JPH0780498B2 - ガラス容器の擦り傷遮蔽剤および擦り傷が遮蔽されたガラス容器 - Google Patents

ガラス容器の擦り傷遮蔽剤および擦り傷が遮蔽されたガラス容器

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JPH0780498B2
JPH0780498B2 JP18250192A JP18250192A JPH0780498B2 JP H0780498 B2 JPH0780498 B2 JP H0780498B2 JP 18250192 A JP18250192 A JP 18250192A JP 18250192 A JP18250192 A JP 18250192A JP H0780498 B2 JPH0780498 B2 JP H0780498B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はガラス容器の擦り傷遮蔽
剤および擦り傷が遮蔽されたガラス容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ビール、清涼飲料、牛乳、ヨーグ
ルト、コーヒーなどの商品用充填容器として使用されて
いるガラス容器は、使用後に市場から回収され、洗浄さ
れて繰り返し使用される。このように繰り返し使用され
るガラス容器は、瓶詰め工程やその後の流通過程におい
て、ガラス容器同士あるいはガラス容器と機械装置の金
属部などとの接触により、容器表面に擦り傷が発生し、
繰り返し使用を重ねるにつれて美観の低下が著しくな
り、外装品質が損なわれる。この結果、充填された内容
物の商品価値までもが低下してしまう。そのため、擦り
傷が発生したガラス容器に対して、擦り傷遮蔽剤を塗布
することが提案されており、この場合、 擦り傷の遮蔽性がよいこと 耐水性が良いこと 被膜表面にべとつきがないこと 塗布が容易で、常温で所要物性を有する被膜を形成で
きること 有毒でないこと アルカリ水溶液による洗浄で被膜が容易かつ完全に剥
離すること ガラス容器に貼付けしたラベルを損傷させないこと などの要件を満たすものであることが求められている。
このような点に鑑み、本発明者らの一部が提案した特開
平3−131548号公報に記載された先行技術は、特定の硬
化性オルガノポリシロキサンと揮発性ポリジメチルシロ
キサンで構成される組成物を擦り傷遮蔽剤として使用す
ることから成るものであり、前記の要件を充足するもの
である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この先
行技術にしたがって擦り傷遮蔽を行う場合には、洗浄工
程におけるアルカリ水溶液による易剥離性を確保するた
めに、被膜形成成分中のSiCH3/SiC6H5のモル比を10を
超える数とする必要があった。このため、フェニル基の
含有率が低すぎて、硬化被膜とガラスとの屈折率のマッ
チングが十分でなく、無色透明ガラス容器の擦り傷遮蔽
性が悪い、また褐色のビール瓶でも擦り傷が深い場合に
十分な遮蔽効果が得られにくい、という欠点があった。
すなわち、先行技術では、アルカリ水による洗浄性と、
深い擦り傷あるいは無色透明ガラス容器の擦り傷に対す
る遮蔽性を両立させることができない、という欠点があ
った。本発明の目的は、先行技術のこのような欠点を解
消し、深い擦り傷や無色透明ガラス容器の擦り傷に対し
ても良好な遮蔽効果を示し、しかもアルカリ水溶液によ
る剥離性に優れた、ガラス容器の擦り傷遮蔽剤を提供す
ることである。また、他の目的はその遮蔽剤によって擦
り傷が遮蔽されたガラス容器を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、このよう
な擦り傷遮蔽剤を得るべく鋭意検討した結果、硬化性ポ
リメチルシロキサン、高い屈折率を示す特定のオルガノ
シラン化合物、脂肪酸エステル、硬化触媒および揮発性
ポリジメチルシロキサンから成る擦り傷遮蔽剤を見出
し、本発明をなすに至った。
