JPH08155673A - 高性能570MPa鋼のサブマージアーク溶接用ワイヤ、ボンドフラックスおよび溶接方法 - Google Patents

高性能570MPa鋼のサブマージアーク溶接用ワイヤ、ボンドフラックスおよび溶接方法

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JPH08155673A
JPH08155673A JP33048194A JP33048194A JPH08155673A JP H08155673 A JPH08155673 A JP H08155673A JP 33048194 A JP33048194 A JP 33048194A JP 33048194 A JP33048194 A JP 33048194A JP H08155673 A JPH08155673 A JP H08155673A
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welding
steel
flux
toughness
wire
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JP33048194A
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Ryuichi Motomatsu
隆一 元松
Shigeo Oyama
繁男 大山
Naoaki Matsutani
直明 松谷
Mikio Nanbu
幹夫 南部
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 いわゆる高性能570MPa鋼を建築用ボッ
クス柱などで、溶接入熱10〜50kJ/mmで1層ま
たは多層のサブマージアーク溶接した場合に、溶接作業
性、溶接金属の靱性および耐低温割れ性を改善する。 【構成】 Vを0.05〜0.25%含有し、炭素当量
0.25〜0.45%であるほか、C、Si、Mnなど
の各成分を規制したワイヤと、Vを0.10〜0.70
%含有するほか、SiO2 、Al23 、MgOなどの
各成分を規制したボンドフラックスを組み合わせて溶接
することを特徴とする高性能570MPa鋼のサブマー
ジアーク溶接方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高性能570MPa鋼
のサブマージアーク溶接に関する。すなわち高性能57
0MPa鋼とは建築用に用いられるJIS規格SM57
0Q鋼と同等の強度を持ち、溶接入熱が50kJ/mm
以下で適用できる鋼材であり、通常SM570Q−MO
DIFIEDなどと表記される高張力鋼を総称したもの
である。本発明の主な適用分野としては建築用ボックス
柱の角継手部のサブマージアーク溶接であり、さらに詳
しくはボックス柱に用いる高性能570MPa鋼を溶接
入熱10〜50kJ/mmで1層または多層溶接した場
合、溶接作業性、溶接金属の靱性および耐低温割れ性を
改善するサブマージアーク溶接用ワイヤ、ボンドフラッ
クスおよび施工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、建築用ボックス柱の鋼材として
は、JIS Z3106に規定されたSM490鋼やS
M520鋼が一般的に用いられている。また、やや大型
のビルディングの場合は鋼材の重量低減のため高強度鋼
材としてSM570Q鋼が一部用いられてきた。このS
M570Q鋼の溶接においては鋼材のHAZ部の靱性低
下防止や遅れ割れ防止等の観点から、溶接入熱は7.5
kJ/mm以下程度で用いられ、厚板の場合著しく溶接
能率が低下していた。
【0003】従来の570MPa鋼等は高強度を得るた
めにCeqを高く設計するが、これら高張力鋼などの溶
接においては、低温割れが発生することが知られてい
る。低温割れの発生要因としては、溶接部の硬化、拡散
性水素量、溶接部材の拘束度などがあるが、特に溶接金
属中の拡散性水素量の影響が大きいことが知られてい
る。この低温割れを防止する手段としていくつかの方法
が見いだされているが、この中で、従来から最も一般的
に用いられ、かつその防止に最も効果がある方法は、母
材を予熱し、パス間温度を高くしかつ後熱をする方法で
ある。この方法は、溶接部の冷却速度を緩やかにして、
溶接部に硬い組織が生成するのを軽減する効果と溶接部
の拡散性水素の放出を促進させる効果および残留応力の
発生を緩和する効果がある。これらの効果を得るための
予熱・パス温度は建築用570MPa鋼では一般には5
0℃程度以上が採用されている。
