JPH0759736B2 - プレス成形性と耐泡・黒点欠陥に優れた直接一回掛けほうろう用鋼板 - Google Patents

プレス成形性と耐泡・黒点欠陥に優れた直接一回掛けほうろう用鋼板

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JPH0759736B2
JPH0759736B2 JP63256835A JP25683588A JPH0759736B2 JP H0759736 B2 JPH0759736 B2 JP H0759736B2 JP 63256835 A JP63256835 A JP 63256835A JP 25683588 A JP25683588 A JP 25683588A JP H0759736 B2 JPH0759736 B2 JP H0759736B2
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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、プレス成形性、耐つまとび性が良好で、か
つ、直接一回掛けほうろう時の密着性、ならびに耐泡・
黒点欠陥等のほうろう特性に優れたほうろう用鋼板に関
する。
<従来の技術> ほうろう用鋼板は、流し台、浴槽等に代表されるよう
に、かなり厳しいプレス加工が施されるためかなりの深
絞り性が要求される。さらに、ほうろう密着性、焼成歪
み特性、耐つまとび性、および耐泡・黒点欠陥性を満足
しなければならない。
Ti添加鋼、とくにC含有量を0.005%以下にした場合、
優れたプレス加工性が得られることは特公昭42−12348
号公報、特公昭44−18066号公報などに開示されてい
る。このTi添加鋼は、プレス加工性の他に、優れたほう
ろう特性を兼ね備えており、特公昭45−40655号公報、
特開昭53−131919号公報あるいは特開昭56−9357号公報
等に開示されている。
これらの技術は、良好なプレス加工性とともにほうろう
特性、その中でも耐つまとび性を改善させるための技術
である。すなわち、Tiは炭化物、窒化物および硫化物を
形成する。これらの析出物は、つまとびの原因となる鋼
中の水素をトラップする作用があり、耐つまとび性を向
上させる。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、優れたプレス成形性、耐つまとび性を有
するTi添加鋼でも、特開昭61−276958号公報に記載され
ているような溶接性不良が原因となる欠陥、また特開昭
60−110845号公報で説明されているようにほうろう密着
性、耐泡・黒点欠陥性の点で、従来から用いられている
脱炭キャップド鋼に比較して劣っている等の問題があ
る。溶接性不良については特開昭61−276958号公報で、
Ti添加鋼にSeあるいはTeを微量添加して、溶接部の“ブ
ローホール欠陥”、“ひけ”を抑制し、溶接性の不具合
によって発生する泡欠陥および筋状の欠陥を改善した鋼
板が開示されているが、もう一方のTi添加鋼特有の欠陥
ともいえる溶接部以外での『泡・黒点欠陥発生のしやす
さ』については、いまだ脱炭キャップド鋼なみの耐泡・
黒点欠陥まで改善するに至っていないのが現状である。
また、特開昭63−45322号公報にTi添加鋼を用いたほう
ろう用鋼板の製造方法が記載されている。しかし、その
内容はプレス成形性ならびに耐縦割れ性を改善すること
を主目的としたものであり、ピンホール欠陥やブローホ
ール欠陥等の泡・黒点欠陥は、連続鋳造パウダーのC含
有量、および連続鋳造における引き抜き速度を規定して
改善しているのみである。
しかし、TiとBの添加のみでは泡・黒点欠陥を抑制する
効果が少なく、従来のTi単独添加鋼と泡・黒点欠陥発生
傾向はほとんど変わらない。この理由は、Ti添加鋼では
結晶粒界を強化するCがTiCとして固定され、酸洗性を
増大させるPが結晶粒界へ析出しやすいためと考えられ
た。プレス成形性、耐つまとび性、溶接性を損ねずに従
来の脱炭キャップド鋼と同等またはそれ以上の耐泡・黒
