JP3272845B2 - Cr−Mo系レール用被覆アーク溶接棒 - Google Patents

Cr−Mo系レール用被覆アーク溶接棒

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JP3272845B2 JP33372493A JP33372493A JP3272845B2 JP 3272845 B2 JP3272845 B2 JP 3272845B2 JP 33372493 A JP33372493 A JP 33372493A JP 33372493 A JP33372493 A JP 33372493A JP 3272845 B2 JP3272845 B2 JP 3272845B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄道用中C−Cr−Mo
系レール鋼をエンクローズアーク溶接および補修溶接す
る際に用いる被覆アーク溶接棒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図1はレールの断面を示し、1は足部、
2は腹部、3は頭部、4は頭表面である。従来からレー
ルの現地突き合わせ溶接では、接合レール端面をI開先
に設定し、レール足部を多層溶接した後、腹部2、頭部
3をエンクローズ当金材で囲み、連続的な棒継ぎにより
アーク溶接するエンクローズアーク溶接法が適用されて
いる。また、レールの頭表面4に生じた局部的な損傷部
や摩耗部分を多層肉盛溶接により補修する方法も多用さ
れている。
【0003】レールは、その使用目的から頭表面では車
輪ところがり接触に対する耐摩耗性と、疲労亀裂に対す
る耐疲労損傷性の大きいことが要求される。一方、足部
と腹部では車輪通過時の衝撃と曲げ荷重に耐え得るだけ
の静的強度と疲労強度が要求される。更に、溶接割れな
どの溶接欠陥についても極力少なくする必要がある。
【0004】現在、世界的に最も普及しているレール鋼
の金属組織は強度かつ耐摩耗性を考慮し、Cが0.5%
〜共析組成近傍になる高C系パーライト組織で、強度水
準が700MPa 以上のものが選定されている。このよう
な高強度、高耐摩耗のレール鋼に適した溶接技術開発の
一環として、本発明者らは、溶着金属の組成が母材の組
成とほぼ類似なものになる共金溶接技術を着想し研究開
発を進めた結果、特公平4−54557号公報、特公平
4−55793号公報、特開平2−229693号公報
および特開平2−258193号公報で明らかな通り、
従来技術で課題になっていた溶接部の耐摩耗性および耐
損傷性ないし耐割れ性を解決し、かつ、溶接作業性も良
好な被覆アーク溶接棒を開発することができている。加
えて、この新開発溶接棒を適用した高Cパーライト系レ
ール用エンクローズアーク溶接技術を確立し、その実用
化を達成させることができている。
【0005】しかしながら、前記、高Cパーライト系レ
ール鋼は最近の列車の更なる高速化に伴い、高速線の直
線区間など使用環境によってはレール頭表面に疲労ダメ
ージが蓄積されやすく、ダークスポットやフレーキング
といった表面損傷の発生が問題になってきているのも事
実である。この表面損傷の発生防止の考え方として、高
強度(硬度)を保ちつつ耐摩耗性を若干低減させた材料
系を選定し、軽度の摩耗を促進させることにより、初期
疲労損傷を早期に除去すると共に、高強度特性の有する
耐塑性変形能(メタルフローを抑制する性能)を生かし
てフレーキングなどを防止するという選択がある。この
ような特性を有する材料候補の一つとして、ベイナイト
組織を呈する中C−Cr−Mo系レール鋼が着目されて
おり、特願平5−129729号公報および特願平5−
120265号公報に示すように、従来の高Cパーライ
ト系レール鋼に将来的には一部置き換わるであろうと考
えられるベイナイト系レール鋼の開発も進められてきて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記した新開発中の高
速鉄道用中C−Cr−Mo系レール鋼の特徴は、表1に
