JPH08109523A - 酸化スズファイバーの製造方法 - Google Patents

酸化スズファイバーの製造方法

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JPH08109523A
JPH08109523A JP23928794A JP23928794A JPH08109523A JP H08109523 A JPH08109523 A JP H08109523A JP 23928794 A JP23928794 A JP 23928794A JP 23928794 A JP23928794 A JP 23928794A JP H08109523 A JPH08109523 A JP H08109523A
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fiber
tin
spinning
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alcohol
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JP23928794A
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English (en)
Inventor
Hiroya Yamashita
博也 山下
Yoshiko Seki
佳子 関
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Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 塩化第一スズなどのハロゲン化スズ化合物、
テトラメトキシシランなどのシリコンアルコキシド、ア
ルコール可溶性高分子化合物および必要に応じて三塩化
アンチモンなどの第V族化合物をメタノールなどのアル
コールに溶解してなりハロゲン含量が制御された紡糸液
から紡糸したゲルファイバーをアンモニア雰囲気に接触
させた後、次いで加熱処理をして酸化スズファイバーを
製造する。 【効果】 紡糸液中にシリコンアルコキシドとアルコー
ル可溶性高分子化合物を含有する他、ハロゲン含量が制
御され、さらにアンモニア雰囲気で処理するために、湿
度の高い雰囲気下で紡糸並びに紡糸後放置してもファイ
バーの切断や軟化によるファイバー形状の崩れが防止で
き、しかも高速での紡糸が可能になる。従って、工業的
に所定形状の紡糸並びにファイバーの製造が安定して行
なえ生産性が向上する。更に、得られるファイバーの機
械的強度が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化スズファイバーの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化スズは、耐薬品性、耐熱性に優れ、
しかも導電性を広範囲において制御できる優れた材料で
あり種々の用途に用いられている。最近では、3次の非
線形光学材料としても研究が進められている。
【0003】ガスセンサにおいては感度及び応答速度の
改善の観点から酸化スズのファイバ−形状での提供が強
く望まれてきた。また、高分子材料に導電性を付与する
目的でカ−ボンファイバ−等の添加が行われているが、
カ−ボンを用いた場合、それ自体黒色のため材料の明彩
色化が図れない、また非常に軽いため飛散し易い等の問
題点があった。このため、金属繊維や金属酸化物の粉末
を添加することが行なわれている。金属繊維は高い導電
性を有するものの長時間経過すると表面が酸化あるいは
腐食して導電性が低下するという欠点がある。また従来
の金属酸化物粉末は導電性が金属繊維ほど高くないので
高分子材料に導電性を付与するためにはどうしても比較
的多量に添加せざるを得ず、高分子材料が本来有する物
性を低下させる欠点があった。耐薬品性、耐熱性に優れ
る酸化スズにおいても導電性を付与した粉末形状での添
加が試みられている。
【0004】ところで、導電性付与の効果は導電性付与
材料のアスペクト比が大きいほど、高くなることが知ら
れている。このため、導電性を有する酸化スズのファイ
バ−化が求められていた。しかしながら、従来の固相反
応法ではファイバ−を製造することは困難であった。こ
のため、特開昭60−5997号、特開昭60−161
337号、特開昭60ー158199号において、溶融
析出法によって酸化スズを製造する方法が提案されてい
る。しかしながら、これらの方法では1000℃以上の
高温且つ何日にもわたる反応時間を必要とするため、実
験室規模で極少量作製することは可能ではあるが、工業
的に製造できるまでには至っていない。しかも得られる
酸化スズファイバーの形状は直径1μm以下、長さが3
mm以下でアスペクト比も小さく、更に断面も矩形であ
ることが多いため複合材料として用いる場合、その機能
を充分に発揮させることができずその用途が限られてし
まうという問題があった。更に、長径が小さすぎるため
ペーパ状物等を作製することが困難であった。また、得
られる複合材料の導電性等の物性値の再現性を高めよう
とすれば、添加する酸化スズウィスカーの形状および大
きさを再現性よく制御すること重要である。しかしなが
ら、酸化スズウィスカーの形状を制御することは実際困
難であるので、添加する酸化スズの繊維径および長さを
揃えようとすれば、偶然できたものを分級するしかなか
った。それ故、このような非効率的な方法で作製したウ
ィスカーはコストが極めて高く、実際に使用できなかっ
た。
【0005】本発明者らは、高価で且つ反応速度が速い
ため不安定で取り扱いが難しいスズアルコキシドを原料
として用いることなく、スズ化合物及びアルコ−ルを主
成分とする溶液を用いると驚くべき事に曳糸性が現れ、
これを紡糸、加熱することにより、容易にしかもきわめ
て安価に酸化スズファイバ−が得られることを見い出
し、既に提案した(特開平4ー35287、特開平5ー
117906、特開平5ー179512)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記紡
糸液を用いて紡糸した場合、紡糸してから加熱処理する
までの間にゲルファイバーが高い湿度雰囲気に接すると
糸形状が保持されず軟化して崩れるという現象が生じる
場合が出てきた。そこで、紡糸後の雰囲気中の湿度によ
って糸形状が崩れないファイバーの製造方法について鋭
意研究を重ねた。
【0007】
【課題を解決するための手段】その結果、紡糸液中にシ
リコンアルコキサイドを存在させ且つ紡糸液中のハロゲ
ン含有量を制御し、しかも紡糸後のゲルファイバーをア
ンモニア雰囲気に接触させるとゲルファイバーの耐湿性
が一層向上することを見い出し、ここに本発明を完成さ
せるに至った。
【0008】即ち、本発明は、アルコールにハロゲン化
スズ化合物、シリコンアルコキシドおよびアルコール可
溶性高分子化合物を溶解してなり、且つ該溶液中に含ま
れるハロゲンとスズの原子数の比(X/Sn)が1.5
5以上1.80未満である紡糸液から紡糸したゲルファ
イバーを、アンモニア雰囲気に接触させた後加熱処理す
ることを特徴とする酸化スズファイバーの製造方法であ
る。
【0009】他の発明は、アルコールにハロゲン化スズ
化合物、シリコンアルコキシド、アルコール可溶性高分
