JP3649872B2 - 溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レール - Google Patents

溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道においてレールの寿命を左右する頭頂部ならびに頭部コーナー部に生じる転動疲労損傷に対する耐損傷性に優れていることに加えて、フラッシュバット溶接、ガス圧接した溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レールに関する
【0002】
【従来の技術】
従来、レールは主に頭頂部及び頭部コーナー部の耐摩耗性重視の観点からパーライト鋼を用いてきた。しかし近年、鉄道による輸送量の増加に伴いレールの使用条件はますます厳しいものになってきている。特に日本国内においては使用者の利便性を考慮して在来線、新幹線共に高速化、ダイヤの過密化が進んでおり、年間の累積通tonが増大していることから転動疲労損傷も増加している。このため鉄道会社はレールのメンテナンス費用の削減の観点から、優れた耐転動疲労損傷性を有するレール鋼を要求するようになってきている。現状では転動疲労損傷が問題となっている区間には、JISに規格化された強度が800MPa級のパーライト型普通レールが用いられているが、この普通レールに頭部の摩耗を原因とする交換が発生することは少ない。従って耐摩耗特性の観点からは現状の転動疲労損傷が問題となる区間においてはパーライト鋼レールには過剰な耐摩耗特性が付与されていることになる。
一方、ベイナイト鋼はパーライト鋼に比べ耐転動疲労損傷性は優れているものの、合金元素を多量に添加しているため溶接部の接合性が劣るといわれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ベイナイト組織のレールにおいては、特開平2−282448号公報に開示されているように疲労強度を高くし、また摩耗を促進して疲労層を除去することにより、耐転動疲労損傷性の向上を図っているものの、パーライト鋼レールに比べ合金元素の添加量が多く、フラッシュバット溶接、ガス圧接時の接合性に問題が生じる可能性があるが、これに関する検討はなされていない。
【0004】
本発明の目的は、このような従来の問題に鑑み、フラッシュバット溶接、ガス圧接といったレール溶接時の接合性を従来のパーライト型レール鋼と同等とした上で優れた転動疲労損傷性を有するベイナイト鋼レールを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下に示す手段を用いている。
(1)本発明のレールは、質量%で、C:0.15〜0.4%と、Si:0.1〜0.2%と、Mn:0.15〜1.1%と、P:0.035%以下と、S:0.035%以下と、Cr:0.05〜0.45%と、Nb:0.005〜0.15%と、Mo:0.05〜0.85%とを含有し、Mn%/Si%≦5.5を満たし、残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなるレール鋼であって、レール頭部がベイナイト組織であり、レール頭頂部及び頭部コーナー部のいずれの位置においても均一な硬さ分布で、ビッカース硬度がHV230〜320であることを特徴とする、溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レールである。
【0006】
(2)本発明のレールは、鋼成分として、質量%でさらに、Ni:0.1〜1%を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レールである。
【0007】
(3)本発明のレールは、鋼成分として、質量%でさらに、V:0.01〜0.2%を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レールである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、ベイナイト鋼の化学成分、硬度と溶接接合性との関係について、鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を得るに至った。