【0004】また、SM570Q鋼の溶接ではHAZ部
の靱性劣化防止のため溶接入熱を制限する必要があり、
通常溶融型フラックスを使用し、溶接入熱は7.5kJ
/mm以下程度で用いられており、著しく溶接能率が低
下していた。このような570MPa鋼においても、従
前よりも低いCeqとなるように成分を調整し、かつ適
正な圧延・熱処理で、従来鋼より予熱・パス間温度が低
減できHAZ部の劣化の少ない、いわゆるTMCP鋼が
適用されてきている。
【0005】このようなTMCP技術等の発達に伴い比
較的低CeqでHAZ部の性能が確保できる高性能57
0MPa鋼が開発され、それに対応する溶接材料および
施工法の開発が急務となった。すなわち、これら鋼板に
組み合わせる点から予熱温度を低減でき、かつ大入熱1
層あるいは多層溶接においても溶接作業性、溶接金属の
靱性および耐低温割れ性が優れた溶接材料の開発が要望
されている。
【0006】高張力鋼のサブマージアーク溶接において
は、水素に起因する低温割れを防止するために溶接金属
中の拡散性水素量を極力低減することを目的に、金属炭
酸塩を多量に含有したボンドフラックスが一般的に適用
されている。例えば、特開平5−212583号や特願
平5−293794号に提案されている。
【0007】また、特定の元素を添加することによって
予熱、パス間温度を低減する技術思想としては、例えば
VやNbを利用する方法がある。VやNbを利用する技
術思想は、溶接金属中に析出物が形成されることにより
拡散性水素をトラップする効果を利用するものであり、
この効果により割れに関与する拡散性水素量を減少でき
る効果を期待するものである。特にVに関してはその効
果は既に研究例が報告されている。例えば、酒井等
(「鉄と鋼」、Vol.72(1986)、No.9、
p.1375)は、V含有量を変化させた鋼材の水素放
出速度を測定し、Vが多い鋼材ほど水素のトラップ効果
が大きいことを報告している。
【0008】また、ボックス柱角溶接のサブマージアー
ク溶接としては、例えば特開平1−241380号には
溶接条件ファクターを逐一規定し、特定組成のフラック
スを用いて良好な溶接性が得られることが提案されてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平5−2
12583号で提案された780MPa鋼用サブマージ
アーク溶接方法および特願平5−293794号に提案
した960MPa鋼用サブマージアーク溶接方法はいず
れも予熱・パス間温度を低減するとの観点はなく、一般
的な技術思想の範囲内である。
【0010】さらに、特開平1−241380号に提案
された角継手部の潜弧溶接方法は490MPa鋼あるい
は520MPa鋼を対象にし、特に大入熱における溶接
性の改善を目的としたものであり、570MPa鋼を対
象にしたものではないため、予熱・パス間温度の低減や
靱性の向上の面からは検討されていないため、このまま
高性能570MPa鋼の溶接に用いることはできない。
【0011】本発明は、高性能570MPa鋼の大入熱
サブマージアーク溶接において、溶接作業性が良好で高
靱性が得られ、予熱・パス間温度を低減でき、耐低温割
れ性が優れた、高性能570MPa鋼用サブマージアー
ク溶接用ワイヤ、フラックスおよび溶接方法を提供する
ことを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
と達成するため、種々検討しV添加で予熱・パス間温度
の低減が可能であり、かつ良好な溶接作業性と靱性が得
られるワイヤ、フラックスおよび溶接方法を見いだした
のである。すなわち、本発明の要旨とするところは、全
ワイヤに対し重量%(以下同じ)で、C:0.01〜
0.15%、Si:0.01〜0.15%、Mn:1.
0〜2.4%、Mo:0.05〜0.45%、V:0.
05〜0.25%を含有し、N:0.0070%以下に
規制し、残部はFeおよび不可避的不純物であり、下式
で示す炭素当量Ceqが0.25〜0.45%であるこ
とを特徴とする高性能570MPa鋼のサブマージアー
ク溶接用ワイヤにある。 Ceq=C+0.09Si+0.08Mn+0.06N
i+0.11Cr+0.14Mo+0.22V
(ただし、各成分は重量%)
【0013】また全フラックスに対し重量%で、SiO
2 :15〜25%、Al23 :20〜30%、Ca
O:2〜15%、MgO:8〜18%、TiO2 :5〜
13%、ZrO2 :1〜7%、鉄粉:5〜20%、Li
炭酸塩またはLi弗化物をLiに換算して0.05〜
1.0%、Vの酸化物または合金をVに換算して0.1
0〜0.70%、Si:0.5〜1.5%、Al:0.