子化合物および周期律表第V族元素化合物を溶解してな
り、且つ該溶液中のハロゲンとスズおよび周期律表第V
族元素の各原子数が次式の関係にある紡糸液から紡糸し
たゲルファイバーを、アンモニア雰囲気に接触させた後
加熱処理することを特徴とする酸化スズファイバーの製
造方法である。
【0010】
【数2】
【0011】[ここで、NSnは溶液中のスズと周期律
表第V族元素の原子数の総和に対するスズの原子数の比
であり、Nvは溶液中のスズと周期律表第V族元素の原
子数の総和に対する周期律表第V族元素の原子数の比で
あり、X、SnおよびVはそれぞれ溶液中のハロゲン、
スズおよび周期律表第V族元素の原子数を表わす] 次に本発明を更に具体的に説明する。
【0012】本発明に用いるアルコールは後述のハロゲ
ン化スズ化合物を溶解するものであれば何ら制限されな
い。これらアルコールを一般式ROHで表わすと、Rは
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル
基等の非置換アルキル基、2ーメトキシエチル基、2ー
エトキシエチル基、2ーヒドロキシエチル基、1ーメト
キシー2ープロピル基、メトキシエトキシエチル基、2
ーフェニルエチル基、フェニルメチル基等の置換アルキ
ル基、アリル基等の非置換アルケニル基、2ーメチルー
2ープロペニル基、3ーメチルー3ーブテニル基等の置
換アルケニル基等が挙げられる。
【0013】上記の置換アルキル基、置換アルケニル基
または置換アリール基における置換基の具体例として
は、上記したRの具体例に見られるメトキシ基、エトキ
シ基等のアルコキシル基、ヒドロキシル基、フェニル基
等のアリール基、メチル基、エチル基等のアルキル基の
他に、アミノ基、シアノ基、Cl原子、Br原子、I原
子、F原子等のハロゲン等が挙げられる。
【0014】本発明に用いるアルコ−ルを具体的に例示
すれば、メチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、プロピ
ルアルコ−ル、ブチルアルコ−ル、オクチルアルコー
ル、2ーメトキシエタノール、2ーエトキシエタノー
ル、エチレングリコール、1ーメトキシー2ープロピル
アルコール、メトキシエトキシエタノール、2ーフェニ
ルエチルアルコール、ベンジルアルコ−ル、アリルアル
コール、2ーメチルー2ープロペンー1ーオール、3ー
メチルー3ーブテンー1ーオール等を挙げることができ
る。特に、メチルアルコール、エチルアルコールはハロ
ゲン化スズ化合物の溶解度が高く好ましい。上記アルコ
ールは通常単独で用いられるが、ハロゲン化スズ化合物
との反応性、あるいはハロゲン化スズ化合物の溶解性等
を制御するために2種類以上のアルコールの混合物を用
いることもできる。
【0015】本発明に用いるハロゲン化スズ化合物のハ
ロゲンは、Cl、Br、I、F原子である。このハロゲ
ン化スズ化合物のなかでも、塩化スズ、臭化スズが価
格、安定性の点から好ましい。具体的には、SnC
2、SnCl2・2H20、SnBr2、SnI2、Sn
2等が挙げられ、特に、SnBr2、SnCl2・2H2
O、SnCl2が好ましく用いられる。また該ハロゲン
化スズ化合物において有機化合物で修飾したもの、例え
ばSn(CH3)2Cl2等も使用できる。
【0016】上記ハロゲン化スズ化合物とアルコールの
配合割合は、ハロゲン化スズ化合物がアルコ−ルに均一
に溶解する範囲であれば、特に制限されない。ただし、
あまりにハロゲン化スズ化合物の割合が低い場合は曳糸
性を示さないのでかなり濃縮する必要があり、アルコ−
ルが無駄になる。また、ハロゲン化スズ化合物の濃度が
あまりにも高いと沈澱が生じ均一な紡糸液が得られな
い。従って、使用するハロゲン化スズ化合物とアルコ−
ルの種類によってその配合割合は異なるが、一般的には
アルコ−ルに対するハロゲン化スズ化合物の使用割合は
モル比で0.02〜0.5が好ましい。この割合で配合
して透明で均一な溶液とした後、更にアルコールを蒸発
させて濃縮し所望の粘度を有する紡糸液とする。
【0017】本発明において、紡糸を安定的に行うため
に、且つ得られるファイバーの機械的強度を高めるため
にシリコンアルコキシドを紡糸液中に添加する。このよ
うなシリコンアルコキシドとしては、一般式Si(OR
A4、RBSi(ORA3、RBCSi(ORA2で表
されるシリコンアルコキシドが用いられる。ここで、R
A、RB、RCは、各々、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状または分岐状アル
キル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペン
テニル基等の直鎖状または分岐状アルケニル基;フェニ
ル基等のアリール基を示す。
【0018】該シリコンアルコキシドを具体的に例示す
ると、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチ
ルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フ
ェニルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラ
ン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメ
トキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−
オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシ
シラン、エチルトリエトキシシラン、アミルトリエトキ
シシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−オクチル
トリエトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシ
ラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、メチルトリブ
トキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチルトリ
プロポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリル
トリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ
メチルジエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラ
ン、ジエチルジメトキシシラン、エチルメチルジエトキ
シシラン等が挙げられる。また、シリコンアルコキシド
に代えてテトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリ
クロロエチルシラン等のハロゲン化珪素を添加すること
もできる。これらのハロゲン化珪素はアルコール中でア
ルコールと速やかに反応してシリコンアルコキシドとな
るので、上記シリコンアルコキシドと同じく紡糸液の添
加物として利用できる。
【0019】これらのシリコンアルコキシドを添加する
ことにより、高い湿度雰囲気下においても比較的安定的
にしかも長径の大きなファイバーを紡糸することができ
