JPH0734246U - デファレンシャル装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 車両の前進時と後進時の差動制限力差を大き
くする。 【構成】 この考案のデファレンシャル装置７は、エン
ジンにより回転駆動されるデフケース２１と、デフケー
ス２１に形成された収納孔５１に摺動回転自在に収納さ
れたヘリカルピニオンギヤ５３と、ヘリカルピニオンギ
ヤを介して連結された車輪側のヘリカルサイドギヤ３
７，３９と、デフケース２１側に形成され同一のトルク
方向でヘリカルサイドギヤ３７，３９の噛合いスラスト
力を受ける円錐状の摺動部６３，６５とを備えたことを
特徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、車両のデファレンシャル装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

特公昭６１−５１６９６号公報に図４のようなデファレンシャル装置２０１が 記載されている。これは、デフケース２０３に設けられた収納孔２０５に収納さ れたヘリカルピニオンギヤ２０７とこれと噛合ったヘリカルサイドギヤ２０９と 、他の収納孔に収納されヘリカルピニオンギヤ２０７と噛合った他のヘリカルピ ニオンギヤと、このヘリカルピニオンギヤと噛合った他のヘリカルサイドギヤ２ １１とを備えている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

この種のデファレンショル装置２０１の差動は、各ピニオンギヤの噛合い反力 によって収納孔との間に生じる摩擦抵抗と、サイドギヤ２０９，２１１の噛合い スラスト力によって生じる摩擦抵抗とにより制限される。サイドギヤ２０９，２ １１の噛合いスラスト力は伝達トルクの方向（車両の前進と後進あるいはエンジ ンブレーキ作動）により方向が変わり、この方向変化によって摩擦抵抗（差動制 限力）に差が生じる。一般に車両の前進時の差動制限力を大きくし、前進中のエ ンジンブレーキ使用時に相当する後進時はＡＢＳ（アンチロックブレーキシステ ム）との干渉を避けるために差動制限力を小さくしたい。しかし、デファレンシ ャル装置２０１ではサイドギヤ２０９，２１１との摺動部材に前進時はスラスト ブロック２１３であり、後進時はワッシャ２１５，２１５であって、前後進間の 差動制限力差を充分に大きくできない。

【０００４】 そこで、この考案は、車両の前後進間の差動制限力差を充分に大きくできるデ ファレンシャル装置の提供を目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

この考案のデファレンシャル装置は、エンジンの駆動力により回転駆動される デフケースと、デフケースに形成された収納孔に摺動回転自在に収納されたヘリ カルピニオンギヤと、ヘリカルピニオンギヤを介して連結された一対の車輪側ヘ リカルサイドギヤと、デフケース側に形成され同一のトルク方向で各サイドギヤ の噛合いスラスト力を受ける円錐状の摺動部とを備えたことを特徴とする。

【０００６】

【作用】

例えば車両の前進時はヘリカルサイドギヤが噛合いスラスト力によってデフケ ース側の円錐状の摺動部に押付けられ、摺動部とサイドギヤ間のコーンクラッチ 機能によって大きな差動制限力が得られ、後進時の差動制限力との差を大きくす ることができる。こうして、例えば車両の前進時には差動制限力を大きくして操 安性を高め、前進中のエンジンブレーキ使用時（トルクの方向は後進時に相当） はＡＢＳとの干渉を避けることができる。

【０００７】

【実施例】

図１と図３とにより第１実施例の説明をする。図１はこの実施例を示し、図３ はこの実施例を用いた車両の動力系を示す。左右の方向はこの車両及び図１での 左右の方向であり、符号を附していない部材等は図示されていない。

【０００８】 図３のように、この動力系は、エンジン１、トランスミッション３、プロペラ シャフト５、リヤデフ７（後輪側に配置された実施例のデファレンシャル装置） 、後車軸９，１１、左右の前輪１３，１５、左右の後輪１７，１９などから構成 されている。

【０００９】 リヤデフ７のデフケース２１はデフキャリア２３内に配置されており、デフケ ース２１にはリングギヤ２５が固定されている。リングギヤ２５はドライブピニ オンギヤ２７と噛合っており、ドライブピニオンギヤ２７はプロペラシャフト５ 側に連結されたドライブピニオンシャフト２９と一体に形成されている。こうし て、エンジン１の駆動力はトランスミッション３からプロペラシャフト５を介し てデフケース２１を回転駆動する。デフキャリア２３にはオイルが封入され、オ イル溜まりが形成されている。

