JPH0779712B2 - 固定化酵素もしくは固定化微生物による光学活性インドリン−2−カルボン酸の製造方法 - Google Patents

固定化酵素もしくは固定化微生物による光学活性インドリン−2−カルボン酸の製造方法

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JPH0779712B2
JPH0779712B2 JP13953593A JP13953593A JPH0779712B2 JP H0779712 B2 JPH0779712 B2 JP H0779712B2 JP 13953593 A JP13953593 A JP 13953593A JP 13953593 A JP13953593 A JP 13953593A JP H0779712 B2 JPH0779712 B2 JP H0779712B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固定化酵素あるいは固
定化微生物を用いて、インドリン−2−カルボン酸エス
テルを光学分割し、医薬品として有用な光学活性インド
リン−2−カルボン酸を製造する方法に関する。更に詳
しくは、一般式
【0002】
【化7】
【0003】(式中、RはC2 〜C8 の脂肪族炭化水素
基を表わす)で表わされる(R,S)−インドリン−2
−カルボン酸エステルと、疎水性の担体に固定化された
立体選択的エステラーゼ活性を有するシュードモナス
(Pseudomonas)属又はアスペルギルス(Aspergillus) 属
に属する微生物由来の酵素を用いた固定化酵素もしくは
シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物を用い
た固定化微生物とを接触、反応させて、構造式(S)−
II
【0004】
【化8】
【0005】で表わされる光学活性(S)−インドリン
−2−カルボン酸と、構造式(R)−
【0006】
【化9】
【0007】(Rは前記と同じ)で表わされる光学活性
インドリン−2−カルボン酸エステルとに不斉加水分解
し、固定化に用いた担体との親和性の差を利用して、親
水性のインドリン−2−カルボン酸(S)−IIを水また
は緩衝液で回収、採取し、次に、担体に吸着・結合して
いるインドリン−2−カルボン酸エステル(R)−
有機溶剤で溶出、採取し、更に必要に応じ、該エステル
(R)−を加水分解して(S)−IIの対掌体である光
学活性インドリン−2−カルボン酸(R)−IIを生成さ
せ、採取する方法に関する。即ち、不斉加水分解反応
と、生成物インドリン−2−カルボン酸の反応液からの
分離、回収を同時に行うことを特徴とするインドリン−
2−カルボン酸の製造方法に関する。
【0008】本発明の場合、立体選択的エステラーゼを
活性を有する酵素あるいは微生物を選択することにより
不斉加水分解生成物として(S)−インドリン−2−カ
ルボン酸と(R)−インドリン−2−カルボン酸エステ
ルの組合わせの生成物を得ることができ、各光学活性体
を随時採取することができる。
【0009】これら光学活性インドリン−2−カルボン
酸類化合物は種々医薬品の原料となりうる重要な化合物
である。例えば(S)−インドリン−2−カルボン酸は
アンジオテンシンI変換酵素の阻害剤として有用な血圧
降下剤(S)−1−〔(S)−3−メルカプト−2−オ
キソプロピル〕−インドリン−2−カルボン酸構造式:
【0010】
【化10】
【0011】
【従来の技術】従来、酵素反応は遊離の酵素を反応器に
加え、回分法で反応が行われ、反応終了後、酵素は使い
すてにされていたが、酵素は一般的に高価であるためコ
スト的に不利となり、また不安定でもあるため酵素の工
業的利用は限られていた。さらに回分法では酵素反応終
了後、反応生成物を反応液から分離する方法として、 1)有機溶媒で抽出分離する方法。 2)反応液を一旦有機溶媒に転溶した後、又は反応液を
そのままカラムクロマトグラフィー処理することによっ
て分離する方法。 3)反応液を一旦有機溶媒に転溶した後、又は反応液を
