JPH08100326A - 酸化スズファイバーの製造方法 - Google Patents

酸化スズファイバーの製造方法

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JPH08100326A
JPH08100326A JP23568794A JP23568794A JPH08100326A JP H08100326 A JPH08100326 A JP H08100326A JP 23568794 A JP23568794 A JP 23568794A JP 23568794 A JP23568794 A JP 23568794A JP H08100326 A JPH08100326 A JP H08100326A
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fiber
tin
group
spinning
solution
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JP23568794A
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English (en)
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Hiroya Yamashita
博也 山下
Yoshiko Seki
佳子 関
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Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 塩化第一スズなどのハロゲン化スズ化合物、
テトラメトキシシランなどのシリコンアルコキシド、お
よび必要に応じて三塩化アンチモンなどの第V族化合物
をメタノールなどのアルコールに溶解した溶液において
ハロゲン含有量を制御した紡糸液となし、該紡糸液から
紡糸したゲルファイバーをアンモニア雰囲気に接触さ
せ、次いで加熱処理をして酸化スズファイバーを製造す
る。 【効果】 紡糸液中にシリコンアルコキシドを含有する
他、ハロゲンの含有量がが制御され、さらに紡糸したゲ
ルファイバーをアンモニア雰囲気で処理するために、湿
度の高い雰囲気下で紡糸並びに紡糸後放置してもファイ
バーの切断や軟化によるファイバー形状の崩れが防止で
き、しかも高速での紡糸が可能になる。従って、工業的
に所定形状の紡糸並びにファイバーの製造が安定して行
なえ生産性が向上した。更に、得られるファイバーの機
械的強度も向上した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化スズファイバーの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化スズは、耐薬品性、耐熱性に優れ、
しかも導電性を広範囲において制御できる優れた材料で
あり種々の用途に用いられている。最近では、3次の非
線形光学材料としても研究が進められている。
【0003】ガスセンサにおいては感度及び応答速度の
改善の観点から酸化スズのファイバ−形状での提供が強
く望まれてきた。また、高分子材料に導電性を付与する
目的でカ−ボンファイバ−等の添加が行われているが、
カ−ボンを用いた場合、それ自体黒色のため材料の明彩
色化が図れない、また非常に軽いため飛散し易い等の問
題点があった。このため、金属繊維や金属酸化物の粉末
を添加することが行なわれている。金属繊維は高い導電
性を有するものの長時間経過すると表面が酸化あるいは
腐食して導電性が低下するという欠点がある。また従来
の金属酸化物粉末は導電性が金属繊維ほど高くないので
高分子材料に導電性を付与するためにはどうしても比較
的多量に添加せざるを得ず、高分子材料が本来有する物
性を低下させる欠点があった。耐薬品性、耐熱性に優れ
る酸化スズにおいても導電性を付与した粉末形状での添
加が試みられている。
【0004】ところで、導電性付与の効果は導電性付与
材料のアスペクト比が大きいほど、高くなることが知ら
れている。このため、導電性を有する酸化スズのファイ
バ−化が求められていた。しかしながら、従来の固相反
応法ではファイバ−を製造することは困難であった。こ
のため、特開昭60−5997号、特開昭60−161
337号、特開昭60ー158199号において、溶融
析出法によって酸化スズを製造する方法が提案されてい
る。しかしながら、これらの方法では1000℃以上の
高温且つ何日にもわたる反応時間を必要とするため、実
験室規模で極少量作製することは可能ではあるが、工業
的に製造できるまでには至っていない。しかも得られる
酸化スズファイバーの形状は直径1μm以下、長さが3
mm以下でアスペクト比も小さく、更に断面も矩形であ
ることが多いため複合材料として用いる場合、その機能
を充分に発揮させることができずその用途が限られてし
まうという問題があった。更に、長径が小さすぎるため
ペーパ状物等を作製することが困難であった。また、得
られる複合材料の導電性等の物性値の再現性を高めよう
とすれば、添加する酸化スズウィスカーの形状および大
きさを再現性よく制御すること重要である。しかしなが
ら、酸化スズウィスカーの形状を制御することは実際困
難であるので、添加する酸化スズの繊維径および長さを
揃えようとすれば、偶然できたものを分級するしかなか
った。それ故、このような非効率的な方法で作製したウ
ィスカーはコストが極めて高く、実際に使用できなかっ
た。
【0005】本発明者らは、高価で且つ反応速度が速い
ため不安定で取り扱いが難しいスズアルコキシドを原料
として用いることなく、スズ化合物及びアルコ−ルを主
成分とする溶液を用いると驚くべき事に曳糸性が現れ、
これを紡糸、加熱することにより、容易にしかもきわめ
て安価に酸化スズファイバ−が得られることを見い出
し、既に提案した(特開平4ー35287、特開平5ー
117906、特開平5ー179512)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記紡
糸液を用いて紡糸した場合、紡糸してから加熱処理する
までの間にゲルファイバーが高い湿度雰囲気に接すると
糸形状が保持されず軟化して崩れるという現象が生じる
場合が出てきた。そこで、紡糸後の雰囲気中の湿度によ
って糸形状が崩れないファイバーの製造方法について鋭
意研究を重ねた。
【0007】
【課題を解決するための手段】その結果、紡糸液中にシ
リコンアルコキサイドを存在させ且つ紡糸液中のハロゲ
ン含有量を制御し、更に紡糸後のゲルファイバーをアン
モニア雰囲気に接触させるとゲルファイバーの耐湿性が
一層向上することを見い出し、ここに本発明を完成させ
るに至った。
【0008】即ち、本発明は、アルコ−ルにハロゲン化
スズ化合物およびシリコンアルコキシドを溶解してな
り、且つ該溶液中のハロゲンとスズの原子数の比(X/
Sn)が1.55以上1.80未満である紡糸液から紡
糸したゲルファイバーをアンモニア雰囲気に接触させた
後、加熱処理することを特徴とする酸化スズファイバー
の製造方法である。
【0009】他の発明は、アルコールにハロゲン化スズ
化合物、シリコンアルコキシドおよび周期律表第V族元
素を溶解してなり、且つ該溶液中のハロゲン、スズおよ
び周期律表第V族元素の各原子数が次式の関係にある紡
糸液から紡糸したゲルファイバーをアンモニア雰囲気に
接触させた後、加熱処理することを特徴とする酸化スズ
ファイバーの製造方法である。
【0010】
【数2】
【0011】[ここで、NSnは溶液中のスズと周期律表
第V族元素の原子数の総和に対するスズの原子数の比で
あり、Nvは溶液中のスズと周期律表第V族元素の原子
数の総和に対する周期律表第V族元素の原子数の比であ
り、X、SnおよびVはそれぞれ溶液中のハロゲン、ス
ズおよび周期律表第V族元素の原子数を表わす]次に本
発明を更に具体的に説明する。
【0012】本発明に用いるアルコールは後述のハロゲ
ン化スズ化合物を溶解するものであれば何ら制限されな
い。これらアルコールを一般式ROHで表わすと、Rは
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル
基等の非置換アルキル基、2ーメトキシエチル基、2ー
エトキシエチル基、2ーヒドロキシエチル基、1ーメト
キシー2ープロピル基、メトキシエトキシエチル基、2
ーフェニルエチル基、フェニルメチル基等の置換アルキ
ル基、アリル基等の非置換アルケニル基、2ーメチルー
2ープロペニル基、3ーメチルー3ーブテニル基等の置
換アルケニル基等が挙げられる。
【0013】上記の置換アルキル基、置換アルケニル基
または置換アリール基における置換基の具体例として
は、上記したRの具体例に見られるメトキシ基、エトキ
シ基等のアルコキシル基、ヒドロキシル基、フェニル基
等のアリール基、メチル基、エチル基等のアルキル基の
他に、アミノ基、シアノ基、Cl原子、Br原子、I原
子、F原子等のハロゲン等が挙げられる。
【0014】本発明に用いるアルコ−ルを具体的に例示
すれば、メチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、プロピ
ルアルコ−ル、ブチルアルコ−ル、オクチルアルコー
ル、2ーメトキシエタノール、2ーエトキシエタノー
ル、エチレングリコール、1ーメトキシー2ープロピル
アルコール、メトキシエトキシエタノール、2ーフェニ
ルエチルアルコール、ベンジルアルコ−ル、アリルアル
コール、2ーメチルー2ープロペンー1ーオール、3ー
メチルー3ーブテンー1ーオール等を挙げることができ
る。特に、メチルアルコール、エチルアルコールはハロ
ゲン化スズ化合物の溶解度が高く好ましい。上記アルコ
ールは通常単独で用いられるが、ハロゲン化スズ化合物
との反応性、あるいはハロゲン化スズ化合物の溶解性等
を制御するために2種類以上のアルコールの混合物を用
いることもできる。
【0015】本発明に用いるハロゲン化スズ化合物のハ
ロゲンは、Cl、Br、I、F原子である。このハロゲ
ン化スズ化合物のなかでも、塩化スズ、臭化スズが価
格、安定性の点から好ましい。具体的には、SnC
2、SnCl2・2H20、SnBr2、SnI2、Sn
2等が挙げられ、特に、SnBr2、SnCl2・2H2
O、SnCl2が好ましく用いられる。また該ハロゲン
化スズ化合物において有機化合物で修飾したもの、例え
ばSn(CH3)2Cl2等も使用できる。
【0016】上記ハロゲン化スズ化合物とアルコールの
配合割合は、ハロゲン化スズ化合物がアルコ−ルに均一
に溶解する範囲であれば、特に制限されない。ただし、
あまりにハロゲン化スズ化合物の割合が低い場合は曳糸
性を示さないのでかなり濃縮する必要があり、アルコ−
ルが無駄になる。また、ハロゲン化スズ化合物の濃度が
あまりにも高いと沈澱が生じ均一な紡糸液が得られな
い。従って、使用するハロゲン化スズ化合物とアルコ−
ルの種類によってその配合割合は異なるが、一般的には
アルコ−ルに対するハロゲン化スズ化合物の使用割合は
モル比で0.02〜0.5が好ましい。この割合で配合
して透明で均一な溶液とした後、更にアルコールを蒸発
させて濃縮し所望の粘度を有する紡糸液とする。
【0017】本発明において、紡糸を安定的に行うため
に、且つ得られるファイバーの機械的強度を高めるため
にシリコンアルコキシドを紡糸液中に添加する。
【0018】このようなシリコンアルコキシドとして
は、一般式Si(ORA4、RBSi(ORA3、RB
CSi(ORA2で表されるシリコンアルコキシドが用
いられる。ここで、RA、RB、RCは、各々、メチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の
直鎖状または分岐状アルキル基;エテニル基、プロペニ
ル基、ブテニル基、ペンテニル基等の直鎖状または分岐
状アルケニル基;フェニル基等のアリール基を示す。
【0019】該シリコンアルコキシドを具体的に例示す
ると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチ
ルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フ
ェニルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラ
ン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメ
トキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−
オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシ
シラン、エチルトリエトキシシラン、アミルトリエトキ
シシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−オクチル
トリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシ
ラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、メチルトリブ
トキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリ
プロポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリル
トリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ
メチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラ
ン、ジエチルジメトキシシラン、エチルメチルジエトキ
シシラン等が挙げられる。また、上記シリコンアルコキ
シドに代えてテトラクロロシラン、トリクロロシラン、
トリクロロエチルシラン等のハロゲン化珪素を用いるこ
ともできる。これらのハロゲン化珪素はアルコール中で
アルコールと速やかに反応してシリコンアルコキシドに
なり、前記シリコンアルコキシドと同じく紡糸液の添加
物として利用できる。
【0020】これらのシリコンアルコキシドを添加する
ことにより、高い湿度雰囲気下においても比較的安定的
にしかも長径の大きなファイバーを紡糸することができ
る。又、紡糸直後のゲルファイバーは軟化して崩れやす
くなることが少なくなるため取扱いが非常に容易にな
る。更に最終的に得られるファイバーの機械的強度が向
上する。これらのシリコンアルコキシドの添加量は、上
記ハロゲン化スズ化合物に対して、0.01〜30重量
%が好ましい。上記添加量が0.01重量%よりも少な
いと、充分な効果が得られない。30重量%を超える
と、ファイバー中のシリカ成分が増加して導電性が低下
するので好ましくない。但し、高い導電性を必要としな
いときは、更にシリカ成分を添加してもよい。
【0021】本発明において、導電性の高い酸化スズフ
ァイバーを得るためには、周期律表第V族元素化合物
(以下第V族化合物という)を必要に応じて含有させる
ことができる。この第V族化合物は、後述する加熱処理
によって最終的には酸化物となって酸化スズ中に固溶す
る。
【0022】第V族化合物としては、バナジウム化合
物、ニオブ化合物、タンタル化合物、アンチモン化合
物、あるいはビスマス化合物等の第V族元素の化合物が
挙げられる。
【0023】具体的には、バナジウム化合物として、V
Br3、VCl2、VCl3、VCl4、VOBr2、VO
Br3、VOCl3、VF3、VF4、VF5、VI36H2
O、バナジウムのアルコキシドが挙げられ、ニオブ化合
物として、NbCl5、NbBr5、NbF5、NbOC
3、ニオブのアルコキシドが挙げられ、タンタル化合
物として、TaBr5、TaCl5、タンタルのアルコキ
シドが、アンチモン化合物として、SbCl3、SbC
5、SbBr3、オキシ塩化アンチモン、あるいはアン
チモンのアルコキシドが、また、ビスマス化合物として
は、BiCl3、BiI3、ビスマスのアルコキシド等が
挙げられる。
【0024】上記第V族化合物の配合割合は、酸化スズ
ファイバーに導電性を付与したい場合、酸化物換算で酸
化スズに対して0.1〜25mol%が好ましい。上記
割合があまりにも低いと得られる酸化スズファイバ−の
導電性が小さく、またあまりに高くしても導電性付与の
効果は小さくなる。
【0025】ハロゲン化スズ化合物、シリコンアルコキ
シドおよび第V族化合物とアルコールの溶解方法は、特
に限定されない。攪拌下、ハロゲン化スズ化合物、シリ
コンアルコキシド、必要に応じて加える第V族化合物の
混合物にアルコ−ルを滴下する方法、あるいは攪拌下、
アルコールにハロゲン化スズ化合物、シリコンアルコキ
シド、並びに必要に応じて第V族化合物を同時にまたは
順次溶解させる方法等を用いることができる。
【0026】本発明において 上記アルコール、ハロゲ
ン化スズ化合物、シリコンアルコキシド、並びに必要に
応じて第V族化合物を含有する溶液において、該溶液中
に第V族化合物を含まない場合はハロゲンとスズの原子
数比、即ちX/Snが1.6以上1.8未満になるよう
に、第V族化合物を含有する場合にはハロゲンとスズお
よび第V族元素の各原子数の関係が次式
【0027】
【数3】
【0028】を満足するように調整することが重要であ
る。
【0029】ここで、NSnは溶液中のスズと第V族元素
の原子数の総和に対するスズの原子数の比であり、Nv
は溶液中のスズと第V族元素の原子数の総和に対する第
V族元素の原子数の比であり、X、SnおよびVはそれ
ぞれ溶液中のハロゲン、スズおよび第V族元素の原子数
を表わす。
【0030】上記ハロゲンとスズの原子数比X/Sn、
あるいはハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関
係X/(Sn+V)が上記範囲にある紡糸液から紡糸す
ると安定的に紡糸することができ、また紡糸されたゲル
ファイバーが高湿度雰囲気下においても形状を維持しや
すくなるなど取り扱いがきわめて容易になる。尚、ハロ
ゲンを有する第V族化合物を添加する場合および/また
はシリコンアルコキシドの代えてハロゲン化珪素を用い
る場合は、ハロゲンとしては前記ハロゲン化スズ化合物
に存在するハロゲンに加えて第V族化合物および/また
はハロゲン化珪素由来のハロゲンも勘案して調製しなけ
ればならない。
【0031】上記ハロゲンとスズの原子数比X/Sn、
あるいはハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関
係X/(Sn+V)が上記範囲より大きくてもゲルファ
イバーを紡糸することが可能であるが、得られるファイ
バーが高湿度雰囲気下で軟化し形状が崩れやすくなるた
め湿度の制御等が必要になる。また、上記ハロゲンとス
ズの原子数比X/Sn、あるいはハロゲンとスズおよび
第V族元素の原子数の関係X/(Sn+V)が上記範囲
よりも小さいと紡糸したゲルファイバーは高湿度下にお
いても安定であるが、上記紡糸液中に沈澱が生じやすく
なるなど紡糸液が不安定になるという問題が出てくる。
従って上記ハロゲンとスズの原子数比X/Sn、あるい
はハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関係X/
(Sn+V)を上記範囲に制御することが重要である。
【0032】上記ハロゲンとスズの原子数比、あるいは
ハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関係を制御
する方法は特に限定されず、公知の方法を何等制限なく
用いることができる。例えば、アニオン交換樹脂によっ
てハロゲンイオンを除去する方法、ハロゲン化物として
沈澱させて除去する方法、加熱蒸発によりハロゲンを除
去する方法等の通常の方法を用いることができる。この
加熱蒸発させる場合、ハロゲンはハロゲン化水素として
蒸発するのではないかと推定される。また、紡糸液を作
製する際に最初からX/Snが小さいハロゲン化スズ化
合物、例えばSnCl2、SnCl2・2H2O、SnB
2 等のスズが2価である化合物を用いることは上記範
囲に容易に制御し得るため有効である。
【0033】紡糸液中の、ハロゲン、スズ、第V族元素
の定量は如何なる方法によってもよいが、スズおよび第
V族元素の定量には誘導結合プラズマ発光分析法(IP
C発光分析法)が、ハロゲンの定量には沈澱滴定法が好
適に採用される。
【0034】本発明の紡糸液の安定性を向上させるため
に、更にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン
酸ジエチル等のカルボキシル基を2個以上有する化合物
をスズの錯化剤として適宜含有させることができる。
【0035】紡糸方法は特に制限はなく、従来の紡糸方
法を用いることができる。例えば、紡糸ノズルから紡糸
液を押し出す方法等が挙げられる。得られるファイバー
の長径、及び直径等は前記紡糸液の粘度、ノズル径ある
いは紡糸ノズルから紡糸液を押し出す速度等を調整する
ことによって任意に制御することができる。尚、紡糸液
から紡糸した加熱処理前のファイバーをゲルファイバー
と称する。
【0036】本発明においては、紡糸後のゲルファイバ
ーの湿度に対する安定性を高めるために、該ゲルファイ
バーをアンモニア雰囲気に接触させることが重要であ
る。紡糸液中のハロゲンとスズの原子数比X/Sn、あ
るいはハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関係
X/(Sn+V)を前記範囲に制御し且つシリコンアル
コキサイドを添加することにより、紡糸後のゲルファイ
バーの湿度に対する安定性は改善されるが、アンモニア
雰囲気に接触させると更に湿度に対する安定性が増すこ
とが明かとなった。即ち、このアンモニア雰囲気でゲル
ファイバーを処理することによって、後述する加熱処理
までにゲルファイバーを高い湿度雰囲気に接触させても
ファイバー形状が安定に保持されるので取り扱いが極め
て容易になり、紡糸工程から加熱処理工程にスムーズに
移行できるようになる。
【0037】アンモニア雰囲気に接触させる方法は特に
限定されない。例えば、アンモニア雰囲気中で紡糸する
ことにより紡糸直後にアンモニア雰囲気に接触させる方
法、あるいは湿度の低い空気中で紡糸した後にアンモニ
ア雰囲気に接触させる方法等アンモニア雰囲気に接触さ
せる前に高い湿度に接触させない方法であれば何等制限
なく用いることができる。
【0038】アンモニア雰囲気としては、純アンモニア
ガス、純アンモニアガスを空気、窒素、酸素ガス等で希
釈した希釈アンモニアガス、あるいはアンモニア水から
蒸発するアンモニアガス等が適宜採用される。アンモニ
ア雰囲気中のアンモニア濃度は、特に制限されない。ア
ンモニア濃度が低い場合には、長時間接触させればよい
し、濃度が高い場合には、短時間の接触でよい。一般的
には、0.02%から5%の濃度のアンモニア雰囲気が
用いられる。
【0039】アンモニア雰囲気に接触させることによっ
て何故ゲルファイバーの耐湿性が向上するのか、本発明
者らも充分には説明し得ないが、ゲルファイバー中に含
まれるハロゲンがアンモニアとの反応によって捕らえら
れたり、除去されることにより吸湿性が低下するためで
はないかと推定される。
【0040】アンモニア雰囲気処理して得られるゲルフ
ァイバーの加熱処理は、ゲルファイバーからアルコール
などの有機溶媒、あるいは水などを除去してファイバー
の骨格を強くし、場合によっては、更に結晶化させる温
度で行われる。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバ
ーはそのままでは十分な機械的強度を示さない。機械的
強度はゲルファイバーを加熱処理することで発現する。
該加熱処理温度は得られるファイバーに機械的強度を付
与できる温度範囲内で有れば特に限定されない。加熱処
理温度が低い場合にはファイバー中にアルコール、水な
どが残存するために十分な機械的強度が生じない。ま
た、加熱処理温度が高すぎると酸化スズの分解が進行し
たり、あるいはファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度
が低下するなどの問題が生じる。上記理由により、加熱
処理温度は250〜1550℃の範囲が好ましい。更に
好適には300〜1500℃の温度で加熱処理すること
が好ましい。
【0041】第V族化合物を添加して、得られるファイ
バーの導電性を向上させたい場合もまた加熱処理が必要
である。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバーはそ
のままでは絶縁体であり、導電性はゲルファイバーを加
熱処理することで発現する。該加熱処理温度は得られる
ファイバーに導電性を付与できる温度範囲内であれば特
に限定されない。一般に、加熱処理温度が低い場合には
ファイバー中にアルコールなどの有機物、水等が残存す
るため、また第V族化合物が酸化物の形態にならず酸化
スズと充分に固溶しないため導電性が生じない。また加
熱処理温度が高すぎると、ファイバー中の第V族化合物
が揮散し導電性が低下する、酸化スズの分解が進行す
る、ファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度が低下する
などの問題を生じる。このため、加熱処理温度として2
50℃〜1550℃の温度範囲が好ましい。さらに好適
には、300℃〜1500℃の温度で加熱処理すること
が好ましい。
【0042】また、加熱処理は通常空気中で行われる
が、特に導電性の高いファイバーを得たいときには、窒
素、アルゴン、水素、アルゴンと水素の混合ガスなどの
還元性雰囲気下や真空中で加熱処理を行うことができ
る。
【0043】更に、該加熱処理に際し、ゲルファイバー
中に存在する水、アルコール等の揮発成分を、乾燥によ
って除去することが良好な酸化スズファイバーを得るた
めに望ましい。かかる乾燥は、加熱処理と同時に行って
も良いが、加熱処理前に予め行う方が良好なファイバー
を得るためには好ましい。これらの場合、乾燥温度は得
られるファイバーにクラックが発生することを防止する
ために、出来るだけ低い温度で行うことが好ましいが、
溶媒に沸点の高いアルコールを用いた場合には、余り低
すぎると乾燥に長時間を要し、効果的でない。一般的な
乾燥温度は室温〜300℃の範囲とすることが好まし
い。
【0044】本発明の、第V族化合物を含有する紡糸液
から得られる導電性酸化スズファイバーの比抵抗値は、
第V族化合物の種類、添加量、焼成雰囲気及び焼成温度
等によって大きく変わるが、通常、103〜10ー1Ω・
cmの値をとることができる。
【0045】また、本発明によって得られる(導電性)
酸化スズファイバーは、結晶質、非晶質のいずれでも取
りうるが、導電性の観点からは結晶質の方が好ましい。
【0046】
【発明の効果】本発明の方法により、加熱処理前にゲル
ファイバーを高い湿度雰囲気に接触させても軟化して形
状が崩れることがなくなり、次の加熱工程へ極めてスム
ーズに移行することができるようになった。この結果、
工業的に安定した操業が可能となり生産性が向上した。
更に、得られるファイバーの機械的強度が向上した。
【0047】
【実施例】本発明を以下実施例によって具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって限定されるもの
ではない。
【0048】実施例1 塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)を
メタノール100ml(2.47モル)に溶解させ均一
で透明な溶液にした。その後テトラメトキシシラン1.
14g(0.0075モル)を添加溶解させ均一な溶液
を得た。その後、エバポレータによる濃縮とメタノール
の添加を繰り返し塩素とスズの原子数の比Cl/Snが
1.62である高粘性のゾルからなる紡糸液とした。こ
の紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから押し出しアンモ
ニア濃度が5000ppmの雰囲気下でドラムに連続的
に巻き取った。得られたファイバ−を室温で1日放置
後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度
で30分間保持した。その後10℃/minの速度で5
00℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱処理
をおこなった。得られたファイバーは平均15μmの直
径を有し、ケイ光X線分析によりシリカが仕込組成通り
ファイバー中に存在していることが確認された。また、
X線回折の結果、酸化スズであることが確認された。得
られたファイバ−の比抵抗は平均8×105Ω・cmで
あった。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40M
Paであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85
%の雰囲気下に3時間放置したが軟化することなくファ
イバー形状を保持した。
【0049】実施例2 塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)、
および三塩化アンチモン (SbCl3)1g(0.004モル)をメタノール1
00ml(2.47モル)に溶解させ均一で透明な溶液
にした。その後テトラメトキシシラン1.14g(0.
0075モル)を添加溶解させ均一な溶液を得た。その
後、エバポレータによる濃縮とメタノールの添加を繰り
返し塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係Cl/
(Sn+Sb)が1.62である高粘性のゾルからなる
紡糸液とした。ここで、1.55NSn+1.60NV
1.55であり、1.80NSn+2.70NV=1.8
7である。この紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから押
し出しアンモニア濃度が2000ppmの雰囲気下でド
ラムに連続的に巻き取った。得られたファイバ−を室温
で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温
しその温度で30分間保持した。その後10℃/min
の速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持し
て加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均1
5μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモ
ンおよびシリカが仕込組成通りファイバー中に存在して
いることが確認された。また、X線回折の結果、酸化ス
ズのピークを有すること、アンチモンはその酸化物など
のピークはみられず酸化スズ中に固溶していることが確
認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・c
mであった。また、ファイバーの引っ張り強度は平均4
0MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度
85%の雰囲気下に3時間放置したが軟化することなく
ファイバー形状を保持した。
【0050】実施例3 Cl/Sn=1.78にし、アンモニア濃度を5%とす
ること以外実施例1と同様に紡糸液の調整を行なった。
得られた加熱処理後のファイバ−のケイ光X線分析によ
り、シリカが仕込組成通りファイバー中に存在している
ことが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズで
あることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は
平均8×105Ω・cmであった。また、ファイバーの
引っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸直後のゲ
ルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に3時間放置
したがファイバー形状を保持した。 実施例4 Cl/Sn=1.55とし、アンモニア濃度を1%とす
ること以外実施例1と同様に紡糸液の調整を行なった。
得られた加熱処理後のファイバ−のケイ光X線分析によ
り、シリカが仕込組成通りファイバー中に存在している
ことが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズで
あることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は
平均8×105Ω・cmであった。また、ファイバーの
引っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸直後のゲ
ルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に3時間放置
したがファイバー形状を保持した。この紡糸液は、10
時間放置しても沈澱は生じなかったが、24時間放置後
には紡糸液中に一部沈澱が析出した。 実施例5 臭化第一スズ(SnBr2)13.9g(0.05モ
ル)、三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.00
4モル)をメタノ−ル100ml(2.47モル)に溶
解させ均一で透明な溶液にした。その後、テトラメトキ
シシラン1.14g(0.0075モル)を添加溶解さ
せ均一な溶液を得た。その後、エバポレータによる濃縮
とメタノールの添加を繰り返し、臭素と塩素とスズ及び
アンチモンの原子数の関係(Br+Cl)/(Sn+S
b)が1.70である高粘性のゾルからなる紡糸液を調
製した。ここで、1.55NSn+1.60NV=1.5
5であり、1.80NSn+2.70NV=1.87であ
る。この紡糸液を圧力を加えてノズルから押し出し、ア
ンモニア濃度が200ppmの雰囲気下でドラムに連続
的に巻き取った。得られたファイバ−を室温で1日放置
後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度
で30分間保持した。その後10℃/minの速度で5
00℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱処理
をおこなった。得られたファイバーは平均15μmの直
径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンおよびシ
リカが仕込組成通りファイバー中に存在していることが
確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピーク
を有すること、アンチモンはその酸化物などのピークは
みられず酸化スズ中に固溶していることが確認された。
得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであっ
た。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPa
であった。紡糸直後のゲルファイバーを相対湿度85%
の雰囲気下に3時間放置したが軟化することなくファイ
バー形状を保持した。
【0051】実施例6 実施例2において、Cl/(Sn+Sb)を1.78に
し、アンモニア濃度を3%にすること以外は同様に行な
った。このとき、1.55NSn+1.60Nv=1.5
5であり、1.80NSn+2.70Nv=1.87であ
る。得られたファイバ−のケイ光X線分析により、アン
チモンおよびシリカが仕込組成通りファイバー中に存在
していることが確認された。また、X線回折の結果、酸
化スズのピークを有すること、アンチモンはその酸化物
などのピークはみられず酸化スズ中に固溶していること
が確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω
・cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は平
均40MPaであった。紡糸直後のゲルファイバーを相
対湿度85%の雰囲気下に3時間放置したがファイバー
形状を保持した。
【0052】実施例7 紡糸液中の塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係
Cl/(Sn+Sb)を1.55にすること以外実施例
2と同様に行った。このとき、1.55NSn+1.60
Nv=1.55であり、1.80NSn+2.70Nv=
1.87である。得られたファイバーは平均15μmの
直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンおよび
シリカが仕込組成通りファイバー中に存在していること
が確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピー
クを有すること、アンチモンはその酸化物などのピーク
はみられず酸化スズ中に固溶していることが確認され
た。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであ
った。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MP
aであった。紡糸直後のゲルファイバーを相対湿度85
%の雰囲気下に3時間放置したがファイバー形状を保持
した。この紡糸液は、10時間放置しても沈澱は生じな
かったが、24時間放置後には紡糸液中に一部沈澱が析
出した。
【0053】実施例8 メタノールの代わりにエタノールを100ml、SbC
3 1gの代わりにSb(OC253を1.13gを
用いることおよび塩素とスズとアンチモンの原子数の関
係Cl/(Sn+Sb)が1.65であること以外は実
施例2と同様に行なった。ここで、1.55NSn+1.
60NV=1.55であり、1.80NS n+2.70NV
=1.87である。得られたファイバーは平均15μm
の直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンおよ
びシリカが仕込組成通りファイバー中に存在しているこ
とが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピ
ークを有すること、アンチモンはその酸化物などのピー
クはみられず酸化スズ中に固溶していることが確認され
た。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであ
った。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MP
aであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%
の雰囲気下に3時間放置したが軟化することなくファイ
バー形状を保持した。
【0054】実施例9 塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)、
および三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.00
4モル)をメタノール100ml(2.47モル)に溶
解させ均一で透明な溶液にした。その後テトラメトキシ
シラン1.14g(0.0075モル)を添加溶解させ
均一な溶液を得た。その後、エバポレータによる濃縮と
メタノールの添加を繰り返し塩素とスズおよびアンチモ
ンの原子数の関係Cl/(Sn+Sb)が1.62であ
る高粘性のゾルからなる紡糸液を調整した。ここで、
1.55NSn+1.60NV=1.55であり、1.8
0NSn+2.70NV=1.87である。この紡糸液を
圧力を加えて紡糸ノズルから押し出し相対湿度55%の
空気雰囲気下でドラムに連続的に巻き取った。得られた
ファイバ−をアンモニア濃度200ppmの雰囲気下で
室温で放置後、空気中2℃/minの速度で120℃ま
で昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/
minの速度で500℃まで昇温しその温度で30分間
保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは
平均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、ア
ンチモンおよびシリカが仕込組成通りファイバー中に存
在していることが確認された。また、X線回折の結果、
酸化スズのピークを有すること、アンチモンはその酸化
物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶しているこ
とが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1
Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は
平均40MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相
対湿度85%の雰囲気下に3時間放置したが軟化するこ
となくファイバー形状を保持した。
【0055】実施例10 メタノールの代わりに2ーエトキシエタノールを用いる
こと以外は実施例2と同様に行なった。ここで、1.5
5NSn+1.60NV=1.55であり、1.80NSn
+2.70NV=1.87である。得られたファイバー
は平均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、
アンチモンおよびシリカが仕込組成通りファイバー中に
存在していることが確認された。また、X線回折の結
果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンはその
酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶してい
ることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平
均1Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り強
度は平均40MPaであった。紡糸後のゲルファイバー
を相対湿度85%の雰囲気下に3時間放置したが軟化す
ることなくファイバー形状を保持した。
【0056】実施例11 三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モ
ル)の代わりに、TaCl5 0.945g(0.00
26モル)を用いて、Cl/(Sn+Ta)=1.62
にすること以外は実施例2と同様に行なった。ここで、
1.55NSn+1.60NV=1.55であり、1.8
0NSn+2.70NV=1.84である。得られたファ
イバ−をケイ光X線分析、X線回折の結果、シリカおよ
びタンタルが仕込組成通り固溶した結晶質の酸化スズで
あることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は
平均3×103Ω・cmであった。また、ファイバーの
引っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸後のゲル
ファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に3時間放置し
たがファイバー形状を保持した。
【0057】実施例12 三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モ
ル)の代わりに、NbCl5 0.712g(0.00
26モル)を用いてCl/(Sn+Nb)=1.70に
すること以外は実施例2と同様に行なった。ここで、
1.55NSn+1.60NV=1.55であり、1.8
0NSn+2.70NV=1.84である。得られたファ
イバ−をケイ光X線分析、X線回折により分析した結
果、シリカおよびニオブが仕込組成通り固溶した結晶質
の酸化スズであることが確認された。 得られたファイ
バ−の比抵抗は、平均3×103Ω・cmであった。ま
た、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPaであっ
た。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲気
下に3時間放置したがファイバー形状を保持した。
【0058】実施例13 アンモニア濃度を500ppmにすること以外は、実施
例9と同様に行なった。
【0059】得られたファイバーは平均15μmの直径
を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンおよびシリ
カが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確
認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを
有すること、アンチモンはその酸化物などのピークはみ
られず酸化スズ中に固溶していることが確認された。得
られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであった。
また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPaであ
った。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲
気下に3時間放置したが軟化することなくファイバー形
状を保持した。
【0060】実施例14 メチルアルコール100ml中に四塩化珪素1.28g
(0.0075mol)を吸収させた。その後この溶液
にアンモニア水を過剰に添加し塩化アンモニウムを析出
させ濾過をおこなった。その後、濾液を真空脱気し溶液
中のアンモニアを取り除いた。この溶液に塩化第一スズ
(SnCl2)10g(0.05モル)、メタノール1
00ml(2.47モル)を加え均一で透明な溶液にし
た。その後、エバポレータによる濃縮とメタノールの添
加を繰り返し溶液中の塩素とスズの原子数の比Cl/S
nが1.62である高粘性のゾルからなる紡糸液とし
た。この紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから押し出し
アンモニア濃度が5000ppmの雰囲気下でドラムに
連続的に巻き取った。得られたファイバ−を室温で1日
放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその
温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度
で500℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱
処理をおこなった。得られたファイバーは平均15μm
