JPH0730400B2 - 磁束密度の極めて高い方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁束密度の極めて高い方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH0730400B2
JPH0730400B2 JP2293515A JP29351590A JPH0730400B2 JP H0730400 B2 JPH0730400 B2 JP H0730400B2 JP 2293515 A JP2293515 A JP 2293515A JP 29351590 A JP29351590 A JP 29351590A JP H0730400 B2 JPH0730400 B2 JP H0730400B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、磁束密度の極めて高い方向性けい素鋼板の
製造方法に関し、とくに均一化焼鈍や中間焼鈍時におい
て消失した鋼板表層のAlNを、最終冷延前の焼鈍時に効
果的に回復させることによって、製品板厚の減少に伴う
磁束密度の劣化を有利に回避し、もって極めて高い磁束
密度を維持しようとするものである。
(従来の技術) 方向性けい素鋼板には、磁気特性として、磁束密度が高
いことと、鉄損が低いことが要求される。
近年、製造技術の進歩により、たとえば板厚:0.23mmの
鋼板では、磁束密度B8(磁化力800A/mにおける値):1.9
2Tのものが得られ、また鉄損特性W17/50(50Hz,1.7Tの
最大磁化の時の値)が0.90W/kgの如き優れた製品の工業
的規模での生産も可能となっている。
かかる優れた磁気特性を有する材料は、鉄の磁化容易軸
である〈001〉方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結
晶組織で構成されるものであり、かような集合組織は、
方向性けい素鋼板の製造工程中、最終仕上げ焼鈍の際に
いわゆるゴス方位と称される(110)[001]方位を有す
る結晶粒を優先的に巨大成長させる2次再結晶と呼ばれ
る現象を通じて形成される。この(110)[001]方位の
2次再結晶粒を十分に成長させるための基本的な要件と
しては、2次再結晶過程において(110)[001]方位以
外の好ましくない方位を有する結晶粒の成長を抑制する
インヒビターの存在と、(110)[001]方位の2次再結
晶粒が十分に発達するのに好適な1次再結晶組織の形成
とが不可欠であることは周知の事実である。
ここにインヒビターとしては、一般にMnS,MnSe,AlN等の
微細析出物が利用され、さらにこれらに加えて特公昭51
-13469号公報や特公昭54-32421号公報に開示された如き
Sb,Snなどの粒界偏析型の元素を複合添加してインヒビ
ターの効果を補強することが行われている。
ところでこれまで一般に、MnSやMnSeを主要インヒビタ
ーとするものは、2次再結晶粒径が小さいので、鉄損の
低減には有利であったが、近年、レーザー照射法やプラ
ズマジェット法など、人工的に擬似粒界を導入し、磁区
細分化が図れるようになって以来、2次再結晶粒径のサ
イズが小さいことによる優位性は低下し、磁束密度が高
いことの優位性が大きくなった。
磁束密度の高い方向性けい素鋼板を得る方法は古くから
知られており、例えば特公昭46-23820号公報に記載され
ているように、 鋼中にインヒビター成分としてAlN含有させる、 最終冷延前の焼鈍の冷却を急冷にしてAlNを析出させ
る、 最終冷延の圧下率を80〜95%と高圧下率とする、 以上3点の結合により製造できるとされている。
しかし上記の方法においては、製品の板厚が薄くなる
と、磁束密度が急激に劣化するという欠点を内包してお
り、近年指向されているような例えば板厚:0.25mm以下
の製品でB8≧1.94の製品を安定して製造することは極め
て困難であった。
この点、発明者らは、AlNを主要インヒビターとする方
向性けい素鋼板素材にSbを添加し、かつ仕上げ焼鈍方法
を改善することにより、鋼板の最終板厚が小さい場合に
も極めて高い磁束密度の材料が得られることを見出し、
先に出願した(特開平2-115319号公報)。
しかしながら、上記の方法によっても工業的に安定して
