JPH0728876B2 - 義歯アタッチメントの製造方法および義歯アタッチメント用保持板 - Google Patents

義歯アタッチメントの製造方法および義歯アタッチメント用保持板

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JPH0728876B2
JPH0728876B2 JP2182139A JP18213990A JPH0728876B2 JP H0728876 B2 JPH0728876 B2 JP H0728876B2 JP 2182139 A JP2182139 A JP 2182139A JP 18213990 A JP18213990 A JP 18213990A JP H0728876 B2 JPH0728876 B2 JP H0728876B2
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義信 本蔵
貴信 田中
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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は磁気吸引力を利用した義歯アタッチメントの製
造方法および義歯アタッチメント用保持板に係り、詳し
くは歯根部に埋設される根面板上面に接着された軟磁性
合金からなる保持板と義歯床内に埋設される磁性体とか
らなり、吸着力と耐食性に優れかつ鋳接の際に根面板と
保持板のずれの少ない義歯アタッチメントの製造方法お
よび義歯アタッチメント用保持板に関する。
[従来の技術] 従来、磁気吸引力を利用した義歯としては、例えば第9
図および第10図に示されるものが提案されている(特開
昭62−231653号公報)。この義歯は、歯槽91内の根92に
埋設した磁性材料からなる根面板93に対向するように、
義歯部95を設けたものである。しかして、この義歯部95
は、下方にプラスチック等からなる義歯床94を有し、該
義歯床94内には前記根面板93に対向する位置に磁性体8
を有している。
該磁性体8は第10図に示すごとく、上方部に突起83を有
するステンレス鋼製ケース81の中に磁石82を配置したも
のである。しかして、上記磁石82としては、強力な磁力
を有するSm(サマリウム)−Co(コバルト)系の希土類
磁石が用いられている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、従来の磁石は、いずれもその磁石吸引力
が200g〜300g程度と低い。この吸引力は、旧来より多用
されている生歯間にバネで機械的に保持する場合の500g
以上の力に対して低い。
また、磁石は口腔内で腐食し易いため、希土類磁石が口
腔内に露出している場合には、磁石が錆びて急速な吸引
力の減衰と共に安全上も問題があった。また、防錆のた
めに前記公報のごとく、ステンレス鋼等の非磁性合金の
ケースで磁石体全体を被覆した場合には、磁石と根面板
との間に非磁性合金が介在するため、吸引力が低下して
しまう。
かかる問題点に鑑み、発明者等は先に、根面板に対して
垂直な一対のヨークの間に希土類磁石の磁石を配置し、
かつ該磁石の下面に非磁性合金のスペーサを配置し、ヨ
ークとスペーサの根面板側を除いてキャップで被冠した
磁性体とからなる義歯アタッチメントを提案した。
発明者等の前記提案に係る義歯アタッチメントは、一対
のヨークには軟磁性合金を用いているので、2つのヨー
クと根面板の間に磁気回路が形成され、大きな吸引力を
発生することができる。また、スペーサおよびキャップ
はヨークと根面板の間に介在せず、かつ非磁性合金によ
り構成しているので、強い吸引力を確保できる。また、
根面板の上面に13Cr−2Mo、17Cr−2Mo等の軟磁性合金か
らなる保持板を接着すれば、さらに吸引力を向上でき
る。
ところで、根面板に保持板を接着するには、通常鋳接に
よっている。すなわち、鋳型内の所定の位置に保持板を
固定して根面板を鋳込んで保持板を鋳接している。然る
に、保持板は鋳型内で移動し易く、正確な位置にうまく
鋳接できないという問題点がある。このように鋳接の際
に保持板がずれると、義歯アタッチメントの吸引力が低
下してしまう。
また、従来においては、根面板側におけるキャップとヨ
ークおよびスペーサとの境界面およびヨークとスペーサ
の境界面はろう付けによるか接着剤また樹脂により接着
