JP2000106893A - タキサン型ジテルペン類の製造方法 - Google Patents

タキサン型ジテルペン類の製造方法

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JP2000106893A
JP2000106893A JP28384598A JP28384598A JP2000106893A JP 2000106893 A JP2000106893 A JP 2000106893A JP 28384598 A JP28384598 A JP 28384598A JP 28384598 A JP28384598 A JP 28384598A JP 2000106893 A JP2000106893 A JP 2000106893A
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taxane
callus
taxol
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acid
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JP28384598A
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Masayoshi Ando
政義 安東
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Original Assignee
KNC Laboratories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 需要量の増加に対応することができ、安価
で、かつ、環境を保全することができる、タキソール等
のタキサン型ジテルペン類の製造方法を提供する。 【解決手段】 採取前1ヵ月間の月平均気温が18℃以
下である時期に採取した、日本イチイ(Taxus cuspidat
a Sieb et Zucc)の針葉部またはキャラボク(Taxus cu
spidata Sieb et Zucc. var. nana Rehder)の針葉部を
組織培養して得られるカルスから、抽出操作、単離操作
並びに精製操作を行うことにより、タキサン型ジテルペ
ン類を取り出す。培地は、1−ナフチル酢酸、2,4−
ジクロロフェノキシ酢酸、4−クロロインドール−3−
酢酸、ジャスモン酸メチル、およびオリゴサッカライド
からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含ん
でいることがより好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、タキソー
ル、タキソール類縁体、タキソール系化合物等のタキサ
ン型ジテルペン類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】M.C. Wani, M.E. Wall等は、タイヘイヨ
ウイチイ(Taxus brevifolia)の樹皮からタキソールを
単離し、その生理活性として、乳癌や進行性卵巣癌等の
固形癌に対して優れた効果、即ち、抗癌活性があること
を確認した。そして、米国国立癌研究所(NCI)が、
タキソールが新規な作用機体を有する抗癌剤として有効
であると発表して以来、タキソールの研究開発が世界的
に進められた。その結果、米国においては1993年に
乳癌に対する治療薬として認可され、一方、日本におい
ては1997年に卵巣癌に対する治療薬として認可され
た。それゆえ、タキソールは、近年、その需要量が高ま
ってきていると共に、用途もまた拡大されてきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、タイヘイヨ
ウイチイ等のイチイは生長が非常に遅い。また、樹齢1
00年のタイヘイヨウイチイの樹皮から単離される天然
のタキソールは僅か1gであり、この量は、1回の治療
に必要な量の半分でしかない。それゆえ、現在では、米
国食品医薬品局(FDA)によって、西洋イチイ(Taxu
s baccata )の葉から、タキソールの前駆体(中間体)
であるバッカチンIII や10−脱アセチルバッカチンII
I (含有量0.1重量%)を単離し、該バッカチンIII
や10−脱アセチルバッカチンIII に化学的修飾を施す
ことにより、半合成タキソールやその誘導体を得る方法
が認められている。尚、西洋イチイの葉は、タキソール
を含んでいないと言われている。
【0004】しかしながら、上記半合成タキソールだけ
で近年の需要量を賄うのは困難な状況となっており、医
療や研究の現場での進捗に重大な障害を及ぼしている。
また、樹皮からタキソールを得ることは、該樹皮を剥ぎ
取られたタイヘイヨウイチイの枯死を招くことになるた
め、資源保護や環境保全の観点からも問題が生じてい
る。
【0005】それゆえ、需要量の増加に対応することが
でき、安価で、かつ、環境を保全することができるタキ
ソールの安定的な供給方法が渇望されている。最終目的
物であるタキソールを直接取り出すことは、半合成タキ
ソールを得ることよりも、コストがかからない。尚、タ
キソールの全合成(化学的合成)法も確立されてはいる
が、該タキソールは構造が複雑で大量合成が技術的に困
難であり、また、コストが非常にかかるため、実用化に
は至っていない。
【0006】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、タキソールの供給方法、具
体的には、需要量の増加に対応することができ、安価
で、かつ、環境を保全することができる、タキソール等
のタキサン型ジテルペン類の製造方法を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、タキソ
ール等のタキサン型ジテルペン類の製造方法について、
資源の有効利用の観点から、毎年再生される針葉部に着
目して、鋭意検討した。その結果、従来、高木種(針葉
樹)の日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb etZucc)の