高磁束密度の材料を製造することは必ずしも容易ではな
かった。
(発明が解決しようとする課題) 上述したとおり、Sbを含有させた場合、工業的規模での
製造においては2次再結晶が起きないという問題が発生
し、安定して高磁束密度の材料を得ることが極めて難し
かった。
すなわち、熱延後の鋼板を用い研究室で処理した場合に
は極めて高い磁束密度が得られた材料であっても、同一
のコイルを工業的に処理した場合には磁束密度が低く、
2次再結晶すらしないという場合がしばしば見受けられ
たのである。
そこで発明者らは、各工程におけるサンプルを採取し
て、この原因を調査した結果、均一化焼鈍後や中間焼鈍
後において、鋼板表層部にインヒビターであるAlNの析
出が認められないことが原因であることを突き止めた。
すなわちかようなAlNの消失によって鋼板表層の抑制力
が低下し、最終仕上げ焼鈍中に正常粒成長が起こる結
果、2次再結晶不良が発生することが工業生産上での失
敗原因であることが見出された。
鋼板表層のAlNが均一化焼鈍や中間焼鈍によって喪失す
るという現象は、Sbを含有しない鋼においても生じてい
るが、これらの鋼においては、かような現象が特別深刻
な問題を引き起こしていない。この理由は、発明者らの
調査によると、最終仕上げ焼鈍中、2次再結晶前までに
鋼板表層の再窒化が起こり、表層部に再びAlNの析出物
が形成されるためであることが判った。
すなわち箱焼鈍において行われる最終仕上げ焼鈍では2
次再結晶前(900℃より低温)の段階で窒素雰囲気に長
時間さらされることから、鋼中の過剰のAlが表層部に拡
散し、鋼板表面から拡散してくる窒素と結合してAlNが
再析出するため、一時期失われた鋼板表層の抑制力が、
2次再結晶の直前には幸いにも回復する。このため通常
はこの問題は顕在化しなかったのである。
しかしながらSbを含有する鋼の場合、表層抑制力の回復
機構が働かない。というのはSbは鋼板表面に偏析して窒
化を抑制することから、一度消失したAlNを再度、回
復、析出させることは極めて難しくなることによるもの
と考えられる。
ところで鋼板表層の抑制力を強化する技術としては、Al
を含有する方向性けい素鋼板の製造途中工程において焼
鈍時の雰囲気として窒素を用い、鋼板表面を窒化させAl
Nを析出させることにより、抑制力を強化する技術が、
特公昭50-19489号公報に開示されているが、この点に関
して発明者が実際試みたところ、Sbを含有する鋼板にお
いては前述の現象によって窒化が抑制されるため、有効
ではなく、やはり製品の磁気特性を向上させることは不
可能であった。
(課題を解決するための手段) 発明者らは、AlNを主要インヒビターとして含み、かつS
bを併せて含有する方向性けい素鋼板において、鋼板表
層の抑制力の喪失を回避する技術について鋭意検討した
結果、最終冷延前における焼鈍において、焼鈍前に鋼板
表面に窒化促進剤を塗布し、かつ焼鈍雰囲気中における
N2の分圧比率を20%以上とすること、またさらには焼鈍
雰囲気中のO2+H2O+CO2の合計分圧比率を2%以上とす
ることにより、鋼板表層の窒化が促進され、鋼板表層の
抑制力の強化が図れることの新規な知見を得た。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわちこの発明は、主要インヒビターとしてAlNを含
み、かつSbを併せて含有する方向性けい素鋼素材を、熱
間圧延したのち、均一化焼鈍に引き続き、80〜95%の圧
下率での1回の冷間圧延、または最終冷延が80〜95%の
圧下率での中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施し、つい
で脱炭・1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してか
ら、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性け
い素鋼板を製造するに当たり、 最終冷延前の焼鈍に先立ち、鋼板表面に窒化促進剤を付
着させると共に、該焼鈍の雰囲気中におけるN2の分圧比
率を20%以上とすることからなる磁束密度の極めて高い
方向性けい素鋼板の製造方法(第1発明)である。
またこの発明は、上記第1発明において、さらに最終冷
