JPH08164497A - レール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤ - Google Patents

レール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤ

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JPH08164497A
JPH08164497A JP6307984A JP30798494A JPH08164497A JP H08164497 A JPH08164497 A JP H08164497A JP 6307984 A JP6307984 A JP 6307984A JP 30798494 A JP30798494 A JP 30798494A JP H08164497 A JPH08164497 A JP H08164497A
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JP
Japan
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welding
solid wire
rail
electroslag
rail steel
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JP6307984A
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Makoto Okumura
誠 奥村
Kenichi Karimine
健一 狩峰
Nobuyuki Aoki
信行 青木
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 中C−Cr−Mo系レール鋼を軌道敷設現場
でエレクトロスラグ溶接法により突き合わせ自動溶接お
よび補修溶接するに当たって、耐摩耗・耐損傷性の点で
優れた継手性能を確保でき、かつ良好な施工性を有する
レールのエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤを提供
する。 【構成】 重量%で(以下同じ)CaF2 を25〜40
%、SiO2 を20〜35%、TiO2 を5〜15%含
有する溶融型フラックスと組み合わせて用いるソリッド
ワイヤにおいて、C:0.2〜0.38%、Si:0.
3〜2.0%、Mn:0.8〜2.5%、Cr:0.9
〜2.8%、Mo:0.1〜1.0%を含有し、必要に
応じてさらにV:0.01〜0.1%、Nb:0.01
〜0.07%、Ni:0.35〜2.0%の1種または
2種以上を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物か
らなることを特徴とするレール鋼のエレクトロスラグ溶
接用ソリッドワイヤ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄道用の中C−Cr−
Mo系レール鋼を軌道敷設現場でエレクトロスラグ溶接
法により突き合わせ自動溶接および補修溶接する際に用
いるソリッドワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1はレールの断面を示し、1は足部、
2は腹部、3は頭部、4は頭表面である。従来からレー
ルの現地突き合わせ溶接では、接合レール端面をI開先
に設定し、レール足部を多層溶接した後、腹部2、頭部
3をエンクローズ当金材で囲み、連続的な棒継ぎにより
アーク溶接するエンクローズドアーク溶接法が適用され
ている。また、レールの頭表面4に生じた局部的な損傷
部や摩耗部分を肉盛溶接により補修する方法も多用され
ている。
【0003】しかし、これらの溶接技術は手溶接法が主
体であり、施工能率が劣る点や熟練技能が不可欠である
ため、将来にわたり熟練溶接作業者を育成する必要があ
る点など問題を残している溶接技術でもある。このた
め、これらに替わり得る溶接技術として、継手信頼性が
高く、かつ作業者の技能的習熟をそれほど必要としない
レール自動溶融溶接法とそれに適用する溶接材料の開発
が要望されている。
【0004】レールは、その使用目的から、頭表面では
車輪とのころがり接触に対する耐摩耗性と、疲労亀裂に
対する耐疲労損傷性の大きいことが要求される。一方、
足部と腹部では車輪通過時の衝撃と曲げ荷重に耐え得る
だけの静的強度と疲労強度が要求される。さらに、溶接
割れなどの溶接欠陥についても極力少なくする必要があ
る。
【0005】現在、世界的に最も普及しているレール鋼
の金属組織は、高強度かつ高耐摩耗性を得るため、Cが
0.5%〜共析組成近傍になる高炭素パーライト組織
で、強度水準が700MPa以上のものが選定されてい
る。このような高強度、高耐摩耗性のレール鋼に適した
溶接技術開発の一環として、本発明者らは、溶着金属の
組成が母材の組成とほぼ類似なものになる共金溶接技術
を着想し、研究開発を進めた結果、特公平4−5455