葉には、タキソールは含まれていないと報告(折谷等、
第39回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論
会、講演要旨集、48頁)されているにも関わらず、本
願発明者等は、日本イチイの葉に、タキソール、タキソ
ール類縁体、タキソール系化合物等のタキサン型ジテル
ペン類が、西洋イチイの樹皮の含有量に匹敵する含有量
で以て含まれていることを見い出した。さらに、イチイ
属の樹木の一種である低木種(針葉樹)のキャラボク
(Taxus cuspidata Sieb et Zucc. var. nana Rehder)
の葉にも、タキサン型ジテルペン類が含まれていること
を見い出した。
【0008】そして、従来、タイヘイヨウイチイの培養
細胞を選抜して細胞培養する(スクリーニングする)こ
とによって一時的に、タキサン型ジテルペン類を比較的
多量に含んでいるカルス、即ち、生産性の高いカルスを
得ることができても、継代培養して大量培養を行うこと
によって該タキサン型ジテルペン類の含有量を維持する
ことは困難であり、それゆえ、タキソールを安定的に生
産することができないと報告(E. R. M. Wickremesine,
et al. ,World Congress on Cell and Tissue Cultur
e (1992))されているにも関わらず、本願発明者等は、
特定の時期に採取した上記日本イチイ等の針葉部から、
特別な添加剤(添加物)や培養条件を用いることなく、
一般的な手法で以てカルスを誘導することができ、しか
も、該カルスを形成する培養細胞が増殖性に優れている
ことを確認すると共に、カルスから該タキサン型ジテル
ペン類を大量に取り出すことができることを見い出し
て、本発明を完成させるに至った。尚、従来、カルスを
誘導すべき外植体(植物部位)は、一般的には、春季に
採取されている。
【0009】即ち、請求項1記載の発明のタキサン型ジ
テルペン類の製造方法は、上記の課題を解決するため
に、採取前1ヵ月間の月平均気温が18℃以下である時
期に採取した、日本イチイ(Taxus cuspidata Sieb et
Zucc)の針葉部またはキャラボク(Taxus cuspidata Si
eb et Zucc. var. nana Rehder)の針葉部を組織培養し
て得られるカルスから、取り出すことを特徴としてい
る。
【0010】請求項2記載の発明のタキサン型ジテルペ
ン類の製造方法は、上記の課題を解決するために、請求
項1記載の製造方法において、組織培養する培地が、1
−ナフチル酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、4
−クロロインドール−3−酢酸、ジャスモン酸メチル、
およびオリゴサッカライドからなる群より選ばれる少な
くとも一種の化合物を含むことを特徴としている。
【0011】請求項3記載の発明のタキサン型ジテルペ
ン類の製造方法は、上記の課題を解決するために、請求
項1または2記載の製造方法において、抽出によって取
り出すことを特徴としている。
【0012】請求項4記載の発明のタキサン型ジテルペ
ン類の製造方法は、上記の課題を解決するために、請求
項1、2または3記載の製造方法において、タキサン型
ジテルペン類がタキソールであることを特徴としてい
る。
【0013】上記の方法によれば、毎年再生される針葉
部を使用するので、従来の方法と比較して、環境を保全
しながら、タキサン型ジテルペン類を大量に製造するこ
とができる。これにより、需要量の増加に対応すること
ができ、安価で、かつ、環境を保全することができるタ
キサン型ジテルペン類の製造方法を提供することができ
る。タキソール類縁体やタキソール系化合物は、化学的
修飾を施すことにより、タキソールに変換することがで
きる。また、特定の化合物を含む培地を用いて組織培養
を行うことにより、タキサン型ジテルペン類の生産性を
より向上させることができる。
【0014】上記4−クロロインドール−3−酢酸が、
タキサン型ジテルペン類の生産性を向上させる作用を備
えていることは、従来は知られていなかったことであ
り、本願発明者等が今回初めて見い出した知見である。
また、上記オリゴサッカライドが、継代による培養細胞
の老化を抑制する作用を備えていること、並びに、タキ
サン型ジテルペン類の生産性を向上させる作用を備えて
いることは、従来は知られていなかったことであり、本
願発明者等が今回初めて見い出した知見である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明にかかるタキサン型ジテル
ペン類の製造方法は、採取前1ヵ月間の月平均気温が1
8℃以下である時期に採取した、日本イチイの針葉部ま
たはキャラボクの針葉部を組織培養して得られるカルス
から、タキソール、タキソール類縁体、タキソール系化
合物等のタキサン型ジテルペン類を取り出す方法であ
る。例えば、日本イチイの針葉部は、入手が比較的容易
であり、該日本イチイは、例えば北海道、本州、四国、
九州の亜熱帯から温帯にわたって分布している。尚、本
発明における「針葉部」には、「葉」、「葉柄」、並び
に、該「葉」が複数枚付いた「小枝」、さらには、「新
芽」や該「新芽」が付いた「若茎」も含まれる。
【0016】上記のタキソールは、下記一般式
【0017】
【化1】
【0018】で表される化合物である。また、タキソー
ル類縁体としては、具体的には、例えば、下記一般式
【0019】
【化2】
【0020】で表される7−エピ−タキソール、下記一
般式
【0021】
【化3】
【0022】で表されるタクスユンナニンA(taxuyunn
anine A)(別名;タキソールC)、下記一般式
【0023】
【化4】
【0024】で表されるバッカチンVI、下記一般式
【0025】
【化5】
【0026】で表される2,10−ジベンゾイル−アベ
オ11(15−>1)バッカチンIV(2,10-dibenzoyl-a
beo 11(15->1)baccatine IV)、下記一般式
【0027】
【化6】
【0028】で表される5α,9α−ジアセトキシ−1
0β−ヒドロキシ−13α−シンナモイル−タキサ−4
