JPH05244971A - タキサン類化合物の製造方法 - Google Patents

タキサン類化合物の製造方法

Info

Publication number
JPH05244971A
JPH05244971A JP4084454A JP8445492A JPH05244971A JP H05244971 A JPH05244971 A JP H05244971A JP 4084454 A JP4084454 A JP 4084454A JP 8445492 A JP8445492 A JP 8445492A JP H05244971 A JPH05244971 A JP H05244971A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
taxus
compound
taxane
plant
producing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP4084454A
Other languages
English (en)
Inventor
Deikosumo Furanku
デイコスモ フランク
Fuetsuto Neto Aasaa
フェット ネト アーサー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Eneos Corp
Original Assignee
Nippon Oil Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Oil Corp filed Critical Nippon Oil Corp
Priority to JP4084454A priority Critical patent/JPH05244971A/ja
Publication of JPH05244971A publication Critical patent/JPH05244971A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 抗腫瘍活性を有するタキサン類化合物の生産
性を著しく向上させたタキサン類化合物の製造方法を提
供する。 【構成】 タクサス属植物(Taxus sp.)に起源を有する
細胞をフェノール類吸着性を有する化合物を添加した培
地で培養し、この培養物からタキサン類化合物を回収す
る。細胞培養は、固体培地で誘導し、増殖させたカルス
を、さらにガラス繊維を介在させた液体培地を用いて、
細胞をガラス繊維に吸着固定化して培養する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、タクサス属植物に起源
を有する細胞を培養し、この培養物からタキサン骨格を
有する植物成分を生産し、回収することからなるタキサ
ン類化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発
明は、タクサス属植物起源の細胞の培養物であるカルス
または液体培養細胞から高収率でタキサン類化合物を生
産し、回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、タクサス属植物 (Taxus sp.)植物
体中に、タキソールおよびその各種誘導体が存在するこ
とが知られていた。また、これらのタキソール化合物類
がメラノーマB16を含む種々のセルラインにおいて高
い抗腫瘍活性を示すことが知られており、タキソール化
合物類の抗腫瘍成分としての有効性についての各種の臨
床試験の結果が報告されている。
【0003】これらのタキソール化合物類を用いた薬剤
試験および商業規模での化学療法には大量のタキソール
化合物類が必要とされるが、天然起源のタキソール化合
物類を大量に生産することはこれまで行われていない。
タキソール化合物類は、複雑な構造の化合物であり、化
学合成による生産もこれまで行われていない。従って、
タキソールの各種誘導体の調製も、その出発材料は天然
起源のものが用いられている。
【0004】しかしながら、タキソールおよびその各種
誘導体を含有するタクサス属植物は、特殊な植物であ
り、成長が遅く、人工的な栽培も行われていない状況に
ある。また、タキソール化合物類の生産には大量のタク
サス属植物のバルクが必要とされるだけでなくバルクか
らタキソール化合物類を分離、回収するのに複雑な工程
が必要とされ、また、回収された生産物が変異し易いな
どの問題点があった。
【0005】また、最近になって、タクサス属植物の生
組織を特定の培地で培養することによりタキサン骨格を
含むアルカロイド化合物を生産させ、これを分離、回収
することも研究されている。これは、タクサス属植物の
生組織を用いて組織培養法によりタキサン骨格を含むア
ルカロイド化合物を生産する点で従来の天然バルク抽出
法に比較して新しい生産技術であると言える。
【0006】しかしながら、従来報告されているもの
は、アルカロイド化合物の生産性が充分なものではな
く、薬剤試験および化学療法など薬剤成分が大量に必要
とされる応用、利用研究およびその実用化のためには目
的化合物の生産性が低い点で全く不充分なものであり、