7号公報、特公平4−55793号公報、特開平2−2
29693号公報および特開平2−258193号公報
で明らかなとおり、従来技術で課題になっていた溶接部
の耐摩耗性および耐損傷性ないし耐割れ性を解決し、か
つ溶接作業性も良好な被覆アーク溶接棒を開発した。加
えて、この新開発溶接棒を適用した高炭素パーライト系
レール用エンクローズドアーク溶接技術を確立し、その
実用化を達成した。また、同様の共金溶接技術思想に基
づき、特公平4−51277号公報、特公平4−512
75号公報で明らかなとおり、レールの自動溶融溶接用
の溶接材料を開発した。
【0006】しかし、最近、列車のさらなる高速化が進
み、それに伴い高速線の直線区間などの使用環境によっ
てはレール頭表面に疲労ダメージが蓄積されやすく、ダ
ークスポットやフレーキングといった表面損傷の発生が
問題になってきており、前記、高炭素パーライト系レー
ル鋼では必ずしもこの問題に対応できていないことも事
実である。
【0007】この表面損傷の発生防止の考え方として、
高強度(硬度)を保ちつつ耐摩耗性を若干犠牲にした材
料系を選定し、軽度の摩耗を促進させることにより、初
期の疲労損傷核を早期に除去するとともに、高強度特性
の有する耐塑性変形能(メタルフローを抑制する性能)
を活かしてフレーキングなどを防止するという選択があ
る。このような特性を有する材料候補の一つとして、ベ
イナイト組織を呈する中C−Cr−Mo系レール鋼が着
目されており、特願平5−129729号および特願平
5−120265号に示すように、従来のパーライト系
レール鋼に将来的には一部置き替わるであろうと考えら
れるベイナイト系レール鋼も提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記した高速鉄道用の
中C−Cr−Mo系レール鋼の特徴は、表1に典型例を
示すように、金属組織が微細なベイナイトであるととも
に、ビッカース硬さで350以上、引張強度は1000
MPa以上を呈するものであるが、実用材として商品化
させるには、接合技術を伴うことが必須条件である。す
なわち、将来の現地自動溶融溶接技術の実用化に当たっ
て、中C−Cr−Mo系レール鋼を対象に適正な溶接材
料とそれを用いた適正な溶接施工技術を確立させること
が必要となる。
【0009】
【表1】
【0010】現在、市販され自動溶融溶接用の溶接材料
として用いられているソリッドワイヤのうちで、レール
鋼のエレクトロスラグ溶接法での突き合わせ自動溶融溶
接または補修溶接に適用することが可能と考えられるソ
リッドワイヤの一覧を、一部フラックスコアードワイヤ
を含め表2、表3(表2のつづき−1)および表4(表
2のつづき−2)に示す。
【0011】
【表2】
【0012】
【表3】
【0013】
【表4】
【0014】まず、高Cパーライト系レール鋼用の高C
ソリッドワイヤXは、前記したように既存技術で問題に
なっていた耐摩耗性および耐損傷性ないし耐割れ性を克
服した新開発のソリッドワイヤであるが、中C−Cr−
Mo系レール鋼との組み合わせでは、本来の技術的思想
の違いから、硬さおよび強度も表中のレベルが得られな
いのに加え、溶融境界に継手性能上好ましくない異常組
織が発生し、ベイナイト系レールが狙いとする使用中の
表面損傷防止の機能を果たすことができないし、曲げ荷
重に対する静的強度および疲労強度も満足したものが得
られない。
【0015】次に、高張力鋼用およびCr−Mo系耐熱
鋼用ソリッドワイヤA〜Hであるが、MAG(ガスシー
ルドアーク)溶接用およびSAW(サブマージドアー
ク)溶接用のいずれにおいても、高炭素パーライト系レ
ール鋼との組み合わせと異なり、中C−Cr−Mo系レ
ール鋼との組み合わせでは、高温割れや高Cマルテンサ
イト組織発生の問題が解消できるため、適用のしやすさ
は大幅に改善される。しかしながら、エレクトロスラグ
溶接に適用しても溶接金属の機械的特性値は表中に示す
レベル程度しか得られないため、レール足部、腹部およ
び頭中部に関しては問題がないが、レール頭表面部に関
しては、ベイナイト系レールが狙いとする使用中の表面
損傷防止の機能を果たすことができない。
【0016】さらに、参考として示した硬化肉盛溶接用
のフラックスコアードワイヤK〜Nであるが、これらは
YF2AおよびYF3Bの2群に分類される。YF2A
として分類されたフラックスコアードワイヤK、Lを用
いたSAW溶接で得られる溶着金属の組成は前記した高
張力鋼用ソリッドワイヤでのMAG溶接ないしSAW溶
接で得られる溶着金属の組成に類似したものなので、原
則的に前記の問題がそのまま当てはまる。一方、YF3
Bとして分類されたフラックスコアードワイヤM、Nに
よって形成される溶着金属は、微小な割れの存在を許容
できる耐土砂摩耗性を確保するため高Cマルテンサイト
組織により硬度を高くしたものであり、本発明が対象と
している本質的に割れを許容することのできない耐金属
摩耗の課題に対しては、過剰な硬さ、組織の違いおよび
割れ発生の観点から全く適用できないものである。加え
て、過剰な合金元素の添加により比抵抗値が大きくなり