(20),11−ジエン等が挙げられる。該5α,9α
−ジアセトキシ−10β−ヒドロキシ−13α−シンナ
モイル−タキサ−4(20),11−ジエンは、本願発
明者等が見い出した新規化合物である。
【0029】タキソール系化合物としては、具体的に
は、例えば、2α,5α,10β−トリアセトキシ−タ
キサ−4(20),11−ジエン−2α,5α,10
β,14β−テトラオール骨格を有する下記一般式
【0030】
【化7】
【0031】で表される14位アシル同族体等が挙げら
れる。そして、該14位アシル同族体としては、前記一
般式中の置換基Rが種々のアシル基である(14位の水
酸基がアシル化された)化合物、具体的には、例えば、
前記一般式中の置換基Rが−OCOCH3 (つまりOA
c)であるタクスユンナニンC(taxuyunnanine C)、
置換基Rが−OCOCH(CH3 )CH(CH3 )OH
であるユンナキサン(yunnanxane)、置換基Rが−OC
OCH2 CH3である化合物(以下、化合物Aと記
す)、置換基Rが−OCOCH(CH3 2である化合
物(以下、化合物Bと記す)、置換基Rが−OCOCH
(CH3 )CH2 CH3 である化合物(以下、化合物C
と記す)等が挙げられる。14位アシル同族体は、タキ
ソールの合成原料として有用な化合物である。尚、14
位アシル同族体は、タキソールの生合成における初期段
階の生成物であると考えられている。
【0032】本発明にかかる製造方法において、組織培
養に用いるべき日本イチイの針葉部またはキャラボクの
針葉部、つまり、カルスを誘導すべき外植体(植物部
位)としては、該外植体の採取前1ヵ月間の月平均気温
が18℃以下、より好ましくは5℃以下である時期、具
体的には、例えば、秋季並びに冬季に採取した「若茎」
(直径2mm〜3mm程度の緑色若茎部)が、培養細胞
の増殖性、即ち、カルスの誘導率に優れると共に、継代
を繰り返すことができるので、特に好ましい。尚、採取
前1ヵ月間の月平均気温が18℃を越える時期、具体的
には、例えば、春季は、カルスの誘導率に劣るので好ま
しくなく、夏期は、カルスの誘導率に優れるものの、継
代を繰り返すことができないので好ましくない。また、
針葉部以外の植物部位は、例えば、カルスの誘導率に劣
るので好ましくない。
【0033】上記の組織培養は、特別な添加剤(添加
物)や培養条件を用いることなく、一般的な手法で以
て、例えば、寒天培地等の市販の植物培養培地(固体培
地)とオーキシンとを用いることによって、容易に実施
することができる。つまり、外植体から容易にカルスを
誘導することができるので、簡便な設備で以て大量培養
することができ、該カルスからタキサン型ジテルペン類
を大量に取り出すことができる。カルスの形成方法とし
ては、具体的には、例えば、外植体の切片を70重量%
エチルアルコール水溶液等で滅菌処理した後、上記の切
片を、オーキシンを所定の濃度で含む改変ガンボーグB
5培地等の固体培地に置床し、次いで、25℃〜27℃
程度の暗所に静置して培養(静置培養)する方法が挙げ
られるが、特に限定されるものではない。
【0034】そして、培養細胞は、上記固体培地を用い
た簡便な方法で以て、例えば30日〜50日毎、より好
ましくは40日毎に増殖性に優れているカルスを選抜、
継代培養することによって、大量培養することができ
る。つまり、カルスを再現性良く、大量に得ることがで
きる。該カルスは、タキサン型ジテルペン類を比較的多
量に含んでいる。
【0035】上記のオーキシンとしては、具体的には、
例えば、1−ナフチル酢酸、2,4−ジクロロフェノキ
シ酢酸、インドール−3−酢酸、4−クロロインドール
−3−酢酸、インドール−3−酪酸等が挙げられるが、
特に限定されるものではない。上記例示のオーキシンの
うち、1−ナフチル酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ
酢酸、および4−クロロインドール−3−酢酸がより好
ましい。固体培地におけるオーキシンの含有量は、0を
越えて1.0mg/L以下が好ましく、0.5mg/L
程度がより好ましい。オーキシンの含有量が1.0mg
/Lを越えると、継代を繰り返すにつれて、カルスの誘
導率が次第に低下する場合がある。4−クロロインドー
ル−3−酢酸を含む固体培地は、培養細胞に対して、2
次代謝物であるタキソール等のタキサン型ジテルペン類
の生産性をより向上させることができる。上記4−クロ
ロインドール−3−酢酸が、オーキシンとして用いるこ
とができること、即ち、タキサン型ジテルペン類の生産
性を向上させる作用を備えていることは、従来は知られ
ていなかったことであり、本願発明者等が今回初めて見
い出した知見である。
【0036】固体培地は、必要に応じて、サイトカイニ
ン、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)等の褐変防止
剤、ジャスモン酸メチル等のエリシタ、オリゴサッカラ
イド、各種ビタミン等の添加剤をさらに含んでいてもよ
い。ジャスモン酸メチルを含む固体培地は、培養細胞に
対して、タキサン型ジテルペン類の生産性をより向上さ
せることができる。固体培地における添加剤の含有量
は、該添加剤の種類や組み合わせに応じて設定すればよ
い。
【0037】上記オリゴサッカライドとしては、具体的
には、例えば、食用のオクラの実から抽出・精製された
粘性多糖を酸で加水分解してなる、2糖〜5糖のオリゴ
糖の混合物(以下、KTOSと略記す)が挙げられる。
該オリゴ糖は、例えば、ラムノース、ガラクトース、ガ
ラクツロン酸、グルコース等の単糖で構成されている。
上記KTOSは、継代による培養細胞の老化を抑制する
作用を備えている。つまり、通常、培養細胞は、継代を
繰り返すことによって老化していくが、KTOSを含む
固体培地を用いることにより、老化を抑制しながら継代
を繰り返すことができるので、培養細胞を増殖させ続け
ることができる。従って、KTOSを含む固体培地は、
培養細胞に対して、タキサン型ジテルペン類の生産性を
より向上させることができる。上記KTOS等のオリゴ
サッカライドが、継代による培養細胞の老化を抑制する
作用を備えていること、並びに、タキサン型ジテルペン