【0010】
列車通過時の振動、騒音対策からすき間のある継ぎ目を低減する対策としてレールを溶接して使用する頻度が非常に高くなっており、この点から溶接時の接合性が要求される。レールの溶接方法にはフラッシュバット溶接、ガス圧接、エンクローズアーク溶接、テルミット溶接があるが、このうちフラッシュバット溶接、ガス圧接については、溶接金属を用いず、レール母材を直接接合することから母材自体の接合性が問題となる。このようなフラッシュバット溶接及びガス圧接時の接合性については、添加元素の酸化物生成能力、生成した酸化物の溶融温度、接合時の新生面による酸化物の除去能力等が影響する。表1に示す成分を有する硬さがHV320以下の供試鋼No.1a−1〜9,1b−1〜9,1c−1〜9,1d−1〜9の接合性におよぼすSi,Cr,Mo,Mn/Siの添加量の影響をそれぞれ図3〜6に示す。
【0011】
【表1】
Figure 0003649872
【0012】
図3〜6の縦軸は、40φの丸棒を用いてフラッシュバット溶接及びガス圧接により溶接継手を作成し、継手の接合面が引張試験片の平行部中央になるように採取した試験片を用いて引張試験を行った時の破断部の絞り値の平均値を示しており、この値(RA)が大きいほど接合性が高いことを示している。図3〜6から理解できるように、Siが0.2%、Crが0.45%、Moが0.85%、Mn/Siが5.5を超えた場合には絞り値が5%以下となり、接合性の低下が著しい。この理由について以下に述べる。
【0013】
Si,Crは酸化しやすい元素であるため、フラッシュ電流もしくはガス炎による加熱で接合面に緻密な酸化皮膜を形成し、これがフラッシュバット溶接、ガス圧接時の最終のアプセットにおいても接合面から除去されない。Moはアプセット時の変形抵抗を高くするために充分に新生面が接合しない。Mn/Siは、Mn,Si,Feの複合酸化物の融点がMn/Siで5.5を超えた領域では著しく高温になり、接合面に残留する複合酸化物の粘性が相対的に高くなるためにアプセットにおいて除去され難い。従って、接合性の観点からSiは0.2%以下、Crは0.45%以下、Moは0.85%以下、またMn/Siは5.5以下とすることが必要である。
【0014】
図7に溶接時の接合性に及ぼす硬さ(HV)の影響を調べた結果を示す。表2に供試鋼の化学成分、硬さを示す。図7から理解できるように、Si,Cr,Mo,Mn/Siの各々が本発明の請求範囲を満たしている場合でも硬さの上昇に伴い接合性は低下しており、特にHV320を超えた場合には絞り値が5%以下となり、実用上問題が生じる。
【0015】
またSi,Cr,Mo,Mn/Siのいずれかが本発明の請求範囲を満たさない場合は、HV230〜320の間でも接合性に問題がある。従って、十分な接合性を確保するためにはSiは0.2%以下、Crは0.45%以下、Moは0.85%以下、またMn/Siは5.5以下、さらにHV320以下であることが必要である。
【0016】
【表2】
Figure 0003649872
【0017】
以上の知見に基づき、本発明者は、鋼のSi,Cr,Mo及びMn/Si量と、熱間圧延における圧延仕上温度及び圧延後の冷却速度を一定範囲内に制御して、レール頭部の金属組織をベイナイトとし、且つレール頭頂部及び頭部コーナー部のビッカース硬度を一定範囲内に制御するようにして、溶接時の十分な接合性を確保しかつ優れた耐転動疲労損傷性を有するベイナイト鋼レール及びその製造方法を見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本発明は、鋼組成、金属組織(ミクロ組織)、硬度及び製造条件を下記範囲に限定することにより、フラッシュバット溶接、ガス圧接といったレール溶接時の接合性を従来のパーライト型レール鋼と同等とした上で優れた耐転動疲労損傷性を有するベイナイト鋼レールを提供することができる。
【0019】
以下に本発明の成分添加理由、成分限定理由、金属組織の限定理由、硬度の限定理由及び製造条件の限定理由について説明する。
(1)成分組成範囲
C:0.15〜0.4%
Cは強度を確保するための必須元素であり、0.15%未満ではレール鋼としての硬さを安価に確保することが難しい。また0.4%を超えるとレール頭部に脆いマルテンサイトが生成しやすくなる。従って、その含有量は0.15〜0.4%である。
