JPH0777267A - デファレンシャル装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 デフケースの収納孔とピニオンギヤとの摩擦
により生じる差動制限特性が安定させ、潤滑性を向上さ
せる。 【構成】 この発明のデファレンシャル装置７は、本体
４５とカバー４３からなるデフケース２１の本体を貫通
した収納孔４７，４９に収納され互いに噛合った長短の
ピニオンギヤ５１，５３と、これらと各別に噛合ったサ
イドギヤ３１，３３と、本体に固定された位置決め部材
６３と、サイドギヤ間に配置された位置決め部材４１と
を備え、ギヤ５１は両端をカバーと部材６３で位置決め
され、ギヤ５３は両端をカバーと部材４１とで位置決め
されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、車両に用いられるデ
ファレンシャル装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】特開昭６３−７６９３８号公報に図６の
ような「トルク釣合式はすばピニオン型の差動機構」が
記載されている。このデファレンシャル装置２０１は、
エンジンに回転駆動されるデフケース２０３の収納孔２
０５，２０７に摺動回転自在に収納されたヘリカルピニ
オンギヤ２０９，２１１と、車輪側のヘリカルサイドギ
ヤ２１３，２１５とを備えており、ヘリカルピニオンギ
ヤ２０９，２１１は互いに噛合うと共にヘリカルサイド
ギヤ２１３，２１５と各別に噛合っている。各ヘリカル
ピニオンギヤ２０９，２１１はヘリカルサイドギヤ２１
３，２１５との噛合い反力及び噛合いスラスト力によ
り、収納孔２０５，２０７及びデフケース２０３に押付
けられて、その摩擦抵抗により差動制限力を得ている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】デフケース２０３は収
納孔２０５，２０７が設けられた本体２１７とカバー２
１９とからなり、各収納孔２０５，２０７は図６の左側
が底部２２１になった盲穴である。従って、ヘリカルピ
ニオンギヤ２０９，２１１と摺動する円筒面と底部２２
１共に精密な加工が困難であり、差動制限特性が不安定
である。又、盲穴であるから潤滑性が悪く、これが差動
制限特性のバラツキを更に助長している。

【０００４】そこで、この発明は、ヘリカルサイドギヤ
を連結するヘリカルピニオンギヤとデフケースの収納孔
との間で得られる差動制限力が安定し潤滑性に優れたデ
ファレンシャル装置の提供を目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明のデファレンシ
ャル装置は、ケーシング本体とカバーとを固定してなり
エンジンに回転駆動されるデフケースと、ケーシング本
体を貫通して形成された収納孔に摺動回転自在に収納さ
れると共に互いに噛合った長短のヘリカルピニオンギヤ
と、これらのヘリカルピニオンギヤと各別に噛合って車
輪側に駆動力を伝達する一対のヘリカルサイドギヤと、
ケーシング本体に固定された第１の位置決め部材と、両
ヘリカルサイドギヤとの間に配置された第２の位置決め
部材とを備え、長いヘリカルピニオンギヤは各端部をカ
バーと第１の位置決め部材により位置決めされ、短いヘ
リカルピニオンギヤは各端部をカバーと第２の位置決め
部材により位置決めされていることを特徴とする。

【０００６】

【作用】長短のヘリカルピニオンギヤは一端側をカバー
で位置決めされ、他の一端側をそれぞれ第１と第２の位
置決め部材で位置決めされている。これらのヘリカルピ
ニオンギヤはヘリカルサイドギヤとの噛合い反力により
収納孔に押付けられ又、噛合いスラスト力によりカバー
及び各位置決め部材に押付けられ、生じた摩擦抵抗によ
り差動制限力が得られる。収納孔はケーシング本体を貫
通しているから精密加工が容易であり、カバーと各位置
決め部材も加工が容易であるから摩擦抵抗が安定し、安
定した差動制限特性が得られる。又、ケーシング本体に
おいてカバーと反対側の収納孔が開口しているから潤滑
性が良く差動制限特性を更に安定させている。

【０００７】

【実施例】図１ないし図５により一実施例の説明をす
る。図１はこの実施例を示し、図５は実施例を用いた車
両の動力系を示す。左右の方向はこの車両及び図１，図
２での左右の方向である。

【０００８】図５のように、この動力系は、エンジン
１、トランスミッション３、プロペラシャフト５、リヤ
デフ７（後輪側に配置された実施例のデファレンシャル
装置），後輪軸９，１１、左右の後輪１３，１５、左右
の前輪１７，１９などから構成されている。

【０００９】リヤデフ７のデフケース２１はデフキャリ
ヤ２３内に回転自在に配置されており、デフケース２１
に固定されたリングギヤ２５はドライブピニオンギヤ２
７と噛合っている。ドライブピニオンギヤ２７はプロペ
ラシャフト５側に連結されたドライブピニオンシャフト
２９と一体に形成されている。こうして、エンジン１の
駆動力はトランスミッション３からプロペラシャフト５
を介してデフケース２１を回転駆動する。デフキャリヤ
２３にはオイルが封入されている。

【００１０】図１のように、デフケース２１の内部には
左右のヘリカルサイドギヤ３１，３３が配置され、デフ
ケース２１との間に形成された軸支部３５，３７により
デフケース２１に支承されている。又、図２のように、
各サイドギヤ３１，３３は互いの間に形成された軸支部
３９によりセンターリングされており、これらの間には
図３に示すようなリング４１（第２の位置決め部材）が
配置されている。左のサイドギヤ３１は左の後車軸９に
スプライン連結され、右のサイドギヤ３３は右の後車軸
１１にスプライン連結されている。

