後、セイヨウイチイ培養細胞を濾
過により採取し、凍結乾燥した後、その乾燥重量を測定
し、液体培地1L当たりの培養細胞の生育重量を求め
た。培地及び得られた乾燥カルスからメタノール、ジク
ロロメタン等を用いてタキサン型ジテルペンを抽出し、
高速液体クロマトグラフィーを用いて標準品タキソー
ル、セファロマニン、バッカチンIII と比較定量するこ
とによってタキサン型ジテルペン収量を測定した。その
結果を表1に示す。
【0037】(比較例1)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウムを添加しない以外は該実施例と同様に
操作した。その結果を表1に示す。
【0038】(実施例2)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウムを培養7日目に終濃度が100μMにな
るように添加する以外は該実施例と同様に操作した。そ
の結果をに表2に示す。
【0039】(実施例3)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウムを培養14日目に終濃度が100μMにな
るように添加する以外は該実施例と同様に操作した。そ
の結果を表2に示す。
【0040】(実施例4)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウムの代わりに、ペルオキソ二硫酸アンモ
ニウムを終濃度が100μMになるように添加する以外は
該実施例と同様に操作した。その結果を表3に示す。
【0041】(実施例5)実施例4において、ペルオキ
ソ二硫酸アンモニウムの代わりに、ペルオキソ二硫酸ナ
トリウムを添加する以外は該実施例と同様に操作した。
その結果を表3に示す。
【0042】(実施例6)実施例4において、ペルオキ
ソ二硫酸アンモニウムの代わりに、過酸化水素を添加す
る以外は該実施例と同様に操作した。その結果を表3に
示す。
【0043】(実施例7)実施例4において、ペルオキ
ソ二硫酸アンモニウムの代わりに、過マンガン酸カリウ
ムを添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結
果を表3に示す。
【0044】(実施例8)実施例4において、ペルオキ
ソ二硫酸アンモニウムの代わりに、過塩素酸アンモニウ
ムを添加する以外は該実施例と同様に操作した。その結
果を表3に示す。
【0045】(実施例9)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウム及びチオ硫酸銀を、それぞれ終濃度が
50μM及び5〜2,000μMになるように添加する以外は
該実施例と同様に操作した。その結果をに表4に示す。
【0046】(参考例)実施例1において、ペルオキソ
二硫酸カリウムを使用せずに、チオ硫酸銀を終濃度が1,
000μMになるように添加する以外は該実施例と同様に
操作した。その結果をに表4に示す。
【0047】(実施例10)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウム及びチオ硫酸銀を、それぞれ終濃度が
2〜1,000μM及び1,000μMになるように添加する以外
は該実施例と同様に操作した。その結果をに表5に示
す。
【0048】(実施例11)実施例1において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウム及び塩化コバルトを、それぞれ終濃度
が2〜1,000μM及び1,000μMになるように添加する以
外は該実施例と同様に操作した。その結果をに表6に示
す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、酸化剤の存在下にタキ
サン型ジテルペン産生植物を組織培養することによっ
て、大量のタキサン型ジテルペンを簡便に得ることがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:91)

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タキサン型ジテルペンを産生する植物の
    細胞又は組織を酸化剤の存在下に培養し、得られる培養
    物からタキサン型ジテルペンを回収することを特徴とす
    るタキサン型ジテルペンの製造方法。
  2. 【請求項2】 タキサン型ジテルペンが、タキソール、
    10−デアセチルタキソール、7−エピタキソ−ル、バッ
    カチンIII、10−デアセチルバッカチンIII、7−エピバ
    ッカチンIII、セファロマニン、10−デアセチルセファ
    ロマニン、7−エピセファロマニン、タキサギフィン、
    タキサン1a、キシロシルセファロマニン及びキシロシ
    ルタキソールよりなる群から選ばれる少なくとも1種で
    あることを特徴とする請求項1記載のタキサン型ジテル
    ペンの製造方法。
  3. 【請求項3】 タキサン型ジテルペンを産生する植物が
    イチイ属植物である請求項1記載のタキサン型ジテルペ
    ンの製造方法。
  4. 【請求項4】 酸化剤がペルオキソ二硫酸塩である請求
    項1記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  5. 【請求項5】 酸化剤が過酸化水素である請求項1記載
    のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  6. 【請求項6】 酸化剤が過マンガン酸塩である請求項1
    記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  7. 【請求項7】 酸化剤が過塩素酸塩である請求項1記載
    のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  8. 【請求項8】 組織培養培地中の酸化剤の濃度が1〜1
    0,000μMである請求項1記載のタキサン型ジテルペン
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 重金属を含む化合物、重金属を含む錯イ
    オン類及び重金属イオンよりなる群から選ばれた少なく
    とも一つを共存させることを特徴とする請求項1記載の
    タキサン型ジテルペンの製造方法。
  10. 【請求項10】 酸化剤に対する重金属のモル比が1/
    10〜500/lであることを特徴とする請求項9記載のタ
    キサン型ジテルペンの製造方法。
  11. 【請求項11】 重金属が銀であることを特徴とする請
    求項9記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
  12. 【請求項12】 重金属がコバルトであることを特徴と
    する請求項9記載のタキサン型ジテルペンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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