る。又、紡糸直後のゲルファイバーは軟化して崩れやす
くなることが少なくなるため取扱いが非常に容易にな
る。更に最終的に得られるファイバーの機械的強度が向
上する。これらのシリコンアルコキシドの添加量は、上
記ハロゲン化スズ化合物に対して、0.01〜30重量
%が好ましい。上記添加量が0.01重量%よりも少な
いと、充分な効果が得られない。30重量%を超える
と、ファイバー中のシリカ成分が増加して導電性が低下
するので好ましくない。但し、高い導電性を必要としな
いときは、更にシリカ成分を添加してもよい。
【0020】また、本発明において、高速での紡糸を可
能にするためにアルコール可溶性高分子化合物を紡糸液
中に添加することが重要である。このような高分子化合
物としてはアルコールに可溶な高分子化合物であれば何
等制限なく使用することができる。
【0021】具体的に例示すれば、エチルセルロース、
酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロ
ース、三酢酸セルロース、アセチルブチルセルロース、
ヒドロキシルプロピルセルロース等のセルロース類、ポ
リビニルブチラール、ポリメチレンオキシド、ポリエチ
レンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ酢酸ビニ
ル等が挙げられる。
【0022】これらのアルコール可溶性高分子化合物を
添加することにより、雰囲気中の湿度にあまり左右され
ずに紡糸できることに加えて、より高速で紡糸すること
が可能となる。即ち、例えばノズルから紡糸液を押し出
す方法を採用した場合、アルコール可溶性高分子化合物
を添加しないで安定的に紡糸するためには、アルコール
を蒸発させて濃縮することにより、紡糸液の粘度をおよ
そ500〜1000ポイズ以上にする必要がある。一般
に、紡糸速度は紡糸液の粘度を低くするほど早くなる傾
向にあるが、粘度が低いと糸切れを起こし安定的な紡
糸、特に高速紡糸が困難となる。ところが、上記アルコ
ール可溶性高分子化合物を紡糸液に添加すると、およそ
50〜500ポイズ程度の低い粘度でも紡糸が可能とな
り、しかも高速紡糸が可能となる。また、粘度が低く出
来るため、溶液にかかる圧力が均一になりやすく、用い
る複数個の紡糸ノズルのほとんどすべてから有効に紡糸
が可能となる。
【0023】これらのアルコール可溶性高分子化合物の
添加量は、上記スズ化合物に対して、0.01〜20重
量%が好ましい。上記アルコール可溶性高分子化合物の
添加量が0.01重量%よりも少ないと充分な効果が得
られない。一方、20重量%を越えてもその効果は飽和
するだけでなく、紡糸した繊維を加熱処理する時に、カ
ーボンや炭酸ガスの発生量が増加して除去し難くなった
り、得られる繊維中に気孔が生成したりするので好まし
くない。
【0024】本発明において、導電性の高い酸化スズフ
ァイバーを得るためには、周期律表第V族元素化合物
(以下第V族化合物という)を必要に応じて含有させる
ことができる。この第V族化合物は、後述する加熱処理
によって最終的には酸化物となって酸化スズ中に固溶す
る。
【0025】第V族化合物としては、バナジウム化合
物、ニオブ化合物、タンタル化合物、アンチモン化合
物、あるいはビスマス化合物等の第V族元素の化合物が
挙げられる。
【0026】具体的には、バナジウム化合物として、V
Br3、VCl2、VCl3、VCl4、VOBr2、VO
Br3、VOCl3、VF3、VF4、VF5、VI36H2
O、バナジウムのアルコキシドが挙げられ、ニオブ化合
物として、NbCl5、NbBr5、NbF5、NbOC
3、ニオブのアルコキシドが挙げられ、タンタル化合
物として、TaBr5、TaCl5、タンタルのアルコキ
シドが、アンチモン化合物として、SbCl3、SbC
5、SbBr3、オキシ塩化アンチモン、あるいはアン
チモンのアルコキシドが、また、ビスマス化合物として
は、BiCl3、BiI3、ビスマスのアルコキシド等が
挙げられる。
【0027】上記第V族化合物の配合割合は、酸化スズ
ファイバーに導電性を付与したい場合、酸化物換算で酸
化スズに対して0.1〜25mol%が好ましい。上記
割合があまりにも低いと得られる酸化スズファイバ−の
導電性が小さく、またあまりに高くしても導電性付与の
効果は小さくなる。
【0028】ハロゲン化スズ化合物、シリコンアルコキ
シド、アルコール可溶性高分子化合物および第V族化合
物とアルコールの溶解方法は、特に限定されない。攪拌
下、ハロゲン化スズ化合物、シリコンアルコキシド、ア
ルコール可溶性高分子化合物および必要に応じて加える
第V族化合物の混合物にアルコ−ルを滴下する方法、あ
るいは攪拌下、アルコールにハロゲン化スズ化合物、シ
リコンアルコキシド、アルコール可溶性高分子化合物、
並びに必要に応じて第V族化合物を同時に、または順次
溶解させる方法等を用いることができる。
【0029】本発明において 上記アルコール、ハロゲ
ン化スズ化合物、シリコンアルコキシド、アルコール可
溶性高分子化合物並びに必要に応じて第V族化合物を含
有する溶液において、該溶液中に第V族化合物を含まな
い場合はハロゲンとスズの原子数比、即ちX/Snが
1.6以上1.8未満になるように、第V族化合物を含
有する場合には、ハロゲンとスズと第V族元素の各原子
数の関係が次式
【0030】
【数3】
【0031】を満足するように調整することが重要であ
る。
【0032】ここで、NSnは溶液中のスズと第V族元素
の原子数の総和に対するスズの原子数の比であり、Nv
は溶液中のスズと第V族元素の原子数の総和に対する第
V族元素の原子数の比であり、X、SnおよびVはそれ
ぞれ溶液中のハロゲン、スズおよび第V族元素の原子数
を表わす。
【0033】上記ハロゲンとスズの原子数比X/Sn、
あるいはハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関
係X/(Sn+V)が上記範囲にある紡糸液から紡糸す
ると安定的に紡糸することができ、また紡糸されたゲル
ファイバーが高湿度雰囲気下においてもより形状を維持
しやすくなるなど取り扱いがきわめて容易になる。尚、
ハロゲンを有する第V族化合物および/またはシリコン
アルコキシドに代えてハロゲン化珪素を用いる場合は、
ハロゲンとしてハロゲン化スズ化合物に存在するハロゲ
ンに加えて第V族化合物および/またはハロゲン化珪素
由来のハロゲンも勘案して調製しなければならない。
【0034】上記ハロゲンとスズの原子数比X/Sn、
あるいはハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関
係X/(Sn+V)が上記範囲より大きくてもゲルファ
イバーを紡糸することが可能であるが、得られるファイ
バーが高湿度雰囲気下で軟化し形状が崩れやすくなるた
め湿度の制御等が必要になる。また、上記ハロゲンとス
ズの原子数比X/Sn、あるいはハロゲンとスズおよび
第V族元素の原子数の関係X/(Sn+V)が上記範囲
よりも小さいと紡糸したゲルファイバーは高湿度下にお
いても安定であるが、上記紡糸液中に沈澱が生じやすく
なるなど紡糸液が不安定になるという問題が出てくる。
従って上記ハロゲンとスズの原子数比X/Sn、あるい
はハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関係X/