するものであった。
境界面をろう付けにより接着する場合は、電食によって
ヨークが腐食するおそれがあり、各部材との密着性が不
安定でろう材が剥離することがある。また、ろう流れの
不良により隙間が残りシールが不完全になることがあ
り、そのためその隙間から腐食が進行する。さらに、ろ
う材は強度が弱いため、強い外部応力が作用すると接合
部が剥離することがある。
接着剤、例えばコンポジット系レジン(通称:パナビ
ア)、スーパーボンドまた樹脂を用いて境界面を接合す
る場合は、接合部そのものが耐久性に劣り、長期に亙る
唾液の侵入を完全に防ぐことができない。
一方、キャップを無しにしてアタッチメント全体を金、
銀またはニッケルめっきをするという方策があるが、こ
の方策ではめっきが剥離しやすく、長期間に亙って防食
作用を維持することが困難である。
本発明は、根面板に取り付けた保持板と根面板に対して
垂直な一対のヨークの間に希土類磁石の磁石体を配置
し、かつ該磁石体の下面に非磁性合金のスペーサを配置
し、ヨークとスペーサの根面板側を除いてキャップで被
冠した磁性体とからなる義歯アタッチメントにおける保
持板のずれによる吸引力の低下およびキャップとヨーク
およびスペーサとの接合部、ヨークとスペーサの接合部
における前記のごとき問題点に鑑みてなされたものであ
って、小型で高吸引力を有し唾液による腐食から完全に
シールするとともに、強度および耐久力に優れ、磁性体
と保持板のずれがなく優れた吸引力を有する義歯アタッ
チメントを提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 発明者等は前記問題を解決するため、根面板に保持板を
鋳接する際に、保持板を確実に鋳型に固定することにつ
いて鋭意検討を重ね、保持板を固定する手段として鋳接
に際して取手を取り付けるということを着想し本発明を
完成した。
また、キャップとヨークおよびスペーサとの接合部、ヨ
ークとスペーサの接合部における充分な防錆力を確保す
るためには、ろう付けによらずに溶接により接合すると
ともに、接合部の部材同志の充分な溶け込みが必要であ
るとの着想を得た。本発明はかかる知見に基づいて接合
部に溶接を適用することによって本発明を完成した。
本発明の義歯アタッチメントの製造方法は、歯根部に埋
設した根面板の磁性体側に接着した軟磁性合金からなる
保持板と、前記根面板に対向するよう義歯床内に埋設さ
れる磁性体とからなる義歯アタッチメントの製造方法で
あって、 前記磁性体は、根面板側に設けた耐食非磁性合金からな
るスペーサと、前記スペーサを挟持して前記根面板側に
向けて立設した耐食軟磁性合金からなる一対のヨーク
と、前記スペーサの反根面側とS極とN極を前記両ヨー
クに対向させて設けた磁石と、前記磁石と前記一対のヨ
ークおよび前記スペーサの根面板側を除いて被冠したキ
ャップとよりなり、 前記根面板に前記保持板を鋳接するに際し、前記保持板
に取手を取り付けて鋳接することを要旨とする。
また、本発明の義歯アタッチメント用保持板は、歯根部
に埋設した根面板の磁性体側に接着した軟磁性合金から
なる保持板であって、上面または側面に鋳型内固定用の
取手を取付けたことを要旨とする。
磁性体に用いる磁石としては、最大エルネギー積が20MG
Oe(メガ・ガウス・エルステッド)以上である希土類磁
石を用いることが好ましい。これにより、約500g以上の
吸引力を有する義歯アタッチメントとすることができ
る。かかる希土類磁石としては、SmCo5、SmCo17などのSm
−Co系合金、Nb−Fe−B系合金などがある。
また、ヨークおよび保持板の軟磁性合金としては、飽和
磁束密度13000G以上、透磁率3000以上のものを用いるこ
とが好ましい。かかる特性を有するヨークおよび保持板
の軟磁性合金としては、純鉄、13Cr−2Mo鋼、17Cr−2Mo
鋼などがある。また、ヨークおよび保持板の軟磁性合金
の飽和磁束密度が20000G以上の場合には、更に吸引力が
増大する。かかる軟磁性合金としては純鉄がある。な
お、第5図および第6図に飽和磁束密度および最大エル
ネギー積と吸引力の関係を示した。
保持板の取り付ける取手の大きさおよび形状は、保持板
が鋳型内に確実に固定できる程度のものであれば良い。
また、取手を取り付ける位置は第2図(a)に示すよう
に保持板の側面でも良く、また第2図(b)および
(c)に示すように保持板の上面中央または側面に添わ
せるようにしても良い。なお、この取手は鋳接後に取り
除かれる。
また、本発明の義歯アタッチメントにおいては、接合部
の溶接はレーザ溶接または電子ビーム溶接を用いること
ができるが、溶接による溶け込み深さが0.02mm以上であ
って、スペーサの高さ以下とすることが好ましい。接合
部の溶接の溶け込み深さが0.02mm以下であると、接合部
の充分な強度が得られず、また唾液に対するシール性が
確保できないからである。逆に、接合部の溶接の溶け込
み深さがスペーサの高さ以上になると、磁石体に溶接の
熱影響が及び磁性体の磁気特性を劣化するからである。
なお、本発明においては、スペーサ高さは0.05〜1.0mm
とすることが好ましい。スペーサ高さが0.05mm以下であ
ると充分な耐摩耗性を確保することが困難であり、従っ
てシール性および接合部の充分な強度も得られない。し
かし、スペーサ高さが1.0mmを超えると、磁気吸引力が
充分でなくなる。
また、接合部の耐食性を向上させるため、ヨークには重
量比でC;0.03%以下、Cr;11〜30%、Mo;4%以下の耐食
軟磁性合金を用い、スペーサおよびキャップにはTiまた
はTi合金もしくはC;0.03%以下の非磁性ステンレス鋼を
用いることが好ましい。なお、耐食軟磁性合金には必要
に応じてNbまたはTiを添加することも可能である。
[作用] 本発明の義歯アタッチメントの製造方法は、歯根部に埋
設した根面板の磁性体側に接着した軟磁性合金からなる
保持板と、前記根面板に対向するよう義歯床内に埋設さ
れる磁性体とからなる義歯アタッチメントにおいて、前
記根面板に前記保持板を鋳接するに際し、前記保持板に
取手を取り付けて鋳接するので、保持板を磁性体とのず
れを生ずることなく正確な位置に鋳接することができ
る。
本発明の義歯アタッチメント用保持板は、根面板に鋳接
するに際して、鋳型内固定用の取手を取り付けたので、
鋳型内の所定の位置に確実に固定することができ、磁性
体と保持板のずれがなく、優れた吸引力を確保すること
ができる。
本発明の義歯アタッチメントの磁性体は、キャップとヨ
ークおよびスペーサとの接合部、ヨークとスペーサの接
合部を溶接により相接する両部材を完全に溶け込ませて
接合したので、境界面が消失し、唾液の侵入を完全に防
ぐことができる。これにより磁性体は唾液の侵入による
腐食から完全に保護される。また、接合部の耐食性は、
母材と同等かそれ以上となり、接合部からの腐食、電食
のおそれはない。
さらに、接合部の強度はろう付けに比較して高く、機械
的応力による破損がなく、また接合部が摩滅するおそれ
がない。また、接合部は耐久力が優れ、非常に長期に亙
って耐食性は安定し、剥離のおそれもない。
[実施例] 本発明の実施例について従来例と共に説明し、本発明の
効果を明らかにする。
先ず、本発明が適用される義歯アタッチメントの構造に
ついて説明する。第3図は本発明が適用される義歯アタ
ッチメントの断面図、第4図は磁性体の分解斜視図であ
る。スペーサ13は耐食非磁性合金からなり、磁性体10の
根面板側の中央を横断するように配置され、その両側に
は耐食軟磁性合金からなる一対のヨーク11、11が根面板
93に向けて立設され、スペーサ13を挟持する形となって
いる。磁石12は一対のヨーク11、11の間に嵌挿され、一
方のヨーク11にN極が、他方のヨーク11にS極が相接す
るようにしてスペーサ13の上に配置されている。キャッ
プ14は耐食非磁性合金からなり、スペーサ13、ヨーク1
1、11および磁石12が組み合わされて一体となったもの
を、根面板に対面する下面を除いて全周面を覆ってい
る。また、根面板93の磁性体側には保持板96が鋳接によ
り接着されている。
根面板93に保持板96を鋳接するには、取手97を取り付け
た保持板96を根面板形状をしたロウ模型の所定の位置に
固定し、第1図に示すように周囲をバックアップとなる
鋳型材で固めて鋳型98を造型する。ロウ模型を脱ろうし
た後、湯口99から溶湯を注入して根面板93を鋳造すると
同時に保持板97を鋳接する。
以上の構成からなる義歯アタッチメントについて、本発
明例A〜Cとして第1表〜第3表に示すように、各部品
の寸法、磁気特性および材料を3通り選んで、レーザ溶
接により接合した。
また、比較例Dとして構造は本発明品と同じであるが、
保持板93に取手97を付けていない義歯アタッチメントに
ついても、第4表に示す各部の寸法、磁気特性および材
料により、レーザ溶接により接合して調製した。