【0020】
Si:0.1〜0.2%
Siは脱酸剤として有効なだけでなく、固溶して強度を上昇させる元素であるが、0.1%未満ではその効果が認められない。一方、Siの有する高い酸素との結合力のため、添加量が0.2%を超えるとフラッシュバット溶接時、ガス圧接時に接合面に緻密な酸化物が生じ、新生面の接合を阻害することにより接合性を劣化させる。従って、その含有量は0.1〜0.2%である。
【0021】
Mn:0.15〜1.1%
Mnはベイナイト変態温度を低下させ焼入れ性を高めることにより、レールの高強度化に寄与する元素である。しかし、0.15%未満ではその効果が小さく、1.1%を超えると鋼のミクロ偏析によるマルテンサイト組織を生じ易く、熱処理時及び溶接時に硬化や脆化を生じ材質劣化をきたすので好ましくない。従って、その含有量は0.15〜1.1%である。
P:0.035%以下
Pは靭性を劣化することから、0.035%以下である。
【0022】
S:0.035%以下
Sは主に介在物の形態で鋼中に存在するが、0.035%を超えるとこの介在物量が著しく増加し、脆化による材質の劣化を引き起こすので、その含有量の上限は0.035%である。
【0023】
Cr:0.05〜0.45%
Crはベイナイト変態を促進する元素であり、本発明鋼のようにミクロ組織をベイナイト組織とするために重要な元素である。0.05%未満では変態促進効果が少なく、ミクロ組織が均一なベイナイト組織とならない。一方、0.45%を超えるとマルテンサイトが生成しやすくなるだけでなく、Crの有する高い酸素との結合力のため接合面に緻密な酸化皮膜を生成して新生面による接合を阻害する要因となる。従って、その含有量は0.05〜0.45%である。
Mo:0.05〜0.85%
Moはベイナイト変態を促進する元素であり、本発明鋼のようにミクロ組織をベイナイト組織とするために重要な元素である。0.05%未満では変態促進効果が低く、ミクロ組織が均一なベイナイト組織とならない。一方、0.85%を超えるとマルテンサイトが生成しやすくなるだけでなく、高温での変形抵抗を上昇させ、アプセット時の接合面における新生面の生成を阻害する要因となる。従って、その含有量は0.05〜0.85%である。
【0024】
Nb:0.005〜0.15%
Nbはベイナイト変態を促進するだけでなく、鋼中のCと結び付いて圧延後に析出することから、レール頭部の内部まで析出強化により硬度を高くし耐摩耗性を向上させ、レールの寿命を延ばすために有効である。ただし、この効果はNbで0.005%未満の添加では有効ではなく、また0.15%を超えて添加してもその効果は飽和してしまう。従って、その含有量は0.005〜0.15%である。
【0025】
Mn/Si≦5.5
Mn,Siはフラッシュバット溶接、ガス圧接時に接合面にFeと共に複合酸化物を形成して接合性を低下させるが、特にMn/Siが5.5を超えると複合酸化物の粘性、融点が高くなり、接合面からの除去が難しく、接合性が低下する。従って、接合性の観点からMn/Si≦5.5である。
【0026】
本発明では上記の添加元素のほかに、鋼材の強度、耐摩耗性を高めるためにNi、Vを含有してもよいが、以下にその成分の限定理由を述べる。
Ni:0.1〜1%
Niは、ベイナイト変態を促進し、高強度化するのに有効な元素であるが、0.1%未満ではその効果が認められず、一方、1%を超えた添加ではその効果が飽和してしまう。従って、その含有量は0.1〜1%である。
【0027】
V:0.01〜0.2%
Vは、Nbと同様に鋼中のCと結び付いて圧延後に析出することから、レール頭部の内部まで析出強化により硬度を高くし耐摩耗性を向上させ、レールの寿命を延ばすために有効である。ただし、この効果は0.01%未満の添加では有効ではなく、また0.2%を超えて添加してもその効果は飽和してしまう。従って、その含有量は0.01〜0.2%である。
【0028】
(2)金属組織
レール頭部がベイナイト組織である。
ベイナイト組織は従来レールのパーライト組織と比較して同一引張強度レベルで比較した場合、疲労強度が高く、転動疲労寿命を伸ばすことに有効であること、また図2に示すように摩耗量が多く疲労層の除去に有効であることから、金属組織をベイナイト組織とした。
【0029】
(3)硬度(耐摩耗性)