【００１１】デフケース２１１はカバー４３とケーシン
グ本体４５とをボルトで固定して構成されており、ケー
シング本体４５には４組の収納孔４７，４９が貫通して
形成されている。各収納孔４７，４９には長短のヘリカ
ルピニオンギヤ５１，５３が摺動回転自在に収納されて
いる。長いピニオンギヤ５１は第１と第２のギヤ部５
５，５７とこれらを連結する小径の軸部５９とを有し、
短いピニオンギヤ５３の左端部は第１のギヤ部５５と噛
合い、右端部は左のサイドギヤ３１と噛合っている。
又、第２のギヤ部５７は右のサイドギヤ３３と噛合って
いる。

【００１２】図３のように、リング４１には軸部５９と
の干渉を避けるための切り欠き６１が設けられている。
又、ケーシング本体４５には図４のような形状のリング
６３（第１の位置決め部材）が段差部６５により右方向
に固定されている。長いピニオンギヤ５１は左端をカバ
ー４３により、又右端をリング６３によりそれぞれ位置
決めされている。又、短いピニオンギヤ５３は左端をカ
バー４３により、又右端をリング４１によりそれぞれ位
置決めされている。

【００１３】こうして、リヤデフ７が構成されている。

【００１４】デフケース２１を回転させるエンジン１の
駆動力は各ピニオンギヤ５１，５３からサイドギヤ３
１，３３を介して左右の後輪１３，１５に分配され、後
輪間に駆動抵抗差が生じるとピニオンギヤ５１，５３の
自転により駆動力は左右各側に差動分配される。

【００１５】このようなトルク伝達中、ピニオンギヤ５
１，５３はサイドギヤ３１，３３との噛合い反力及び噛
合いスラスト力によりそれぞれ収納孔４７，４９及びカ
バー４３とリング４１，６３とに押付けられて摩擦抵抗
が生じる。又、各サイドギヤ３１，３３も噛合いスラス
ト力によりデフケース２１やリング４１，６３に押付け
られて摩擦抵抗が生じる。これらの摩擦抵抗により差動
が制限され、伝達トルクが大きい程差動制限力が強くな
るような差動制限特性が得られる。

【００１６】収納孔４７，４９を貫通孔にしたからピニ
オンギヤ５１，５３との摺動面を精密で滑らかに加工す
ることが安易になった。又、カバー４３やリング４１，
６３の各摺動面も滑らかに加工できるから、摩擦抵抗と
差動制限力とが安定すると共に、加工費が低減する。
又、デフキャリヤ２３内のオイルが収納孔４７，４９の
開口６７，６９から流出入してデフケース２１内部の潤
滑性を高めている。更に、収納孔４９によりサイドギヤ
３３の外側に空隙７１が４箇所形成されオイルの通りを
良くしている。こうして潤滑性が向上したことにより差
動制限特性が一層安定し、耐久性も向上している。

【００１７】このように、リヤデフ７の安定した差動制
限特性により、図５の車両は特に悪路や旋回時の操縦性
と安定性とが向上する。

【００１８】なお、リング６３はスナップリングでもよ
い。

【００１９】

【発明の効果】この発明のデファレンシャル装置は、デ
フケースをケーシング本体とカバーとで構成し、一対の
ヘリカルサイドギヤを連結する長短のヘリカルピニオン
ギヤをケーシング本体を貫通した収納孔に収納すると共
に、長いヘリカルピニオンギヤをケーシング本体側の位
置決め部材とカバーとで位置決めし、短いヘリカルピニ
オンギヤをヘリカルサイドギヤ間の位置決め部材とカバ
ーとで位置決めした。このように、収納孔を貫通孔にし
たことにより潤滑性が向上し、ヘリカルピニオンギヤと
の摺動面を精密に加工することが容易となって差動制限
特性が安定する。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例の断面図である。

【図２】リング４１の配置状態を示す断面図である。

【図３】リング４１の斜視図である。

【図４】リング６３の斜視図である。

【図５】実施例を用いた車両の動力系を示すスケルトン
機構図である。

【図６】従来例の断面図である。

【符号の説明】

７ リヤデフ（デファレンシャル装置） ２１ デフケース ３１，３３ ヘリカルサイドギヤ ４１ リング（第２の位置決め部材） ４３ カバー ４５ ケーシング本体 ４７，４９ 収納孔 ５１，５３ ヘリカルピニオンギヤ ６３ リング（第１の位置決め部材）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ケーシング本体とカバーとを固定してな
   りエンジンに回転駆動されるデフケースと、ケーシング
   本体を貫通して形成された収納孔に摺動回転自在に収納
   されると共に互いに噛合った長短のヘリカルピニオンギ
   ヤと、これらのヘリカルピニオンギヤと各別に噛合って
   車輪側に駆動力を伝達する一対のヘリカルサイドギヤ
   と、ケーシング本体に固定された第１の位置決め部材
   と、両ヘリカルサイドギヤとの間に配置された第２の位
   置決め部材とを備え、長いヘリカルピニオンギヤは各端
   部をカバーと第１の位置決め部材により位置決めされ、
   短いヘリカルピニオンギヤは各端部をカバーと第２の位
   置決め部材により位置決めされていることを特徴とする
   デファレンシャル装置。