JPH08143970A - 方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH08143970A
JPH08143970A JP28956194A JP28956194A JPH08143970A JP H08143970 A JPH08143970 A JP H08143970A JP 28956194 A JP28956194 A JP 28956194A JP 28956194 A JP28956194 A JP 28956194A JP H08143970 A JPH08143970 A JP H08143970A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 方向性けい素鋼板の製造方法において、脱炭
焼鈍の際、その均熱過程前段における雰囲気の酸化度P
(H20) /P(H2)を0.7 未満にし、この均熱過程に至るま
での昇温過程における雰囲気の酸化度P(H20) /P(H2)
をこの均熱過程前段よりも低くし、さらに均熱過程後段
における雰囲気の酸化度P(H20) /P(H2)をこの均熱過
程前段よりも低い0.2 〜0.005 の範囲にする。 【効果】 コイルの全幅及び全長にわたって、欠陥のな
い均一で密着性の優れたフォルステライト被膜が得ら
れ、ひいては磁気特性の優れた方向性けい素鋼板を得る
ことができる。また、この製造方法は生産性が高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、方向性けい素鋼板の
製造方法に関し、特に脱炭焼鈍工程を工夫することによ
って磁気特性及び被膜特性を大幅に改善しようとするも
のである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は軟磁性材料として、
主に変圧器あるいは回転機等の鉄心材料として使用され
るもので、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損及び磁
気歪が小さいことが要求される。そのためには、磁化容
易軸である〈001〉軸を圧延方向に高度に揃えた、い
わゆるゴス方位と呼ばれる集合組織を2次再結晶によっ
てつくることが必要である。
【0003】かかる方向性けい素鋼板は、2次再結晶に
必要なインヒビター、例えばMnS ,MnSe, AlN 等を含む
方向性けい素鋼スラブを加熱して熱間圧延を行った後、
必要に応じて焼鈍を行い、1回あるいは中間焼鈍を挟む
2回以上の冷間圧延によって最終製品板厚とし、次いで
脱炭焼鈍を行った後、鋼板にMgO などの焼鈍分離剤を塗
布してから仕上げ焼鈍を行うことによって製造される。
なお、この方向性けい素鋼板の表面には、特殊な場合を
除いて、フォルステライト(Mg2SiO4 ) 質絶縁被膜が形
成されている。この被膜は表面を電気的に絶縁するため
だけでなく、その低熱膨張性を利用して引張応力を鋼板
に付与することにより、鉄損さらには磁気歪をも効果的
に改善している。
【0004】このフォルステライト被膜は、仕上焼鈍に
おいて形成されるが、その被膜形成挙動は鋼中のMnS ,
MnSe, AlN 等のインヒビターの挙動に影響するため、優
れた磁気特性を得るための必須の過程である2次再結晶
そのものにも影響を及ぼす。すなわち、フォルステライ
ト形成反応は仕上焼鈍の昇温過程から始まるが、この仕
上焼鈍時に形成されたフォルステライト被膜がポーラス
状になった場合及びこの被膜形成が不均一に進行した場
合には、焼鈍雰囲気からOやNが鋼中に侵入し易くなる
ため、鋼中のインヒビターが分解や粗大化、あるいは過
剰化する。その結果、得られる2次再結晶組織は、ゴス
方位への集積度が低く、したがって磁気特性も劣化する
結果になるのである。さらにフォルステライト被膜は、
被膜が形成されることにより、不要となったインヒビタ
ー成分が被膜近傍に濃化することになって鋼を実質的に
純化することによっても、鋼板の磁気特性の十分な発揮
を助けている。したがって、この被膜形成過程を制御し
てフォルステライト被膜を均一に形成することは、方向
性けい素鋼板の製品品質を左右する重要なポイントの一
つである。
【0005】さらに、形成した被膜は、当然のことなが
ら、均一で欠陥がなく、かつ剪断、打抜き及び曲げ加工
等に耐え得る密着性の優れたものでなければならない。
また、表面が平滑であって、鉄心として積層したとき
に、高い占積率を示すものでなければならない。
【0006】さて、方向性けい素鋼板にフォルステライ
ト質絶縁被膜を形成させるには、まず所望の最終厚みに
冷間圧延した後、湿水素中で700 〜900 ℃の温度で連続
焼鈍することによって、冷間圧延後の組織を適正な2次
再結晶が起こるように1次再結晶させ、また、その後の
2次再結晶を完全に行わせて磁気特性を向上させるべく
鋼板に0.01〜0.10%程度含まれる炭素を0.003 %程度以
下まで脱炭する。さらに、この焼鈍を酸化雰囲気にする
ことでSiO2を主成分とするサブスケールを鋼板表層に生
成させる。
【0007】その後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を
鋼板上に塗布し、コイル状に巻取って還元又は非酸化性
雰囲気中にて2次再結晶焼鈍と純化焼鈍とを兼ねた最高
1200℃程度の温度にて高温仕上げ焼鈍を施すことによ
り、主として以下の式で示される固相反応によってフォ
ルステライト質絶縁被膜を形成させるのである。 2MgO +SiO2→MgSiO4
【0008】このフォルステライト質絶縁被膜は1μm
前後の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜であ
り、上述の如く、脱炭焼鈍において、鋼板表層に生成し
た酸化物を一方の原料物質として、その鋼板上に生成す
るものであるから、この酸化物の種類,量,分布等は、
フォルステライトの核生成や粒成長挙動に関与するとと
もに被膜結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及
ぼし、したがって仕上げ焼鈍後の被膜品質にも多大な影
響を及ぼす。
【0009】また、他方の原料物質であるMgO を主体と
する焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に
塗布されるため、乾燥された後も物理的に吸着したH2O
を保有するばかりか、一部が水和してMg(OH)2 に変化し
ているため、仕上焼鈍中に800 ℃あたりまで、少量なが
らH2O を放出し続ける。このため鋼板表面はこのH2Oに
より、いわゆる追加酸化を受ける。この酸化もフォルス
テライトの生成挙動に影響を及ぼすとともにインヒビタ
ーの酸化や分解につながることから、この追加酸化が多
いと磁気特性を劣化する要因となる。この追加酸化の受
け易さも、脱炭焼鈍で生じた鋼板表層の酸化物層の物性
に大きく左右される。
【0010】さらに、AlN をインヒビターとする方向性
けい素鋼板においては、この酸化物層の物性が、仕上げ
焼鈍中の脱N挙動あるいは焼鈍雰囲気からのNの侵入挙
動に影響を及ぼして、ひいては磁気特性にも影響を与え
る。以上述べたように、脱炭焼鈍における鋼板表層の状
態を制御することは、方向性けい素鋼板の製造における
重要なポイントのひとつである。
【0011】方向性けい素鋼板の脱炭焼鈍に関しては、
例えば、特開昭59−185725号公報に開示されているよう
に、焼鈍雰囲気の露点を50〜75℃に制御する方法、特開
昭54−160514号公報に示されているように、雰囲気の酸
化度を、脱炭の前半では0.15以上とし、後半では0.75以
下でかつ前半より低くする方法などが知られている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
雰囲気制御によっても、必ずしも十分な品質を有するフ
ォルステライト被膜が生成するとは限らず、ストリップ
幅方向、あるいは長手方向で密着不良の部分を生じた
り、外観,被膜厚み,あるいはフォルステライト粒径等
が不均一な被膜となる場合が応々にして生じていた。さ
らに、局所的に点状ないしは筋状に被膜が剥離したり、
ポーラス状の被膜となる場合もあった。
【0013】この発明は、上記の問題点を有利に解決し
ようとするものであり、コイルの全幅及び全長にわたっ
て、欠陥のない均一で密着性の優れた被膜を有し、かつ
磁気特性も優れた方向性けい素鋼板を得るための、生産
性の高い製造方法について提案することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は、方向性けい
