JPH08154698A - コレステロール脱水素酵素を使用するコレステロールの定量法 - Google Patents

コレステロール脱水素酵素を使用するコレステロールの定量法

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JPH08154698A
JPH08154698A JP16228392A JP16228392A JPH08154698A JP H08154698 A JPH08154698 A JP H08154698A JP 16228392 A JP16228392 A JP 16228392A JP 16228392 A JP16228392 A JP 16228392A JP H08154698 A JPH08154698 A JP H08154698A
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cholesterol
nad
cdh
dehydrogenase
alcaligenes
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JP16228392A
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Tetsunori Akiba
哲典 秋葉
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Amano Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、NAD依存性コレステロール脱水素
酵素を用いたコレステロールの定量法に関する。 【構成】微生物を好気的条件下で培養し、コレステロー
ルに対して特異性の高いNAD依存性コレステロール脱
水素酵素をその菌体もしくは培養液から製造し、それを
NAD存在下でコレステロールと反応せしめ生成するN
ADHを定量する。微生物として、好適にはノカルジア
属、アルカリゲナス属、プロテウス属等が利用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、NAD依存性コレステ
ロール脱水素酵素(Cholesterol dehydrogenase :以下
「NAD−CDH」と略す)に関する。更に詳しく説明
すると、微生物を好気的条件下で培養し、その菌体もし
くは培養液から製造したNAD−CDHを使用するコレ
ステロールの定量法に関する。
【0002】ここでいうNAD−CDHとは、補酵素と
してNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)
を要求し、電子供与体(コレステロール)から水素をう
ばい、電子受容体(NAD)に付加する反応を触媒する
酵素をいう。
【0003】
【従来の技術】従来より好気性微生物が、コレステロー
ルオキシダーゼ、コレステロールデヒドラターゼを生産
することは知られている。またノカルジア・エリスルポ
リスがコレステロールの酸化を触媒する酵素を生産する
との報告(Ann. Clin. Biochem., 10巻,79頁, 1973
年)がある。この酵素の場合は、NADへの依存性は認
められない。
【0004】また、マイコバクテリウム・コレステリカ
ム(J. Biol. Chem., 206巻,511頁, 1953年)、ブレビ
バクテリウム・ステロリカム(特公昭48-1190)について
も同様のことがいえる。
【0005】さらには、絶対嫌気性微生物である、オイ
バクテリウム sp. ATCC21408 がNAD−CDHを生産
するとの報告(特開昭53-56090)もあるが、酵素化学的
性質などの記載はほとんどなされていないばかりか、N
AD依存性に記載があるにもかかわらず、NADの存在
なしにも反応が進行する例が記載されている。したがっ
てこの酵素は、本発明でいうところのNAD依存性脱水
素酵素とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来酵素によるコレス
テロールの定量は、コレステロールオキシダーゼを使用
する方法が広く用いられているが、発色系に導くために
パーオキシダーゼ等が必要であり、操作が繁雑である。
しかも血中のビリルビン、アスコルビン酸等により影響
を受け、これにより誤差が生じやすいという欠点を有し
ている。
【0007】コレステロールの定量において、NADの
