JPH07317056A - ソイルセメント杭の造成方法及び造成装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 攪拌刃による掘削土壌とセメントミルクとの
攪拌を効率良く行わせることができるソイルセメント杭
の造成方法を提供する。 【構成】 内管５の先端に掘削刃７を設け、内管５側に
設けた上向きの攪拌刃１１，１２と、外管６に設けた、
上向き攪拌刃１１，１２と軸方向にラップし周方向には
ラップしない下向きの攪拌刃１７とからなる攪拌部８を
備え、掘削刃７部分と攪拌部８の上部側とにそれぞれセ
メントミルク噴出孔を備えた造成装置を用い、掘進時に
は、少なくとも内管５を回転させながら掘削刃７により
地盤を掘削しつつ、掘削刃７部分の噴出孔よりセメント
ミルクを噴出して掘進し、所定深度に達すると、内管５
を逆転して内外両管５，６を引き上げながら、攪拌部８
上部側の噴出孔よりセメントミルクを噴出してソイルセ
メント杭を造成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、地盤を掘削し、その掘
削土壌にセメントミルクを注入し攪拌して、地盤中にソ
イルセメント杭を造成する方法及び装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種のソイルセメント杭造成方
法にあっては、内管とこれに外嵌された外管とからな
り、内管には先端部に掘削刃とその手前に横方向に突出
する攪拌刃を設けると共に、外管には内管側の攪拌刃か
ら隔たった先端部に横方向に突出する攪拌刃を設けてな
る造成装置を使用し、内管を回転させてその先端の掘削
刃により地盤を掘削しながら所定深度まで掘進し、その
後、内管と外管とを互いに逆転させて両管を引き上げな
がら、内管先端の掘削刃部分に設けた１つのセメントミ
ルク噴出孔よりセメントミルクを噴出して、ソイルセメ
ントの杭を造成している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記従来方法によれ
ば、特に粘土質の土壌を掘削するときに、その掘削粘土
が内管側攪拌刃、外管側の攪拌刃、更にはこれら両攪拌
刃間の内管外周部に付着し、またこの粘土の付着と共
に、ソイルセメントが付着し、このソイルセメントは、
内外管の回転に伴って共回りしながら雪だるま状に成長
して、攪拌刃の攪拌作用を妨げ、攪拌効率を著しく低下
させていた。また、セメントミルクを、内管先端の掘削
刃の部分に設けた１つのセメントミルク噴出孔のみから
噴出させるようにしているため、特に内外管の引き上げ
時に、掘削された土壌に対してセメントミルクが的確に
供給されない。つまり、この内管先端の噴出孔から噴出
されたセメントミルクは、加圧抵抗の比較的少ない管外
周面域に沿って上昇する傾向にあって、肝心な攪拌刃の
回転作用領域への供給が不十分となり、そのためセメン
トミルクと掘削土壌との攪拌が十分に行えない。

【０００４】本発明は、攪拌刃による掘削土壌とセメン
トミルクとの攪拌を十分且つ効率良く行わせることがで
きると共に、掘削された土壌へのセメントミルクの供給
を的確に行わせることができるソイルセメント杭の造成
方法及び装置を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明のソイルセメント杭造成方法は、内管５と
外管６とからなり、内管５の先端に掘削刃７を設け、内
管５側に設けた上向きの攪拌刃１１，１２と、外管６に
設けた、前記上向き攪拌刃１１，１２と軸方向にラップ
し周方向にはラップしない下向きの攪拌刃１７とからな
る攪拌部８を備え、前記掘削刃７の部分と前記攪拌部８
の上部側とにそれぞれセメントミルク噴出孔を備えた造
成装置を用いて、掘進時には、少なくとも内管５を回転
させながらその先端の掘削刃７により地盤を掘削しつ
つ、前記掘削刃７部分の噴出孔よりセメントミルクを噴
出して掘進し、所定深度に達すると、内管５を逆転して
内管５及び外管６を引き上げながら、前記攪拌部８上部
側の噴出孔よりセメントミルクを噴出してソイルセメン
ト杭を造成するものである。

【０００６】この造成方法においては、掘進時及び引き
上げ時に、内管５と外管６とを互いに逆方向に回転させ
ることが望ましい。

【０００７】また、本発明のソイルセメント杭造成装置
は、先端に掘削刃７を有する正逆回転駆動可能な内管５
と、この内管５に外嵌された正逆回転駆動可能な外管６
と、内外両管５，６に亘って設けられた攪拌部８とを備
え、前記攪拌部８は、内管５側に設けられた複数の上向
き攪拌刃１１，１２と、この上向き攪拌刃１１，１２と
軸方向にラップし周方向にはラップしないように外管６
側に設けられた複数の下向き攪拌刃１７とからなり、前
記掘削刃７の部分及び前記攪拌部８の上部側にそれぞれ
セメントミルク噴出孔を設けてなるものである。