これらタキサン骨格を含むアルカロイド化合物を高い生
産性をもって生産することが可能な新しい生産技術を開
発することが強く要請されている状況にあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このような状況に鑑み
て、本発明者らは、抗腫瘍成分として有用性の高いタキ
ソール類およびバッカテイン類などのタキサン類化合物
を高い生産性をもって生産することが可能な新しい生産
技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた
結果、タクサス属植物に起源を有する細胞を特定の成分
を添加した培地を用いて培養すると共に、培養細胞を特
定の物質に吸着固定化して培養することにより、従来の
タクサス属植物の組織培養法に比較してタキサン類化合
物の生産性が著しく向上することを見い出し、本発明を
完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、抗腫瘍活性を示すタ
キソール類およびバッカテイン類などのタキサン類化合
物をタクサス属植物の細胞培養法により著しく高い生産
性で生産することが可能なタキサン類化合物の新規製造
方法を提供することを目的とするものである。
【0009】さらに、本発明は、タクサス属植物の細胞
を組織培養することにより、従来の組織培養法に比較し
て著しく生産性の向上したタキサン類化合物の新規製造
方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るための本発明は、次のようなタキサン類化合物の製造
方法に関する。
【0011】(1)タクサス属植物 (Taxus sp.)に起源
を有する細胞をフェノール吸着作用を有する化合物を添
加した培地で培養し、この培養物からタキサン骨格を有
する植物成分を回収することを特徴とするタキサン類化
合物の製造方法。(2)タクサス属植物が、タクサス
ブレビホリア(Taxus brevifolia)、タクサス カナデン
シス(Taxus canadensis)、タクサス x メジア cv.ヒク
シー(Taxusx media cv.hicksii)またはタクサス クス
ピダータ(Taxus cuspidata) であり、細胞が、植物の部
位として根、葉、胚、幹、メリステムに起源を有する細
胞である(1)記載のタキサン類化合物の製造方法。 (3)タクサス属植物の細胞を、オーキシンとサイトカ
イニンを含有する培地で培養する(1)記載のタキサン
類化合物の製造方法。 (4)フェノール吸着作用を有する化合物が、ポリビニ
ルピロリドンあるいは活性炭である(1)記載のタキサ
ン類化合物の製造方法。 (5)培養物がカルスまたは液体培養細胞を含有する
(1)記載のタキサン類化合物の製造方法。 (6)カルスまたは液体培養細胞をガラス繊維上に吸着
固定化させて培養する(1)記載のタキサン類化合物の
製造方法。 (7)タキサン類化合物が、バッカテイン類型のジテル
ペン化合物またはタキソール類型のジテルペンアミドで
ある(1)記載のタキサン類化合物の製造方法。
【0012】細胞の起源として用いるタクサス属植物と
しては、タクサス ブレビホリア(Taxus brevifoli
a)、タクサス カナデンシス(T.canadensis) 、タク
サス xメジア cv.ヒクシー(T. x media cv.hicksii)
タクサス クスピダータ (T. cuspidata) などが例示さ
れる。利用する植物の部位としては、根、葉、胚、幹、
メリステムなど植物組織の適宜の細胞が対象となり、タ
クサス属植物の生組織を含む切片の形で用いられる。切
片の切り出し部位としては、新芽、若い葉、成熟した種
子の中身、内部の胚、赤色の仮種皮、緑色の仮種皮など
が用いられる。
【0013】切片の培養は、まず、切片を滅菌処理し、
これを前記した化合物を添加した寒天培地などの固体培
地上で培養してカルスを誘導させる。誘導されたカルス
を同様の固体培地上で充分に増殖させる。切片の滅菌
は、エタノール表面殺菌、次亜塩素酸塩による処理、滅
菌した蒸留イオン交換水による洗浄などにより行う。
【0014】培地は、ガンボルグ(Gamborg) B5、ムラシ
ゲ・スクーグ(Murashige-Skoog) 、ニッチ・ニッチ(Nit
ch+Nitch)などのような無機塩、ビタミン類を含有する
基礎培地に、炭素源としてショ糖などの糖類、2,4−
ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、ナフタレン酢
酸(NAA)、インドール酪酸、インドール酢酸、ベン
ジルアデニン、カイネチンなどの植物ホルモン、寒天な
どを添加して構成し、これにフェノール吸着作用を有す
る化合物を添加したものが用いられる。培養は、暗所に
静置し、20℃から26℃前後で約50日間実施する。一般
に、生成したフェノール類化合物が酸化して生じるキノ
ン類が重合して着色物質になるため培養の過程で褐変が
生起するが、褐変防止剤を添加することにより培地の褐
変が防止される。本発明におけるフェノール吸着作用を
有する化合物の使用は単に褐変の防止のみではなく、タ
