JPH0775564A - 光学活性ジオール類の製造法及び環状炭酸エステル分解菌 - Google Patents

光学活性ジオール類の製造法及び環状炭酸エステル分解菌

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JPH0775564A
JPH0775564A JP8765594A JP8765594A JPH0775564A JP H0775564 A JPH0775564 A JP H0775564A JP 8765594 A JP8765594 A JP 8765594A JP 8765594 A JP8765594 A JP 8765594A JP H0775564 A JPH0775564 A JP H0775564A
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carbonic acid
acid ester
cyclic carbonic
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JP8765594A
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Takakazu Kojima
高和 児嶋
Takahiro Ando
孝浩 安藤
Naoyuki Takagi
直之 高木
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Nippon Soda Co Ltd
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Nippon Soda Co Ltd
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 一般式〔I〕 【化1】 (式中nは1または2、Rは直鎖または分岐鎖状のC1
〜C11のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、C2 〜C
11のアルケニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい芳
香族基を示す)で表される化合物のエナンチオマー混合
物を、生体組織、菌体または酵素を作用させ環状炭酸エ
ステル部位を立体選択的に加水分解することを特徴とす
る、一般式〔II〕 【化2】 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
る光学活性ジオール類の製造法。およびこれに用いるシ
ュウドモナス属 NSB1516菌(工業技術院生命工
学工業技術研究所寄託番号FERM P-13649)ロドコッカス
属 NSB1702菌(工業技術院生命工学工業技術研
究所寄託番号FERM P-13650)。 【効果】 本発明は、農医薬の中間原料として有用であ
る光学活性ジオール類を簡便に製造する工業的にも優れ
た製造法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光学活性なジオール類の
製造法に関するものおよびそれに用いる菌である。光学
活性な1,2−ジオール、1,3−ジオール類およびそ
れらの置換体は、医薬・農薬に利用される生理活性化合
物の合成中間体あるいは、液晶等の機能性材料の原料と
して重要性が高い。
【0002】
【従来の技術】2級水酸基を有する光学活性ジオール類
は、医薬・農薬に利用される光学活性な生理活性化合物
の基幹合成中間体としての利用が検討され(E. Hungerb
uehleret. al. Helv. Chim. Acta, 64, 1467(198
1))、また、強磁性液晶用素材の原料としても期待され
ている。(特開平2-67252 ) そのため経済的に高純度
の該化合物およびその誘導体を製造する方法の確立が望
まれている。光学活性な化合物を製造する方法として、
光学活性のない化合物からの不斉誘導で得る方法、ラセ
ミ混合物を光学分割する方法、光学活性前駆体から誘導
する方法などが考えられる。何れの方法にも一長一短が
あり、工業的に利用するには経済性等で解決しなければ
ならない問題点がある。ラセミ混合物を光学分割して光
学活性化合物を製造する方法の一つとして酵素を利用す
る方法があり、適切な酵素を見いだせば有効な方法を提
供すると考えられる。これまで、光学活性ジオール類の
製造法としてはヒドロキシケトンを不斉還元する方法、
