JPH0774227B2 - 新規抗酸化性配糖体、その製法及び用途 - Google Patents

新規抗酸化性配糖体、その製法及び用途

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JPH0774227B2
JPH0774227B2 JP3115714A JP11571491A JPH0774227B2 JP H0774227 B2 JPH0774227 B2 JP H0774227B2 JP 3115714 A JP3115714 A JP 3115714A JP 11571491 A JP11571491 A JP 11571491A JP H0774227 B2 JPH0774227 B2 JP H0774227B2
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sesame
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glycoside
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物由来の有用物質に
関するものであり、更に詳細には、ごま(Sesamu
m indicum L.)の植物体より人工的に誘導
した細胞(カルス)の大量培養法によって、配糖体化合
物を工業的に大量に製造する技術に関するものである。
【0002】本発明に係る配糖体は、従来未知の天然物
起源の新規化合物でありしかも強力な抗酸化活性を有す
るので、本発明は食品産業のほか、医薬品産業及び化粧
品産業等に広く応用されるものである。
【0003】また、本発明に係る配糖体は、その化学構
造が明らかとなっているので、これを化学修飾したり変
形したりすることにより新規誘導体の開発が可能とな
り、新規な抗酸化性物質の出現も大いに期待することが
できる。そのうえ、化学合成による該配糖体の製造法の
開発も期待することが可能となるので、該配糖体を更に
工業的に大量に生産することも可能となり、これらの面
での本発明の利用性も顕著なものがある。
【0004】
【従来の技術】我々人間を初め地球上の多くの生物にと
って、酸素は不可欠である。しかし、最近、生体内にお
ける過剰量の酸素はラジカルや過酸化脂質を生成し、そ
の結果各種組織が障害を受けることが問題となってい
る。この障害は動脈硬化、肝疾患、網膜症、炎症などの
病因となることが明らかになっており、さらに老化や発
癌との関連も示されている。
【0005】脂質が過酸化される例として、生体の重要
な構成成分であると共に、必須脂肪酸として不可欠な食
品成分である多価不飽和脂肪酸(PUFA)は、図1で
示される第1図に示すような自動酸化と呼ばれるラジカ
ル連鎖反応を引き起こし、過酸化脂質やマロンジアルデ
ヒド(MDA)が初めとする酸化分解物を生成すること
が知られている(大澤・並木「現代の食品化学」三共出
版p.186)。
【0006】一方、このような脂質の酸化的劣化を防止
するために、食品系では冷凍保蔵や包装、脱酸素剤の使
用などの物理的手段と共に、抗酸化剤の添加という化学
的手段と共に、抗酸化剤の添加という化学的手段が一般
的である。特にBHA(ブチルヒドロキシアニソール)
やBHT(ブチルヒドロキシトルエン)を初めとする合
成抗酸化剤が長く使用されてきたが、最近に至って安全
性の面から食品への使用が再検討されつつある。
【0007】そこで、その需要が急増してきたのは天然
ビタミンEであるが、価格や効果の点から更に有効で安
全な天然抗酸化性物質の開発が要望されているのが現状
である。さらに、天然抗酸化性物質の積極的な摂取によ
り生体内のラジカル生成や脂質過酸化反応を抑制し、そ
の結果、老化や発癌を初めとするさまざまな疾患を防止
し得ると考えられている(大澤「食品の健全性と食品成
分の生理機構」缶詰技術研究会p2)。
【0008】こうした天然由来の抗酸化性物質や食品や
医薬品、化粧品などに適宜使用するためには、従来とは
性質の異なった天然抗酸化性物質を見出し、それぞれの
特徴を発揮する条件で活用することが重要である。
【0009】天然系物質の内、例えば植物由来の香辛料
等には、抗酸化活性をもった種々の化合物が含まれてお
り(図2)、香辛料は食品保存作用を持つものとしても
食品に添加されてきた。しかしながら香辛料には、強い
香や色を示すものが多く、こうした性質はこれらを食
品、医薬品、化粧品などに応用する場合に使用範囲を大
幅に限定してしまう。
【0010】実用例の代表としては、化学合成法による
ビタミンCおよび天然物から抽出精製されているビタミ
ンEが挙げられている。この内、ビタミンCは水溶性の
物質であるため、油や生体内の脂質には溶けない。一
方、ビタミンEは脂溶性であるため、血液などの水溶液
には溶けず生体内の脂質に蓄積される特徴が認められて
いる。こうした極端な水溶性や脂溶性の性質は、生体に