【０００８】このソイルセメント杭造成装置において、
好ましくは、各攪拌刃１２，１７を、その基端部を中心
に一定角度範囲内で傾倒可能に設けるとよい。

【０００９】また、このソイルセメント杭造成装置にお
いては、攪拌部８の上部側には内管５側または外管６側
に複数の攪拌枠２９を設けることができる。

【００１０】更に、このソイルセメント杭造成装置にお
いては、内管５の内部にセメントミルク供給路９を設け
ると共に、このセメントミルク供給路９を、前記掘削刃
７の部分に設けたセメントミルク噴出孔と、前記攪拌部
８の上部側に設けたセメントミルク噴出孔とに択一的に
連通連結するための供給路切り換え機構３６を設けるよ
うにしてもよいし、あるいは内管５の内部に、前記掘削
刃７の部分に設けたセメントミルク噴出孔にセメントミ
ルクを供給するセメントミルク供給路９を設け、内管５
と外管６との間に、前記攪拌部８の上部側に設けたセメ
ントミルク噴出孔にセメントミルクを供給する別のセメ
ントミルク供給路４３を設けるようにしてもよい。

【００１１】更に、このソイルセメント杭造成装置にお
いて、掘削刃７の部分のセメントミルク噴出孔は、内管
５内部のセメントミルク供給路９に連通して横方向に配
設されたセメントミルク分配管３４に設けた複数の噴出
ノズル３５からなるものがよく、また同様に攪拌部８の
上部側のセメントミルク噴出孔は、内管５内部のセメン
トミルク供給路９に連通して横方向に配設されたセメン
トミルク分配路３２に設けた複数の噴出ノズル３３から
なるものがよい。

【００１２】

【作用】先ず、掘進にあたり、少なくとも内管５を所定
の方向に回転させながら、その先端の掘削刃７によって
地盤を掘削しつつ、掘削刃７側のセメントミルク噴出孔
よりセメントミルクを噴出して、掘進してゆく。このと
き、攪拌部８の上向き攪拌刃１１，１２と下向き攪拌刃
１７とが軸方向に互いにラップした状態で、少なくとも
上向き攪拌刃１１，１２が内管５の周りを回転して、掘
削土壌とセメントミルクとを混合攪拌する。

【００１３】この場合、上向き攪拌刃１１，１２と下向
き攪拌刃１７とが、軸方向に互いにラップした状態で内
管５周りを相対回転するため、互いにラップした上向き
攪拌刃１１，１２と下向き攪拌刃１７とによって、それ
らの間に介在する土壌やセメントミルクあるいはそれら
の混合物に対し十分且つ強力な剪断作用が働き、それに
より土壌とセメントミルクとを十分に攪拌混合し、土壌
やソイルセメントの塊を作ることがない。

【００１４】しかして、掘進が所定深度に達すると、内
管５を逆転して内管５及び外管６を引き上げながら、攪
拌部８上部側のセメントミルク噴出孔よりセメントミル
クを噴出してソイルセメント杭を造成してゆく。このと
きも、攪拌部８の上向き攪拌刃１１，１２と下向き攪拌
刃１７とが軸方向に互いにラップした状態で、上向き攪
拌刃１１，１２が内管５周りを回転して、掘進時に予め
混合されたソイルセメントを更に攪拌すると共に、未だ
混合されていない掘削土壌とセメントミルクとを混合攪
拌する。

【００１５】この場合、上向き攪拌刃１１，１２と下向
き攪拌刃１７とが軸方向にラップした状態で相対回転す
るため、互いにラップした上向き攪拌刃１１，１２と下
向き攪拌刃１７とによって、それらの間に介在する土壌
やセメントミルク更にはそれらの混合物たるソイルセメ
ントに対し十分且つ強力な剪断作用が働き、それにより
土壌とセメントミルク、あるいはソイルセメントを更に
細かく攪拌混合することができる。しかもこの場合、セ
メントミルクが、攪拌部８の上部側のセメントミルク噴
出孔から、掘進時に掘削された土壌に的確に噴出され、
それにより掘削土壌とセメントミルクとを効率良く攪拌
混合することができる。また、土壌が粘土質のあるとき
にその粘土が攪拌刃１１，１２，１７や内管５の部分に
多少付着することがあっても、その付着物がそれ以上拡
大することがなく、またソイルセメントが攪拌刃１１，
１２，１７や内管５の部分に付着しても、その付着ソイ
ルセメントに対して、互いにラップした上向き攪拌刃１
１，１２と下向き攪拌刃１７とによる剪断作用が働き、
そのためソイルセメントが攪拌刃１１，１２，１７や内
管５と共に、共回りしたり、連れ回りすることがなく、
土壌とセメントミルク、あるいはソイルセメントの攪拌
混合を十分に効率良く行うことができる。