(Sn+V)を上記範囲に制御することが重要である。
【0035】上記ハロゲンとスズの原子数比、あるいは
ハロゲンとスズおよび第V族元素の原子数の関係を制御
する方法は特に限定されず、公知の方法を何等制限なく
用いることができる。例えば、アニオン交換樹脂によっ
てハロゲンイオンを除去する方法、ハロゲン化物として
沈澱させて除去する方法、加熱蒸発によりハロゲンを除
去する方法等の通常の方法を用いることができる。この
加熱蒸発させる場合、ハロゲンはハロゲン化水素として
蒸発するのではないかと推定される。また、紡糸液を作
製する際に最初からX/Snが小さいハロゲン化スズ化
合物、例えばSnCl2、SnCl2・2H2O、SnB
2 等のスズが2価である化合物を用いることは上記範
囲に容易に制御し得るため有効である。
【0036】紡糸液中の、ハロゲン、スズ、第V族元素
の定量は如何なる方法によってもよいが、スズおよび第
V族元素の定量には誘導結合プラズマ発光分析法(IP
C発光分析法)が、ハロゲンの定量には沈澱滴定法が好
適に採用される。
【0037】更に本発明の紡糸液の安定性を向上させる
ために、更にアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マ
ロン酸ジエチル等のカルボキシル基を2個以上有する化
合物をスズの錯化剤として適宜含有させることができ
る。
【0038】紡糸方法は特に制限はなく、従来の紡糸方
法を用いることができる。例えば、紡糸ノズルから紡糸
液を押し出す方法等が挙げられる。得られるファイバー
の長径、及び直径等は前記紡糸液の粘度、ノズル径ある
いは紡糸ノズルから紡糸液を押し出す速度等を調整する
ことによって任意に制御することができる。尚、紡糸液
から紡糸した加熱処理前のファイバーをゲルファイバー
と称する。
【0039】本発明においては、紡糸後のゲルファイバ
ーの湿度に対する安定性を一層高めるために、該ゲルフ
ァイバーをアンモニア雰囲気に接触させることが重要で
ある。シリコンアルコキシドを紡糸液に添加し且つ紡糸
液中のアロゲン含量を制御することによって、紡糸後の
ゲルファイバーの湿度に対する安定性は改善されるが、
アンモニア雰囲気に接触させると更に湿度に対する安定
性が増す。即ち、このアンモニア雰囲気でゲルファイバ
ーを処理することによって、後述する加熱処理までにゲ
ルファイバーを高い湿度雰囲気に接触させてもファイバ
ー形状が安定に保持されるので取り扱いが極めて容易に
なり、紡糸工程から加熱処理工程にスムーズに移行でき
るようになる。
【0040】アンモニア雰囲気に接触させる方法は特に
限定されない。例えば、アンモニア雰囲気中で紡糸する
ことにより紡糸直後にアンモニア雰囲気に接触させる方
法、あるいは湿度の低い空気中で紡糸した後にアンモニ
ア雰囲気に接触させる方法等アンモニア雰囲気に接触さ
せる前に高い湿度に接触させない方法であれば何等制限
なく用いることができる。
【0041】アンモニア雰囲気としては、純アンモニア
ガス、該アンモニアガスを空気、窒素、酸素ガス等で希
釈した希釈アンモニアガス、あるいはアンモニア水から
蒸発するアンモニアガス等が適宜採用される。アンモニ
ア雰囲気中のアンモニア濃度は、特に制限されない。ア
ンモニア濃度が低い場合には、長時間接触させればよい
し、濃度が高い場合には、短時間の接触でよい。一般的
には、0.02%〜5%の濃度のアンモニア雰囲気が用
いられる。アンモニア雰囲気への接触時間も特に限定さ
れず、通常1秒〜24時間、好ましくは数分〜1時間で
ある。
【0042】アンモニア雰囲気に接触させることによっ
て何故ゲルファイバーの耐湿性が向上するのか、本発明
者らも充分には説明し得ないが、ゲルファイバー中に含
まれるハロゲンがアンモニアとの反応によって捕らえら
れたり、除去されることにより吸湿性が低下するためで
はないかと推定される。
【0043】アンモニア雰囲気処理して得られるゲルフ
ァイバーの加熱処理は、ゲルファイバーからアルコール
などの有機溶媒、あるいは水などを除去してファイバー
の骨格を強くし、場合によっては、更に結晶化させる温
度で行われる。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバ
ーはそのままでは十分な機械的強度を示さない。機械的
強度はゲルファイバーを加熱処理することで発現する。
該加熱処理温度は得られるファイバーに機械的強度を付
与できる温度範囲内で有れば特に限定されない。加熱処
理温度が低い場合にはファイバー中にアルコール、水な
どが残存するために十分な機械的強度が生じない。ま
た、加熱処理温度が高すぎると酸化スズの分解が進行し
たり、あるいはファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度
が低下するなどの問題が生じる。上記理由により、加熱
処理温度は250〜1550℃の範囲が好ましい。更に
好適には300〜1500℃の温度で加熱処理すること
が好ましい。
【0044】第V族化合物を添加して、得られるファイ
バーの導電性を向上させたい場合もまた加熱処理が必要
である。紡糸液から紡糸したままのゲルファイバーはそ
のままでは絶縁体であり、導電性はゲルファイバーを加
熱処理することで発現する。該加熱処理温度は得られる
ファイバーに導電性を付与できる温度範囲内であれば特
に限定されない。一般に、加熱処理温度が低い場合には
ファイバー中にアルコールなどの有機物、水等が残存す
るため、また第V族化合物が酸化物の形態にならず酸化
スズと充分に固溶しないため導電性が生じない。また加
熱処理温度が高すぎると、ファイバー中の第V族化合物
が揮散し導電性が低下する、酸化スズの分解が進行す
る、ファイバー中の結晶粒が成長し過ぎ強度が低下する
などの問題を生じる。このため、加熱処理温度として2
50℃〜1550℃の温度範囲が好ましい。さらに好適
には、300℃〜1500℃の温度で加熱処理すること
が好ましい。
【0045】また、加熱処理は通常空気中で行われる
が、特に導電性の高いファイバーを得たいときには、窒
素、アルゴン、水素、アルゴンと水素の混合ガスなどの
還元性雰囲気下や真空中で加熱処理を行うことができ
る。
【0046】更に、該加熱処理に際し、ゲルファイバー
中に存在する水、アルコール等の揮発成分を、乾燥によ
って除去することが良好な酸化スズファイバーを得るた
めに望ましい。かかる乾燥は、加熱処理と同時に行って
も良いが、加熱処理前に予め行う方が良好なファイバー
を得るためには好ましい。これらの場合、乾燥温度は得
られるファイバーにクラックが発生することを防止する
ために、出来るだけ低い温度で行うことが好ましいが、
溶媒に沸点の高いアルコールを用いた場合には、余り低
すぎると乾燥に長時間を要し、効果的でない。一般的な
乾燥温度は室温〜300℃の範囲とすることが好まし
い。
【0047】本発明の、第V族化合物を含有する紡糸液
から得られる導電性酸化スズファイバーの比抵抗値は、
第V族化合物の種類、添加量、焼成雰囲気及び焼成温度
等によって大きく変わるが、通常、103〜10ー1Ω・
cmの値をとることができる。
【0048】また、本発明によって得られる(導電性)
酸化スズファイバーは、結晶質、非晶質のいずれでも取
りうるが、導電性の観点からは結晶質の方が好ましい。
【0049】