【0005】すなわち本発明は、 (A) 一般式
【0006】
【化3】
【0007】(式中、X はヒドロキシル基および/また
は加水分解性基であり、a およびbは下記の関係を満た
す数である。 0.8≦a<2 0.3≦b<2 ) で表される硬化性ポリメチルシロキサン 100重量部 (B) 一般式 R1 2Si(OR2)2 (式中、R1はアリール基またはアラルキル基であり、R2
は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示す)で
表されるジオルガノシラン化合物1〜100 重量部 (C) 脂肪酸エステル1〜100 重量部 (D) 硬化触媒0.01〜10重量部および (E) 一般式(I)および/または(II)で表される揮発
性ポリジメチルシロキサン50〜2000重量部
【0008】
【化4】
【0009】より成り、25℃における粘度が2〜10,000
cSt であることを特徴とするガラス容器の擦り傷遮蔽剤
である。さらに、本発明は当該擦り傷遮蔽剤の硬化被膜
で表面を被覆されてなる、擦り傷が遮蔽されたガラス容
器である。
【0010】本発明で使用される(A) 成分は、一般式
【0011】
【化5】
【0012】で表される硬化性ポリメチルシロキサンで
あり、本発明の擦り傷遮蔽剤のベースポリマーとなるも
のである。(A) 成分のX は、ヒドロキシル基および/ま
たは加水分解性基である。加水分解性基としてはアルコ
キシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、ケトオキシム
基、アミド基、アルケニルオキシ基およびハロゲン原子
が例示される。これらの中でも、硬化反応時に発生する
副生成物の臭気が少なく、硬化性および被膜特性が良好
なことから、ヒドロキシル基、および炭素数1〜4のア
ルコキシ基が望ましく、特にヒドロキシル基、メトキシ
基、エトキシ基であることが好ましい。また、(A) 成分
において、a およびb は下記の関係を満たす数であるこ
とが必要である。 0.8≦a<2 0.3≦b<2 ) a が0.8 未満では硬化被膜が脆くなり、2以上であると
良好な被膜が得られにくくなるとともに、被膜に滑り性
やべたつきを生じ、本発明の目的に適さない。一方、b
は、0.3 未満では硬化速度が遅すぎて実用に合わず、2
以上では硬化被膜が脆くなり、本発明の目的に適さな
い。(A) 成分は、25℃における粘度が10〜100,000cStの
範囲にあることが好ましい。粘度が10cSt 未満ではガラ
ス容器表面への定着が不十分で、擦り傷遮蔽性に劣る。
一方、100,000cStを超えると高粘度のために擦り傷部へ
の浸透もしくは濡れが十分ではなく、結果として擦り傷
遮蔽性に劣ることがある。このような硬化性ポリメチル
シロキサン(A) は、公知の方法で容易に得ることができ
る。すなわち、メチルトリアルコキシシラン、ジメチル
ジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、テ
トラアルコキシシランなどのアルコキシシラン類、これ
らのアルコキシ基を塩素原子で置換した対応するクロロ
シラン類の中から選択される1種あるいは2種以上の混
合物を適宜選択して、触媒の存在下で部分加水分解ある
いは加水分解して部分縮合させることにより得ることが
できる。このような触媒としては、無水酢酸、酢酸、プ
ロピオン酸、クエン酸、安息香酸、ギ酸、シュウ酸のよ
うな有機酸;アルミニウムアルキルアセテートのような
アルミニウムキレート化合物;メチルトリクロロシラ
ン、ジメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ア
ンモニア水のような無機塩基;エチレンジアミン、トリ
エタノールアミンのような有機塩基;およびN−(β−
アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシ
シランのようなアミノアルキルシランなどが例示され
る。また、(A) 成分として、以上のようにして得られ