キサン類化合物の収率を飛躍的に高めることができる。
2,4−D、カイネチンなどの植物ホルモンの濃度も褐
変およびカルスの増殖に影響し、これらの使用量は、用
いる培地、培養条件に応じて決定されるが、例えば、オ
ーキシンとサイトカイニンについては、0から4mg/lの
オーキシンと0から4mg/lのサイトカイニンを含有する
培地を用いることが好ましい。
【0015】増殖したカルスからタキサン類化合物を直
接抽出し、精製してもよいが、これをフェノール吸着作
用を有する化合物を添加した液体培地に移しさらに液体
培養して培養細胞および培養液上清中にタキサン類化合
物を生産させ、これを抽出し、精製することが好まし
い。
【0016】なお、固体培地および液体培地に添加する
フェノール類を吸着する作用のある化合物としては、ポ
リビニルピロリドン(PVP)、活性炭などが好適に用
いられる。このような化合物を培地中に添加することに
よりタキサン類化合物の生産性を著しく向上することが
できる。このように、二次代謝産物の生産性を向上させ
る上で前記化合物の培養物への添加は、きわめて有効で
ある。これらの化合物は培地に対し、 0.1〜30%添加す
ることが好ましい。 0.1%以下だとタキサン類化合物の
生産性を向上することができず、30%以上だとかえって
カルスの増殖を阻害するので好ましくない。また、液体
培養において、培地の一部または全部を抜き出し上部化
合物と接触させ、フェノール類化合物を吸着させたのち
再び培養細胞と接触させて培養を実施することも可能で
ある。
【0017】増殖したカルスを液体培地で培養する際
に、液体懸濁培養を行なってもよいが、さらにガラス繊
維を培養液中に介在させ、培養細胞をガラス繊維に吸着
固定化して培養することによりタキサン類化合物の生産
性が著しく向上する。ガラス繊維の形態としては、如何
なるものでもよく、適宜の成型体が用いられる。このよ
うにして得られた培養細胞及び培養液上清を乾燥し、こ
れからタキサン類化合物を抽出し、必要に応じて精製す
る。
【0018】すなわち、生産されたタキサン類化合物
を、ジクロロメタン、メタノール、ヘキサン抽出などに
より抽出し、分離、回収する。分離、回収には、抽出、
カラム分離等従来化合物の分離精製に用いられている通
常の方法が用いられる。また、この抽出液を乾燥してこ
れをタキサン類化合物として用いてもよいし、さらにタ
キサン類化合物を単離してもよい。目的化合物のタキサ
ン類化合物の分析にはHPLC分析などが用いられる。
目的化合物のタキサン類化合物としては、以下の式で示
されるタキソール (I)、セファロマニン (II) 、10−
デアセチルセファロマニン (III)、バカテインIII (I
V)、10−デアセチルバカテインIII(V) など化合物が
あげられる。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】以下、試験例および実施例にもとづいて本
発明をさらに詳細に説明する。
【試験例】植物材料として、表1記載の Taxus属植物を
用いた。
【0023】
【表1】
【0024】1 .カルス誘導試験 〔切片の切り出し部位〕 新芽 若い幹(横断切片と縦断切片) 若い葉(針葉樹なので針状) 成熟した種子の中身 成熟した種子の内部の胚 赤色の仮種皮 緑色の仮種皮
【0025】前記各切片を蒸留水洗浄し、70%エタノー
ルで表面殺菌を30〜60秒行い、 1.5%次亜塩素酸ナトリ
ウム(数滴のTween 20添加)に20〜30分浸漬し、さらに
滅菌した蒸留イオン交換水で3回洗浄することにより各
切片の滅菌を行った。試験に使用した植物材料および培
地は、表1、表2に従った。
【0026】
【表2】
【0027】滅菌した各切片を26℃、暗所に静置し表2
記載のB5a培地で培養した。培養50日目でn=30〜40
/各処理で測定した結果を表3に示す。B5a培地では
赤色種皮以外の切片がカルスを与えた。特に若い幹の切
片が増殖の大きいカルスを与えた。表中、+は増殖の程
度を示し、−は増殖不良を示す。
【0028】
【表3】
【0029】2.褐変防止試験 各種添加剤による褐変防止試験を下記により実施した。
表2のB5a培地に表4記載の各添加物を加えてpH5.8
に調整(オートクレーブ前)した。使用した植物材料は
表1記載の植物の幹および仮種皮の切片ならびにそれら
から誘導したカルスである。培養は26℃暗黒下、静置条
件で実施し、各添加物に対して30〜40の植物材料の集塊
を20〜30日毎に植え継ぎ50日間培養した後評価した。例
として表1の植物材料のとの結果を表4に示す。
との植物材料でも同様の傾向を示した。
【0030】
【表4】
【0031】表4から明らかなとおり、下記の事項が判
明した。 還元剤のシステインとアスコルビン酸:ポリビニルピ
ロリドン(PVP)の有無にかかわらず植物切片の増殖
を阻害する。 活性炭:褐変防止効果はあるが、増殖はやや遅くな
る。 ポリビニルピロリドン(PVP):褐変防止効果あ
り。生育阻害はない。
【0032】3.カルス増殖試験 下記の実験条件でカルスの誘導および増殖に対する影響
を調べた。その結果を表5に示す。表1記載の〜の