オキシ酸を光学分割して得た後、カルボン酸部位を還元
する方法、ジアシル体を酵素加水分解する方法等があっ
たが、工程の長さ、反応選択性等の点から実用上問題が
多かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】エステルを利用する2
級アルコールの光学分割法では、反応中にアルコール部
位と酸部位の化合物が系内に共存することになり、逆反
応の生起の点や反応後の操作の簡便化の点からもどちら
かの化合物を系から除去する方策が必要となる。安価な
原料から短い工程で上述の問題点を解決できる効率的光
学活性体製造方法を検討した。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、簡便で経
済性に優れた方法で光学純度の高いジオール類を得る方
法として、ジオール類から容易に合成できる環状炭酸エ
ステルを原料としてそれに酵素を作用させて製造する新
しい方法を検討した。環状炭酸エステルは、加水分解を
受けた際に、エステルの酸部分である炭酸ガスが気体と
して系から除かれることになり、反応系が単純化され
る。この原料を用いる新しい不斉合成法を確立するため
に、各種の微生物、酵素を探索し、その反応条件を鋭意
検討した結果、ある種の微生物及び数種のエステル加水
分解酵素が環状炭酸エステルを高い不斉認識能で、不斉
加水分解をして収率よく光学活性な1,2−ジオール、
1,3−ジオール類を生成することを見いだし本発明を
完成するに至った。即ち、環状炭酸エステルのエナンチ
オマー混合物を、生体組織、菌体または酵素を作用させ
一方の対掌体のみを残存させ他方の対掌体を立体選択的
に加水分解することを特徴とする、光学活性ジオール類
の新しい製造法を確立できた。
【0005】以下、本発明を更に詳細に述べる。本発明
は、一般式〔I〕
【化6】 (式中nは1または2、Rは直鎖または分岐鎖状のC1
〜C11のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、C2 〜C
11のアルケニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい芳
香族基を示す)で表される化合物のエナンチオマー混合
物に、生体組織、菌体または酵素(以下、酵素類と称す
る)を作用させ環状炭酸エステル部位を立体選択的に加
水分解することを特徴とする、一般式〔II〕
【化7】 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
る光学活性ジオール類の製造法であり、そのために用い
られる新菌である。ここに述べるヘテロ原子は窒素、酸
素、硫黄を含み、芳香族は5員環、6員環及びこれらを
縮環した縮合多環を含み、これはアルキル基、ハロゲン
原子等で置換されていてもよい。
【0006】原料となる環状炭酸エステルは文献記載の
方法(J. Org. Chem., 24巻 1873頁(1959))により対
応するジオールから容易に合成できる。この原料化合物
は入手の容易な点でラセミ体(対掌体の等量混合物)が
好ましいが対掌体混合比率は特に限定されるものではな
く、いかなる混合比でもよい。ここで使用する酵素類は
環状炭酸エステルの(R)−または(S)−立体配置の
化合物の一方に特異的に作用する点が特徴である。本発
明で使用される加水分解酵素は、エステル加水分解酵素
に分類されるものであり、微生物や昆虫、動物組織由来
のエステラーゼ、リパーゼ等を挙げることが出来る。こ
の目的に利用される酵素として、豚肝臓由来のエステラ
ーゼ、牛赤血球由来のアセチルコリンエステラーゼ、シ
ュードモナス菌由来のコレステロールエステラーゼなど
のエステラーゼ等を例示する事ができる。反応させる際
の酵素の利用形態として、精製酵素、粗製酵素あるいは
菌体や組織に含まれた状態等があり、いずれの形態を利
用してもよい。また、固相担体に固定して用いることも
可能である。
【0007】酵素反応を行なう場合、通常は水溶液中で
反応を行なうが、基質である一般式〔I〕の化合物の溶
解度を上げるために有機溶媒を加えてもよい。有機溶媒
としては水と混和する不活性な溶媒、例えばアセトンの
ようなケトン、テトラヒドロフランやジメトキシエタン
のようなエーテル類、ジメチルスルホキシドのような非
プロトン性極性溶媒等を例示することができる。酵素の
特性を発揮させるために非極性な有機溶媒を加えて不均
一系で反応させる事もできる。また、界面活性剤を加え
て反応させてもよい。水溶液中の基質濃度は通常は0.