類の生産性を向上させる作用を備えていることは、従来
は知られていなかったことであり、本願発明者等が今回
初めて見い出した知見である。
【0038】そして、固体培地は、4−クロロインドー
ル−3−酢酸および/またはオリゴサッカライドを含む
と共に、必要に応じて、1−ナフチル酢酸をさらに含ん
でいることが、特に好ましい。
【0039】カルスからタキサン型ジテルペン類を取り
出す具体的な方法は、特に限定されるものではないが、
抽出を行う方法が好適であり、有機溶媒を用いて抽出を
行う方法が最適である。抽出を行う具体的な方法として
は、例えば、カルスを凍結乾燥等によって乾燥させ、必
要に応じて粉砕した後、有機溶媒に数分間から数時間浸
漬する方法が挙げられる。抽出条件は、特に限定される
ものではないが、抽出温度は30℃以下であることがよ
り好ましい。そして、得られた抽出液を、必要に応じて
酸および/または塩基で処理し、次いで液体クロマトグ
ラフィーによって分画することにより、タキサン型ジテ
ルペン類を単離・精製することができる。
【0040】さらに具体的には、タキソール系化合物で
ある14位アシル同族体は、他の化合物と比較して極性
が低いので、乾燥させたカルス(以下、乾燥カルスと記
す)を、必要に応じて粉砕した後、n−ヘキサン等の低
極性の有機溶媒に浸漬して抽出し、次いで、得られた抽
出液をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーで
粗分けした後、順相高速液体クロマトグラフィー(HP
LC)を用いて単離することができる。
【0041】一方、タキソールやタキソール類縁体は、
他の化合物と比較して極性が高いので、上記14位アシ
ル同族体の抽出が終了した後の乾燥カルスを、酢酸エチ
ルやクロロホルム、エーテル等の高極性の有機溶媒に浸
漬して抽出し、次いで、得られた抽出液を酸・塩基処理
することによって共存アルカロイドやフェノール類を除
去し、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーで
粗分けした後、ODS系の逆相高速液体クロマトグラフ
ィーを用いて単離することができる。
【0042】以下、カルスからタキサン型ジテルペン類
を取り出す方法について、詳述する。上記の有機溶媒と
しては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチ
ルアルコール、イソプロピルアルコール、クロロホル
ム、n−ヘキサン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエ
ン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。こ
れら有機溶媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二
種類以上を併用してもよい。上記例示の有機溶媒のう
ち、メチルアルコール、n−ヘキサン、および酢酸エチ
ルがより好ましい。
【0043】タキサン型ジテルペン類が抽出された抽出
液は、必要に応じて、不純物として含まれるアルカロイ
ド誘導体やフェノール誘導体等の成分を分離・除去する
ために、酸および/または塩基で処理することがより好
ましい。抽出液を酸および/または塩基で処理する方法
としては、具体的には、抽出液を酸性水および/または
塩基性水で洗浄する方法が挙げられる。酸および/また
は塩基で処理した後の抽出液は、中性になるまで水洗す
ることがより好ましい。
【0044】上記の酸としては、具体的には、例えば、
塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸等の有機
酸;が挙げられるが、特に限定されるものではない。こ
れら酸は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以
上を併用してもよい。従って、酸性水としては、これら
無機酸および/または有機酸の水溶液が挙げられる。該
酸性水のpHは、特に限定されるものではないが、5以
下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。抽出液を
酸性水で洗浄することによって、該抽出液から、アルカ
ロイド誘導体等の成分を分離・除去することができる。
【0045】尚、タキサン型ジテルペン類であるタキソ
ールおよびタキソール類縁体は、酸で環開裂(分解)し
易いオキセタン骨格を分子構造に有している。従って、
一般に、酸で処理を行うと、該オキセタン骨格の環開裂
が生じてタキサン型ジテルペン類が破壊されてしまうと
考えられている。ところが、本願発明者等が検討したと
ころ、タキサン型ジテルペン類は、酸で処理を行って
も、オキセタン骨格の環開裂が生じないことが判明し
た。それゆえ、酸で処理を行うことによって、タキサン
型ジテルペン類と、アルカロイド誘導体等の成分とを分
離することができる。
【0046】また、上記の塩基としては、具体的には、
例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基;アン
モニウム化合物等の有機塩基;が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これら塩基は、一種類のみを用
いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。従っ
て、塩基性水としては、これら無機塩基および/または
有機塩基の水溶液が挙げられる。該塩基性水のpHは、
特に限定されるものではないが、9以上がより好まし
く、10以上がさらに好ましく、11以上が特に好まし
い。抽出液を塩基性水で洗浄することによって、該抽出
液から、フェノール誘導体等の成分を分離・除去するこ
とができる。
【0047】尚、タキサン型ジテルペン類は、塩基で加
水分解され易いエステルを分子構造に有している。従っ
て、一般に、塩基で処理を行うと、該エステルの加水分
解が生じてタキサン型ジテルペン類が破壊されてしまう
と考えられている。ところが、本願発明者等が検討した
ところ、タキサン型ジテルペン類は、塩基、特に強塩基
