JP3532785B2 - 導電性酸化スズファイバー - Google Patents
導電性酸化スズファイバーInfo
- Publication number
- JP3532785B2 JP3532785B2 JP08834099A JP8834099A JP3532785B2 JP 3532785 B2 JP3532785 B2 JP 3532785B2 JP 08834099 A JP08834099 A JP 08834099A JP 8834099 A JP8834099 A JP 8834099A JP 3532785 B2 JP3532785 B2 JP 3532785B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fiber
- tin oxide
- group
- polycrystalline
- temperature
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Inorganic Fibers (AREA)
- Conductive Materials (AREA)
- Non-Insulated Conductors (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は導電性酸化スズファ
イバーに関する。詳しくは多結晶性または非晶性の導電
性酸化スズファイバーに関する。 【0002】 【従来の技術】ガスセンサにおいては感度および応答速
度の改善の観点から酸化スズのファイバー形状での提供
が強く望まれてきた。また、高分子材料に導電性を付与
する目的でカーボンファイバー等の添加が行なわれてい
るが、カーボンを用いた場合、それ自体黒色のため材料
の明彩色化が図れない等の問題点があった。このため、
金属繊維や金属酸化物の粉末を添加することが行なわれ
ている。金属繊維は高い導電性を有するものの長時間経
過すると繊維表面が酸化あるいは腐食して導電性が低下
するという欠点がある。又従来の金属酸化物粉は導電性
が金属繊維ほど高くないので高分子材料に導電性を付与
するためにはどうしても比較的多量に添加せざるをえ
ず、高分子材料の本来有する物性を低下させる欠点があ
った。耐薬品性、耐熱性に優れる酸化スズにおいても粉
末形状での添加が試みられている。ところで、導電性付
与の効果は導電性付与材料のアスペクト比が大きいほ
ど、高くなることが知られている。このため、導電性の
高い酸化スズをファイバー化することが求められてい
た。しかしながら、従来の固相反応法ではファイバーを
製造することは困難であった。このため、特開昭60−
54997、特開昭60−161337、特開昭62−
158199において溶融析出法によって酸化スズを製
造する方法が提案されている。しかしながら、これらの
方法では1000℃以上の高温、および何日にもわたる
反応時間を必要とする。しかも得られる酸化スズファイ
バーの形状が直径1μm以下、長さが3mmで且つ断面
が矩形というように形状が限定された上に、得られるフ
ァイバーはウィスカーであった。ウィスカーは結晶の乱
れはあるにしても本質的に単結晶であり、粒界がない。
従って、ウィスカーはガスの吸着による抵抗の変化でガ
ス濃度を検出する半導体材料としては適していない。何
故なら、ガスの吸着による抵抗の変化は半導体材料の粒
界に大きく依存するからである。 【0003】更に、上記従来の溶融析出法で得られるウ
ィスカーの断面形状は矩形であり、断面形状が略円形で
ある酸化ズズファイバーは得ることは出来なかった。例
えば、母材中にファイバーを添加して複合材料とした場
合、応力はファイバーのエッジ部分に集中する。そこで
機械的強度等の点で優れた複合材料を得るためには、応
力がエッジ部分へ集中することを避けてなるべく分散さ
せることが重要であり、このため繊維側面にエッジ部が
ないファイバーの断面形状が円形もしくはだ円形の如き
略円形のものが望まれていた。 【0004】ファイバーは直径が小さすぎる場合は取り
扱いが困難で複合材料として用いる場合、その機能を充
分に発揮させることができずその用途が限られてしまう
という問題があり、繊維長が短すぎる場合はペーパー状
物を作製することが困難であった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、直径および/
または繊維長が大きく、好ましくは連続した多結晶また
は非晶性のファイバーで、且つ電気抵抗値の低い導電性
酸化スズファイバーの製造について鋭意研究を重ねた。 【0006】 【課題を解決するための手段】その結果、高価で且つ不
安定で取り扱いが難しいスズアルコキシドを原料として
用いることなく、スズの塩化合物およびアルコールを主
成分とする溶液を用いることにより、驚くべきことに、
容易にしかもきわめて安価に目的の導電性酸化スズファ
イバーが得られることを見いだし、ここに本発明を完成
するに至った。 【0007】即ち、本発明は、酸化スズ中に、周期律表
第V族元素を酸化物換算で酸化スズに対して0.1〜2
5mol%含有する、比抵抗値が103〜10-1ohm
・cm、直径が1μm〜3mmの多結晶性又は非結晶性
の導電性酸化スズファイバーであり、他の発明は、一般
式ROH(式中、Rは非置換または置換アルキル基、非
置換または置換アルケニル基、もしくは非置換または置
換アリール基を示す)で表わされるアルコール、一般式
SnXa・bH2O(式中、XはCl原子、Br原子、I
原子、F原子、OH基、SO4基、NO3基またはCH3
COO基を示し、aは1〜4の整数を、bは0〜6の整
数を示す)で表わされるスズ化合物、および周期律表第
V族元素化合物が溶解されてなる紡糸液を相対湿度が4
0%以下の雰囲気下で紡糸し、ついで加熱処理すること
を特徴とする導電性酸化スズファイバーの製造方法。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明に特定される導電性酸化ス
ズファイバーは本発明者らによって初めて製造されたも
のである。本発明の導電性酸化スズファイバーの直径は
紡糸条件により任意の太さにすることができるが、通常
1μm〜3mm程度のものが製造できる。また、その繊
維長も任意に制御することが可能であり、連続して紡糸
すればほぼ無限の長さのものが製造可能である。又、本
発明の導電性酸化ズズファイバーは多結晶性あるいは非
晶性のいずれかの形態をとる。導電性酸化ズズファイバ
ーの形状は特に限定されないが、繊維側面にエッジがな
い断面形状が図1に示すような真円に近いものからだ円
のファイバーが、樹脂等の母材中に添加して複合材料と
した時好ましい。このような断面形状が略円形で連続し
た多結晶性または非晶性導電性酸化スズファイバーは後
述の紡糸法により容易に製造できる。 【0009】本発明の導電性酸化スズファイバーは、周
期率表第V族元素の酸化物を酸化スズ中に固溶して含有
する。従って周期率表第V族元素の酸化物に基づくX線
回析のピークは観察されない。 【0010】本発明の上記導電性酸化スズファイバーは
どの様な方法によって製造されたものでもよい。当該導
電性酸化スズファイバーを得る代表的な方法を例示すれ
ば、一般式ROH(式中、Rは非置換または置換アルキ
ル基、非置換または置換アルケニル基もしくは非置換ま
たは置換アリール基を示す)で表わされるアルコール
に、一般式SnXa・bH2O(式中、XはCl原子、B
r原子、I原子、F原子、OH基、SO4基、NO3基ま
たはCH3COO基を示し、aは1〜4の整数を、bは
0〜6の整数を示す)で表されるスズ化合物、および周
期律表第V族元素化合物を混合、溶解してなる紡糸液を
紡糸し、ついで加熱処理することにより得られる。 【0011】本発明に用いる一般式ROHで表わされる
アルコールにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブチル基、オクチル基等の非置換アルキル基、2
−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ヒド
ロキシエチル基、1−メトキシ−2−プロピル基、メト
キシエトキシエチル基、2−フェニルエチル基、フェニ
ルメチル基等の置換アルキル基、アリル基等の非置換ア
ルケニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−メチ
ル−3−ブテニル基等の置換アルケニル基、フェニル基
等の非置換アリール基、またはメトキシフェニル基、エ
トキシフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル
基等の置換アリール基を示す。 【0012】上記の置換アルキル基、置換アルケニル基
または置換アリール基における置換基の具体例として
は、上記したRの具体例に見られるメトキシ基、エトキ
シ基等のアルコキシル基、ヒドロキシル基、フェニル基
等のアリール基、メチル基、エチル基等のアルキル基の
他に、アミノ基、シアノ基、Cl原子、Br原子、I原
子、F原子等のハロゲン原子等が挙げられる。 【0013】これらアルコールの具体例としてメチルア
ルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブ
チルアルコール、オクチルアルコール、2−メトキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコー
ル、1−メトキシ−2−プロピルアルコール、メトキシ
エトキシエタノール、2−フェニルエチルアルコール、
ベンジルアルコール、アリルアルコール、2−メチル−
2−プロペン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−
1−オール、フェノール、メトキシフェノール、エトキ
シフェノール、クレゾール、エチルフェノール等を挙げ