点欠陥性を有する直接一回掛けほうろう用鋼板を提供す
ることを目的としている。
<課題を解決するための手段> 上記目的を達成するために、本発明によれば、重量比に
て、 C:0.005%以下、 Mn:0.10%未満、 P:0.020%以下、 S:0.01〜0.05%、 Al:0.003〜0.100%、 N:0.005〜0.010%、 Cu:0.01〜0.07%、 Se:0.002〜0.050%、 B:0.0001〜0.0030%、 かつ、(4×C(%)+1.5×S(%)+3.43×N
(%))≦Ti(%)≦0.2(%)、残部がFeおよび不可
避的不純物から成る直接一回掛けほうろう用鋼板が提供
される。
また、本発明によれば、重量比にて、 C:0.005%以下、 Mn:0.10%未満、 P:0.020%以下、 S:0.01〜0.05%、 Al:0.003〜0.100%、 N:0.002〜0.010%、 Cu:0.01〜0.07%、 Se:0.002〜0.050%、 B:0.0001〜0.0030%、 REM:0.01〜0.10%、 かつ、(4×C(%)+1.5×S(%)+3.43×N
(%))≦Ti(%)≦0.2(%)、残部がFeおよび不可
避的不純物から成る直接一回掛けほうろう用鋼板が提供
される。
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
まず、本発明の基となった実験の経緯および実験結果の
詳細について説明する。
(実験1) 第1表に示す化学組成をもつ鋼(鋼A〜F)を実験室に
おいて出鋼した後、これらを分塊圧延し、板厚30mmのシ
ートバーとした。次いで温度1250℃の加熱炉に4時間挿
入し、3パスで板厚3.5mm、仕上げ温度860℃になるよう
に熱間圧延し、室温まで空冷(冷却速度約3℃/分)で
冷却した。
これらを酸洗後、冷間圧延を施し、板厚0.8mm(冷延圧
下率約77%)の冷延板とした。次いで脱脂を行ない、加
熱速度;約10℃/秒、均熱温度/時間;860℃/50秒、冷
却速度;約8℃/秒のヒートサイクルで再結晶焼鈍を行
なった。その後、第2表に示す工程(工程1〜12)でほ
うろう前処理[酸洗時間1〜60分、Ni浸漬時間1〜30分
(Ni付着量2〜60mg/dm2)]、および直接一回掛けのほ
うろう施ゆう、820℃/3分の焼成を施した。
その後、目視判定により泡・黒点欠陥の発生傾向を調査
した。また、PEI密着試験[P.E.I.(米国ほうろう協
会)が推奨する密着試験方法(ASTM:C313−59)]によ
り、ほうろう密着性を測定した。その結果を第1図
(a)〜(f)に示す。比較材として同様のほうろう加
工を施した脱炭キャップド鋼(鋼G)の結果も第1図
(g)に示した。
図内の記号は、下記に示すほうろう密着性、泡・黒点欠
陥発生の結果を表わしている。
:PEI密着性<85%、 泡・黒点欠陥発生−なし、または小 ○:PEI密着性≧85%、 泡・黒点欠陥発生−なし、または小 ●:PEI密着性≧85%、 泡・黒点欠陥発生−大 Se、BおよびREM添加なしのTi単独添加の鋼(鋼A)お
よびTi+B添加の鋼(鋼F)で酸洗時間が10分超でNi付
着量が20mg/dm2超、酸洗時間が15分超およびNi付着量が
15mg/dm2超、あるいは酸洗時間が20分超(低Ni付着量は
除く)、そのいずれも満たすようなほうろう前処理条件
下での鋼板は、泡・黒点欠陥が発生しやすかった。ま
た、Ti+Se添加鋼(鋼B)で、酸洗時間が15分超で、Ni
付着量30mg/dm2超、酸洗時間が20分超で、Ni付着量20mg
/dm2超、あるいは酸洗時間が30分超、そのいずれも満た
すようなほうろう前処理条件下での鋼板は、泡・黒点欠
陥が発生しやすかった。また、Ti+Se+B添加鋼(鋼
C)は酸洗時間が30分超で、Ni付着量が30mg/dm2超の前
処理条件または酸洗時間40分超の前処理条件になると、
泡・黒点欠陥が発生した。
しかしながら、Mnを0.10%未満に低減したTi+Se+B添
加の鋼板(鋼D)およびBとREMの複合添加の鋼板(鋼