で処理を行っても、エステルの加水分解が生じないこと
が判明した。それゆえ、塩基で処理を行うことによっ
て、タキサン型ジテルペン類と、フェノール誘導体等の
成分とを分離することができる。
【0048】タキサン型ジテルペン類が抽出された抽出
液は、該タキサン型ジテルペン類の単離が容易となるよ
うに、濃縮する(有機溶媒を除去する)ことがより好ま
しい。抽出液を濃縮することにより、中性分画が得られ
る。
【0049】中性分画からタキサン型ジテルペン類を単
離・精製する具体的な方法は、特に限定されるものでは
ないが、液体クロマトグラフィーを採用する方法が好適
である。該液体クロマトグラフィーとしては、具体的に
は、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆
相または順相の高速液体クロマトグラフィー、遠心液液
分配クロマトグラフィー(CPC)等が挙げられるが、
特に限定されるものではない。上記の高速液体クロマト
グラフィーは、例えば、移動相のpHを考慮して、逆相
か順相かを選択すればよい。
【0050】固定相(充填剤)としては、具体的には、
例えば、シリカゲル、アルミナ、ODS(オクタデシル
シリル)系化合物等が挙げられるが、特に限定されるも
のではない。上記例示の固定相のうち、逆相高速液体ク
ロマトグラフィー等を採用する場合には、ODS系化合
物がより好ましい。
【0051】移動相(キャリア,溶離液)として用いる
のに好適な液体としては、具体的には、例えば、メチル
アルコール、エチルアルコール、クロロホルム、n−ヘ
キサン、酢酸エチル、各種エーテル、トルエン、アセト
ニトリル、水等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら液体は、一種類のみを用いてもよく、ま
た、二種類以上を併用してもよい。上記例示の液体のう
ち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや順相高速液
体クロマトグラフィー等を採用する場合には、n−ヘキ
サン/酢酸エチル系の混合溶液がより好ましく、逆相高
速液体クロマトグラフィー等を採用する場合には、メチ
ルアルコール/アセトニトリル系の混合溶液がより好ま
しく、遠心液液分配クロマトグラフィー等を採用する場
合には、n−ヘキサン/メチルアルコール系の混合溶液
がより好ましい。
【0052】逆相高速液体クロマトグラフィーにおける
上記液体のpH、即ち、移動相のpHは、緩衝溶液によ
って酸性に調節されていることがより好ましい。つま
り、逆相ODSカラムを用いた単離・精製は、酸性条件
下で行われることがより好ましい。緩衝溶液は、移動相
のpHを5.5以下に調節することができる溶液であれ
ばよく、特に限定されるものではない。該緩衝溶液とし
ては、具体的には、例えば、酢酸アンモニウム水溶液等
が挙げられる。尚、上記の液体と緩衝溶液との組み合わ
せは、特に限定されるものではない。
【0053】逆相液体クロマトグラフィーにおける移動
相のpHを酸性に調節することにより、該液体クロマト
グラフィーの分離能がより向上するので、タキサン型ジ
テルペン類をより一層選択的に単離することができる。
移動相のpHが中性付近であると、アルカロイド誘導体
の分離・除去が充分に行われない場合がある。また、ア
ルカロイド誘導体が有する窒素原子に対してプロトン付
加が可逆的に起こるので、分離・除去すべき成分(ピー
ク)が増加したり、該成分(ピーク)がブロードになっ
て分離能が低下したり、保持時間が変化したりして、成
分(ピーク)を特定(解析)することができなくなる場
合がある。
【0054】中性分画を液体クロマトグラフィーを採用
して分離し、タキサン型ジテルペン類を単離・精製する
具体的な方法としては、例えば、先ず、シリカゲルフ
ラッシュカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラ
フィーや、遠心液液分配クロマトグラフィーを採用し
て、n−ヘキサン/酢酸エチル系の混合溶液(溶離液)
を用いて、中性分画を分離して中程度の極性を有する分
画(フラクション)を取り出し、次に、順相高速液体
クロマトグラフィーを採用して、n−ヘキサン/酢酸エ
チル系の混合溶液(キャリア)を用いて、該分画を分離
し、さらに、逆相高速液体クロマトグラフィーを採用
して、メチルアルコールと0.05M酢酸アンモニウム
水溶液(pH4.8)とアセトニトリルとを容量比1:
2:2で混合してなる混合溶液(キャリア)を用いて、
上記で得た分画をさらに分離してタキサン型ジテルペ
ン類を含む分画を取り出す方法が挙げられる。上記の分
離・精製操作を行うことにより、タキサン型ジテルペン
類と、アルカロイド誘導体やフェノール誘導体等の成分
とを分離することができるので、タキサン型ジテルペン
類を精製することができる。そして、必要に応じて、上
記・の分離・精製操作を繰り返して行うことによ
り、タキサン型ジテルペン類の純度をさらに向上させる
ことができる。つまり、上記の分離・精製操作を行うこ
とにより、タキサン型ジテルペン類を効率的に抽出・分
離することができる。
【0055】得られたタキサン型ジテルペン類を分析す
る際には、例えば、上記液体クロマトグラフィーを採用
して、上記単離・精製条件と同様の条件で分析操作を行
えばよい。つまり、分析は、酸性条件下で行われること
がより好ましい。移動相のpHを酸性に調節することに
より、液体クロマトグラフィーの分離能がより向上する
ので、タキサン型ジテルペン類をより一層正確に分析す
ることができる。移動相のpHが中性付近であると、分
離・除去すべき成分(ピーク)が増加したり、該成分
(ピーク)がブロードになって分離能が低下したり、保
持時間が変化したりして、成分(ピーク)を特定(解
析)することができなくなる場合がある。尚、タキサン
型ジテルペン類の分析方法は、特に限定されるものでは
ない。
【0056】また、特にタキソールを分析する場合にお
いては、移動相のpHを11以上に調節することによ
り、タキソールと、不純物として含まれるフラボノイド
化合物とを分離することができる。これにより、タキソ
ールをより一層正確に分析することができる。移動相の