典型例を示すように、金属組織が微細なベイナイトであ
ると共に、ビッカース硬さで390以上、引張強度は1
100MPa 以上を呈するものであるが、実用材として商
品化させるには、接合技術を伴うことが必須条件であ
る。すなわち、既存の現地溶融溶接法の一つであるエン
クローズアーク溶接に関しても適正な被覆アーク溶接棒
とそれを用いた適正溶接技術を確立させることが必要と
なる。
【0007】
【表1】
【0008】今までに、レールのエンクローズアーク溶
接または補修溶接に適用された実績のある被覆アーク溶
接棒の一覧を表2に示す。まず、高Cパーライト系レー
ル鋼用の高炭素共金系被覆アーク溶接棒は、前記したよ
うに既存溶接棒で問題になっていた耐摩耗性および耐損
傷性ないし耐割れ性を克服した新開発溶接棒であるが、
中C−Cr−Moベイナイト系レール鋼との組み合わせ
では、本来の技術思想の違いから硬さおよび強度も表2
中に示される値が得られないのに加え、溶融境界に継手
性能上好ましくない異常組織が発生し、ベイナイト系レ
ールが狙いとする使用中の表面損傷防止の機能を果たす
ことができないし、曲げ荷重に対する静的強度および疲
労強度も満足したものが得られない。
【0009】
【表2】
【0010】次に、低合金系高張力鋼用被覆アーク溶接
棒であるが、高Cパーライト系レール鋼との組み合わせ
と異なり、中C−Cr−Moベイナイト系レール鋼との
組み合わせでは、溶融境界近傍での高温割れ(HAZ液
化割れ)やマルテンサイト組織発生の問題が解消できる
ため、適用のしやすさは大幅に改善される。しかしなが
ら、溶接金属の機械的特性値は表2中に示されるレベル
程度しか得られないため、レール足部、腹部および頭中
部に適用するには問題がないが、レール頭表面部に適用
した場合、ベイナイト系レールが狙いとするダークスポ
ットやフレーキングといった表面損傷を防止する役割を
果たすことができない。
【0011】更に、硬化肉盛用被覆アーク溶接棒である
が、これらはDF2AおよびDF2Bの2群にそれぞれ
分類される。DF2Aとして分類された溶接棒は前記し
た低合金高張力鋼用溶接棒に類似したものなので、原則
的に前記の問題がそのまま当てはまる。なお、一部のも
ので硬さおよび強度に関し前記の問題を解消しているも
のもあるが、合金元素が過剰に添加されているため比抵
抗値が過大になり、電気伝導特性の点で信号不良発生の
危険性が生じ適用性の観点から問題になる。一方、DF
2Bとして分類された溶接棒によって形成される溶着金
属は、微小な割れの存在を許容できる耐土砂摩耗性を確
保するため高Cマルテンサイト組織を現出させ硬度を高
くしたものであり、本発明が対象としている本質的に割
れを許容することのできない耐金属摩耗の課題に対して
は、過剰な硬さ、組織の違いおよび割れ発生の観点から
全く適用できないものである。
【0012】このような状況から本発明は、電気伝導特
性も問題なく強度および耐摩耗性、耐損傷性の優れた微
細ベイナイト組織を有する新しいレール用被覆アーク溶
接棒を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明が要旨とするところは、被覆剤全重量に対し、
重量%で炭酸塩を25〜45%、金属フッ化物を15〜
30%、ルチールを3〜9%、残部は塗装剤、アーク安
定剤であり、被覆剤が溶接棒全重量に対して20〜30
%被覆され、溶接棒中全金属に占める各成分が重量%で
C:0.1〜0.33%、Si:0.35〜0.9%、
Mn:0.75〜2.0%、Cr:0.9〜2.5%、
Mo:0.1〜0.6%、残部はFeおよび不可避的不
純物からなることを特徴とする中C−Cr−Moベイナ
イト系レール用被覆アーク溶接棒にある。また、被覆剤
全重量に対し、重量%で炭酸塩を25〜45%、金属フ
ッ化物を15〜30%、ルチールを3〜9%、残部は塗
装剤、アーク安定剤であり、被覆剤が溶接棒全重量に対
して20〜30%被覆され、溶接棒中全金属に占める各
成分が重量%でC:0.1〜0.33%、Si:0.3
5〜0.9%、Mn:0.75〜2.0%、Cr:0.