3〜1.5%を含有し、0.7Si+Al:0.8〜
2.3%であることを特徴とする高性能570MPa鋼
のサブマージアーク溶接用ボンドフラックスにある。
【0014】また前記各ワイヤとフラックスを用いて高
性能570MPa鋼を溶接入熱10〜50kJ/mmで
1層または多層サブマージアーク溶接する高性能570
MPa鋼の溶接方法にある。
【0015】
【作用】以下に本発明を作用とともに詳細に説明する。
本発明者らは、まず高性能570MPa鋼のサブマージ
アーク溶接金属において溶接後の低温割れを防止するた
めの予熱・パス間温度の低減を検討した。その結果、溶
接金属中においてVを0.05〜0.25%程度含有さ
せることにより、従来の溶接材料を用いた溶接金属より
も上記目的の予熱・パス間温度を低減できることを知見
した。
【0016】すなわち、Vを溶接金属中に添加すること
により溶接金属中に析出物が形成され、それが拡散性水
素をトラップする。これにより割れに関与する拡散性水
素量を減少でき、予熱・パス間温度を低減できるもので
ある。なお、先に述べた「鉄と鋼」、Vol.72(1
986)、No.9に記載されているトラップ効果は、
Vが0.25%以上の場合において初めて効果があり、
0.1%添加では無添加とほとんど差がなく、本発明と
有効範囲が一致しない。この点に関しこの文献では成分
系がC:0.14〜0.15%、Cr:2.0〜3.0
%、Mo:0.9〜1.0%と本発明とは本質的に異な
る成分系の鋼材で確認された効果であり、この水素トラ
ップ効果を予熱・パス間温度を低減する手段として57
0MPa鋼用のワイヤおよびフラックスに利用できるか
否かは明らかにされていない。
【0017】以下にワイヤについて成分特定理由を説明
する。ワイヤは570MPa鋼用の強度を満足させかつ
良好な靱性を得るための成分設計が必要である。まず、
Cは0.01〜0.15%とする必要がある。すなわ
ち、Cは脱酸元素として極めて重要であり、適当量の添
加により溶接金属中の酸素量を低減し、靱性を向上させ
るが0.01%未満ではその効果がなくまた強度も不足
する。しかし、0.15%を超えると強度が過大となり
靱性が劣化し、また溶接金属の凝固時に粒界に偏析しや
すく高温割れを生じる傾向となる。
【0018】Siは0.01〜0.15%に限定する必
要がある。すなわち、Siは脱酸元素として重要であ
り、適当量の添加により溶接金属中の酸素量を低減し、
靱性を向上させるが0.01%未満ではその効果がな
い。しかし、0.15%を超えると強度が過大となり、
溶接金属の靱性が劣化する。
【0019】Mnは1.0〜2.4%に限定する必要が
ある。Mnは靱性を得るためには必須成分であるが、過
多になると強度が過大となりかえって靱性が劣化する。
すなわち、1.0%未満では靱性が満足せず、一方、
2.4%を超えると強度が過大となりかえって靱性が劣
化する。
【0020】Moは0.05〜0.45%に限定する必
要がある。Moは適正強度と良好な靱性を得るためには
必須成分であるが、過多になると強度が過大となりかつ
靱性が劣化する。すなわち、0.05%未満では強度、
靱性とも満足せず、一方、0.45%を超えると強度が
過大となりかえって靱性が劣化する。
【0021】Nは0.0070%以下にすることが必要
である。Nは靱性を劣化させるのでできるだけ低いこと
が望ましいが0.0070%以下であれば実質上問題な
い。
【0022】以上の要件の他に570MPa鋼用として
適正な強度に設計するためには、さらに先に各成分元素
による式で示したワイヤのCeqを適正に規定する必要
がある。すなわち、570MPa鋼用として適正な強度
を得るためにはCeqを0.25〜0.45%とするこ
とが必要である。Ceqが0.25%未満では強度が不
足し、一方、0.45%を超えると強度が過大となる。
【0023】さらに本発明ワイヤにおいてはVを0.0
5〜0.25%含有させることが必要である。前述のご
とく本発明は570MPa鋼のサブマージアーク溶接金
属において溶接後の低温割れを防止するための予熱・パ
ス間温度の低減を目的としたものであり、このためにワ
イヤ中にVを添加するものであり、その効果は0.05
