JPH077890Y2 - オーバーロックミシンの上下送り歯作動調整装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は特に伸縮性のある生地を
縫製するオーバーロックミシンの右側生地の送り量を調
整することにより、生地の右側を強制的に多く送り込む
ことができるようにすると共に、縫製される生地の部分
的厚薄又は段部等がある場合、上送り歯が瞬時にデリケ
ートに昇降対応できるようなオーバーロックミシンの上
下送り歯作動調整装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種オーバーロックミシンの生
地送り機構としては種々開示される所であるが、生地の
右側、特に針板爪付近がスムーズに送られ難く、絶えず
生地の左側が優先的に送られる傾向があると共に、縫製
目的物たる生地の部分的厚薄や、縫い合わせ段部等に即
応して軽くデリケートに上送り歯を上下に昇降対応する
ことができなかった。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】前記の通り、従来のオ
ーバーロックミシンの生地送り機構では、縫製時に生地
の左側が優先的に送られる傾向があり、縫製中に生地の
逃げが発生したり、縫い終わり時に生地の逃げが集積さ
れ、生地に送り擦れ即ち、生地の縫い終わり端が一直線
上に揃わない縫製不良が発生し、縫製品の品質低下や不
良品を生ずる欠点があった。

【０００４】また、生地に部分的厚薄や縫い合わせ段部
等がある場合において、上送り歯が一連の比較的重い部
材で支持されていたり、上送り歯支持腕が押えばねによ
り押圧されているため、デリケートに即応昇降し難く、
そのため生地に損傷を与える等の欠点を存したものであ
る。

【０００５】本発明はオーバーロックミシンでの縫製時
に生地の左側が優先的に送られることを阻止し、縫製中
に生地の逃げが発生したり、縫い終わり時に生地の逃げ
が集積され、生地に送り擦れ即ち、生地の縫い終わり端
が一直線上に揃わない縫製不良が発生したりする縫製品
の品質低下、不良品の発生を防止すると共に、生地の部
分的厚薄や縫い合わせ段部等において、生地の損傷を防
止できるようにしたオーバーロックミシンの上下送り歯
作動調整装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本考案は下前送り歯自体を左右二部分に分割し、生
地の左右差動送りをなす手段を設けると共に、既存の上
送り歯上下揺動装置台を二分割して上送り台ガイド腕と
上送り台ガイドとを設けて両者を軸着し、該軸着部に存
する軸孔ｅ，ｅ，ｆの形状を、真円と楕円形との組み合
わせとして、がたつかず僅かに融通性のあるようにした
ものである。

【０００７】

【作用】下前送り歯を左右二部分に分割し、下左前送り
歯２１と下右前送り歯２６の送り量を図１および図２に
示す右前送り差動装置により下右前送り歯２６の作動の
方を大きくすることができるので、縫製時に生地の左側
が優先的に送られることが阻止でき、縫製中に生地の逃
げが発生したり、縫い終わり時に生地の逃げが集積さ
れ、生地に送り擦れ即ち、生地の縫い終わり端が一直線
上に揃わない縫製不良が発生することがなく、縫製品の
品質低下や不良品の発生が防止できるものである。

【０００８】また上送り歯上下揺動装置台Ｙを上送り台
ガイド腕ａと上送り台ガイドｊとに二分割し、上送り台
ガイド腕ａの先端部に上送り台ガイドｊの基部を軸支し
たから、生地の部分的厚薄或いは縫い合わせ段部等に応
じて作動する部分を上送り台ガイドｊだけとして軽量化
させ、生地の部分的厚薄或は縫い合せ段部等の変化に対
する抵抗を減少し、即応して昇降し易く、且つ該軸着部
においても一方の軸孔ｅ，ｅ又はｆの何れかを軸杆ｇに
密嵌する眞円とせず、僅かに楕円形としたから、枢動に
当たり融通性があると共に、その短径は眞円状の軸孔と
等しくしたから、がたつくおそれがなく、良好でデリケ
ートな昇降が生地の部分的厚薄或いは縫い合せ段部等の
変化に合わせて即応的に可能となるものである。

【０００９】

【実施例】今、ここに本考案実施の一例を示した添付図
面について詳説する。図１、図２は右前送り差動装置の
もので、図３、図４は右前送り軸リンク装置のもので、
図５は上下送り歯の作動装置を示すもので、（Ａ）は下
送り歯のもの、（Ｂ）は上送り歯のもので、図６、図７
は上送り歯昇降装置のもので、図８は上送り歯昇降装置
をオーバーロックミシンに装着したものである。