延前の焼鈍雰囲気中におけるO2+H2O+CO2の合計分圧比
率を2%以上とすることからなる磁束密度の極めて高い
方向性けい素鋼板の製造方法(第2発明)である。
以下、この発明を由来するに至った実験結果に基づきこ
の発明を具体的に説明する。
前述したように、均一化焼鈍や中間焼鈍によって鋼板表
層部のAlNが消失し、表層の抑制力が失われる。この原
因は、鋼板表層の酸化物または酸化性雰囲気によって表
面での鋼中Alの酸化やNの酸化が進行し、このため表層
付近にAlやNの欠乏層が形成され、その結果、AlNの分
解、消失が進行していくためである。従ってかかる現象
を抑制するためには、鋼中に過剰に存在するAlを窒化を
させることが有効であると考えられる。
そこで発明者らはまず、雰囲気中のNの影響について調
査した。
C:0.07wt%(以下単に%で示す),Si:3.3%,Mn:0.08%,
P:0.005%,Se:0.020%,Sb:0.030%,Al:0.025%およびN:
0.0080%を含み、残部は実質的にFeの組成になるけい素
鋼素材を、常法により2.0mm厚に熱延したのち、1000℃
で均一化焼鈍後、1.5mmの厚さに冷間圧延し、ついでN2
中で1100℃,2分間の焼鈍を施した。この時の鋼中のN量
を分析したところ75ppmで、素材段階におけるN量より
も減少していた。そこで発明者は、次に炉中に挿入する
N2のガス流量を大きくした場合について調査した。すな
わち試料1gに対して1/minのN2ガスを導入したとこ
ろ、焼鈍後の鋼中Nは79ppmまで増加することが判っ
た。
しかしながら上記の方法は大量のガスを必要とし、これ
を工業的に適用することは極めて不利である。
そこで他の方法について模索したところ、排ガス中には
極めて微量のCOガスが含まれており、これが鋼の窒化を
阻害していることが判明した。ここに微量のCOガスが鋼
の窒化を阻害する機構については定かではないが、COの
発生は鋼に含まれるCがAlやNの酸化と同様に酸化され
て発生したものと思われる。従ってかかるCOの悪影響を
除くために、ガス流量を増加させてCOの逸散を促進させ
たわけであるが、その他にも、理由は不明であるが、H2
O,CO2,O2といった酸素ポテンシャルを高めるガス成分を
積極的に添加することが有効であることが新たに見出さ
れた。すなわちCOと、H2O,CO2,O2といったガス成分との
バランスが、鋼の窒化に関して微妙な影響を及ぼしてい
ると考えられる。
第1図に、N2中におけるこれらH2O,CO2,O2の合計分圧比
率を種々に変化させて、前述と同様の実験を行った場合
における、焼鈍後の鋼中窒素量について調べた結果を示
す。
同図より、H2O,CO2,O2の合計分圧比率を2%以上とすれ
ば、N2ガス流量を増大させた場合と同一の効果が得られ
ることが判る。
そこで、工場での焼鈍炉に、CO21.5%、露点25℃、残分
N2バランスの雰囲気ガス(CO2+H2Oの分圧比率4.6%)
を導入し、実際のコイルで実験を行ってみた。
その結果、コイルの一部についてはB8=1.941Tという極
めて良好な磁気特性が得られたものの、大部分は1.76〜
1.86T程度の低いレベルであり、満足いくものではなか
った。
そこで次にかかる困難を打破すべく、従来と発想を全く
変え、鋼板表層に薬剤を塗布することによる窒化促進に
ついて考察した。
このようなことは、今まで試みられたことがなく、発明
者は数多くの試薬を試用した結果、後述するように鋼板
の窒化を促進させる一群の薬剤を見出した。
さて前述した厚み1.5mmの冷延鋼板を3分割し、一つは
そのままで、他の一つは10%にKNO3水溶液中に残る一つ
は30%のKNO3水溶液中に浸漬した後、乾燥し、いずれも
50%N2、露点35℃、残りH2バランスの雰囲気中で1100
℃,2分間の焼鈍を行った。この時の鋼中のN量を分析し
たところ、焼鈍後のN量は前者が72ppm、一方後者はそ
れぞれ89ppm,96ppmであった。
また各鋼板の断面組織を腐食法によるSEMで観察したと
ころ、第2図に示すように、そのまま焼鈍した鋼板は鋼
板表層部においてAlNの析出が全く認められなかった
(第2図(イ))のに対し、窒化促進剤であるKNO3を塗
布した場合(同図(ロ),(ハ))は、鋼板表層部のサ
ブスケール直下において明瞭なAlNの微細析出が認めら