図1に示すレール頭部の頭頂部1、頭部コーナー部2いずれの位置においてもビッカース硬さがHV230〜320である。
【0030】
摩耗量については実敷設における摩耗量で評価することが最も望ましいが、西原式摩耗試験機を用いて実際の接触条件をシミュレートした比較試験により評価する方法も有効である。この試験法を用いれば短時間で耐摩耗性(硬度と摩耗減量比の関係)を評価することができる。
【0031】
図8に摩耗減量比に及ぼす硬度(HV)の影響を調査した結果を示す。供試鋼は表3に成分範囲を示すように、合金元素の添加量を種々変化させた成分で、1250℃に加熱し、本発明の圧延、冷却条件を満足する920℃で圧延を終了後、空冷した鋼から外径30mm、幅8mmの西原式摩耗試験片を採取し、接触荷重130kg、すべり率−10%、潤滑剤無しの条件で摩耗試験を行い、50万回転後の摩耗減量を測定した。評価においては、JISに規格化されているパーライト型普通レールの摩耗減量を測定し、パーライト型普通レールに対する供試鋼の摩耗減量比を求めた。パーライト型普通レールの硬度はHV280程度である。
【0032】
【表3】
Figure 0003649872
【0033】
図8から理解できるように、同一硬度においてはパーライト組織よりもベイナイト組織のほうが摩耗減量比が大きく、約2倍の値を示す。実敷設における頭部の摩耗による疲労層除去を考慮した場合、摩耗減量比は1.3倍以上が必要である。ベイナイト鋼において硬さの上昇に伴い摩耗減量比は低下するが、HV320までならば摩耗減量比は1.3倍以上の値を示すため、硬さの上限をHV320に限定した。また、HV230未満では摩耗減量比が3倍を超え、累積通tonに基づくレール交換寿命に比べて摩耗による交換寿命が著しく短くなり実用上問題が生じる。従って硬さの下限値はHV230に限定した。
【0034】
頭頂部、頭部コーナー部について、硬さを意図的に変えて車輪との接触状況をコントロールしようとする試みが行われているが、実路線においては車輪とレールの接触は状況によって常に変化しており、頭部の硬さを変化させて接触状況をコントロールしてレール寿命を伸ばすことは実質的に難しい。従って、頭頂部、頭部コーナー部いずれの位置においても均一な硬さ分布でその値をHV230〜320とした。なお、この均一な硬さ分布は、頭頂部及び頭部コーナー部のいずれも同じ条件の熱処理(本発明の冷却条件)を施すことにより得られる。
上記の成分組成範囲、金属組織及び硬度に調整することにより、フラッシュバット溶接、ガス圧接といったレール溶接時の接合性を従来のパーライト型レール鋼と同等とした上で優れた耐転動疲労損傷性を有するレール得ることが可能となる。
【0035】
このような特性を有するレールは、以下の製造方法により製造することができる。
(4)レール製造工程
(製造方法)
上記した成分組成を有する鋼を、圧延仕上温度が800〜1000℃となるように熱間圧延し、次いでベイナイト変態開始点以上の温度から、空冷〜5℃/秒の冷却速度で300℃以下まで冷却する。
【0036】
a.圧延仕上温度:800〜1000℃
圧延仕上温度が800℃未満以下ではフェライト変態が開始してしまい、強度が低下する。また、圧延仕上温度を1000℃超えにすると、熱間圧延後のベイナイト組織が著しく粗大化して靭性の確保が困難になる。従って、圧延仕上温度は800〜1000℃である。
【0037】
b.冷却速度:空冷〜5℃/秒
空冷でもベイナイト組織が得られ所望の強度、靭性が確保できる。しかし、5℃/秒を超えるとマルテンサイトが生成し靭性が著しく低下する。従って、冷却速度は空冷〜5℃/秒である。
【0038】
以下に本発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
なお、本文、図、表中で、HVはビッカース硬さ、RAは接合性評価としてフラッシュバット溶接及びガス圧接後の接合面の引張試験における絞り値を表している。
【0039】
【実施例】
(実施例1)
表4に示す成分を有する供試鋼(本発明鋼:No.2〜4、比較鋼:No.1,5,6)を1250℃に加熱し、920℃で圧延を終了後、放冷した板厚12mmの鋼板を使用し、硬さ測定、摩耗試験、接合性評価試験を行った。摩耗試験については、外径30mm,幅8mmの試験片を圧延鋼板より採取し、鉄道車輪材から同一寸法のタイヤ試験片を採取して、これらを西原式摩耗試験機を用いて、すべり率−10%、接触荷重130kg、潤滑剤無しの条件で試験を行い、50万回転後の摩耗減量を測定した。なお、比較として行ったHV275のパーライト組織のレール鋼の摩耗減量との比をとることで摩耗減量比を求めている。硬さ、摩耗減量比、接合性を表5に示す。
