JP3586498B2 - 酸化スズ系繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、強度が向上した酸化スズ系繊維、その製造方法および該酸化スズ系繊維の原料として好適なアルコール溶液に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化スズは、耐薬品性、耐熱性に優れ、しかも導電性を広範囲において制御できる優れた材料であり種々の用途に用いられている。高分子材料においては、導電性を付与する目的でカ−ボンファイバ−等の添加が行われている。しかしながら、カ−ボンを用いた場合、それ自体黒色のため材料の明彩色化が図れない、また非常に軽いため飛散し易い等の問題点があった。このため、金属繊維や金属酸化物の粉末を添加することが行なわれているが、金属繊維は高い導電性を有するものの長時間経過すると表面が酸化あるいは腐食して導電性が低下するという欠点がある。また従来の金属酸化物粉末は導電性が金属繊維ほど高くないので高分子材料に導電性を付与するためにはどうしても比較的多量に添加せざるを得ず、高分子材料が本来有する物性を低下させる欠点があった。耐薬品性、耐熱性に優れる酸化スズにおいても導電性を付与した粉末形状での添加が試みられている。
【0003】
ところで、導電性付与の効果は導電性付与材料のアスペクト比が大きいほど、高くなることが知られている。このため、導電性を有する酸化スズのファイバ−化が求められていた。
【0004】
しかしながら、従来の固相反応法ではファイバ−を製造することは困難であった。特開昭60−54997号、特開昭60−161337号、特開昭62ー158199号において、溶融析出法によって酸化スズのウィスカーを製造する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では1000℃以上の高温且つ何日にもわたる反応時間を必要とするため、実験室規模で極少量作製することは可能であるが、工業的に製造できるには至っていない。しかも得られる酸化スズ系繊維の形状は直径1μm以下、長さが3mm以下でアスペクト比も小さく、更に断面も矩形であることが多いため複合材料として用いる場合、その機能を充分に発揮させることができずその用途が限られてしまうという問題があった。更に、長径が小さすぎるためペーパ状物等を作製することが困難であった。また、得られる複合材料の導電性等の物性値の再現性を高めようとすれば、添加する酸化スズウィスカーの形状および大きさを再現性よく制御することが重要である。しかしながら、酸化スズウィスカーの形状を制御することは実際困難であるので、添加する酸化スズの繊維径および長さを揃えようとすれば、偶然できたものを分級するしかなかった。それ故、このような方法で作製したウィスカーはコストが極めて高く、実際に使用できなかった。
【0005】
また従来、大気中のガス成分を検出するためのセンサとして、一般に半導体型のセンサが用いられている。このセンサにおいては、実際のガスの検出部である検出素子として酸化スズに代表される金属酸化物半導体が用いられている。その際、ガス検出素子に一対の電極を接続させ、ガス検出素子がガスを吸着したときに起こる抵抗変化を測定してガスを検出している。ところが、ガス検出素子は酸化スズ等の焼結体から構成されており、検出感度が低い、応答速度が遅い、あるいは消費電力が大きいといった問題があった。このため、従来の焼結体型の素子に代わって薄膜型の素子を用いることが長年研究されているが、感度、あるいは耐久性が低いといった重大な問題を依然として解決することができず、焼結体型に置き代わるに至っていない。また、白金線のような金属線を芯にしてその周囲にガス検出用の酸化物半導体を付着させた繊維状タイプの素子を用いることが検討されている。しかしながら、該素子においては、金属線と酸化物半導体の付着強度が小さく、酸化物半導体が脱落しやすい。また直径が大きくなりやすくて感度や応答速度が低く、更に消費電力も十分に低減させることができないという問題がある。
【0006】
このため、前記ウィスカーをガス検出素子として用いることが検討されているが、本質的に感度が低いという問題がある。これは、ウィスカーのような単結晶に近いものにはほとんど粒界が存在しないことによるものである。即ち、半導体型ガスセンサは、ガスの吸脱着による半導体の粒界部分の抵抗変化によってガスを検出しており、粒界が存在しない酸化物半導体ではガス吸着による抵抗変化が小さくなる。従って、ウィスカーを検出素子に用いた場合、本質的に感度が低くなり、貴金属成分等の添加によっても感度を大幅に改善することは難しい。実際、該センサは感度が低いため実用化には至っていない。前述したように、一般に半導体型ガスセンサにおいては、ガス感度を高めたり、ガスの種類に対して選択性をもたせるために貴金属等の成分を添加する場合が多い。しかしながら、溶融析出法に代表されるように高温で溶融・気化させて低温部で析出させる方法で作製されるウィスカーにおいては、融点の異なるものを定量的に微調整して添加することが難しい。これも、貴金属成分等の微妙な添加量によって感度およびガス種に対する選択性が著しく変化するガスセンサにとっては、致命的な欠点である。