ることができる。 【0014】特に、メチルアルコール、エチルアルコー
ルはスズ化合物の溶解度が高く好ましい。上記アルコー
ルは通常単独で用いられるが,スズ化合物との反応性,
あるいはスズ化合物の溶解性等を制御するために2種類
以上のアルコールの混合物を用いることもできる。 【0015】また紡糸液の安定性を向上させるために、
アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチ
ル等のカルボニル基を2個以上有する化合物も補助的に
用いることができる。更に、粘度等を調整するためにポ
リエチレンオキシド、ポリビニルアルコール等の有機高
分子を添加することができる。 【0016】本発明に用いる一般式SnXa・bH2Oで
表わされるスズ化合物において、XはCl原子、Br原
子、I原子、F原子、OH基、SO4基、NO3基または
CH 3COO基を示し、aは1〜4の整数を、bは0〜
6の整数を示す。このなかでも塩化スズ、臭化スズが価
格、安定性の点から好ましい。具体的には、SnC
l 2、SnCl2・2H2O、SnBr2、SnI2、Sn
F2、SnSO4、Sn(CH3COO)2、Sn(N
O3)2等が挙げられ、特に、SnCl2・2H2O、Sn
Cl2、SnBr2が好ましく用いられる。また上記スズ
化合物において有機化合物で修飾したもの、例えばSn
(CH3)2Cl2等も使用できる。 【0017】上記スズ化合物とアルコールの配合割合
は、スズ化合物がアルコールに均一に溶解する範囲であ
れば、特に制限されない。ただし、あまりにスズ化合物
の割合が低い場合は曳糸性を示さないので濃縮する必要
があり、アルコールが無駄になる。また、スズ化合物の
濃度があまりにも高いと沈澱が生じ均一な紡糸液が得ら
れない。従って、使用するスズ化合物とアルコールの種
類によってその配合割合は異なるが、一般的にはアルコ
ールに対するスズ化合物の使用割合はモル比で0.02
〜0.5が好ましい。 【0018】本発明に用いる周期律表第V族元素化合物
(以下V族化合物という)は最終生成物に含まれて導電
性を向上させる働きをなす。具体的にはバナジウム化合
物、ニオブ化合物、タンタル化合物、アンチモン化合
物、あるいはビスマス化合物等の周期律表第V族元素の
化合物が挙げられる。バナジウム化合物としては、VB
r3、VCl2、VCl3、VCl4、VOBr2、VOB
r3、VOCl3、VF3、VF4、VF5、VI36H2O、
バナジウムのアルコキシドが挙げられ、ニオブ化合物と
しては、NbCl5、NbBr5、NbF5、NbOC
l3、ニオブのアルコキシドが挙げられ、タンタル化合
物としては、TaBr5、TaCl5、タンタルのアルコ
キシドが挙げられ、アンチモン化合物としては、SbC
l3、SbCl5、SbBr3、オキシ塩化アンチモン、
あるいはアンチモンのアルコキシドが挙げられ、また、
ビスマス化合物としては、BiCl3、BiI2、ビスマ
スのアルコキシド等が挙げられる。これらV族化合物
は、後述する加熱処理によって最終的には酸化物となっ
て酸化スズ中に固溶する。 【0019】上記V族化合物の配合割合は、酸化スズフ
ァイバーに導電性を付与したい場合、酸化物換算で酸化
スズに対して0.1〜25mol%が好ましい。上記割
合があまりにも低いと得られる酸化スズファイバーの導
電性が小さく、またあまりに高くしても導電性付与の効
果は小さくなる。 【0020】スズ化合物およびV族化合物とアルコール
の溶解方法は、特に限定されず、撹拌下、スズ化合物お
よびV族化合物にアルコールを滴下する方法、あるいは
撹拌下、アルコールにスズ化合物およびV族化合物を溶
解させる方法等を用いることができる。 【0021】また、上記アルコール、スズ化合物および
V族化合物を主成分とする溶液に、水を添加することも
好ましい。その添加量は上記溶液の配合割合によっても
異なり、特に制限されない。一般的には、上記溶液に沈
澱を生じさせないことが基準となる。水を添加しない場
合でも紡糸することはできるが、ゲルファイバーの安定
性の観点から水をアルコール、スズ化合物およびV族化
合物の合計量に対してモル比で0.01〜1添加するこ
とが好ましい。 【0022】更にまた、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、アセ
チルアセトン等のカルボニル基を有する化合物、および
アンモニア等も触媒、錯化剤として適宜用いてもよい。 【0023】紡糸方法は特に制限はなく、従来の紡糸方
法を用いることができる。例えば、紡糸ノズルから紡糸
液を押し出す方法等が挙げられ、得られるファイバーの
繊維長、および直径等は前記紡糸液の粘度あるいは紡糸
ノズルから紡糸液を押し出す速度等を調整することによ
って任意に制御することができるが、紡糸時の相対湿度
条件が紡糸を左右する重要な要因となることが判明し
た。 【0024】即ち、紡糸されたファイバーが接する雰囲
気の相対湿度を低く保つことが重要である。ファイバー
が接する雰囲気の相対湿度が高すぎるとファイバーが紡
糸できなくなったり、あるいは繊維長が大きいファイバ
ーを紡糸することができなくなるという問題がある。従
って、任意のアスペクト比の、特に繊維長が2m以上の
ファイバーを安定的に紡糸するためにはファイバーが接
する雰囲気の相対湿度を40%以下に保つことが必要で
ある。相対湿度が40%以上でもファイバーを紡糸する
ことは可能であるが、特に繊維長が2m以上のファイバ
ー、特に連続ファイバーを安定的に紡糸することはでき
ない。この理由について、本発明者らも充分に説明し得
ないが、以下のように推定される。即ち、雰囲気の相対
湿度が高いと、紡糸したゲルファイバー中の溶媒である
アルコール、あるいは水分が蒸発し難いためゲルファイ
バーが速く固くならず形状が安定し難いこと、あるいは
得られたゲルファイバーは吸水性が高く一部潮解性があ
るため相対湿度が高いと得られたゲルファイバーが相対
湿度の高い雰囲気に接すると急に柔らかくなるためと考
えられる。従って、相対湿度を40%以下に保持してお
くことが重要である。 【0025】紡糸して得たゲルファイバーの加熱処理
は、ゲルファイバーに導電性を付与出きる温度で行われ
る。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバーはそのま
までは絶縁体であり、導電性はゲルファイバーを加熱処
理することで発現する。一般に、加熱処理温度が低い場
合にはゲルファイバー中にアルコールなどの有機物、あ
るいは水等が残存するため、またV族化合物が酸化物の
形態にならず酸化スズと充分に固溶しないため導電性が
生じない。加熱処理温度が高すぎると、ファイバー中の
V族化合物が揮散し導電性が低下する、酸化スズの分解
が進行する、ファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度が
低下するなどの問題点を生じる。更に、加熱処理温度に
よって得られる導電性酸化スズの結晶形態が変わる。 【0026】これらを勘案して、非晶性の導電性酸化ス
ズファイバーを得るためには、通常100〜250℃
で、多結晶性の導電性酸化スズファイバーを得るために
は、通常250〜1550℃で加熱処理する。 【0027】ところで、加熱処理は通常空気中で行われ
るが、特に導電性の高いファイバーを得たいときには、
窒素、アルゴン、水素、アルゴンと水素の混合ガスなど
の還元性雰囲気下や真空中で加熱処理を行うことができ
る。 【0028】また、該加熱処理に際し、ゲルファイバー
中に存在する水、アルコール等の揮発成分を、乾燥によ
って除去することが良好な導電性ファイバーを得るため
に望ましい。かかる乾燥は、加熱処理と同時に行っても
良いが、加熱処理前に予め行う方が良好な導電性ファイ
バーを得るためには好ましい。連続紡糸法の場合には、
加熱処理工程の前段に乾燥工程を置く方法が用いられ
る。これらの場合、乾燥温度は得られるファイバーにク
ラックが発生することを防止するために、出来るだけ低
い温度で行うことが好ましいが、溶媒に沸点の高いアル
コールを用いた場合には、余り低すぎると乾燥に長時間
を要し、効果的でない。一般的な乾燥温度は室温〜30
0℃の範囲とすることが好ましい。 【0029】本発明の導電性酸化スズファイバーの比抵
抗値はV族化合物の種類、添加量、焼成雰囲気および焼
成温度等によって大きく変わるが、通常、103〜10
-1ohm・cmの値をとることができる。 【0030】又、本発明の導電性酸化スズファイバー
は、多結晶性、非晶性のいづれの形態もとりうるが、導
電性の観点からは多結晶性のほうが好ましい。 【0031】 【発明の効果】本発明によれば、これまで製造すること
ができなかった多結晶性または非晶性の導電性酸化スズ
ファイバー、特に、断面形状が略円形の連続した、しか
も導電性に富む酸化スズファイバーを簡便且つ安価に提
供することができる。本発明の完成によって、従来の製
法で得られるバルク体あるいは粉体状の酸化スズ、或い
は酸化スズウィスカーでは適用が困難であった高感度ガ
スセンサ、あるいは導電性高分子材料等の複合材料等へ
利用できるようになった。 【0032】 【実施例】本発明を以下実施例によって具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって限定されるもの
ではない。 【0033】<実施例1>塩化第一スズ(SnCl2)
10g(0.05モル)および三塩化アンチモン(Sb
Cl3)1g(0.004モル)をメタノール100m
l(2.47モル)に溶解させ均一な溶液を得た。この
溶液を40℃に保った乾燥器中に保持して溶液を濃縮
し、高粘性のゾルとした。このゾルにガラス棒の先端を
浸し、相対湿度55%の雰囲気下に引き上げ速度を種々
変えて引き上げることにより、長さ約1mのゲルファイ
バーを多数紡糸した。得られたファイバーを室温で1日
放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその
温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度
で500℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱
処理をおこなった。得られたファイバーは、引き上げ速
度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光
X線分析により、アンチモンが仕込み組成通りこのファ
イバー中に存在していることが確認された。又、X線回
折の結果、酸化スズの複数の結晶面に対応するピークを
有すること、アンチモンはその酸化物等のピークはみら
れず多結晶性酸化スズ中に固溶していることが確認され
た。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm
・cmであった。該ファイバーの走査型電子顕微鏡写真
を図1に示す。 【0034】<実施例2>臭化第一スズ(SnBr2)
13.9g(0.05モル)および三塩化アンチモン
(SbCl3)1g(0.004モル)をメタノール1
00ml(2.47モル)に溶解させ均一な溶液を得
た。この溶液を40℃に保った乾燥器中に保持して溶液
を濃縮し、高粘性のゾルとした。このゾルにガラス棒の
先端を浸し、相対湿度55%の雰囲気下で引き上げ速度
を種々変えて引き上げることにより、長さ約1mのゲル
ファイバーを多数紡糸した。得られたファイバーを室温
で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温
しその温度で30分間保持した。その後10℃/min
の速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持し
て加熱処理をおこなった。得られたファイバーは、引き
上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、
ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモンが固
溶した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得
られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cm
であった。該ファイバーの走査型電子顕微鏡写真を図2
に示す。 【0035】<実施例3>塩化第一スズ二水和物(Sn
Cl2・2H2O)11.3g(0.05モル)および三
塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モル)
をメタノール100ml(2.47モル)に溶解させ均
一な溶液を得た。この溶液を40℃に保った乾燥器中に
保持して溶液を濃縮し、高粘性のゾルとした。このゾル
にガラス棒の先端を浸し、相対湿度55%の雰囲気下で
引き上げ速度を種々変えて引き上げることにより、長さ
約1mのゲルファイバーを多数紡糸した。得られたファ
イバーを室温で1日放置後、2℃/minの速度で12
0℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後1
0℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度で3
0分間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイ
バーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の
直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、ア
ンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであることが確
認された。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1
ohm・cmであった。該ファイバーの走査型電子顕微
鏡写真を図3に示す。 【0036】<実施例4>水を5ml添加すること以外
は実施例1と同様に行なった。得られたファイバーは長
さ約1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果よ
り、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は約8×
10-1ohm・cmであった。 【0037】<実施例5>メタノールの代わりにエタノ
ールを100mlおよびSbCl31gの代わりにSb
(OC2H5) 3 を1.13g添加すること以外は実施例
1と同様に行なった。得られたファイバーは長さ1m
で、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径
を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチ
モンが固溶した多結晶性の酸化スズであることが確認さ
れた。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1oh
m・cmであった。 【0038】<実施例6>メタノールの代わりに2−メ
チル−2−プロペン−1−オールを用いること、および
ロータリエバポレータで濃縮すること以外は実施例1と
同様に行なった。得られたファイバーは長さ1mで、引
き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有
し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモン
が固溶した多結晶性の酸化スズであることが確認され
た。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm
・cmであった。 【0039】<実施例7>メタノールの代わりに3−メ
チル−3−ブテン−1−オールを用いること、およびロ
ータリエバポレータで濃縮すること以外は実施例1と同
様に行なった。得られたファイバーは長さ1mで、引き
上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、
ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモンが固
溶した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得
られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cm
であった。 【0040】<実施例8>メタノールの代わりに2−メ
トキシエタノールを用いること、およびロータリエバポ
レータで濃縮すること以外は実施例1と同様に行なっ
た。得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に
応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線
分析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶した多結
晶性の酸化スズであることが確認された。得られたファ
イバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであった。 【0041】<実施例9>メタノールの代わりに2−エ
トキシエタノールを用いること、およびロータリエバポ
レータで濃縮すること以外は実施例1と同様に行なっ
た。得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に
応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線
分析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶した多結
晶性の酸化スズであることが確認された。得られたファ
イバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであった。 【0042】<実施例10>メタノールの代わりに1−
メトキシ−2−プロパノールを用いること、およびロー
タリエバポレータで濃縮すること以外は実施例1と同様
に行なった。得られたファイバーは長さ1mで、引き上
げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケ
イ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶
した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得ら
れたファイバーの比抵抗は約8×10 -1ohm・cmで
あった。 【0043】<実施例11>メタノールの代わりにエチ
レングリコールを用いること、およびロータリエバポレ
ータで濃縮すること以外は実施例1と同様に行なった。
得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に応じ
て1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線分
析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶した多結晶
性の酸化スズであることが確認された。得られたファイ
バーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであった。 【0044】<実施例12>メタノールの代わりにベン
ジルアルコールを用いること、および減圧下に加熱濃縮