9〜2.5%、Mo:0.1〜0.6%、更に、V:
0.02〜0.15%、Nb:0.02〜0.1%、C
u:0.2〜0.5%、Ni:0.5〜3%の1種また
は2種以上を含有し残部はFeおよび不可避的不純物
からなることを特徴とする中C−Cr−Moベイナイト
系レール用被覆アーク溶接棒にある。
【0014】
【作用】以下に本発明について詳細に説明する。まず被
覆剤の組成を規定した理由について述べる。炭酸塩(こ
こで言う炭酸塩とは炭酸石灰、炭酸バリウム、炭酸マグ
ネシウムの1種または2種以上を言う)は、溶接時アー
ク熱により分解し炭酸ガスを発生し溶融プールを大気よ
り遮断するため、ピット、ブローホールの発生防止が可
能となる。また、アーク安定性およびスラグ剥離性の向
上に著しい効果があり、スラグの粘性調整の役割も果た
すことから溶接棒の主要な原料として使用されている。
しかし、炭酸塩が25%未満では、溶接棒先端に形成さ
れる発生ガスによるシールド能力が貧弱となり、風環境
下での溶接作業においてアークの不安定化やスパッタの
増加およびピット・ブローホールの発生を招き好ましく
ない。また、45%超では、過剰なガス発生によりスパ
ッタの増大を招くと共に、スラグ生成量も多くなり、ス
ラグ粘性が大きくなるので安定した溶接ができなくな
る。特にスラグ量およびスラグ粘性が増大することは、
Cをかなり含有したレール鋼のアーク溶接においては、
溶接作業性の面で障害となり好ましくない。更に言え
ば、当金で溶接部を囲いその中を連続的に溶接するエン
クローズアーク溶接では、アーク安定性を損なわない程
度にスラグ量を低減することや、スラグ粘性を低く抑え
アーク直下の発生スラグをスムースに溶接後方に排除す
ることが重要となる。これらの理由により、炭酸塩を2
5〜45%と規定した。
【0015】金属フッ化物(ここで言う金属フッ化物と
は、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグ
ネシウムの1種または2種以上を言う)は、スラグの粘
性、流動性調整に効果があり、金属フッ化物を適正に調
整することで溶接ビードの広がりが大きくなる。しか
し、金属フッ化物が15%未満では、スラグ流動性が悪
化し溶接棒のアーク先端にスラグがからみ安定した溶接
ができない。また、30%超では、スラグ量が過多にな
ること、およびスラグ流動性が大きくなりすぎ、溶接前
方に必要以上にスラグが流れ込み安定した溶接ができな
い。これらの理由により金属フッ化物を15〜30%と
規定した。
【0016】ルチールは、スラグ粘性を良好に保ちアー
ク安定性に効果がある。しかし、3%未満では、その効
果も十分でなくスパッタの発生など問題が多い。また、
9%超ではスラグ融点が高くスラグ粘性が大となり安定
した溶接ができないことからルチールを3〜9%と規定
した。
【0017】なお、アーク安定剤としてカリ長石や雲
母、鉄粉および合金鉄を、塗装剤としてケイ酸ソーダ、
酸化マグネシアおよび有機材を残部に含有させたもので
ある。
【0018】次に、被覆剤を溶融棒全重量に対して20
〜30%塗布する理由について述べる。被覆率は下記に
示す(1)式により定義する。 被覆率={FW /(FW +RW )}×100(%)……………(1)式 ここでFW :被覆剤重量、RW :心線重量
【0019】(1)式で計算される被覆率が20%未満
では、溶接棒の先端に形成されるアーク保護筒が構造的
に弱くなり、溶接中に被覆の欠落が生じる危険性が高
い。しかもシールドが不完全になりやすいためスパッタ
発生量が多くなって問題である。また30%超では、ス
ラグ生成量が過大となるため溶融プールから溶融スラグ
をスムーズに排除できないため安定した溶接ができない
ことから溶接棒全重量に対する被覆剤の重量を20〜3
0%と規定した。
【0020】続いて、溶接棒中全金属に占める各合金成
分の範囲を規定した理由について述べる。Cは、中C−
Cr−Mo系レール鋼と類似の微細析出物を分散析出さ
せたベイナイト組織を溶着金属に生成させるための必須
成分である。溶着金属のC含有量が増加するに従い、硬
さおよび引張強度ひいては耐塑性変形能が増加するた
め、溶接金属の耐摩耗性および耐フレーキング特性を向
上させることができる。溶接棒中全金属のC含有量が
0.1%未満の場合では、得られる継手の溶接金属のC
量が0.1%未満となる場合が生じ、地のベイナイト組
織中に形成される析出物の絶対量が不足するため強度不
足に加え耐摩耗性および耐フレーキング特性の低下とな
る。一方、溶接棒中全金属のC含有量が0.33%超の
場合では、得られる継手の溶接金属のC量が0.30
超となり、Cr,Mo必須添加元素との関連で脆化組織
が形成される。更に、電気伝導特性においても比抵抗値
が過大になるため溶接継手として使用に供することがで
きないなどの点から溶接棒中全金属のC含有量を0.1
0.33%と規定した。
【0021】Siは、一般に溶着金属の脱酸剤の働きを
有するものとして溶接棒に添加されるが、溶接金属中の
Si量を0.3〜0.75%の範囲に制御する必要があ
る。溶接棒中全金属のSi含有量が0.35%未満で
は、溶接金属のSi量が0.3%未満となり、溶接時の
脱酸効果も不十分でピットないしブローホールの発生が
問題となる。一方、溶接棒中全金属のSi含有量が0.