【0007】
また、最近、酸化スズは、3次の非線形光学材料としても研究が進められている。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた。その結果、上記目的に適した任意のアスペクト比の多結晶性の酸化スズ系繊維が、安価なスズ化合物及びアルコ−ルを主成分とする溶液を用いて紡糸、加熱することにより、容易にしかもきわめて安価に得られることを見い出し、特開平4ー352807号、特開平5ー117906号、あるいは特開平5ー179512で既に提案した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法は、連続繊維までも容易にしかも安価に供給できる点で有用で画期的な方法であり、その工業的価値はきわめて高いものであった。本発明者らは、更に機械的強度をより高めた酸化スズ系繊維の製造方法について鋭意研究を重ねた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
その結果、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素の成分を含有させると得られる酸化スズ系繊維の機械的強度がより向上し、しかも結晶方位に偏りがなく、繊維径及び形状も任意にしかも容易に再現性よく制御することが可能であり、またガス感度、更には周期律表第V族元素の酸化物を含有させることにより導電性付与効果が高い酸化スズ系繊維が得られることを見い出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸化物、並びに酸化スズを主構成成分とし、引っ張り強度が30MPa〜170MPaであることを特徴とする酸化スズ系繊維である。
【0012】
他の発明は、酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸化物、酸化スズ、並びに周期律表第V族元素の酸化物を主構成成分とし、引っ張り強度が30MPa〜170MPaであることを特徴とする酸化スズ系繊維である。
【0013】
更に他の発明は、アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物並びにアルコール可溶性スズ化合物を溶解したアルコール溶液を紡糸し、次いで加熱処理を行うことを特徴とする酸化スズ系繊維の製造方法である。
【0014】
更に他の発明は、アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物、アルコール可溶性スズ化合物、並びにアルコール可溶性周期律表第V族元素化合物を溶解したアルコール溶液を紡糸し、次いで加熱処理を行うことを特徴とする酸化スズ系繊維の製造方法である。
【0015】
更に他の発明は、アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物並びにアルコール可溶性スズ化合物を溶解したことを特徴とする酸化スズ系繊維紡糸液用の均一なアルコール溶液であり、更にまた他の発明は、アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物、アルコール可溶性スズ化合物、並びにアルコール可溶性周期律表第V族元素化合物を溶解したことを特徴とする酸化スズ系繊維紡糸液用の均一なアルコール溶液である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を更に具体的に説明する。
【0017】
本発明の酸化スズ系繊維は引っ張り強度が30MPa以上である。引っ張り強度が30MPa以下であっても使用できるが、落下試験に代表されるような衝撃に対して充分に耐えるもの、激しい粉砕後にも繊維形状を充分に保持させたい場合、電解用や電池用電極材料、あるいはペーパ等の織物あるいは不織布の形で使用される場合には、引っ張り強度等を高めることが効果的である。
【0018】
機械的強度を高めるためには酸化スズ系繊維の構成成分が重要であり、酸化スズ、並びに酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素(以下第二元素酸化物ともいう)から選ばれた少なくとも一種の酸化物を主構成成分とする。
【0019】
酸化スズは熱処理温度により、非晶質あるいは結晶質のいずれの形態でも存在するが、導電性の高いものを得たい場合には結晶質の方が好ましい。また、酸化スズは第二元素酸化物を一部固溶、大部分を混合物の形態で含有して存在しているものと推定される。固溶する場合には、アルミニウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ホウ素元素(以下第二元素ともいう)が酸化スズ中のスズ原子に置き代わって存在する。また、固溶しないで通常の酸化物として混合物の形態で存在する場合、第二元素は酸素が存在する雰囲気下では大部分酸化物となるが一部酸化されない状態で存在する場合もある。従って、本発明における酸化物は、本来の形態の酸化物のみならず極一部未酸化状態で存在する場合、更には他酸化物中へ原子レベルで固溶している場合もある。