れた。
ここで、窒化促進剤塗布の効果について、発明者らが調
査し解明した機構について述べる。
一般に、鋼中にSbが存在する場合には、表面に形成され
るサブスケールと呼ばれる酸化膜の形態が大きく変化す
ることが知られている。すなわち、Sbの存在によって酸
化膜が偏平で稠密となることが知られており、これがC
やNの拡散を抑制するため、一般に、脱炭、脱窒、浸炭
および浸窒などは阻害される。
第2図の(イ)は、窒化促進剤を塗布していない場合で
あるが、細かく緻密なサブスケールが発達していること
がわかる。これに対し第2図の(ロ)と(ハ)は窒化促
進剤を表面に塗布した場合であるが、サブスケールの層
は破壊され、表面から地鉄界面に向ってパイプ状のボイ
ド(ロ)もしくは広い空洞層(ハ)が形成されている。
かかるパイプ状のボイドや空洞層を通して雰囲気ガスが
直接地鉄界面に接触するため、窒化が促進されるものと
思われる。
ちなみに第2図の(ロ)や(ハ)の地鉄界面には微細析
出物が多数観察され、これは分析電顕によりAlNである
ことが確認されている。表面にKNO3(窒化促進剤)を塗
布した場合に生ずるサブスケールのこのような変化は、
サブスケール生成物であるシリカが変質したことによる
もので、抽出物を分析したところ、KNO3を塗布した場
合、シリカ中にK2Oが固溶していることより、シリカの
表面張力が変化するために、形状が変化し、ボイドない
し空洞が形成されたものと思われる。
(作用) この発明における方向性けい素鋼素材の好適成分組成に
ついて説明する。
Cは、熱延組織改善に必要であるが、多過ぎると脱炭が
困難となるので、0.035〜0.090%とする。
Siは、あまりに少ないと電気抵抗が小さくなって良好な
鉄損特性が得られず、一方多過ぎると冷間圧延が困難に
なるので、2.5〜4.5%程度の範囲が好適である。
インヒビターについては、高磁束密度を得るためにはAl
Nがとりわけ有利であるので、この発明でも主要インヒ
ビターとしてAlNを用いるものとしするが、多過ぎると
かえって微細析出が困難となるため、0.01≦酸可溶Al≦
0.15%,0.0030≦N≦0.020%の範囲が好適である。
ここに主要インヒビターとは、これが欠けると2次再結
晶の発現が不能になるものを云う。
なおこの場合に、S,Seをインヒビター形成元素として補
助的に含有させても良い。
S又はSeはMnS又はMnSeとして析出しインヒビターとし
て有効で、このうちMnSeは特に最終仕上げ板厚が薄くな
っても抑制効果が強いので、好ましい。
かようなMnS,MnSeを微細析出させるのに好適なSやSeの
範囲は単独および併用いずれの場合も0.01〜0.04%程度
である。なおMnは、上記したとおりインヒビター成分と
して必要であるが、多過ぎると溶体化が困難であるので
0.05〜0.15%の範囲が好適である。
この発明ではさらに、Sbを鋼中に含有させることが必須
であり、0.005〜0.08%程度のSbを含有させることによ
り、鋼板板厚の薄い場合にも極めて高い磁束密度の製品
が得られる。これは、Sbの鋼板表面や結晶粒界への偏析
効果が有効に作用して、鋼板板厚の小さい場合にも、イ
ンヒビター抑制効果が維持されるからである。
以上の他さらに、磁性の向上のために、Cu,Cr,Bi,Sn,B,
Ge等のインヒビター補強元素も適宜添加することがで
き、その範囲も公知の範囲でよい。また熱間脆化に起因
した表面欠陥防止のためには、0.005≦Mo≦0.020%の範
囲のMo添加が好ましい。
かかる鋼素材の製造工程に関しては公知の製法を適用
し、製造されたインゴット又はスラブを、必要に応じて
再生し、サイズを合せた後、加熱し、熱延する。熱延後
の鋼帯は1回の冷間圧延、あるいは中間焼鈍を挟む2回
の冷間圧延によって最終板厚とする。
最終冷延前の焼鈍は、AlNの溶体化のためには850〜1200
℃の高温が必要であり、また焼鈍後、AlNの析出のため5
00℃までの急冷処理が必要である。
この時の冷却は、たとえば特公昭46-23820号公報の実施
例に示されるように、湯中に浸漬して低温まで急冷して
も良いが、Sbを含有する鋼においては、少なくとも500
℃までを急冷し、500℃から200℃の温度領域を歪を付加
して徐冷する方法が有利である。
かかる焼鈍に先立って、鋼板表面に窒化促進剤を付着さ