9%超では、溶接金属のSi量が0.75%超となり、
電気伝導特性の点で比抵抗値が過大になり溶接継手とし
て使用に供することができないことなどから溶接棒中全
金属のSi含有量を0.35〜0.9%と規定した。
【0022】Mnは、Siと同様に溶着金属の脱酸剤と
しての働きに加え、炭化物生成元素と同様にベイナイト
変態の開始を遅らせ低温、長時間側に移行させる働きを
する。このように低温変態生成の場合、溶接による加熱
−冷却履歴が多少変化しても組織はそれほど大きく変化
せず、極めて安定した高強度のベイナイト組織が形成さ
れるという利点がある。一般に、溶接金属のMn量も母
材レール鋼とほぼ対応したものが望ましい。溶接棒中全
金属のMn含有量が0.75%未満では、溶接金属中の
Mn量は0.7%未満と低下し組織の形成が不安定とな
るため、溶接金属の強度および延性が低下し、その結
果、耐摩耗性および耐フレーキング性が問題となる。一
方、溶接棒中全金属のMn含有量が2.0%超では、溶
接金属中のMn量が1.5%超となり、他に必須添加成
分である炭化物析出関連成分(C,Cr,Moなど)と
の関連で焼き入れ性が過大となり、脆化組織の析出や過
剰な硬化度を有するため問題となる。更に加えて、電気
伝導特性の観点からも比抵抗値を一定値以下に制御する
のが困難になるなどの点から溶接棒中全金属のMn含有
量を0.75〜2.0%と規定した。
【0023】CrおよびMoは、いずれもMnと同様に
ベイナイト変態を遅滞させる成分であると共に炭化物生
成元素であり、安定したベイナイト組織中に形成された
微細分散析出物を介して耐摩耗性、耐損傷性および耐フ
レーキング性の確保に寄与しており、本発明を構成する
上で重要必須添加成分である。Cr−Mo系レール鋼の
Cr,Mo含有量は、それぞれCrが1〜2%程度、M
oが0.5%程度まで添加されているが、溶接金属のC
r,Mo量もレール母材とほぼ対応したものが望まし
い。溶接棒中全金属のCr含有量が0.9%未満では、
溶接金属中のCr量は0.8%未満と低下し、その結
果、組織形成は溶接冷却速度に大きく依存し不安定にな
るため問題である。同様に、溶接棒中全金属のMo含有
量が0.1%未満では、溶接金属中のMo量も0.1%
未満となり、組織を安定化させることができないのに加
え必要な硬さ、強度および耐塑性変形能を確保できない
ため問題である。一方、溶接棒中全金属のCrが2.5
%超、Moが0.6%超それぞれ添加されると、過剰な
炭化物析出による過剰硬化を招き問題となる。また、電
気伝導特性の点でも好ましくないなどの点から溶接棒中
金属のCr含有量を0.9〜2.5%、Mo含有量を
0.1〜0.6%とそれぞれ規定した。
【0024】なお、母材レールが前記のC,Si,M
n,Cr,Moの他にV,Nb,Cu,Niのうち1種
または2種以上を含有する場合は、溶着金属にもこれら
の合金成分を母材レールと同等もしくはそれ以下の量だ
け含有させる必要がある。なお、これらの成分は、溶接
棒において心線および被覆剤のいずれに対する合金成分
の添加でも、溶着金属に対し100%の歩留りが見込ま
れるものである。
【0025】すなわち、VはMn,CrやMoと同様に
ベイナイト変態を遅滞させる成分であると共に炭化物形
成元素であり、含有量によって組織の安定度、強度特性
も変化するので、母材レールがVを含有する場合には、
少なくともレール頭表面部に適用する被覆アーク溶接棒
にもVが含有されていないと、溶接金属の耐摩耗性、耐
損傷性および耐フレーキング性が低下する。従って、溶
接金属のV含有量は0.01%以上、好ましくは0.0
15%以上含有されている必要がある。しかし、溶接金
属のV量が0.1%を超えると他の炭化物析出元素であ
るCr,Moとの相互干渉により耐割れ性が劣化するの
で、溶接棒中全金属のV含有量を被覆率を考慮し0.0
2〜0.15%と規定した。
【0026】Nbは、変態を促進させる成分であるため
溶接後の冷却中に生成する有害なマルテンサイトを防止
する効果がある。従って、溶接金属のNb含有量は0.