【0020】
酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ホウ素等の成分は、上述のとおり酸化スズに固溶するごく少量を除いて、大部分酸化スズ中に通常の酸化物として混合物の形態で分散して存在するものと推定される。酸化ゲルマニウムおよび酸化チタンの場合には、固溶する範囲が更に広くなる。また、約16〜約82モル%、あるいは約12〜約86モル%(該範囲は報告者によって多少異なる)の酸化チタンを添加した場合には、スピノーダル分解によって酸化スズがリッチな固溶体と酸化チタンリッチな固溶体に分離し、両相がミクロな構造で複合化されて存在していると考えられる。その結果、機械的強度が向上する以外に、新規な繊維状のコンデンサ材料、ガスセンサ素子のような半導体材料として有望なものとなる。
【0021】
上記第二元素酸化物は、それぞれ単独で含有されてもよく或は複数が同時に含有されていてもよい。該成分の含有量は、特に制限されず目的に応じて適宜決定すればよい。特に引っ張り強度等を高めたい場合には、該成分が多めに含有されていることが有効となる。通常、酸化スズ20〜98モル%、第二元素酸化物は2〜80モル%である。酸化スズ系繊維中の第二元素酸化物の構成比率は、化学分析や蛍光X線分析によって確認できるが、通常は原料比から理論的な計算で算出されたものと大差を生じないので、製造原料比が明かな場合は該原料比から算出することもできる。
【0022】
また、第二元素酸化物が酸化ジルコニウムの場合には、酸化カルシウム、酸化マグネシム等のアルカリ土類酸化物、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化ユーロピウム、酸化スカンジウム等の希土類酸化物が含有されていることにより正方晶、あるいは立方晶が安定化、あるいは準安定化されて強度が高くなったり、酸素イオン導電性が高くなることも可能である。該成分の含有量は成分の種類によっても異なり目的によって適宜決定すればよいが、一般には30モル%以下である。また、酸化ジルコニウムには、原料の由来の酸化ハフニウムが含有されていてもよい。
【0023】
酸化スズ系繊維を電極材料、および低導電性材料の導電性を高めるために添加する材料(導電性付与材料)等として用いる場合には、酸化スズ系繊維の導電性が高いことが求められる。この場合には、周期律表第V族元素の酸化物(以下、第V族元素酸化物という)を更に酸化スズ系繊維に含有させることが好ましい。第V族元素酸化物の構成比率は、目的とする導電性によって任意に変えることができる。導電性付与材料や電極用材料として用いる場合には、酸化スズ系繊維の比抵抗は通常5×103Ω・cm以下、好ましくは2×102以下が望ましく、このため酸化スズ20〜97.95モル%、第二元素酸化物は2〜79.95モル%、第V族元素酸化物は0.05モル%〜24.5モル%、好ましくは酸化スズ50〜94.95モル%、第二元素酸化物は5〜49.05モル%、第V族元素酸化物0.05〜19モル%とする。第V族元素酸化物は、通常酸化スズに固溶して存在するが、含有量が過剰になると酸化スズに固溶しないで通常の酸化物として混合物の形で存在する。酸化スズに固溶する場合には、周期律表第V族元素が酸化スズ中のスズ原子に置き代わって存在する。また、固溶しないで酸化物として混合物の形態で存在する場合、周期律表第V族元素は酸素が存在する雰囲気下では大部分酸化物となるが極一部酸化されない状態で存在する場合もある。
【0024】
上記第V族元素酸化物としては、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ビスマスの各酸化物が挙げられ、このなかでも、導電性を高めるためには酸化アンチモンが好ましい。
【0025】
酸化スズ系繊維の比抵抗の下限は焼成雰囲気にも大きく依存し、空気中で焼成した場合は平均1×10−2Ω・cmであるが、還元雰囲気や不活性雰囲気中で焼成すると、平均1×10−4Ω・cmの比抵抗のものを得ることも可能である。また、第V族元素酸化物を添加しないで還元雰囲気、あるいは不活性雰囲気中で焼成することによって、平均1×10−4Ω・cmの比抵抗を有する酸化スズ系繊維を得ることもできるが、高温等の使用条件下でも酸化スズ系繊維の比抵抗を安定化させるためには、第V族元素酸化物が含有されている方が望ましい。
【0026】
また、ガスセンサ、あるいはコンデンサ材料等のように高い導電性が求められない場合には、比抵抗を低下させる必要はない。ガスセンサの場合には、むしろ金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、レニウム等を単独あるいは複数で含有させてガス感度、またはガスに対する選択性を高めることが重要である。含有量は、通常酸化スズに対して0.01モル%から10モル%の範囲である。また、第V族元素酸化物は、ガス感度或はガスに対する選択性を高める効果を示すことも多く、このような目的で第V族元素酸化物を含有させることもできる。