応用する食品、医薬品、化粧品などの場合、必ずしも有
利な性質とは考えられておらず、生体内の脂質と水溶液
のいずれにおいても適宜、抗酸化活性を発揮するために
は、水溶性と脂溶性の両方の性質をもつ天然化合物が有
利である。
【0011】本発明は、このような天然植物の内、特に
ごまに着目し、黒ごま(Sesamum indicu
m L.)の植物成体より誘導して得られた増殖性細胞
を培養し、その培養物から構造式(I)で示される配糖
体化合物を得、これらの化合物に強力な抗酸化活性を認
めたものであるが、構造式(I)で示される化合物は、
図3で示されるごまの種子から単離された代表的なリグ
ナン系化合物とは全く異なっており、新規化合物であ
る。
【0012】さらに、ごま培養細胞より生成される本発
明に係る新規抗酸化配糖体は、カフェ酸をアグリコンと
し、六単糖をほぼ中心に配糖化した構造をとっているこ
とにより水溶性と脂溶性の中間的な極性を示すものであ
る。こうした性質は、さまざまな生理作用が期待される
抗酸化性物質の食品、医薬品、化粧品などへの応用に非
常に有利であり、他の抗酸化性物質には全く見当らな
い。
【0013】また、本発明は、植物体自体から抽出する
ものではなく、抗酸化性配糖体を生産する培養細胞を用
いるものであって、ごま細胞を大量培養することにより
天然の抗酸化性配糖体を工業的に大量生産することに成
功したものであって、この点においても新規である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】化学工業の発展を背景
として、合成抗酸化剤、例えばブチルヒドロキシアニソ
ール(BHA)やブチルヒドロキシトルエン(BHT)
などが一般的に使用されてきた。ところが、こうした合
成抗酸化剤の使用が増えるにつれて、食品公害が増加し
て安全性の面から大きな問題が生じ、消費者の合成抗酸
化剤に対する拒否反応が強くなり、その使用量も低下し
ているのが現状である。
【0015】したがって安全性の高い、天然由来の抗酸
化性物質は、生体内における抗酸化的な生体の防御機構
を支援する物質として、食品、特に機能性食品、健康食
品や栄養食品のほか、医薬品や化粧品の技術分野におい
て非常に期待されている。
【0016】しかしながら、食品公害上問題のある合成
抗酸化剤に代って、その使用が期待されている天然の抗
酸化剤は、化学合成法によるビタミンCおよび天然物か
ら抽出精製されているビタミンEが実用化されているに
すぎない。
【0017】また天然の抗酸化剤は、その起源が天候等
自然条件に左右される植物や動物等であって安定供給が
困難であり、また、その含有量も非常に微量であるた
め、抽出にも非常な困難が伴い且つ抽出中に成分が変化
するといった点から工業的に大量に抽出、製造すること
は困難であった。
【0018】さらに香辛料等を起源とする抗酸化性物質
の中には強い香や色を持つものが多く、こうした性質は
食品、医薬品、化粧品などの使用を制限するものとなっ
ている。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明はこれらの欠点を
一挙に解決するためになされたものであって、各方面か
ら鋭意研究の結果、ごま(Sesamum indic
um L.)の植物成体から誘導した増殖性細胞(カル
ス)を合成培地を用いて培養し、得られた培養細胞か
ら、下記する化2で示される構造式(I)を有する新規
抗酸化性配糖体を大量に且つ計画的に工業生産すること
に成功し、本発明の完成に至ったものである。
【0020】
【化2】
【0021】ごま培養細胞から生成される本発明に係る
新規抗酸化性配糖体は、カフェ酸をアグリコンとし六単
糖をほぼ中心に配糖化した構造をとっており、水溶性と
脂溶性の中間的な極性を有する化合物であり、極端な極
性を有するビタミンCやビタミンEとは異り、その応用
範囲を広げるには非常に有利な物性を有している。した
がって、老化防止、発癌抑制などのさまざまな生理作用
が期待される抗酸化性物質の応用として、食品、医薬
品、化粧品などへも有効に利用される。
【0022】また本発明は、このような生産効率が非常
に低い天然物からの有効成分の抽出という技術に鑑み、
目的物質を効率的、且つ計画的、安定的に大量生産する
方法を確立するためになされたものであって、生産効率
が低く、自然条件の影響を直接受ける植物体からの抽出
法を改善するために各方面から研究、検討した結果、バ
イオテクノロジーに着目し、細胞を人工培養する方法が
最適であるとの結論に達した。
【0023】そこで、植物細胞の人工培養について徹底
的に研究を行い、このように有用な成分を含むごまの増
殖性細胞を育種するために、植物成体から人工的に増殖
性細胞塊(カルス)を誘導し、これより安定的にかつ迅
速に増殖する細胞を選択する研究を行ってきた。その結
果、ごまの種子から無菌的に発芽させたごま芽ばえを素
材として、ごま細胞のカルスを誘導し、安定に継代培養
が可能な高温度培養細胞を取得することに成功しただけ
でなく、増殖した細胞内に有用成分が含有されておりし
かもそれを有利に抽出できることをはじめて見出し、こ
れらの新知見を基礎にして更に研究の結果、有用成分の
精製及び構造決定にも成功し、ここに本発明が完成され
たのである。
【0024】すなわち、本発明は、ごま培養細胞を、特
に植物細胞培養では他に報告例のない高温度(33〜3
6℃)細胞培養法という全く新規な方法を確立すること
に成功したものであって、それにより新規なごま抗酸化
性配糖体を大量に且つ計画的に生産する工業的方法を提
供することができるのである。
【0025】本発明者らは、こうした工業的な植物細胞
培養に適したごま培養細胞を育種する研究を鋭意おこな
った結果、従来、植物細胞培養の可能な温度とは考えら
れていなかったごとき高温度において、増殖性の高い細
胞を取得することに成功し、得られた培養細胞中には新
規な抗酸化性配糖体が生成されていることを見い出し本
発明を完成したのである。
【0026】本発明の高温度で旺盛に増殖する培養細胞
の育種及び培養細胞より生成される新規抗酸化性配糖体
の抽出、精製及び構造決定について以下に述べる。
【0027】先ず、ごまとしては、芽、根、又は種子を
用いる。そして、無菌条件下で芽ばえを調製し、芽、
茎、葉及び/又は根の切片を固体及び/又は液体の培地
で培養してカルス細胞を誘導する。得られた増殖性カル
スは、継代培養することにより大きなカルスを成長させ
る。次いでこれを固体及び/又は液体培養で、静置及び
/又は撹拌培養してカルス細胞を増殖せしめるのであ
る。
【0028】培地としては、各種培地を使用することが
でき、炭素源としては、グルコース、フラクトース等の
単糖類、マルトース、シュークロース等の二糖類のほ
か、オリゴ糖や澱粉等の多糖類も使用することができ
る。窒素源としては、硝安、硝酸カリウムといった硝酸
態窒素、硫安、酒石酸アンモニウム等のアンモニア態窒
素のほか、カザミノ酸、アミノ酸、ペプトン、コーンス
ティープリカー、酵母菌体、イーストエキストラクト、
麦芽エキストラクト等が使用できる。
【0029】そのほか、ニコチン酸、ニコチン酸アミ
ド、サイアミン、葉酸、ビオチン等のビタミン類;イノ
シトール、アデニル酸、グアニル酸、シチジル酸、チミ
ジル酸、サイクリックAMP等の核酸関連物質;鉄、マ
ンガン、亜鉛、ホウ素、ヨウ素、カリウム、コバルト、
マグネシウム、モリブテン、リン、銅等のミネラルも使
用する。
【0030】基本培地の1例を示すと、次の表1に示さ
れる第1表のとおりである。
【0031】
【表1】
【0032】基本培地にはオーキシン、サイトカイニン
を添加するのが好ましく、オーキシンとしては、インド
ール酢酸、インドール酪酸、フンタレン酢酸、2,4ジ
クロロフェノキシ酢酸などが適宜利用される。また、サ
イトカイニンとしては、ベンジルアデニン、カイネチン
などが使用できる。これらの植物ホルモンやサイトカイ
ニンは単独でも使用できるが、組合せて用いることが効
果的である。増殖性のカルスの培養には、先の第1表に
示した組成の培地でもよいが、さらに増殖性を改善する
ためには、ココナツミルク、カゼイン加水分解物、ジャ
ガイモ抽出液、コーンスティープリカー、イーストエキ
ストラクト、麦芽抽出液などの天然有機栄養源を添加す
ることが有効である。培養温度は28〜37℃で培養操
作できるが、好ましくは33〜36℃である。培養液の
pHは弱酸性(pH5.6〜6.0)が増殖に有利であ
る。
【0033】このようにして得られたごまのカルス細胞
から高温度で安定に増殖できる細胞を育成するには、ジ
ェランガムまたは寒天による固体平板培地に細胞の小塊
を移植し、これを後記の増殖条件で1〜2週間培養を行
なう。このときの培養温度は33〜36℃に維持するこ
とが好ましい。
【0034】さらに、多数の高密度培養細胞の培養系統
の中より、増殖性の高い培養系統を選択し、その細胞集
団から、更に細胞の小塊を多数取り出し、これらを新し
い培地に移植することによって、更に多数の培養系統を
作る。こうした細胞の培養系統の継代培養を5〜10
回、33〜36℃の高温度で、くり返すことによって、
高温度で安定に増殖できる、ごま培養細胞を育成する。
【0035】培養して得た増殖性細胞から抗酸化性物質
を抽出するには、セルラーゼやリゾチームを用いる生物
学的処理、化学的処理、機械的ないし超音波などの処
理、又はこれを組合わせたりして細胞を破壊し、メタノ
ール、エタノール、アセトン、クロロホルムその他の有
機溶媒、水などの単独ないしは、これらの有機溶媒と水
との混合液で抽出して回収できる。
【0036】抗酸化性物質の活性の分析は、リノール酸
を反応基質とする空気による自動酸化量をロダン鉄法に
よって測定する方法を用いる。この方法は、脂質の過酸
化を調べるのに用いられる常法である。(アグリカルチ
ュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Ag
ricultural and Biological
Chemistry)第45巻、735頁(1981
年))
【0037】次に本発明により育種され、高温度培養が
できる、ごま培養細胞の取得について実験工程を追って
詳細に説明する。
【0038】
【1.無菌的に生育したごま芽ばえの調製】ごま種子
を、よく水洗したのち、75%エタノール水溶液に数秒
間浸漬する。これを別に用意した殺菌水で洗浄し、つい
で0.1%ベンザルコニウムクロライド(市販殺菌剤)
液に2〜5分間浸漬して種子に付着している微生物を殺
菌する。この種子を再び殺菌水でよく洗浄したのち、1
%次亜塩素酸ナトリウム(和光純薬製)(0.1%の界
面活性剤ツイーン20を含む)の殺菌剤液によって、3
0分間処理して、ごま種子を完全に殺菌する。
【0039】いっぽう、殺菌した、ふた付きの広口容器
(プラスチック製市販品)を用意する。これに前記第1
表に示した組成の基本培地(ただし蔗糖は添加せず、固
化剤として寒天の場合0.8〜1.5%、ジュランガム
の場合0.2〜0.3%を添加した)を別途オートクレ
ーブ殺菌したものを、広口容器に注いで固化させ播種用
の固型培地とする。また、殺菌水と殺菌したガーゼを、
広口容器に無菌的に入れて、播種用の床としてもよい。
このような播種用の培地又は床に、殺菌処理をしたごま
種子を無菌操作によって播種する。28〜30℃の恒温
室で蛍光灯の光のもとで保温すると、殺菌処理したごま
種子は死滅することなしに、発芽し、10日間程度で長
さ3〜5cmのごま芽ばえが調製できる。このごま芽ば
えは、完全に無菌状態であり、増殖性細胞の育種に利用
される。
【0040】
【2.ごま由来の増殖性細胞塊の誘導培養】前記第1表
に示した組成の基本培地に、オーキシンとして、ナフタ
レン酢酸(10−8〜10−5M)、あるいは、2,4
ジクロロフェノキシ酢酸(10−8〜10−5M)、サ
イトカイニンとして、ベンジルアデニン(10−6〜1
−4M)、あるいはカイネチン(10−6〜10−4
M)を組合せて添加した、各種組成の培地を調合する。
これに、固化剤としてジェランガム0.2%または寒天
0.8%を加えて、pHを5.7に調整したのち、微生
物培養に常用されるペトリディッシュに分注して固化す
る。これに、先に述べたように無菌的に調製したごまの
芽ばえの断片を移植し、温度28〜30℃の恒温室又は
恒温箱の中で、暗所で培養を行なうと、培養2〜3週間
後には、ごま芽ばえの切断片の切り口より、細胞が増殖
し、塊となってカルスを形成する。この増殖性のカルス
を、同一組成の培地に継代培養することによって、大き
なカルスを育てることができる。
【0041】カルスの人工的な誘導に用いる基本培地は
第1表に示した培地組成(ムラシゲースクーグの培地)
を用いたが、植物の細胞培養に通常用いられている培地
ならいずれも使用できる。こうした培地の基本組成は、
当業界においてよく知られている(植物細胞培養マニュ
アル、講談社(1984))
【0042】
【3.カルス細胞の増殖培養細胞の育成】ごまの芽ばえ
より誘導した増殖性細胞塊(カルス)は、第1表に示し
た組成の培地、ナフタレン酢酸(1〜5×10
−5M)、ベンジルアデニン(1〜5×10−5M)、
などのオーキシンやサイトカイニンを添加したものに、
更に固化剤としてジュランガム0.2%又は寒天0.8
%を加えて滅菌、固化した培地を用いて、安定に増殖す
る細胞を育成する。
【0043】ごま細胞は暗所でもよく増殖するが、明所
の方が、更に増殖に活発である。したがって3,000
〜30,000ルクス、好ましくは8,000〜15,
000ルクスの明所においてよく増殖することが観察さ
れる。温度は、30〜37℃でも増殖するが、好ましく
は、33〜36℃で培養することができる。
【0044】ごまのカルスから高温度で安定に増殖でき
る細胞を育成するには、ジュランガム又は寒天による固
体平板培地に細胞の小塊を移植し、これを前記の増殖条
件で1〜2週間培養を行なう。
【0045】このときの培養温度はカルス細胞の誘導培
養に用いた温度よりも高温度にする。すなわち培養温度
を33〜36℃に維持して、旺盛に増殖する細胞を濃縮
することができる。
【0046】このようにして得た多数の培養系統の中よ
り、増殖性の旺盛な培養系統を選択し、その細胞集団か
ら、更に細胞の小塊を多数取り出し、これらを新しい培
地に移植することによって、再び多数の培養系統を調製
する。こうした細胞の培養系統の継代培養を5〜10回
くり返すことによって、33〜36℃の高温度で安定に
増殖できる。ごま細胞を育成する。
【0047】
【4.増殖性細胞の培養】安定に継代培養が可能なごま
細胞の増殖培養には、第1表に示した組成の培地が用い
られるが、植物細胞の培養に通常よく用いられている組
成の培地も利用できる。このような基本培地に、オーキ
シンとして、ナフタレン酢酸(1〜5×10−5M)、
サイトカイニンとして、ベンジルアデニン(1〜5×1
−5M)を加えたものを調合する。液体培養の場合に
はそのまま増殖培養に使用できるが、固体培地での培養
の時には、これにジュランガム0.2%又は寒天0.8
%を加えて、滅菌、固化させて使用する。細胞の増殖に
は光を照射するのが有利である。通常3,000〜3
0,000ルクス、好ましくは8,000〜15,00
0ルクスの照射であればよい。温度は28〜37℃で増
殖するが好ましくは33〜36℃でよく増殖培養ができ
る。液体培養は、通常の微生物の培養に用いられる振と
う培養法や通気撹拌培養法が適用できるが、微生物の培
養に比較して、ゆるやかな条件で操作するのが好まし
い。微生物の培養に比較して、酸素の必要量は著しく少
なくてよいから、わずかに空気を通気しつつ、細胞が培
養液の底に沈でんしない程度の撹拌を行うことが増殖に
好ましい。
【0048】増殖培養を更に効果的に行なうためには、
培養液のpHを5.6〜5.8に維持するのがよい。
【0049】通常の増殖培養では、1〜2週間で培養が
終了するから、培養液から細胞を遠心分離法などの常法
で回収することが可能である。また固体培養の場合に
は、増殖した細胞塊は容易に回収できる。
【0050】かくして、工業的な規模で、生産が可能な
ごま細胞の育成を行い、これを多量に増殖培養すること
が出来るのである。
【0051】このような操作によって取得された高温度
培養が出来るごま培養細胞の増殖量と培養温度との関係
を図4に示す。植物細胞を通常培養する時に用いられて
いる25〜28℃の温度における増殖量に比べて、35
〜36℃では、約2倍以上の増殖量を示しており増殖速
度も早くなることから工業的な植物細胞の培養におい
て、有効に使用できるものである。
【0052】
【5.抗酸化性物質の抽出及び分析】上記によって得た
増殖性のカルス細胞を、ブレンダー等で細かく破砕した
のち、石英砂と共に磨砕する。これをメタノールなどの
溶媒で抽出し、無水硫酸ナトリウムによって脱水し、3
0〜35℃で蒸発乾固する。再びメタノールに溶解させ
て、抗酸化性物質を含んだ分画を得る。
【0053】次に抗酸化活性の分析法について述べる。
リノール酸を反応基質とする方法であり、油脂の酸化の
程度を測定するためによく用いられているロダン鉄法を
利用するものである。即ち油脂の自動酸化により生成す
る過酸化物によって二価鉄イオンが三価鉄イオンに酸化
され、これがチオシアン酸アンモニウムと反応し赤色の
ロダン鉄を生成させ、その吸光度を測定することから、
油脂の過酸化物の量を求める方法である。(アグリカル
チュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー)
(Agricultural and Biologi
cal Chemistry、第45巻、735頁(1
981年))
【0054】また、ロダン鉄法に比較してより生体系に
近い分析法として兎赤血球膜脂質の過酸化反応を利用し
た、いわゆる赤血球ゴースト法も併せて使用した。
【0055】兎の赤血球から、その膜のみを調製し、こ
れを赤血球ゴーストと呼ぶ。
【0056】この赤血球ゴーストに、酸化の開始剤とし
て、t−ブチルハイドロキシパーオキサイドを加えて、
赤血球膜のリン脂質の過酸化反応を促進させたのち、生
成するマロンジアルデヒドあるいは、これに類似した物
質を、チオバルビツール酸で発色させ、その吸光度を測
定するのである。(バイオケミストリー、78巻、68
58頁(1981年))
【0057】反応系に添加されるサンプル中の抗酸化活
性の程度によって、チオバルビツール酸による発色度が
変化するから、抗酸化性物質を含まない対照区と比較す
ることによって、サンプル中に含まれている抗酸化活性
を測定することができる。
【0058】
【6.新規抗酸化性配糖体の抽出、分離及び構造解析】
液体培養法によって増殖した細胞は、重力分離法や遠心
分離法によって容易に回収することができる。得られた
細胞を最終濃度が80%になるようにエチルアルコール
を添加し、機械撹拌ホモジナイザーによって抽出する。
遠心分離して抽出液を回収した残りの細胞について再び
80%エチルアルコールで抽出する。得られた抽出液を
減圧下で濃縮して乾固すればアメ状、黄褐色の抗酸化性
物質の粗抽出物が得られる。
【0059】これを、たとえばアンバーライトXAD−
IIを用いる吸着クロマトグラフ法によって、樹脂に吸
着させ、水とメタノールの混合溶媒によって溶出し、抗
酸化活性のある画分を取得する。メタノール60%水溶
液により溶出する分画を集め、これを減圧濃縮すること
により、ごま培養細胞中に含まれている抗酸化性物質の
代表的な成分を得る。
【0060】天然物化学の技術分野で、通常用いられて
いる高速クロマトグラフ法により、含有成分の分離分析
を行うことによって、目的成分の精製程度を検定する。
ごま培養細胞のアルコール抽出物の吸着クロマトグラフ
法により60%メタノール水溶液で溶出したフラクショ
ンの高速液体クロマトグラフのチャート図を図5に示
す。
【0061】多数のピークの中より、強い抗酸化活性を
もつピークを更に精製する。この時、天然物の精製法と
して通常用いられている、高速液体クロマトグラフ法
を、くり返し使用して、順次目的物質を純化する。図6
に、高速液体クロマトグラフ法により精製した抗酸化性
物質の単一性を示す。
【0062】単一な成分として単離された抗酸化性物質
について機器分析を行い、その化学構造を以下のように
決定した。
【0063】先ず、単離された抗酸化性物質の紫外線吸
収スペクトラムを、図7に示す。得られた紫外線吸収ス
ペクトラムは、いずれも、カフェ酸系化合物の特徴とよ
く符号していた。
【0064】次に高速電子衝突質量分析法(FAB−M
S)により解析し、図8に示すようなマススペクトラム
を得た。これより、分子イオンピーク(M−1)は6
67であり、抗酸化性物質の分子量は668と判明し
た。またプロトン核磁気共鳴法(NMR)により、二置
換t−オレフィン、2つの芳香族環の存在と置換様式が
解明された(図9)。
【0065】精製した抗酸化性物質は、糖の呈色反応に
より糖分子が結合した配糖体であることが判っていた
が、その構造を決定するために炭素13核磁気共鳴法に
より構造の解析を行った。そのスペクトラムを図10に
示す。
【0066】こうした天然物の構造解析法を駆使して、
ごま培養細胞由来の抗酸化性物質の構造を下記の化3で
示される構造式(I)と決定した。
【0067】
【化3】
【0068】
【7.新規抗酸化性配糖体の抗酸化活性】ごま培養細胞
から80%エタノールで抽出して得た粗抽出物、これを
アンバーライトXAD−IIによる吸着クロマトグラフ
法により60%メタノール水溶液で溶出して得た中間精
製物、さらに、中間精製物を高速液体クロマトグラフ法
により単一ピークまで精製した抗酸化性配糖体は、前述
の兎赤血球ゴースト法により、抗酸化活性を測定した結
果を図11にそれぞれ示した。横軸は分析における反応
系に添加したサンプルの濃度をとり、縦軸に、チオバル
ビツール酸による発色度を、抗酸化性物質を無添加の対
照区を100%として相対比率で示した。市販されてい
る合成抗酸化剤ブチルヒドロキシアニソール(BHA)
を抗酸化剤の対照区に用いて比較したものである。
【0069】このように、ごの培養細胞から抽出して得
た抗酸化性配糖体は、BHAにほぼ相当する抗酸化活性
をもっていることがわかった。
【0070】抗酸化剤として工業的に抗酸化性配糖体を
応用する時には、目的に応じて精製品や粗製品を使用す
ることが便利である。
【0071】このことは図11に示したように、純品に
まで精製した標品と、吸着クロマトグラフ法によって得
られた中間精製品の抗酸化活性に大きな差はなく、厳密
に考えると中間精製品に含まれている、単離した抗酸化
性配糖体以外の成分にも抗酸化活性が認められたり、ま
た、共存物質による抗酸化活性の促進作用(相乗作用)
が考えられる。こうしたことは、粗製品でも使用できる
ことを充分に示唆するものである。
【0072】したがって本発明に係る抗酸化剤は、構造
式(I)で示される化合物を有効成分として含有するも
のがすべて包含されるものであり、ごま培養細胞から抽
出して得られる精製品はもとより、それまでに至る各段
階によって得られる半精製品、粗製品をすべて包含する
ものである。
【0073】本発明に係る化合物は、配糖体であるが、
配糖体の構造をもっていることは、水溶性と脂溶性の双
方の特性を示すことが特徴として考えられ、したがって
本発明化合物は、水溶性のビタミンC、脂溶性のビタミ
ンEやブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル
ヒドロキシトルエン(BHT)などに比較して、抗酸化
剤としての使用範囲が拡大され、また生体内での作用に
おいても、有利性が大いに期待される。
【0074】以下に実施例及び試験例をもって本発明を
説明するが、これらは例示であって、本発明を制限する
ものではない。
【0075】なお、本発明に使用する各細胞は、通常の
ごま植物を用い、前記した手法及び後記する実施例の手
法にしたがってごま成体細胞をそれぞれ処理すれば容易
に取得することができ、充分に再現性があることが確認
された。原料の入手にも何の困難性もなくその処理にも
格別の困難は無いので、本発明に使用する細胞は、何人
も容易に入手することができるのである。
【0076】
【実施例1】(1)ごま(Sesamum indic
um L.)の種子を用意し、これを75%エタノール
液に数秒間浸漬したのち、殺菌した蒸留水で2回水洗し
た。これを0.1%ベンザルコニウムクロライド塩(甘
槽化学産業(株)製)に2分間浸漬した。殺菌した蒸留
水で3回よく洗浄したのち、1%次亜塩素酸ナトリウム
(和光純薬)、0.1%ツイーン20(和光純薬)を含
む殺菌剤液に30分間浸漬し、殺菌水で水洗して殺菌ご
ま種子を調製した。
【0077】植物培養用のプラスチック製容器(フロー
・ラボラトリー社製)に殺菌水と殺菌したガーゼを入
れ、その上に、予め殺菌したごま種子を播種した。30
℃の恒温室で20ワットの蛍光灯の光のもとで2週間放
置したところ、長さ5〜7cmのごま芽ばえが得られ
た。
【0078】(2)第1表に示した組成の培地21を調
製し、これを等分し、それぞれの100mlに、ジュラ
ンガム(三栄化学工業製)0.2%と、表2に示した実
験条件のサイトカイニン、オーキシンを添加して、増殖
性細胞塊(カルス)の誘導培地とした。これらを常法に
したがい120℃、10分間のオートクレーブ殺菌処理
をした。
【0079】これらの培地を、温かいうちに、直径10
cmのプラスチック製ペトリディッシュにそれぞれ3枚
宛30mlづつ分注し、室温で固化させた。
【0080】これに(1)で調製した、ごま芽ばえを無
菌操作によって、茎、葉を5〜7mmの切片に切断し
て、ペトリディッシュの固型培地上に移植した。水分の
蒸発を防止するためパラフィルム(アメリカン・カン社
製)で封をし、28〜30℃の恒温室に暗所で3週間放
置してごま芽ばえ切片からのカルスの誘導を行ない、表
2で示される第2表の結果を得た。
【0081】
【表2】
【0082】(3)第1表の組成の基本培地に、ジュラ
ンガム0.2%、ナフタレン酢酸5×10−5M、ベン
ジルアデニン1×10−5Mを添加した培地600ml
を、(1)と同様にして殺菌調製した。これをプラスチ
ック製ペトリディッシュ20枚にそれぞれ30ml宛分
注して固化させた。(1)で誘導培養して得た増殖性カ
ルスを、ペトリデッィシュ当り4ケ宛移植した。33〜
36℃、12,000ルクスの光の植物細胞培養装置の
中で、2週間培養を行った。増殖性の良好な細胞集塊を
選抜し、これを種細胞として、33〜36℃で継代培養
を4回くり返した。かくして、高温度で安定に増殖する
培養細胞を育成した。この細胞をNS−HT(ナ
フタレン酢酸5×10−5M、ベンジルアデニン1×1
−5Mで継代培養したごま培養細胞)と命名した。
【0083】(4)第1表の組成の基本培地にジュラン
ガム0.2%、ナフタレン酢酸5×10−5M、ベンジ
ルアデニン1×10−5Mを添加した培地11を、
(1)と同様にして殺菌調製した。これを直径4cm、
深さ13cmの植物細胞培養用のガラス製容器に40m
l宛分注して固化させた。(3)で継代培養して育成し
てごまの増殖性細胞NS−HT細胞の5〜7mm
角を移植して35〜36℃、12,000ルクスの光の
植物細胞培養装置の中で10日間培養を行った。その結
果、培養容器中に増殖した細胞の生重量は平均14.5
gであった。
【0084】この細胞のうち60gを乳ばちに取り、6
gの石英砂を加えて5分間磨砕したのち80%エタノー
ル水溶液200mlを加えてよく撹拌し抗酸化性物質を
抽出した。これを遠心分離(2,500回転/分、10
分間)して上澄液を集め、細胞残渣には再び200ml
の80%エタノール水溶液を加えて抽出した。3回のエ
タノール水溶液による抽出液を集め40℃でロータリエ
バポレーターにて蒸発乾固し、黄褐色の抽出物4.8g
を取得した。
【0085】
【実施例2】第1表に示した組成の培地31を、通気攪
拌装置を備えた51容量の植物細胞培養槽に入れ、オー
トクレーブによって、120℃、2分間加圧殺菌した。
別の300ml三角フラスコに第1表に示した組成の培
地60mlを入れ、同様に殺菌したものに、ごま培養細
胞のシードを添加し、35℃、蛍光灯の光照射下で、振
とう数60往復/分の条件で振とう培養した。7日間培
養したフラスコ5本分の培養細胞を無菌操作によって回
収し、植物細胞培養槽に接種した。植物細胞培養槽の培
養条件は、撹拌数30回転/分、pH5.7±0.1、
通気量1.51/分、光照射8,000ルクス、温度3
5℃で10日間培養した。培養終了液を遠心分離して、
細胞を回収したところ、乾燥重量として39gが取得さ
れた。
【0086】培養して得られたごま細胞を生重量として
500gを用いて抗酸化性物質の抽出精製を行った。す
なわち1.9lのエタノールを加えて、ホモジナイザー
により撹拌しつつ20分間抽出したのち、濾過器によっ
て細胞と抽出液を分離した。細胞残渣に21の80%エ
タノール水を加え、同様に抽出操作を20分間行ったの
ち濾過器によって細胞残渣を分離し、更に21の80%
エタノールで抽出した。
【0087】抽出液を合せて、40℃で減圧濃縮を行い
褐色の粗抽出物12.8gが取得された。
【0088】吸着クロマトグラフ法を用いるアンバーラ
イトXAD−II樹脂を直径5cm、長さ40cmのガ
ラス製カラムに充填して、水を流して平衡化した。これ
に抽出物5gをカラムの上部に樹脂に吸着させた状態で
重層し、水から順次メタノール濃度を増加させる段階溶
出法によって、目的物質の溶出を行った。60%メタノ
ールで溶出される分画を集め、40℃で減圧濃縮したと
ころ、黄褐色の中間精製物の184mgが得られた。こ
れを高速液体クロマトグラフ法を繰返して、単一ピーク
になるまで精製を行った結果、精製物として抗酸化性配
糖体が18mg得られ、その化学構造を構造式(I)で
示されるものであることを確認した。
【0089】実施例で得られた、この粗成分、中間精製
物、および精製物について、それらの抗酸化活性を兎赤
血球ゴースト法により測定したところ、図11に示すよ
うに、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)とほぼ同
程度の強い抗酸化活性が認められた。
【0090】
【試験例1】本発明によって調製した抗酸化性配糖体の
すぐれた抗酸化効果を次のようにして確認した。
【0091】実施例によって得た抽出物100mgを1
00mlの80%エタノール水溶液に溶かし(1mg/
1ml濃度)、抗酸化性物質の分析サンプルとした。こ
れの1mlをサンプルとしてリノール酸の自動酸化の抑
制の程度をロダン鉄法によって測定した。その結果、図
12からも明らかなように、ごま増殖細胞から抽出した
画分(1mg)には、α−トコフェロール(0.2m
g)あるいは、ブチルヒドロキシアニソール(BHA、
0.2mg)に相当する高い活性の抗酸化性物質が含ま
れていることが確認された。
【0092】
【発明の効果】本発明は、高温度増殖性ごま細胞を培養
容器の中で多量に調製し、それによって、ごま細胞中に
含まれている新規抗酸化性配糖体を工業的に大量に生産
することを可能としたものである。したがって本発明の
方法によれば、栽培によらず工業的な手段によって、安
全な食品、医薬品、化粧品として使用される天然物由来
の新規抗酸化性配糖体を計画的に且つ大量に供給するこ
とができるという著効が奏されるのである。
【0093】また本発明によって新規抗酸化性配糖体の
化学構造が解明されたので、これを化学的に修飾、変形
することにより更に新規化合物の創製、新規抗酸化性物
質の開発が可能となる。そして更に、化学合成法による
本化合物の製造法の確立も期待され、抽出法よりも更に
工業的に本化合物を大量生産することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多価不飽和脂肪酸(PUFA)の自動酸化機構
を図示したものである。
【図2】フェノール性抗酸化性物質の構造を図示したも
のである。
【図3】ごまから単離された抗酸化性物質の構造を図示
したものである。
【図4】高温度培養細胞の増殖量と培養温度との関係を
示すグラフである。
【図5】吸着クロマトグラフ法で溶出した中間精製品の
液体クロマトグラフ法による含有成分の組成を示す図面
である。
【図6】液体クロマトグラフ法により精製した抗酸化性
物質のクロマトグラムである。
【図7】精製した抗酸化性物質の紫外線吸収スペクトラ
ムである。
【図8】精製した抗酸化性物質の高速電子衝突マススペ
クトルによる解析図である。
【図9】精製した抗酸化性物質のプロトン核磁気共鳴法
によるスペクトラムである。
【図10】精製した抗酸化性物質の炭素13核磁気共鳴
法によるスペクトラムである。
【図11】兎赤血球ゴースト法によるごま培養細胞から
の粗抽出物、中間精製物、精製物の抗酸化活性を示した
ものである。 ▲:粗抽出物 ●:中間精製物 ◆:精製物 ○:ブチル・ヒドロキシ・アニソール(BHA)
【図12】リノール酸を反応基質とした自動酸化の経過
をロダン鉄法により分析した、リノール酸の酸化曲線で
ある。 −●−:対照区 −○−:α−トコフェロール区 −−△−−:ブチルヒドロキシアニソール区 −◎−:ごま細胞よりの粗抽出物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 7/00 F 47/26 K C12N 5/04 (C12P 19/44 C12R 1:91)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の 【化1】で示される構造式(I)を有する配糖体。 【化1】
  2. 【請求項2】 ごま(Sesamum indicum
    L.)の植物成体から誘導した増殖性細胞を培地に培
    養し、その培養物から、構造式(I)を有する配糖体を
    製造する方法。
  3. 【請求項3】 ごま(Sesamum indicum
    L.)の植物成体から誘導した高温度培養細胞を培地
    に培養し、その培養物から構造式(I)を有する配糖体
    を製造する方法。
  4. 【請求項4】 構造式(I)で示される配糖体を有効成
    分とする抗酸化剤。
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