た、それぞれ特性の異なる硬化性ポリメチルシロキサン
を複数ブレンドして使用することも差し支えない。
【0013】本発明で使用される(B) 成分は、一般式R1
2Si(OR2)2 で表される高屈折率のジオルガノシラン化合
物であって、主としてガラス屈折率との整合を図ること
により硬化被膜の遮蔽性、光沢および透明性を向上させ
るとともに、アルカリ水溶液による易剥離性を補助する
働きをなすものであり、本発明を特徴づける重要成分で
ある。したがって、(B) 成分はその屈折率がガラスによ
り近いものが望ましく、25℃における屈折率が少なくと
も1.45以上であることが好ましい。(B) 成分において、
R1はアリール基またはアラルキル基であり、例えばフェ
ニル基、トリル基のようなアリール基;および2−フェ
ニルエチル基、2−フェニルプロピル基のようなアラル
キル基が例示される。一方、R2は水素原子または炭素数
1〜8のアルキル基であり、このようなアルキル基とし
ては例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル
基、アミル基、オクチル基などが例示される。このよう
な(B) 成分としては、例えばジフェニルシランジオー
ル、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキ
シシラン、ジ(2−フェニルエチル)ジメトキシシラ
ン、ジ(2−フェニルエチル)ジエトキシシランなどが
例示される。これらの中でも、入手が容易で、良好な被
膜を形成し、しかも屈折率が高く、擦り傷遮蔽効果や光
沢に優れることから、ジフェニルジメトキシシラン、ジ
フェニルジエトキシシランが特に好ましい。(B) 成分の
使用量は、(A) 成分100 重量部に対して1〜100 重量
部、好ましくは5〜80重量部の範囲である。1重量部未
満では、ガラス表面との屈折率の整合が十分でなく、特
に無色透明のガラス容器の擦り傷遮蔽効果が劣る。一
方、100重量部を超えると、硬化が不十分となる不都合
がある。
【0014】本発明で使用される(C) 成分は脂肪酸エス
テルであり、本発明を特徴づけるもう一つの重要成分で
ある。このものは、主としてアルカリ水溶液による被膜
の剥離性を向上させる機能を有するが、さらに擦り傷遮
蔽性を補助し、その信頼性を向上させる効果もある。こ
のような脂肪酸エステルとしては例えば、カプリン酸メ
チル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミ
チン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチ
ル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、
パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、パルミ
チン酸2−エチルヘキシルのような脂肪酸の1価アルコ
ールエステル;アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ
イソデシル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)のよう
な多塩基酸の1価アルコールエステル;ソルビタンモノ
ラウレート、ソルビタンモノオレートのような多価アル
コールの脂肪酸エステル;およびオレイン酸ジモノグリ
セライド、2−エチルヘキサン酸トリグリセライドのよ
うなグリセリンの脂肪酸エステルなどが例示される。こ
れらの中でも、アルカリ水溶液による被膜の剥離性、ガ
ラス表面との濡れ性、経済性、安全衛生上の観点から、
ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチルが特に好
ましい。(C) 成分の使用量は、(A) 成分100 重量部に対
して1〜100 重量部、好ましくは5〜50重量部の範囲で
ある。1重量部未満では、アルカリ水溶液による被膜の