pHが中性付近であると、タキソールの保持時間とフラ
ボノイド化合物の保持時間とがほぼ等しくなるので、タ
キソールを正確に分析することができなくなる。尚、フ
ラボノイド化合物としては、具体的には、例えば、ジヒ
ドロケンペロール、ジヒドロクエルセチン、ギンクゲチ
ン(ginkgetin) 等が挙げられる。
【0057】本発明にかかるタキサン型ジテルペン類の
製造方法によれば、採取前1ヵ月間の月平均気温が18
℃以下である時期に採取した、日本イチイの針葉部また
はキャラボクの針葉部、つまり、毎年再生される針葉部
を使用して、該針葉部を組織培養して得られるカルスか
ら、タキサン型ジテルペン類を取り出すので、従来の方
法と比較して、環境を保全しながら、タキサン型ジテル
ペン類を大量に製造することができる。これにより、需
要量の増加に対応することができ、安価で、かつ、環境
を保全することができるタキサン型ジテルペン類の製造
方法を提供することができる。
【0058】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるもの
ではない。
【0059】〔実施例1〕日本イチイの緑色若茎部(針
葉部)を用いて、タキサン型ジテルペン類を製造した。
先ず、カルスの誘導並びに組織培養を行った。外植体と
して冬季(採取前1ヵ月間の月平均気温2.4℃)に採
取した日本イチイの緑色若茎部の切片を用いた。該切片
を、1重量%Tween滅菌水で超音波洗浄し、次い
で、70重量%エチルアルコール水溶液、および、飽和
次亜塩素酸ナトリウム水溶液で滅菌処理した後、滅菌水
で充分に超音波洗浄した。上記の切片を、改変ガンボー
グB5培地の固体培地に置床した。該改変ガンボーグB
5培地には、ショ糖、寒天、およびオーキシンである1
−ナフチル酢酸を、この順に20g/L、10g/L、
0.5mg/Lの濃度となるように添加した。改変ガン
ボーグB5培地の組成を表1にまとめた。
【0060】
【表1】
【0061】そして、上記の固体培地を25℃〜27℃
の暗所に静置した。これにより、培養細胞を静置培養し
て、日本イチイのカルスを得た。次に、約40日毎に増
殖性の良好なカルスを選抜し、同一組成の培地を用いて
継代して、系統を確立した。該培養細胞の増殖倍率を、
培養開始時のカルス重量と培養終了時のカルス重量とを
比較することによって求めた。結果を表2にまとめた。
【0062】
【表2】
【0063】また、上記培養と同様の培養を行うことに
より、(i) 外植体の採取時期と、カルスの誘導率との関
連性、(ii)1−ナフチル酢酸の添加量と、培養細胞の増
殖倍率との関連性、並びに、(iii) 1−ナフチル酢酸の
代わりにオーキシンである2,4−ジクロロフェノキシ
酢酸を用い、該2,4−ジクロロフェノキシ酢酸の添加
量と、培養細胞の増殖倍率との関連性、について調べ
た。上記(i) の結果から、冬季、即ち、採取前1ヵ月間
の月平均気温が18℃以下である時期に採取した外植体
からは100%の誘導率で以てカルスが誘導されるのに
対し、それ以外の時期に採取した外植体からは凡そ50
%の誘導率でしかカルスが誘導されないことが判った。
また、上記(ii)の結果を表3にまとめると共に、上記(i
ii) の結果を表4にまとめた。
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】続いて、8次培養(継代次)終了後のカル
スを用いて、タキサン型ジテルペン類を製造した。先
ず、原料として該カルス2678.5gを採取し、凍結
乾燥させることにより、乾燥カルス206.6gを得
た。該乾燥カルスを粉砕した後、有機溶媒としてn−ヘ
キサン、酢酸エチル、メチルアルコールを用いて、この
順に抽出操作を行った。即ち、乾燥カルス1g当たり6
0mlのn−ヘキサンを用いて抽出(1回)した後、乾
燥カルス1g当たり150mlの酢酸エチルを用いて3
回抽出し、次いで、乾燥カルス1g当たり200mlの
メチルアルコールを用いて抽出(1回)した。
【0067】そして、n−ヘキサン層(抽出液)からn
−ヘキサンを留去して、n−ヘキサン抽出物523.5
mgを得た。該n−ヘキサン抽出物を、シリカゲルを用
いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで粗分けした
後、順相高速液体クロマトグラフィーを用いて各種化合
物を分離した。また、酢酸エチル層(抽出液)から酢酸
エチルを留去して、酢酸エチル抽出物1396.8mg
を得た。該酢酸エチル抽出物を、シリカゲルを用いたフ
ラッシュカラムクロマトグラフィーで粗分けした後、順
相高速液体クロマトグラフィーを用いて各種化合物を分
離した。
【0068】一方、抽出後のメチルアルコール層に、水
とクロロホルムとを添加した後、分液操作を行って、ク
ロロホルム層(抽出液、有機物層)を得た。次に、該ク
ロロホルム層を、0.5M硫酸で洗浄してアルカロイド
誘導体を除去し、続いて、2M水酸化ナトリウム水溶液
で洗浄してフェノール誘導体を除去した。さらに、上記
クロロホルム層からクロロホルムを留去して、クロロホ
ルム抽出物(中性分画)1362mgを得た。該クロロ
ホルム抽出物を、シリカゲルを用いたフラッシュカラム
クロマトグラフィーで粗分けした後、ODS系の逆相高
速液体クロマトグラフィーを用いて各種化合物を分離し
た。
【0069】その結果、n−ヘキサン層、酢酸エチル
層、およびクロロホルム層から14位アシル同族体が単
離された。また、酢酸エチル層、およびクロロホルム層
からタキソール並びにタキソール類縁体が単離された。
尚、単離された化合物の同定並びに構造決定は、インバ
ースプローブを装着した500MHzのNMRを用い、
PFG−COSY、PFG−HMQC、PFG−HMB
C等の測定結果を解析することによって行った。
【0070】タクスユンナニンCの単離収量は279.
0mg(n−ヘキサン層から77.6mg、酢酸エチル
層から93.7mg、クロロホルム層から107.7m
g、そして、乾燥カルスに対して0.135重量%、原
料カルス1kg当たり104.2mg、乾燥カルス1k
g当たり1350mg)であった。化合物Aの単離収量
は29.7mg(同、9.4mg、18.1mg、2.