1〜50%であり、好ましくは1〜20%である。この
形式の反応を行なう際のpHは使用する酵素の至適pH
と環状エステルの安定性を考慮する必要があるが、弱酸
性が好ましい。この場合適切な緩衝液を用いるのが好ま
しい。反応温度は、使用酵素や基質によって決まるが、
通常0〜60℃、好ましくは5〜55℃である。酵素の
使用量は、酵素の種類や比活性、基質濃度により異なる
が基質に対して、通常0.1〜50%で行なう。反応
は、攪拌下または振盪下に行なうことが好ましいが、静
置状態で行なってもよい。
【0008】本発明に用いられる酵素機能を有する微生
物として、キャンディダ属、ブレビバクテリウム属、イ
サチェンキア属、セラチア属、シュードモナス属、ロド
コッカス属、アルカリゲネス属などを例示することがで
きる。これらの中で、本発明の一つであるシュウドモナ
ス(Pseudomonas)属 NSB1516菌ならびにロド
コッカス(Rhodococcus)属 NSB1702菌につイ
て述べる。これら本発明の菌は、本発明者らが新たに環
状炭酸エステルの立体選択的加水分解能力を指標として
土壌より分離した新菌株である。その菌学的性質を以下
に示す。
【0009】NSB1516菌の菌学的性質
【0010】
【表1】 (a)形態 1)細菌の形及び大きさ : 桿菌,0.6〜0.8×
2.0〜3.5μm 2)細胞の多形成の有無 : 無 3)運動性の有無 : 無 4)胞子の有無 : 無 5)グラム染色性 : 陰性 6)抗酸性 : 無
【0011】
【表2】 (b)各培地における生育状態 1)肉汁寒天平板培養 : 適度な生育,円形,凸円
状,波状,不透明,平滑,半透明色 2)肉汁寒天斜面培養 : 適度な生育,糸状,可溶
性色素を生成しない 3)肉汁液体培養 : わずかに濁る 4)肉汁ゼラチン培養 : 液化しない 5)リトマス ミルク : アルカリ性,ペプトン化
【0012】
【表3】 (c)生理学的性質 1)硝酸塩の還元 : + 2)脱窒反応 : − 3)MRテスト : − 4)VPテスト : − 5)インドールの生成 : − 6)硫化水素の生成 : + 7)デンプンの加水分解 : + 8)クエン酸の利用 : コーザー培地 + (Koser) クリステンセン培地 + (Christensen) シモンズ培地 + (Simmons) 9)無機窒素源の利用 : 硝酸塩 − アンモニウム塩 − 10)色素の生成 : − 11)ウレアーゼ : − 12)オキシダーゼ : + 13)カタラーゼ : + 14)生育の範囲 : 温度 42℃では生育するが、45℃
では生育しない pH 6〜9 15)酸素に対する態度 : 好気性 16)O−F テスト : − 17)糖類から酸およびガスの生成の有無 : 酸の生成 ガスの生成 ( 1)L-アラビノース − − ( 2)D-キシロース − − ( 3)D-グルコース + − ( 4)D-マンノース − − ( 5)D-フラクトース + − ( 6)D-ガラクトース − − ( 7) マルトース − − ( 8) ショ糖 − − ( 9) ラクトース − − (10) トレハロース − − (11)D-ソルビット − − (12)D-マンニット + − (13) イノシット − − (14) グリセロール + − (15) デンプン − − 18)食塩の耐性 : 5%では生育するが、
7%では生育しない
【0013】以上の菌学的性質をバージーズ マニュア
ル オブ システマティック バクテリオロジー(BERG
EY'S MAMUAL OF Systematic Bacteriology)に基づ
いて検索した結果、本菌はシュウドモナス(Pseudomona
s )属に該当する新菌と判断された。本菌は、4−メチ
ル−1,3−ジオキサン−2−オンに作用して対応する
(R)−1,3−ブタンジオールに変換する能力を持
つ。そこで本発明者らは、本菌をシュウドモナス(Pseu
domonas )属 NSB1516菌 と命名し、工業技術
院生命工学工業技術研究所に寄託した(FERM P-1364
9)。
【0014】NSB1702菌の菌学的性質
【0015】
【表4】 (a)形態 1)細菌の形及び大きさ : 桿菌,0.6〜0.8×
2.0〜3.5μm 2)細胞の多形成の有無 : 有 3)運動性の有無 : 無 4)胞子の有無 : 無 5)グラム染色性 : 陽性 6)抗酸性 : 無
【0016】
【表5】 (b)各培地における生育状態 1)肉汁寒天平板培養 : 適度な生育,円形,凸円
