JPH08168378A - 酵素阻害剤 - Google Patents

酵素阻害剤

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JPH08168378A
JPH08168378A JP6039044A JP3904494A JPH08168378A JP H08168378 A JPH08168378 A JP H08168378A JP 6039044 A JP6039044 A JP 6039044A JP 3904494 A JP3904494 A JP 3904494A JP H08168378 A JPH08168378 A JP H08168378A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 安全かつ有用な酵素阻害剤を提供する。 【構成】 清酒またはみりん由来の酒粕をアルコール類
で抽出して得られるチロシナーゼインヒビターならびに
α−アミラーゼインヒビター活性を有する酵素阻害剤。 【効果】 これら酵素阻害活性を通じてメラニン形成阻
害および澱粉消化抑制作用をあらわすので、化粧品なら
びにダイエット食品用添加物として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化粧品用ならびにダイ
エット食品用素材として有用な、酒粕由来の酵素阻害剤
に関し、さらに詳しくはチロシナーゼインヒビターなら
びにα−アミラーゼインヒビターを含有する組成物に関
する。
【0002】
【従来技術と発明が解決すべき課題】メラニンは、メラ
ノサイト中のチロシナーゼによりL−チロシンが酸化さ
れ、幾つかの中間体を経て形成される褐色ないし黒色の
色素である。美容上の観点のみならず、増加傾向にある
皮膚がんの防止等の医学的な見地からも、メラニン形成
の抑制が必要な場合があり、有効なメラニン形成阻害剤
の開発が求められている。また、肥満は、成人のみなら
ず、若年層にもその弊害が多く認められており、安全か
つ有効な抗肥満治療のための有効成分の開発が求められ
ている。
【0003】メラニン形成や肥満の防止は、それらに至
る生体内の反応に関与する酵素の活性を阻害する物質を
用いることにより、達成し得る。即ち、メラニンは、L
−チロシンのチロシナーゼによる酸化を含む酵素反応で
生成され、他方、肥満は、例えば、澱粉のα−アミラー
ゼによる消化を発端としている。従って、これらの酵素
の活性を阻害するチロシナーゼインヒビターおよびα−
アミラーゼインヒビターを用いることにより、上記の目
的が達成できると考えられる。具体的には、前者の例と
して、コウジ酸やアルブチンなどの物質が化粧品添加物
として使用されており(機能性化粧品、213頁〜22
3頁、日本化粧品科学研究会編、シーエムシー出版
社)、後者の例として、小麦からの抽出物が抗肥満用ダ
イエット食品として示されている(白石、化学と生物、
27巻、491頁、1989年)。しかしながら、多く
の需要に応えるためには、より有効かつ安全な酵素阻害
剤を大量に供給することが必要である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、有効かつ
安全なチロシナーゼインヒビターおよびα−アミラーゼ
インヒビターを得ることを目的として鋭意研究を重ねた
結果、日本酒やみりんの製造時に生ずる酒粕(以下、酒
粕と称する)の抽出物にこれらの酵素阻害物質が多量に
含有されていることを見い出し、本発明を完成するに至
った。即ち、本発明は、日本酒およびみりんの製造時に
生ずる酒粕から抽出して得られる酵素阻害剤を提供する
ものである。
【0005】本発明の酵素阻害剤は、酒粕を原料とし
て、通常の方法で抽出することによっても得ることがで
きるが、下記の本発明方法により抽出することが好まし
い。従来、酒粕は、各種のアミノ酸や無機成分等を豊富
に含有する優れた食品であることは知られていたが、チ
ロシナーゼインヒビターならびにα−アミラーゼインヒ
ビターを含有することは、本発明以前には知られていな
かった。酒粕の年間生産量は約10万トン(例、平成4
年7月から平成5年6月の1年間に97、350トン)
にものぼるが、漬け物や粕汁などに利用されるのは僅か
約50%にすぎず、残りは廃棄されていた。酒粕の用途
開発は、廃棄処理に伴う経費や公害問題を解決するばか
りか、貴重な資源の有効利用という点で極めて重大な意