すぎる点も問題となる。
【0017】本発明は、前記した中C−Cr−Mo系レ
ールの溶接において、電気伝導特性も問題なく、強度お
よび耐摩耗性、耐損傷性の優れた継手性能を確保でき、
母材レールと同様に微細ベイナイト組織を形成できると
ともに良好な溶接作業性を有するレール鋼のエレクトロ
スラグ溶接用ソリッドワイヤを提供することを目的とす
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、下記のとおりである。 (1)重量%で(以下同じ)、CaF2 :25〜40
%、SiO2 :20〜35%、TiO2 :5〜15%を
含有する溶融型フラックスと組み合わせて用いるソリッ
ドワイヤにおいて、C:0.2〜0.38%、Si:
0.3〜2.0%、Mn:0.8〜2.5%、Cr:
0.9〜2.8%、Mo:0.1〜1.0%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴と
するレール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイ
ヤ。
【0019】(2)さらに、V:0.01〜0.1%、
Nb:0.01〜0.07%、Ni:0.35〜2.0
%の1種または2種以上を含有することを特徴とする前
記(1)記載のレール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリ
ッドワイヤ。
【0020】
【作用】以下に本発明について詳細に説明する。まず、
組み合わせフラックスの組成(重量%)を規定した理由
について述べる。レール鋼の形状は図1に示したように
複雑であり、レール鋼にエレクトロスラグ溶接法を適用
する場合、例えば特公平4−57435号公報、特公平
6−6235号公報および特公平6−42992号公報
にその手法例が示されるように、足部、腹部、頭部の順
に上進形式で溶接するに当たり、当金に工夫が施される
のが一般的である。この場合、エレクトロスラグ溶接法
で実施される部位に対しては、当金で囲われた領域を可
及的速やかに溶融スラグで満たしてエレクトロスラグ溶
接様式にすることが肝要となる。本発明で対象とした中
C−Cr−Mo系レール鋼においても、エレクトロスラ
グ溶接法に用いる溶接フラックスは低融点でかつ適正な
粘性と耐火性を有する必要があるため、重量%でCaF
2 :25〜40%、SiO2 :20〜35%、Ti
2 :5〜15%を含有する溶融型フラックスが適して
いることが分かった。
【0021】CaF2 が25%未満およびSiO2 が2
0%未満では、生成スラグの融点および粘性が高くなり
過ぎ、エレクトロスラグ溶接状態の形成が不安定にな
る。一方、CaF2 が40%を超える場合は弗化物ガス
の発生が過大になり、作業環境を悪化させるので不可で
ある。また、SiO2 が35%を超える場合は、耐火性
が損なわれ、溶接金属形成が不安定になるとともに、余
盛金属表面の肌荒れおよび余盛止端部の欠陥発生を引き
起こす危険性があるのに加え、粘性が低下し過ぎるので
スラグが漏れ易く溶接が不安定になる。
【0022】さらに、TiO2 はエレクトロスラグ溶接
時のスラグの電気伝導度をCaF2と組み合わせて適度
に保つためのものであるが、5%未満ではその効果がな
く、また15%を超える場合は融点が高くなり過ぎ、エ
レクトロスラグ溶接状態の形成に時間がかかり過ぎるた
め、欠陥発生の危険性が生じ不可である。なお、スラグ
粘性調整および耐火性向上の観点から、フラックス中の
他の成分としてCaO:5〜30%および/またはMg
O:1〜10%を含有させることが望ましい。
【0023】続いて、ソリッドワイヤの各成分(重量
%)を規定した理由について述べる。Cは、中C−Cr
−Mo系レール鋼と類似の微細析出物を分散析出させた
ベイナイト組織を溶着金属に生成させるための必須成分
である。溶着金属のC含有量が増加するに従い、硬さお
よび引張強度ひいては耐塑性変形能が増加するため、溶
着金属の耐摩耗性および耐フレーキング特性を向上させ
ることができる。ソリッドワイヤのC含有量が0.2%
未満の場合では、得られるエレクトロスラグ溶接金属の
C量が0.2%未満となる場合が生じ、地のベイナイト
組織中に形成される析出物の絶対量が不足するため、強
度不足に加え、耐摩耗性および耐フレーキング特性の低
下となる。一方、ソリッドワイヤのC含有量が0.38
%超の場合では、得られるエレクトロスラグ溶接金属の
C量が0.35%超となり、Cr、Mo必須添加元素と
の関連で脆化組織が形成される。さらに、電気伝導特性
においても比抵抗値が過大になるなどの点から、ソリッ
ドワイヤのC含有量を0.2〜0.38%と規定した。
【0024】Siは、一般に溶着金属の脱酸剤の働きを
有するものとして溶接材料に添加するが、エレクトロス
ラグ溶接金属中のSi量は、溶接部の健全性の確保と脆
化防止の観点から0.25〜1.2%の範囲に制御する
ことが望ましい。ソリッドワイヤのSi含有量が0.3
%未満では、エレクトロスラグ溶接金属のSi量が0.