【００１６】

【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、
図１は、本発明を実施するためのソイルセメント杭造成
装置の全体概略側面図、図２〜図６は、それぞれ同造成
装置の攪拌部を含む装置要部の詳細図である。先ず、図
１において１は、クローラクレーン２に立設支持された
リーダ、３は、回転駆動装置（図示省略）を装備した昇
降機枠で、リーダ１に昇降自在に支持されると共に、リ
ーダ１頂部から昇降操作用ワイヤー４により吊支されて
いる。５は内管（破線で示す）、６は内管５に相対回転
可能に外嵌された外管で、これら内外両管５，６は、前
記回転駆動装置にそれぞれ正逆回転駆動可能に連動連結
されて、昇降機枠３の下部から垂下されている。内管５
の先端には掘削刃７が設けられ、この内管５と外管６と
の先端部に攪拌部８が設けられている。

【００１７】図２〜図６を参照すると、内管５は、中心
軸線に沿ってそのほぼ全長に亘り形成されたセメントミ
ルク供給路９を有し、この供給路９には、図示は省略す
るが、昇降機枠３に配備された周知のセメントミルク供
給手段によって内管５の上端部側からセメントミルクが
導入される。内管５の先端部はピン１０により着脱可能
な着脱管部５ａを形成しており、この着脱管部５ａに前
記掘削刃７が設けられ、この掘削刃７は、刃台７ａと、
この刃台７ａ及び着脱管部５ａ先端に取付けられたビッ
ト７ｂ，７ｃとからなる。そして、刃台７ａには、図２
及び図５に示すように、上向き攪拌刃１１，１２が内管
５（着脱管部５ａ）を挟んでその両側対称位置に例えば
４本上向きに垂設されている。

【００１８】外管６は、その下端部が図２、図３及び図
６の各図の上部にわずかに図示されているが、この外管
６の下端からは、一対の縦長状フレーム１３，１３が、
この外管６下端から突出した内管５部分を両側から挟む
ように連設されている。各フレーム１３の上端部は取付
片１４を介して外管６に固着され、その下端部は取付板
１５に固着され、この取付板１５は、内管５に相対回転
可能に外嵌された筒状体１６に固着されている。従っ
て、両側一対の縦長状フレーム１３，１３は、外管６の
回転に伴ってこれと一体に回転することができる。

【００１９】また図２〜図６に示すように、縦長状フレ
ーム１３の下端部が固着されている取付板１５の下面に
は、複数本の、例えば８本の下向き攪拌刃１７が、前記
上向き攪拌刃１１，１２と軸方向にはラップする（図
２、図６参照）が、周方向にはラップしないように（図
４、図５参照）、内管５（着脱管部５ａ）を挟んでその
両側対称位置に下向きに垂設されている。しかして、こ
れら上向き攪拌刃１１，１２と下向き攪拌刃１７とによ
って前記攪拌部８が構成される。尚、上向き攪拌刃１
１，１２及び下向き攪拌刃１７は、それぞれ相当長く形
成されていて、図２、図６に示すように、軸方向に十分
ラップし得るように配設されている。

【００２０】前記上向き攪拌刃１２及び下向き攪拌刃１
７は、それぞれ基端部を中心に一定角度範囲内で傾倒し
得るように刃台７ａ、取付板１５に取付けてある。図７
（Ａ）、（Ｂ）は、これら上向き攪拌刃１２及び下向き
攪拌刃１７の取付状態を示したもので、例えば上向き攪
拌刃１２について説明すると、この上向き攪拌刃１２は
基端部に取付台座１８を一体に有し、この取付台座１８
は、テーパ軸１９と一体に形成された受け座２０に嵌合
されてこれにボルト２１で連結される。しかして、取付
けにあたっては、取付板１５の開口部２２に下側から筒
状取付枠２３を嵌装し、この筒状取付枠２３内に、上向
き攪拌刃１２と一体に連結したテーパ軸１９を、ゴム製
の軸受部材２４を介して挿入すると共に、受け座２０と
筒状取付枠２３との間にリング状のクッションゴム２５
を介装し、上記テーパ軸１９の先端部にナット２６を螺
合し、また筒状取付枠２３の下端にカバー２７を取付け
る。下向き攪拌刃１７についても全く同様である。

【００２１】上記のように、上向き攪拌刃１２及び下向
き攪拌刃１７は、その基端側に一体に連結したテーパ軸
１９がゴム製の軸受部材２４により、また受け座２０が
リング状クッションゴム２５によってそれぞれ弾性的に
支持されるため、或る一定の横荷重を受けると、ゴム製
軸受部材２４及びクッションゴム２５が弾性変形して、
テーパ軸１９の部分を中心に一定角度範囲内で傾転する
ことができる。上向き攪拌刃１２及び下向き攪拌刃１７
は、側面視では図７（Ａ）のように全長に亘り幅が一定
であるが、正面視では同図（Ｂ）のように先細りテーパ
状となっている。これらの攪拌刃１２，１７は、刃台７
ａや取付板１５に着脱可能に取付けられるため、地盤の
土質に応じて所望形状のものと取り替えて使用すること
ができる。また、これらの攪拌刃１２，１７には、刃長
さ方向と直交するような突起部（羽根部）を突設するこ
ともできる。