素鋼素材を熱間圧延したのち、1回又は中間焼鈍を挟む
2回の冷間圧延を施し、次いで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤
を塗布してから最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程よりな
る、方向性けい素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍の
際、その均熱過程前段における雰囲気の酸化度P(H20)
/P(H2)を0.7 未満にし、この均熱過程に至るまでの昇
温過程における雰囲気の酸化度P(H 20) /P(H2)をこの
均熱過程前段よりも低くし、さらに均熱過程後段におけ
る雰囲気の酸化度P(H20) /P(H2)をこの均熱過程前段
よりも低い0.2 〜0.005 の範囲にすることを特徴とする
方向性けい素鋼板の製造方法(第1発明)である。
【0015】また、この発明は、方向性けい素鋼素材を
熱間圧延したのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間
圧延を施し、次いで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布して
から最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程よりなる、方向性
けい素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍の際に鋼板表
面に生成させる酸化物を、ファイヤライト、クリノフェ
ロシライト及びシリカの組成比が、これらの酸化物の反
射赤外吸収スペクトルの吸光度の比Af :Ac :As に
て1:0.4 〜3.0 :0.2 〜3.0 であり、かつ酸素目付量
が0.4 〜2.5 g/m2であるものにすることを特徴とする方
向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)である。
【0016】さらに、この発明は、方向性けい素鋼素材
を熱間圧延したのち、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷
間圧延を施し、次いで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布し
てから最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程よりなる、方向
性けい素鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍の際に鋼板
表面に生成させた酸化物の表面活性度を、5%HCl によ
る70℃で60秒の酸洗における酸洗減量にて0.3 g/m2以下
になる表面活性度に制御し、かつ該酸化物の酸素目付量
を0.4 〜2.5 g/m2の範囲に制御することを特徴とする方
向性けい素鋼板の製造方法。(第3発明)である。
【0017】第1発明、第2発明又は第3発明におい
て、方向性けい素鋼素材としては、C:0.02〜0.12wt
%、Si:2.0 〜5.0 wt%、Mn:0.03〜0.30wt%、sol.A
l:0.01〜0.05wt%及びN:0.004 〜0.012 wt%を含
み、かつS及びSeの1種又は2種を合計で0.01〜0.05wt
%含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなるもの
(第4発明)が好ましい。
【0018】また、第1発明、第2発明又は第3発明に
おいて、方向性けい素鋼素材としては、C:0.02〜0.12
wt%、Si:2.0 〜5.0 wt%、Mn:0.03〜0.30wt%、sol.
Al:0.01〜0.05wt%及びN:0.004 〜0.012 wt%を含
み、かつS及びSeの1種又は2種を合計で0.01〜0.05wt
%含有し、さらに、Sb、Cu及びSnのうちから選ばれる少
なくとも1種を0.01〜0.30wt%含有して残部はFe及び不
可避的不純物からなるもの(第5発明)が好ましい。
【0019】
【作用】発明者らは、ストリップにおけるフォルステラ
イト被膜の品質ばらつきの原因を詳細に調査した結果、
脱炭焼鈍において鋼板表層に生成するサブスケールの量
と質のばらつきが大きく影響していることを見出した。
このことは、ストリップの幅方向あるいは長手方向にお
いて、サブスケール形成反応が、必ずしも均一には起こ
っていないことを意味する。さらに、この原因について
更に調査を進めたところ、特に脱炭焼鈍の昇温過程、あ
るいは均熱過程における雰囲気酸化性の変動が関係して
いることも新たに究明した。
【0020】そこで、脱炭焼鈍における雰囲気酸化性、
すなわち水素分圧に対する水蒸気分圧の比(以下、P(H
2O) /P(H2)と示す)が、サブスケール物性に及ぼす影
響について詳細に調査を進めた。その結果、昇温過程、
均熱過程の前半及び均熱過程の後半の雰囲気酸化性をそ
れぞれ独立して所定範囲に制御することによって、サブ
スケールの物性を高度に安定化できることが判明したの
である。以下にこの実験結果について述べる。
【0021】C含有量が0.04wt%(以下、単に%で示
す)であり、インヒビターとしてMnSe及びSbを含む、板
厚0.23mmの3.3 %けい素鋼板を、820 ℃で120 秒間湿水
素雰囲気中で脱炭焼鈍をした。この脱炭焼鈍に際し、昇
温過程、均熱過程前段:100 秒、均熱過程後段:20秒の
雰囲気酸化性をそれぞれ独立に制御し、P(H2O) /P(H
2)を表1に示す値にした。
【0022】この脱炭焼鈍後、鋼中のC量と酸素目付量
を化学分析によって求めた。また、5%HCl 水溶液にて
70℃で60秒間の酸洗による溶解量(以下、酸洗減量と称
する)を求めた。かかる酸素目付量は、サブスケールの
量的指標として重要であり、この酸素目付量が不足する
と密着性の悪い不均一な被膜しか形成されず、磁気特性
も劣化し易い。また、酸洗減量は、サブスケールの質を
評価する指標として重要でありこの値が大きいと表面の
化学的活性度が大きい、言い換えれば表面の保護性が悪
いことを意味し、仕上焼鈍中に追加酸化を受け易く、被
膜特性や磁気特性の劣化を来す。これらの測定結果を表
1に併記する。
【0023】
【表1】
【0024】表1のNo. 1は、この発明の範囲において
脱炭焼鈍をしたものであり、脱炭は十分で、酸素目付量
も多く、かつ酸洗減量も低い値を示している。これに対
し、No. 2は、昇温過程雰囲気を均熱過程前段と同じ酸
化性とした場合であり、脱炭が不十分で酸素目付量も不
十分である。また、No. 3は、均熱過程前段の酸化性が
0.70以上の場合であり、酸洗減量が大幅に高くなってい
る。No. 4は均熱過程後段の酸化性が0.20を超えた場合
であり、やはり酸洗減量が高くなっている。また、No.
5は、均熱過程後段の酸化性を0.005 よりも低くした場
合であるが、この場合は酸洗減量が激増している。No.
6〜10は、No. 1〜5の傾向を雰囲気酸化性のレベルを
変えて調べたものであり、No. 1〜5と同様な結果が得
られている。
【0025】以上述べたところから明らかなように、均
熱過程の酸化性を0.7 未満とし、かつ昇温過程の酸化性
を均熱過程前段よりも低くし、さらに均熱過程後段の酸
化性を0.2 〜0.005 の範囲とすることによって、脱炭と
酸化とを促進し、かつ化学的に安定で保護性に優れたサ
ブスケールを得ることができることが分かる。このよう
な脱炭と酸化との促進は、ライン操業において操業速度
を早めることを可能とし、生産性の向上にも寄与する。
【0026】このようにこの発明に従い、昇温過程の酸
化性を均熱過程のそれよりも下げることによって、酸化
が促進されるメカニズムはまだ明らかではないが、酸化
の初期過程で生成する酸化物の形態や物性が、その後の
均熱過程で酸素が鋼中に拡散し易い状態になるためと考
えられる。昇温過程の酸化性の好ましい範囲は、均熱過
程の酸化性の程度にもよるが0.05〜0.50の範囲である。
【0027】また、均熱過程の酸化性が0.7 以上になる
と、酸洗減量が増大するのは、図1に示す3%けい素鋼
の湿水素中における温度と鋼板表面の生成酸化物との平
衡状態図から考えると、FeO の生成によるものと思われ
る。FeO は、酸素の内部拡散ではなく、Fe原子の外部拡
散によって生成する酸化物であり、このような酸化物が
一旦生成すると表面の保護性は劣化するものと考えられ
る。したがって、この発明では、均熱過程前段の酸化性
を0.7 未満に限定する。より好ましい範囲は、0.30〜0.