【００１０】１はクランクシャフトで、ミシン回転の駆
動源としてのモータ（図示せず）により回転するもので
ある。

【００１１】２はロッドで、基端はクランクシャフト１
に嵌入され、先端は連結ピン３で送り軸腕４に連結され
る。

【００１２】５は送り軸で、該送り軸腕４の基端を揺動
自在にミシンフレーム３２に軸支したもので、該送り軸
腕４はクランクシャフト１の回転をロッド２、連結ピン
３を介して送り軸５に揺動運動を与えるものである。

【００１３】６は右前送り軸リンクで、該ロッド２の先
端に送り軸腕４と共に連結したものである。

【００１４】８は右前送り軸腕で、基端を連結ピン７で
前記右前送りリンク６に連結し、先端をミシンフレーム
３２に装着した左側の右前送り軸ブッシュ２９と右側の
右前送り軸ブッシュ３０とに軸支した右前送り軸１１に
挿嵌して固定し、ロッド２の往復運動を右前送り軸リン
ク６を介して右前送り軸１１の揺動運動に変換するもの
である。

【００１５】１０は右前送り腕で、該右前送り軸１１に
固定し、上部に凹状溝部１０ａを形成したものである。

【００１６】１２は右前送り腕駒で、該右前送り腕１０
の凹状溝部１０ａに摺動自在に嵌入したもので、後述の
下右前送り台１３の二又部（図示せず）に挿嵌した、下
右前送り台１３の動きを調節する右前送り駒２７と共に
右前送り腕１０の凹状溝部１０ａの底面に穿設した長孔
１０ｂを介して連結ピン１４で連結したものである。

【００１７】１３は下右前送り台で、右端には図２に示
すように下右前送り歯２６を固定し、基部の垂下部には
前記二又部が成形され、右前送り駒２７を嵌入するもの
である。該下右前送り台１３は前記右前送り軸１１の揺
動運動により右前送り腕１０が揺動運動し、右前送り腕
駒１２、連結ピン１４および右前送り駒２７を介して図
１、図２の左右方向に運動するものである。

【００１８】１６は右側右前送り差動レバーで、基端を
上下調節自在に右側右前送り差動レバー軸１８に固定
し、先端を前記連結ピン１４の先端に挿嵌した右前送り
リンク１５の基端に連結ピン１７で連結したもので、右
側右前作動レバー１６の右側右前送り差動レバー軸１８
への固定位置を調節することにより、右前送りリンク１
５を介して右側送り腕１０の凹状溝部１０ａ中で右前送
り腕駒１２の位置を調節し、右前送り駒２７の位置によ
りその右前送り軸１１からのピッチの長短で下右前送り
台１３の左右の運動量を調節する。

【００１９】１９は下左前送り台で、右端には下左前送
り歯２１が取付けられ、公知の装置を利用して下左前送
り歯２１を左右に運動させる。

【００２０】２０は公知の角駒で、下左前送り台１９と
右端に下後送り歯２２を取付けた後送り台２５との凹状
部に嵌入されており、該送り台１９，２５の上下運動を
司るものである。２３は針板爪部で、針板２４の下左前
送り歯２１と後送り歯２２との貫通孔の中間位置で、縫
い目構成を司る位置である。

【００２１】以上のように前記下右前送り歯２６は下右
前送り台１３に取付けられており、前記右前送り駒２７
は下右前送り台１３の二又部に嵌入され、右側右前送り
差動レバー１６の調節により右前送りリンク１５を介し
て該駒２７の位置を変更して、下右前送り台１３の左右
運動量を調節し、下右前送り歯２６の差動量を変更する
ことができるから、下右前送り台１３の運動により下左
前送り歯２１と差動運動ができ、生地右側部を左側より
多く送り込むことができる。

【００２２】２８は右前送り腕蓋で、右前送り腕１０の
長孔１０ｂと同様の長孔２８ａが穿設され、右前送り腕
１０にねじ止めされており、右前送り腕駒１２が離脱し
ないように覆うものである。３１は右前送り軸カラー
で、右前送り軸１１のスラスト方向の位置を決めるもの
である。