〜0.25%で得られる。Vが0.05%未満、あるい
は0.25%超ではその効果が得られない。
【0024】また、本発明ワイヤには以上規定した成分
以外としては、Niを1%以下、Crを0.5%以下、
Tiを0.05%以下、Alを0.040%以下、Cu
をめっきも含め0.70%以下、Nbを0.030%以
下、Pを0.020%以下、Sを0.015%以下を許
容できる。その他残部はFeおよび不可避的不純物であ
る。
【0025】次に、本発明フラックスについて詳述す
る。本発明フラックスは金属粉を含有するためボンドフ
ラックスに限定する。まず、SiO2 は15〜25%で
あることが必要である。SiO2 はスラグの粘性を増加
させ、止端部のなじみがよい溶接ビードを形成するのに
極めて有効な成分である。このようなSiO2 の効果は
15%以上の添加で得ることができるが、一方25%を
超えて添加すると、スラグの融点が低下し溶接ビードの
表面が乱れ、さらに溶接金属中の酸素量を増加させ、溶
接金属の靱性が劣化する。
【0026】Al23 は20〜30%にすることが必
要である。Al23 はスラグの流動性を高め止端のな
じみがよいビードの形成に有効であり、またスラグ剥離
性も改善する。このようなAl23 の効果は20%以
上で得られるが、一方30%を超えて添加するとビード
幅が狭くなり、止端部のなじみが悪くなり、また凸ビー
ドとなる。
【0027】CaOは2〜15%にすることが必要であ
る。CaOは高塩基性成分であり溶接金属中の酸素量を
低減し靱性を向上させるものである。このような効果は
2%以上の添加で得ることができる。一方、18%を超
えて添加すると、ビードが不揃いとなり外観不良とな
る。なお後にも述べるように本発明はフラックス中にC
2 を含んでもよいので、CaO(分子量56)の全部
または一部を分子当量のCaCO3 (分子量100)に
してもよい。
【0028】MgOは8〜18%にすることが必要であ
る。MgOは融点が高くスラグの耐火性を向上させ平滑
で、ビード幅の広いなじみの良いビードを形成するのに
極めて有効な成分である。また、塩基性成分であり靱性
の確保にも効果がある。このようなMgOの効果は8%
以上で得られるが18%を超えて添加するとスラグ量が
増加しかつビード止端の立ち上がり角度が急になりビー
ドの形状が劣化する。
【0029】TiO2 は5〜13%であることが必要で
ある。TiO2 はビード表面の平滑性およびビード止端
部の揃いを改善するのに有効である。このようなTiO
2 の効果は5%以上の添加で得ることができるが、一方
13%を超えて添加すると、かえってビード表面にスラ
グの焼き付きが生じる。
【0030】ZrO2 は1〜7%であることが必要であ
る。ZrO2 は融点が高くスラグの耐火性を向上させ、
ビード幅の広いなじみの良いビードを形成するのに極め
て有効な成分である。このようなZrO2 の効果は1%
以上の添加で得ることができるが、一方7%を超えて添
加するとスラグ量が増加しかつビード止端部に焼き付き
が生じるようになる。
【0031】鉄粉は5〜20%にすることが必要であ
る。鉄粉は溶着速度を増加させ、実質の溶接入熱を低下
させることができる。鉄粉が5%未満ではこの効果が少
なく、一方20%を超えるとビード止端部に粒状の突起
が発生する。
【0032】さらに、本発明フラックスはLi炭酸塩ま
たはLi弗化物をLiに換算して0.05〜1.0%含
有することが必要である。Liを添加することにより、
原料中の−OH基と結合し、水分との反応を抑え吸湿を
少なくし、溶接金属中の拡散性水素量をさらに低減す
る。このような効果はLi炭酸塩またはLi弗化物をL
iに換算して0.05%以上で得ることができるが、
1.0%を超えるとフラックスの粒子強度が小さくなり
フラックスが溶接中に粉化してポックマークが発生す
る。
【0033】また、本発明フラックスはSiが0.5〜
1.5%であることが必要である。Siはビードのなじ
みやビード表面の平滑性を良好にし作業性の改善に効果
があるが本発明のごとく塩基度の低いフラックスにおい
ては、かえって靱性を低下させるものである。すなわ
ち、ビードを良好に保つには0.5%以上の添加が必要