2mg、0.014重量%、11.1mg、143.7
mg)であった。化合物Bの単離収量は19.4mg
(同、8.5mg、9.8mg、1.1mg、0.00
9重量%、7.2mg、93.9mg)であった。化合
物Cの単離収量は567.2mg(同、165.1m
g、202.4mg、199.7mg、0.275重量
%、211.8mg、2745mg)であった。ユンナ
キサンの単離収量は109.3mg(同、0.0mg、
47.2mg、62.1mg、0.053重量%、4
0.8mg、529.0mg)であった。従って、14
位アシル同族体の合計の単離収量は1004.6mg
(乾燥カルスに対して0.486重量%、乾燥カルス1
kg当たり4862mg)であった。
【0071】本発明にかかる14位アシル同族体の合計
の単離収量は、従来、中国イチイ(Taxus Chinensis va
r. Mairei )から誘導したカルスから製造される14位
アシル同族体の合計の単離収量の、凡そ4倍であった。
つまり、上記方法により、カルスから容易に分離するこ
とができ、しかも、極めて高い収量で以て、該14位ア
シル同族体を得ることができた。
【0072】タキソールの単離収量は21.5mg(酢
酸エチル層から12.5mg、クロロホルム層から9.
0mg、そして、乾燥カルスに対して0.0104重量
%、原料カルス1kg当たり8.03mg、乾燥カルス
1kg当たり104.07mg)であった。
【0073】また、7−エピ−タキソールの単離収量は
3.1mg(酢酸エチル層から1.2mg、クロロホル
ム層から1.9mg、そして、乾燥カルスに対して0.
0015重量%、原料カルス1kg当たり1.16m
g、乾燥カルス1kg当たり15.00mg)であっ
た。タクスユンナニンAの単離収量は1.8mg(酢酸
エチル層から1.2mg、クロロホルム層から0.6m
g、そして、乾燥カルスに対して0.0009重量%、
乾燥カルス1kg当たり8.71mg)であった。バッ
カチンVIの単離収量は1.1mg(酢酸エチル層から
0.0mg、クロロホルム層から1.1mg、そして、
乾燥カルスに対して0.0005重量%、乾燥カルス1
kg当たり5.32mg)であった。2,10−ジベン
ゾイル−アベオ11(15−>1)バッカチンIVの単離
収量は5.9mg(酢酸エチル層から4.9mg、クロ
ロホルム層から1.0mg、そして、乾燥カルスに対し
て0.0028重量%、乾燥カルス1kg当たり28.
56mg)であった。
【0074】〔実施例2〕ジャスモン酸メチルを含む固
体培地を用いて、カルスの誘導並びに組織培養を行っ
た。即ち、実施例1において得た8次培養(継代次)終
了後のカルスを用い、該カルスを、エリシタであるジャ
スモン酸メチルを100μMの濃度で含む以外は実施例
1の改変ガンボーグB5培地と同一組成の、改変ガンボ
ーグB5培地の固体培地に移植した。そして、上記の固
体培地を25℃〜27℃の暗所に静置し、培養細胞を6
0日間、静置培養することによって、本実施例にかかる
カルスを得た。
【0075】そして、該カルスを採取し、凍結乾燥させ
ることにより、乾燥カルス74.11gを得た。この乾
燥カルスを用いて、実施例1と同様の操作を行うことに
より、タキサン型ジテルペン類を製造した。
【0076】その結果、タクスユンナニンCの単離収量
は475.7mg(乾燥カルスに対して0.642重量
%)であった。化合物Aの単離収量は39.9mg
(同、0.054重量%)であった。化合物Bの単離収
量は18.5mg(同、0.025重量%)であった。
化合物Cの単離収量は481.9mg(同、0.650
重量%)であった。ユンナキサンの単離収量は99.5
mg(同、0.143重量%)であった。従って、14
位アシル同族体の合計の単離収量は1115.5mg
(同、1.505重量%)であり、固体培地にジャスモ
ン酸メチルを添加することにより、該単離収量は、実施
例1の場合と比較して、凡そ1.5倍となった。
【0077】タキソールの単離収量は19.5mg(乾
燥カルスに対して0.0263重量%)であった。従っ
て、固体培地にジャスモン酸メチルを添加することによ
り、タキソールの単離収量は、実施例1の場合と比較し
て、凡そ2倍となった。即ち、固体培地にジャスモン酸
メチルを添加することによって、タキサン型ジテルペン
類の生産性がより向上することが判った。
【0078】また、バッカチンVIの単離収量は19.5
mg(同、0.0263重量%)であった。5α,9α
−ジアセトキシ−10β−ヒドロキシ−13α−シンナ
モイル−タキサ−4(20),11−ジエンの単離収量
は19.2mg(同、0.0259重量%)であった。
タクスユンナニンAの単離収量は3.8mg(同、0.