せることが、この発明において最も重要な要件である。
窒化促進剤として有効な薬剤として、発明者らが見出し
たものを下記に示す。
KCL,KNO3,KF,KBr,K2CO3,KHCO3,MgCl2,Mg(NO3)2,MgF2,Mg
Br2,MgCO3,CaCl2,Ca(NO3)2,CaF2,NaCl,NaNO3,NaF,NaBr,
Na2CO3,NaHCO3など。
付着量の適正範囲としては、片面当たり0.5〜30g/m2
範囲が有効である。付着量が0.5g/m2より少ないと窒化
促進の効果を得るには不十分であり、一方30g/m2を超え
ると鋼板表面の性状が劣化する。付着方法については、
ロールで塗布する方法、スプレーで塗布する方法、静電
塗装など既知の方法いずれもが適用でき、また薬剤を粉
末のままで塗布しても水などの溶媒に溶かした後、塗
布、乾燥しても良い。塗布時期については、最終冷延前
の焼鈍に先立つ時期であれば有効で、とくに焼鈍の直前
に付着させることが最もその効果を発揮させるのに有効
である。なお窒化促進剤を付着させる工程を独立に設け
ても良いが、最終冷延の前の焼鈍工程に連結させて処理
する方が有利である。また中間焼鈍時に窒化促進剤を適
用する場合に、均一化焼鈍時にも窒化促進剤を適用する
ことは、窒化の効果を確実とする上でより好ましい。
最終冷延前の焼鈍の雰囲気としては、窒化を進行させる
ために、N2分圧比率を20%以上とすることが必要であ
る。というのは20%に満たないと窒化促進剤を付着して
も十分な窒化が達成できず磁束密度の劣化を招くからで
ある。
また、さらに雰囲気成分としてO2やH2O,CO2といった酸
素ポテンシャル源となるガスを合計の分圧比率で2%以
上加えることが、焼鈍中に発生するCOガスの悪影響を取
除く上で、一層有効である。なおこれらの雰囲気ガス組
成は、昇温、均熱中は保たれることが必要であるが、冷
却中は窒化作用が少ないので他の雰囲気ガスに置き換え
ることも可能である。
次に最終冷延の圧下率については、公知のように高磁束
密度を得るためには高圧下率とする必要があり、従って
1回法の圧下率および2回法における最終冷延の圧下率
はいずれも、80〜95%の範囲に限定した。というのは圧
下率が80%より少ないと高磁束密度が得られず、一方95
%を超えると2次再結晶が困難となるからである。
なお最終冷延の途中で時効処理を行うことは、製品の鉄
損を低減する上で有利である。特にSbを含有するこの発
明の成分系では短時間のただ一回の時効処理によって磁
束密度の格段の向上が認められる点に優れた特徴があ
る。最終圧延後の鋼板は脱脂処理を施した後、脱炭・1
次再結晶焼鈍に供される。
ついでMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、
コイル状に巻かれて最終仕上げ焼鈍に供され、その後必
要に応じて絶縁コーティングを施されるが、時にレーザ
ーや、プラズマ、その他の手法によって磁区細分化処理
を施すことも可能であることは云うまでもない。
(実施例) 実施例1 第1表に示す種々の成分組成になる鋼片(記号A〜L)
を、常法にしたがって熱間圧延し、板厚2.2mmの熱延コ
イルとした。その後1000℃,90秒の均一化焼鈍を施した
後、冷間圧延で1.50mmの中間板厚とした。ついでNaHCO3
の15%水溶液を鋼板表面に、乾燥後の片面当たりの付着
量が5g/m2となる量スプレー塗布した。その後、35%
N2、露点20℃、残りH2の雰囲気中で、1100℃,90sの中間
焼鈍を施したのち、400℃まで45℃/sの速度で急冷し、
ついでベンディングロールを備える徐冷ボックスを通し
て0.5%の歪を付加しつつ、2℃/sの速度で250℃まで徐
冷したのち、大気中で冷却した。その後、0.22mmの最終
板厚に冷延したのち、電解脱脂を施してから、湿水素中
で850℃,2分間の脱炭・1次再結晶焼鈍を施したのち、
5%のTiO2を含むMgOを塗布してから、1200℃,10hの最
終仕上げ焼鈍を施した。
その後、表面に張力コーティングを施し、一部について
公知のプラズマジェット法による10mmピッチの磁区細分
化処理を行った。
かくして得られた鋼板の磁区細分化処理前後における磁
気特性について調べた結果を第2表に示す。
実施例2 第1表に示した鋼片Fを、常法に従って熱間圧延し、2.