【0027】
本発明の酸化スズ系繊維において、結晶子サイズ等を小さくするため、あるいは600℃以上の高温焼成時における酸化スズの結晶成長を抑制して結晶子サイズを小さいまま維持させるために、更に酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ネオジウム、酸化ニッケル、酸化ナトリウム、酸化ランタン、酸化ガリウム、酸化サマリウム等を、通常全成分を基準にして15モル%以下で含有させることもできる。この、結晶子サイズの抑制は、ガスセンサとして用いた場合にガス感度の増加にもつながり、また更には機械的強度の保持にも有効となる。
【0028】
また、更に酸化スズ系繊維を電解用電極として用いる場合には、更に白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、金、銀、オスミウム等の貴金属を金属あるいは酸化物の状態で含有させることもできる。その場合の組成は目的に応じて適宜決定すればよく、通常全成分を基準にして40モル%以下で含有させることができる。
【0029】
紡糸方法として、紡糸液を遠心力によって吹き飛ばして繊維にする方法が挙げられる。この場合、得られた繊維は繊維同志、あるいは装置壁面との衝突等により、繊維表面に損傷、欠陥等が生成するために引っ張り強度が低下する。また、ノズルから押し出して高速の気流によって繊維を吹き飛ばす方法もあるが、この場合も繊維同志あるいは装置壁面との衝突等により、繊維表面に損傷、欠陥等が生成するために引っ張り強度が低下する。従って、繊維同志あるいは装置壁面との衝突等により繊維表面に損傷や欠陥等が生成しないような紡糸方法を採用することが好ましい。具体的には、紡糸液をノズルから押し出して充分に乾燥させた後、ボビンに巻き取る方法等が好ましく用いられる。
【0030】
本発明の酸化スズ系繊維の繊維径は通常5μm〜数mm程度まで制御することができ、バラツキも±20%以下、更には10%以下まで制御することが可能である。更に、ファイバーの長さは、連続紡糸によりほぼ無限長のものまで可能であり、切断することにより任意の長さのものが得られる。従って、繊維長やアスペクト比は自由に選択することができる。
【0031】
本発明の酸化スズ系繊維の断面は、後述する紡糸時に用いるノズルの形状を選択することにより任意に制御することができる。例えば、断面が円形あるいは楕円形等の略円形のもの、更には断面が矩形のものも得ることができる。マトリックスに該酸化スズ系繊維を添加して強度を向上させたい場合には、断面が矩形であると応力がエッジ部に集中しやすいので、断面は略円形のものが好ましい。
【0032】
次に本発明の酸化スズ系繊維の代表的な製造方法を例示する。アルコールに、ハロゲン化スズ等のアルコール可溶性スズ化合物、並びにアルミニウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ホウ素のアルコキシドあるいはハロゲン化物等のアルコール可溶性化合物を、酸化スズ系繊維の導電性を高めたい場合には更に周期律表第V族元素のアルコール可溶性化合物を混合溶解させて均一で透明な溶液にした後、濃縮することにより得られる曳糸性を示す溶液(紡糸液)から酸化スズを含むゲルファイバーを紡糸して、加熱処理することにより容易に、しかも安価に任意のアスペクト比の酸化スズ系繊維が得られる。
【0033】
上記紡糸液用アルコ−ルの具体例として、メチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、プロピルアルコ−ル、ブチルアルコ−ル、オクチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、1−メトキシー2−プロピルアルコール、メトキシエトキシエタノール、2−フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコ−ル、アリルアルコール、2−メチル−2−プロペン−1−1オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等を挙げることができる。特に、メチルアルコール、エチルアルコールはアルコール可溶性スズ化合物の溶解度が高く好ましい。
【0034】
上記アルコールは通常単独で用いられるが、アルコール可溶性スズ化合物、及び後述するアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウ化合物、マグネシウム化合物、ホウ素化合物との反応性、あるいは溶解性等を制御するために2種類以上のアルコールの混合物を用いることもできる。また、溶解性、反応性を制御するためにアルコール以外の溶媒を補助的に用いることができる。一例を挙げるとアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸ジエチル、エタノールアミン等である。
【0035】