存在なしには反応が進行しないNAD−CDHを用い、
下記反応式に示される反応により生ずるNADHを直接
光度計で測定できれば、操作が簡単であり、前記のコレ
ステロールオキシダーゼを用いる方法の種々の問題も解
決される。 コレステロール+NAD→(←)コレステノン+NADH 上記反応式で「→(←)」は可逆反応であることを示
す。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記反応
に適した酵素すなわち、コレステロールに特異性が高
く、NAD依存性である脱水素酵素を広く自然界に求め
たところ、意外にも好気的条件下に生育する微生物が、
著量のNAD−CDHを生産することを見い出した。そ
の中で、特に優れた菌株として、ノカルジア sp. No.Ch
2-1(Nocardia sp. No.Ch2-1)、アルカリゲネス sp. N
o.4(Alcaligenes sp. No.4)およびプロテウス・ブルガ
リス IAM1025(Proteus vulgaris IAM1025)が例示され
る。
【0009】次にノカルジア sp. No.Ch2-1およびアル
カリゲナス sp. No.4の菌学的性質を以下に述べる。
【0010】(1) ノカルジア sp. No.Ch2-1(Nocardia
sp. No.Ch2-1)の菌学的性質 (A) 形態学的性質 1)細胞の形および大きさ:培養初期、菌糸状に生育し分
岐を生ずる。その後、不規則な分断が生じ細胞は、桿菌
状となる。大きさは0.8〜1.0μ×1.5〜4.0μ位である。
気菌糸を形成せず胞子のう胞子も形成しない。 2)グラム染色性 :陽性 3)抗酸性 :陽性 4)運動性 :無し
【0011】(B) 化学的組成分析 細胞壁中にmeso−ジアミノピメリン酸、アラビノース、
ガラクトースが含まれ、L,L-ジアミノピメリン酸、グリ
シンは含まない。
【0012】(C) 各培地における生育状態 1)肉汁寒天平板培地: 30℃で4日培養後、直径0.5
〜1.0mmの円形コロニーを形成する。周辺は全縁もしく
は、波状である。表面は平滑で半球状であり、中心部が
凸状に隆起する場合もある。色調は薄いクリーム色で不
透明である。培地中に色素は出さない。 2)シュークロース硝酸塩寒天培地:生育中程度で集落の
色は白色ないし薄クリーム色である。水溶性色素は出さ
ない。 3)グルコース・アスパラギン寒天培地:生育中程度で集
落の色は薄クリーム色である。水溶性色素は出さない。 4)グリセリン・アスパラギン寒天培地:生育中程度で集
落の色は白色ないし薄クリーム色である。水溶性色素は
出さない。 5)スターチ無機塩寒天培地:生育中程度で集落の色は白
色ないし薄クリーム色である。水溶性色素は出さない。 6)チロシン寒天培地: 生育中程度で集落の色は白色
ないし薄クリーム色である。水溶性色素は出さない。 7)栄養寒天培地: 生育良好で集落の色は薄クリ
ーム色である。水溶性色素は出さない。 8)イースト麦芽寒天培地:生育良好で集落の色は薄クリ
ーム色である。水溶性色素は出さない。 9)オートミール寒天培地:生育中程度で集落の色は白色
ないし薄クリーム色である。水溶性色素は出さない。
【0013】(D)生理的性質 1)生育温度: 15℃〜43℃で生育する。10
℃、45℃で生育しない。最適温度は30〜35℃である。 2)硝酸塩還元性: 陽性 3)カタラーゼ: 陽性 4)オキシダーゼ: 陰性 5)ウレアーゼ: 陽性 6)デンプン加水分解: 陰性 7)ゼラチン液化: 陰性 8)チロシン加水分解: 陰性 9)カセイン加水分解: 陰性 10)キサンチン加水分解: 陰性 11)DNAの分解: 陰性 12)リトマスミルク: アルカリ性、ペプトン化、
凝固共にしない。 13)メラニン様色素の生成:無し 14)エスクリン加水分解: 陽性 15)Tween 20.40.60.80加水分解:すべて陽性 16)ペニシリン耐性試験: 耐性 17)酸素の対する態度: 好気性 18)無機窒素源の利用: アンモニウム塩、硝酸塩共
に利用する。 19)NaCl生育範囲: 0〜6%で生育する。7%
で生育しない。 20)各種炭素源の同化性(プリドハム、ゴドリーブ寒天
培地):D-グルコース、D-フラクトース、マンノース、
グリセリン、トレハロースを同化する。L-アラビノー
ス、D-キシロース、サッカロース、イノシット、L-ラム
ノース、ラフィノース、D-ガラクトース、D-マンニッ