0051重量%)であった。2,10−ジベンゾイル−
アベオ11(15−>1)バッカチンIVの単離収量は
7.7mg(同、0.0104重量%)であった。尚、
7−エピ−タキソールは含まれていなかった。
【0079】〔実施例3〕オリゴサッカライドであるK
TOSを含む固体培地を用いて、カルスの誘導並びに組
織培養を行った。即ち、実施例1において採取し、洗浄
した日本イチイの緑色若茎部の切片を、1−ナフチル酢
酸を1.0mg/Lの濃度となるように含むと共に、K
TOSを0.3mg/Lの濃度で含む以外は実施例1の
改変ガンボーグB5培地と同一組成の、改変ガンボーグ
B5培地の固体培地に置床した。
【0080】そして、上記の固体培地を25℃〜27℃
の暗所に静置し、実施例1と同様にして培養細胞を静置
培養することによって、本実施例にかかるカルスを得
た。そして、固体培地に添加するKTOSの添加量を変
化させ、実施例1にて行った培養と同様の培養を行うこ
とにより、(iv)KTOSの添加量と、カルスの誘導率と
の関連性、(v) KTOSの添加量と、培養細胞の増殖倍
率との関連性、について調べた。上記(iv)の結果を表5
にまとめると共に、上記(v) の結果を表6にまとめた。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】上記(iv)および(v) の結果から、KTOS
は、カルスの誘導率を低下させることなく、継代による
培養細胞の老化を抑制し、培養細胞の生長を持続させる
作用(老化防止効果)を備えていることが判った。ま
た、KTOSは、カルスの褐変を防止する作用を備えて
いることも判った。
【0084】〔実施例4〕4−クロロインドール−3−
酢酸を含む固体培地を用いて、カルスの誘導並びに組織
培養を行った。即ち、実施例1において得た8次培養
(継代次)終了後のカルスを用い、該カルスを、オーキ
シンである4−クロロインドール−3−酢酸を0.5m
g/Lの濃度となるように添加した以外は実施例1の改
変ガンボーグB5培地と同一組成の、改変ガンボーグB
5培地の固体培地に移植した。そして、上記の固体培地
を25℃〜27℃の暗所に静置して培養細胞を静置培養
し、50日毎に増殖性の良好なカルスを選抜し、同一組
成の培地を用いて3回継代して、本実施例にかかるカル
スを得た。
【0085】そして、該カルスを採取し、凍結乾燥させ
ることにより、乾燥カルス18.1gを得た。この乾燥
カルスを用いて、実施例1と同様の操作を行うことによ
り、タキサン型ジテルペン類を製造した。
【0086】その結果、タクスユンナニンCの単離収量
は21.8mg(乾燥カルスに対して0.120重量
%)であった。化合物Aの単離収量は3.2mg(同、
0.018重量%)であった。化合物Bの単離収量は
2.0mg(同、0.011重量%)であった。化合物
Cの単離収量は37.9mg(同、0.209重量%)
であった。ユンナキサンの単離収量は含まれていなかっ
た。従って、14位アシル同族体の合計の単離収量は6
4.9mg(同、0.358重量%)であった。
【0087】タキソールの単離収量は1.5mg(乾燥
カルスに対して0.0083重量%)であった。尚、7
−エピ−タキソール、タクスユンナニンA、バッカチン
VI、2,10−ジベンゾイル−アベオ11(15−>
1)バッカチンIVは含まれていなかった。
【0088】また、固体培地に添加するオーキシンの種
類並びに添加量を変化させ、実施例1にて行った培養と
同様の培養を行うことにより、(vi)オーキシンの種類並
びに添加量と、カルスの誘導率との関連性、(vii) オー
キシンの種類並びに添加量と、培養細胞の増殖倍率との
関連性、について調べた。上記(vi)の結果を表7にまと
めると共に、上記(vii) の結果を表8にまとめた。
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】上記(vi)および(vii) の結果から、4−ク
ロロインドール−3−酢酸は、カルスに対して、1−ナ
フチル酢酸や2,4−ジクロロフェノキシ酢酸と同程度
の有効性を示すことが判った。
【0092】
【発明の効果】本発明の請求項1記載のタキサン型ジテ
ルペン類の製造方法は、以上のように、採取前1ヵ月間
の月平均気温が18℃以下である時期に採取した、日本
イチイ(Taxus cuspidata Sieb et Zucc)の針葉部また
はキャラボク(Taxus cuspidata Sieb et Zucc. var. n
ana Rehder)の針葉部を組織培養して得られるカルスか
ら、取り出す方法である。
【0093】本発明の請求項2記載のタキサン型ジテル
ペン類の製造方法は、以上のように、組織培養する培地
が、1−ナフチル酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢
酸、4−クロロインドール−3−酢酸、ジャスモン酸メ
チル、およびオリゴサッカライドからなる群より選ばれ
る少なくとも一種の化合物を含む方法である。
【0094】本発明の請求項3記載のタキサン型ジテル
ペン類の製造方法は、以上のように、抽出によって取り
出す方法である。
【0095】本発明の請求項4記載のタキサン型ジテル
ペン類の製造方法は、以上のように、タキサン型ジテル
ペン類がタキソールである方法である。
【0096】上記の方法によれば、毎年再生される針葉
部を使用するので、従来の方法と比較して、環境を保全
しながら、タキサン型ジテルペン類を大量に製造するこ
とができる。これにより、需要量の増加に対応すること
ができ、安価で、かつ、環境を保全することができるタ
キサン型ジテルペン類の製造方法を提供することができ
るという効果を奏する。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】採取前1ヵ月間の月平均気温が18℃以下
    である時期に採取した、日本イチイ(Taxus cuspidata
    Sieb et Zucc)の針葉部またはキャラボク(Taxus cusp
    idata Sieb et Zucc. var. nana Rehder)の針葉部を組
    織培養して得られるカルスから、取り出すことを特徴と
    するタキサン型ジテルペン類の製造方法。
  2. 【請求項2】組織培養する培地が、1−ナフチル酢酸、
    2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、4−クロロインドー
    ル−3−酢酸、ジャスモン酸メチル、およびオリゴサッ
    カライドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合
    物を含むことを特徴とする請求項1記載のタキサン型ジ
    テルペン類の製造方法。
  3. 【請求項3】抽出によって取り出すことを特徴とする請
    求項1または2記載のタキサン型ジテルペン類の製造方
    法。
  4. 【請求項4】タキサン型ジテルペン類がタキソールであ
    ることを特徴とする請求項1、2または3記載のタキサ
    ン型ジテルペン類の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7264951B1 (en) 1992-02-20 2007-09-04 Phyton, Inc. Enhanced production of taxol and taxanes by cell cultures of Taxus species
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JP2017504616A (ja) * 2015-03-16 2017-02-09 邦泰生物工程(深▲セン▼)有限公司 β−ニコチンアミドモノヌクレオチドの精製方法

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