剥離性が劣り、本発明の目的に適さない。一方、100 重
量部を超えて添加しても、特に加えただけの効果がな
い。
【0015】本発明で使用される(D) 成分は硬化触媒で
ある。(D) 成分は本発明の擦り傷遮蔽剤を縮合硬化させ
るために必須とされるものであり、ポリオルガノシロキ
サンの硬化触媒として公知のものが使用可能である。具
体的には、例えばトリエタノールアミンのような有機ア
ミン;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル
メチルジメトキシシランのようなアミノアルキルシラ
ン;オクチル酸鉄、オクチル酸亜鉛のようなカルボン酸
金属塩;ジオクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレー
ト、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラ
ウレートのような有機スズ化合物;テトライソプロポキ
シチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−
エチルヘキシル)チタネートのようなチタン酸エステ
ル;およびオルガノシリコン第四アンモニウム塩のよう
な第四アンモニウム塩などが例示される。これらの中で
も、硬化性や安全衛生上の観点からジブチルスズジラウ
レート、ジオクチルスズジラウレートおよびテトラブチ
ルチタネートが特に好ましい。(D) 成分の使用量は、
(A) 成分100 重量部に対して0.01〜10重量部、より好ま
しくは0.02〜5重量部の範囲である。0.01重量部未満で
は被膜の硬化乾燥が遅く、実用に合わず、一方、10重量
部を超えても被膜形成に特に効果はなく、むしろ擦り傷
遮蔽剤の保存安定性を悪くする不都合がある。
【0016】本発明で使用される(E) 成分は、一般式
(I)および/または(II)で表される揮発性オルガノ
ポリシロキサンである。
【0017】
【化6】
【0018】揮発性ポリジメチルシロキサン(E) は、末
端がトリメチルシロキシ基で封鎖された重合度が2〜11
の直鎖状ポリジメチルシロキサンおよび/または重合度
が3〜8の環状ポリジメチルシロキサンであり、本発明
の他成分の溶解性を配慮しながら直鎖状あるいは環状の
ポリジメチルシロキサンのいずれかもしくはそれらの混
合物が使用される。このうち、重合度が2〜7の直鎖状
ポリジメチルシロキサンまたは重合度が3〜5の環状ポ
リジメチルシロキサンの使用が望ましく、特に重合度が
4もしくは5の環状ポリジメチルシロキサン、すなわち
オクタメチルシクロテトラシロキサンもしくはデカメチ
ルシクロペンタシロキサンの使用が好ましい。ここで、
『揮発性』とは室温でその物質が測定可能な蒸気圧を有
することを意味し、(E) 成分は70〜約 260℃の沸点を有
することが好ましい。(E) 成分は、本発明で使用される
他の成分を溶解もしくは分散させることにより、擦り傷
遮蔽剤のコーティング特性を向上させるものである。揮
発性ポリジメチルシロキサンはその低い表面張力と緩慢
な揮発速度により、平滑でしかも遮蔽効果の優れた被膜
の形成を促進する。(E) 成分の使用量は、(A) 成分100
重量部に対して50〜2000重量部の範囲である。50重量部
未満ではガラス容器に塗布される他成分、すなわち有効
成分の比率が高くなり、被膜表面のレベリング性や所定
時間内での硬化乾燥性が悪くなり、ゆず肌や表面のべと
つきの原因となるおそれがある。また、2000重量部を超
えると、ガラス容器に塗布される有効成分の量が不足
し、十分な遮蔽効果が得られにくい。
【0019】本発明の擦り傷遮蔽剤は、前記した(A) 成
分、(B) 成分、(C) 成分および(D)成分を(E) 成分に溶
解して得られるものである。そのようにして得られた遮
蔽剤の25℃における粘度は、2〜10,000cSt 、好ましく
は5〜1,000cStの範囲である。25℃における粘度が2cS
t 未満では、ガラス容器への付着量が少なく、一度の処