すること以外は実施例1と同様に行なった。得られたフ
ァイバーは長さ1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜
2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線、X線回折の結
果より、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであ
ることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は約
8×10-1ohm・cmであった。 【0045】<実施例13>三塩化アンチモン(SbC
l3)1g(0.004モル)の代わりに、TaCl5
0.945g(0.0026モル)を用いること以外は
実施例1と同様に行なった。得られたファイバーは長さ
1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の
直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、タ
ンタルが仕込み組成通り固溶した多結晶性の酸化スズで
あることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は
約8×102ohm・cmであった。 【0046】<実施例14>三塩化アンチモン(SbC
l3)1g(0.004モル)の代わりに、NbCl5
0.712g(0.0026モル)を用いること以外は
実施例1と同様に行なった。得られたファイバーは長さ
1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の
直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、ニ
オブが仕込み組成通り固溶した多結晶性の酸化スズであ
ることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は約
8×102ohm・cmであった。 【0047】<比較例1>三塩化アンチモン(SbCl
3)を添加しないこと以外は実施例1と同様に行なっ
た。得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に
応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、X線回折の
結果、多結晶性の酸化スズであることが確認された。得
られたファイバーの比抵抗は約8×104ohm・cm
であった。 【0048】<実施例15>紡糸を相対湿度20%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例1と同様にし
て行ない、長さ2mから3mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果か
ら、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×1
0-1ohm・cmであった。 【0049】<実施例16>紡糸を相対湿度20%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例2と同様にし
て行ない、長さ2mから3mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果か
ら、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×1
0-1ohm・cmであった。 【0050】<実施例17>紡糸を相対湿度10%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例1と同様にし
て行ない、長さ3mから4mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果か
ら、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×1
0-1ohm・cmであった。 【0051】<実施例18>紡糸を相対湿度40%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例1と同様にし
て行ない、長さ2mから3mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて各々1μm〜2mm
の範囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果
から、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズである
ことが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×
10-1ohm・cmであった。 【0052】<実施例19> ボックス内の相対湿度を80%にすること以外は実施例
1と同様に行ない、長さ1cmのゲルファイバーを多数
得た。これらのファイバーを実施例1と同様の条件で加
熱処理を行なった。得られたファイバーは、引き上げ速
度に応じて1μm〜200μmの範囲の直径を有し、ケ
イ光X線分析、X線回折の結果から、アンチモンが固溶
した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得ら
れたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmで
あった。 【0053】<実施例20> ボックス内の相対湿度を50%にすること以外は実施例
1と同様に行ない、長さ1mのゲルファイバーを多数得
た。これらのファイバーを実施例1と同様の条件で加熱
処理を行なった。得られたファイバーは、引き上げ速度
に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X
線分析、X線回折の結果から、アンチモンが固溶した多
結晶性の酸化スズであることが確認された。得られたフ
ァイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであっ
た。
イバーに関する。詳しくは多結晶性または非晶性の導電
性酸化スズファイバーに関する。 【0002】 【従来の技術】ガスセンサにおいては感度および応答速
度の改善の観点から酸化スズのファイバー形状での提供
が強く望まれてきた。また、高分子材料に導電性を付与
する目的でカーボンファイバー等の添加が行なわれてい
るが、カーボンを用いた場合、それ自体黒色のため材料
の明彩色化が図れない等の問題点があった。このため、
金属繊維や金属酸化物の粉末を添加することが行なわれ
ている。金属繊維は高い導電性を有するものの長時間経
過すると繊維表面が酸化あるいは腐食して導電性が低下
するという欠点がある。又従来の金属酸化物粉は導電性
が金属繊維ほど高くないので高分子材料に導電性を付与
するためにはどうしても比較的多量に添加せざるをえ
ず、高分子材料の本来有する物性を低下させる欠点があ
った。耐薬品性、耐熱性に優れる酸化スズにおいても粉
末形状での添加が試みられている。ところで、導電性付
与の効果は導電性付与材料のアスペクト比が大きいほ
ど、高くなることが知られている。このため、導電性の
高い酸化スズをファイバー化することが求められてい
た。しかしながら、従来の固相反応法ではファイバーを
製造することは困難であった。このため、特開昭60−
54997、特開昭60−161337、特開昭62−
158199において溶融析出法によって酸化スズを製
造する方法が提案されている。しかしながら、これらの
方法では1000℃以上の高温、および何日にもわたる
反応時間を必要とする。しかも得られる酸化スズファイ
バーの形状が直径1μm以下、長さが3mmで且つ断面
が矩形というように形状が限定された上に、得られるフ
ァイバーはウィスカーであった。ウィスカーは結晶の乱
れはあるにしても本質的に単結晶であり、粒界がない。
従って、ウィスカーはガスの吸着による抵抗の変化でガ
ス濃度を検出する半導体材料としては適していない。何
故なら、ガスの吸着による抵抗の変化は半導体材料の粒
界に大きく依存するからである。 【0003】更に、上記従来の溶融析出法で得られるウ
ィスカーの断面形状は矩形であり、断面形状が略円形で
ある酸化ズズファイバーは得ることは出来なかった。例
えば、母材中にファイバーを添加して複合材料とした場
合、応力はファイバーのエッジ部分に集中する。そこで
機械的強度等の点で優れた複合材料を得るためには、応
力がエッジ部分へ集中することを避けてなるべく分散さ
せることが重要であり、このため繊維側面にエッジ部が
ないファイバーの断面形状が円形もしくはだ円形の如き
略円形のものが望まれていた。 【0004】ファイバーは直径が小さすぎる場合は取り
扱いが困難で複合材料として用いる場合、その機能を充
分に発揮させることができずその用途が限られてしまう
という問題があり、繊維長が短すぎる場合はペーパー状
物を作製することが困難であった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、直径および/
または繊維長が大きく、好ましくは連続した多結晶また
は非晶性のファイバーで、且つ電気抵抗値の低い導電性
酸化スズファイバーの製造について鋭意研究を重ねた。 【0006】 【課題を解決するための手段】その結果、高価で且つ不
安定で取り扱いが難しいスズアルコキシドを原料として
用いることなく、スズの塩化合物およびアルコールを主
成分とする溶液を用いることにより、驚くべきことに、
容易にしかもきわめて安価に目的の導電性酸化スズファ
イバーが得られることを見いだし、ここに本発明を完成
するに至った。 【0007】即ち、本発明は、酸化スズ中に、周期律表
第V族元素を酸化物換算で酸化スズに対して0.1〜2