であり、添加量をさらに増加すればビードは改善される
が1.5%超の添加では溶接金属中のSi量が過多にな
り、靱性が大きく低下する。
【0034】さらに本発明フラックスはAlを0.3〜
1.5%含有することが必要である。このような効果は
0.3%以上で得られるが、一方1.5%を超えて添加
すると溶接金属中にAl酸化物が生成しかえって靱性が
劣化する。
【0035】さらに本発明フラックスは0.7Si+A
lが0.8〜2.3%であることが必要である。脱酸能
力を適正に保つために適正範囲に規制するものであり、
0.8%未満では脱酸不足で靱性が劣化し、一方2.3
%超ではSiの歩留が過多およびAl酸化物の増加によ
り靱性が劣化する。
【0036】なお、脱酸剤のフラックス中への添加形態
は、Siは金属Si、Fe−Si、Ca−Si、Alは
金属Al、Fe−Al、Al−Mgなどの金属粉であ
り、粒度は0.15mm以下が好ましい。
【0037】さらに本発明フラックスにおいてはVの酸
化物および合金をVに換算して0.10〜0.70%含
有させることが必要である。前述のごとく本発明は57
0MPa鋼のサブマージアーク溶接金属において溶接後
の低温割れを防止するための予熱・パス間温度の低減を
目的としたものであり、このためにフラックス中にVを
添加するものでありその効果は0.10〜0.70%で
得られる。Vが0.10%未満、あるいは0.70%超
ではその効果が得られない。
【0038】以上のほかに、フラックスの成分としては
23 は1%以下、CO2 はCaCO3 などとして1
0%以下、Tiは1%以下、Mnは5%以下で適宜添加
できる。このほかに、フラックス中の不可避成分として
は水ガラスなどから含有されるNa2 O、K2 Oがあ
り、また、原料の不純物として含有されるMnO、Fe
O等があるがNa2 O、K2 Oはそれぞれ3%以下、M
nO、FeO等は1%以下が望ましい。
【0039】また、本発明に用いるフラックスはボンド
フラックスであることが必要であるが、これは本発明に
用いるフラックス中には金属炭酸塩あるいは鉄粉、S
i、Al、Al−Mgなどの金属粉を添加することか
ら、製造中に高温焼成をするシンターフラックスあるい
は溶解をする溶融フラックスではこれらの成分の分解あ
るいは酸化消耗が起こり、品質の確保が困難であるため
である。この点から550℃程度以下で焼成されるボン
ドフラックスであることが必要である。
【0040】また、本発明の溶接方法は上述のワイヤお
よびフラックスを用いて570MPa鋼を溶接入熱10
〜50kJ/mmで1層あるいは多層溶接するサブマー
ジアーク溶接方法であり、この溶接入熱範囲で最も良好
な結果を示すものである。
【0041】
【実施例】以下実施例により、本発明の効果をさらに具
体的に示す。 (実施例1)鋼ワイヤとして表1に示すW1〜W12の
12種類の組成のワイヤを作製した。このうちW1〜W
5は本発明例のワイヤ、W6〜W12は本発明の効果を
明確にするための比較例のワイヤである。ワイヤ径はい
ずれも6.4mmである。これらのワイヤを、30%鉄
粉−20%SiO2 −15%MgO−10%TiO2
15%Al23 系の市販のボンドフラックスと組み合
わせ溶接金属の耐割れ試験を実施した。
【0042】
【表1】
【0043】鋼板は表2に示す板厚50mmのSM57
0Q−MODIFIED鋼である。また、開先形状は図
1に示すV溝である。図中のθ=20°、t1 =40m
m、t2 =10mm、G=10mmである。試験鋼板は
図2に示すように板厚70mmのSM490鋼に780
MPa鋼用溶接材料を用いて3パスの隅肉溶接で拘束し
た。この開先にL極は1500A、40V、T極は10
00A、46V、溶接速度200mm/minで予熱を
行わずに、またパス間温度も50℃以下で溶接した。
【0044】
【表2】
【0045】溶接終了から48時間以上経過した後、超
音波探傷試験により溶接部の割れの有無について調査し
た。さらに、欠陥のない試料については、板表面15m
m下の溶接部よりJIS Al号引張試験片およびJI
S4号Vノッチシャルピー試験片をそれぞれ採取して供
試した。その結果を表3に示す。
【0046】