E)は、脱炭キャップド鋼(鋼G)と高Mn+Ti+Se+B
添加鋼(鋼C)に比べ、はるかに長い酸洗時間の前処理
条件下でも泡・黒点欠陥が発生しないことが判明した。
また、低Mn+Ti+Se+B+REMを添加した鋼(鋼E)は
低Mn+Ti+Se+B添加の鋼(鋼D)に比較し、短時間酸
洗の前処理条件でのほうろう密着性が良好であった。
つぎに、泡・黒点欠陥の発生傾向におよぼすB添加量の
効果について検討した実験、および結果を以下に説明す
る。
(実験2) 重量比にて、 C:0.002%、 P:0.005%、 S:0.02%、 Al;0.02%、 N:0.006%、 Cu:0.03%、 Se:0.009%、 Ti:0.08%、 O:0.003% Mnを0.05%、0.30%の2水準とした鋼に、Bをそれぞれ
0、0.0001、0.0004、0.00080、0.0020、0.0040%添加
した鋼を(実験1)と同じ工程で熱延、冷延、焼鈍を行
ない冷延鋼板とした後、第2表に示す前処理工程で酸洗
時間1〜60分、Ni浸漬時間20分のほうろう前処理を行な
った鋼板に直接一回掛けのほうろう施ゆう、焼成を施
し、泡・黒点欠陥発生が[中以上]になる酸洗時間とB
添加量の関係を調査し、比較鋼として(実験1)に示し
た脱炭キャップド鋼の結果も併せて第2図に示した。そ
の結果、高MnでB添加なしのTi添加鋼は15分の酸洗時間
で、評価が[中以上]の泡・黒点欠陥発生であるのに対
して、Mnを0.05%に低減し、Bを添加したTi添加鋼はB
量が0.0001wt%以上で脱炭キャップド鋼とMn:0.30%のT
i添加鋼に比べて同等以上の優れた耐泡・黒点欠陥性で
あった。
上記泡・黒点欠陥発生の理由は、以下のように考えられ
る。本来、結晶粒界に析出し、結晶粒界を強化するCが
Tiを添加することによってTiCになり、固定されてしま
い、そのため結晶粒界は、酸洗速度を増大するPが粒界
偏析しやすくなり、ほうろう前処理工程の酸洗時に優先
的に鋼板表面の結晶粒界が腐食され、かつ、粒界腐食が
進んだ後、さらに水平方向の粒内へと腐食が進行し、鋼
板表面の性状(粗い凹凸、スマットの堆積、過剰のNi析
出等)を劣化させる。このような粗い凹凸、スマットの
堆積、過剰のNi析出等がほうろうゆう薬の施ゆう→乾燥
→焼成初期段階に泡・黒点の原因となる空隙を形成し、
表面性状が荒れているほど粗大泡を発生してしまうもの
と考えられる。
これらの粗大泡は、泡欠陥となり、また泡の上方が口を
開いたものは焼成中、大気中の酸素を取り込み、鋼板界
面を異常酸化させ、黒点欠陥を生じさせるものと考えら
れる。
本実験で得られたようなBを添加することで泡・黒点欠
陥が抑制された理由は、以上のことを考えた場合、結晶
粒界にCのかわりにBが析出し、Pの粒界偏析を抑制す
ることができたためと考えられ、とくにSeが添加されて
いることでSeが結晶粒内に固溶し、Bを優先的に結晶粒
界へ析出させることができたためと考えられる。よっ
て、Bを0.0001wt%以上添加した鋼板は、泡・黒点欠陥
発生傾向を緩和することができたものと考えられる。
しかし、0.0001wt%未満ではその効果はあまり認められ
なかった。
つぎに、泡・黒点欠陥発生におよぼすBとSe添加の効果
について調査した実験、および結果について以下に述べ
る。
(実験3) 重量比にて、 C:0.003%、 P:0.01%、 S:0.02%、 Al;0.03%、 N:0.006%、 Cu:0.03%、 Ti:0.100%、 O:0.003% を基本組成とし、Mn:0.03%でB:0.0001%、または0.001
0%を添加した鋼と、Mn:0.26%でB:0.0008%を添加した
鋼に、Seを0〜0.025%添加した鋼を実験室で溶解、出
鋼して(実験1)と同じ工程で熱延、冷延、焼鈍を行な
い冷延鋼板とした後、第2表に示す前処理工程で酸洗時
間1〜60分、Ni浸漬時間20分のほうろう前処理を行なっ
た鋼板に直接一回掛けのほうろう施ゆう、焼成を施し、
泡・黒点欠陥発生が[中以上]になる酸洗時間とSe添加
量の関係を調査し、比較鋼として(実験1)に示した脱