【発明の効果】本発明の方法により、加熱処理前にゲル
ファイバーを高い湿度雰囲気に接触させても軟化して形
状が崩れることがなくなり、次の加熱工程へ極めてスム
ーズに移行することができるようになった。この結果、
工業的に安定した操業が可能となり生産性が向上した。
更に、得られるファイバーの機械的強度が向上した。
【0050】
【実施例】本発明を以下実施例によって具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によって限定されるもの
ではない。
【0051】実施例1 塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)、
および平均分子量50万のポリエチレンオキシド0.0
6gをメタノール100ml(2.47モル)に溶解さ
せ均一で透明な溶液にした。その後テトラメトキシシラ
ン1.14g(0.0075モル)を添加溶解させ均一
な溶液を得た。その後、エバポレータによる濃縮とメタ
ノールの添加を繰り返し塩素とスズおよびアンチモンの
原子数の関係Cl/Snが1.62である粘度が200
ポイズの紡糸液とした。この紡糸液を圧力を加えて紡糸
ノズルから押し出しアンモニア濃度が5000ppmの
雰囲気下でドラムに連続的に巻き取ったところ、紡糸速
度20m/minの速度で安定的に紡糸することができ
た。またノズルの10個のホールすべてから紡糸するこ
とができた。得られたファイバ−を室温で1日放置後、
2℃/minの速度で120℃まで昇温しその温度で3
0分間保持した。その後10℃/minの速度で500
℃まで昇温しその温度で30分間保持して加熱処理をお
こなった。得られたファイバーは平均15μmの直径を
有し、ケイ光X線分析によりシリカが仕込組成通りファ
イバー中に存在していることが確認された。また、X線
回折の結果、酸化スズであることが確認された。得られ
たファイバ−の比抵抗は平均8×105Ω・cmであっ
た。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPa
であった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の
雰囲気下に4時間放置したが軟化することなくファイバ
ー形状を保持した。
【0052】実施例2 塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)、
三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モ
ル)、および平均分子量50万のポリエチレンオキシド
0.06gをメタノール100ml(2.47モル)に
溶解させ均一で透明な溶液にした。その後テトラメトキ
シシラン1.14g(0.0075モル)を添加溶解さ
せ均一な溶液を得た。その後、エバポレータによる濃縮
とメタノールの添加を繰り返し塩素とスズおよびアンチ
モンの原子数の関係Cl/(Sn+Sb)が1.62で
ある粘度が200ポイズの紡糸液とした。ここで、1.
55NSn+1.60NV=1.55であり、1.80N
Sn+2.70NV=1.87である。この紡糸液を圧力
を加えて紡糸ノズルから押し出しアンモニア濃度が20
00ppmの雰囲気下でドラムに連続的に巻き取ったと
ころ、紡糸速度20m/minの速度で安定的に紡糸す
ることができた。またノズルの10個のホールすべてか
ら紡糸することができた。得られたファイバ−を室温で
1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで昇温し
その温度で30分間保持した。その後10℃/minの
速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保持して
加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平均15
μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモン
およびシリカが仕込組成通りファイバー中に存在してい
ることが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズ
のピークを有すること、アンチモンはその酸化物などの
ピークはみられず酸化スズ中に固溶していることが確認
された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cm
であった。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40
MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度8
5%の雰囲気下に4時間放置したが軟化することなくフ
ァイバー形状を保持した。
【0053】実施例3 Cl/Sn=1.78にし、アンモニア濃度を5%とす
ること以外実施例1と同様に紡糸液の調整を行い、次い
で20m/minの速度で紡糸したところ、液滴の落
下、糸切れを起こすことなく連続的に紡糸できた。また
ノズルの10個のホールすべてから紡糸することができ
た。得られた加熱処理後のファイバ−のケイ光X線分析
により、シリカが仕込組成通りファイバー中に存在して
いることが確認された。また、X線回折の結果、酸化ス
ズであることが確認された。得られたファイバ−の比抵
抗は平均8×105Ω・cmであった。また、ファイバ
ーの引っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸直後
のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間
放置したがファイバー形状を保持した。 実施例4 Cl/Sn=1.55とし、アンモニア濃度を1%とす
ること以外実施例1と同様に紡糸液の調整を行い、次い
で20m/minの速度で紡糸したところ、液滴の落
下、糸切れを起こすことなく連続的に紡糸できた。また
ノズルの10個のホールすべてから紡糸することができ
た。得られた加熱処理後のファイバ−のケイ光X線分析
により、シリカが仕込組成通りファイバー中に存在して
いることが確認された。また、X線回折の結果、酸化ス
ズであることが確認された。得られたファイバ−の比抵
抗は平均8×105Ω・cmであった。また、ファイバ
ーの引っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸直後
のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間
放置したがファイバー形状を保持した。この紡糸液は、
10時間放置しても沈澱は生じなかったが、24時間放
置後には紡糸液中に一部沈澱が析出した。 実施例5 臭化第一スズ(SnBr2)13.9g(0.05モ
ル)、三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.00
4モル)をメタノ−ル100ml(2.47モル)に溶
解させ均一で透明な溶液にした。その後、重量平均分子
量50万のポリエチレンオキシド0.07gを10ml
のメタノールに溶解させた溶液を添加して均一な溶液を
得た。その後、テトラメトキシシラン1.14g(0.