そのまま分留することによって分離する方法。 などが行われてきたが、操作が繁雑で収率が悪かった
り、時間がかかったり、特別の装置が必要であったりし
てコストが高くなるという欠点があった。
【0012】これらの酵素の回分法による使いすて、生
産物の回収方法等の問題点を解決するため、近年、酵素
や微生物の固定化が研究され、酵素や微生物のくり返し
使用、さらにはカラムに充填して連続的に反応を行うこ
とも可能となってきた。しかし、固定化酵素を用いてセ
ラミ体を原料として不斉加水分解と同時に反応生成物を
分離し、更にそれを連続的に行って成功した例はこれま
で報告されていない。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、さきに、
インドリン−2−カルボン酸エステルに作用し、光学
活性インドリン−2−カルボン酸II * と光学活性インド
リン−2−カルボン酸エステル * とに立体選択的に分
割する酵素、あるいは微生物を見出し、光学分割による
インドリン−2−カルボン酸の製造方法を見出して提案
している。
【0014】本発明者らは、これら酵素あるいは微生物
の固定化と、より簡便な生成物の分離技術を確立すべく
鋭意努力を重ねてきた。その結果、担体として、基質と
生成物に対して親和性に差がある担体を選択し、該担体
で酵素あるいは微生物を固定化することによって、基質
インドリン−2−カルボン酸エステルの加水分解と、生
成物インドリン−2−カルボン酸の分離、回収とを同時
に行うことに成功し、本発明を完成した。以下、本発明
を詳細に説明する。
【0015】本発明の基質として用いられる、一般式
【0016】
【化11】
【0017】で表わされるインドリン−2−カルボン酸
エステルは、置換基RがC2 〜C8 の脂肪族炭化水素基
の化合物であり、好ましくはエチル、ブチル、アミル、
ヘキシル基からなるエステルである。または、一般式
II
【0018】
【化12】
【0019】で表わされる(R,S)−インドリン−2
−カルボン酸に溶媒と反応試剤とを兼ねたアルコールを
加え、インドリン−2−カルボン酸の濃度5〜20%
(W/V)の範囲で、強酸性下、50℃〜還流温度の範
囲で1〜5時間縮合反応を行う。更に、この反応液をp
H7.0に調整後、減圧濃縮により過剰のアルコールを
除去する。濃縮液に水又は飽和重炭酸ソーダを加え、酢
酸エチル又はヘキサン等のような疎水性有機溶媒を用い
て抽出し、更に濃縮すれば高純度の(R,S)−インド
リン−2−カルボン酸エステルが得られる。
【0020】本発明において、構造式(S)−II
【0021】
【化13】
【0022】で表わされる光学活性(S)−インドリン
−2−カルボン酸(S)−IIを生成させる場合、酵素と
しては例えばリポプロテイン リパーゼアマノ3(LP
L,起源;シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomona
s aeruginosa) 、天野製薬株式会社製やリパーゼAP−
4及びリパーゼAP−6(起源;アスペルギルス・ニガ
ー(Aspergillus niger), 天野製薬株式会社製)等を使
用することができる。
【0023】微生物を用いて(S)−IIを生成させる場
合、例えばシュードモナス属(Pseudomonas)或いはアス
ペルギルス(Aspergillus)属等に属する微生物があり、
更に詳しくはシュードモナス・アエルギノサ(Pseudomo
nas aeruginosa) IFO 3030,IFO 13130 やアスペルギル
ス・ニガー(Aspergillus niger) IFO 4407 がある。
【0024】これら微生物の菌体を得るには、栄養源と
して通常資化しうる炭素源、窒素源、ビタミン及びミネ
ラルを適宜配合したもの、たとえばグルコース、ペプト
ン、酵母エキス、肉エキス等からなる栄養培地が用いら
れる。培養は、温度10〜40℃、好ましくは25〜3
5℃で、pHは3〜8、好ましくは6〜7であり、好気