ト、マルトース、ソルビットを同化しない。 21)各種糖から酸の生成:D-グルコース、D-マンノー
ス、D-フラクトース、トレハロース、グリセリンから酸
を生成する。L-アラビノース、D-キシロース、D-ガラク
トース、マルトース、サッカロース、ラクトース、D-ソ
ルビット、D-マンニット、イノシット、デンプンから酸
を生成しない。
【0014】以上の菌学的性質をBergey's Manual of D
eterminative Bacteriology(第8版)を参考に検討し
た結果、細胞壁中にmeso-ジアミノピメリン酸、アラビ
ノース、ガラクトースを含み、L,L-ジアミノピメリン
酸、グリシンが含まれていないこと、好気性で菌糸状に
よく生育し、後に分断して桿菌状となること、抗酸性で
あること、胞子のう胞子及び気菌糸を着生しないことな
どから本菌はNocardiaに属する菌である。
【0015】よって本菌は、本発明者らがノカルジア s
p.(Nocardia sp.)No. Ch2-1と命名し、工業技術院微
生物工業技術研究所に菌寄第6217号(FERM-P No.6217)
として寄託されている。
【0016】(2) アルカリゲネス sp. No.4(Alcaligen
es sp. No.4)の菌学的性質 (A) 形態 1)細胞の形および大きさ:0.4〜0.6μ×0.8〜1.2μの桿
菌である。 2)細胞の多形成の有無: 多形成は認められない。 3)運動性の有無: 周鞭毛を有し運動する 4)グラム染色性: 陰性 5)抗酸性: 陰性
【0017】(B) 各培地における生育状態 1)肉汁寒天平板培養: 円形コロニーで表面は平滑、
半レンズ状の隆起、全縁状で薄クリーム色、半透明、光
沢あり 2)肉汁寒天斜面培養: 生育中程度、糸状に生育、薄
クリーム色で半透明 3)肉汁液体培養: 菌膜をつくらない、やや濁り
沈渣も少しある。 4)肉汁ゼラチン穿刺培養:ゼラチンは液化しない。 5)リトマスミルク培養: アルカリ性になるがペプトン
化しない、凝固しない。
【0018】(C)生理的性質 1)硝酸塩の還元性: 陽性 2)脱窒反応: 陰性 3)MRテスト: 陰性 4)VPテスト: 陰性 5)インドールの生成: 陰性 6)硫化水素の生成: 弱陽性 7)デンプンの加水分解: 陰性 8)クエン酸塩の利用: Koserの培地とChristensenの
培地で共に利用する。 9)無機窒素源の利用: 硝酸塩およびアンモニウム塩
を利用する。 10)色素の生成: 水溶性色素を生成しない。 11)ウレアーゼ: 陰性、弱陽性 12)オキシダーゼ: 陽性 13)カタラーゼ: 陽性 14)生育範囲pH: pH5.0〜10.0で生育する。 温度: 5℃〜37℃で生育する。42℃で生育
しない。 15)酸素に対する態度: 好気性 16)OFテスト(Hugh−Leifson法):フラクトースから
好気的に酸を生成する。 17)糖類から酸およびガスの生成の有無:Ayers, Rupp a
nd Johnsonの培地でフラクトースとグリセリンから酸を
生成するがガスは生成しない。アラビノース、キシロー
ス、グルコース、マンノース、ガラクトース、麦芽糖、
ショ糖、乳糖、トレハロース、ソルビット、マンニッ
ト、イノシット、デンプンからは酸もガスも生成しな
い。 18)独立栄養的生育: 水素ガス、炭酸ガス、酸素
ガスを含有する気体中で生育しない。 19)Tween80の分解性: 陽性 20)資化性: D-フラクトース、L-フェニ
ルアラニン、レブリン酸カルシウム、L-スレオニンを資
化する。マンノース、マルトース、マンニット、ベタイ
ンを資化しない。
【0019】以上の菌学的諸性質かBergey's manual of
Determinative Bacteriology(第8版)の記載に照合
して検討すると短桿菌で周ベン毛により運動すること、
グラム陰性、好気性であること、栄養要求性はなく、ア
ンモニウム塩、硫酸塩を利用すること、カゼイン及びゼ
ラチンを分解しないこと、オキシダーゼ陽性であること
等からAlcaligenes属に分類される。
【0020】種については、文献を参考に検討し
たところAlcaligenes eutrophus、A. paradpxus、A. ru
hlandiiおよびA. latusとは主に独立栄養的生育の点で
異なる。またA. faecalisとは主に42℃における生育、
D−フラクトースの資化性の点で、A. aquamarinusとは
主にデンプンの分解性、マルトースの資化性の点で、A.