65程度である。
【0028】さらに、均熱過程後段の雰囲気の酸化性
が、0.2 〜0.005 の範囲内でサブスケールの保護性が向
上するのは、還元効果によって表層酸化物が化学的に安
定な状態に変化するためだと思われる。この酸化性が0.
2 を超えるとこの変化が小さいため、効果が少ないと考
えられる。一方、0.005 未満になると逆に酸化減量が激
増するのは、還元が進行し過ぎるためと思われる。した
がって、この発明では、均熱過程後段の雰囲気酸化性を
0.2 〜0.005 の範囲に限定する。より好ましい範囲は、
0.01〜0.18の範囲である。
【0029】次に、発明者らは、方向性けい素鋼板の磁
気特性及び被膜特性を改善するために別の観点から研究
を進め、かかる特性が脱炭焼鈍後の鋼板表面に生成する
サブスケール物性からどのような影響を受けるかを把握
するための種々の実験を行った。その結果、サブスケー
ルの表面反射赤外吸収スペクトルによって検出される表
面の酸化物組成及び酸素目付量によって表される酸化物
量の両者を特定範囲に制御することによっても磁気特性
と被膜特性とが効果的に改善されることを見出し、第2
発明に到ったのである。以下にかかる実験結果の一例を
示す。
【0030】C:0.040 %、Si:3.2 %、Mn:0.07%、
Se:0.02%、Sb:0.02%を含有する方向性けい素鋼素材
を熱間圧延した後、1000℃での均一化焼鈍と圧下率75%
の第1回目の冷間圧延に引き続いて970 ℃での中間焼鈍
と圧下率63%の第2回目の冷間圧延により、最終板厚0.
23mmの冷延板とした。
【0031】次いでこの冷延板を脱脂して表面を清浄化
したのち、H2−N2−H2O 雰囲気中で830 ℃の1次再結晶
焼鈍を兼ねる脱炭焼鈍に供した。このときH2とH2O との
分圧比で表される雰囲気酸化性P(H20) /P(H2)を昇温
過程では0.01〜0.6 、均熱過程前半では0.3 〜0.7 、均
熱過程後半では0.001 〜0.6 の範囲でそれぞれ独立に制
御することによって、サブスケール表面の酸化物組成を
種々に変化させた。また、この焼鈍時間を調整すること
によって、酸素目付量を1.2 〜1.8 g/m2の範囲に調整し
た。
【0032】得られた脱炭焼鈍板の表面酸化物の組成
を、反射赤外吸収スペクトルを測定することによって調
べた。図2に雰囲気酸化性P(H20) /P(H2)が昇温過
程:0.22、均熱過程前半(120 秒):0.55、均熱過程後
半(20秒):0.10で、830 ℃、140 秒間の焼鈍を行った
場合の反射赤外吸収スペクトルの1例を示す。
【0033】図2においてFで示した吸収は、ファイヤ
ライト(Fe2SiO4) であり、同様にCで示した吸収はクリ
ノフェシライト(FeSiO3)、Sで示した吸収はシリカ(SiO
2)である。また、これらの酸化物の吸光度は、図2に示
したように、各ピーク位置におけるベースラインの透過
率をI0 %とした場合の、このI0 %と反射光の実際の
透過率I%との比、すなわちI0 /Iを対数で表した
値;log(I0/I) で表される。よってファイヤライトの吸
光度Af =log(I0f/If) 、同様にクリノフェシライトの
吸光度Ac =log(I0c/Ic) 、シリカの吸光度As =log
(I0s/Is) と表される。この吸光度は、それぞれの物質
の量に比例する値である。したがってAf :Ac :As
の吸光度比は鋼板表面のファイヤライト、クリノフェシ
ライト及びシリカの定量的な比率を示していることにな
る。
【0034】このような方法によるAf :Ac :As の
測定後、これらの鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離剤
を塗布し、さらに850 ℃、50時間の2次再結晶焼鈍及び
1200℃、7時間の純化焼鈍からなる最終仕上焼鈍を施し
た。得られた鋼板の磁気特性を測定するとともに、被膜
の均一性を目視で判定した。また、鋼板を20mmφの丸棒
に巻付け、被膜のはく離の有無により密着性を判定し
た。これらの結果を、脱炭焼鈍板のファイヤライトの吸
光度を1とした場合のクリノフェロシライト及びシリカ
の吸光度比との関係において図3〜5に示す。
【0035】これらの図から、Af を1としたときのA
c の比率が0.4 〜3.0 でAs の比率が0.2 〜3.0 の範囲
において、磁気特性及び被膜特性ともに極めて良好な製
品が得られることがわかる。その理由は、次のようなも
のと考えられる。
【0036】まず、一般に、けい素鋼板において鋼中の
Siは、Feよりも酸素との親和力が強いため、 Si+2O→SiO2 (1) の反応によってシリカが生成する。そして、雰囲気の酸
素ポテンシャルが高くなると、 Fe+SiO2+2O→Fe2SiO4 (2) の反応によってファイヤライトが生成する。酸素ポテン
シャルがさらに高い場合には、 Fe+O→FeO (3) の反応によってウスタイトが生成する。
【0037】これらの事実は、図1に示した3%けい素
鋼の湿水素中における生成酸化物の平衡状態図でも分か
る。なお、FeSiO3はシリカ生成域とファイヤライト生成
域の中間の酸素ポテンシャルにおいて、 Fe+SiO2+O→FeSiO3 (4) の反応によって生成する酸化物であるが、準安定相であ
るために図1では表されていない。しかしながらこの物
質は、化学的には極めて低活性であるという性質を有
し、焼鈍の初期に生成する酸化物の物性を制御すること
によって、鋼板表面にシリカやファイヤライトと共存し
て生成させることができる。
【0038】なお、これらの物質のうち、シリカは非晶
質の形態で存在しているため、X線回折のような手法で
定量化することは困難である。また、各物質の構成元素
が共通していることから、通常の化学分析や元素分析に
よる定量化も不可能である。このため、この発明におけ
るファイヤライト、クリノフェロシライト及びシリカの
定量化は、赤外吸収スペクトルによって行うこととす
る。
【0039】さて、上述のようにファイヤライトを、こ
の発明では、脱炭焼鈍において鋼板表層に生成する酸化
物として必須とする。というのは、鋼板表面に適切な量
のファイヤライトが存在する場合は、次式 Fe2SiO4 +2MgO →Mg2SiO4 +2FeO (5) で表されるように、FeとMgとの置換反応によって仕上げ
焼鈍中の850 〜950 ℃程度の低温度域で、一部フォルス
テライト被膜が形成されるため、仕上げ焼鈍中の追加酸
化に対して保護作用が働き、表層のインヒビターの抑制
力が維持されるからである。
【0040】また、小量のファイヤライトが触媒となっ
て 2MgO +SiO2→Mg2SiO4 (6) の固相反応で形成されるフォルステライト被膜形成反応
の開始温度も低下する。これらのことから、被膜特性お
よび磁気特性とも効果的に改善されると考えられる。
【0041】しかしながら、表面に過剰のファイヤライ
トが生成している場合には、ファイヤライトが凝集する
結果、局部的に肥大したフォルステライト被膜が形成さ
れ、その場所のフォルステライト被膜が剥落し、点状の
被膜欠陥が発生する。また、上記(5) 式で生成するFeO
が過剰となり、このFeO から解離する酸素が表層部に存