0075モル)を添加溶解させ均一な溶液を得た。その
後、エバポレータによる濃縮とメタノールの添加を繰り
返し、臭素と塩素とスズ及びアンチモンの原子数の関係
(Br+Cl)/(Sn+Sb)が1.70である粘度
が200ポイズの紡糸液からなる紡糸液を調製した。こ
こで、1.55NSn+1.60NV=1.55であり、
1.80NSn+2.70NV=1.87である。この紡
糸液を圧力を加えてノズルから押し出し、アンモニア濃
度が200ppmの雰囲気下でドラムに連続的に巻き取
ったところ、紡糸速度20m/minの速度で紡糸した
ところ、液滴の落下、糸切れを起こすことなく連続的に
紡糸することができた。またノズルの10個のホールす
べてから紡糸することができた。得られたファイバ−を
室温で1日放置後、2℃/minの速度で120℃まで
昇温しその温度で30分間保持した。その後10℃/m
inの速度で500℃まで昇温しその温度で30分間保
持して加熱処理をおこなった。得られたファイバーは平
均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析により、アン
チモンおよびシリカが仕込組成通りファイバー中に存在
していることが確認された。また、X線回折の結果、酸
化スズのピークを有すること、アンチモンはその酸化物
などのピークはみられず酸化スズ中に固溶していること
が確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω
・cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は平
均40MPaであった。紡糸直後のゲルファイバーを相
対湿度85%の雰囲気下に4時間放置したが軟化するこ
となくファイバー形状を保持した。
【0054】実施例6 実施例2において、Cl/(Sn+Sb)を1.78に
し、アンモニア濃度を3%にすること以外は同様に行
い、次いで20m/minの速度で紡糸したところ、液
滴の落下、糸切れを起こすことなく連続的に紡糸でき
た。このとき、1.55NSn+1.60Nv=1.55
であり、1.80NSn+2.70Nv=1.87であ
る。またノズルの10個のホールすべてから紡糸するこ
とができた。得られたファイバ−のケイ光X線分析によ
り、アンチモンおよびシリカが仕込組成通りファイバー
中に存在していることが確認された。また、X線回折の
結果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンはそ
の酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶して
いることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は
平均1Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り
強度は平均40MPaであった。紡糸直後のゲルファイ
バーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間放置したがフ
ァイバー形状を保持した。
【0055】実施例7 紡糸液中の塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係
Cl/(Sn+Sb)を1.55にすること以外実施例
2と同様に紡糸液の調整を行い、次いで20m/min
の速度で紡糸したところ、液滴の落下、糸切れを起こす
ことなく連続的に紡糸できた。このとき、1.55NSn
+1.60Nv=1.55であり、1.80NSn+2.
70Nv=1.87である。またノズルの10個のホー
ルすべてから紡糸することができた。得られたファイバ
ーは平均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析によ
り、アンチモンおよびシリカが仕込組成通りファイバー
中に存在していることが確認された。また、X線回折の
結果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンはそ
の酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶して
いることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は
平均1Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り
強度は平均40MPaであった。紡糸直後のゲルファイ
バーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間放置したがフ
ァイバー形状を保持した。この紡糸液は、10時間放置
しても沈澱は生じなかったが、24時間放置後には紡糸
液中に一部沈澱が析出した。
【0056】実施例8 メタノールの代わりにエタノールを100ml、SbC
3 1gの代わりにSb(OC253を1.13gを
用いることおよび塩素とスズとアンチモンの原子数の関
係Cl/(Sn+Sb)が1.65であること以外は実
施例2と同様に行ない、20m/minの速度で連続的
に紡糸できた。ここで、1.55NSn+1.60NV
1.55であり、1.80NSn+2.70NV=1.8
7である。またノズルの10個のホールすべてから紡糸
することができた。得られたファイバーは平均15μm
の直径を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンおよ
びシリカが仕込組成通りファイバー中に存在しているこ
とが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピ
ークを有すること、アンチモンはその酸化物などのピー
クはみられず酸化スズ中に固溶していることが確認され
た。得られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであ
った。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MP
aであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%
の雰囲気下に4時間放置したが軟化することなくファイ
バー形状を保持した。
【0057】実施例9 塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05モル)、
三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モ
ル)および平均分子量50万のポリエチレンオキシド
0.06gをメタノール100ml(2.47モル)に
溶解させ均一で透明な溶液にした。その後テトラメトキ
シシラン1.14g(0.0075モル)を添加溶解さ
せ均一な溶液を得た。その後、エバポレータによる濃縮
とメタノールの添加を繰り返し塩素とスズおよびアンチ
モンの原子数の関係Cl/(Sn+Sb)が1.62で
ある粘度が200ポイズの紡糸液とした。ここで、1.