【００２３】更に図５の（Ｂ）〜図８において、ａは上
送り台ガイド腕で、押さえ軸ブッシュｈに基部を固定
し、先端は後述の二又部ｃ，ｃを形成し、該二又部ｃ，
ｃに軸孔ｅ，ｅを貫設する。

【００２４】ｂは上送り台で、先端に上送り歯ｉが取付
けられ、他端には図８に示すように連結ピンｋでリンク
ｌが連結される。

【００２５】ｃ，ｃは二又部で、該部に前記したように
軸孔ｅ，ｅが貫設され、後述の上送り台ガイドｊの挿嵌
部ｄが密嵌され、該部ｄに貫設した軸孔ｆと前記軸孔
ｅ，ｅに軸杆ｇが貫入され、上送り台ガイド腕ａと上送
り台ガイドｊが連結され、上送り歯ｉの昇降装置とす
る。

【００２６】ｄは挿嵌部で、上送り台ガイドｊの上面中
央部に突設したもので、上送り台ガイド腕ａの二又部
ｃ，ｃに密嵌可能としたもので、該上送り台ガイド腕ａ
と上送り台ガイドｊとで上送り歯上下揺動装置台Ｙを構
成するものである。

【００２７】ここで前記軸孔ｅ，ｅ，ｆの内二又部ｃ，
ｃ或いは挿嵌部ｄのどちらか一方を真円とし、他方を該
真円の直径と等しい短径の楕円としたものである。

【００２８】ｊは上送り台ガイドで、略中央部上面には
前記した挿嵌部ｄが設けられており、該ガイドｊは側面
に凹状の溝部を有し、該溝部に上送り台ｂが遊嵌されて
いる。ｍは布押さえ、Ｎは押さえ腕である。

【００２９】次に下右前送り歯２６の差動とその調節に
ついての操作を詳説する。図３に示すようにクランクシ
ャフト１の駆動によりロッド２は矢印Ｘのように直線往
復運動し、送り軸腕４を介して送り軸５に揺動運動を伝
える。

【００３０】その揺動運動は右前送りリンク６と連結ピ
ン７を介して右前送り軸１１に揺動運動を伝える。該揺
動運動により右前送り軸１１に固定されている右前送り
軸腕８が左右に動くと、同様の右前送り腕１０が左右に
動き、右前送り駒１２、連結ピン１４を介して図５に示
す下右前送り台１３の二又部に嵌入されている右前送り
駒２７も左右に運動し、その運動が下右前送り台１３に
取付けられている下右前送り歯２６に伝達され、下右前
送り歯２６が左右に運動する。

【００３１】下左前送り歯２１の動き量と下右前送り歯
２６の動き量を差動させるには、右側右前送り差動レバ
ー１６を右側右前送り差動レバー軸１８の回りに回動さ
せることにより、右前送り駒２７を右前送りリンク１５
を介して下右前送り台１３の上下に移動させ、下右前送
り歯２６は任意の差動量を得ることができるものであ
る。

【００３２】更に図５（Ｂ）以下の装置においては、生
地の段部又は厚薄部分等が縫い目形成位置に来た場合、
上送り歯を該生地の動きに即応してデリケートに押し上
げるもので、上送り歯ｉを取付けた上送り台ｂを密嵌す
る上送り台ガイドｊは上送り台ガイド腕ａと一体状とな
らず、軸杆ｇをもって軸着されているから、昇降作動す
る部分が送り台ガイドｊのみとなり、軽くすることがで
き、上送り歯ｉの押し上げに抵抗が少なく軽く昇降する
ことができると共に、二又部ｃ，ｃ、挿嵌部ｄの両軸孔
ｅ，ｅ，ｆの内、どちらか一方の軸孔は眞円でなく僅か
に楕円形をなすため回動に当たり融通性があり、昇降が
スムースにでき、而も該楕円の短径は他方の軸孔の眞円
の径と等しいから、がたつきがなく、良好な昇降をなす
作用があるものである。

【００３３】

【考案の効果】本考案は以上のような構成で、下前送り
歯自体を左、右に二分割し、下前送り歯の左右側で差動
送りを可能とし、右側右前送り差動レバー１６を右側右
前送り差動レバー軸１８の回りに回動調節することによ
り、右前送り駒２７を右前送りリンク１５および右前送
り腕駒１２を介して下右前送り台１３の上方に移動さ
せ、下右前送り歯２６の動き量を下左前送り歯２１の動
き量より大きくすることができるようにしたから、針板
爪部２３付近の生地を強制的に送り込むことができ、生
地の逃げの発生を防ぎ、縫い終わり時に生地の逃げが集
積され生地の縫い終わり端が一直線状に揃わないことを
皆無とし、縫製品の品質向上を可能とし、生地の風合い
を良好にすることができる。