01%以上、好ましくは0.015%以上含有させる必
要がある。しかし、溶接金属のNb含有量が0.07%
を超えると粗大な炭・窒化物を生じ、靱性および疲労強
度を低下させるので、溶接棒中全金属のNb含有量を被
覆率を考慮し0.02〜0.1%と規定した
【0027】Cuは、レール鋼の耐食性を向上させるの
に有効な成分であり、耐食性を考慮したレール鋼には
0.3%程度まで含有される。従って、この種のレール
の溶接においては、溶接金属にも0.15〜0.3%の
Cuを含有させないと溶接部の耐食性が落ち局部的な腐
食劣化を引き起こすことになる。しかし溶接金属のCu
含有量が0.3%超では、熱間脆性を生じ欠陥が発生す
るので、溶接棒中全金属に対するCu含有量を被覆率を
考慮し0.2〜0.5%と規定した。
【0028】Niは延性または靭性を向上させる成分で
あり、希にレール鋼に添加される場合がある。溶接金属
においてもその効果は同様であり、溶接金属に0.35
〜2%含有されれば十分である。しかも溶接金属中のN
i量が2%超含有されると高温凝固割れ感受性が大きく
なってくるので好ましくない。従って、溶接棒中全金属
のNi含有量を被覆率を考慮し0.5〜3%と規定し
た。
【0029】なお、P,S,N,Oといった不可避的不
純物成分は、溶接棒中の全金属の含有量としてそれぞれ
P+Sトータルで0.05%以下、O+Nトータルで
0.05%以下であることが望ましい。
【0030】本発明による中C−Cr−Mo系レール鋼
用被覆アーク溶接棒は溶接心線の線径、被覆剤の被覆
率、および被覆剤構成物の配合などを適正に選択するこ
とにより、一般に規定されている標準施工条件でレール
溶接に供されても、溶接欠陥を発生することなく施工で
き、溶接ままの状態で母材レールとほぼ同等の強度、硬
さおよびベイナイト組織を有する溶接継手を形成させる
ことができる。以下に実施例によって本発明の効果を具
体的に説明する。
【0031】
【実施例】表3に示す3種類の線材を溶接心線として用
い、Cr−Mo系ベイナイトレールと組み合わせて試験
に供した被覆アーク溶接棒の被覆組成および溶接棒中全
金属に含まれる各元素の含有率を表4に示す。棒寸法は
全て4.0φ×400mmとし、溶接条件は直流逆極性で
溶接電流170Aで実施した。溶接に際して、溶接開始
時点でレール溶接開先部を400〜500℃に予熱し、
5パス以上の多層溶接継手で評価した。
【0032】表5に試験評価結果をまとめて示す。溶接
作業性はアークの安定度を主に、スラグ発生量の多少、
スラグ特性およびスパッタの量を観察し、実用上問題と
ならないものには○、問題となるものについては×評価
とした。また、使用性能として耐摩耗・耐損傷および耐
フレーキング特性に関しては、平均硬さ、強度および延
性を材力試験により求め間接的な評価でその良否を○×
2水準で求めた。更に、信号不良発生の要因である比抵
抗値にも注目し、比抵抗値が過大で明らかに問題となる
ものは×評価とした。その他、溶接試験体中央部での横
断面ミクロ試験片を採取し、研磨・エッチング後、検鏡
検査で割れや組織の評価も行った。
【0033】本発明例で示した溶接棒記号B−1からB
−15については溶接作業性も良好であり、また十分な
耐摩耗・耐損傷性および耐フレーキング特性を有し電気
伝導特性も問題なく、実用可能なものであることが確認
できた。
【0034】一方、比較例で示したB−18はフッ化金
属の量が本発明の上限を超えているため、また、B−2
1は逆にルチール量が本発明の下限を下回っているた
め、スラグが流れやすく溶融プール形成不安定を引き起
こし溶接作業性が問題であった。また、B−16は炭酸
塩の量が本発明の上限を超えており、B−18も被覆率
が大幅に上限を超えているためいずれもスラグ量が多く
安定した溶接ができないものであった。なお、逆に被覆
率が下限以下であったB−21は、アーク保護筒の形成
が不十分であり、スパッタ発生も多くブローホールやピ
ット発生など満足できる溶接が不可能なものであった。