在するMnS ,MnS ,AlN といったインヒビターを酸化、
分解する。このため表層部の抑制力を喪失する結果とな
って、磁気特性も劣化する。
【0042】したがって、単に表層にファイヤライトの
適切な量を確保することのみによって磁気特性と被膜特
性を安定ならしめることは、とくに実コイルの場合、事
実上、困難であった。これはコイルの幅方向、長手方向
で不可避なばらつきによって、ファイヤライトの量が適
切なレベルからはずれる部分の発生が避けられないため
である。
【0043】この発明が、ファイヤライトに加えて鋼板
表層にシリカ及びクリノフェロシライトを必須成分とし
て存在させる目的は、この点を解決するところにある。
すなわち、シリカとクリノフェライトは両者とも化学的
には極めて低活性な物質であるため、これをファイヤラ
イトと共存させることによって表面の化学的活性度が安
定なレベルに維持される。その結果、仕上げ焼鈍中の追
加酸化に対する抵抗力が高まり、磁気特性や被膜特性の
優れた製品が得られるものと考えられる。
【0044】前述の実験例に示したごとく、ファイヤラ
イトの吸光度を1とした場合のクリノフェロシライトの
吸光度比が0.4 未満では磁気特性、被膜特性ともに劣っ
たものしか得られなかった。また、脱炭(1次再結晶)
焼鈍における均熱領域の雰囲気酸化性がファイヤライト
生成域内では、条件を種々変更してもクリノフェロシラ
イトの吸光度比は3.0 を超えるものは得られなかった。
このためこの発明におけるクリノフェロシライトの吸光
度は0.4 〜3.0 の範囲とする。
【0045】また、シリカの吸光度比は、ファイヤライ
トの吸光度を1とした場合、0.2 未満及び3.0 超では良
好な製品は得られなかった。シリカが過剰になると表面
が局所的に不活性化し過ぎるか、あるいはミクロ的に還
元反応が進み過ぎた部分を生じ、サブスケール物性が不
均一になるものと思われる。このため、シリカの吸光度
比は0.2 〜3.0 の範囲とする。
【0046】このようにクリノフェロシライト及びシリ
カの生成量が少ないときに磁気特性や被膜特性が劣化す
るのは、サブスケール表面の保護性が劣るためだと思わ
れる。
【0047】次に、このようなAf を1としたときのA
c の比率が0.4 〜3.0 でAs の比率が0.2 〜3.0 の範囲
になるサブスケールは、酸素目付量が0.4 〜2.5 g/m2
範囲であることが必要である。酸素目付量がこの範囲を
外れる場合は、たとえファイヤライト、クリノフェロシ
ライト及びシリカの吸光度比がこの発明の範囲内であっ
ても良好な製品は得られない。この理由は、酸素目付量
が0.4 g/m2未満の場合ではサブスケールの緻密性を欠
き、このために表面の保護性が劣化するために、また、
酸素目付量が2.5 g/m2を超える場合では、サブスケール
内部でのファイヤライトの絶対量が過剰になるために被
膜特性や磁気特性に悪影響を与えるものと思われる。
【0048】最終冷延後の鋼板は、脱脂によって表面を
清浄化したあと、脱炭・1次再結晶焼鈍に供される。こ
の発明では、この脱炭焼鈍によって鋼板表面にファイヤ
ライトとクリノフェロシライト及びシリカを、各吸光度
比がこの発明の範囲内で共存するように生成させる。ま
ず、ファイヤライトの生成は、図1からわかるように、
均熱過程の雰囲気酸化性を0.7 〜0.2 の範囲にすること
が必要である。
【0049】また、クリノフェロシライトを生成させる
には、均熱過程の酸化性を0.5 以下にすることが一つの
方法である。他の方法としては、昇温過程の雰囲気酸化
性を均熱過程よりも低くすることにより、焼鈍の初期に
生成する酸化物の物性を制御してやれば、均熱過程の酸
化性がこれよりも高い場合でもクリノフェロシライトを
効果的に生成させることができる。
【0050】さらに、表層にシリカを生成させるには、
均熱過程の後段の雰囲気酸化性を0.2 以下のシリカ生成
域にすることが効果的である。ただし、酸化性が過度に
下がりすぎるとシリカの生成量が増えすぎる結果とな
り、好ましくないので下限は0.005 程度とすることが必
要である。
【0051】これらのファイヤライトとクリノフェロシ
ライト及びシリカの比率をこの発明の範囲とするには、
雰囲気酸化性の分布と焼鈍時間及び焼鈍温度を任意に組
み合わせることによって達成できる。
【0052】脱炭焼鈍の焼鈍温度は、通常の脱炭・1次
再結晶温度である700 〜900 ℃の範囲でよく、また焼鈍
時間は、酸素目付量が0.4 〜2.5 g/m2の範囲になるよう
に設定すればよい。
【0053】次に、第3発明では、脱炭焼鈍の際に鋼板
表面に生成させた酸化物の表面活性度を、5%HCl によ
る70℃で60秒の酸洗における酸洗減量にて0.3 g/m2以下
になる表面活性度に制御し、かつ該酸化物の酸素目付量
を0.4 〜2.5 g/m2の範囲に制御することを特徴とする。
以下に、この第3発明に到った実験結果について述べ
る。
【0054】インヒビターとしてAlN 及びMnSeを含有す
る板厚0.23mmの3.3 %Si含有方向性けい素鋼板素材をク
リーニングして鋼板表面を清浄化した後、種々の条件で
H2−N2−H2O 雰囲気中で脱炭焼鈍を行った。このとき脱
炭焼鈍後表面の化学的活性度を変化させるために、雰囲
気ガスの分圧比P(H20) /P(H2)で表される雰囲気酸化
性を、昇温過程では0.20〜0.55、均熱過程前段では0.40
〜0.70、均熱過程後段では0.30〜0.01の範囲で変化させ
た。また、焼鈍温度は840 ℃と一定とし、焼鈍時間は表
面の化学的活性度を変化させる一方で脱炭焼鈍板の酸素
目付量を1.2 ±0.2 g/m2の範囲にそろえるため、60〜20
0 秒の間で変化させた。
【0055】このような脱炭焼鈍を施した鋼板表面の化
学的活性度を、5%HCl で70℃、60秒の酸洗を行った場
合の溶解量(酸洗減量)で評価した。次いでこの鋼板に
MgOを主成分とした焼鈍分離剤を塗布し、H2雰囲気中で1
200℃、10時間の2次再結晶、鈍化焼鈍に供した。
【0056】かくして得られた製品の、磁界800 A/m に
おける磁束密度B8 値を測定するとともに、被膜の均一
性を目視で判定した。この結果を酸洗減量との関係で整
理した結果を図6に示す。また、これとは別に、脱炭焼
鈍板に焼鈍分離剤を塗布した後、N2中900 ℃で焼鈍した
場合の追加酸化量を調べた。この結果と酸洗減量の関係
を図7に示す。
【0057】図6から、酸洗減量が0.3 g/m2以下の場合
に、極めて良好な磁気特性が得られること及び被膜均一
性も良好となることがわかる。また、図7から、酸洗減
量が少ないと追加酸化量も減少することがわかる。
【0058】以上のことは次のように理解される。酸洗
減量は、表面の化学的活性度の指標であるから、これが
多い鋼板の表面はより反応性に富んでいる。したがって
仕上げ焼鈍中の追加酸化が多くなる。追加酸化では、表
面に主に鉄酸化物あるいは鉄珪酸塩を生成する。これら
が多いとフォルステライトの核生成を妨げるため、粗雑
で均一性の悪い被膜が形成される。また、追加酸化は、
インヒビターであるMnSeやAlN の酸化をも引き起こすた
め、抑制力の低下を来たし、磁気特性を劣化させるので
ある。このような弊害を招くことのないように、表面の