的に培養し、通常24〜48時間行えばよい。こうして
得られた菌体は遠心分離或いは濾過等の処理で集菌し、
そのまま樹脂で固定し、固定化菌体とするが、微生物菌
体を破砕後、硫安分画やアセトン処理して得られる粗酵
素としてから固定化して固定化酵素として使用すること
ができる。
【0025】酵素あるいは微生物固定化用担体として
は、疎水性をもつ種々の担体が用いられる。疎水性をも
つ担体とは、水もしくは緩衝液中では不斉水解反応によ
って生成した親水性化合物(S)−IIを吸着せず、エス
テル化合物(R)−を疎水的相互作用によって吸着
し、さらにこの吸着しているエステル化合物(R)−
は低極性溶媒中では速やかに脱着するような性質をもつ
担体であることが望ましい。更に具体的な担体として
は、例えば疎水性をもつ合成吸着剤、疎水クロマトグラ
フィー用樹脂、疎水性を持つ光架橋性樹脂、疎水性のウ
レタンプレポリマー樹脂、疎水基を化学結合させて導入
した高分子物質等が挙げられる。
【0026】かかる担体への酵素の固定化は、公知の種
々の方法によって行うことができる。例えば物理的吸着
法、共有結合法、イオン結合法、架橋法、包括法等が挙
げられる。微生物の場合にも包括法等が挙げられる〔福
井・千畑・鈴木編、酵素工学、157−243頁、講談
社(1981);千畑一郎編、固定化酵素、講談社(1
975)〕。これらの固定化酵素或いは固定化微生物の
調製法のうち、方法の簡便さ、担体の物理的強度及び安
価さなどにより、酵素では疎水性を持つ合成吸着剤に酵
素を物理的に吸着させる方法、微生物では疎水性を持つ
光架橋性樹脂或いは疎水性のウレタンプレポリマー樹脂
に微生物菌体を包括する方法が工業的に望ましい。
【0027】酵素或いは微生物の担体への担持量は、担
体の担持能によって左右されるので、必ずしも一義的で
はないが、酵素では担体の湿重量1g当り約0.1mg乃
至約100mg、通常約1mg乃至約20mg程度であればよ
く、微生物菌体では担体の湿重量1g当り湿菌体0.1
g乃至1g、通常約0.15g乃至約0.5g程度であ
ればよい。
【0028】本固定化酵素或いは固定化微生物に負荷で
きる基質の量としては、固定化した担体によって変わる
が、基質を負荷した時に未反応の基質が遊離する限界量
まで可能である。例えば合成吸着剤アンバーライトXA
D−7を担体とした固定化酵素をカラムに充填した場
合、そのカラム容積の1/3量までの基質を負荷するこ
とが可能である。化合物の水に対する溶解度は一般に
低いが、例えばアセトン、メタノール等の有機溶媒の界
面活性剤等を反応に支障とならない程度加えても良い。
固定化酵素もしくは固定化微生物を用いて不斉加水分解
を行う場合、反応温度は通常10〜60℃の範囲で可能
であるが、20〜40℃で行うことが好ましい。本不斉
加水分解反応はpH4.5〜pH10の範囲で可能であ
るが、反応速度が大であるpH6〜pH8.5の範囲で
行うことが望ましい。また本反応では不斉加水分解の進
行に伴いインドリンカルボン酸を生じpHが低下する。
そのため基質化合物の負荷量が多いときには、緩衝液を
使用するなどしてpHを一定の範囲内に制御することが
望ましい。この目的に適する緩衝液としては無機酸塩、
有機酸塩いずれの緩衝液も使用することができる。
【0029】カラムを用いて反応を行う場合、固定化酵
素或いは固定化微生物をカラムに充填し、まず緩衝液を
流し、次に基質のエステル化合物(R,S)−を負荷
し、負荷し終わったら再び緩衝液を流すことによってカ
ラム内で不斉加水分解反応を行う。生成する親水的な化
合物(S)−IIは緩衝液に溶けてカラムから溶出され
る。この緩衝液画分を高速液体クロマトグラフィー(Fi
nepak SIL C18,展開液;アセトニトリル:水=1.5:
1(v/v)、検出;UV215nm)により分析し、
画分中に化合物(S)−IIがほとんど認められなくなっ
た時点で緩衝液にかえて低極性溶媒を流し、カラム内の
固定化酵素或いは固定化微生物に吸着している未反応の
化合物(R)−を溶出する。この溶媒画分を液体クロ