【0040】
表5に示すように、本発明よりもC量が低い比較鋼No.1については、硬度がHV221と本発明の下限値未満であり、摩耗減量比も3.21と高く実用に適さない。また、本発明よりもC量が高い比較鋼No.5,6についてはミクロ組織がパーライト組織を呈しており、摩耗特性は優れているものの耐フレーキング損傷性に劣る。
【0041】
これに対し、成分が本発明の範囲を満たす本発明鋼No.2,3,4は硬度、摩耗減量比のいずれも本発明範囲内の値(硬度:HV230〜320、摩耗減量比:1.3〜3)を示している。接合性に関してはMn/Siはいずれも5.5未満であり、またHVも320以下であることから十分な値を示している。
【0042】
【表4】
Figure 0003649872
【0043】
【表5】
Figure 0003649872
【0044】
(実施例2)
表6に示す成分を有する供試鋼(本発明鋼:No.2〜6,9,10,13、比較鋼:No.1,7,8,11,12,14)について実施例1と同様に硬さ測定、摩耗試験、接合性評価試験を行った。硬さ、摩耗減量比、接合性を表7に示す。
【0045】
表7に示すように、供試鋼は全てベイナイト組織を呈している。Mn,Cr,Moの含有量が本発明の範囲よりも低い比較鋼No.1,8,12は接合性は高い値を示すものの硬度が低く、摩耗減量比がそれぞれ3.15、3.45、3.22と高い値を示す。
【0046】
それに対し、Mn、Cr、Moの含有量が本発明の範囲を満たす本発明鋼No.2〜6,9,10,13は硬さ、摩耗減量比、接合性のいずれも優れた値を示している。しかし、Mn、Cr、Moの含有量が本発明の範囲よりも高い比較鋼No.7,11,14では摩耗減量比が1.3以下となっている。また接合性も5%以下に低下している。
【0047】
【表6】
Figure 0003649872
【0048】
【表7】
Figure 0003649872
【0049】
(実施例3)
表8に示す成分を有する供試鋼(本発明鋼:No.1,3,4,7,10、比較鋼:No.2,5,6,8,9,11)について実施例1と同様に硬さ測定、摩耗試験、接合性評価試験を行った。硬さ、摩耗減量比、接合性を表9に示す。
【0050】
表9に示すように、供試鋼は全てベイナイト組織を呈している。本発明鋼No.1はNi,Vを添加していないが、本発明範囲内の成分であり、硬さ、摩耗減量比、接合性のいずれも本発明範囲内の値を示している。Ni,Vの含有量が本発明の範囲よりも低い比較鋼No.2,6,8はNi,Vを添加していない本発明鋼No.1に比べ硬さ、摩耗減量比、接合性のいずれもほとんど変化がなく、Ni,V添加の効果が現れていない。Niの添加量が本発明の範囲を満たしている本発明鋼No.3,4,7は硬さ、摩耗減量比、接合性のいずれも本発明範囲内の値を示しており、かつ本発明鋼No.1より優れた値を示している。Niの添加量が本発明範囲を超える比較鋼No.5,9は硬さ、摩耗減量比、接合性が本発明鋼No.4,7と同等であり、Ni添加の効果が飽和している。Vの添加量が本発明範囲を満たしている本発明鋼No.10は硬さ、摩耗減量比、接合性のいずれも本発明範囲内の値を示しており、かつ本発明鋼No.1より優れた値を示しているが、Vの添加量が本発明の範囲を超える比較鋼No.11は硬さ、摩耗減量比、接合性が本発明鋼No.10と同等であり、V添加の効果が飽和している。
【0051】
【表8】
Figure 0003649872
【0052】
【表9】
Figure 0003649872
【0053】
(実施例4)
表10に示す成分を有する供試鋼(本発明鋼:No.2,3,5,6、比較鋼:No.1,4,7,8)について実施例1と同様に硬さ測定、摩耗試験、接合性評価試験を行った。硬さ、摩耗減量比、接合性を表11に示す。
【0054】
表11に示すように、供試鋼は全てベイナイト組織を呈している。Si,Cr,Moの添加量がそれぞれ本発明の範囲を満たしており、かつMn/Siが5.5以下である本発明鋼No.2,3,5,6は硬さ、摩耗減量比、接合性のいずれも優れた値を示している。