【００２２】また、図２、図３及び図６に示すように、
攪拌部８の上部側に位置する内管５の部分には、セメン
トミルク供給路切り換え用の管体２８が、内管５に対し
一定角度範囲内で相対回転可能に外嵌され、この管体２
８には一対の縦長状攪拌枠２９が、それぞれ取付台板３
０を介して当該管体２８の両側対称位置に取付けられて
いる。各取付台板３０は、管体２８から横方向に突出す
ると共に図示のように所定角度傾斜した状態で取付けら
れている。そして、この取付台板３０内部には、管体２
８に貫設された連通路３１に通じるセメントミルク分配
路３２が設けられ、この分配路３２に、セメントミルク
噴出孔としての複数の噴出ノズル３３が設けられてい
る。各噴出ノズル３３は、図２、図６に示すように、取
付台板３０の傾斜角度に対応して斜め下向きに開口して
いる。一方、掘削刃７の設けられた内管５の先端部、即
ち着脱管部５ａには刃台７ａの下面側に、セメントミル
ク供給路９に連通して横方向に延びる一対のセメントミ
ルク分配管３４が、着脱管部５ａの両側対称位置に配設
され、各分配管３４にセメントミルク噴出孔としての複
数の噴出ノズル３５が設けられている。

【００２３】前記内管５内部のセメントミルク供給路９
は、攪拌部８の上部側に設けられた供給路切り換え機構
３６によって、掘削刃７側のセメントミルク噴出孔（噴
出ノズル３５）と、攪拌部８上部側のセメントミルク噴
出孔（噴出ノズル３３）とに択一的に連通連結されるよ
うに切り換えられる。以下に、この供給路切り換え機構
３６について、図６及び図８〜図１０を参照して説明す
る。

【００２４】上記供給路切り換え機構３６は、内管５の
部分に回転可能に外嵌された前記セメントミルク供給路
切り換え用管体２８を含んで構成されるもので、図６、
図８（Ａ）、図１０（Ａ）に示す示すように、管体２８
の内周面に環状のガイド溝３７が周設され、このガイド
溝３７に沿って摺動可能なガイド片３８が内管５の外周
部に設けられ、このガイド片３８は、ガイド溝３７に設
けられた一対のストッパー片３９ａ，３９ｂ間の９０度
の角度範囲内を往復摺動することができる。そして、管
体２８が外嵌されている内管５の部分にはセメントミル
ク供給路９に通じる上下各一対ずつの連通路４０，４１
が設けられ、また管体２８には前記攪拌部８上部側のセ
メントミルク噴出孔に連通する前記連通路３１の他に、
内管５側の上下の連通路４０，４１を相互に連結する両
側一対のバイパス路４２が設けられている。

【００２５】前記管体２８は内管５に対し両ストッパー
片３９ａ，３９ｂ間の９０度の角度範囲内で回転自在で
あるから、内管５が回転駆動装置によって例えば図８
（Ａ）の矢印で示す時計回りに回転駆動されると、ガイ
ド片３８が一方のストッパー片３９ａに当接し、それに
よって管体２８は内管５と共に一体回転し、また内管５
が図１０（Ａ）の矢印で示す反時計回りに回転駆動され
ると、ガイド片３８が前記一方のストッパー片３９ａに
当接した位置から反時計回り方向へ９０度回動して、他
方のストッパー片３９ｂに当接し、管体２８は内管５と
共に反時計回りに一体回転することになる。

【００２６】しかして、前記ガイド片３８が一方のスト
ッパー片３９ａに当接して管体２８が内管５と共に時計
回りに回転（正転）するときは、図８及び図９に示すよ
うに、内管５のセメントミルク供給路９及び連通路４
０，４１と、管体２８のバイパス路４２とが連通連結さ
れると共に、連通路３１が閉鎖され、それによってセメ
ントミルク供給路９にその上流から送給されてくるセメ
ントミルクは、掘削刃７側のセメントミルク噴出孔（噴
出ノズル３５）へ供給されるようになり、また図１０に
示すように、前記ガイド片３８が他方のストッパー片３
９ｂに当接して管体２８が内管５と共に反時計回りに回
転（逆転）するときは、内管５のセメントミルク供給路
９及び上部側の連通路４０と、管体２８の連通路３１と
が連通連結されると共に、バイパス路４２が閉鎖され、
それによってセメントミルク供給路９の上流からのセメ
ントミルクは、攪拌部８上部側のセメントミルク噴出孔
（噴出ノズル３３）へ供給されるようになっている。