pacificusとは主にスレオニン、ベタインの資化性の点
で、A. cupidusとは主にオキシダーゼおよびマンニッ
ト、マンノースの資化性の点で、A. venustusとは主に
レブリン酸塩、スレオニン、ベタインの資化性の点で、
A. aestusとは主にマンニット、スレオニン、フェニル
アラニンの資化性の点でそれぞれ異なる。
【0021】よって本菌は本発明がアルカリゲネス s
p.(Alcaligenes sp.)No.4と命名し、工業技術院微生
物工業技術研究所に菌寄第6216号(FERM-P No.6216)と
して寄託されている。
【0022】 Bergey's manual of Determinative B
acteriology(第8版) J. Bact., 110(1),402-429(1972) 坂崎和一訳:医学細菌同定の手びき(2版) 近代
出版、東京、1974
【0023】次にこれらの菌を用いてNAD−CDHを
製造する方法について詳述する。これらの菌はいづれも
構成的にNAD−CDHを生産する能力を有し、通常の
ペプトン、酵母エキス又は硫酸アンモニウム等のチッソ
源及びグルコース、グルセロール等の炭素源、その無機
塩等を含有する培地でもNAD−CDHを生産するが、
コレステロールを培地に添加することよりさらに多量に
NAD−CDHを生産する。この際コレステロールの添
加は、培養開始時あるいは途中からのいずれでもよい。
またその他培養条件に関しては、通常行われる範囲で実
施できる。
【0024】これらの菌により生産されたNAD−CD
Hは、菌体のみならず、培養液中にも蓄積され、その何
れからでも酵素を回収することができる。これらの培養
濾液又は菌体抽出液を硫酸アンモニウム等による塩析又
は、アセトン、エタノール等の溶剤沈殿して得た粗酵素
は、そのままコレステロールの定量に使用するか、ある
いは、さらに精製して使用することもできる。例えば、
精製については、イオン交換クロマトグラフィー、分子
節クロマトグラフィー等公知の方法により可能である。
【0025】ここで得られるNAD−CDHは、コレス
テロール含有物質中のコレステロールの定量に使用で
き、例えば、血液、血中のコレステロール定量等に有利
に使用できる。
【0026】本発明に使用するNAD−CDHの活性測
定法を以下に示す。NAD−CDHの酵素活性は、コレ
ステロールとNADを基質として反応した場合のNAD
Hの生成量を、340nmにおける吸光度の増加として、分
光光度計で測定し算出する。すなわち、0.1Mトリス・塩
酸緩衝液(pH8.6)2.65ml、28mM NAD溶液0.1ml、8%ト
リトンX-100溶液0.15ml、1%コレステロール溶液0.05m
l及びNAD−CDH水溶液0.05mlを混合し、30℃で反
応させ、反応開始後1分間の340nmにおける吸光度の増
加を測定する。
【0027】対照として上記組成でコレステロールの代
わりに水を用い同様の操作を行い、対照液の340nmにお
ける吸光度の増加を試験液のそれから差し引く。得られ
た値からNADHの生成量を求め、これより試料中のN
AD−CDH活性を算出する。
【0028】酵素活性の表示は、pH8.6、30℃の条件下
で1分間に1μmoleのNADHを生成する酵素を1単位
とした。次に本発明に使用するNAD−CDHの作用を
示す。 コレステロール+NAD→(←)コレステノン+NADH 上記反応式で「→(←)」は可逆反応であることを示
す。
【0029】本発明におけるNAD−CDHは全てこの
反応を触媒する。以下に本発明に使用するNAD−CD
Hの一般的性質をノカルジア sp. No.Ch2-1(Nocardia
sp. No.Ch2-1)及びアルカリゲネス sp. No.4(Alcalig
enes sp.No.4)の生産するものについて示す。