25%未満となり、溶接時の脱酸効果も不十分で、ピッ
トないしブローホールの発生が問題となる。一方、ソリ
ッドワイヤのSi含有量が2.0%超では、エレクトロ
スラグ溶接金属のSi量が1.2%超となり、電気伝導
特性において比抵抗値が過大になることに加え、異常組
織の形成が問題になるなどの点から、ソリッドワイヤの
Si含有量を0.3〜2.0%と規定した。
【0025】Mnは、Siと同様に溶着金属の脱酸剤と
しての働きに加え、炭化物生成元素と同様にベイナイト
変態の開始を遅らせ、低温、長時間側に移行させる働き
をする。このように低温変態生成の場合、溶接による加
熱−冷却履歴が多少変化しても組織はそれほど大きく変
化せず、極めて安定した高強度のベイナイト組織が形成
されるという利点がある。一般に、エレクトロスラグ溶
接金属のMn量もレール鋼とほぼ対応したものが望まし
い。ソリッドワイヤ中のMn含有量が0.8%未満で
は、エレクトロスラグ溶接金属のMn量が0.7%未満
と低下し、組織の形成が不安定となるため、溶接金属の
強度および延性が低下し、その結果、耐摩耗性および耐
フレーキング性が問題となる。一方、ソリッドワイヤ中
のMn含有量が2.5%超では、エレクトロスラグ溶接
金属のMn量が1.5%超となり、他に必須添加成分で
ある炭化物析出関連成分(C、Cr、Moなど)との関
連で焼入れ性が過大となり、脆化組織の析出や過剰な硬
化度を有するため問題となる。さらに加えて、電気伝導
特性の観点から比抵抗値を一定値以下に制御するのが困
難になるなどの点から、ソリッドワイヤのMn含有量を
0.8〜2.5%と規定した。
【0026】CrおよびMoは、いずれもMnと同様に
ベイナイト変態を遅滞させる成分であるとともに炭化物
生成元素であり、安定したベイナイト組織中に形成され
た微細分散析出物を介して耐摩耗性、耐損傷性および耐
フレーキング性の確保に寄与しており、本発明を構成す
る上で重要必須添加成分である。中C−Cr−Mo系レ
ール鋼のCr、Mo含有量は、それぞれCrが1〜2%
程度、Moが0.5%程度まで添加されているが、エレ
クトロスラグ溶接金属のCr、Mo量もレール母材とほ
ぼ対応したものが望ましい。ソリッドワイヤのCr含有
量が0.9%未満では、エレクトロスラグ溶接金属のC
r量は0.8%未満と低下し、その結果、組織形成は溶
接冷却速度に大きく依存して不安定になるため問題であ
る。同様に、ソリッドワイヤのMo含有量が0.1%未
満では、エレクトロスラグ溶接金属のMo量も0.1%
未満となり、組織を安定化させることができないのに加
え、必要な硬さ、強度および耐塑性変形能を確保できな
いため問題である。一方、ソリッドワイヤのCr含有量
が2.8%超、Mo含有量が1.0%超それぞれ添加さ
れると、エレクトロスラグ溶接金属のCr量が2.2%
超、Mo量が0.75%超となり、過剰な炭化物析出に
よる過剰硬化を招き問題となる。また、電気伝導特性の
点でも好ましくないなどの点から、ソリッドワイヤのC
r含有量を0.9〜2.8%、Mo含有量を0.1〜
1.0%とそれぞれ規定した。
【0027】なお、母材レールが前記のC、Si、M
n、Cr、Moの他にV、Nb、Cu、Niのうちの1
種または2種以上含有する場合は、エレクトロスラグ溶
接金属にもこれらの合金成分を母材レールと同等もしく
はそれ以下の量だけ含有させる必要がある。なお、前出
の溶接フラックスを用いてエレクトロスラグ溶接する場
合、これらの成分は、ソリッドワイヤへの添加により溶
接金属への100%の歩留りが見込まれるものである。
【0028】Vは、Mn、CrやMoと同様にベイナイ
ト変態を遅滞させる成分であるとともに炭化物形成元素
であり、含有量によって組織の安定度、強度特性も変化
するので、母材レールがVを含有する場合には、少なく
ともレール頭表面部に関してはVが含有されていない
と、溶接金属の耐摩耗性、耐損傷性および耐フレーキン
グ性が低下する。従って、エレクトロスラグ溶接金属の
V含有量は0.01%以上、好ましくは0.015%以
上含有されている必要がある。しかし、エレクトロスラ
グ溶接金属のV量が0.1%を超えると他の炭化物析出
元素であるCr、Moとの相互干渉により耐割れ性が劣
化するので、ソリッドワイヤのV含有量を0.01〜
0.1%と規定した。