炭キャップド鋼(鋼G)と0.26%Mn+0.0008%B、添加
鋼(鋼C)の結果も併せて第3図に示した。
その結果、Seが添加されていない鋼はB添加量の多少に
かかわらず、泡・黒点欠陥が発生しやすかった。しかし
ながら、Seが添加された鋼板の泡・黒点欠陥の発生傾向
はSeが微量であっても泡・黒点欠陥は改善された。すな
わち、0.002wt%以上の添加で泡・黒点欠陥発生限界時
間は、脱炭キャップド鋼と同等またはそれ以上となっ
た。
(実験4) 次に、泡・黒点欠陥発生におよぼすMn量の影響について
調査した実験、および結果について以下に述べる。
重量比にして、 C:0.002%、 P:0.01%、 S:0.02%、 Al:0.03%、 N:0.008%、 Cu:0.03%、 Ti:0.08%、 O:0.004%、 Se:0.008%、 B:0.001%、 を基本組成とし、Mnを0.02〜0.30%添加した鋼を実験室
で溶解、出鋼して(実験1)と同じ工程で熱延、冷延、
焼鈍を行い冷延鋼板とした後、第2表に示したような前
処理工程で酸洗時間:1〜60分、Ni浸漬時間:20分のほう
ろう前処理を行なった鋼板に直接一回掛けのほうろう施
ゆう、焼成を施し、泡・黒点の発生が[中以上]になる
酸洗時間とMn量の関係を調査した。また比較鋼として
(実験1)に示した脱炭キャップド鋼の結果も併せて第
4図に示した。
その結果、Mn量が減少するに従い、泡・黒点欠陥発生の
限界時間は長時間側に移動する傾向にあった。特に、Mn
量が0.10%未満の領域では著しく改善された。また、0.
10%以上の添加では泡・黒点欠陥発生傾向であった。
この理由については今だ明らかではないが、おそらく鋼
中の固溶Mnの減少により、酸洗速度が遅くなり、ほうろ
う前処理工程の硫酸酸洗時に酸洗生成物(スマット)の
生成、付着が抑制されたためと考えられる。すなわち、
このスマットの鋼板表面への付着が抑制されたことによ
って、ほうろう焼成時に、ほうろうと鋼板との“ぬれ
性”が改善され、また界面反応が促進されたことによる
ものと考えられる。
つぎに、本発明で鋼成分組成の含有量を限定した理由を
以下に説明する。
C: Cは、侵入型固溶元素であり、0.005wt%超の含有量の
場合、材質を著しく硬化させてしまう。本発明はTi添加
鋼であり、CはTiCの析出物となり固溶Cを減少させ、
材質を改善することができるが、本質的にC量が増大す
ると微細なTiCが析出しやすくなって、材質を劣化させ
ることから、本発明ではC含有量の上限を0.005wt%と
した。
Mn: Mnは、通常、熱間圧延時の割れの原因になるSをMnSと
して固定するとともに、ほうろう前処理工程の酸洗時に
ほうろう密着性を良好ならしめる鋼板表面の凹凸を形成
させる上につまとび欠陥となる水素をトラップするのに
有効な元素であるとされる。しかしながら、本発明では
Tiが添加されていることからMnSは析出せずMnは固溶状
態にある。
Mnが固溶状態にあると、材質劣化を起こす他、Mnの添加
はいたずらに溶鋼コストを上昇させてしまうことから好
ましくない。また、泡・黒点欠陥に対しても非常に大き
な影響を与え、0.10%以上の含有では、ほうろう前処理
において酸洗速度をはやめ、酸洗生成物(スマット)が
多量に生成し、鋼板表面に付着・堆積し、ほうろう焼成
時、鋼板とほうろうの“ぬれ性”を低下させ、泡・黒点
欠陥を発生しやすくなる。また、界面反応を抑制し、密
着性を著しく劣化させてしまうことから本発明ではMnの
範囲を0.10%未満とした。
P: 0.020wt%超のPの含有は、材質を硬化させ、プレス成
形性を劣化させるばかりでなく、ほうろう前処理時の酸
洗速度を速め、泡・黒点欠陥の原因となるスマットを増
加させてしまうことの他に、2次加工脆性を劣化させて
しまうことから、本発明でのP含有量の上限を0.020wt
%とした。また、下限についてはとくに規定しないが、
極端に低い含有量にするには溶鋼コストを大幅に上昇さ
せてしまうことから、0.0005wt%程度までが好ましい。
S: Sは、本発明においてTiS、CuS等の析出物を形成する。
これらの析出物は、ほうろう密着性を良好ならしめる鋼
板表面の緻密な凹凸を形成する他、つまとび欠陥の原因
となる水素をトラップする効果を有する。しかし、これ
らの効果を引き出すには少なくとも0.01wt%の含有が必
要である。ところが、0.05wt%超の含有はSを固定する
Tiの含有量を増大させなければならなくなり、溶鋼コス
トが増大し、材質的にも不利となることから、本発明で
のS含有量を0.01〜0.05wt%とした。
Al: Alは、製鋼段階において脱酸剤として用いられることか
ら有効な元素であり、脱酸を十分に行なうには少なくと
も0.003wt%含有するように添加する必要がある。しか
し、Alは高価な元素であり、0.100wt%超の多量の添
加、および含有はコストアップにつながることから、上
限は0.100wt%が望ましい。
そこで、本発明のAl含有量の範囲を0.003〜0.100wt%と
した。
N: Nは、通常、Cと同様に鋼中に固溶し、材質を劣化させ
る元素であるが、本発明はTi添加鋼であり、NはTiNの
析出物を形成し固定することから材質面ではとくに問題
にはならない。またこの析出物はつまとび欠陥の原因と
なる水素をトラップするボイドを形成することからN含
有量は多い方が好ましく、つまとび欠陥を防止するには
最低限0.005wt%以上の含有が必要である。しかしなが
ら、0.010wt%超の含有はTi添加量を増大しなければな
らなくなり、必然的にコストアップを招いてしまう。よ
って本発明でのN含有量の範囲を0.005〜0.010wt%とし
た。
しかし、REMが添加された場合にはTiN以外に水素のトラ
ップサイトが形成されるため、0.005wt%以下のN含有
量としてもつまとび欠陥が発生しなくなる。それでも最
低限0.002wt%の含有量は必要であることから、REMが添
加された場合のN含有量の範囲を0.002〜0.010wt%とし
た。
Cu: Cuは、ほうろう前処理の酸洗時の酸洗速度をコントロー
ルするのに有効な元素であり、とくに本発明のようなTi
添加鋼は脱炭キャップド鋼に比較し、その酸洗速度は2
〜3倍程度速いことからCuの含有は重要である。その効
果を引き出すには、少なくとも0.01wt%以上の含有が必
要である。しかし、本発明の成分系において0.07wt%超
のCu含有量では、酸洗速度が遅くなりすぎ、短時間酸洗
側でのほうろう密着性を低下させてしまうことから本発
明のCu含有量の範囲を0.01〜0.07wt%とした。
Se: 本発明でSeを添加する理由は、溶接性、とくにTi添加鋼
は鋼中のO含有量が少なく表面張力が大きいため溶接部
の形状が悪い(凹み部が形成される)ので溶鋼の粘性を
小さくし、溶接後の突き合わせ部の形状を改善するため
である。また、Seは結晶粒内に固溶し、Bを優先的に結
晶粒界へ析出させ、泡・黒点欠陥の発生原因となる結晶
粒界の腐食を抑制させる効果をも持っている。しかしな
がら、0.002wt%未満の含有量ではそれらの効果がな
く、また酸洗速度を増大させ、泡・黒点欠陥を発生しや
すくなるため好ましくない。
一方、0.050wt%超の含有量では、ほうろう前処理の酸
洗性が悪くなり、ほうろう密着性に有利な緻密な凹凸が
鋼板表面に形成されにくくなるので好ましくない。
よって、本発明ではSeの含有量を0.002〜0.050wt%とし
た。
B: Bは、本発明の主たる目的のために添加する元素であ
り、その目的は本来結晶粒界に析出し結晶粒界を強化す
るCがTi添加によってTiCとして固定されてしまい、結
晶粒界は酸洗速度を増大するPが粒界偏析しやすくな
り、ほうろう前処理工程の酸洗時に優先的に鋼板表面の
結晶粒界が酸洗され、泡・黒点発生の起点が形成されて
しまうのを防止するためである。
すなわち、Bを添加することで結晶粒界にCのかわりに
Bを析出させ、Pの粒界偏析を抑制するためである。し
かし、0.0001wt%未満ではその効果はなく、また0.0030
wt%超の含有量では、鋼板の機械的特性を著しく劣化さ
せてしまうことから、本発明でのB含有量を0.0001〜0.