【0030】(1) ノカルジア sp. No. Ch2-1(Nocardia
sp. No.Ch2-1)の生産するNAD−CDH 1)至適pH 第1図に30℃におけるpHと活性の関係を示した。 2)pH安定性 第2図に37℃におけるpHと安定性の関係を示した。 3)至適温度 第3図にpH8.6における温度と活性の関係を示した。 4)熱安定性 第4図にpH7.0における温度と安定性の関係を示した。 5)基質特異性 本酵素は、3β位に水酸基を持つステロイドに反応し、
コレステロールを100とするとスティグマステロール3
5、β−シトステロール25、その他デヒドロエピアンド
ロステロン、エルゴステロール等にわずかに作用する。 6)補酵素 NADを要求する。
【0031】(2)アルカリゲネス sp. No.4(Alcaligene
s sp. No.4)の生産するNAD−CDH 1)至適pH 第5図に30℃におけるpHと活性の関係を示した。 2)pH安定性 第6図に37℃におけるpHと安定性の関係を示した。 3)至適温度 第7図にpH8.6における温度と活性の関係を示した。 4)熱安定性 第8図にpH7.0における温度と安定性の関係を示した。 5)基質特異性 本酵素は、3β位に水酸基を持つステロイドに反応し、
コレステロールを100とするとβ−シトステロール36、
スティグマステロール20、その他デヒドロエピアンドロ
ステロン、エルゴステロール等にわずかに作用する。 6)補酵素 NADを要求する。
【0032】次に本発明のNAD−CDHを使用したコ
レステロールの定量法について詳述する。コレステロー
ルを定量する場合、実際には緩衝液、NAD、基質(血
清、コレステロール等)及びNAD−CDHを混合し、
一定時間反応し、生成するNADHの増加を吸光度340n
mで測定する。また必要に応じて、生成したNADHの
水素をフェナジンメソサルフェート(PMS)、ジアフォ
ラーゼ等により、ホルマザン色素等の発色系に導くこと
も可能である。さらには、反応系にコレステロールエス
テラーゼ、界面活性剤、及び安定化剤などの添加も可能
である。反応時のpHは6〜10の範囲で実施できるが、優
れているpH範囲は7〜9である。
【0033】次にNAD−CDHによるコレステロール
定量用試薬の量的組成についての1例を述べれば、反応
系3ml当り、NAD−CDH 0.1〜10単位、NAD 1
0〜100mM(トリトンX-100 1.0%以下)、コレステロー
ルエステラーゼ(ベーリンガー社製)0.1〜10単位が有
利である。しかし本発明はこれらの量的組成に限定され
るものではない。本発明の測定法における特別な利点
は、生成するNADを直接測定できることであり、また
完全に定量できることである。
【0034】次に試験例及び実施例につき述べる。 試験例1 本発明における菌株3種につき、コレステロール5g/
L、肉エキス5g/L、酵母エキス0.2g/L、少量の消泡剤の
組成よりなる培地(pH7.2)100mlをいれた500ml容坂口
フラスコに植菌し、30℃で40時間振盪培養した。培養液
50mlを遠心分離(8000rpm、10分間)により集菌し、0.1
Mリン酸緩衝液pH7.0、50mlで洗浄した。次に同じ緩衝液
50mlに菌体を懸濁し、超音波にて菌体を破砕した。この
破砕液を遠心分離(10000rpm、10分間)し、清澄液を得
た。得られた清澄液のNAD−CDH活性を測定し、表
1の結果を得た。
【0035】
【表1】
【0036】試験例2 コレステロール(片山化学社製)0.67mg/ml、NAD又
はNADP(オリエンタル酵母社製)1.0mg/ml、トリト
ンX-100(片山化学社製)4.0mg/mlを含む0.1Mトリス塩
酸緩衝液3.0mlを25℃、5分間予熱後、希釈したNAD