【００２７】上述したような構成のソイルセメント杭造
成装置を使用して、ソイルセメント杭を造成する方法に
ついて説明すると、先ず、掘進にあたり、回転駆動装置
により、内管５を正転（図８（Ａ）に示すような時計回
り方向）させ、外管６を内管５とは逆方向にさせなが
ら、内管５先端側の掘削刃７によって地盤を掘削しつ
つ、内管５内部のセメントミルク供給路９に供給される
セメントミルクを掘削刃７側のセメントミルク噴出孔
（噴出ノズル３５）より噴出して、掘進してゆく。

【００２８】このとき、セメントミルク供給路９の供給
路切り換え機構３６は、図８及び図９で示したように、
内管５が正転しこれに伴い供給路切り換え用管体２８が
一方のストッパー片３９ａに当接した状態となるため、
連通路３１を閉鎖して、セメントミルク供給路９を掘削
刃７側のセメントミルク噴出孔に連通連結せしめる。従
って、セメントミルク供給路９からのセメントミルク
は、掘削刃７側の複数の噴出ノズル３５からのみ噴出さ
れ、攪拌部８上部側の噴出ノズル３５からは噴出されな
い。

【００２９】上記のようにして、内管５と外管６とを互
いに正逆反対方向に回転させながら掘削刃７により地盤
土壌を掘削しつつ、掘削刃７側の噴出ノズル３５からセ
メントミルクを噴出させて掘進してゆくとき、攪拌部８
の各上向き攪拌刃１１，１２と各下向き攪拌刃１７と
が、軸方向に互いにラップした状態で内管５を中心に互
いに正逆反対方向に回転して、掘削土壌とセメントミル
クとを混合攪拌する。また、このとき、セメントミルク
は複数の噴出ノズル３５により分散されて掘削土壌に均
一に噴射される。

【００３０】この場合、上向き攪拌刃１１，１２と下向
き攪拌刃１７とが、図２、図６に示すように軸方向にラ
ップした状態で内管５を中心に逆回転するため、互いに
ラップした上向き攪拌刃１１，１２と下向き攪拌刃１７
とによって、それらの間に介在する土壌やセメントミル
クあるいはそれらの混合物に対し十分且つ強力な剪断作
用が働き、従って土壌とセメントミルクとを細かく十分
に攪拌混合することができ、土壌やソイルセメントの塊
を作ることがなく、しかも土壌が粘土質のあるときにそ
の粘土が攪拌刃１１，１２，１７や内管５の部分に少し
は付着しても、付着物がそれ以上拡大成長することがな
い。

【００３１】掘進が所定深度に達すると、回転駆動装置
による内管５と外管６の回転方向をそれぞれ逆にし、内
管５を逆転（図１０（Ａ）に示すような反時計回り方
向）させ、外管６を正転させつつ、内管５内部のセメン
トミルク供給路９に供給されるセメントミルクを、攪拌
部８上部側のセメントミルク噴出孔（噴出ノズル３３）
より噴出させながら、当初は、内外両管５，６を最下部
から所定高さまで数回昇降させて、根固め部を形成し、
そして根固め部の形成後は、上記の操作を継続して、内
外両管５，６を引き上げながら、ソイルセメント杭を造
成してゆく。

【００３２】このとき、セメントミルク供給路９の供給
路切り換え機構３６は、図６及び図１０で示したよう
に、内管５が逆転しこれに伴い供給路切り換え用管体２
８が９０度反対方向に回動して他方のストッパー片３９
ｂに当接した状態となるため、バイパス路４２を閉鎖し
て、セメントミルク供給路９を攪拌部８上部側のセメン
トミルク噴出孔に連通連結せしめる。従って、セメント
ミルク供給路９からのセメントミルクは、攪拌部８上部
側の噴出ノズル３３からのみ噴出され、掘削刃７側の噴
出ノズル３５からは噴出されない。また、このセメント
ミルクは、複数の噴出ノズル３３から噴射されるため、
掘削土壌に対し均一にゆきわたる。

【００３３】上記のようにして、内管５を逆転、外管６
を正転させながら、攪拌部８上部側の噴出ノズル３３か
らセメントミルクを噴出させて、内外両管５，６を引き
上げてゆくときも、攪拌部８の各上向き攪拌刃１１，１
２と各下向き攪拌刃１７とが、軸方向に互いにラップし
た状態で内管５を中心に互いに正逆反対方向に回転し
て、掘進時に予め混合されたソイルセメントを更に攪拌
すると共に、未だ混合されていない掘削土壌とセメント
ミルクとを混合攪拌する。