状,全縁,不透明,平滑,オレンジ色 2)肉汁寒天斜面培養 : 適度な生育,糸状,可溶
性色素を生成しない 3)肉汁液体培養 : わずかに濁る 4)肉汁ゼラチン培養 : 液化しない 5)リトマス ミルク : アルカリ性,ペプトン化
【0017】
【表6】 (c)生理学的性質 1)硝酸塩の還元 : + 2)脱窒反応 : − 3)MRテスト : − 4)VPテスト : + 5)インドールの生成 : − 6)硫化水素の生成 : − 7)デンプンの加水分解 : − 8)クエン酸の利用 : コーザー培地 + (Koser) クリステンセン培地 + (Christensen) シモンズ培地 + (Simmons) 9)無機窒素源の利用 : 硝酸塩 − アンモニウム塩 − 10)色素の生成 : − 11)ウレアーゼ : − 12)オキシダーゼ : − 13)カタラーゼ : + 14)生育の範囲 : 温度 45℃では生育するが、50℃
では生育しない pH 6〜9 15)酸素に対する態度 : 好気性 16)O−F テスト : − 17)糖類から酸およびガスの生成の有無 : 酸の生成 ガスの生成 ( 1)L-アラビノース − − ( 2)D-キシロース − − ( 3)D-グルコース − − ( 4)D-マンノース − − ( 5)D-フラクトース − − ( 6)D-ガラクトース − − ( 7) マルトース − − ( 8) ショ糖 − − ( 9) ラクトース − − (10) トレハロース − − (11)D-ソルビット − − (12)D-マンニット − − (13) イノシット − − (14) グリセロール − − (15) デンプン − − 18)食塩の耐性 : 10%までは生育する
【0018】
【表7】 (d)細胞壁成分の分析 1)ミコール酸の有無 :有 総炭素数 :36〜48 総不飽和数 :1〜3 2)ジアミノピメリン酸の存在:meso−DAP 3)全糖の分析 :アラビノース,ガラク
トース,リボース
【0019】以上の菌学的性質をバージーズ マニュア
ル オブ システマティック バクテリオロジー(BERG
EY'S MAMUAL OF Systematic Bacteriology)に基づいて
検索した結果、本菌はロト゛コッカス(Rhodococcus )属に該
当する新菌と判断された。本菌は環状炭酸エステルに作
用して対応する(R)−または(S)−ジオールに変換
する能力を持つ。そこで本発明者らは、本菌をロドコッ
カス(Rhodococcus sp. )NSB1702菌と命名し、
工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(FERM P
-13650)。
【0020】本発明の菌を用いての環状炭酸エステルか
らのジオール類の製造において、環状炭酸エステルに微
生物を作用せしめる方法は、微生物を環状炭酸エステル
を含む培地中に培養してもよいし、また微生物の菌体ま
たは菌体処理物を水溶液中で環状炭酸エステルに接触せ
しめてもよい。微生物を培養することにより環状炭酸エ
ステルをジオールに変換せしめる方法としては、培養当
初より環状炭酸エステルを含有する培地に微生物を培養
してもよいし、また培養途中に環状炭酸エステルを培地
に添加してもよい。微生物の培養のために用いられる培
地は微生物が資化しうる炭素源、窒素源、無機イオンさ
らに必要ならば有機栄養源を含む通常の培地である。炭
素源としては、グルコース等の炭水化物、グリセロール
等のアルコール類、有機酸、その他が適宜使用される。
窒素源としては、アンモニウム塩や硝酸塩、その他が用
いられる。無機イオンとしては、マグネシウムイオン、
鉄イオン、マンガンイオン、燐酸イオン、その他が必要
に応じ適宜使用される。有機栄養源としては、ビタミ
ン、アミノ酸等およびこれらを含有する酵母エキス、ポ
リペプトン、肉エキス、その他が適宜用いられる。培養
は好気的条件下に、pH6ないし8、温度25ないし3
7℃の適当な範囲に制御しつつ行えば望ましい結果が得
られる。かくして1ないし10日間も培養を行えば、環
状炭酸エステルはジオールに効率よく変換される。一
方、微生物の菌体または菌体の処理物を、水溶液中にて
環状炭酸エステルと接触せしめて作用せしめる場合には
環状炭酸エステルと菌体または菌体の処理物を溶解また
は懸濁した水溶液を温度20〜40℃、好ましくは25
〜30℃、pH5〜11、好ましくは6〜8に保ちつつ
暫時静置または撹拌すればよい。環状炭酸エステルの濃
度は0.1〜30%、好ましくは0.5〜10%であ