植物材料の幹および葉由来の切片を26℃暗黒下、静置条
件で培養した。各培地あたり30切片の培養を2回行い評
価した。培地条件は表2記載のB5aおよびB5b培地
に不溶性のポリビニルピロリドン(PVP)を3%添加
したB5a−PVP培地、B5b−PVP培地を使用し
た。結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
【0034】表5から明かなとおりいずれのタキサス属
植物の幹および葉から誘導したカルスは、B5a−PV
P培地とB5b−PVP培地で7ヶ月の間順調に増殖す
ることが判明した。
【0035】4.植物ホルモンの影響試験 下記の実験条件でカルスの増殖に対する植物ホルモンの
効果について表1記載の植物〜由来のカルスを用い
て試験した。ショ糖2%、寒天 0.8%、不溶性ポリビニ
ルピロリドン3%を添加したガンボルグのB5培地に下
記のように2種の植物ホルモンを組み合わせて添加した
培地を用いて培養を行った。 植物ホルモンの濃度:2,4−D 0,0.5, 1.0, 2.0, 4.0, 8.0 。 カイネチン 0,0.5, 1.0, 2.0, 4.0, 8.0 。 各条件につきn=18−20,28日目に植え継ぎ55日目にカ
ルスの増殖状態を重量および目視により評価した。その
結果良好な増殖を与えた植物ホルモン条件は以下の通り
であった。 2,4−D:カイネチン=1:0,2:1,4:1 植物ホルモン濃度: 0.5−4.0mg/l
【0036】5.タキソール生産性試験 表1記載の植物の〜由来のカルスを4.の各条件で
固体培地で培養し、28日目に植え継ぎ、培養55日にカル
スの一部を取って抽出しタキソールの分析を行うことに
よりカルスのタキソール生産性を調べた。抽出方法およ
び分析方法は下記に従った。
【0037】(1)抽出方法 新鮮なカルス約 0.5gを−20℃で凍結し、1〜2ml
のヘキサン中で破砕し、25℃で12時間ヘキサン抽出を行
なった。 抽出液を2, 500×g、20分、遠心分離して生じた沈
澱を、超音波処理しながら室温で1時間1mlのメタノー
ル:ジクロロメタン(1:1)混合溶媒で抽出した。 抽出液を 2,500×g、20分、遠心分離して得た上澄
を、25℃で乾燥し、乾燥物を1mlのジクロロメタンに溶
解し、1mlの蒸留水を添加し、10秒間混合した。
この溶液を 2,500×g、20分、遠心分離し、ジクロロメ
タン層を、25℃で乾燥した。この乾燥物を、 500μl の
メタノールに溶解し、0.45μm の濾紙でろ過してHPL
Cでタキサン類化合物の含量を分析した。 上記で得た沈澱を60℃で乾燥(恒量まで)し、抽
出後の乾燥重量を測定した。
【0038】(2)分析方法 HPLCカラム:逆相カラム(Hewlett-Packard OD
S Hypersil, 5μm,100×2.1mm) 溶離液:メタノール−水−アセトニトリル(20:6
7:13)→(20:27:53)の50分間のグラジエント 流速:0.1ml/分 検出器: 227nmの吸光度(フォトダイオード・アレ
イ付き、Hewlett Packard 1090A) インジェクション量:10μl 結果を表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】表6から明らかなように、下記事項が判明
した。 (1)保持時間およびUVスペクトルからタキソールと
推定される化合物がカルス中に存在する。 (2)この他にタキソールの類縁化合物(cephalomanin
e, taxinine J, 1-dehydroxy-baccatin VIとIII)と推定
される化合物もカルス抽出物中に存在する。 (3)タキソール様化合物の含量は 0.020(乾燥細胞基
準)であった。この値は、従来タキソールの唯一の供給
源と言われていたタクサス ブレビホリア(T. brevifol
ia)の2倍程度の含量である。 なお表6中、注1)の出典は、ジャーナル オブ ナチ
ュラル プロダクツ(J. Nat. Prod.),53,1249(1990)
である。
【0041】
【実施例1】植物材料として、タクサス カナデンシス
(Taxus canadensis)、タクサス xメジア cv.ヒクシー(T
axus x media cv. hicksii) およびタクサス クスピダ
ータ(Taxus cuspidata) の若い幹の切片を用いた。これ
らの切片を蒸留水で洗浄し、70%エタノールで表面殺
菌を30〜60秒行い、 1.5%次亜塩素酸ナトリウム(数滴
のTween 20添加) に20〜30分浸漬し、さらに滅菌した蒸
留イオン交換水で3回洗浄して切片の滅菌を行った。こ
の切片をガンボルグB5培地に、2%ショ糖、 0.8%寒
天、1mg/l 2, 4−D、1mg/lカイネチン、 1.5%ポリ
ビニルピロリドンを含有させた固体培地を用いて、26
℃、暗所に静置して培養することによりカルスを誘導さ
せた。培養28日目に植え継ぎ、同様の固体培地を用いて
カルスを増減させた。
【0042】培養55日目に新鮮なカルス 0.5gを取り出
し、−20℃で凍結し、これを2mlのヘキサン中で破砕し
た後、25℃、12時間、ヘキサン抽出を行った。 2,500×