理では十分な擦り傷遮蔽効果が得られず、一方、10,000
cSt を超えると付着量が増加し被膜が厚くなるために、
逆に擦り傷が付きやすくなるなどの不都合を生じ好まし
くない。
【0020】本発明の擦り傷遮蔽剤は、前記の(A) 成
分、(B) 成分、(C) 成分、(D) 成分および(E) 成分から
成るものであるが、これら5成分のみからなるものの他
に各種の補助成分を配合することができる。このような
補助成分としては例えば、被膜の硬さの調整を目的とし
た界面活性物質などの可塑剤、可視光や紫外線による内
容物の変質や着臭の防止を目的とした顔料や紫外線吸収
剤、染料などの着色剤、レベリング剤、無機物粉体など
が例示される。ガラス容器への塗布方法としては、スプ
レーコーティング、刷毛塗り、パフ塗り、浸漬法、フロ
ーコーター法、転写法など、通常行われている手法を用
いることができる。また、大量のガラス容器、通常この
ようなガラス容器は開口部が細口の瓶体であるが、これ
らを処理する場合は、例えば特開昭58−213654号公報記
載のローラー式コーティング装置や、特公平1−59221
号公報記載のコーティングベルト式のコーティング装置
が使用可能である。被膜の厚さは任意であるが、擦り傷
遮蔽効果、適度の被膜強度、アルカリ水溶液による剥離
性の観点から、 0.5〜30μm 程度が適当である。また、
塗布する部位は擦り傷発生部のみに限らないことは言う
までもないが、コスト削減の目的のために、擦り傷発生
部のみを前記の膜厚になるようにコーティングすること
も有効である。本発明の擦り傷遮蔽剤は硬化に際して特
に加熱は必要でなく、塗布後、室温で0.5 〜48時間程度
放置すれば、表面粘着性の無い硬化被膜が容易に得られ
るが、必要に応じて硬化時間の短縮化などのために加熱
しても差しつかえない。
【0021】
【発明の効果】本発明の擦り傷遮蔽剤は、深い擦り傷あ
るいは無色透明のガラス容器の擦り傷に対しても良好な
遮蔽効果を示し、しかもアルカリ水溶液による剥離性に
優れている、という特徴を有する。したがって、本発明
の擦り傷が遮蔽されたガラス容器は、外装品質、アルカ
リ洗浄性が向上しており、ガラス容器の耐用寿命の延
長、引いては省資源、省エネルギー化にも役立つもので
ある。
【0022】
【実施例】以下において合成例、実施例および比較例を
掲げ、本発明をさらに詳しく説明する。本発明の範囲
は、以下の実施例のみに限定されるものではない。な
お、合成例、実施例および比較例中の配合量は特に断り
のない限り全て重量部、粘度は25℃における値を示す。 合成例 攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび加熱ジ
ャケットを備えたフラスコに、表1に示す配合量のシラ
ン化合物および加水分解触媒を仕込み、攪拌しながら徐
々に加熱した。液温が80℃になった時点で、表1に示す
量の水を滴下ロートより徐々に加えた。さらに、液温80
℃で6時間保持して、加水分解および縮合反応を行っ
た。次いで、常圧、液温 130℃の条件下で揮発成分を留
去した後、徐々に減圧状態とし、減圧度30Torr、液温13
0 ℃の条件下でさらに揮発成分を減圧留去後、常圧に戻
して、以下の実施例に使用する硬化性ポリメチルシロキ
サン(A−1、A−2、A−3およびA−4)、ならび
に比較例に使用する硬化性ポリオルガノシロキサン(R
A−1、RA−2、RA−3およびRA−4)を得た。
A−1、A−2、A−3、A−4、RA−1、RA−
2、RA−3およびRA−4の特性を表1にまとめて示
した。なお、表中のCH3 基含有量、有機基含有量および
X 基含有量はすべて、仕込み配合量に基づき計算した値
である。
【0023】実施例1〜12および比較例1〜10 前記の合成例で合成した硬化性ポリメチルシロキサン
(A−1、A−2、A−3およびA−4)をベースポリ
マーとし、表2に示す割合で各成分を配合して、本発明
に係る実施例1〜12の擦り傷遮蔽剤を得た。比較のた
め、合成例で合成した硬化性ポリオルガノシロキシ(R