本発明に用いるアルコール可溶性スズ化合物としては、ハロゲン化スズ化合物、アルキルスズ等が挙げられる。ハロゲン化スズ化合物のハロゲンは、Cl、Br、I、F原子である。このハロゲン化スズ化合物のなかでも、塩化スズ、臭化スズが価格、安定性の点から好ましい。具体的には、SnCl2、SnCl2・2H20、SnBr2、SnI2、SnF2等が挙げられ、特に、SnCl2、SnCl2・2H2O、SnBr2が好ましく用いられる。また該ハロゲン化スズ化合物において有機化合物で修飾したもの、例えばSn(CH3)2Cl2等も使用できる。
【0036】
上記アルコール可溶性スズ化合物とアルコールの配合割合は、アルコール可溶性スズ化合物がアルコ−ルに均一に溶解する範囲であれば、特に制限されない。ただし、あまりにアルコール可溶性スズ化合物の割合が低い場合は曳糸性を示さないのでかなり濃縮する必要があり、アルコ−ルが無駄になる。また、アルコール可溶性スズ化合物の濃度があまりにも高いと沈澱が生じ均一な紡糸液が得られない。従って、使用するアルコール可溶性スズ化合物とアルコ−ルの種類によってその配合割合は異なるが、一般的にはアルコ−ルに対するアルコール可溶性スズ化合物の使用割合はモル比で0.01〜0.5が好ましい。この割合で配合して透明で均一な溶液とした後、更にアルコールを蒸発させて濃縮し所望の粘度で曳糸性を有する紡糸液とする。
【0037】
更に、酸化スズ系繊維の機械的強度を高めるために含有させる第二元素酸化物の原料としては、アルミニウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ホウ素のアルコキシド、ハロゲン化物、オキシ塩化物、硝酸塩、あるいは硫酸塩等のアルコールに可溶性の化合物(以下、第二元素化合物ともいう)を用いる。酢酸塩もアルコールに可溶であれば用いることもできる。
【0038】
アルコール可溶性アルミニウム化合物の一例を例示すると、AlCl3、AlCl3・6H2O、AlBr3、AlBr3・6H2O、AlI3、AlI3・6H2O、Al(NO3)3・9H2O、Al(NO3)3・6H2O、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムのアルコキシド等が挙げられ、アルコール可溶性ゲルマニウム化合物としては、GeCl4、GeBr2、GeBr4、テトラエトキシゲルマニウム等のゲルマニウムアルコキシド等が挙げられ、アルコール可溶性チタン化合物としては、TiCl4、TiCl3、TiCl2、TiBr4、TiBr4・6H2O、TiF4、テトライソプロポキシチタン等のチタンアルコキシド等が挙げられる。アルコール可溶性ジルコニム化合物としては、ZrCl4、Zr(NO3)4・5H2O、ZrOCl2・8H2O、ZrOI2・8H2O、テトラブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシドが挙げられ、アルコール可溶性マグネシウム化合物としては、MgCl2・6H2O、MgBr2・6H2O、Mg(NO3)2・nH2O、マグネシウムアルコキシド等が挙げられる。アルコール可溶性ほう素化合物としては、H2B4O7、H3BO3、HBF4、BBr2、トリメトキシボロン等のほう素アルコキシド等が挙げられる。
【0039】
また、上記化合物は最初から、当該化合物である必要はなく、ハロゲン化スズのアルコール溶液中で初期に当該化合物となるようにしてもよい。例えば、塩化アルミニウムの場合には、金属アルミニウムをハロゲン化スズのアルコール溶液に添加して一部ハロゲン化してもよい。
【0040】
第二元素酸化物が酸化ジルコニウムである場合の正方晶、あるいは立方晶を安定化、あるいは準安定化させて強度を高くしたり、酸素イオン導電性を高めるために含有させる酸化カルシウム、酸化マグネシム等のアルカリ土類酸化物、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化ユーロピウム、酸化スカンジウム等の希土類酸化物を生成しめる原料としては、これら各元素のアルコキシド、塩化物、オキシ塩化物、硝酸塩、硫酸塩、あるいは酢酸塩等のアルコールに可溶性の化合物を用いることができる。
【0041】
上記第二元素化合物の添加量は、紡糸、加熱処理によって生じる最終形態の第二元素酸化物が前記範囲内の構成比率になるように予め算定して決定すればよい。通常、使用原料モル比からの計算値が酸化スズ系繊維中の第二元素の酸化物のモル比と一致する。
【0042】
酸化スズ系繊維に導電性を付与する場合には、紡糸液中にアルコール可溶性周期律表第V族元素の化合物(以下単に第V族元素化合物ともいう)を添加して繊維とすることが好ましい。該第V族元素化合物は、後述する加熱処理によって最終的には第V族元素酸化物となって酸化スズ中に固溶するか或は混合物となる。
【0043】
上記第V族元素化合物としては、アルコール可溶性のバナジウム化合物、ニオブ化合物、タンタル化合物、アンチモン化合物、あるいはビスマス化合物等が挙げられる。
【0044】