0mmおよび1.5mmの熱延板とした。その後、1000℃,90sの
均一化焼鈍後、自然放冷し、それぞれ1.4mmおよび1.1mm
の板厚に冷間圧延した後、2分割し、一方は20%KNO3
溶液中に浸漬、乾燥して1.8g/m2のKNO3を付着させたの
ち、他の一方はそのまま、N240%,露点35℃、残りH2
ランスの雰囲気中で1100℃,90sの中間焼鈍を施した。こ
の時、冷却は350℃まで60℃/sの平均速度で急冷後、温
間レベラーで1.0%の歪を付加し、310℃に12秒間保定し
たのち、炉から取出し、自然放冷した。その後、板厚1.
4mmのものは0.20mm、一方1.1mmのものは0.15mmの最終板
厚に冷間圧延したが、それぞれ0.70mmおよび0.55mmの板
厚とした時に、300℃,2分間の時効処理を施し最終冷延
を続行した。
最終冷延後、脱脂し、湿水素中で850℃、2分間の脱炭
・1次再結晶焼鈍を行ったのち、10%TiO2を含むMgOを
塗布してから、1200℃,10hの最終仕上げ焼鈍を施した。
その後、表面に張力コーティングを施し、エレクトロン
ビームを5mmピッチで照射し、磁区細分化処理を行っ
た。
かくして得られた鋼板の磁気特性について調べた結果を
第3表に示す。
実施例3 第1表に示した鋼片Gを、常法に従って熱間圧延し、板
厚2.4mmの熱延板とした。このコイルをa,b,c,d,eに5分
割し、いずれもK2CO3を片面当たり3g/m2付着させたの
ち、1175℃で90秒間焼鈍したが、その時の雰囲気のN2
圧比率を、aは10%,bは23%,cは45%,dとeは75%と
し、eはCO22%とd.p.20℃を付加した。なお残りのガ
スはH2でバランスをとった。
この焼鈍の冷却は、80℃の湯に浸漬する方法で急冷し、
1175℃から80℃までの冷却に25秒間を要した。その後、
それぞれ0.30mmの最終板厚に冷間圧延したが、途中の板
厚において、一度300℃で2分間の時効処理を施した。
冷間圧延後は、脱脂し、湿水素中で850℃、2分間の脱
炭・1次再結晶焼鈍を行ったのち、2%のSrSO4を含むM
gOを塗布してから、1200℃,10時間の最終仕上げ焼鈍を
施した。
その後、表面に張力コーティングを施し磁気特性を測定
した。この時の値を第4表に示す。
(発明の効果) かくて、この発明によれば、製品の板厚によらず、磁束
密度の極めて高い方向性けい素鋼板を安定して得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、焼鈍雰囲気中のH2O,CO2およびO2の合計分圧
比率と焼鈍後の鋼中N量との関係を示したグラフ、 第2図(イ)はSb含有けい素鋼における通常の場合、同
図(ロ),(ハ)はそれぞれこの発明の従う窒化促進剤
を鋼板表面に塗布した場合、における焼鈍後の鋼板表層
の断面を示す顕微鏡金属組織写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早川 康之 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内 (72)発明者 菅 孝宏 千葉県千葉市川崎町1番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主要インヒビターとしてAlNを含み、かつS
    bを併せて含有する方向性けい素鋼素材を、熱間圧延し
    たのち、均一化焼鈍に引き続き、80〜95%の圧下率での
    1回の冷間圧延、または最終冷延が80〜95%の圧下率で
    の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施し、ついで脱炭・
    1次再結晶焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕
    上げ焼鈍を施す一連の工程によって方向性けい素鋼板を
    製造するに当たり、 最終冷延前の焼鈍に先立ち、鋼板表面に窒化促進剤を付
    着させると共に、該焼鈍の雰囲気中におけるN2の分圧比
    率を20%以上とすることを特徴とする、磁束密度の極め
    て高い方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、最終冷延前の焼鈍雰囲
    気中におけるO2+H2O+CO2の合計分圧比率を2%以上と
    することを特徴とする磁束密度の極めて高い方向性けい
    素鋼板の製造方法。
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