55NSn+1.60NV=1.55であり、1.80N
Sn+2.70NV=1.87である。この紡糸液を圧力
を加えて紡糸ノズルから押し出し相対湿度55%の空気
雰囲気下でドラムに連続的に巻き取ったところ、紡糸速
度20m/minの速度で安定的に紡糸することができ
た。またノズルの10個のホールすべてから紡糸するこ
とができた。得られたファイバ−をアンモニア濃度20
0ppmの雰囲気下で室温で放置後、空気中2℃/mi
nの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持
した。その後10℃/minの速度で500℃まで昇温
しその温度で30分間保持して加熱処理をおこなった。
得られたファイバーは平均15μmの直径を有し、ケイ
光X線分析により、アンチモンおよびシリカが仕込組成
通りファイバー中に存在していることが確認された。ま
た、X線回折の結果、酸化スズのピークを有すること、
アンチモンはその酸化物などのピークはみられず酸化ス
ズ中に固溶していることが確認された。得られたファイ
バ−の比抵抗は平均1Ω・cmであった。また、ファイ
バーの引っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸後
のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間
放置したが軟化することなくファイバー形状を保持し
た。
【0058】実施例10 メタノールの代わりに2ーエトキシエタノールを用いる
こと以外は実施例2と同様に行ない、20m/minの
速度で連続的に紡糸できた。またノズルの10個のホー
ルすべてから紡糸することができた。ここで、1.55
Sn+1.60NV=1.55であり、1.80NSn
2.70NV=1.87である。またノズルの10個の
ホールすべてから紡糸することができた。得られたファ
イバーは平均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析に
より、アンチモンおよびシリカが仕込組成通りファイバ
ー中に存在していることが確認された。また、X線回折
の結果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンは
その酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶し
ていることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗
は平均1Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張
り強度は平均40MPaであった。紡糸後のゲルファイ
バーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間放置したが軟
化することなくファイバー形状を保持した。
【0059】実施例11 三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モ
ル)の代わりに、TaCl5 0.945g(0.00
26モル)を用いること以外は実施例2と同様に行ない
Cl/(Sn+Ta)=1.62で粘度が200ポイズ
の紡糸液とし、20m/minの速度で連続的に紡糸で
きた。ここで、1.55NSn+1.60NV=1.55
であり、1.80NSn+2.70NV=1.84であ
る。またノズルの10個のホールすべてから紡糸するこ
とができた。得られたファイバ−をケイ光X線分析、X
線回折の結果、シリカおよびタンタルが仕込組成通り固
溶した結晶質の酸化スズであることが確認された。得ら
れたファイバ−の比抵抗は平均3×103Ω・cmであ
った。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MP
aであった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%
の雰囲気下に4時間放置したがファイバー形状を保持し
た。
【0060】実施例12 三塩化アンチモン(SbCl3)1g(0.004モ
ル)の代わりに、NbCl5 0.712g(0.00
26モル)を用いること以外は実施例2と同様に行ない
Cl/(Sn+Nb)=1.70で粘度が200ポイズ
の紡糸液とし、20m/minの速度で連続的に紡糸で
きた。ここで、1.55NSn+1.60NV=1.55
であり、1.80NSn+2.70NV=1.84であ
る。またノズルの10個のホールすべてから紡糸するこ
とができた。得られたファイバ−をケイ光X線分析、X
線回折により分析した結果、シリカおよびニオブが仕込
組成通り固溶した結晶質の酸化スズであることが確認さ
れた。得られたファイバ−の比抵抗は、平均3×103
Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は
平均40MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相
対湿度85%の雰囲気下に4時間放置したがファイバー
形状を保持した。
【0061】実施例13 アンモニア濃度を500ppmにすること以外は、実施
例9と同様に行なった。
【0062】得られたファイバーは平均15μmの直径
を有し、ケイ光X線分析により、アンチモンおよびシリ
カが仕込組成通りファイバー中に存在していることが確
認された。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを
有すること、アンチモンはその酸化物などのピークはみ
られず酸化スズ中に固溶していることが確認された。得
られたファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであった。
また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPaであ
った。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲
気下に4時間放置したが軟化することなくファイバー形
状を保持した。
【0063】実施例14 メチルアルコール100ml中に四塩化珪素1.28g
(0.0075mol)を吸収させた。その後この溶液
にアンモニア水を過剰に添加し塩化アンモニウムを析出
させ濾過を行った。その後、濾液を真空脱気し、溶液中
のアンモニアを取り除いた。このテトラメトキシシラン
の溶液に塩化第一スズ(SnCl2)10g(0.05
モル)、および平均分子量50万のポリエチレンオキシ
ド0.06g、メタノール100ml(2.47モル)
を添加し均一で透明な溶液にした。その後、エバポレー
タによる濃縮とメタノールの添加を繰り返し溶液中の塩
素とスズおよびアンチモンの原子数の関係Cl/Snが
1.62である粘度が200ポイズの紡糸液とした。こ
の紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから押し出しアンモ
ニア濃度が5000ppmの雰囲気下でドラムに連贈的
に巻き取ったところ、紡糸速度20m/minの速度で
安定的に紡糸することができた。またノズルの10個の
ホールすべてから紡糸することができた。得られたファ
イバ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で12
0℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後1
0℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度で3
0分間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイ
バーは平均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析によ
りシリカが仕込組成通りファイバー中に存在しているこ
とが確認された。また、X線回折の結果、酸化スズであ
ることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平
均8×105Ω・cmであった。また、ファイバーの引
っ張り強度は平均40MPaであった。紡糸後のゲルフ