具体的には、アルコール可溶性のバナジウム化合物として、VBr3、VCl2、VCl3、VCl4、VOBr2、VOBr3、VOCl3、VF3、VF4、VF5、VI3・6H2O、バナジウムのアルコキシドが挙げられ、アルコール可溶性のニオブ化合物として、NbCl5、NbBr5、NbF5、NbOCl3、ニオブのアルコキシドが挙げられ、アルコール可溶性のタンタル化合物として、TaBr5、TaCl5、タンタルのアルコキシドが、アルコール可溶性のアンチモン化合物として、SbCl3、SbCl5、SbBr3、オキシ塩化アンチモン、あるいはアンチモンのアルコキシドが、また、アルコール可溶性のビスマス化合物としては、BiCl3、BiI3、ビスマスのアルコキシド等が挙げられる。
【0045】
上記第V族元素化合物の配合割合は、目的とする導電性を勘案して酸化スズ系繊維中の第V族元素酸化物量を算出し、それに基づいて決定される。
【0046】
アルコール可溶性スズ化合物、アルコール可溶性第二元素化合物、アルコール可溶性第V族元素化合物等とアルコールの溶解方法は、特に限定されない。攪拌下、各スズ化合物、第二元素化合物、第V族元素化合物等の混合物にアルコ−ルを滴下する方法、あるいは攪拌下、アルコールに各スズ化合物、第二元素化合物、第V族元素化合物等を同時にまたは順次溶解させる方法等を用いることができる。
【0047】
前記紡糸方法で紡糸して得られるゲルファイバーの加熱処理は、ゲルファイバーからアルコールなどの有機溶媒、あるいは水などを除去してファイバーの骨格を強くし、場合によっては、更に結晶化させる温度で行われる。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバーはそのままでは十分な機械的強度を示さない。機械的強度はゲルファイバーを加熱処理することで発現する。該加熱処理温度は得られるファイバーに機械的強度を付与できる温度範囲内で有れば特に限定されない。加熱処理温度が低い場合にはファイバー中にアルコール、水などが残存するために十分な機械的強度が生じない。また、加熱処理温度が高すぎると酸化スズ等の分解が進行したり、あるいはファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度が低下するなどの問題が生じる。第V族元素化合物を添加して酸化スズ系繊維の導電性を向上させるためにも加熱処理が必要である。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバーはそのままでは絶縁体であり、導電性はゲルファイバーを加熱処理することで発現する。該加熱処理温度は得られるファイバーに導電性および機械的強度を付与できる温度範囲内であれば特に限定されない。一般に、加熱処理温度が低い場合にはファイバー中にアルコールなどの有機物、水等が残存するため、また第V族元素化合物が酸化物の形態にならず酸化スズと充分に固溶しないため導電性が生じない。また加熱処理温度が高すぎると、ファイバー中の第V族元素化合物が揮散し導電性が低下する、酸化スズの分解が進行する、ファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度が低下するなどの問題を生じる。上記理由により、加熱処理温度として250℃〜1550℃の温度範囲が好ましい。さらに好適には、300℃〜1500℃の温度で加熱処理することが好ましい。
【0048】
また、加熱処理は通常空気中で行われるが、特に導電性の高いファイバーを得たいときには、窒素、アルゴン、水素、アルゴンと水素の混合ガスなどの還元性雰囲気下や真空中で加熱処理を行うことができる。
【0049】
更に、該加熱処理に際し、ゲルファイバー中に存在する水、アルコール等の揮発成分を、乾燥によって除去することが機械的強度が高くて良好な酸化スズ系繊維を得るために望ましい。かかる乾燥は、加熱処理と同時に行っても良いが、加熱処理前に予め行う方が良好なファイバーを得るためには好ましい。これらの場合、乾燥温度は得られるファイバーにクラックが発生することを防止するために、出来るだけ低い温度で行うことが好ましいが、溶媒に沸点の高いアルコールを用いた場合には、余り低すぎると乾燥に長時間を要し、効果的でない。一般的な乾燥温度は室温〜300℃の範囲とすることが好ましい。この方法において酸化スズ系繊維の構成成分が溶液状態で均一に混合されるため、得られる酸化スズ系繊維は均質性が高い。また、ファイバーの直径も、用いるノズル径および紡糸液の粘度を制御することにより任意にコントロールすることができる。
【0050】
また、本発明によって得られる酸化スズ系繊維は、結晶質、非晶質のいずれでもとりうるが、導電性の観点からは結晶質の方が好ましい。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、機械的強度が向上した酸化スズ系繊維を提供できるようになった。この結果、粉砕混合、あるいは落下等の衝撃を受けた後も繊維形状を維持しやすく取り扱いが容易になった。このため、種々の導電性付与材料、電極材料、電池活物質充填材、あるいはセンサ素子等広範囲への応用が可能となった。
【0052】
【実施例】
本発明を以下実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0053】
実施例1
塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)、三塩化アンチモン(SbCl3)0.3g(0.0013モル)をメタノール100ml(2.47モル)に溶解させ均一で透明な溶液にした。その後塩化アルミニウム六水和物(AlCl3・6H2O)3.18g(0.013モル)を添加溶解させ均一な溶液を得た。この溶液を濃縮し、高粘性のゾルとした。このゾルを圧力を加えてノズルから押し出し相対湿度55%の雰囲気下でドラムに連続的に巻き取った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度で800℃まで昇温しその温度で2時間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン、アルミが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークと酸化アルミニウムの弱いピークがみられたが、酸化アンチモンなどのピークはみられず酸化アンチモンは酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均3×106Ω・cmであり、引張強度は平均170MPaであった。
【0054】
実施例2
実施例1において、回転紡糸によりノズルからゲルファイバーを吐出させて相対湿度55%の雰囲気下で堆積させること以外は、同様に行った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度で800℃まで昇温しその温度で2時間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均10μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン、アルミナが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークと酸化アルミニウムの弱いピークがみられたが、酸化アンチモンなどのピークはみられず酸化アンチモンは酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均3×106Ω・cmであり、引張強度は平均30MPaであった。
【0055】
実施例3
塩化アルミニウムの代わりに、テトラエトキシゲルマニウム[Ge(OC2H5)4]3.29g(0.013モル)を添加すること以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度で800℃まで昇温しその温度で2時間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン、ゲルマニウムが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを有し、わずかに酸化ゲルマニウムのピークが観察された。また、アンチモンの酸化物などのピークはみられなかった。これは、酸化ゲルマニウムは大部分酸化スズに固溶し、一部が酸化ゲルマニウムとしても存在しており、酸化アンチモンは酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均2Ω・cmであり、引張強度は平均150MPaであった。
【0056】
実施例4
塩化アルミニウムの代わりに、オキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrOCl2・8H2O)4.19g(0.013モル)を添加すること以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度で800℃まで昇温しその温度で2時間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン、ジルコニウムが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークと、単斜晶系と斜方晶系の酸化ジルコニウムのピークがみられたが、アンチモンはその酸化物などのピークはみられず酸化アンチモンは酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1×104Ω・cmであり、引張強度は平均150MPaであった。
【0057】
実施例5
塩化アルミニウムの代わりに、テトライソプロポキシチタン[Ti(O−i−C3H7)4]2.27g(0.008モル)を添加すること以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で2時間保持した。その後10℃/minの速度で800℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン、チタンが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークはみられたが、アンチモンおよび酸化チタンの酸化物などのピークはみられず、酸化アンチモンおよび酸化チタンが酸化スズ中に固溶していることが示唆された。得られたファイバ−の比抵抗は平均2×105Ω・cmであり、引張強度は平均150MPaであった。
【0058】
実施例6
塩化アルミニウムの代わりに、塩化マグネシウム六水和物(MgCl2・6H2O)2.64g(0.013モル)を添加すること以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度で800℃まで昇温しその温度で2時間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン、マグネシウムが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズとMg2SnO4のピークがみられたが、アンチモンの酸化物などのピークはみられず酸化アンチモンは酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均20Ω・cmであり、引張強度は平均150MPaであった。
【0059】
実施例7
塩化アルミニウムの代わりに、トリメトキシボロン1.35g(0.013モル)を添加すること以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均30μmの直径を有した。ケイ光X線分析により、アンチモンは仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認されたが、ほう素は仕込組成よりも約5%減少していた。また、X線回折の結果、酸化スズと酸化ほう素のピークは観察されたが、アンチモの酸化物などのピークはみられず酸化アンチモンは酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均10Ω・cmであり、引張強度は平均130MPaであった。
【0060】
比較例1
塩化アルミニウムを添加しないこと以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンはその酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は、平均9×10−1Ω・cmであり、引っ張り強度は、平均22MPaであった。
【0061】
比較例2
塩化アルミニウムを添加しないこと以外は、実施例2と同様に行った。得られたファイバーは平均10μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンはその酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均9×10−1Ω・cmであり、引張強度は平均8MPaであった。
【0062】
比較例3
三塩化アンチモンおよび塩化アルミニウムを添加しないこと以外は実施例1と同様に行った。得られたファイバーは平均30μmの直径を有し、X線回折の結果、結晶質の酸化スズであることが確認された。得られたファイバーの比抵抗は、平均8×104Ω・cmであり、引っ張り強度は、平均14MPaであった。
Claims (6)
- 酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸化物、並びに酸化スズを主構成成分とし、引っ張り強度が30MPa〜170MPaであることを特徴とする酸化スズ系繊維。
- 酸化アルミニウム、酸化ゲルマニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種の酸化物、酸化スズ、並びに周期律表第V族元素の酸化物を主構成成分とし、引っ張り強度が30MPa〜170MPaであることを特徴とする酸化スズ系繊維。
- アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物並びにアルコール可溶性スズ化合物を溶解したアルコール溶液を紡糸し、次いで加熱処理を行うことを特徴とする酸化スズ系繊維の製造方法。
- アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物、アルコール可溶性スズ化合物、並びにアルコール可溶性周期律表第V族元素化合物を溶解したアルコール溶液を紡糸し、次いで加熱処理を行うことを特徴とする酸化スズ系繊維の製造方法。
- アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物並びにアルコール可溶性スズ化合物を溶解したことを特徴とする酸化スズ系繊維紡糸液用の均一なアルコール溶液。
- アルコール可溶性のアルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物、マグネシウム化合物及びホウ素化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種のアルコール可溶性化合物、アルコール可溶性スズ化合物、並びにアルコール可溶性周期律表第V族元素化合物を溶解したことを特徴とする酸化スズ系繊維紡糸液用の均一なアルコール溶液。
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