5mol%含有する、比抵抗値が103〜10-1ohm
・cm、直径が1μm〜3mmの多結晶性又は非結晶性
の導電性酸化スズファイバーであり、他の発明は、一般
式ROH(式中、Rは非置換または置換アルキル基、非
置換または置換アルケニル基、もしくは非置換または置
換アリール基を示す)で表わされるアルコール、一般式
SnXa・bH2O(式中、XはCl原子、Br原子、I
原子、F原子、OH基、SO4基、NO3基またはCH3
COO基を示し、aは1〜4の整数を、bは0〜6の整
数を示す)で表わされるスズ化合物、および周期律表第
V族元素化合物が溶解されてなる紡糸液を相対湿度が4
0%以下の雰囲気下で紡糸し、ついで加熱処理すること
を特徴とする導電性酸化スズファイバーの製造方法。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明に特定される導電性酸化ス
ズファイバーは本発明者らによって初めて製造されたも
のである。本発明の導電性酸化スズファイバーの直径は
紡糸条件により任意の太さにすることができるが、通常
1μm〜3mm程度のものが製造できる。また、その繊
維長も任意に制御することが可能であり、連続して紡糸
すればほぼ無限の長さのものが製造可能である。又、本
発明の導電性酸化ズズファイバーは多結晶性あるいは非
晶性のいずれかの形態をとる。導電性酸化ズズファイバ
ーの形状は特に限定されないが、繊維側面にエッジがな
い断面形状が図1に示すような真円に近いものからだ円
のファイバーが、樹脂等の母材中に添加して複合材料と
した時好ましい。このような断面形状が略円形で連続し
た多結晶性または非晶性導電性酸化スズファイバーは後
述の紡糸法により容易に製造できる。 【0009】本発明の導電性酸化スズファイバーは、周
期率表第V族元素の酸化物を酸化スズ中に固溶して含有
する。従って周期率表第V族元素の酸化物に基づくX線
回析のピークは観察されない。 【0010】本発明の上記導電性酸化スズファイバーは
どの様な方法によって製造されたものでもよい。当該導
電性酸化スズファイバーを得る代表的な方法を例示すれ
ば、一般式ROH(式中、Rは非置換または置換アルキ
ル基、非置換または置換アルケニル基もしくは非置換ま
たは置換アリール基を示す)で表わされるアルコール
に、一般式SnXa・bH2O(式中、XはCl原子、B
r原子、I原子、F原子、OH基、SO4基、NO3基ま
たはCH3COO基を示し、aは1〜4の整数を、bは
0〜6の整数を示す)で表されるスズ化合物、および周
期律表第V族元素化合物を混合、溶解してなる紡糸液を
紡糸し、ついで加熱処理することにより得られる。 【0011】本発明に用いる一般式ROHで表わされる
アルコールにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピ
ル基、ブチル基、オクチル基等の非置換アルキル基、2
−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ヒド
ロキシエチル基、1−メトキシ−2−プロピル基、メト
キシエトキシエチル基、2−フェニルエチル基、フェニ
ルメチル基等の置換アルキル基、アリル基等の非置換ア
ルケニル基、2−メチル−2−プロペニル基、3−メチ
ル−3−ブテニル基等の置換アルケニル基、フェニル基
等の非置換アリール基、またはメトキシフェニル基、エ
トキシフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル
基等の置換アリール基を示す。 【0012】上記の置換アルキル基、置換アルケニル基
または置換アリール基における置換基の具体例として
は、上記したRの具体例に見られるメトキシ基、エトキ
シ基等のアルコキシル基、ヒドロキシル基、フェニル基
等のアリール基、メチル基、エチル基等のアルキル基の
他に、アミノ基、シアノ基、Cl原子、Br原子、I原
子、F原子等のハロゲン原子等が挙げられる。 【0013】これらアルコールの具体例としてメチルア
ルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブ
チルアルコール、オクチルアルコール、2−メトキシエ
タノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコー
ル、1−メトキシ−2−プロピルアルコール、メトキシ
エトキシエタノール、2−フェニルエチルアルコール、
ベンジルアルコール、アリルアルコール、2−メチル−
2−プロペン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−
1−オール、フェノール、メトキシフェノール、エトキ
シフェノール、クレゾール、エチルフェノール等を挙げ
ることができる。 【0014】特に、メチルアルコール、エチルアルコー
ルはスズ化合物の溶解度が高く好ましい。上記アルコー
ルは通常単独で用いられるが,スズ化合物との反応性,
あるいはスズ化合物の溶解性等を制御するために2種類
以上のアルコールの混合物を用いることもできる。 【0015】また紡糸液の安定性を向上させるために、
アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチ
ル等のカルボニル基を2個以上有する化合物も補助的に
用いることができる。更に、粘度等を調整するためにポ
リエチレンオキシド、ポリビニルアルコール等の有機高
分子を添加することができる。 【0016】本発明に用いる一般式SnXa・bH2Oで
表わされるスズ化合物において、XはCl原子、Br原
子、I原子、F原子、OH基、SO4基、NO3基または
CH 3COO基を示し、aは1〜4の整数を、bは0〜
6の整数を示す。このなかでも塩化スズ、臭化スズが価
格、安定性の点から好ましい。具体的には、SnC
l 2、SnCl2・2H2O、SnBr2、SnI2、Sn
F2、SnSO4、Sn(CH3COO)2、Sn(N
O3)2等が挙げられ、特に、SnCl2・2H2O、Sn
Cl2、SnBr2が好ましく用いられる。また上記スズ
化合物において有機化合物で修飾したもの、例えばSn
(CH3)2Cl2等も使用できる。 【0017】上記スズ化合物とアルコールの配合割合
は、スズ化合物がアルコールに均一に溶解する範囲であ
れば、特に制限されない。ただし、あまりにスズ化合物
の割合が低い場合は曳糸性を示さないので濃縮する必要
があり、アルコールが無駄になる。また、スズ化合物の
濃度があまりにも高いと沈澱が生じ均一な紡糸液が得ら
れない。従って、使用するスズ化合物とアルコールの種
類によってその配合割合は異なるが、一般的にはアルコ
ールに対するスズ化合物の使用割合はモル比で0.02
〜0.5が好ましい。 【0018】本発明に用いる周期律表第V族元素化合物
(以下V族化合物という)は最終生成物に含まれて導電
性を向上させる働きをなす。具体的にはバナジウム化合
物、ニオブ化合物、タンタル化合物、アンチモン化合
物、あるいはビスマス化合物等の周期律表第V族元素の
化合物が挙げられる。バナジウム化合物としては、VB
r3、VCl2、VCl3、VCl4、VOBr2、VOB
r3、VOCl3、VF3、VF4、VF5、VI36H2O、
バナジウムのアルコキシドが挙げられ、ニオブ化合物と
しては、NbCl5、NbBr5、NbF5、NbOC
l3、ニオブのアルコキシドが挙げられ、タンタル化合
物としては、TaBr5、TaCl5、タンタルのアルコ
キシドが挙げられ、アンチモン化合物としては、SbC
l3、SbCl5、SbBr3、オキシ塩化アンチモン、
あるいはアンチモンのアルコキシドが挙げられ、また、
ビスマス化合物としては、BiCl3、BiI2、ビスマ
スのアルコキシド等が挙げられる。これらV族化合物
は、後述する加熱処理によって最終的には酸化物となっ
て酸化スズ中に固溶する。 【0019】上記V族化合物の配合割合は、酸化スズフ
ァイバーに導電性を付与したい場合、酸化物換算で酸化
スズに対して0.1〜25mol%が好ましい。上記割
合があまりにも低いと得られる酸化スズファイバーの導
電性が小さく、またあまりに高くしても導電性付与の効
果は小さくなる。 【0020】スズ化合物およびV族化合物とアルコール
の溶解方法は、特に限定されず、撹拌下、スズ化合物お
よびV族化合物にアルコールを滴下する方法、あるいは
撹拌下、アルコールにスズ化合物およびV族化合物を溶
解させる方法等を用いることができる。 【0021】また、上記アルコール、スズ化合物および
V族化合物を主成分とする溶液に、水を添加することも
好ましい。その添加量は上記溶液の配合割合によっても
異なり、特に制限されない。一般的には、上記溶液に沈
澱を生じさせないことが基準となる。水を添加しない場
合でも紡糸することはできるが、ゲルファイバーの安定
性の観点から水をアルコール、スズ化合物およびV族化
合物の合計量に対してモル比で0.01〜1添加するこ
とが好ましい。 【0022】更にまた、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、アセ
チルアセトン等のカルボニル基を有する化合物、および
アンモニア等も触媒、錯化剤として適宜用いてもよい。 【0023】紡糸方法は特に制限はなく、従来の紡糸方
法を用いることができる。例えば、紡糸ノズルから紡糸
液を押し出す方法等が挙げられ、得られるファイバーの
繊維長、および直径等は前記紡糸液の粘度あるいは紡糸
ノズルから紡糸液を押し出す速度等を調整することによ
って任意に制御することができるが、紡糸時の相対湿度
条件が紡糸を左右する重要な要因となることが判明し
た。 【0024】即ち、紡糸されたファイバーが接する雰囲
気の相対湿度を低く保つことが重要である。ファイバー
が接する雰囲気の相対湿度が高すぎるとファイバーが紡
糸できなくなったり、あるいは繊維長が大きいファイバ
ーを紡糸することができなくなるという問題がある。従