【表3】
【0047】表3の中で記号A1〜A5は本発明の実施
例、記号A6〜A12は本発明の効果を明確にするため
の比較例である。これらの結果、本発明の実施例A1〜
A5は予熱なし、かつパス間温度も50℃以下の溶接に
おいても割れの発生もなく、引張強度、−5℃のシャル
ピー吸収エネルギー値とも良好な値を示した。
【0048】比較例のうちA6はワイヤのC過多および
Si過少で靱性が劣化した。比較例のうちA7はワイヤ
のSi過多、Mn過多およびCeq過大で引張強度が過
大となり靱性が劣化した。また、比較例のうちA8はワ
イヤのC過少およびN過多で靱性が劣化した。
【0049】比較例のうちA9はワイヤのMn過少、M
o過多で靱性が劣化した。また、Ceq過少で引張強度
が不足した。比較例のうちA10はワイヤのMo過少で
靱性が劣化した。比較例のうちA11はワイヤのV過多
で予熱低減の効果がなく割れが発生したので以後の試験
は中止した。また比較例のうちA12はワイヤのV過少
で予熱低減の効果がなく割れが発生したので以後の試験
は中止した。
【0050】(実施例2)次に、表4に示すF1〜F1
4の14種類の組成のフラックスを作製した。このうち
F1〜F5は本発明例のフラックス、F6〜F14は本
発明の効果を明確にするための比較例のフラックスであ
る。フラックスは、まずフラックス原料を配合、混合し
た後、水ガラスを固着剤として造粒した後、380℃で
2時間の条件で焼成し、12〜100メッシュに整粒し
て作製したボンドフラックスである。
【0051】
【表4】
【0052】これらのフラックスを表5に示す鋼ワイヤ
W−2(表1のW−2と同じ)と組み合わせ溶接金属の
耐割れ試験を実施した。鋼板は表2に示す板厚50mm
のSM570Q−MODIFIED鋼である。また、開
先形状は図1に示すV溝である。図中のθ=20°、t
1 =40mm、t2 =10mm、G=10mmである。
試験鋼板1は図2に示すように板厚70mmのSM49
0鋼2に780MPa鋼用溶接材料を用いて3パスの隅
肉溶接3で拘束した。この開先にL極は1500A、4
0V、T極は1000A、46V、溶接速度200mm
/minで予熱を行わずに、またパス間温度も50℃以
下で溶接した。
【0053】
【表5】
【0054】溶接終了から48時間以上経過した後、超
音波探傷試験により溶接部の割れの有無について調査し
た。さらに、欠陥のない試料については、板表面15m
m下の溶接部よりJIS A1号引張試験片およびJI
S4号Vノッチシャルピー試験片をそれぞれ採取して供
試した。その結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】表6の中で記号B1〜B5は本発明の実施
例、記号B6〜B14は本発明の効果を明確にするため
の比較例である。これらの結果、本発明の実施例B1〜
B5は予熱なし、かつパス間温度も50℃以下の溶接に
おいても割れの発生もなく、引張強度、−5℃のシャル
ピー吸収エネルギー値とも良好な値を示した。
【0057】比較例のうちB6はフラックスのSiO2
およびTiO2 が過少でビードの揃いがやや悪く、また
Al23 が過多で凸ビードとなった。また比較例のう
ちB7はフラックスのSiO2 過多およびAl23
過少でビード表面が不良となり、かつSiO2 が過多で
靱性が劣化した。また比較例のうちB8はフラックスの
MgO過多でビード止端の立ち上がり角度が急であり、
ZrO2 が過少でビードの揃いが不良で、かつLiが過
多のためポックマークが発生した。
【0058】比較例のうちB9はフラックスのMgO過
少でビード形状が不良となり、TiO2 およびZrO2
が過多でビード表面にスラグのこびり着きが発生した。
また比較例のうちB10はフラックスの鉄粉過少で溶着
量が少なく、かつV過多のため予熱低減効果がなく低温
割れが発生したので以後の試験を中止した。また比較例
のうちB11はフラックスの鉄粉過多でビード表面に粒
状の突起物が生成し、かつLiが過少およびV過少のた
め予熱低減効果がなく低温割れが発生したので以後の試
験を中止した。
【0059】比較例のうちB12はフラックスのSi過