−CDH液0.1mlを加え、25℃で反応させ、340nmにおけ
る吸光度の増加を測定して、各種NAD−CDHの各補
酵素に対する反応性を調べた。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】その結果、本発明に用いるNAD−CDH
はいずれもNADに対する反応性に比較してNADPに
対する反応性が著しく低いことがわかる。
【0039】
【実施例】
実施例1 Nocardia sp. Ch2-1(FERM-P No.6217)をグルコース5
g/L、肉エキス5g/L,酵母エキス0.2g/L、少量の消泡剤
の組成よりなる培地(pH7.2)200mlをいれた500ml容坂
口フラスコに植菌し、30℃で24時間振盪培養する。この
種培養液をコレステロール5g/L、KH2PO4 5g/L、MgSO4
・7H2O 0.2g/L、消泡剤0.5g/Lの組成よりなる培地(pH7.
2)20Lを入れた30L容ジャーファーメンターに植菌し、3
0℃で通気、攪拌(0.5V/V/min、200rpm)しながら40時
間培養した。
【0040】培養液を遠心分離し、得られた菌体を0.1M
リン酸緩衝液pH7.0に懸濁し、ガラスビーズにより菌体
を破砕した。この菌体破砕液を遠心分離(1000rpm、10
分間)し、清澄な菌体抽出液を得た。得られた清澄液に
硫酸アンモニウムを35%飽和になるように加え酵素を沈
殿せしめた。
【0041】沈殿を遠心分離(8000rpm、10分間)で集
め、20mMリン酸緩衝液pH7.0、100mlに溶かし、セロファ
ンチューブで、20mMリン酸緩衝液pH7.0に対して24時間
透析した。
【0042】次に得られた透析液を20mMリン酸緩衝液pH
7.0で平衡化したDEAE・セルロース200mlを充填した
カラムに通し、酵素を吸着せしめた。同様の緩衝液でカ
ラムを洗浄後、緩衝液濃度を0.1Mに上げてNAD−CD
Hを溶出した。NAD−CDHを含む画分を集め、これ
を濃縮後20mMリン酸緩衝液pH7.0に対して透析した。こ
れを同様の緩衝液で平衡化したヘキシルセファロース20
mlを充填したカラムに通し、吸着せしめた。このカラム
を20mMリン酸緩衝液pH7.0で洗浄した。次に0.5M NaClを
含む同様の緩衝液でNAD−CDHを溶出し、活性画分
を集め、濃縮し、50単位/mlのNAD−CDH溶液5.0ml
を得た。全体の活性収率は30%であった。
【0043】実施例2 Alcaligenes sp. No.4(FERM-P No.6216)をコレステロ
ール10g/L、グリセロール2g/L、コーンスチープリカー
5g/L、KH2PO4 5g/L,MgSO4・7H2O 0.2g/L、消泡剤0.5g
/Lの組成よりなる培地に培養し、実施例1と同様に操作
を行い、40単位/mlのNAD−CDH溶液5.0ml得た。全
体の活性収率は40%であった。
【0044】実施例3 Proteus vulugaris IAM1025を用い、実施例1に準ずる
操作を行い、37単位/mlのNAD−CDH溶液4mlを得
た。全体の活性収率は52%であった。
【0045】実施例4 実施例1で得られたNAD−CDHを用い、標準血清に
おけるコレステロールの定量を行った。
【0046】0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.6)2.71ml,
8%トリトンX-100 0.1ml、NAD溶液(200mg/ml)1m
l、コレステロールエステラーゼ(ベーリンガー社製)
溶液(100単位/ml)0.05ml、標準血清0.02mlを混合し、
30℃で反応させ、340nmにおける吸光度の増加を測定し
た。反応は3分以内に終点に達した。
【0047】対照として上記反応組成物のNAD−CD