って、任意のアスペクト比の、特に繊維長が2m以上の
ファイバーを安定的に紡糸するためにはファイバーが接
する雰囲気の相対湿度を40%以下に保つことが必要で
ある。相対湿度が40%以上でもファイバーを紡糸する
ことは可能であるが、特に繊維長が2m以上のファイバ
ー、特に連続ファイバーを安定的に紡糸することはでき
ない。この理由について、本発明者らも充分に説明し得
ないが、以下のように推定される。即ち、雰囲気の相対
湿度が高いと、紡糸したゲルファイバー中の溶媒である
アルコール、あるいは水分が蒸発し難いためゲルファイ
バーが速く固くならず形状が安定し難いこと、あるいは
得られたゲルファイバーは吸水性が高く一部潮解性があ
るため相対湿度が高いと得られたゲルファイバーが相対
湿度の高い雰囲気に接すると急に柔らかくなるためと考
えられる。従って、相対湿度を40%以下に保持してお
くことが重要である。 【0025】紡糸して得たゲルファイバーの加熱処理
は、ゲルファイバーに導電性を付与出きる温度で行われ
る。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバーはそのま
までは絶縁体であり、導電性はゲルファイバーを加熱処
理することで発現する。一般に、加熱処理温度が低い場
合にはゲルファイバー中にアルコールなどの有機物、あ
るいは水等が残存するため、またV族化合物が酸化物の
形態にならず酸化スズと充分に固溶しないため導電性が
生じない。加熱処理温度が高すぎると、ファイバー中の
V族化合物が揮散し導電性が低下する、酸化スズの分解
が進行する、ファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度が
低下するなどの問題点を生じる。更に、加熱処理温度に
よって得られる導電性酸化スズの結晶形態が変わる。 【0026】これらを勘案して、非晶性の導電性酸化ス
ズファイバーを得るためには、通常100〜250℃
で、多結晶性の導電性酸化スズファイバーを得るために
は、通常250〜1550℃で加熱処理する。 【0027】ところで、加熱処理は通常空気中で行われ
るが、特に導電性の高いファイバーを得たいときには、
窒素、アルゴン、水素、アルゴンと水素の混合ガスなど
の還元性雰囲気下や真空中で加熱処理を行うことができ
る。 【0028】また、該加熱処理に際し、ゲルファイバー
中に存在する水、アルコール等の揮発成分を、乾燥によ
って除去することが良好な導電性ファイバーを得るため
に望ましい。かかる乾燥は、加熱処理と同時に行っても
良いが、加熱処理前に予め行う方が良好な導電性ファイ
バーを得るためには好ましい。連続紡糸法の場合には、
加熱処理工程の前段に乾燥工程を置く方法が用いられ
る。これらの場合、乾燥温度は得られるファイバーにク
ラックが発生することを防止するために、出来るだけ低
い温度で行うことが好ましいが、溶媒に沸点の高いアル
コールを用いた場合には、余り低すぎると乾燥に長時間
を要し、効果的でない。一般的な乾燥温度は室温〜30
0℃の範囲とすることが好ましい。 【0029】本発明の導電性酸化スズファイバーの比抵
抗値はV族化合物の種類、添加量、焼成雰囲気および焼
成温度等によって大きく変わるが、通常、103〜10
-1ohm・cmの値をとることができる。 【0030】又、本発明の導電性酸化スズファイバー
は、多結晶性、非晶性のいづれの形態もとりうるが、導
電性の観点からは多結晶性のほうが好ましい。 【0031】 【発明の効果】本発明によれば、これまで製造すること
ができなかった多結晶性または非晶性の導電性酸化スズ
ファイバー、特に、断面形状が略円形の連続した、しか
も導電性に富む酸化スズファイバーを簡便且つ安価に提
供することができる。本発明の完成によって、従来の製
法で得られるバルク体あるいは粉体状の酸化スズ、或い
は酸化スズウィスカーでは適用が困難であった高感度ガ
スセンサ、あるいは導電性高分子材料等の複合材料等へ
利用できるようになった。 【0032】 【実施例】本発明を以下実施例によって具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって限定されるもの
ではない。 【0033】<実施例1>塩化第一スズ(SnCl2)
10g(0.05モル)および三塩化アンチモン(Sb
Cl3)1g(0.004モル)をメタノール100m
l(2.47モル)に溶解させ均一な溶液を得た。この
溶液を40℃に保った乾燥器中に保持して溶液を濃縮
し、高粘性のゾルとした。このゾルにガラス棒の先端を
浸し、相対湿度55%の雰囲気下に引き上げ速度を種々
変えて引き上げることにより、長さ約1mのゲルファイ
バーを多数紡糸した。得られたファイバーを室温で1日
放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその
温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度
で500℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱
処理をおこなった。得られたファイバーは、引き上げ速
度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光
X線分析により、アンチモンが仕込み組成通りこのファ
イバー中に存在していることが確認された。又、X線回
折の結果、酸化スズの複数の結晶面に対応するピークを
有すること、アンチモンはその酸化物等のピークはみら
れず多結晶性酸化スズ中に固溶していることが確認され
た。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm
・cmであった。該ファイバーの走査型電子顕微鏡写真
を図1に示す。 【0034】<実施例2>臭化第一スズ(SnBr2)
13.9g(0.05モル)および三塩化アンチモン
(SbCl3)1g(0.004モル)をメタノール1
00ml(2.47モル)に溶解させ均一な溶液を得
た。この溶液を40℃に保った乾燥器中に保持して溶液
を濃縮し、高粘性のゾルとした。このゾルにガラス棒の
先端を浸し、相対湿度55%の雰囲気下で引き上げ速度
を種々変えて引き上げることにより、長さ約1mのゲル
ファイバーを多数紡糸した。得られたファイバーを室温
で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温
しその温度で30分間保持した。その後10℃/min
の速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持し
て加熱処理をおこなった。得られたファイバーは、引き
上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、
ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモンが固
溶した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得
られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cm
であった。該ファイバーの走査型電子顕微鏡写真を図2
に示す。 【0035】<実施例3>塩化第一スズ二水和物(Sn
Cl2・2H2O)11.3g(0.05モル)および三
塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モル)
をメタノール100ml(2.47モル)に溶解させ均
一な溶液を得た。この溶液を40℃に保った乾燥器中に
保持して溶液を濃縮し、高粘性のゾルとした。このゾル
にガラス棒の先端を浸し、相対湿度55%の雰囲気下で
引き上げ速度を種々変えて引き上げることにより、長さ
約1mのゲルファイバーを多数紡糸した。得られたファ
イバーを室温で1日放置後、2℃/minの速度で12
0℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後1
0℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度で3
0分間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイ
バーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の
直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、ア
ンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであることが確
認された。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1
ohm・cmであった。該ファイバーの走査型電子顕微
鏡写真を図3に示す。 【0036】<実施例4>水を5ml添加すること以外
は実施例1と同様に行なった。得られたファイバーは長
さ約1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果よ
り、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は約8×
10-1ohm・cmであった。 【0037】<実施例5>メタノールの代わりにエタノ
ールを100mlおよびSbCl31gの代わりにSb
(OC2H5) 3 を1.13g添加すること以外は実施例
1と同様に行なった。得られたファイバーは長さ1m
で、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径
を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチ
モンが固溶した多結晶性の酸化スズであることが確認さ
れた。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1oh
m・cmであった。 【0038】<実施例6>メタノールの代わりに2−メ
チル−2−プロペン−1−オールを用いること、および
ロータリエバポレータで濃縮すること以外は実施例1と
同様に行なった。得られたファイバーは長さ1mで、引
き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有
し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモン
が固溶した多結晶性の酸化スズであることが確認され
た。得られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm
・cmであった。 【0039】<実施例7>メタノールの代わりに3−メ
チル−3−ブテン−1−オールを用いること、およびロ
ータリエバポレータで濃縮すること以外は実施例1と同
様に行なった。得られたファイバーは長さ1mで、引き
上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、
ケイ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモンが固
溶した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得
られたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cm
であった。 【0040】<実施例8>メタノールの代わりに2−メ
トキシエタノールを用いること、およびロータリエバポ
レータで濃縮すること以外は実施例1と同様に行なっ
た。得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に
応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線
分析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶した多結
晶性の酸化スズであることが確認された。得られたファ
イバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであった。 【0041】<実施例9>メタノールの代わりに2−エ
トキシエタノールを用いること、およびロータリエバポ
レータで濃縮すること以外は実施例1と同様に行なっ
た。得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に
応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線
分析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶した多結
晶性の酸化スズであることが確認された。得られたファ
イバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであった。 【0042】<実施例10>メタノールの代わりに1−
メトキシ−2−プロパノールを用いること、およびロー
タリエバポレータで濃縮すること以外は実施例1と同様
に行なった。得られたファイバーは長さ1mで、引き上
げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケ
イ光X線分析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶
した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得ら
れたファイバーの比抵抗は約8×10 -1ohm・cmで
あった。 【0043】<実施例11>メタノールの代わりにエチ
レングリコールを用いること、およびロータリエバポレ
ータで濃縮すること以外は実施例1と同様に行なった。
得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に応じ
て1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線分
析、X線回折の結果より、アンチモンが固溶した多結晶
性の酸化スズであることが確認された。得られたファイ
バーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであった。 【0044】<実施例12>メタノールの代わりにベン
ジルアルコールを用いること、および減圧下に加熱濃縮
すること以外は実施例1と同様に行なった。得られたフ
ァイバーは長さ1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜
2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X線、X線回折の結
果より、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであ
ることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は約
8×10-1ohm・cmであった。 【0045】<実施例13>三塩化アンチモン(SbC
l3)1g(0.004モル)の代わりに、TaCl5
0.945g(0.0026モル)を用いること以外は
実施例1と同様に行なった。得られたファイバーは長さ
1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の
直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、タ
ンタルが仕込み組成通り固溶した多結晶性の酸化スズで
あることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は
約8×102ohm・cmであった。 【0046】<実施例14>三塩化アンチモン(SbC
l3)1g(0.004モル)の代わりに、NbCl5
0.712g(0.0026モル)を用いること以外は
実施例1と同様に行なった。得られたファイバーは長さ
1mで、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範囲の
直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果より、ニ
オブが仕込み組成通り固溶した多結晶性の酸化スズであ
ることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は約
8×102ohm・cmであった。 【0047】<比較例1>三塩化アンチモン(SbCl
3)を添加しないこと以外は実施例1と同様に行なっ
た。得られたファイバーは長さ1mで、引き上げ速度に
応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、X線回折の
結果、多結晶性の酸化スズであることが確認された。得
られたファイバーの比抵抗は約8×104ohm・cm
であった。 【0048】<実施例15>紡糸を相対湿度20%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例1と同様にし
て行ない、長さ2mから3mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果か
ら、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×1
0-1ohm・cmであった。 【0049】<実施例16>紡糸を相対湿度20%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例2と同様にし
て行ない、長さ2mから3mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果か
ら、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×1
0-1ohm・cmであった。 【0050】<実施例17>紡糸を相対湿度10%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例1と同様にし
て行ない、長さ3mから4mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて1μm〜2mmの範
囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果か
ら、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズであるこ
とが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×1
0-1ohm・cmであった。 【0051】<実施例18>紡糸を相対湿度40%に保
持したボックス内で行なう事以外は実施例1と同様にし
て行ない、長さ2mから3mのゲルファイバーを多数紡
糸できた。得られたファイバーを2℃/minの速度で
120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その
後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度
で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたフ
ァイバーは、引き上げ速度に応じて各々1μm〜2mm
の範囲の直径を有し、ケイ光X線分析、X線回折の結果
から、アンチモンが固溶した多結晶性の酸化スズである