マトグラフィー(条件上と同じ)で分析し、画分中に化
合物(R)−がほとんど認められなくなれば、低極性
溶媒にかえて再び緩衝液を流すことによってカラム内を
緩衝液で置換し、基質のエステル化合物(R,S)−
を負荷する。これらの一連の操作をくり返すことによっ
て化合物(R,S)−の不斉加水分解と反応生成物の
分取をパルス的に連続して行うことが可能である。
【0030】本固定化酵素或いは固定化微生物を用いて
回分法でラセミ体化合物の不斉加水分解を行う場合に
は、生成する光学活性な親水性化合物(S)−IIを含む
水層と光学活性な疎水性化合物(R)−を吸着してい
る固定化酵素或いは固定化微生物とを濾過もしくはゆる
やかに遠心することによって分離し、さらに低極性溶媒
で固定化酵素或いは固定化微生物を洗浄することによっ
て化合物(R)−を得ることができ、固定化酵素或い
は固定化微生物は再び反応に用いることができる。
【0031】本発明において疎水性の化合物(R)−
を溶出するのに用いる低極性溶媒は、固定化酵素の場
合、担体に吸着している酵素を脱着しない溶媒であっ
て、かつ親水性化合物(S)−IIは殆んど溶解せず、一
方疎水性の化合物(R)−はよく溶解する溶媒が望ま
しい。そのような溶媒としては、例えばベンゼン、トル
エン、キシレンのような芳香族炭化水素溶媒,n−ヘキ
サン,n−ヘプタン,n−オクタンのような脂肪族炭化
水素溶媒,シクロペンタン,シクロヘキサン,シクロヘ
プタンのような脂環式炭化水素溶媒又はこれらの混合溶
媒が好適な溶媒として挙げられる。固定化微生物の場合
にもまったく同様の溶媒を用いることができる。
【0032】固定化酵素、あるいは固定化微生物を用い
た反応液からのインドリン−2−カルボン酸、及びイン
ドリン−2−カルボン酸エステルの精製、採取は以下の
ようにすればよい。光学活性インドリン−2−カルボン
酸(S)−IIを含む緩衝液画分を硫安で飽和後、pHを
5.0付近に調整し、(S)−IIを酢酸エチル、塩化メ
チレン等の有機溶媒で抽出することにより高純度の光学
活性化合物(S)−IIを得ることができる。必要に応じ
て、さらにアセトン等の有機溶媒中で晶析してもよい。
【0033】疎水性溶媒中に回収された光学活性インド
リン−2−カルボン酸エステルは、そのまま濃縮すれば
高光学純度のエステル体で得られるが、更に次のように
して光学活性インドリン−2−カルボン酸とすることが
できる。即ち、光学活性インドリン−2−カルボン酸エ
ステル(R)−を室温下、pH10〜13.5の範囲
で2〜5時間アルカリ加水分解を行えば、(R)−II
生成する。また、(R)−を加水分解する能力を有す
る酵素、例えばステアプシンを作用させて加水分解を行
えば、(R)−IIを得ることができる。
【0034】このようにして得られた加水分解液は、p
Hを4〜6、好ましくは5.0付近に調整後、塩化メチ
レン、酢酸エチル等の有機溶媒で抽出し、濃縮後、アセ
トン等の有機溶媒中で晶析することにより高光学純度の
(R)−IIを得ることができる。
【0035】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。 参考例1 (R,S)−インドリン−2−カルボン酸アミルの製造 (R,S)−インドリン−2−カルボン酸(R,S)−
II 50gをアミルアルコール500mlに溶解し、更に
濃塩酸100mlを添加し、95〜100℃の範囲で3時
間、縮合反応を行った。反応後、一旦冷却してから10
%苛性ソーダ液でpHを7.0に調整した。更に過剰量
のアミルアルコール及び水を減圧濃縮操作により除去し
た。濃縮液中には、目的物の(R,S)−インドリン−
2−カルボン酸アミル(R,S)−Ia及び無機塩が含
まれている。この濃縮液に酢酸エチル1リットルを加
え、飽和重炭酸ソーダ水200mlで2回(計400ml)
洗浄後、酢酸エチル層を濃縮したところ(R,S)−
が60.8g、85%の収率で得られた。
【0036】参考例2 (R)−選択的エステラーゼ活性を有するリパーゼ(ス
テアプシン)(和光純薬株式会社製)10gをpH7.