【００３４】また、上送り歯上下揺動装置台Ｙを上送り
台ガイド腕ａと上送り台ガイドｊとに二分割し、上送り
台ガイドｊと上送り台ｂおよび上送り歯ｉの自重のみに
より軸杆ｇを中心として昇降し得るようにしたから、生
地の段部又は部分的厚薄の変化等に当たり、上送り歯の
昇降を生地の走行に即応してデリケートに軽く容易に昇
降することができ、而も昇降用の軸着部も融通性がある
と共に、がたつき等がなく、スムーズに昇降できるか
ら、縫製生地に損傷等を与えることなく良好な縫製が可
能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】右前送り差動装置の側面図である。

【図２】右前送り差動装置の平面図である。

【図３】右前送り軸リンク装置の部分図である。

【図４】右前送り軸リンク装置部分の平面図である。

【図５】上下送り歯の作動装置の要部を示すもので、
（Ａ）は下送り歯の右前送り差動装置の正面図であり、
（Ｂ）は上送り歯昇降装置の斜視図である。

【図６】上送り歯昇降装置の機構斜視図である。

【図７】上送り歯昇降装置の要部分解斜視図である。

【図８】上送り歯昇降装置をオーバーロックミシンに装
着した側面図である。

【符号の説明】

１ クランクシャフト ２ ロッド ３ 連結ピン ４ 送り軸腕 ５ 送り軸 ６ 右前送り軸リンク ７ 連結ピン ８ 右前送り軸腕 １０ 右前送り腕 １０ａ 凹状溝部 １０ｂ 長孔 １１ 右前送り軸 １２ 右前送り腕駒 １３ 下右前送り台 １４ 連結ピン １５ 右前送りリンク １６ 右側右前送り差動レバー １７ 連結ピン １８ 右側右前送り差動レバー軸 １９ 下左前送り台 ２０ 角駒 ２１ 下左前送り歯 ２２ 後送り歯 ２３ 針板爪部 ２４ 針板 ２５ 後送り台 ２６ 下右前送り歯 ２７ 右前送り駒 ２８ 右前送り腕蓋 ２８ａ 長孔 ２９，３０ 右前送り軸ブッシュ ３１ 右前送り軸カラー ３２ ミシンフレーム ａ 上送り台ガイド腕 ｂ 上送り台 ｃ 二又部 ｄ 挿嵌部 ｅ 軸孔 ｆ 軸孔 ｇ 軸杆 ｈ 押さえ軸ブッシュ ｉ 上送り歯 ｊ 上送り台ガイド ｋ 連結ピン ｌ リンク ｍ 布押さえ Ｎ 押さえ腕 Ｘ 矢印 Ｙ 上送り歯上下揺動装置台

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項】 前後差動送り手段を備えたオーバーロック
   ミシンにおいて、左右二部分に分割した生地送りを司る
   下前送り歯を設け、右側右前送り差動レバー軸に同レバ
   ーを昇降可能に設け、該右側右前送り差動レバーの上下
   運動により、下右前送り台の二又部に嵌入された右前送
   り駒を右前送りリンクを介して上下に移動させて下右前
   送り歯の動き量を下左前送り歯の動き量より大小何れに
   も調整できるようにした下右前送り歯の差動送り装置を
   併設し、上送り歯上下揺動装置台Ｙの基部を押え軸ブッ
   シュｈに固定し、先端は二又部ｃを形成した上送り台ガ
   イド腕ａと、略中央部に前記上送り台ガイド腕ａの二又
   部に密嵌される挿嵌部ｄが設けられ、側面部が凹状の形
   状を呈しており該凹部には上送り台ｂが遊嵌されるよう
   になっている上送り台ガイドｊとに二分割し、前記二又
   部ｃ並びに挿嵌部ｄに亘って軸孔ｅ，ｅ，ｆを穿設し、
   該軸孔の内一方を真円状とし、他方を楕円形とし、該軸
   孔ｅ，ｅ，ｆを軸杆ｇで軸支することを特徴とするオー
   バーロックミシンの上下送り歯作動調整装置。