化学的活性度を低く抑えるべくこの発明は、脱炭焼鈍後
の表面活性度を、5%HCl, 70 ℃, 60秒の酸洗減量で表
した場合0.3g/m2 以下と限定するものである。
【0059】脱炭焼鈍板の酸洗減量を上記の範囲内にす
る要因は、大別すると3つになる。そのひとつは鋼成分
である。例えば鋼中のSiやAl, Cuの含有量が多いと酸洗
減量は低下する。逆にPが多い場合には増加する。Pの
含有量は減少しても悪影響はないため、できるだけ低い
方が望ましい。一方、Siは多過ぎると圧延作業性が劣化
するので上限は4.5 %程度である。Alは多過ぎると2次
再結晶が不安定になるため、0.05%程度が上限である。
またCuは多過ぎると酸洗性及びぜい性が悪化するので、
0.30%程度が上限である。
【0060】第2の要因は、脱炭焼鈍条件である。脱炭
焼鈍において鋼板表層に生成する化合物には、SiO2及び
Fe2SiO4 、Fe2SiO3 等の珪酸塩の他、FeO さらにはMnや
Alの酸化物等が含まれる。このうち、FeO, Fe2O4等は化
学的に活性な物質でありこれらが多く生成するような条
件の脱炭焼鈍は良くない。この意味で脱炭焼鈍における
雰囲気のP(H20) /P(H2)は0.70未満が望ましい。
【0061】一方、上記のうちでSiO2やFeSiO3は低活性
な物質であるので、これらが表面に多く生成していると
酸洗減量は低下する。このSiO2を多く生成させるには、
脱炭焼鈍の後段の雰囲気酸化性を0.2 以下に下げてSiO2
生成域にすることが有効である。ただし、過度に酸化性
を下げると酸洗減量は増大するので、脱炭焼鈍後段の雰
囲気酸化性の下限は0.005 程度に抑える必要がある。ま
たFeSiO3を多く生成させるには、均熱過程の酸化性を0.
5 以下にするか、あるいは昇温過程の雰囲気酸化性を均
熱過程の酸化性よりも低くすることが効果的である。
【0062】なお、表層の化学的活性度は、酸化層中の
酸化物の種類のみならず、酸化層の状態、すなわち、酸
化物粒子のサイズや形状、その分布状態ないしは階層構
造等によっても大きく影響され、この酸化層の状態は、
焼鈍条件すなわち焼鈍温度、焼鈍時間、雰囲気酸化性等
が互いに微妙に影響しあう。たとえば雰囲気酸化性P(H
20) /P(H2)が0.5 以下では焼鈍時間は長い方が酸洗減
量は低下するが、それより若干高い0.55程度になると生
成酸化物はさほど変化しないにもかかわらず、焼鈍時間
が長くなると、酸洗減量は逆に増加する。
【0063】第3の要因は、鋼板表面の汚れや不純物の
影響が挙げられる。この汚れや不純物は、冷延以前の工
程で生じた表層の残存スケール、あるいはその後の工程
で生じた錆、さらには残存圧延油やクリーニング工程で
付着した洗浄液成分等によるものであり、これらが鋼板
表面に存在すると仕上げ焼鈍時に均一な被膜形成を阻害
し、被膜特性及び磁気特性を劣化させる原因となる。こ
のような汚れや不純物の多い鋼板の酸洗による酸洗減量
は、表面における局部電池の形成が多くなるため、必然
的に増大する。
【0064】脱炭焼鈍後の表面活性度をこの発明の範囲
内に制御するには、上述の各条件を任意に組合せること
によって実現できる。
【0065】この発明における鋼板の表面活性度を評価
する酸洗の条件としては、酸化物を含む表層の化学的活
性度を評価するものであるから軽度の酸洗であり、表層
の酸化物層全体を溶解し去るような強い酸洗条件は好ま
しくない。その条件は、FeOやFe2SiO4 あるいは金属Fe
等の活性な物質は溶解するけれども、SiO2やFeSiO3等の
低活性な酸化物は溶解しないような条件が望ましい。HC
l を用いた場合に5%で70℃、60秒という条件は、この
ような条件に該当しており、この発明の表面活性度をこ
の酸洗条件で示した。しかし、この条件のみがこの発明
の表面活性度の指標となるものではなく、HCl の濃度、
温度及び酸洗時間は適当に変更することは可能である。
このとき、当然に表面活性度の指標値は変化する。たと
えば浴温の10℃の変化又は酸洗時間の2倍の変化は、酸
洗減量のおよそ2倍の変化となって表れる。また、この
発明において表面活性度を評価するための酸としてはHC
l以外にもH2SO4 ,HNO3,H3PO4 ,HF等の鉱酸あるいは
しゅう酸、くえん酸その他の有機酸等が使用可能であ
る。そして、その酸洗条件は0.5 〜20%、室温〜80℃、
数秒〜数分程度の範囲から任意に設定できる。酸の種類
が変った場合の、この発明の酸洗減量の範囲の1例を表
2に例示する。
【0066】
【表2】
【0067】また、上記のように酸洗減量にて規定され
た表面活性度を有する脱炭焼鈍後の鋼板表面の酸化層
は、酸素目付量が0.4 〜2.5g/m2 の範囲にあることを必
要とする。酸素目付け量が0.4 g/m2未満の場合はサブス
ケールの緻密性を欠き、このために表面の保護性が劣化
すると思われる。また、酸素目付け量が2.5 g/m2を超え
る場合は、サブスケール内部でのファイヤライトの絶対
量が過剰化するために被膜特性や磁気特性に悪影響する
ものと思われる。
【0068】次に、この発明における方向性けい素鋼素
材の好適成分組成について説明する。C、Si及びMnの好
適範囲は、それぞれC:0.02〜0.12%、Si:2.0 〜5.0
%、Mn:0.03〜0.30%である。その理由は、Cは、熱延
組織の改善に必要であるが、多すぎると脱炭が困難にな
るので0.02〜0.12%程度とする。Siは、あまりに少ない
と電気抵抗が少なくなって良好な鉄損特性が得られず、
一方、あまりに多すぎると冷間圧延が困難になるためで
ある。Mnは、インヒビター成分として必要であるが、多
すぎるとインビビターサイズが粗大化し、好ましくない
ので0.03〜0.30%の範囲が好適である。
【0069】なお、この発明の鋼においては、インヒビ
ターはMnSe系、MnS 系、AlN 系、AlN −MnS 系、AlN −
MnSe系等、いずれのインヒビター種をも用いることがで
きる。AlN −MnS 系、AlN −MnSe系は、高磁束密度を得
るために好適である。
【0070】S及び/又はSeは、インヒビター成分であ
るが、0.05%を超えると純化焼鈍での純化が困難とな
り、一方、0.01%未満ではインヒビターの量が不足する
ため、合計で0.01〜0.05%の範囲で含有するものとす
る。AlN をインヒビターとして使用する場合は、Alが少
なすぎると磁束密度は低くなり、多すぎると2次再結晶
が不安定となる。このため、Alは0.01〜0.05%程度が良
い。Nは、0.004 %未満ではAlN の量が不足し、0.012
%を超えると製品にブリスターが発生するので、0.004
〜0.012 %の範囲とする。
【0071】上記の成分の他、仕上げ焼鈍においてイン
ヒビターの酸化を抑制するために、さらにSbを含有させ
て、Sbの鋼板表面への偏析効果を利用することが、磁気
特性を向上させるうえで有効である。また、Cuは、前述
の如く酸洗減量の低減効果があるばかりでなく、一般に
インヒビターを補強する効果を持つため、これも、磁気
特性上、有利な効果を発揮する。さらに、Snは、2次再
結晶粒径を小さくすることによって鉄損改善の効果を有
する。したがって、これらの少なくとも1種を含有含有