【００３４】この場合、上向き攪拌刃１１，１２と下向
き攪拌刃１７とが軸方向にラップした状態で内管５を中
心に逆回転するため、互いにラップした上向き攪拌刃１
１，１２と下向き攪拌刃１７とによって、それらの間に
介在する土壌やセメントミルク更にはそれらの混合物た
るソイルセメントに対し十分且つ強力な剪断作用が働
き、それにより土壌とセメントミルク、あるいはソイル
セメントを更に細かく緻密に攪拌混合することができ、
しかもセメントミルクが、攪拌部８の上部側の噴出ノズ
ル３３から、掘進時に掘進された土壌に的確に噴出され
るため、掘削土壌とセメントミルクとを効率良く十分に
攪拌混合することができる。また、土壌が粘土質のある
ときにその粘土が攪拌刃１１，１２，１７や内管５の部
分に多少付着することがあっても、その付着物がそれ以
上拡大することがない。またこの場合、ソイルセメント
が攪拌刃１１，１２，１７や内管５の部分に付着して
も、その付着ソイルセメントに対して、互いにラップし
た上向き攪拌刃１１，１２と下向き攪拌刃１７とによる
剪断作用が働くため、ソイルセメントが攪拌刃１１，１
２，１７や内管５と共に、共回りしたり、連れ回りする
といったことがなくなり、土壌とセメントミルク、ある
いはソイルセメントの攪拌混合を十分に効率良く行うこ
とができ、それによってきわめて良質のソイルセメント
杭を造成することができる。

【００３５】また、前記セメントミルク供給路切り換え
用の管体２８には一対の縦長状攪拌枠２９を両側対称位
置に設けているため、この攪拌枠２９は、内管５の回転
に伴って回転し、掘進時及び引き上げ時には掘削土壌及
びセメントミルク、更にはソイルセメントに対して剪断
攪拌作用を働せることができ、前記攪拌部８の剪断攪拌
作用と相まって攪拌効率を一層向上させることができ
る。更にまた、外管６の下端に一対の縦長状フレーム１
３が内管５部分を両側から挟むように連設されているこ
とから、この縦長状フレーム１３は、外管６の回転によ
り内管５の回りを回転して、前記攪拌枠２９と同様に、
掘進時及び引き上げ時には掘削土壌、セメントミルク、
ソイルセメントに対し剪断攪拌作用を働せることができ
る。

【００３６】また、攪拌部８の上向き攪拌刃１２及び下
向き攪拌刃１７は、その基端部を中心に一定角度範囲内
で傾転可能となっているため、攪拌中に土壌やセメント
ミルクあるいはソイルセメントによって過度の横荷重を
受けるようなことがあると、これらの攪拌刃１２，１７
は、その横荷重を吸収するように傾転して、破損を防止
することができる。

【００３７】尚、上述した実施例では、掘進時及び引き
上げ時に、内管５と外管６のいずれも回転させるように
したが、外管６は停止させておいて、内管５のみを、掘
進時と引き上げ時とで逆になるように回転させるように
してもよい。

【００３８】また、上述の実施例では、内管５の内部に
セメントミルク供給路９を設け、このセメントミルク供
給路９を、供給路切り換え機構３６によって、掘削刃７
の部分に設けたセメントミルク噴出孔（噴出ノズル３
５）と、攪拌部８上部側のセメントミルク噴出孔（噴出
ノズル３３）とに択一的に連通連結するようにしている
が、図１１に示す実施例のように、内管５の内部に設け
たセメントミルク供給路９を掘削刃７側のセメントミル
ク噴出孔のみに常時連通するように構成すると共に、こ
の内管５と外管との間に、セメントミルク供給路９とは
全く別経路のセメントミルク供給路４３を設け、この供
給路４３を連通路４４を介して常時攪拌部８上部側のセ
メントミルク噴出孔（噴出ノズル３３）に連通させてお
き、しかして掘削刃７側のセメントミルク噴出孔には内
管５内部のセメントミルク供給路９のみよってセメント
ミルクを供給し、攪拌部８上部側のセメントミルク噴出
孔には内管５と外管６との間のセメントミルク供給路４
３によって供給するようにしてもよい。この場合、内管
５内部のセメントミルク供給路９及び内外管５，６間の
セメントミルク供給路４３には、内外管５，６の上端部
においてセメントミルクがそれぞれ別々に供給されるこ
とになる。

【００３９】このように内管５内部のセメントミルク供
給路９と内外管５，６間のセメントミルク供給路４３と
を設けた場合には、複雑な供給路切り換え機構３６が不
要であるため、内管５側の構造が簡単となる。また、内
管５内部のセメントミルク供給路９のみを設けて、供給
路切り換え機構３６により、掘削刃７側のセメントミル
ク噴出孔及び攪拌部８上部側のセメントミルク噴出孔に
対するセメントミルクの供給を切り換える場合には、そ
の切り換え操作が自動的に行える。