g、20分間遠心分離処理して沈澱を取り出し、1mlのメ
タノール:ジクロロメタン(1:1)で、室温、1時
間、超音波条件下に抽出し、これを 2,500×g、20分間
遠心分離して上澄み(粗抽出液)を得、これを、25℃で
乾燥し、1mlのジクロロメタンに溶解したものに1mlの
蒸留水を添加し10秒間混合した後、 2,500×g、20分間
遠心分離してジクロロメタン層を得た。これを25℃で乾
燥し、 500μl のメタノールに溶解し、0.45μmの濾紙
でろ過してHPLC試料を調製した。HPLC分析で確
認したところ、タキソール、バッカテインIII 、セファ
ロマニンと推定される化合物が検出された。タキソール
含量は、乾燥植物材料を基準にして約0.02%であった。
【0043】
【実施例2】実施例1で得られたカルスを無機塩、ビタ
ミンを含むガンホルグB5培地、2%ショ糖、1mg/l
2,4−D、1mg/lカイネチンおよび2%ポリビニルピ
ロリドンを添加した液体培地にカルスを移し、26℃、暗
所にて80rpm で振盪培養を行った。培養28日目に新鮮な
液体培養細胞 0.5gを取り出し、−20℃で凍結し、これ
を2mlのヘキサン中で破砕した後、25℃、12時間、ヘキ
サン抽出を行った。2,500×g、20分間遠心分離処理し
て沈澱を取り出し、1mlのメタノール:ジクロロメタン
(1:1)で、室温、1時間、超音波条件下に抽出し、
これを 2,500×g、20分間遠心分離して上澄み(粗抽出
液)を得、これを、25℃で乾燥し、1mlのジクロロメタ
ンに溶解したものに1mlの蒸留水を添加し10秒間混合し
た後、 2,500×g、20分間遠心分離してジクロロメタン
層を得た。これを25℃で乾燥し、 500μl のメタノール
に溶解し、0.45μm の濾紙でろ過してHPLC試料を調
製した。HPLC分析で確認したところ、タキソール、
バッカテインIII 、セファロマニンと推定される化合物
が検出された。タキソール含量は、乾燥植物材料を基準
にして約0.02%であった。HPLC分析をしたところ、
タキソール、バッカテインIII 、セファロマニンと推定
される化合物が検出された。
【0044】
【実施例3】実施例1で得られたカルスを、実施例2の
液体培地に移す際に、液体培地中にガラス繊維(ピッツ
バーグ・ペイント・アンド・グラス社製)の断片を浸漬
した。26℃、暗所にて80rpm で振盪培養を実施したとこ
ろ、培養開始1週間以内で懸濁した細胞全てが実質的に
ガラス繊維に吸着した。培養開始5週間目に培養液上清
をジクロロメタンで抽出し、ジクロロメタン層を25℃で
乾燥し 500μl のメタノールに溶解し、0.45μmの濾紙
でろ過してHPLC試料を調製した。HPLC分析を実
施したところ、タキソール、バッカテイン III、セファ
ロマニンと推定される化合物が検出された。
【0045】
【発明の効果】本発明は、タクサス属植物に起源を有す
る細胞をフェノール類吸着性を有する化合物を添加した
培地で培養し、この培養物からタキサン類化合物を回収
することを特徴とするものであり、このことにより、従
来の組織培養と比較してタキサン類化合物の生産性を著
しく向上させることができる。
【0046】さらに、培養細胞から誘導させ、増殖させ
たカルスを液体培地で培養するに際し、ガラス繊維を介
在させて培養し、培養細胞をガラス繊維に吸着固定化さ
せることにより、タキサン類化合物の生産性を著しく向
上させることができ、抗腫瘍活性を有するタキサン類化
合物を高い生産性で容易に製造することを可能とする効
果を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:91)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タクサス属植物(Taxus sp.)に起源を有
    する細胞をフェノール類吸着作用を有する化合物を添加
    した培地で培養し、この培養物からタキサン骨格を有す
    る植物成分を回収することを特徴とするタキサン類化合
    物の製造方法。
  2. 【請求項2】 タクサス属植物が、タクサス ブレビホ
    リア (Taxus brevifolia) 、タクサス カナデンシス(T
    axus canadensis)、タクサス x メジア cv.ヒクシー(T
    axus x media cv.hicksii)またはタクサス クスピダー
    (Taxus cuspidata) であり、細胞が、植物の部位とし
    て根、葉、胚、幹、メリステムに起源を有する細胞であ
    る請求項1記載のタキサン類化合物の製造方法。
  3. 【請求項3】 タクサス属植物の細胞を、オーキシンと
    サイトカイニンを含有する培地で培養する請求項1記載
    のタキサン類化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】 フェノール吸着作用を有する化合物が、
    ポリビニルピロリドンあるいは活性炭である請求項1記
    載のタキサン類化合物の製造方法。
  5. 【請求項5】 培養物がカルスまたは液体培養細胞を含