多およびAl過少のため靱性が劣化した。比較例のうち
B13はフラックスのAl過多および0.7Si+Al
過多のため靱性が劣化した。また比較例のうちB14は
フラックスのSi過少および0.7Si+Al過少のた
め靱性が劣化した。
【0060】
【発明の効果】以上説明したごとく本発明を用いれば、
実施例にも示した通り570MPa鋼のサブマージアー
ク溶接方法において、予熱・パス間温度を従来の溶接材
料を用いた場合よりも低減でき、かつ溶接作業性が良好
で、溶接割れもなく、靱性も良好な溶接部が得られ、大
型構造物の溶接に貢献するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた溶接試験板の開先形状
を示す断面図
【図2】本発明の実施例で用いた溶接試験板の拘束方法
を示す斜視図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 南部 幹夫 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株式 会社技術開発本部内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 全ワイヤに対し重量%で、 C :0.01〜0.15% Si:0.01〜0.15% Mn:1.0〜2.4% Mo:0.05〜0.45% V :0.05〜0.25%を含有し、 N:0.0070%以下に規制し、残部はFeおよび不
    可避的不純物であり、下式で示す炭素当量Ceqが0.
    25〜0.45%であることを特徴とする高性能570
    MPa鋼のサブマージアーク溶接用ワイヤ。 Ceq=C+0.09Si+0.08Mn+0.06N
    i+0.11Cr+0.14Mo+0.22V
    (ただし、各成分は重量%)
  2. 【請求項2】 全フラックスに対し重量%で、 SiO2 :15〜25% Al23 :20〜30% CaO :2〜15% MgO :8〜18% TiO2 :5〜13% ZrO2 :1〜7% 鉄粉 :5〜20% Li炭酸塩またはLi弗化物をLiに換算して0.05
    〜1.0%、 Vの酸化物または合金をVに換算して0.10〜0.7
    0%、 Si:0.5〜1.5% Al:0.3〜1.5% を含有し、0.7Si+Al:0.8〜2.3%である
    ことを特徴とする高性能570MPa鋼のサブマージア
    ーク溶接用ボンドフラックス。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のワイヤと請求項2記載の
    フラックスを用いて高性能570MPa鋼を溶接入熱1
    0〜50kJ/mmで1層または多層サブマージアーク
    溶接する高性能570MPa鋼の溶接方法。
JP33048194A 1994-12-08 1994-12-08 高性能570MPa鋼のサブマージアーク溶接用ワイヤ、ボンドフラックスおよび溶接方法 Withdrawn JPH08155673A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010274304A (ja) * 2009-05-28 2010-12-09 Nippon Steel Corp 高張力鋼用フラックス入りワイヤ
JP2015155111A (ja) * 2014-01-15 2015-08-27 日鐵住金溶接工業株式会社 多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックス

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010274304A (ja) * 2009-05-28 2010-12-09 Nippon Steel Corp 高張力鋼用フラックス入りワイヤ
JP2015155111A (ja) * 2014-01-15 2015-08-27 日鐵住金溶接工業株式会社 多電極片面サブマージアーク溶接用ボンドフラックス

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