【００４０】尚、１１図に示すように、内管５と外管６
との間のセメントミルク供給路４３には、内管５の外周
面から突設されて外管６の内周面に回転自在に周設する
ガイド突起４５が、周方向の複数箇所と内管５長手方向
の複数箇所に設けてある。また、攪拌部８の下向き攪拌
刃１７は、外管６の下端部に直接固着された取付板１５
に取付けてあり、そして攪拌部８上部側のセメントミル
ク噴出孔としての噴出ノズル３３を備えた攪拌枠２９
は、先の実施例では内管５側に取付られているが、この
実施例では外管６に直接取付けてある。これ以外の構成
は、先の実施例と同一であるため、同一構成部材には同
一符号を付し、その説明を省略する。

【００４１】

【発明の効果】本発明の請求項１に係る造成方法によれ
ば、地盤の掘進時には、攪拌部の上向き攪拌刃と下向き
攪拌刃とが、軸方向に互いにラップした状態で相対回転
し、互いにラップした上向き攪拌刃と下向き攪拌刃とに
より、それらの間に介在する土壌やセメントミルクある
いはそれらの混合物に対し十分且つ強力な剪断作用を働
かせることができるため、掘削土壌とセメントミルクと
を十分に攪拌混合でき、土壌やソイルセメントの塊を作
ることがない。

【００４２】また、引き上げ時にも、上向き攪拌刃と下
向き攪拌刃とが軸方向にラップした状態で相対回転し、
互いにラップした上向き攪拌刃と下向き攪拌刃とによっ
て、それらの間に介在する土壌やセメントミルク更には
それらの混合物たるソイルセメントに対し十分且つ強力
な剪断作用を働かせることができるため、土壌とセメン
トミルク、あるいはソイルセメントを更に細かく攪拌混
合することができる。特に引き上げ時には、セメントミ
ルクを攪拌部の上部側のセメントミルク噴出孔から掘削
土壌に的確に噴出させることができ、それにより掘削土
壌とセメントミルクとを効率良く攪拌混合することがで
きる。また、土壌が粘土質のあるときにその粘土が攪拌
刃や内管の部分に多少付着することがあっても、その付
着物がそれ以上拡大することがなく、またソイルセメン
トが攪拌刃や内管と共に、共回りしたり、連れ回りする
ことがなくなり、土壌とセメントミルク、あるいはソイ
ルセメントの攪拌混合をきわめて効率良く行うことがで
きる。

【００４３】請求項２によれば、内管と外管とを互いに
逆方向に回転させることにより、攪拌効率を一層向上さ
せることができる。

【００４４】請求項３によれば、上記造成方法を容易に
実施することができると共に、攪拌部がそれぞれ複数の
上向き攪拌刃と下向き攪拌刃とからなるため、土壌、セ
メントミルク、ソイルセメントに対する剪断攪拌作用を
良好に働かせることができて、十分な攪拌混合を行わせ
ることができる。

【００４５】請求項４によれば、攪拌部の上向き攪拌刃
及び下向き攪拌刃が、攪拌中に土壌やセメントミルクあ
るいはソイルセメントによって過度の横荷重を受けるよ
うなことがあっても、攪拌刃がその横荷重を吸収するよ
うに傾転して、その破損を防止することができる。

【００４６】請求項５によれば、攪拌部の上部側に攪拌
枠を設けることにより、攪拌効率を一層向上させること
ができる。

【００４７】請求項６によれば、内管内部のセメントミ
ルク供給路を、供給路切り換え機構により、掘削刃側の
セメントミルク噴出孔と、攪拌部の上部側のセメントミ
ルク噴出孔とに択一的に連通連結するようにすることに
よって、両セメントミルク噴出孔に対するセメントミル
クの供給切り換え操作を容易に行うことができる。

【００４８】また、請求項７によれば、内管と外管との
間に、攪拌部の上部側のセメントミルク噴出孔にセメン
トミルクを供給するための別のセメントミルク供給路を
設けることにより、供給路切り換え機構が不要となり、
内管の構造が簡単となる。

【００４９】請求項８によれば、掘削刃側のセメントミ
ルク噴出孔が複数の噴出ノズルからなるため、セメント
ミルクを掘削土壌に対し十分に噴出させることができ
る。

【００５０】また、請求項９によれば、攪拌部の上部側
のセメントミルク噴出孔が複数の噴出ノズルからなるた
め、セメントミルクを掘削土壌に対し十分に噴出させる
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るソイルセメント杭造成装置を示す
全体概略側面図である。

【図２】攪拌部を含む装置部分の拡大詳細側面図であ
る。

【図３】図２に示す装置部分の正面図である。

【図４】図２のＶ−Ｖ線断面図である。

【図５】図２のＷ−Ｗ線断面図である。

【図６】図２に示す装置部分の一部断面正面図である。

【図７】（Ａ）は、攪拌部の上向き攪拌刃または下向き
攪拌刃の取付状態を示す説明図、（Ｂ）は、（Ａ）のＯ
−Ｏ線断面図である。

【図８】（Ａ）は、図６のＸ−Ｘ線断面図、（Ｂ）は、
図６のＹ−Ｙ線断面図であって、いずれも掘削刃側のセ
メントミルク噴出孔にセメントミルクが供給されている
状態を示す。