させることによって磁気特性をさらに向上させることが
可能となる。このばあい、それらの含有量は、0.01%未
満では効果が少なく、一方0.30%を超えるとぜい性の劣
化や被膜への悪影響が生ずるため、0.01〜0.30%が好適
である。
【0072】この他、Nb、Te、、Cr、Bi、B、Ge等のイ
ンヒビター補強元素も適宜添加することができる。ま
た、熱間ぜい性に起因した表面欠陥防止のためにMoを添
加することもできる。
【0073】次に製造工程について述べる。前述の鋼成
分からなるけい素鋼スラブまたはインゴットを必要なサ
イズとしたあと加熱して熱間圧延を施す。熱延板は例え
ば900 〜1200℃で焼鈍後、急冷し、引続き1回あるいは
中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を行う。AlN 系インビビ
ターの場合は、最終圧下率を80%以上で施こすことが有
利である。AlN の強い抑制力を発揮するための一次再結
晶組織が、圧下率80%未満では得られないためである。
最終冷延後の鋼板は脱脂や酸洗によって表面を清浄化し
たあと、先に述べた条件で脱炭焼鈍される。
【0074】焼鈍温度は通常の脱炭・1次再結晶温度で
ある700 〜900 ℃の範囲でよい。また焼鈍時間は酸素目
付け量が所定の範囲になるよう、設定すればよい。
【0075】脱炭・1次再結晶焼鈍のあとは、MgO を主
成分とする焼鈍分離剤を塗布してからコイル状に巻いて
H2中、1500〜1200℃の最終仕上げ焼鈍に供され、その
後、必要に応じて絶縁コーティングを施されて製品とな
る。
【0076】
【実施例】
実施例1 C:0.070 %、Si:3.34%、Mn:0.075 %、Se:0.024
%、sol.Al:0.025 %、N:0.0085%及びSb:0.025 %
を含有する方向性けい素鋼素材を、2.3 mm厚に熱延後、
1000℃の均一化焼鈍を行い、さらに1100℃の中間焼鈍を
挟む2回の冷間圧延によって0.23mmの板厚とした。次い
で845 ℃で130 秒間H2−N2−H2O 雰囲気中で脱炭焼鈍を
行った。この脱炭焼鈍の際、昇温過程、均熱過程前段:
100 秒及び均熱過程後段:30秒の雰囲気酸化性をそれぞ
れ独立に制御し、P(H20) /P(H 2)として表3に示す値
に調整した。次いで、MgO にTiO2を5%含有させた焼鈍
分離剤をスラリーとして塗布して乾燥させた後、H2雰囲
気中で1200℃、10時間の2次再結晶、純化焼鈍に供し
た。この後、りん酸マグネシウムとコロイダルシリカを
主成分とするコーティングを施した。
【0077】このようにして得られた製品の、磁界800
A/m における磁束密度(B8 値)、1.7 T 、50Hzにおけ
る鉄損(W17/50値)、被膜の曲げ密着性及び被膜の外観
について調査した。この被膜の曲げ密着性は、5mm間隔
の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜がは
く離しない最小径で示した。また、脱炭焼鈍後の鋼板の
C含有量及び酸素目付量についても分析を行った。これ
らの結果を表3に併記する。
【0078】
【表3】
【0079】表3より、均熱過程後段のP(H20) /P(H
2)を0.005 未満あるいは0.2 超としたNo. 10,11、及び
均熱過程前段のP(H20) /P(H2)が0.7 以上であったN
o. 12,13はいずれも、脱炭や酸素目付量は正常である
が、磁気特性、被膜特性共に不良であった。また、昇温
過程のP(H20) /P(H2)を均熱過程前段よりも低くする
ことのなかったNo. 14,15は、脱炭と酸素目付量とが共
に不十分であり、しかも製品品質も劣っていた。これら
に対して、この発明に従うNo. 1〜9は、脱炭、酸素目
付量共に良好なレベルで、しかも製品の磁気特性、被膜
特性も極めて優れていた。
【0080】実施例2 C:0.045 %、Si:3.35%、Mn:0.065 %、Se:0.022
%及びSb:0.023 %を含有する方向性けい素鋼素材を、
2.0 mm厚に熱間圧延後、900 ℃で均熱化焼鈍を施し、さ
らに980 ℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって板
厚0.23mmの最終冷延板とした。次いで820 ℃で120 秒
間、H2−N2−H2O 雰囲気中で脱炭焼鈍を行った。この脱
炭焼鈍の際、昇温過程、均熱過程前段:100 秒及び均熱
過程後段:20秒の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に制御
し、P(H20) /P(H2)として表4に示す値に調整した。
次いで、MgO にTiO2:1%、SrSO4 :2%を含有させた
焼鈍分離剤をスラリーとして塗布し、乾燥させた後、N2
雰囲気中、850 ℃で50時間の2次再結晶焼鈍と、引き続
くH2雰囲気中で1180℃、7時間の純化焼鈍を行った。そ
の後は実施例1と同様に処理し、得られた製品について
実施例1と同様の調査を行った。その結果を表4に併記
する。
【0081】
【表4】
【0082】表4から明らかなように、均熱過程後段の
P(H20) /P(H2)を0.005 未満あるいは0.2 超としたN
o. 7,8、及び均熱過程前段のP(H20) /P(H2)が0.7
以上であるNo. 9は、脱炭や酸素目付量は正常である
が、磁気特性、被膜特性共に不良であった。また、昇温
過程のP(H20) /P(H2)を均熱過程前段よりも低くする
ことのなかったNo. 10は、脱炭、酸素目付量が共に不十
分であるばかりでなく、製品品質も劣っていた。これら
に対して、この発明に従うNo. 1〜6は、脱炭、酸素目
付量ともに良好なレベルで、製品の磁気特性、被膜特性
も極めて優れていた。
【0083】実施例3 C:0.073 %、Si:3.24%、Mn:0.074 %、Se:0.021
%、sol Al:0.026 %、N:0.0083%及びSb:0.023 %
を含有する方向性けい素鋼素材を2.3 mm厚に熱延後、10
00度の均一化焼鈍を行い、さらに冷間圧延を1100℃の中
間焼鈍を挟んで2回行って0.23mmの最終板厚とした。そ
の後、アルカリ脱脂剤を用いた脱脂浴で浸漬脱脂を行っ
た。
【0084】次いで835 ℃で120 〜170 秒間、H2−N2
H2O 雰囲気中で脱炭・1次再結晶焼鈍を行った。このと
き、均熱時間全体の85%に相当する前段及び均熱時間全
体の15%に相当する後段の雰囲気酸化性をそれぞれ独立
に制御し、P(H20) /P(H2)として表5に示す値に制御
した。
【0085】この脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量を化学
分析によって評価するとともに、表面の反射赤外吸収ス
ペクトルによってファイヤライトとクリノフェロシライ
ト及びシリカの吸光度比を測定した。次いでMgO にTiO2
を5%添加した焼鈍分離剤をスラリーとして塗布し、乾
燥したあとコイルに巻き取り、H2雰囲気中で1200℃、10
時間の2次再結晶、純化焼鈍に供した。この後、りん酸
マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーテ
ィングを施した。
【0086】このようにした得られた製品の、磁界800
A/m における磁束密度B8 、1.7 T,50Hzにおける鉄損
W17/50値、被膜の曲げ密着性及び被膜の外観について評
価した。被膜の曲げ密着性は、5mm間隔の種々の径を有
する丸棒に試験片を巻き付け、被膜のはく離しない最小
径で示した。評価は、各コイルとも内巻き、中巻き、外
巻きで行った。また、板幅方向でのばらつきを調べるた
め、それぞれ両エッジ部及び中央部で評価した。表5に
それらの評価結果を最大値〜最小値及び平均値で示す。
【0087】
【表5】
【0088】表5から明らかなように、酸素目付量及び
反射赤外吸収スペクトルの吸光度比がこの発明の範囲内
であるNo. 1〜3はいずれも、全幅、全長にわたって磁
気特性、被膜密着性、被膜外観ともに優れている。これ
に対し、クリノフェロシライトが不足しているNo. 4、
シリカが過剰であるNo. 5及び酸素目付量が不足してい
るNo. 6は、いずれも磁気特性、被膜密着性、被膜外観
ともに劣っている。
【0089】実施例4 C:0.038 %、Si:3.28%、Mn:0.070 %、Se:0.021
%及びSb0.023 %を含有する方向性けい素鋼素材を、2.
0 mm厚に熱間圧延後、900 ℃で均一化焼鈍を行い、さら
に980 ℃の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって0.23
mmの板厚とした。次いでアルカリ性脱脂剤を用いて浸漬
脱脂を行った。引き続いて840 ℃で100〜160 秒間、H2
−N2−H2O 雰囲気中で脱炭・1次再結晶焼鈍を行った。
このとき、均熱時間全体の80%に相当する前段及び均熱
時間全体の20%に相当する後段の雰囲気酸化性をそれぞ
れ独立に制御し、P(H20) /P(H2)として表6に示す値
に制御した。また、昇温過程の雰囲気はこれらとは別に
独立して制御した。この値も併せて表6に示す。
【0090】この脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量を化学
分析によって評価するとともに、表面の反射赤外吸収ス
ペクトルによってファイヤライトとクリノフェロシライ
ト及びシリカの吸光度比を測定した。次いでMgO にTiO2
を1%、SrSO4 を2%添加した焼鈍分離剤をスラリーと
して塗布し、乾燥したあとコイルに巻き取り、N2雰囲気
中850 ℃で50時間の2次再結晶焼鈍と、引き続くH2雰囲
気中での1180℃、7時間の純化焼鈍に供した。この後は
実施例3と同様に処理し得られた製品について実施例3
と同様の調査を行った。この結果を表6に併記する。
【0091】
【表6】
【0092】表6から明らかなように、酸素目付量及び
反射赤外吸収スペクトルの吸光度比がこの発明の範囲内
であるNo. 1〜3はいずれも、全幅、全長にわたって磁
気特性、被膜密着性、被膜外観ともに優れている。これ
に対し、シリカが不足しているNo. 4、酸素目付量が過
剰であるNo. 5は、いずれも磁気特性、被膜密着性、被
膜外観が劣っている。
【0093】実施例5 C:0.034 %、Si:3.23%、Mn:0.065 %、S:0.019
%を含有する方向性けい素鋼素材を、3mm厚に熱間圧延
後、970 ℃で焼鈍を行い、さらに900 ℃の中間焼鈍を挟
む2回の冷間圧延によって0.30mmの板厚とした。次いで
アルカリ性脱脂剤を用いた脱脂剤で浸漬脱脂を行った。
引き続いて820 ℃で120 〜170 秒間、H2−N2−H2O 雰囲
気中で脱炭・1次再結晶焼鈍を行った。このとき、均熱
時間全体の85%に相当する前段及び均熱時間全体の15%
に相当する後段の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に制御
し、P(H20) /P(H2)として表7に示す値に制御した。
また、昇温過程の雰囲気はこれらとは別に独立して制御
した。この値も併せて表7に示す。
【0094】この脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量を化学
分析によって評価するとともに、表面の反射赤外吸収ス
ペクトルによってファイヤライトとクリノフェロシライ
ト及びシリカの吸光度比を測定した。次いでMgO にMgSO
4 を2%添加した焼鈍分離剤をスラリーとして塗布し、
乾燥したあとコイルに巻き取り、H2雰囲気中での1180
℃、5時間の2次再結晶・純化焼鈍に供した。この後は
実施例3と同様に処理し得られた製品について実施例3
と同様の調査を行った。この結果を表7に併記する。
【0095】
【表7】
【0096】表7から明らかなように、酸素目付量及び
反射赤外吸収スペクトルの吸光度比がこの発明の範囲内
であるNo. 1,2はいずれも、全幅、全長にわたって磁
気特性、被膜密着性、被膜外観ともに優れている。これ
に対し、クリノフェロシライト及びシリカが不足してい
るNo. 3、シリカが過剰でかつ酸素目付量が不足してい
るNo. 4は、いずれも磁気特性、被膜密着性、被膜外観
が劣っている。 実施例6
【0097】表8に示す種々の組成になる鋼塊を、常法
に従って2.0 mm厚に熱延後、1000℃の均一化焼鈍を行
い、さらに1100℃の中間焼鈍を挟む2回の冷延圧延によ
って0.23mmの板厚とした。
【0098】
【表8】
【0099】次いでアルカリ脱脂剤で表面を清浄化した
後、表9に示す条件でH2−N2−H2O雰囲気にて脱炭焼鈍
を行った。
【0100】
【表9】
【0101】表9のうちNo. A,Bは、表面活性度をこ
の発明の範囲とする条件、またNo.Cは従来の条件であ
る。なお、一部の条件では酸素目付量を変化させるた
め、均熱の時間を短縮あるいは延長した。
【0102】脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量を測定する
とともに、5%HCl 及び5%H2SO4でそれぞれ70℃,60
秒の酸洗を行って減量を測定し、表面の化学的活性度を
評価した。これらの結果を表10に示す。次いで、MgO に
TiO2を5%添加した焼鈍分離剤をスラリーとして塗布
し、乾燥した後、H2雰囲気中で1200℃、10時間の2次再
結晶・純化焼鈍に供した。この後りん酸マグネシウムと
コロイダルシリカを主成分とするコーティングを施し
た。
【0103】このようにして得られた製品の磁界800 A/
m における磁束密度B8 、1.7 T,50Hzにおける鉄損W
17/50値、被膜の曲げ密着性及び被膜の外観について評
価した。被膜の曲げ密着性は、5mm間隔の種々の径を有
する丸棒に試験片を巻き付け、被膜のはく離しない最小
径で示した。これらの結果を表10に併記する。
【0104】
【表10】
【0105】表10から明らかなように、脱炭焼鈍板の表
面活性度を低くしたこの発明例は、いずれも磁気特性、
被膜特性ともに極めて優れている。これに対し、酸素目
付量がこの発明の範囲から外れているIIB′及びVIA′
の特性は、磁気特性、被膜密着性、被膜外観ともに劣っ
ている。
【0106】実施例7 表11に示す種々の組成になる鋼塊を、常法に従って2.3