義がある。従って、本発明は、酒粕の有効利用を可能に
するものでもある。
【0006】本発明の酒粕由来の酵素阻害剤を得るに
は、清酒もしくはみりん由来の酒粕を適当な溶媒で抽出
する。酒粕の圧搾程度は任意であり、本発明を制限しな
い。抽出効率を良くするためミキサーなどを用いて材料
を粉砕しても良い。抽出溶剤としては、アルコール系溶
媒が好ましく、例えばメタノール、エタノール、プロピ
ルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコー
ル類、これらの混合物あるいは、これらアルコール系溶
媒と水との混合物が挙げられるが、抽出効率や人体への
安全性を考慮してエタノールが良い。
【0007】アルコール類は、無水アルコールから、含
水率約50%まで、好ましくは0〜約20%までの含水
率のものを用いる。例えば、乾燥した酒粕製品を用いる
場合、50〜80%程度のアルコールで抽出することが
好ましく、圧搾程度が比較的弱い酒粕の場合、アルコー
ルとともに水分がかなり含まれているので、無水アルコ
ールで抽出するとよい。材料に対する抽出溶剤の割合は
材料の重量100に対して重量比でその3〜10倍程度
である。抽出温度、時間には特に制限はないが、室温な
いし溶媒であるアルコール類の沸騰温度の範囲である。
室温の場合数時間から1〜30日程度、沸騰温度の場合
は1時間程度で行う。
【0008】抽出した溶液を通常の方法で処理し、濃縮
する。例えば、抽出した溶液を、ガーゼなどで荒く濾過
したのち、濾紙、ガラスフィルターなどを使用して濾過
し、減圧にて溶媒を留去すれば、白色の固形分を含む黄
色もしくは黄褐色のシラップが得られる。必要に応じ
て、これを凍結乾燥すれば酵素阻害剤を含む黄白色の粉
末が得られる。よく圧搾された酒粕1kgから、通常、
20〜50g程度の本粉末が得られる。本粉末はさらに
クロマトグラフィーなどの手段で精製することもでき
る。ここに得られた粉末は、後述するように、α−アミ
ラーゼインヒビター活性およびチロシナーゼインヒビタ
ー活性を有するので、ダイエット食品や日焼け防止クリ
ームの有効成分として用いることができる。即ち、食品
たとえば菓子類に添加すればダイエット食品が得られ、
皮膚適用のための軟膏、クリーム、乳液、ローションな
どに添加すれば日焼け防止のための化粧品が得られる。
【0009】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
これらは本発明を制限するものではない。実施例1 酒粕1kg(水分47.3重量%)を100
%エタノール1000mlに浸漬し、ときどき撹拌しな
がら室温にて1昼夜放置して抽出を行う。次にガーゼで
濾過後、その濾液を少量のセライトを敷いたエナグラス
にて減圧濾過を行う。得られた濾液を減圧下、50〜6
0℃で濃縮して白色の固形分を含む黄色シラップを得
る。このままでも使用可能であるが、便宜上、これを凍
結乾燥し、黄白色の粉末50gが得られた。
【0010】実施例2 みりん由来の酒粕(水分46.4%)1kgに100%
メタノール10Lを加え,ミキサーにてよく粉砕する。
粉砕後、室温にてときどき撹拌しつつ2日間放置して抽
出を行い、以下実施例1と同様に処理すれば黄白色の粉
末15gが得られた。
【0011】実施例3 酒粕1kg(水分12.5重量%)を90%エタノール
1000mlと共に1時間、加熱還流して抽出を行う。
以下、実施例1と同様に処理すれば、黄白色の粉末75
gが得られた。
【0012】実施例4酒粕(水分47.3重量%)1k
gを100%イソプロピルアルコール500 mlに浸漬し、ときどき撹拌しながら室温にて1昼夜放
置して抽出を行う。以下、実施例1と同様に処理すれ
ば、黄白色の粉末45gが得られた。
【0013】実施例で得た酒粕抽出物のチロシナーゼイ
ンヒビター活性およびα−アミラーゼインヒビター活性
を試験した。試験例1 酒粕抽出物のチロシナーゼインヒビター活性 L−チロシン水溶液(30mg/200ml) 10ml 緩衝液(pH 6.8マッキルベイン緩衝液) 10ml 蒸留水 20ml 実施例1で得られた粉末1%水溶液 0.9ml 上記組成の溶液を37℃で10分間加温した後、チロシ
ナーゼ水溶液(1mg/ml、マッシュルーム由来、和
光純薬)0.1mlを加え、30分酵素反応を行う。対
照として抽出物粉末溶液の代わりに蒸留水を同量用いて
酵素反応を行う。チロシナーゼによって生成するドーパ
クローム(メラニンが生成する場合の前段階の物質)の