【0029】Nbは、変態を促進させる成分であるた
め、溶接後の冷却中に生成する有害なマルテンサイトを
防止する効果がある。従って、エレクトロスラグ溶接金
属のNb含有量は0.01%以上、好ましくは0.01
5%以上含有させる必要がある。しかし、エレクトロス
ラグ溶接金属のNb含有量が0.07%を超えると粗大
な炭・窒化物を生じ、靱性および疲労強度を低下させる
ので、ソリッドワイヤのNb含有量を0.01〜0.0
7%と規定した。
【0030】Niは、延性または靱性を向上させる成分
であり、希にレール鋼に添加される場合がある。エレク
トロスラグ溶接金属においてもその効果は同様であり、
溶接金属に0.35〜2.0%含有されれば充分であ
る。しかも、溶接金属中のNi量が2.0%超含有され
ると高温凝固割れ感受性が大きくなってくるので好まし
くない。従って、ソリッドワイヤのNi含有量を0.3
5〜2.0%と規定した。
【0031】なお、Cuはレール鋼の耐食性を向上させ
るのに有効な成分であり、耐食性を考慮したレール鋼に
は0.3%程度が含まれる。従って、耐食性が要求され
る場合、エレクトロスラグ溶接金属にも同程度のCuを
含有させないと溶接部の耐食性が落ち、局部的な腐食劣
化を引き起こすことになる。しかし、通常、ソリッドワ
イヤはCuメッキが施されるので、溶接金属のCu量は
0.15〜0.3%程度の範囲で含有される。従って、
Cuメッキが施されている場合は、特にソリッドワイヤ
製造においてワイヤ中に意識的に添加する必要はない。
【0032】また、P、S、N、Oといった不可避的不
純物成分は、ソリッドワイヤ中に含まれる値として、そ
れぞれP+Sトータルで0.05%以下、O+Nトータ
ルで0.05%以下であることが望ましい。本発明によ
る中C−Cr−Mo系レール鋼のエレクトロスラグ溶接
用のソリッドワイヤは、その線径および組み合わせ溶接
フラックスを適正に選択することにより、一般に規定さ
れている標準施工条件でレール溶接に供されても、溶接
欠陥を発生することなく施工でき、溶接ままの状態で母
材レールとほぼ同等の強度、硬さおよびベイナイト組織
を有する溶接継手を形成させることができる。
【0033】なお、本願発明の対象とする中C−Cr−
Mo系レールは、重量%で、C:0.25〜0.35
%、Si:1.0%以下、Mn:1.3%以下、Cr:
1.0〜2.0%、Mo:0.1〜0.5%を含有する
レール鋼である。以下に実施例によって本発明の効果を
具体的に説明する。
【0034】
【実施例】以下、本発明の実施例を示す。表1に示す中
C−Cr−Mo系ベイナイトレールに対し、表5に示す
3種類の溶接フラックスと、表6に示す各種組成のソリ
ッドワイヤ(ワイヤ径1.6mm)とを適宜組み合わせ
てエレクトロスラグ溶接試験を行った。なお、表5にお
いて、記号F−1、F−2の溶接フラックスは、本発明
範囲に属する低融点−低粘性の塩基性溶接フラックスで
あり、一方、記号F−3の溶接フラックスは、比較とし
て用いた本発明範囲外の強塩基性溶接フラックスであ
る。また、表6において、記号W−1からW−11まで
の11種類の溶接ワイヤが本発明範囲に属するものの例
で、記号W−12からW−17の6種類の溶接ワイヤは
比較例として用いた本発明範囲外に属するものである。
それぞれの組み合わせとも、溶接開先部を乾燥加熱し、
表7に示す溶接条件で溶接継手を作製し評価した。
【0035】表8、表9(表8のつづき−1)、表10
(表8のつづき−2)および表11(表8のつづき−
3)に試験評価結果をまとめて示す。溶接施工の良否は
エレクトロスラグ溶接状態形成の難易を主に、スラグ漏
れ頻度、余盛金属の形成の良否を観察し、実用上問題と
ならないものには○、問題となるものについては×評価
とした。また、使用性能として耐摩耗・耐損傷性および
耐フレーキング特性に関しては、間接的な評価指標とし
て頭部溶接金属の平均硬さ、強度および延性を材力試験
により求め、その良否を○、×の2水準で求めた。さら
に、信号不良発生の要因である比抵抗値にも注目し、比
抵抗値が過大で明らかに問題となるものは×評価とし
た。その他、溶接部の横断面ミクロ試験片を採取し、研
磨・エッチング後、検鏡検査で割れや組織の評価も行っ
た。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