A−1、RA−2、RA−3およびRA−4)ならびに
硬化性ポリメチルシロキサン(A−1)をベースポリマ
ーとし、表3に示す割合で各成分を配合して、比較例1
〜10の擦り傷遮蔽剤を得た。ここで、比較例1〜3は、
脂肪酸エステルを使用しない場合である。比較例4〜7
は、フェニル基が予め分子内に組み込まれた硬化性ポリ
オルガノシロキサンを使用した場合である。比較例8〜
10はフェニル基が予め分子内に組み込まれた硬化性ポリ
オルガノシロキシをベースポリマーとし、さらに脂肪酸
エステルを配合した場合である。
【0024】評価用瓶体の作成条件および被膜特性の評
価方法は次のとおりである。 〈評価用瓶体の作成条件〉側面全体に深い擦り傷があっ
て、通常は廃棄瓶扱いとされるビール用褐色大瓶で市販
のアルミ箔ラベルを貼り付けたもの(内容量633ml)、な
らびに擦り傷の付いた清涼飲料用無色透明ガラス瓶(内
容量200ml)を用意し、これらに各組成物を1本あたりの
塗布量がビール用大瓶では0.3g、清涼飲料用ガラス瓶で
は0.2gとなるように塗布した。塗布後、直ちに、これら
の瓶体に内容量の20%にあたる量の氷水を充填し、瓶体
表面の一部(瓶底から約7cmの高さまで)を結露させ
た。さらに、25℃、60%RHの環境下で5日間放置して、
評価用瓶体とした。 〈振盪条件〉所定のプラスチックケースに評価用瓶体を
入れ、このケースを往復式振盪機に固定した後、120 回
/分、振幅10cmで30分間振盪した。 〈外観〉振盪前の被膜の透明性を目視観察し、下記の基
準で4段階評価した。 ◎:優れている。 ○:良い。 △:わずかにくもった感じがある。 ×:くもっている。 〈擦り傷遮蔽性〉振盪前後の擦り傷部位の外観を目視観
察し、下記の基準で4段階評価した。 ◎:擦り傷部位が完全に遮蔽されている。 ○:擦り傷部位の一部が露出している。 △:擦り傷部位の半分が露出している。 ×:擦り傷遮蔽効果が不十分である。 〈表面粘着性〉評価用瓶体の表面を指触し、下記の基準
で3段階官能評価した。 ◎:べたつきやすべりが全くない。 ○:わずかにすべりがあるが、実用上問題ないレベルで
ある。 ×:べたつきやすべりがある。 〈耐水性〉評価用瓶体を20℃の水中に3日間浸せきした
後、擦り傷遮蔽性を目視観察し、下記の基準で3段階評
価した。 ◎:浸せき前の状態から変化なし。 ○:遮蔽効果が◎から○へ、または○から△へ低下。 ×:遮蔽効果が◎もしくは○から×へ低下。 〈油浮き〉前記の耐水性の評価において、水浴表面を目
視観察し、下記の基準で3段階評価した。 ◎:油膜が全く認められない。 ○:わずかに油膜が認められる。 ×:油膜が水浴表面に顕著に認められる。 〈ラベル損傷〉アルミ箔ラベルについて、影響を目視観
察し、下記の基準で3段階評価した。 ◎:未塗布で、振盪しない場合と同様の外観である。 ○:擦り傷はないが、一部に汚れが認められる。 ×:擦り傷が認められ、ラベル全体が汚れている。 〈アルカリ水洗浄性〉評価用瓶体を液温60℃、水酸化ナ
トリウム3%およびグルコン酸ナトリウム5%を含む水
溶液に15分間浸せきした。浸せき後、被膜除去の程度を
目視観察し、下記の基準で4段階評価した。 ◎:被膜が完全に剥離し、除去されている。 ○:ごく一部に被膜が残存している。 △:被膜が半分程度残存している。 ×:被膜の大部分が残存している。 実施例1〜12および比較例1〜10の評価結果をそれぞれ
まとめて、表2および表3に示した。これらの表から明
らかなように、本発明に係る実施例1〜12の擦り傷遮蔽
剤は、先行技術では困難であった、アルカリ水洗浄性
と、深い擦り傷や無色透明ガラス瓶の擦り傷遮蔽性の両
立が可能であることを示している。すなわち、従来、被
膜形成成分のSiCH3 /SiC6H5モル比が10以下になると、
遮蔽性は向上するものの、アルカリ水洗浄性が悪くな
り、一方、SiCH3 /SiC6H5モル比が10を超えると、アル
カリ水洗浄性は良いが、深い擦り傷や無色透明瓶の遮蔽
性やその信頼性が十分でない、という欠点があったが、
本発明に係る擦り傷遮蔽剤はSiCH3 /SiC6H5モル比に関