ことが確認された。得られたファイバーの比抵抗は8×
10-1ohm・cmであった。 【0052】<実施例19> ボックス内の相対湿度を80%にすること以外は実施例
1と同様に行ない、長さ1cmのゲルファイバーを多数
得た。これらのファイバーを実施例1と同様の条件で加
熱処理を行なった。得られたファイバーは、引き上げ速
度に応じて1μm〜200μmの範囲の直径を有し、ケ
イ光X線分析、X線回折の結果から、アンチモンが固溶
した多結晶性の酸化スズであることが確認された。得ら
れたファイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmで
あった。 【0053】<実施例20> ボックス内の相対湿度を50%にすること以外は実施例
1と同様に行ない、長さ1mのゲルファイバーを多数得
た。これらのファイバーを実施例1と同様の条件で加熱
処理を行なった。得られたファイバーは、引き上げ速度
に応じて1μm〜2mmの範囲の直径を有し、ケイ光X
線分析、X線回折の結果から、アンチモンが固溶した多
結晶性の酸化スズであることが確認された。得られたフ
ァイバーの比抵抗は約8×10-1ohm・cmであっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた多結晶性導電性酸化スズ
ファイバーの繊維形状を表す走査型電子顕微鏡写真 【図2】 実施例2で得られた多結晶性導電性酸化スズ
ファイバーの繊維形状を表す走査型電子顕微鏡写真 【図3】 実施例3で得られた多結晶性導電性酸化スズ
ファイバーの繊維形状を表す走査型電子顕微鏡写真
ファイバーの繊維形状を表す走査型電子顕微鏡写真 【図2】 実施例2で得られた多結晶性導電性酸化スズ
ファイバーの繊維形状を表す走査型電子顕微鏡写真 【図3】 実施例3で得られた多結晶性導電性酸化スズ
ファイバーの繊維形状を表す走査型電子顕微鏡写真
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 昭61−28913(JP,A)
特開 昭59−30723(JP,A)
特開 昭62−158199(JP,A)
特開 昭52−2899(JP,A)
特開 昭56−120519(JP,A)
特開 昭50−108183(JP,A)
特開 昭60−161337(JP,A)
特開 昭60−54997(JP,A)
特公 昭48−17615(JP,B1)
英国特許919373(GB,B)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C01G 19/00 - 19/02
D01F 9/08
H01B 1/08
H01B 5/02
CA(STN)
EUROPAT(QUESTEL)
JICSTファイル(JOIS)
WPI(DIALOG)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸化スズ中に、周期律表第V族元素を酸
化物換算で酸化スズに対して0.1〜25mol%含有
する、比抵抗値が103〜10-1ohm・cm、直径が
1μm〜3mmの多結晶性又は非結晶性酸化スズファイ
バー。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08834099A JP3532785B2 (ja) | 1991-10-31 | 1999-03-30 | 導電性酸化スズファイバー |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3-286663 | 1991-10-31 | ||
JP28666391 | 1991-10-31 | ||
JP08834099A JP3532785B2 (ja) | 1991-10-31 | 1999-03-30 | 導電性酸化スズファイバー |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4101701A Division JP2960606B2 (ja) | 1991-10-31 | 1992-03-27 | 導電性酸化スズファイバーの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000072439A JP2000072439A (ja) | 2000-03-07 |
JP3532785B2 true JP3532785B2 (ja) | 2004-05-31 |
Family
ID=26429731
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP08834099A Expired - Fee Related JP3532785B2 (ja) | 1991-10-31 | 1999-03-30 | 導電性酸化スズファイバー |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3532785B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5150140B2 (ja) * | 2007-06-08 | 2013-02-20 | 日本バイリーン株式会社 | 極細繊維不織布及びその製造方法 |
JP5363131B2 (ja) * | 2009-02-02 | 2013-12-11 | 富士フイルム株式会社 | 異方導電性部材およびその製造方法 |
-
1999
- 1999-03-30 JP JP08834099A patent/JP3532785B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000072439A (ja) | 2000-03-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3532785B2 (ja) | 導電性酸化スズファイバー | |
US5330833A (en) | Tin oxide fiber and a process for producing the same | |
JP2960606B2 (ja) | 導電性酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP2845649B2 (ja) | 紡糸液および導電性酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP3504095B2 (ja) | 酸化スズ前駆体溶液の製造方法 | |
JP3466275B2 (ja) | 紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP3471145B2 (ja) | 酸化スズファイバー用紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
CN114808124A (zh) | 一种混合卤化物钙钛矿单晶及多晶薄膜的制备方法 | |
JP3471146B2 (ja) | 酸化スズ系ファイバー用紡糸液および酸化スズ系ファイバーの製造方法 | |
JP2895302B2 (ja) | 紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP4174281B2 (ja) | 酸化インジウム微粒子の製造方法 | |
JP2680752B2 (ja) | 紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP2960605B2 (ja) | 酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP3504096B2 (ja) | 酸化スズファイバー用紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP3464330B2 (ja) | 酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP3504094B2 (ja) | 酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP3466277B2 (ja) | 紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
JP2856970B2 (ja) | ガス検出素子 | |
JP3586498B2 (ja) | 酸化スズ系繊維およびその製造方法 | |
JPH0826724A (ja) | 酸化スズファイバーの製造方法および紡糸液 | |
JP3078259B2 (ja) | 複合酸化スズファイバー及び複合酸化スズ化合物製造用均一溶液 | |
JP2845655B2 (ja) | 紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 | |
JPH0826725A (ja) | 酸化スズファイバーの製造方法および紡糸液 | |
JPH0892822A (ja) | 酸化スズファイバーの製造方法 | |
JPH07316438A (ja) | 紡糸液および酸化スズファイバーの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20031209 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040205 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040302 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040304 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |