JP4003392B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車外板用パネル等に使用される耐ブリスター性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車用鋼板等に溶融亜鉛めっきを施した極低炭素系BH鋼板が用いられるようになってきた。BH鋼板とは、固溶C、Nによるひずみ時効を利用してプレス成形後の塗装焼付処理(170℃×20分程度)で成形品の強度を高める鋼板である。極低炭素系BH鋼板は主に自動車外板用として使用されるため、防錆性能およびプレス成形での潤滑性能の観点から鋼板に溶融亜鉛めっきが施されるが、その鋼板表面の性状に対する要求レベルは高い。
【0003】
しかし、実際には、溶融亜鉛めっきラインの還元炉内において鋼板中に侵入した水素が、溶融亜鉛めっきを施した後の常温状態において過飽和となり、その一部が鋼板表面に拡散してめっき層と鋼板の界面で水素ガスを生成する。そして、その生成した水素ガスによってめっき層が押し上げられ、ブリスターと呼ばれるふくれが生じる場合があることが従来から指摘されている。
【0004】
従来、このブリスターを防止するため様々な方法が提案されている。例えば、特公平5−26863号公報にはブリスター状欠陥の防止方法として、TiおよびNを添加することにより鋼板中にTiNを生成させ、鋼板の水素吸蔵能力を高める技術が開示されている。
【0005】
特開平9−13156号公報では、鋼帯を溶融亜鉛めっき浴に導入する際、還元帯域から溶融亜鉛めっき浴までの間の一部の雰囲気条件を規定した不活性ガス帯を設けることで、ブリスターの発生がない溶融亜鉛めっき熱延鋼板を安定的に製造することを開示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公平5−26863号公報の技術では、同技術の範囲内のTi、N添加量では連続鋳造後のスラブ表面にクラックが発生し、スラブ手入れによる研削量が多くなり、製造歩留まりが悪化する場合がある。また、本発明者らによる研究の結果では、単にTi、Nを添加しだけではブリスター状欠陥の発生を十分に抑制できないことが明らかとなった。
【0007】
また、特開平9−13156号公報の技術では、不活性ガス帯のような特別な設備改造が必要であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、自動車外板用パネル等に好適な溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法、具体的には連続鋳造後のスラブ表面にクラックが発生し難く、プレス成形時に高い成形性を有するとともにプレス成形後の塗装焼付熱処理により強度が上昇し、かつ、めっきふくれの発生しない耐ブリスター性が優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋼成分系および製造方法について詳細に検討した結果、
▲1▼TiとNをTi+3.42N:0.06%以下とすることで、連続鋳造後のスラブ表面の クラック発生を防ぐことができる。
▲2▼直径200nm以上のTi系析出物中のTi量を8×10-3mass%以上となるように 制御することによって、Ti系析出物が溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層とマトリック スとの界面に集積した水素の有効なトラップサイトになりブリスターの発生が防止できる 。
▲3▼鋼成分を適正な範囲にすることにより、自動車外板用パネル等に好適なBH量を有する溶 融亜鉛めっき鋼板が得られる。
という事実を見出し、本発明に至った。
【0010】
さらに、TiとNの関係式から得られる温度TRでスラブを加熱することにより、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量を8×10-3mass%以上となるように制御することができることも見出した。
【0011】
本発明は以上の知見に基づくものであり、以下のような特徴を有する。
【0012】
[1] mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、Sol.Al:0. 01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつTi+3.42N: 0.06%以下で、さらに下式(1)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%であり、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量が、8×10-3mass%以上である鋼板を母材鋼板とし、めっきを施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
【0013】
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%) …(1)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%)(Ti*(%)<0のときTi*(%) =0)
[2] mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、Sol.Al:0. 01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、Nb:0.005%〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつTi+3.42N:0.06%以下で、さらに下式(2)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%であり、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量が、8×10-3mass%以上である鋼板を母材鋼板とし、めっきを施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
【0014】
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%)−(12/93)Nb(%) …(2)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%) (Ti*(%)<0のときTi*(%) =0)
[3] mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、Sol.Al:0. 01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつTi+3.42N: 0.06%以下で、さらに下式(1)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%である成分組成を有する連続鋳造されたスラブを下式(3)を満たす温度TRに加熱し、次いで熱間圧延工程、冷間圧延工程および溶融亜鉛めっき工程を順次施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0015】
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%) …(1)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%) (Ti*(%)<0のときTi*(%)=0)
1100(℃)≦TR(℃)≦{15790/(5.40―log Z)}−273(℃) …(3)
ここで、Z=Ti(%)N(%)−1.13×10-3×[2(Ti(%)+(48/14)N(%))−1.55×10-2]
[4] mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、Sol.Al:0. 01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、Nb:0.005%〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物か らなり、かつTi+3.42N:0.06%以下で、さらに下式(2)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%である成分組成を有する連続鋳造されたスラブを下式(3)を満たす温度TRに加熱し、次いで熱間圧延工程、冷間圧延工程および溶融亜鉛めっき工程を順次施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0016】
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%)−(12/93)Nb(%) …(2)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%) (Ti*(%)<0のときTi*(%)=0)
1100(℃)≦TR(℃)≦{15790/(5.40―log Z)}−273(℃) …(3)
ここで、Z=Ti(%)N(%)−1.13×10-3×[2(Ti(%)+(48/14)N(%))−1.55×10-2]
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%はすべてmass%である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
まず、めっき鋼板の母材鋼板の鋼成分について限定理由を説明する。
【0019】
C:Cは固溶CまたはNb、Tiの炭化物として鋼板中に存在する。Cが0.005%を超えると延性が劣化するため、0.005%以下とする。さらに延性を向上させるためにはCは0.002%以下が望ましい。
【0020】
Si:Siは固溶強化元素として添加される。しかし0.1%を超えると鋼板の表面性状が著しく劣化するため、0.1%以下とする。
【0021】
Mn:MnはSによる熱間脆性を改善する目的および強度調整のため固溶強化元素として添加される。しかし0.1%未満では強度が不十分でありかつMnS形成不足のため熱間圧延時の脆性割れを引き起こす可能性がある。また、1%を超えるとプレス時の成形性の低下を招く可能性がある。以上の理由により、0.1〜1%とする。
【0022】
P:Pは固溶強化元素として添加される。0.1%を超えると延性が劣化し、さらに粒界偏析を起こし二次加工時の割れを招くため、0.1%を上限とする。
【0023】
S:0.003%未満では熱間圧延での脱スケール性が低下して表面欠陥の原因となり、0.02%を超えると硫化物が多く析出し加工性が劣化する。以上より、0.003〜0.02%とする。
【0024】
sol.Al:sol.Alは脱酸材として添加するが、0.01%未満では脱酸材としての役割をなさない。しかし0.1%を超えると鋼中の介在物が増加し延性が劣化する。以上の理由により、0.01〜0.1%とする。
【0025】
N:NはTiにより析出物として固定され、溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層とマトリックスとの界面に集積した水素の有効なトラップサイトとなる。Nが0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.005%を超えるとTi添加量の増加によるコスト高を招く。以上の理由により、0.001〜0.005%とする。さらに望ましくはブリスター抑制の有効なトラップサイトとなり得るためには0.002%以上とする。
【0026】
Ti:TiはN、S、CをTi系析出物として固定するために添加する。0.01%未満ではTi系析出物形成による耐ブリスター性効果は小さく、0.04%を超えると固溶Cが少なくなりBH量が不十分となる。以上の理由により、0.01%以上0.04%以下とする。さらに、耐ブリスター性の向上のためには0.020%以上が望ましい。
【0027】
Nb:Nbは炭化物形成元素であり、固溶Cを析出せしめるために必要に応じて添加する。Nbは0.005%未満では炭化物形成効果はなく、0.01%を超えると硬質化し伸びが劣化する。以上の理由により、0.005%以上0.01%以下の添加が望ましい。
【0028】
Ti+3.42N:Ti+3.42Nは化学量論的なTiN析出物の量を示す。Ti+3.42Nが0.06%を超えると連続鋳造後のスラブ表面にクラックが発生し、スラブ手入れによる研削量が多くなり、製造歩留まりが悪化する場合があるためTi+3.42Nは0.06%を上限とする。
【0029】
C*:C*は鋼板にBH特性を付与する固溶Cであり、下記式によって規定される。C*は0.0005%未満ではBH量が不十分となり、0.003%を超えるとプレス時の加工性が劣化するため0.0005%以上0.003%とする。
Nb無添加の場合;C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%)
Nb添加の場合 ;C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%)−(12/93)Nb(%)
ただしTi*は、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%) (Ti*(%)<0のときTi*(%)=0)
Ti系析出物:Ti系析出物は、溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層とマトリックスとの界面に集積した水素の有効なトラップサイトになり、ブリスターの発生を防止することができる。しかし、直径200nm未満のTi系析出物では、格子と析出物間が整合となり、トラップサイトとしての作用が不充分であり、ブリスタ−の発生を充分に抑制することができない為、本発明において規定の対象とするTi系析出物は、直径200nm以上のものとする。
【0030】
また、図1は直径200nm以上の析出物中のTi量とブリスタ−の発生との関係を示す図である。ここで、図1において、ブリスタ−の判定は目視にて行い、○はブリスター無し、×はブリスター有りとした。図1によると、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量が、8×10-3mass%以上となると、ブリスタ−の発生を十分に防止できることがわかる。これは、直径200nm以上の析出物中のTi量が8×10-3mass%未満では、直径200nm以上のTi系析出物量が少なくなり、ブリスターを抑制できなくなる為と考えられる。以上より、直径200nm以上の析出物中のTi量が8×10-3mass%未満では、溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層とマトリックスとの界面にブリスターが発生し表面性状が悪化するため、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量は、8×10-3mass%以上とする。
【0031】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、以上のような母材鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する。
【0032】
次に製造方法の限定理由について説明する。
【0033】
本発明で規定した成分(C、Si、Mn、P、S、Sol.Al、N、Ti、(またはさらにNb)、Ti+3.42N、C*)で連続鋳造されたスラブを下式を満たす温度TRで加熱することにより、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量を8×10-3mass%以上となるように制御することができる。
【0034】
1100(℃)≦TR(℃)≦{15790/(5.40―log Z)}−273 (℃)
ここで、Z=Ti(%)N(%)−1.13×10-3×[2(Ti(%)+(48/1 4)N(%))−1.55×10-2]
上式は、理論的に溶解度曲線より求められるTi系析出物中のTi量をもとに、TiとNの関係から得られる式である。また、スラブ加熱温度が1100℃未満では圧延負荷が大きすぎるため望ましくなく、式の下限は1100℃以上とする。
【0035】
以上の理由により、上式を満足する温度TRでスラブを加熱することにより、溶融亜鉛めっき鋼板の亜鉛めっき層とマトリックスとの界面に集積した水素の有効なトラップサイトなり得るTi系析出物のサイズと量を制御する事ができ、ブリスターの発生防止に寄与することができる。
【0036】
スラブを加熱後、次いで熱間圧延、冷間圧延および溶融亜鉛めっきを施し溶融亜鉛めっき鋼板を得る。その一実施態様について説明すると、まず熱間圧延については、熱延仕上げ温度は、冷延・焼鈍後のr値を確保するという観点からAr3〜920℃とするのが望ましい。Ar3未満では表層に粗大粒が発生し、一方920℃超では粒成長を起こすためいずれもr値を劣化させる。巻取温度は、650℃以下とするのが望ましい。650℃を超える温度では脱スケール性が劣化し、鋼板の表面性状が劣化する。
【0037】
次いで、常法に従って冷間圧延を行なう。冷間圧延率は、70%未満では焼鈍後の高r値の確保が不十分となり、85%を超えると深絞り加工後の耳の発生が顕著になることがあるため70〜85%とするのが望ましい。
【0038】
次に目的に応じ、連続焼鈍法により再結晶焼鈍を行なう。連続焼鈍温度は、800〜860℃に保持することが望ましい。800℃未満ではBH量が不十分となり、860℃超では固溶Cが多くなり耐常温時効性が劣化することがある。高温保持後600℃以下まで5〜20℃/secの冷却速度で冷却することが望ましい。5℃/sec未満では固溶Cが少なくなり、BH量が不十分となることがある。20℃/sec超では固溶Cが多くなり、耐常温時効性が劣化することがある。
【0039】
次いで常法に従って溶融亜鉛めっきを施す。ここで、溶融亜鉛めっきとは、亜鉛系めっき、亜鉛―アルミ系合金めっき等が挙げられる。
【0040】
次いで100℃以下で調質圧延を行なうことが望ましい。調質圧延時の温度が100℃を超えると動的ひずみ時効および巻取り後の時効により耐常温時効性が劣化することがある。調質圧延率は、1.0〜2.0%で行なうことが望ましい。1.0%未満では調質圧延の効果が不十分であり、2.0%を超えると加工硬化により加工性が劣化することがある。
【0041】
なお、本発明により得られる鋼板は自動車外板用に限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
次に実施例について述べる。
(実施例1)
表1に示す成分にて鋳造されたスラブをスラブ加熱温度1150℃で加熱し、次いで熱延仕上温度890〜920℃、熱延巻取温度640℃にて熱間圧延を行なった。さらに、圧延率70〜85%で冷間圧延を行ない、連続焼鈍を行った。連続焼鈍に際しては約25℃/secで昇温し810〜850℃で約60sec均熱保持した。その後、溶融亜鉛めっきを施し、調質圧延率1.4%、鋼板表面温度は約80℃で調質圧延を行い溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0043】
【表1】
【0044】
得られためっき鋼板に対しての機械的性質および特性評価結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
機械的性質は、JIS5号型試験片を圧延方向に対して直角方向で採取したものを用いて引張試験により求めた。BH量は2%の予ひずみ後の応力を除荷重して170℃で20分間加熱保持後、再荷重した際のYPの変化量を評価した。
【0047】
また表面性状の評価方法としてブリスター発生は目視にて判定した([ブリスター無し]○⇔×[ブリスター有り])。
【0048】
直径200nm以上のTi系析出物中のTi量は、めっき鋼板を10%アセチルアセトンを溶媒として用い定電位電解によって溶解し、メッシュ径200nmのメッシュを用いて析出物を抽出し、その残さ中のTi量を化学分析することにより測定した。
【0049】
表面クラックは、連続鋳造後のスラブ表面のクラックを評価し、深さ2mm以上のクラックが発生した場合を×、発生しない場合を○と判定した。
【0050】
表2より明らかなように、本発明例の鋼番号1〜5はBH量が30MPa以上、かつ連続鋳造後のスラブ表面のクラックが2mm未満、かつ、ブリスターがなく、めっき表面の表面性状は良好である。
【0051】
図2は本発明例1及び4におけるスラブ加熱温度とブリスタ−の発生との関係を示す図である。図2より、鋼の成分によりスラブ加熱温度の適正範囲は異なり、成分中のTiとNの関係式から得られる本発明範囲内でスラブ加熱を行うことによりブリスタ−の発生を完全に防止できることがわかる。
【0052】
一方、比較例の鋼番号6はC濃度が本発明範囲を外れるため延性が劣っている。比較例の鋼番号7はP濃度が本発明範囲を外れるため延性がよくない。比較例の鋼番号8はNb濃度が本発明範囲を外れるため固溶Cの大部分がNbCとして析出してしまい、BH量が不十分である。比較例の鋼番号9はTi濃度が本発明範囲を外れるためTi系析出物を構成するTi量が8×10-3mass%未満となりめっき表面にブリスター状欠陥が現われ、表面性状がよくない。比較例の鋼番号10は(Ti+3.42N)が本発明範囲を外れるため連続鋳造後のスラブ表面に深さ2mm以上のクラックが発生し、スラブ手入れによる研削量が多くなり、製造歩留まりが悪化する。
(実施例2)
表1、鋼番号1に示す成分にて鋳造されたスラブをスラブ温度を変化させて加熱し、次いで熱延仕上温度890〜920℃、熱延巻取温度640℃にて熱間圧延を行なった。さらに、圧延率75%で冷間圧延を行ない、連続焼鈍を行った。連続焼鈍に際しては約25℃/secで昇温し810〜850℃で約60sec均熱保持した。その後、溶融亜鉛めっきを施し、調質圧延率1.4%、鋼板表面温度は約80℃で調質圧延を行い溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0053】
得られためっき鋼板に対しての機械的性質および特性評価結果をスラブ加熱温度と併せて表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
機械的性質測定および表面性状の評価方法は表2と同様である。
【0056】
表3より明らかなように、符号1〜3および符号7〜10で示す本発明例はスラブ加熱温度TRが本発明範囲内であるためTi系析出物を構成するTi量が8×10-3mass%以上となり、めっき表面にブリスター状欠陥がない表面性状が良好な溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
【0057】
一方、符号4〜6および符号11、12で示す比較例はスラブ加熱温度TRが本発明範囲外であるためTi系析出物を構成するTi量が8×10-3mass%未満となり、めっき表面にブリスター状欠陥が多数現われ表面性状が劣っている。
【0058】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、連続鋳造後のスラブ表面にクラックが発生し難く、プレス成形時に高い成形性を有するとともにプレス成形後の塗装焼付熱処理により強度が上昇し、かつ、めっきふくれの発生しない耐ブリスター性が優れた溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。このため、本発明により得られる溶融亜鉛めっき鋼板は自動車外板用パネル等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】直径200nm以上の析出物中のTi量とブリスタ−の発生との関係を示す図
【図2】本発明例1及び4におけるスラブ加熱温度とブリスタ−の発生との関係を示す図
Claims (4)
- mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、Sol.Al:0.01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつTi+3.42N:0.06%以下で、さらに下式(1)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%であり、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量が、8×10-3mass%以上である鋼板を母材鋼板とし、めっきを施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%) …(1)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%)(Ti*(%)<0のときTi*(%) =0) - mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、 Sol.Al:0.01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、Nb:0.005%〜0.01%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつTi+3.42N:0.06%以下で、さらに下式(2)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%であり、直径200nm以上のTi系析出物中のTi量が、8×10-3mass%以上である鋼板を母材鋼板とし、めっきを施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%)−(12/93)Nb(%) …(2)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%)(Ti*(%)<0のときTi*(%) =0) - mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、 Sol.Al:0.01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつTi+3.42N:0.06%以下で、さらに下式(1)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%である成分組成を有する連続鋳造されたスラブを下式(3)を満たす温度TRに加熱し、次いで熱間圧延工程、冷間圧延工程および溶融亜鉛めっき工程を順次施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%) …(1)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%) (Ti*(%)<0のときTi*(%)=0)
1100(℃)≦TR(℃)≦{15790/(5.40―log Z)}−273(℃) …(3)
ここで、Z=Ti(%)N(%)−1.13×10-3×[2(Ti(%)+(48/14)N(%))−1.55×10-2] - mass%で、C:0.005%以下、Si:0.1%以下、Mn:0.1%〜1%、P:0.1%以下、S:0.003%〜0.02%、Sol. Al:0.01%〜0.1%、N:0.001%〜0.005%、Ti:0.020%〜0.04%、Nb:0.005%〜0.01%、残部がFeおよび不可避 的不純物からなり、かつTi+3.42N:0.06%以下で、さらに下式(2)によるC*(%)が0.0005%〜0.003%である成分組成を有する連続鋳造されたスラブを下式(3)を満たす温度TRに加熱し、次いで熱間圧延工程、冷間圧延工程および溶融亜鉛めっき工程を順次施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
C*(%)=C(%)−(12/48)Ti*(%)−(12/93)Nb(%) …(2)
ただし、Ti*(%)=Ti(%)−(48/14)N(%)−(48/32)S(%) (Ti*(%)<0のときTi*(%)=0)
1100(℃)≦TR(℃)≦{15790/(5.40―log Z)}−273(℃) …(3)
ここで、Z=Ti(%)N(%)−1.13×10-3×[2(Ti(%)+(48/14)N(%))−1.55×10-2]
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