り、必要ならば環状炭酸エステルは反応の間追補添加さ
れる。菌体としては、菌体を含む培養液をそのまま用い
てもよい。また、これを一旦培養液より分離して洗浄ま
たは洗浄せずに使用してもよい。菌体処理物としては、
機械的破砕菌体、超音波にて処理した菌体、凍結融解を
施した菌体、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、リゾチ
ーム等の酵素で処理した菌体、界面活性剤やトルエン等
で処理した菌体、菌体の蛋白画分、その他が適宜用いら
れる。このような菌体を得る方法は前記の培地および培
養方法がそのまま採用できる。培地にはさらに環状炭酸
エステルを少量添加すれば、環状炭酸エステルをジオー
ルに変換する活性の高い菌体が得られる場合がある。ま
た、培養時間はこの場合、微生物が十分増殖すればよい
ので、6ないし48時間程度で培養を終えてもよい。水
溶液には必要に応じ界面活性剤、マグネシウムイオン、
マンガンイオン、コバルトイオン、カルシウムイオン、
その他の金属イオン等が添加されると反応収率が向上す
る場合がある。かくして1ないし150時間も経過すれ
ば、水溶液中には多量のジオールが生成蓄積される。
【0021】酵素類を用いた反応終了後に、不溶物を遠
心分離または濾過等の操作によって除いた後、水に不溶
な有機溶媒で抽出し、蒸留あるいはカラムクロマトグラ
フィー等の通常の精製法を適用して残存物と生成物を分
離精製し、光学活性体を取得する事ができる。本発明に
よれば系中に酸が残存しないので特別な中和操作等を必
要としない。この反応で不溶物として除かれたものは大
部分が酵素類であり、これは再利用可能である。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
述べる。
【0023】実施例1 グルコース5.0g/l,酵母エキス5.0g/l,M
gSO4 ・7H2 O1.0g/l,FeSO4 ・7H2
O10mg/l,およびMnSO4 ・4〜6H2 O10
mg/l(pH7.2)を含む培地100mlを500
ml容バッフル付き三角フラスコに入れ、121℃で1
5分間滅菌した。これに上記組成寒天培地で30℃にて
一晩培養したシュウドモナス属 NSB1516菌(工
業技術院生命工学工業技術研究所寄託番号FERM P-1364
9)を1白金耳接種し、30℃で16時間振盪培養し
た。この培養液中10mlより菌体を遠心分離により採
取し、10mlの10mM燐酸緩衝液(pH6.0)で
一回洗浄し、菌体を集めた。この菌体を,4−メチル−
1,3−ジオキサン−2−オン 30mgを含む10m
M燐酸緩衝液(pH6.0)1.0mlに添加して、3
0℃,20時間振盪し、反応を行なった。反応終了後、
遠心分離により、菌体を除いた。高速液体クロマトグラ
フ法(屈折率検出器)により5.61mgの1,3−ブ
タンジオールの生成を確認した(収率24.1%)。生
成した1,3−ブタンジオールは、R体であった(旋光
度検出器による測定で光学純度95%)。
【0024】実施例2 実施例1の培地でグルコースを乳酸に変えた培地1.5
mlを小試験管に入れ、121℃で15分間滅菌した。
これに上記組成寒天培地で30℃にて一晩培養したロド
コッカス属 NSB1702菌(工業技術院生命工学工
業技術研究所寄託番号FERM P-13650)を1白金耳接種
し、30℃で16時間振盪培養した。この培養液中1mlよ
り菌体を遠心分離により採取し、1mlの10mM燐酸
緩衝液で一回洗浄し、菌体を集めた。この菌体を4−メ
チル−1,3−ジオキサン−2−オン 4.5mgを含
む10mM燐酸緩衝液(pH6.0)0.150mlに
添加して、30℃,20時間静置し、反応を行なった。
反応終了後、遠心分離により、菌体を除いた。高速液体
クロマトグラフ法により1.1mgの1,3−ブタンジ
オールの生成を確認した(収率31.7%)。生成した
1,3−ブタンジオールは、S体であった(光学純度5
3%)。
【0025】実施例3 実施例1と同様な培地20mlを100ml容バッフル
付き三角フラスコに入れ、121℃で15分間滅菌した。
これに上記組成寒天培地で30℃にて一晩培養したロド
コッカス属 NS1702菌(工業技術院生命工学工業
技術研究所寄託番号FERM P-13650)を1白金耳接種し、
30℃で16時間振盪培養した。この培養液中10ml
より菌体を遠心分離により採取し、10mlの10mM
燐酸緩衝液で一回洗浄し、菌体を集めた。この菌体を4
−フェニル−1,3−ジオキソラン−2−オン 18.