ァイバーを相対湿度85%の雰囲気下に4時間放置した
が軟化することなくファイバー形状を保持した。
【0064】比較例1 アンモニア雰囲気の代わりに空気中で紡糸すること以外
は実施例1と同様に行ったところ、紡糸速度20m/m
inの速度で安定的に紡糸することができた。またノズ
ルの10個のホールすべてから紡糸することができた。
得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/min
の速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持し
た。その後10℃/minの速度で500℃まで昇温し
その温度で30分間保持して加熱処理をおこなった。得
られたファイバーは平均15μmの直径を有し、X線回
折の結果、酸化スズであることが確認された。得られた
ファイバ−の比抵抗は平均8×105Ω・cmであっ
た。また、ファイバーの引っ張り強度は平均40MPa
であった。紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の
雰囲気下に3.5時間放置したところ軟化してファイバ
ー形状が崩れた。
【0065】比較例2 アンモニア雰囲気の代わりに空気中で紡糸すること以外
は実施例2と同様に行ったところ、紡糸速度20m/m
inの速度で安定的に紡糸することができた。またノズ
ルの10個のホールすべてから紡糸することができた。
得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/min
の速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保持し
た。その後10℃/minの速度で500℃まで昇温し
その温度で30分間保持して加熱処理をおこなった。得
られたファイバーは平均15μmの直径を有し、ケイ光
X線分析により、アンチモンが仕込組成通りファイバー
中に存在していることが確認された。また、X線回折の
結果、酸化スズのピークを有すること、アンチモンはそ
の酸化物などのピークはみられず酸化スズ中に固溶して
いることが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は
平均1Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り
強度は平均40MPaであった。紡糸後のゲルファイバ
ーを相対湿度85%の雰囲気下に3.5時間放置したが
軟化してファイバー形状が崩れた。
【0066】比較例3 ポリエチレンオキシドを添加しないで紡糸液の粘度を2
00ポイズにすること以外は実施例9と同様に行った。
このときノズルの10個のホール中10個すべてから紡
糸することができ、速度も20m/minであったが、
断続的に液滴がそれまで巻取っていたゲルファイバ上に
落下して、均質な紡糸はできなかった。
【0067】比較例4 紡糸液中の塩素とスズの比Cl/Snを1.50にする
こと以外実施例1と同様に行ったが、紡糸液中に多量の
沈澱が析出しゲルファイバーの紡糸を行うことができな
かった。
【0068】比較例5 紡糸液中の塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係
Cl/(Sn+Sb)を1.50にすること以外実施例
2と同様に行ったが、紡糸液中には多量の沈澱が析出し
ゲルファイバーの紡糸を行うことができなかった。ここ
で、1.55NSn+1.60NV=1.55であり、
1.80NSn+2.70NV=1.87である。
【0069】比較例6 紡糸液中の塩素とスズの比Cl/Snを1.90にする
こと以外実施例1と同様に紡糸液の調製を行った。この
紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから押し出しアンモニ
ア濃度が5000ppmの雰囲気下でドラムに連続的に
巻き取ったところ、紡糸速度20m/minの速度で安
定的に紡糸することができた。またノズルの10個のホ
ールすべてから紡糸することができた。得られたファイ
バ−を室温で1日放置後、2℃/minの速度で120
℃まで昇温しその温度で30分間保持した。その後10
℃/minの速度で500℃まで昇温しその温度で30
分間保持して加熱処理をおこなった。得られたファイバ
ーは平均15μmの直径を有し、ケイ光X線分析により
シリカが仕込組成通りファイバー中に存在していること
が確認された。また、X線回折の結果、酸化スズである
ことが確認された。得られたファイバ−の比抵抗は平均
8×105Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ
張り強度は平均40MPaであった。紡糸後のゲルファ
イバーを相対湿度85%の雰囲気下に放置したところ
3.5時間後には軟化しファイバー形状を崩した。
【0070】比較例7 紡糸液中の塩素とスズおよびアンチモンの原子数の関係
Cl/(Sn+Sb)を1.90にすること以外実施例
2と同様に行った。ここで、1.55NSn+1.60N
V=1.55であり、1.80NSn+2.70NV=1.
87である。この紡糸液を圧力を加えて紡糸ノズルから
押し出しアンモニア濃度が2000ppmの雰囲気下で
ドラムに連続的に巻き取ったところ、紡糸速度20m/
minの速度で安定的に紡糸することができた。またノ
ズルの10個のホールすべてから紡糸することができ
た。得られたファイバ−を室温で1日放置後、2℃/m
inの速度で120℃まで昇温しその温度で30分間保
持した。その後10℃/minの速度で500℃まで昇
温しその温度で30分間保持して加熱処理をおこなっ
た。得られたファイバーは平均15μmの直径を有し、
ケイ光X線分析により、アンチモンおよびシリカが仕込
組成通りファイバー中に存在していることが確認され
た。また、X線回折の結果、酸化スズのピークを有する
こと、アンチモンはその酸化物などのピークはみられず
酸化スズ中に固溶していることが確認された。得られた
ファイバ−の比抵抗は平均1Ω・cmであった。また、
ファイバーの引っ張り強度は平均40MPaであった。
紡糸後のゲルファイバーを相対湿度85%の雰囲気下に
放置したところ3.5時間後に軟化しファイバー形状を
崩した。
【0071】比較例8 テトラメトキシシランを添加しないこと以外実施例1と
同様に行った。得られたファイバーは平均15μmの直
径を有し、X線回折の結果、酸化スズであることが確認
された。得られたファイバ−の比抵抗は平均8×104
Ω・cmであった。また、ファイバーの引っ張り強度は
平均14MPaであった。紡糸後のゲルファイバーを相
対湿度85%の雰囲気下に放置したところ3.5時間後
に軟化しファイバー形状が崩れた。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコールにハロゲン化スズ化合物、シ
    リコンアルコキシドおよびアルコール可溶性高分子化合
    物を溶解してなり、且つ該溶液中に含まれるハロゲンと
    スズの原子数の比(X/Sn)が1.55以上1.80
    未満である紡糸液から紡糸したゲルファイバーを、アン
    モニア雰囲気に接触させた後加熱処理することを特徴と
    する酸化スズファイバーの製造方法。
  2. 【請求項2】 アルコールにハロゲン化スズ化合物、シ
    リコンアルコキシド、アルコール可溶性高分子化合物お
    よび周期律表第V族元素化合物を溶解してなり、且つ該
    溶液中のハロゲンとスズおよび周期律表第V族元素の各
    原子数が次式の関係にある紡糸液から紡糸したゲルファ
    イバーを、アンモニア雰囲気に接触させた後加熱処理す
    ることを特徴とする酸化スズファイバーの製造方法。 【数1】 [ここで、NSnは溶液中のスズと周期律表第V族元素
    の原子数の総和に対するスズの原子数の比であり、Nv
    は溶液中のスズと周期律表第V族元素の原子数の総和に
    対する周期律表第V族元素の原子数の比であり、X、S
    nおよびVはそれぞれ溶液中のハロゲン、スズおよび周
    期律表第V族元素の原子数を表わす]
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