【００１０】 図１のように、デフケース２１は本体３１と、ボルト３３により本体３１に固 定されたカバー３５とからなっている。デフケース２１の内部には中空のヘリカ ルサイドギヤ３７，３９が配置されている。各サイドギヤ３７，３９はカバー３ ５と本体３１とに形成された軸支部４１，４３により回転自在に支承されており 、互いの間に形成された軸支部４５により各自由端を支承して互いにセンターリ ングしている。左右のサイドギヤ３７，３９はそれぞれ左右の後車軸９，１１側 に軸方向移動自在にスプライン連結されており、サイドギヤ３７の左端部及びサ イドギヤ３９の右端部とデフケース２１との間にはワッシャ４７，４７が配置さ れている。又、サイドギヤ３７の内周には後車軸９，１１を突き合わせるスラス トブロック４９が配置されている。

【００１１】 デフケース２１には長い収納孔５１と短い収納孔が４組周方向等間隔に形成さ れており、長い収納孔５１には長いヘリカルピニオンギヤ５３が摺動回転自在に 収納され、短い収納孔には短いヘリカルピニオンギヤが摺動回転自在に収納され ている。長いピニオンギヤ５３は第１と第２のギヤ部５５，５７とこれらを連結 する小径の軸部５９とからなり、第２のギヤ部５７は右のサイドギヤ３９と噛合 っている。又、短いピニオンギヤの左端部は第１のギヤ部５５と噛合い、右端部 は左のサイドギヤと噛合っている。

【００１２】 デフケース２１の本体３１内周には、長短の収納孔の間に、４個のデーパ部材 ６１がスプライン連結されている。各テーパ部材６１の内周には軸方向内側に向 って小径になる円錐状の摺動部６３，６５が形成されており、各サイドギヤ３７ ，３９の歯先はこれらの摺動部６３，６５に沿って円錐状に成形されている。

【００１３】 デフケース２１には各収納孔に連結する開口６７，６９，７１が設けられ、デ フキャリア２３のオイル溜まりのオイルはデフケース２１の回転に伴ってこれら の開口６７，６９，７１からデフケース２１に流出入し、収納孔の壁面、ギヤの 噛合い部、摺動部６３，６５、ワッシャ４７、軸支部４１，４３，４５などを潤 滑する。

【００１４】 こうして、リヤデフ７が構成されている。

【００１５】 デフケース２１を回転させるエンジン１の駆動力は各ピニオンギヤからサイド ギヤ３７，３９を介して左右の後輪１３，１５に分割され、後輪間に駆動抵抗差 が生じるとピニオンギヤの回転によりエンジン１の駆動力は左右各側に差動分配 される。

【００１６】 このようにトルクを伝達している間各ピニオンギヤは噛合い反力により各収納 孔の壁面に押付けられて摩擦抵抗が生じる。

【００１７】 サイドギヤ３７，３９は互いに反対方向のねじれ角が与えられており、ピニオ ンギヤとの噛合いスラスト力は車両が前進する時のトルクの方向で矢印７３，７ ５のように内向きになり、車両が後進する時あるいは前進中にエンジンブレーキ を掛けた時のトルクの方向で矢印７７，７９のように外向きになる。

【００１８】 噛合いスラスト力が外向きの時各サイドギヤ３７，３９はワッシャ４７を介し デフケース２１に押付けられて摩擦抵抗が生じる。又、噛合いスラスト力が内向 きの時各サイドギヤ３７，３９はそれぞれ摺動部６３，６５に押付けられる。こ の摺動部６３，６５は上記のように円錐状をしているからコーンクラッチと同様 の制動機能を持っており、噛合いスラスト力を受けて大きな摩擦抵抗を発生する 。このような噛合い反力と噛合いスラスト力によって生じる摩擦抵抗によりリヤ デフ７の差動が制限される。この差動制限力は上記の理由により車両の前進時に は後進時に較べて非常に大きくなり、前後進間での差動制限力差は充分に大きく なる。

【００１９】 図３の車両が悪路などを走行中に後輪の一方が空転した時リヤデフ７の大きい 差動制限力により、他方の後輪に大きな駆動力が送られて悪路走破性が高く保た れる。又、良路走行中サイドギヤ３５，３７には適度なトルクが掛りリヤデフ７ の差動制限力が緩やかになり、車両は安定で円滑な走行性と旋回性とが得られる 。又、エンジンブレーキを掛けるとトルクの方向が後進時と同じになってリヤデ フ７の差動制限力が小さくなり、ＡＢＳとの干渉が避けられる。

【００２０】 次に、図２と図３とにより第２実施例の説明をする。この実施例のデファレン シャル装置は図３の車両のリヤデフ８１として用いられている。図２と以下の説 明の中で第１実施例の部材と同機能の部材には同一の符号が与えられている。又 、左右の方向は図３の車両及び図２での左右の方向であり、符号を附していない 部材は図示されていない。

【００２１】 デフケース２１の本体３１内周には、長短の収納孔の間に、４個のテーパ部材 ８３がスプライン連結され、カバー３５と本体３１とに挾まれて固定されている 。各テーパ部材８３の内周には軸方向外側に向かって小径になる円錐状の摺動部 ８５，８７が形成されている。

【００２２】 左右のヘリカルサイドギヤ８９，９１は長いピニオンギヤ５１と短いヘリカル ピニオンギヤとを介して連結されており、軸支部４１，４３によりデフケース２ １に支承され、軸支部９３を介して互いの自由端を支承している。各サイドギヤ ８９，９１はそれぞれ左右の後車軸９，１１に軸方向移動自在にスプライン連結 されており、互いの間にはワッシャ９５が配置されている。

【００２３】 サイドギヤ８９，９１の歯先は上記の摺動部８５，８７に沿って円錐状に成形 されている。サイドギヤ８９，９１は互いに反対方向のねじれ角が与えられてお り、ピニオンギヤとの噛合いスラスト力は車両の前進時に矢印９７，９９のよう に外向きになり、後進時あるいは前進中のエンジンブレーキ使用時は矢印１０１ ，１０３のように内向きになる。

【００２４】 噛合いスラスト力が内向きの時各サイドギヤ８９，９１はワッシャ９５を介し 互いに押圧し合って摩擦抵抗が生じる。又、外向きの時各サイドギヤ８９，９１ はそれぞれ摺動部８５，８７に押付けられ、そのコーンクラッチ機能により内向 き時に較べて大きな摩擦抵抗が発生する。

【００２５】 このような噛合いスラスト力による摩擦抵抗と、ピニオンギヤの噛合い反力に よる摩擦抵抗によってリヤデフ８１の差動が制限される。この差動制限力は車両 の前進時に非常に大きく悪路走破性や操安性が向上し、前進中にエンジンブレー キを掛けた時は差動制限力が小さくなりＡＢＳとの干渉が避けられる。

【００２６】

【考案の効果】

この考案のデファレンシャル装置は、例えば車両が前進駆動されている時サイ ドギヤの噛合いスラスト力を受ける円錐状の摺動部をデフケース側に設けたから 、前進時は差動制限力が大きくなって操安性などが向上し、前進中にエンジンブ レーキを掛けた時は差動制限力が小さくなってＡＢＳとの干渉が防止される。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１実施例の断面図である。

【図２】第２実施例の断面図である。

【図３】各実施例を用いた車両の動力系を示すスケルト
ン機構図である。

【図４】従来例の断面図である。

【符号の説明】

７，８１ リヤデフ（デファレンシャル装置） ２１ デフケース ３７，３９，８９，９１ ヘリカルサイドギヤ ５１ 収納孔 ５３ ヘリカルピニオンギヤ ６３，６５，８５，８７ 摺動部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジンの駆動力により回転駆動される
   デフケースと、デフケースに形成された収納孔に摺動回
   転自在に収納されたヘリカルピニオンギヤと、ヘリカル
   ピニオンギヤを介して連結された一対の車輪側ヘリカル
   サイドギヤと、デフケース側に形成され同一のトルク方
   向で各サイドギヤの噛合いスラスト力を受ける円錐状の
   摺動部とを備えたことを特徴とするデファレンシャル装
   置。