【表10】
【0042】
【表11】
【0043】まず、本発明例で示したソリッドワイヤW
−1からW−11については、フラックスの組み合わせ
としてF−1およびF−2を用いた場合を記号A−1か
らA−17まで示すが、いずれも溶接施工は良好であ
り、また充分な耐摩耗・耐損傷性および耐フレーキング
特性を有し、電気伝導特性も問題なく、実用可能なもの
であることが確認できた。
【0044】一方、比較例で示した記号B−1からB−
4に示す4例は、いずれも組み合わせフラックスとし
て、本発明範囲外である強塩基性フラックスF−3を用
いた場合であり、このため順調なエレクトロスラグ溶接
状態が得られず、溶接継手が形成できなかったものであ
る。また、B−5、B−6およびB−7はC、Mn、C
rといった主要成分を本発明の下限値未満に設定したも
のであるが、組織は健全なものではあったが、硬さおよ
び強度が充分なレベルでなく、耐摩耗・耐損傷性かもし
くは耐フレーキング性の点で劣っており、実用性のない
ものであった。一方、B−8からB−13までに示すも
のは、逆にベイナイト系組織での強化元素ないし炭化物
形成元素を本発明の上限を超えて組み合わせ添加したも
のであるが、これらは溶接金属が必要以上に硬化するか
一部割れを伴う異常組織を呈し、耐摩耗・耐損傷性およ
び耐フレーキング性で好結果が期待できないものであっ
た。また、これらの大部分のものは比抵抗値も高くな
り、電気伝導特性の観点からも実用不可能なものである
ことを確認した。
【0045】
【発明の効果】以上述べたように、本発明による中C−
Cr−Mo系レール用エレクトロスラグ溶接材料は、耐
摩耗性、耐表面損傷性の点で優れた継手性能を確保でき
るとともに良好な溶接作業性を有するものであり、高速
鉄道用高強度ベイナイト系レールの適用を促進する溶接
技術を提供するもので、その工業的価値は極めて大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール鋼の断面図である。
【符号の説明】
1 レール足部 2 レール腹部 3 レール頭部 4 レール頭表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/22

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で(以下同じ)、CaF2 :25
    〜40%、SiO2:20〜35%、TiO2 :5〜1
    5%を含有する溶融型フラックスと組み合わせて用いる
    ソリッドワイヤにおいて、C:0.2〜0.38%、S
    i:0.3〜2.0%、Mn:0.8〜2.5%、C
    r:0.9〜2.8%、Mo:0.1〜1.0%を含有
    し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特
    徴とするレール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリッドワ
    イヤ。
  2. 【請求項2】 さらに、V:0.01〜0.1%、N
    b:0.01〜0.07%、Ni:0.35〜2.0%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1記載のレール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリッド
    ワイヤ。
JP6307984A 1994-12-12 1994-12-12 レール鋼のエレクトロスラグ溶接用ソリッドワイヤ Pending JPH08164497A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101436689B1 (ko) * 2011-09-13 2014-09-01 가부시키가이샤 고베 세이코쇼 일렉트로슬래그 육성 용접용 플럭스
CN108044256A (zh) * 2017-12-15 2018-05-18 武汉铁锚焊接材料股份有限公司 核电用20控铬钢气保护药芯焊丝及其焊接方法

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