0030wt%とした。
Ti: Tiの含有量を(4×C(wt%)+1.5×S(wt%)+3.4
3×N(wt%))≦Ti(wt%)≦0.2(wt%)とした理由
は、固溶状態にしておくと著しく鋼板の機械的特性を劣
化させてしまうC、S、NをTiC、TiS、TiN等の析出物
にするためである。そして、その効果を引き出すために
は、少なくとも(4×C(wt%)+1.5×S(wt%)+
3.43×N(wt%))以上の含有が必要であることからで
ある。しかし、0.2wt%超の含有は酸洗速度の上昇、ス
マット量の増大により、泡・黒点欠陥が発生しやすくな
るからである。
REM: REMは硫化物を形成し、Ti系の析出物と同様に水素をト
ラップし、耐つまとび性を向上させることが可能であ
り、REMを添加することで泡・黒点欠陥の主たる原因と
考えられるTi量を低減することを可能とする。その効果
の現れるREMの含有量は少なくとも0.01wt%は必要であ
る。しかし、0.10wt%超の含有は酸洗速度を増大させ、
泡・黒点欠陥が発生しやすくなることから本発明での上
限を0.10wt%とした。
その他、不可避的不純物については極力その含有を控え
たほうが望ましいが、とくに本発明においてその含有量
は制限しない。
つぎに、本発明鋼板の製造条件の一例について述べる。
本発明において熱延条件は、通常Ar3変態点以上の温度
で熱間圧延を終了しても、Ar3変態点以下の低温仕上を
行ってもほうろう特性にはあまり影響はないが、鋼板の
機械的特性を重要視する場合には熱延仕上げ温度はAr3
変態点以上にするのが望ましい。
また、巻取温度についても機械的特性を確保したい場合
には高温とくに550℃以上にするのが好ましい。しか
し、650℃超の巻取温度ではスケール層が厚くなり脱ス
ケール性(酸洗性)が低下することから上限は650℃程
度とするのが望ましい。
冷延条件: 冷延条件もまた本発明では規定するものではないが、機
械的特性、とくに絞り性(値)の良好な冷延鋼板を製
造する場合には、冷延圧下率を70%以上にするのが好ま
しい。
連続焼鈍: 再結晶焼鈍は、短時間で焼鈍工程を完了することができ
る上、ほうろう特性に悪影響をおよぼす鋼中元素の表面
濃化、粒界偏析を抑制することができる連続焼鈍が望ま
しい。
また、再結晶が完全でないと加工性を著しく損ない、プ
レス加工等を行なった場合にプレス割れを起こすこと、
一方、Ac3変態点超の温度では再結晶集合組織がランダ
ム化し、絞り性が低下することから、焼鈍温度は、再結
晶温度以上、Ac3変態点以下の温度域とする。
<実施例> 以下に本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
第3表に示した化学組成の連続鋳造スラブを1200℃で3
時間加熱保持し、粗圧延で板厚30mmのシートバーとした
後、タンデム圧延機で仕上げ温度860℃、板厚3.5mmの熱
延板とし、620℃で巻き取った。酸洗後、4スタンドの
冷間圧延機で板厚0.8mmの冷延板とし、連続焼鈍ライン
に通板し、加熱速度10℃/s、均熱温度860℃、均熱時間
3分間、冷却速度20℃/sのヒートサイクルで再結晶焼鈍
を行なった。ついで、圧下率0.5%の調質圧延を施し
た。
その後、これらの鋼板に第1表に示したようなほうろう
前処理[酸洗時間1〜60分、Ni浸漬時間5分]、および
直接一回掛けのほうろう施ゆう、820℃/3分の焼成を施
した。
その後、目視判定により泡・黒点欠陥の発生傾向[小、
中、大]を調査し、評価が[中以上]になる泡・黒点欠
陥発生限界の酸洗時間で表した。
また、PEI密着試験[P.E.I.(米国ほうろう協会)が推
奨する密着試験方法(ASTM:C313−59)]により、ほう
ろう密着性を測定した。
耐つまとび性は、それぞれ3枚(n数=3)脱脂後の鋼
板に酸洗時間20秒、Ni浸漬なしの前処理を施し、市販の
下引きゆう薬を施ゆう、乾燥を行ない、820℃/3分の焼
成を行なった後、つまとび発生の促進処理(160℃/16時
間)を行ない、つまとび発生枚数を観察し、評価した
(発生枚数:0の場合、0/3で表わした)。
機械的特性は、焼鈍後の鋼板をJIS5号引張試験片に加工
し、圧延方向に対して0゜、45゜および90゜方向の降伏
点(YS)、引張強さ(TS)、伸び(El)、降伏伸び(YE
l)、r値(ランクフォード値)を測定し、その平均値
[0゜値+2×45゜値+90゜値)/4]で評価した。これ
らの結果を第4表に示した。
その結果、本発明成分系で製造されたほうろう用冷延鋼
板(鋼1、2、3、4、12、15、17)は、鋼18に示した
従来の脱炭キャップド鋼に比較し、プレス成形性、溶接
性に優れ、かつ耐つまとび性、耐泡・黒点性、密着性等
のほうろう特性に関して、同等またはそれ以上であるこ
とが判明した。しかし、鋼14はP含有量が本発明範囲外
であるため15〜20分ですでに泡・黒点欠陥が発生した。
鋼5は、Mn量が多くBが添加されてないため15分程度の
酸洗時間で泡・黒点が発生した。鋼9はSe含有量が本発
明範囲超のため密着性が悪かった。鋼13はCu含有量が本
発明範囲超のため、酸洗減量が低下し密着性が低下し
た。鋼10および11はSeが添加されていないため、溶接部
に“ひけ”を生じた上に、酸洗速度が速かったため、泡
・黒点欠陥が生じやすかった。また、鋼7はC含有量が
0.005wt%超のため機械的特性が著しく悪かった。鋼8
は、N含有量が少ないためつまとび欠陥が発生し、ま
た、Mn量が多いため、泡・黒点欠陥が発生しやすかっ
た。また、鋼16はN含有量が少ない上にREMの添加量も
少ないことからつまとび欠陥が発生した。
鋼6は、Bの添加量が多すぎ、機械的特性の劣化が著し
かった。
また、鋼16は、REMの添加量が本発明の範囲より少ない
ため、つまとび欠陥が発生した。
<発明の効果> 本発明は、以上説明したような鋼組成で構成されている
ので、Ti添加鋼であるにもかかわらず、直接一回掛けの
ほうろう掛けでも従来の脱炭キャップド鋼および従来の
Ti添加鋼以上のプレス加工性で、かつ泡・黒点欠陥が発
生しにくい直接一回掛けほうろう用鋼板を提供すること
ができる。
また、本発明により、従来造塊法で製造されていた高級
ほうろう用鋼板が連続鋳造法によって製造し得ることに
なり、コストおよび省エネルギーの点からも非常に大き
なメリットがもたらされる。
なお、本発明鋼板は、直接一回掛けの用途ばかりでな
く、下引き一回掛け、2回掛けほうろう用の鋼板に用い
ても何らその特性に変りはない。
【図面の簡単な説明】
第1a図、第1b図、第1c図、第1d図、第1e図および第1f図
はそれぞれ成分系の異なるTi添加鋼の、第1g図は脱炭キ
ャップド鋼の、密着性と泡・黒点欠陥発生傾向におよぼ
す酸洗時間とNi付着量の関係を示す図である。 第2図は泡・黒点欠陥発生限界酸洗時間とB添加量の関
係を示す図である。 第3図は泡・黒点欠陥発生限界時間とSe添加量の関係を
示す図である。 第4図は泡・黒点欠陥発生限界時間とMn量の関係を示す
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阿部 英夫 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内 (56)参考文献 特開 昭63−45322(JP,A) 特開 昭58−197254(JP,A) 特開 昭56−9357(JP,A) 特開 昭61−276958(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比にて、 C:0.005%以下、 Mn:0.10%未満、 P:0.020%以下、 S:0.01〜0.05%、 Al:0.003〜0.100%、 N:0.005〜0.010%、 Cu:0.01〜0.07%、 Se:0.002〜0.050%、 B:0.0001〜0.0030%、 かつ、(4×C(%)+1.5×S(%)+3.43×N
    (%))≦Ti(%)≦0.2(%)、残部がFeおよび不可
    避的不純物から成る直接一回掛けほうろう用鋼板。
  2. 【請求項2】重量比にて、 C:0.005%以下、 Mn:0.10%未満、 P:0.020%以下、 S:0.01〜0.05%、 Al:0.003〜0.100%、 N:0.002〜0.010%、 Cu:0.01〜0.07%、 Se:0.002〜0.050%、 B:0.0001〜0.0030%、 REM:0.01〜0.10%、 かつ、(4×C(%)+1.5×S(%)+3.43×N
    (%))≦Ti(%)≦0.2(%)、残部がFeおよび不可
    避的不純物から成る直接一回掛けほうろう用鋼板。
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