Hの代わりに水を用い同様の操作を行い対照液の340nm
における吸光度の増加を試験液のそれから差し引いた。
【0048】この標準血清における総コレステロール量
は、あらかじめ作成した検量線より、コレステロール28
9mg/dlの値が得られた。コレステロールオキシダーゼを
含む、市販の測定用試薬を用いて行った比較測定から
は、コレステロール290mg/dlの値が得られた。
【0049】実施例5 実施例2〜実施例3で得られたNAD−CDHを用い、
実施例4に準じた操作を行い、実質的には同じ結果が得
られた。
【0050】実施例6 実施例1で得られたNAD−CDHを使用し、実施例4
と同様の操作により、各種血清サンプルのコレステロー
ルを定量し、表3の結果を得た。
【0051】
【表3】
【0052】
【発明の効果】本発明により、従来のコレステロールの
定量に使用されたコレステロールオキシダーゼを使用す
る方法の各種の問題点、即ち、発色系に導くためにパー
オキシダーゼ等が必要であり、操作が繁雑である点、血
中のビリルビン、アスコルビン酸等により影響を受け、
これにより誤差が生じやすいという問題点を解決する方
法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ノカルジア sp. No. Ch2-1 (FERM-P No.6217)
の生産するNAD−CDHの至適pHを示すグラフであ
る。
【図2】ノカルジア sp. No. Ch2-1 (FERM-P No.6217)
の生産するNAD−CDHのpH安定性を示すグラフであ
る。
【図3】ノカルジア sp. No. Ch2-1 (FERM-P No.6217)
の生産するNAD−CDHの至適温度を示すグラフであ
る。
【図4】ノカルジア sp. No. Ch2-1 (FERM-P No.6217)
の生産するNAD−CDHの熱安定性を示すグラフであ
る。
【図5】アルカリゲネス sp. No.4 (FERM-P No.6216)の
生産するNAD−CDHの至適pHを示すグラフである。
【図6】アルカリゲネス sp. No.4 (FERM-P No.6216)の
生産するNAD−CDHのpH安定性を示すグラフであ
る。
【図7】アルカリゲネス sp. No.4 (FERM-P No.6216)の
生産するNAD−CDHの至適温度を示すグラフであ
る。
【図8】アルカリゲネス sp. No.4 (FERM-P No.6216)の
生産するNAD−CDHの熱安定性を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:05) (C12Q 1/60 C12R 1:37) (C12Q 1/32 C12R 1:365) (C12Q 1/32 C12R 1:05) (C12Q 1/32 C12R 1:37)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コレステロールに特異性の高いNAD依存
    性コレステロール脱水素酵素を使用することを特徴とす
    るコレステロールの定量法
  2. 【請求項2】NAD依存性コレステロール脱水素酵素が
    好気的条件下で生育する微生物の培養液から得られる酵
    素である請求項1記載のコレステロールの定量法。
  3. 【請求項3】好気的条件下で生育する微生物がノカルジ
    ア属、アルカリゲネス属、プロテウス属である請求項2
    記載のコレステロールの定量法。
JP16228392A 1992-05-27 1992-05-27 コレステロール脱水素酵素を使用するコレステロールの定量法 Pending JPH08154698A (ja)

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