mm厚に熱延後、1050℃で2分間加熱した後、ミスト噴射
によって急冷し、次いで冷間圧延によって0.27mmに仕上
げた。
【0107】
【表11】
【0108】次いでアルカリ脱脂剤で表面を清浄化した
後、表12に示す条件でH2−N2−H2O雰囲気にて脱炭焼鈍
を行った。
【0109】
【表12】
【0110】表12のうちNo. D,Eは、表面活性度をこ
の発明の範囲とする条件、またNo.Fは従来の条件であ
る。なお、一部の条件では酸素目付量を変化させるた
め、均熱の時間を短縮あるいは延長した。
【0111】脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量を測定する
とともに、5%HCl で70℃,60秒の酸洗及び5%H2SO4
で60℃,60秒の酸洗をそれぞれ行って減量を測定し、表
面の化学的活性度を評価した。これらの結果を表13に示
す。次いで、MgO にTiO2を5%添加した焼鈍分離剤をス
ラリーとして塗布し、乾燥した後、H2雰囲気中で1200
℃、10時間の2次再結晶・純化焼鈍に供した。この後実
施例6と同様に処理し、磁気特性と被膜特性とを評価し
た。これらの結果を表13に併記する。
【0112】
【表13】
【0113】表13から明らかなように、脱炭焼鈍板の表
面活性度を低くしたこの発明例は、いずれも磁気特性、
被膜特性ともに極めて優れている。これに対し、酸素目
付量がこの発明の範囲から外れているVII D′及びVIII
E′の特性は、磁気特性、被膜密着性、被膜外観ともに
劣っている。
【0114】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、被膜特性、
磁気特性共に極めて優れた方向性けい素鋼板を安定して
生産することができる。また、脱炭焼鈍における脱炭及
び酸化速度も速くなるため、生産性の向上にも寄与でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】3%けい素鋼の湿水素中における温度と鋼板表
面の生成酸化物との平衡状態図である。
【図2】含けい素鋼の脱炭焼鈍後の反射赤外吸収スペク
トルの1例を示す図である。
【図3】脱炭焼鈍後の鋼板表面酸化膜の反射赤外吸収ス
ペクトルにおけるファイヤライト、クリノフェロシライ
ト及びシリカの吸光度比と仕上焼鈍後の鋼板の磁束密度
との関係を示す図である。
【図4】脱炭焼鈍後の鋼板表面酸化膜の反射赤外吸収ス
ペクトルにおけるファイヤライト、クリノフェロシライ
ト及びシリカの吸光度比と仕上焼鈍後の鋼板の被膜外観
との関係を示す図である。
【図5】脱炭焼鈍後の鋼板表面酸化膜の反射赤外吸収ス
ペクトルにおけるファイヤライト、クリノフェロシライ
ト及びシリカの吸光度比と仕上焼鈍後の鋼板の被膜密着
性との関係を示す図である。
【図6】脱炭焼鈍後の鋼板の酸洗減量と仕上焼鈍後の鋼
板の磁束密度、被膜外観との関係を示す図である。
【図7】脱炭焼鈍後の鋼板の酸洗減量と追加酸化量との
関係を示す図である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性けい素鋼素材を熱間圧延したの
    ち、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施し、次
    いで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ
    焼鈍を施す一連の工程よりなる、方向性けい素鋼板の製
    造方法において、 脱炭焼鈍の際、その均熱過程前段における雰囲気の酸化
    度P(H20) /P(H2)を0.7 未満にし、この均熱過程に至
    るまでの昇温過程における雰囲気の酸化度P(H 20) /P
    (H2)をこの均熱過程前段よりも低くし、さらに均熱過程
    後段における雰囲気の酸化度P(H20) /P(H2)をこの均
    熱過程前段よりも低い0.2 〜0.005 の範囲にすることを
    特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 方向性けい素鋼素材を熱間圧延したの
    ち、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施し、次
    いで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ
    焼鈍を施す一連の工程よりなる、方向性けい素鋼板の製
    造方法において、 脱炭焼鈍の際に鋼板表面に生成させる酸化物を、ファイ
    ヤライト、クリノフェロシライト及びシリカの組成比
    が、これらの酸化物の反射赤外吸収スペクトルの吸光度
    の比Af :Ac :As にて1:0.4 〜3.0 :0.2 〜3.0
    であり、かつ酸素目付量が0.4 〜2.5 g/m2であるものに
    することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 方向性けい素鋼素材を熱間圧延したの
    ち、1回又は中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施し、次
    いで脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上げ
    焼鈍を施す一連の工程よりなる、方向性けい素鋼板の製
    造方法において、 脱炭焼鈍の際に鋼板表面に生成させた酸化物の表面活性
    度を、5%HCl による70℃で60秒の酸洗における酸洗減
    量にて0.3 g/m2以下になる表面活性度に制御し、かつ該
    酸化物の酸素目付量を0.4 〜2.5 g/m2の範囲に制御する
    ことを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 方向性けい素鋼素材として、 C:0.02〜0.12wt%、 Si:2.0 〜5.0 wt%、 Mn:0.03〜0.30wt%、 sol.Al:0.01〜0.05wt%及び N:0.004 〜0.012 wt%を含み、かつS及びSeの1種又
    は2種を合計で0.01〜0.05wt%含有し、残部はFe及び不
    可避的不純物からなるものを用いる請求項1,2又は3
    記載の方向性けい素鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 方向性けい素鋼素材として、 C:0.02〜0.12wt%、 Si:2.0 〜5.0 wt%、 Mn:0.03〜0.30wt%、 sol.Al:0.01〜0.05wt%及び N:0.004 〜0.012 wt%を含み、かつS及びSeの1種又
    は2種を合計で0.01〜0.05wt%含有し、さらに、 Sb、Cu及びSnのうちから選ばれる少なくとも1種を0.01
    〜0.30wt%含有して残部はFe及び不可避的不純物からな
    るものを用いる請求項1,2又は3記載の方向性けい素
    鋼板の製造方法。
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