【図９】図８（Ｂ）のＺ−Ｚ線断面図である。

【図１０】（Ａ）は、図６のＸ−Ｘ線断面図、（Ｂ）
は、図６のＹ−Ｙ線断面図であって、いずれも攪拌部８
上部側のセメントミルク噴出孔にセメントミルクが供給
されている状態を示す。

【図１１】本発明に係るソイルセメント杭造成装置の他
の実施例を示す一部断面正面図である。

【符号の説明】

５ 内管 ６ 外管 ７ 掘削刃 ８ 攪拌部 ９ セメントミルク供給路 １１ 上向き攪拌刃 １２ 上向き攪拌刃 １７ 下向き攪拌刃 ２８ 管体 ２９ 攪拌枠 ３０ 取付台板 ３１ 連通路 ３２ セメントミルク分配路 ３３ 噴出ノズル ３４ 分配管 ３５ 噴出ノズル ３６ 供給路切り換え機構 ３８ ガイド片 ３９ａ ストッパー片 ３９ｂ ストッパー片 ４０ 連通路 ４１ 連通路 ４２ バイパス路 ４３ セメントミルク供給路 ４４ 連通路

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】内管と外管とからなり、内管の先端に掘削
   刃を設け、内管側に設けた上向きの攪拌刃と、外管に設
   けた、前記上向きの攪拌刃と軸方向にラップし周方向に
   はラップしない下向きの攪拌刃とからなる攪拌部を備
   え、前記掘削刃の部分と前記攪拌部の上部側とにそれぞ
   れセメントミルク噴出孔を備えた造成装置を用いて、掘
   進時には、少なくとも内管を回転させながらその先端の
   掘削刃により地盤を掘削しつつ、前記掘削刃部分の噴出
   孔よりセメントミルクを噴出して掘進し、所定深度に達
   すると、内管を逆転して内管及び外管を引き上げなが
   ら、前記攪拌部上部側の噴出孔よりセメントミルクを噴
   出してソイルセメント杭を造成するようにしたソイルセ
   メント杭の造成方法。
2. 【請求項２】掘進時及び引き上げ時に、内管と外管とを
   互いに逆方向に回転させるようにした請求項１に記載の
   ソイルセメント杭の造成方法。
3. 【請求項３】先端に掘削刃を有する正逆回転駆動可能な
   内管と、この内管に外嵌された正逆回転駆動可能な外管
   と、内外両管に亘って設けられた攪拌部とを備え、前記
   攪拌部は、内管側に設けられた複数の上向き攪拌刃と、
   この上向き攪拌刃と軸方向にラップし周方向にはラップ
   しないように外管側に設けられた複数の下向き攪拌刃と
   からなり、前記掘削刃の部分及び前記攪拌部の上部側に
   それぞれセメントミルク噴出孔を設けてなるソイルセメ
   ント杭の造成装置。
4. 【請求項４】前記各攪拌刃を、その基端部を中心に一定
   角度範囲内で傾倒可能に設けてなる請求項３に記載のソ
   イルセメント杭の造成装置。
5. 【請求項５】前記攪拌部の上部側には内管側または外管
   側に攪拌枠を設けてなる請求項３に記載のソイルセメン
   ト杭の造成装置。
6. 【請求項６】内管の内部にセメントミルク供給路を設け
   ると共に、この内管内部のセメントミルク供給路を、前
   記掘削刃の部分に設けたセメントミルク噴出孔と、前記
   攪拌部の上部側に設けたセメントミルク噴出孔とに択一
   的に連通連結するための供給路切り換え機構を設けてな
   る請求項３、４または５に記載のソイルセメント杭の造
   成装置。
7. 【請求項７】内管の内部に、前記掘削刃の部分に設けた
   セメントミルク噴出孔にセメントミルクを供給するセメ
   ントミルク供給路を設け、内管と外管との間に、前記攪
   拌部の上部側に設けたセメントミルク噴出孔にセメント
   ミルクを供給する別のセメントミルク供給路を設けてな
   る請求項３、４または５に記載のソイルセメント杭の造
   成装置。
8. 【請求項８】掘削刃の部分のセメントミルク噴出孔は、
   内管内部のセメントミルク供給路に連通して横方向に配
   設されたセメントミルク分配管に設けた複数の噴出ノズ
   ルからなる請求項３、４、５、６または７に記載のソイ
   ルセメント杭の造成装置。
9. 【請求項９】攪拌部の上部側のセメントミルク噴出孔
   は、セメントミルク供給路に連通して横方向に配設され
   たセメントミルク分配路に設けた複数の噴出ノズルから
   なる請求項３、４、５、６、７または８に記載のソイル
   セメント杭の造成装置。