係なく、アルカリ水洗浄性と擦り傷遮蔽性に優れている
ことが確認された。さらに、本発明に係る擦り傷遮蔽剤
は、外観、表面粘着性、耐水性、油浮きなどの瓶コート
剤としての他の諸特性も良好であることが確認された。
【0025】
【表1】
【0026】(注) *1:N−(β−アミノエチル)−
γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン *2:( )内はモル数 *3:〔 〕内は分子量
【0027】
【表2】
【0028】(注) *1:ム…擦り傷の付いた、清涼飲
料用無色透明ガラス瓶(ラベル無し) カ…廃棄瓶扱いとされる程度に、側面全体に深い擦り傷
が付いた、ビール用褐色大瓶 *2:ただし、(E) 成分の寄与は除く
【0029】
【表3】
【0030】(注) *1:ム…擦り傷の付いた、清涼飲
料用無色透明ガラス瓶(ラベル無し) カ…廃棄瓶扱いとされる程度に、側面全体に深い擦り傷
が付いた、ビール用褐色大瓶 *2:ただし、(E) 成分の寄与は除く
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 83/06 LRZ C09D 183/06 PMU (72)発明者 島田 武久 東京都大田区大森北2−13−1 アサヒビ ール株式会社商品技術研究所内 (72)発明者 茂木 久雄 東京都港区六本木6丁目2番31号 東芝シ リコーン株式会社内 (72)発明者 竹澤 好昭 東京都港区六本木6丁目2番31号 東芝シ リコーン株式会社内 (72)発明者 米窪 秀明 東京都港区六本木6丁目2番31号 東芝シ リコーン株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−284976(JP,A) 特開 昭63−258964(JP,A) 特開 平2−286748(JP,A) 特開 平3−255165(JP,A)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A) 一般式 【化1】 (式中、X はヒドロキシル基および/または加水分解性
    基であり、a およびbは下記の関係を満たす数である。 0.8≦a<2 0.3≦b<2 ) で表される硬化性ポリメチルシロキサン 100重量部 (B) ジフェニルシランジオール、ジフェニルジメトキシ
    シラン、ジフェニルジ エトキシシラン、ジ(2−フェニ
    ルエチル)ジメトキシシラン、ジ(2−フェ ニルエチ
    ル)ジエトキシシランより選ばれるジオルガノシラン化
    合物1〜100重量部 (C) ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ブチル、2
    −エチルヘキサン酸ト リグリセライドより選ばれる脂肪
    酸エステル1〜100 重量部 (D) 硬化触媒0.01〜10重量部 および (E) 一般式(I)および/または(II)で表される揮発
    性ポリジメチルシロキサン50〜2000重量部 【化2】 より成り、25℃における粘度が2〜10,000cSt であるこ
    とを特徴とするガラス容器の擦り傷遮蔽剤。
  2. 【請求項2】(A) 成分のX がメトキシ基である、請求項
    1記載のガラス容器の擦り傷遮蔽剤。
  3. 【請求項3】(B) 成分がジフェニルジメトキシシランで
    ある、請求項1記載のガラス容器の擦り傷遮蔽剤。
  4. 【請求項4】(C) 成分がミリスチン酸イソプロピルであ
    る、請求項1記載のガラス容器の擦り傷遮蔽剤。
  5. 【請求項5】(D) 成分がジオクチルスズジラウレートま
    たはテトラブチルチタネートである、請求項1記載のガ
    ラス容器の擦り傷遮蔽剤。
  6. 【請求項6】請求項1記載の擦り傷遮蔽剤の硬化被膜で
    表面を被覆してなる、擦り傷が遮蔽されたガラス容器。
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