    有する請求項1記載のタキサン類化合物の製造方法。
  6. 【請求項6】 カルスまたは液体培養細胞をガラス繊維
    上に吸着固定化させて培養する請求項1記載のタキサン
    類化合物の製造方法。
  7. 【請求項7】 タキサン類化合物が、バッカテイン類の
    ジテルペン化合物またはタキソール類型のジテルペンア
    ミドである請求項1記載のタキサン類化合物の製造方
    法。
JP4084454A 1992-03-06 1992-03-06 タキサン類化合物の製造方法 Pending JPH05244971A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4084454A JPH05244971A (ja) 1992-03-06 1992-03-06 タキサン類化合物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4084454A JPH05244971A (ja) 1992-03-06 1992-03-06 タキサン類化合物の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH05244971A true JPH05244971A (ja) 1993-09-24

Family

ID=13831074

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4084454A Pending JPH05244971A (ja) 1992-03-06 1992-03-06 タキサン類化合物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH05244971A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1995014103A1 (fr) * 1993-11-15 1995-05-26 Mitsui Petrochemical Industries, Ltd. Procede de production de diterpene de taxane et procede de recolte de cellules de culture capables de produire du diterpene de taxane a haut rendement
US5527702A (en) * 1992-04-07 1996-06-18 E. R. Squibb & Sons, Inc. Callus cell induction from partially submerged explant tissue in liquid medium for preparation of taxanes
JP2006075078A (ja) * 2004-09-09 2006-03-23 Research Institute Of Innovative Technology For The Earth キク科植物の葉緑体の形質転換方法
US7264951B1 (en) 1992-02-20 2007-09-04 Phyton, Inc. Enhanced production of taxol and taxanes by cell cultures of Taxus species
US8338143B2 (en) 1996-05-24 2012-12-25 Phyton Holdings, Llc Enhanced production of paclitaxel and taxanes by cell cultures of Taxus species
WO2023042826A1 (ja) * 2021-09-14 2023-03-23 株式会社アルビオン ブナ科植物由来カルス、カルス抽出物、それを用いた方法および化粧品組成物

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7264951B1 (en) 1992-02-20 2007-09-04 Phyton, Inc. Enhanced production of taxol and taxanes by cell cultures of Taxus species
US5527702A (en) * 1992-04-07 1996-06-18 E. R. Squibb & Sons, Inc. Callus cell induction from partially submerged explant tissue in liquid medium for preparation of taxanes
US5665576A (en) * 1992-04-07 1997-09-09 E. R. Squibb & Sons, Inc. Callus cell induction and the preparation of taxanes