更に、B−19,B−22,B−23共に、ルチール、
炭酸塩、フッ化金属の主要原料の配合がいずれも本発明
の範囲をはずれているため、スラグ流動性が悪化しアー
ク不安定を呈し溶接作業性が問題であった。
【0035】比較例で示したB−17,B−19,B−
20,B−22はいずれもベイナイト系組織での強化元
素ないし炭化物形成元素を本発明の上限を超えて組み合
わせ添加したものであるが、これらは溶接金属が必要以
上に硬化するか一部割れを伴う異常組織を呈し、耐摩耗
・耐損傷および耐フレーキング性で好結果が期待できな
いものだった。また、これらは比抵抗値も高くなり電気
伝導特性の観点からも実用不可能なものであった。一
方、B−16,B−18,B−21は逆にC,Mn,C
rといった主要成分を本発明の下限値以下に設定したも
のであるが、組織は健全なものではあったが、硬さおよ
び強度が十分なレベルでなく耐摩耗・耐損傷性かもしく
は耐フレーキング性の点で劣っており実用性のないもの
であることを確認した。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【発明の効果】以上述べたように本発明による中C−
r−Moベイナイト系レール用被覆アーク溶接棒は、耐
摩耗・耐表面損傷性の点で優れた継手性能を確保できる
と共に良好な溶接作業性を有するものであり、高速鉄道
用に開発中の高強度ベイナイト系レールの適用促進を支
援する溶接技術を提供するもので、その工業的価値は極
めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】レール鋼の断面図。
【符号の説明】
1 レール足部 2 レール腹部 3 レール頭部 4 レール頭表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内野 耕一 福岡県北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製鐵株式会社 八幡製鐵所内 (56)参考文献 特開 平6−262390(JP,A) 特開 平1−266990(JP,A) 特開 平5−271871(JP,A) 特開 平4−266494(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 35/365 B23K 35/30

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被覆剤全重量に対し、重量%で炭酸塩を
    25〜45%、金属フッ化物を15〜30%、ルチール
    を3〜9%、残部は塗装剤、アーク安定剤であり、被覆
    剤が溶接棒全重量に対して20〜30%被覆され、溶接
    棒中全金属に占める各成分が重量%でC:0.1〜0.
    33%、Si:0.35〜0.9%、Mn:0.75〜
    2.0%、Cr:0.9〜2.5%、Mo:0.1〜
    0.6%、残部はFeおよび不可避的不純物からなるこ
    とを特徴とする中C−Cr−Moベイナイト系レール用
    被覆アーク溶接棒。
  2. 【請求項2】 被覆剤全重量に対し、重量%で炭酸塩を
    25〜45%、金属フッ化物を15〜30%、ルチール
    を3〜9%、残部は塗装剤、アーク安定剤であり、被覆
    剤が溶接棒全重量に対して20〜30%被覆され、溶接
    棒中全金属に占める各成分が重量%でC:0.1〜0.
    33%、Si:0.35〜0.9%、Mn:0.75〜
    2.0%、Cr:0.9〜2.5%、Mo:0.1〜
    0.6%、更に、V:0.02〜0.15%、Nb:
    0.02〜0.1%、Cu:0.2〜0.5%、Ni:
    0.5〜3%の1種または2種以上を含有し残部はF
    eおよび不可避的不純物からなることを特徴とする中C
    Cr−Moベイナイト系レール用被覆アーク溶接棒。
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