0の0.1Mリン酸緩衝液100mlに加えて混和し、濾
過によって不溶物を除いた。濾液にローム・アンド・ハ
ース社製メタクリレート系多孔質吸着剤アンバーライト
XAD−7をメタノールと水で洗浄後、湿重量60g
(含水率71%)を加え、低温室(4℃)で一夜ゆっく
り攪拌し、酵素を吸着固定化した。固定化酵素懸濁液を
グラスフィルターを用いて吸引濾過し、さらにpH7.
0の0.1Mリン酸緩衝液100mlで3回洗浄後、吸引
濾過して湿潤固定化酵素を得た。この固定化リパーゼを
内径2.2cmのカラムに高さ15cmに充填し、33℃に
保温してラセミ体のインドリン−2−カルボン酸アミル
(R,S)−a 5gを負荷し、pH7.0の0.1
Mリン酸緩衝液を毎時6mlの流速で流して反応させた。
カラムからの溶出液を12mlずつフラクションコレクタ
ーで分取し、液体クロマトグラフィーで分析した。この
リン酸緩衝液画分には、不斉加水分解され生成した親水
的なインドリン−2−カルボン酸のみが含まれていた。
該リン酸緩衝液の画分180mlに飽和になるまで硫酸ア
ンモニウムを加え、更にpHを5.0に調整した。次に
等量の酢酸エチルを加え、3回該インドリン−2−カル
ボン酸を抽出し、脱水後、減圧濃縮し、乾固物をアセト
ン−ヘキサン(5ml−1ml)で再結した。真空で乾燥
後、比旋光度〔α〕25 D −32.5°〔c=1.0、ジ
メチルホルムアミド(以下DMFAという)〕(文献
値、D. H. Kim et al, J. Med. Chem., 26, 394 (198
3), 〔α〕25 D +34.5°(c=0.91,DMF
A)〕を有する白色の粉末(R)−インドリン−2−カ
ルボン酸(R)−IIが1.26g〔(R,S)−Ia
りの収率72%〕得られた。リン酸緩衝液を180ml流
した時点で、リン酸緩衝液にかえてヘキサンを毎分1.
0mlの流速で流し、カラム内の固定化酵素の担体に吸着
していた未反応の疎水的なインドリン−2−カルボン酸
アミルを溶出した。カラムからの溶出ヘキサン溶液を1
0mlずつフラクションコレクターで分取し、インドリン
−2−カルボン酸アミルを含む画分90mlを濃縮し、比
旋光度〔α〕25 D +5.6°(c=1.0,エタノー
ル)を有するシロップ(S)−Iaが2.38g
〔(R,S)−Iaからの収率95%〕得られた。得ら
れた(S)−Ia 2.38gに1N苛性ソーダ15ml
加え、室温下約3時間加水分解を行い、反応液を1N塩
酸でpH5.0に調製後、酢酸エチル15mlで4回抽出
操作を行った。無水硫酸ソーダで脱水処理後、減圧濃縮
し、乾固物をアセトン−ヘキサン(5ml−1ml)で再結
すると比旋光度〔α〕25 D +33.9°(c=1.0,
DMFA)を有する白色の粉末(S)−インドリン−2
−カルボン酸(S)−IIが1.23g〔(R,S)−
よりの収率70%〕得られた。なお、上記リン酸緩衝
液およびヘキサンによる溶出において酵素の脱着は認め
られなかった。
【0037】実施例1 参考例2において、酵素を(S)選択的エステラーゼ活
性をもつリポプロテイン リパーゼアマノ3(LPL)
にかえてアンバーライトXAD−7に同様に固定化し
た。この固定化LPLを内径2.2cmのカラムに高さ1
5cmに充填し、以下参考例2と同様の操作を行い、イン
ドリン−2−カルボン酸アミル(R,S)−Iaの不斉
加水分解と生成物の分離を10回くり返して行った。そ
の結果、各回のリン酸緩衝液画分から、比旋光度〔α〕
25 D +19.8°(c=1.0,DMFA)から〔α〕
25 D +22.3°(c=1.0,DMFA)を有する
(S)−インドリン−2−カルボン酸(S)−IIを1.