量を650nmの吸光度測定によって求め、次の計算式
によって酒粕抽出物溶液の示すチロシナーゼインヒビタ
ー活性を算出した。 インヒビター活性=[(A−B)/A]×100 A:対照溶液の吸光度 (0.47) B:抽出物粉末含有試料の吸光度 (0.002) 結果を以下の表1に示す。
【0014】
【表1】 表1から明らかなように、本発明にかかわる酒粕抽出物
は優れたチロシナーゼインヒビター活性を有する。
【0015】試験例2 酒粕抽出物のα−アミラーゼイ
ンヒビター活性 9本の試験管に水1mlずつを入れ、この最初の試験管
に1mlのα−アミラーゼ(0.5%水溶液、細菌由
来、和光純薬)を加えてよく混合し。そのうち1mlを
2番目の試験管に入れ混合し、その1mlをさらに3番
目の試験管に加え混合する。この操作を順次繰り返し、
9本目の試験管までの希釈系列を作る。9本目の液の1
mlは捨てる。水を加えずアミラーゼ溶液1mlのみの
試験管も用意して0本目とする。以上を氷水中に冷却し
ておく。次に各試験管に1%可溶性澱粉液5mlずつを
加え、全部加え終わった後一斉に40℃の恒温槽に置
き、1時間酵素反応を行う。次に試験管を氷水中に入れ
て冷却する。冷却後、試験管の高さの80%程度まで水
を加え、この上に0.1Nヨード液1滴を加えてヨード
澱粉反応による呈色(青紫色〜赤色)を見る。実施例で
得られた粉末1%溶液1ml+水9mlの溶液を上記水
1mlの代わりに各試験管に入れ、同様に酵素反応を行
い、ヨード澱粉反応による呈色を見る。結果を表2に示
す。
【0016】
【表2】 表2から明らかなように、本発明の酒粕抽出物は優れた
α−アミラーゼインヒビター活性を有する。
【0017】実施例5 美白クリームの調製実施例1で得られた粉末1gをと
り、次の処方で美白クリームを調製した。 本発明にかかわる酒粕抽出物粉末 1.0g ステアリルアルコール 6.0ml ステアリン酸 1.0 水添ラノリン 5.0 オクチルドデシルアルコール 10.0 ポリオキシエチレン(20モル)モノセチル アルコールエーテル 4.0 グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0 プロピレングリコール 5.0 精製水 66.0 香料 適量 防腐剤 適量 上記成分を良く混合し、適当な容器に充填する。
【0018】実施例6 ダイエット用クッキーの調製 ショートニング300g,牛乳20g,砂糖50g,ア
スパラテーム5gを泡立て器でよく混合する。これに卵
60gを少しずつ加えてさらによく混ぜ合わせる。 別
に小麦粉300g,ベーキングパウダ1gおよび実施例
1で得られた粉末50g相当分をよく練り合わせる。こ
れを先の混ぜ合わせたものとよく混合したのち、冷蔵庫
で30分放置する。次にこれを適当な型に成型し、約1
70℃で20分間焼成して、目的のクッキーを約700
g得る。
【0019】
【発明の効果】本発明の酒粕抽出物は優れたチロシナー
ゼインヒビターならびにα−アミラーゼインヒビター活
性を有し、化粧品あるいはダイエット食品用などの有効
成分として有用である。また、多量の余剰酒粕の有効利
用を可能にし、酒粕の廃棄に伴う公害、余分な経費負担
を軽減することに大きく貢献することができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 日本酒およびみりんの製造時に生ずる酒
    粕から抽出して得られる酵素阻害剤。
  2. 【請求項2】 酵素阻害剤がα−アミラーゼインヒビタ
    ーである請求項1の酵素阻害剤。
  3. 【請求項3】 酵素阻害剤がチロシナーゼインヒビター
    である請求項2の酵素阻害剤。
  4. 【請求項4】 酒粕をアルコール系溶媒で抽出すること
    により得られる請求項1、2または3の酵素阻害剤。
  5. 【請求項5】 アルコール系溶媒が、メタノール、エタ
    ノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール
    およびその混合物またはそれらと水との混合物から選択
    される請求項4の酵素阻害剤。
  6. 【請求項6】 請求項1の酵素阻害剤を含有するダイエ
    ット食品。
  7. 【請求項7】 請求項1の酵素阻害剤を含有する化粧
    品。
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