【0055】
しかしSi,Cr,Moの添加量が単独で本発明範囲を満たす場合でもMn/Siが5.5を超える比較鋼No.1,4は接合性が劣っている。一方、Mn/Siが5.5以下を満足している場合においてもSiの単独の添加量が本発明範囲を超えている比較鋼No.7,8は、やはり接合性が劣っている。
【0056】
【表10】
Figure 0003649872
【0057】
【表11】
Figure 0003649872
【0058】
(実施例5)
表12に本発明の成分条件を満たす本発明鋼No.1,2を示す。表13に、この2鋼種について圧延仕上温度を760〜1030℃まで変化させ実際にレール形状に圧延し、その後冷却速度を空冷〜6.5℃/秒まで変化させ製造したレールの硬さ、摩耗減量比、接合性を示す(本発明例:No.2〜6,8〜10,12、比較例:No.1,7,11,13)。
【0059】
摩耗減量比は圧延材頭部から実施例1に示した摩耗試験用サンプルを採取し、実施例1と同様の試験法により評価している。
比較例No.1は冷却速度は本発明の条件を満足しているが、圧延仕上温度を満足していないために、接合性は良好なものの、HV220、摩耗減量比3.11と摩耗特性が劣っている。本発明例No.2〜6,8〜10,12は共に圧延仕上温度、冷却速度を満足しているため、HV230〜320、摩耗減量比1.3〜3と良好な値を示し、また接合性も優れている。
【0060】
比較例No.7,11は圧延仕上温度は条件を満足しているものの冷却速度が早すぎるためにHVが320超えの値となり、摩耗特性、接合性が劣化している。また比較例No.13は圧延仕上温度が高く、組織が粗いために焼入れ性が高くなり、HVが320を超えている。
【0061】
【表12】
Figure 0003649872
【0062】
【表13】
Figure 0003649872
【0063】
【発明の効果】
以上に示したように、本発明によれば鋼組成を特定することにより、溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るレール頭部表面位置の呼称を示す横断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る鋼材の引張強度と摩耗量の関係を示す図。
【図3】本発明の実施の形態に係る鋼材のSi添加量と接合性との関係を示す図。
【図4】本発明の実施の形態に係る鋼材のCr添加量と接合性との関係を示す図。
【図5】本発明の実施の形態に係る鋼材のMo添加量と接合性との関係を示す図。
【図6】本発明の実施の形態に係る鋼材のMn/Si量と接合性との関係を示す図。
【図7】本発明の実施の形態に係る鋼材の硬度と接合性との関係を示す図。
【図8】本発明の実施の形態に係る鋼材の硬度と摩耗減量比との関係を示す図。
【符号の説明】
1…頭頂部、2…頭部コーナー部。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.4%と、Si:0.1〜0.2%と、Mn:0.15〜1.1%と、P:0.035%以下と、S:0.035%以下と、Cr:0.05〜0.45%と、Nb:0.005〜0.15%と、Mo:0.05〜0.85%とを含有し、Mn%/Si%≦5.5を満たし、残部が実質的にFe及び不可避的不純物からなるレール鋼であって、
    レール頭部がベイナイト組織であり、レール頭頂部及び頭部コーナー部のいずれの位置においても均一な硬さ分布で、ビッカース硬度がHV230〜320であることを特徴とする、溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レール。
  2. 鋼成分として、質量%でさらに、Ni:0.1〜1%を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レール。
  3. 鋼成分として、質量%でさらに、V:0.01〜0.2%を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の溶接部の接合性に優れたベイナイト鋼レール。
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