26g〜1.32g〔(R,S)−Iaからの収率72
%〜76%〕の範囲で得た。また各回のヘキサン溶出画
分から比旋光度〔α〕25 D −25.1°(c=1.0,
DMFA)から〔α〕25 D −27.5°(c=1.0,
DMFA)を有する(R)−インドリン−2−カルボン
酸(R)−IIを1.03g〜1.11g〔(R,S)−
Iaからの収率59%〜64%〕の範囲で得た。
【0038】実施例2 参考例2において、酵素を変えて参考例2と同様の操作
を行い、表1の結果を得た。基質の負荷量は5gであ
る。
【0039】
【表1】
【0040】実施例3 下記の組成からなる栄養液体培地を調製し、2リットル
坂口フラスコに400mlずつ分注後、120℃、15分
殺菌した。 〔培地組成〕グルコース4%、イーストエキス0.3
%、肉エキス0.3%、ペプトン0.3%、リン酸二ア
ンモニウム0.2%、リン酸−カリウム0.1%(pH
6.8) これとは別に同じ組成の培地にて前培養をしたシュード
モナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa) IFO
3080の種菌液10mlを前培養培地に接種し、30℃、2
4時間振とうを行った。合計5本培養し、培養液計2リ
ットルを得た。この培養液を遠心し、菌体を集めた。こ
の湿菌体20gを20mMリン酸緩衝液(pH7.0)
40mlに懸濁し、それにウレタンプレポリマーPU−3
(東洋ゴム工業株式会社製)20gを加え、40℃にて
すばやく攪拌後4℃に冷却し、30分間放置した。こう
して得られた固定化微生物を約2mm角に切断し、内径
2.2cmのカラムに高さ15cmに充填し、33℃に保温
してpH7.0の0.1Mリン酸緩衝液を50ml流して
から基質インドリン−2−カルボン酸アミル(R,S)
Ia 4gを負荷した。pH7.0の0.1Mリン酸
緩衝液を毎時4mlの流速で流し不斉加水分解反応を行わ
せ、カラムからの溶出液を12mlずつフラクションコレ
クターで分取し、液体クロマトグラフィーで分析した。
このリン酸緩衝液画分には不斉加水分解され生成した親
水的なインドリン−2−カルボン酸のみが含まれてい
た。このリン酸緩衝液の画分180mlに飽和になるまで
硫酸アンモニウムを加え、更にpHを5.0に調整し、
等量の酢酸エチルで3回該インドリン−2−カルボン酸
を抽出した。酢エチ層を分離し、脱水後、減圧濃縮し、
乾固物をアセトン−ヘキサン(5ml−1ml)で再結し
た。真空で乾燥後、比旋光度〔α〕25 D +23.7°
(c=1.0,DMFA)を有する(S)−インドリン
−2−カルボン酸(S)−IIが0.89g得られた。リ
ン酸緩衝液を180ml流した時点で、リン酸緩衝液に変
えてヘキサンを毎分1.0mlの流速で流し、カラム内の
固定化微生物の担体に吸着していたインドリン−2−カ
ルボン酸アミルを溶出した。ヘキサン溶液を10mlずつ
フラクションコレクターで分取し、インドリン−2−カ
ルボン酸アミルを含む画分80mlを濃縮し、比旋光度
〔α〕25 D −3.9°(c=1.0,エタノール)を有
するシロップ(R)−インドリン−2−カルボン酸アミ
ル(R)−Iaが1.15g得られた。得られた(R)
Ia 1.15gに1N苛性ソーダ10mlを加え、室
温下約3時間加水分解を行い、反応液を1N塩酸でpH
5.0に調整後、酢酸エチル10mlで4回抽出操作を行
った。脱水処理後、減圧濃縮し、乾固物をアセトン−ヘ
キサン(2.5ml−0.5ml)で再結すると比旋光度
〔α〕25 D −21.7°(c=1.0,DMFA)を有
する(R)−インドリン−2−カルボン酸(R)−II
0.58g得られた。
【0041】
【発明の効果】本発明によれば、基質インドリン−2−
カルボン酸エステルの加水分解と、生成物インドリン−
2−カルボン酸の分離、回収とを同時に行うことができ
る。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 【化1】 (式中、RはC2 〜C8 の脂肪族炭化水素基を表わす)