WO1995014103A1 (fr) * 1993-11-15 1995-05-26 Mitsui Petrochemical Industries, Ltd. Procede de production de diterpene de taxane et procede de recolte de cellules de culture capables de produire du diterpene de taxane a haut rendement
CN1083012C (zh) * 1993-11-15 2002-04-17 三井化学株式会社 生产紫杉烷类双萜的方法
CN1083010C (zh) * 1993-11-15 2002-04-17 三井化学株式会社 生产紫杉烷类双萜的方法
US8338143B2 (en) 1996-05-24 2012-12-25 Phyton Holdings, Llc Enhanced production of paclitaxel and taxanes by cell cultures of Taxus species
JP2006075078A (ja) * 2004-09-09 2006-03-23 Research Institute Of Innovative Technology For The Earth キク科植物の葉緑体の形質転換方法
WO2023042826A1 (ja) * 2021-09-14 2023-03-23 株式会社アルビオン ブナ科植物由来カルス、カルス抽出物、それを用いた方法および化粧品組成物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Fett-Neto et al. Cell culture of Taxus as a source of the antineoplastic drug taxol and related taxanes
US5744333A (en) Process for the extraction of taxol and derivatives thereof from roots of plants of the genus taxus
EP0683232B1 (en) Process for producing taxane diterpene and method of harvesting cultred cell capable of producing taxane diterpene in high yield
JP2795542B2 (ja) イチイ種の胚培養からタキソールおよびタキサン類を生産する方法
JPH05244971A (ja) タキサン類化合物の製造方法
CA2080000A1 (en) Process for producing taxol by cell culture of taxus species
CA2092705C (en) Compound having antitumor activity, nsc-lsc1, and process for producing the same
EP0887419B1 (en) Methods for producing taxane-type diterpenes
US5312740A (en) Process for producing taxol by cell culture of taxus species
WO1993002204A1 (en) Production of ginkgolides in cell culture
JP2967532B2 (ja) タキサン類化合物の製造方法
JPH1052296A (ja) タキサン類化合物の製造方法(iii)
JP2967034B2 (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法
JPH07308196A (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法
JP3162217B2 (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法
JPH1052295A (ja) タキサン類化合物の製造方法(ii)
JP3746550B2 (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法
JPH1052294A (ja) タキサン類化合物の製造方法(i)
Kim et al. Effect of sugar concentration on camptothecin production in cell suspension cultures of Camptotheca acuminata
KR960010562B1 (ko) 한국산 주목의 배양세포를 이용한 택솔의 생산방법
JP2000106893A (ja) タキサン型ジテルペン類の製造方法
JPH089983A (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法
JPH0129558B2 (ja)
JPH07308197A (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法
JPH0856681A (ja) タキサン型ジテルペンの製造方法