の直径を有し、ケイ光X線分析によりシリカが仕込組成
通りファイバー中に存在していることが確認された。ま
た、X線回折の結果、酸化スズであることが確認され
た。得られたファイバ−の比抵抗は平均8×105Ω・
cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は平均
40MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿
度85%の雰囲気下に3時間放置したが軟化することな
くファイバー形状を保持した。 比較例1 アンモニア雰囲気の代わりに空気中で紡糸すること以外
は実施例1と同様に行った。得られたファイバ−を室温
で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温
しその温度で30分間保持した。その後10℃/min
の速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持し
て加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均1
5μmの直径を有し、X線回折の結果、酸化スズである
ことが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均
8×105Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ
張り強度は平均40MPaであった。紡糸後のゲルファ
イバーを相対湿度85%の雰囲気下に3時間放置したと
ころ軟化してファイバー形状が崩れた。
【0061】比較例2 アンモニア雰囲気の代わりに空気中で紡糸すること以外
は実施例2と同様に行った。得られたファイバ−を室温
で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温
しその温度で30分間保持した。その後10℃/min
の速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持し
て加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均1
5μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモ
ンが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確
認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを
有すること、アンチモンはその酸化物などのピークはみ
られず酸化スズ中に固溶していることが確認された。得
られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであった。
また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPaであ
った。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲
気下に3時間放置したところ軟化してファイバー形状が
崩れた。
【0062】比較例3 紡糸液中の塩素とスズの比Cl/Snを1.50にする
こと以外実施例1と同様に行ったが、紡糸液中に多量の
沈澱が析出しゲルファイバーの紡糸を行うことができな
かった。
【0063】比較例4 紡糸液中の塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係
Cl/(Sn+Sb)を1.50にすること以外実施例
2と同様に行ったが、紡糸液中には多量の沈澱が析出し
ゲルファイバーの紡糸を行うことができなかった。ここ
で、1.55NSn+1.60NV=1.55であり、
1.80NSn+2.70NV=1.87である。
【0064】比較例5 紡糸液中の塩素とスズの比Cl/Snを1.90にする
こと以外実施例1と同様に行った。この紡糸液を圧力を
加えて紡糸ノズルから押し出しアンモニア濃度が500
0ppmの雰囲気下でドラムに連続的に巻き取った。得
られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの
速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持し
た。その後10℃/minの速度で500℃まで昇温し
その温度で30分間保持して加熱処理をおこなった。得
られたファイバーは平均15μmの直径を有し、ケイ光
X線分析によりシリカが仕込組成通りファイバー中に存
在していることが確認された。また、X線回折の結果、
酸化スズであることが確認された。得られたファイバ−
の比抵抗は平均8×105Ω・cmであった。また、フ
ァイバーの引っ張り強度は平均40MPaであった。紡
糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に放
置したところ2.5時間後に軟化してファイバー形状を
崩した。
【0065】比較例6 紡糸液中の塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係
Cl/(Sn+Sb)を1.90にすること以外実施例
2と同様に行った。ここで、1.55NSn+1.60N
V=1.55であり、1.80NSn+2.70NV=1.
87である。この紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから
押し出しアンモニア濃度が2000ppmの雰囲気下で
ドラムに連続的に巻き取った。得られたファイバ−を室
温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇
温しその温度で30分間保持した。その後10℃/mi
nの速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持
して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均
15μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチ
モンおよびシリカが仕込組成通りファイバー中に存在し
ていることが確認された。また、X線回折の結果、酸化
スズのピークを有すること、アンチモンはその酸化物な
どのピークはみられず酸化スズ中に固溶していることが
確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・
cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は平均
40MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿
度85%の雰囲気下に放置したところ2.5時間後に軟
化して軟化してファイバー形状を崩した。
【0066】比較例7 テトラメトキシシランを添加しないこと以外実施例1と
同様に行った。得られたファイバーは平均15μmの直
径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンが仕込組
成導りファイバー中に存在していることが確認された。
また、X線回折の結果、酸化スズであることが確認され
た。得られたファイバ−の比抵抗は平均8×10-1Ω・
cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は平均
7MPaしかなかった。紡糸後のゲルファイバーを相対
湿度85%の雰囲気下に放置したところ2.5時間後に
軟化してファイバー形状を崩した。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコ−ルにハロゲン化スズ化合物およ
    びシリコンアルコキシドを溶解してなり、且つ該溶液中
    のハロゲンとスズの原子数の比(X/Sn)が1.55
    以上1.80未満である紡糸液から紡糸したゲルファイ
    バーをアンモニア雰囲気に接触させた後、加熱処理する
    ことを特徴とする酸化スズファイバーの製造方法。
  2. 【請求項2】 アルコールにハロゲン化スズ化合物、シ
    リコンアルコキシドおよび周期律表第V族元素化合物を
    溶解してなり、且つ該溶液中のハロゲン、スズおよび周
    期律表第V族元素の各原子数が次式の関係にある紡糸液
    から紡糸したゲルファイバーをアンモニア雰囲気に接触
    させた後、加熱処理することを特徴とする酸化スズファ
    イバーの製造方法。 【数1】 [ここで、NSnは溶液中のスズと周期律表第V族元素の
    原子数の総和に対するスズの原子数の比であり、Nvは
    溶液中のスズと周期律表第V族元素の原子数の総和に対
    する周期律表第V族元素の原子数の比であり、X、Sn
    およびVはそれぞれ溶液中のハロゲン、スズおよび周期
    律表第V族元素の原子数を表わす]
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