    で表わされる(R,S)−インドリン−2−カルボン酸
    エステルと、疎水性の担体に固定化された立体選択的エ
    ステラーゼ活性を有するシュードモナス(Pseudomonas)
    属又はアスペルギルス(Aspergillus) 属に属する微生物
    由来の酵素を用いた固定化酵素もしくはシュードモナス
    (Pseudomonas)属に属する微生物を用いた固定化微生物
    とを接触、反応させて、構造式(S)−II 【化2】 で表わされる光学活性(S)−インドリン−2−カルボ
    ン酸と、構造式(R)− 【化3】 (Rは前記と同じ)で表わされる光学活性インドリン−
    2−カルボン酸エステルとに不斉加水分解し、親水性の
    インドリン−2−カルボン酸(S)−IIを水または緩衝
    液で回収、採取後、固定化用担体に吸着、保持されてい
    るインドリン−2−カルボン酸エステル(R)−を低
    極性有機溶剤で溶出、採取することを特徴とする光学活
    性インドリン−2−カルボン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 不斉加水分解をカラムに充填した固定化
    酵素もしくは固定化微生物で行う請求項1記載の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 不斉加水分解を回分式で行う請求項1記
    載の製造方法。
  4. 【請求項4】 疎水性を持つ酵素或いは微生物の固定化
    用担体が、合成吸着剤、疎水クロマトグラフィー用樹
    脂、疎水性光架橋性樹脂又は疎水基を化学結合させて導
    入した高分子物質である請求項1乃至3のいずれかの項
    記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 一般式 【化4】 (式中、RはC2 〜C8 の脂肪族炭化水素基を表わす)
    で表わされる(R,S)−インドリン−2−カルボン酸
    エステルと、疎水性の担体に固定化された立体選択的エ
    ステラーゼ活性を有するシュードモナス(Pseudomonas)
    属又はアスペルギルス(Aspergillus) 属に属する微生物
    由来の酵素を用いた固定化酵素もしくはシュードモナス
    (Pseudomonas)属に属する微生物を用いた固定化微生物
    とを接触、反応させて、構造式(S)−II 【化5】 で表わされる光学活性(S)−インドリン−2−カルボ
    ン酸と、構造式(R)− 【化6】 (Rは前記と同じ)で表わされる光学活性インドリン−
    2−カルボン酸エステルとに不斉加水分解し、親水性の
    インドリン−2−カルボン酸(S)−IIを水または緩衝
    液で回収、採取後、固定化用担体に吸着、保持されてい
    るインドリン−2−カルボン酸エステル(R)−を低
    極性有機溶剤で溶出、採取し、更に(R)−を加水分
    解して構造式(S)−IIの対掌体である光学活性インド
    リン−2−カルボン酸(R)−IIを生成させ、採取する
    ことを特徴とする光学活性インドリン−2−カルボン酸
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 不斉加水分解をカラムに充填した固定化
    酵素もしくは固定化微生物で行う請求項5記載の製造方
    法。
  7. 【請求項7】 不斉加水分解を回分式で行う請求項5記
    載の製造方法。
  8. 【請求項8】 疎水性を持つ酵素或いは微生物の固定化
    用担体が、合成吸着剤、疎水クロマトグラフィー用樹
    脂、疎水性光架橋性樹脂又は疎水基を化学結合させて導
    入した高分子物質である請求項5乃至7のいずれかの項
    記載の製造方法。
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