6mgを含む10mM燐酸緩衝液(pH6.5)1.0
mlに添加して、30℃,8時間振とうし、反応を行な
った。反応終了後、遠心分離により、菌体を除いた。生
成物を高速液体クロマトグラフ法により、8.05mg
の1−フェニル−1,2−エタンジオールの生成を確認
した(収率51.3%)。生成した1−フェニル−1,
2−エタンジオールは、S体(光学純度24%)であっ
た。
【0026】実施例4 ラセミ体の4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン
16mgを含む10mM燐酸緩衝液(pH6.5)
0.5mlにコレステロールエステラーゼ(和光純薬
製)10mgを加え30℃,20時間静置し、反応を行
なった。後、遠心分離により、酵素を除いた。高速液体
クロマトグラフ法により1.26mgの1,3−ブタン
ジオールの生成を確認した(収率9%)。生成した1,
3−ブタンジオールは、R体であった(光学純度34
%)。
【0027】実施例5 ラセミ体の4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン
15mgを含む10mM燐酸緩衝液(pH6.5)
0.5mlに実施例1と同様の処理をした菌体(第1表
参照)を加え30℃,20時間静置し、反応を行なっ
た。生成収率と光学純度を第1表に示す。
【0028】
【表8】
【0029】実施例6 ラセミ体の4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン
30mgを含む10mM PIPES緩衝液(pH
6.5)1.0mlに第2表に示す市販の酵素(10m
g)を加え、20℃、16時間振盪し、反応を行なっ
た。高速液体クロマトグラフ法(屈折率検出器および旋
光度検出器)により生成物を分析した。生成収率と光学
純度を第2表に示す。
【0030】
【表9】
【0031】実施例7 ラセミ体の4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン
30mgを塩化マンガン 2mMを含む10mM 緩
衝液1.0mlに溶解し、リパーゼOF(名糖産業製)
を加え、20℃、3時間振盪し、反応を行なった。緩衝
液の相違による(R)−1,3−ブタンジオールの生成
収率と光学純度を第3表に示す。
【0032】
【表10】
【0033】
【発明の効果】本発明は、農医薬の中間原料として有用
である光学活性ジオール類を安価な原料から短い工程で
簡便に製造できる工業的にも優れた製造法である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:01) (C12P 41/00 C12R 1:38) (C12P 41/00 C12R 1:01)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式〔I〕 【化1】 (式中、nは1または2、Rは直鎖または分岐鎖状のC
    1 〜C11のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、C2
    11のアルケニル基、またはヘテロ原子を含んでもよい
    芳香族基を示す)で表される化合物のエナンチオマー混
    合物に、生体組織、菌体または酵素を作用させ環状炭酸
    エステル部位を立体選択的に加水分解することを特徴と
    する、一般式〔II〕 【化2】 (式中、nおよびRは前記と同じ意味を表す)で表され
    る光学活性ジオール類の製造法。
  2. 【請求項2】生体組織、菌体または酵素が、エステラー
    ゼを含有する生体組織、エステラーゼを含有する菌体ま
    たはエステラーゼである請求項1記載の光学活性ジオー
    ル類の製造法。
  3. 【請求項3】生体組織、菌体または酵素が、リパーゼを
    含有する生体組織、リパーゼを含有する菌体またはリパ
    ーゼである請求項1記載の光学活性ジオール類の製造
    法。
  4. 【請求項4】反応をマンガンイオン存在下に行う請求項
    3記載の光学活性ジオール類の製造法。
  5. 【請求項5】生体組織、菌体または酵素が、シュウドモ
    ナス(Pseudomonas)属又はロドコッカス(Rhodococcus
    )属に属する微生物群から選ばれ、一般式〔I〕 【化3】 (式中、n及びRは上記と同じ意味を表す)で表される
    環状炭酸エステルを立体選択的にジオールに変換する能
    力を有する微生物の培養液、該菌体、該菌体処理物又は
    該菌体由来の酵素である請求項1記載の光学活性ジオー
    ル類の製造法。
  6. 【請求項6】一般式〔I〕 【化4】 (式中、n及びRは上記と同じ意味を表す)で表される
    環状炭酸エステルを立体選択的にジオールに変換する能
    力を有するシュウドモナス(Pseudomonas )属NSB1
    516菌。
  7. 【請求項7】一般式〔I〕 【化5】 (式中、n及びRは上記と同じ意味を表す)で表される
    環状炭酸エステルを立体選択的にジオールに変換する能
    力を有するロドコッカス(Rhodococcus )属 NSB1
    702菌。
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