さらに、従来例として、構造および材質の異なる義歯ア
タッチメント(従来例EおよびF)についても、第5表
および第6表に示す各部材の寸法、磁気特性および材料
により、歯科用接着剤により接着した。なお、従来例E
の義歯アタッチメントの磁性体は第7図に示すごとく、
断面逆U字のヨーク71と、その中に上下方向にS極とN
極を配した磁石72とよりなる。磁石72は保持板96を接着
した根面板93と直接接触する状態にある。また、従来例
Fの義歯アタッチメントは第8図に示すごとく、前記従
来例Eと同じ構造の磁性体に保持板96と対向する部分全
面に、非磁性箔73を配設したものである。
以上のようにして調製した本発明例、比較例および従来
例の義歯アタッチメントについて、耐食性、耐摩耗性、
鋳接状態および吸引力について測定し、測定結果を第7
表に示した。
耐食性についは、磁性体を37℃の人口唾液中に、1000時
間浸漬した後の変色度で評価し、変色しなかったものに
ついては○、変色が見られたものは×で示した。
耐摩耗性については、根面板と磁性体とを500gの荷重で
1000回擦った後のアタッチメント側表面の状態を以て評
価し、耐摩耗性が優秀で変化のなかったものについては
○で、欠けた部分の見られたものについては×で示し
た。
吸引力については、磁性体と根面板との間の磁気吸引力
(g)を測定した。
鋳接状態については、鋳接後の保持板の位置により評価
した。保持板のずれがなくうまく鋳接できたものについ
ては○、保持板がずれてうまく鋳接できなかったものに
ついては×で示した。なお、従来例EおよびFは、本発
明における保持板に該当する部品がなく、保持板の根面
板への鋳接は考慮しなくて良いため、鋳接状態は評価し
ていない。
第7表の測定結果に示したように、第5表の従来例Eお
よび第6表の従来例Fは、吸引力が200〜300gと低く、
接合部が共に接着剤付けであるため、耐食性、耐摩耗性
が共に劣る。
これに対して本発明例である第1表〜第3表の発明例A
〜Cおよび比較例Dは、キャップ、ヨークおよびスペー
サの根面板側の境界面を溶接したことにより、耐食性お
よび耐摩耗性がいずれも優れており、吸引力も700g以上
と優れている。
鋳接状態に関しては、本発明例A〜Cはいずれも保持板
のずれがなくうまく鋳接できているが、比較例Dは取手
を取り付けずに鋳接したので、保持板のずれがありうま
く鋳接できていなかった。
[発明の効果] 本発明は、根面板に接着した保持板と根面板に対して垂
直な一対のヨークの間に希土類磁石の磁石体を配置し、
かつ該磁石体の下面に非磁性合金のスペーサを配置し、
ヨークとスペーサの根面板側を除いてキャップで被冠し
た磁性体とからなる義歯アタッチメントにおいて、根面
板に保持板を鋳接するに際し、鋳型固定用の取手を保持
板に取り付け、鋳型内の所定の正確な位置に保持板を固
定して鋳接するものであって、保持板のずれがないので
安定した保持板と磁性体の吸引力が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明例により根面板に保持板を鋳接する際の
鋳型の断面図、第2図(a)(b)(c)は取手の取り
付け例を示す斜視図、第3図は本発明が適用される義歯
アタッチメントの断面図、第4図は第1図の磁性体の分
解斜視図、第5図および第6図は飽和磁束密度および最
大エルネギー積と吸引力との関係を示す線図、第7図お
よび第8図は従来の義歯アタッチメントの基本構造を説
明する断面図、第9図は従来の義歯の断面図、第10図は
従来の義歯アタッチメントの磁性体の断面図である。 1……義歯アタッチメント、10……磁性体、11……ヨー
ク、12……磁石、13……スペーサ、14……キャップ、91
……歯槽、93……根面板、94……義歯床、95……義歯
部、96……保持板、97……取手、8……従来の義歯アタ
ッチメントの磁性体

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】歯根部に埋設した根面板の磁性体側に接着
    した軟磁性合金からなる保持板と、前記根面板に対向す
    るよう義歯床内に埋設される磁性体とからなる義歯アタ
    ッチメントの製造方法であって、 前記磁性体は、根面板側に設けた耐食非磁性合金からな
    るスペーサと、前記スペーサを挟持して前記根面板側に
    向けて立設した耐食軟磁性合金からなる一対のヨーク
    と、前記スペーサの反根面側にS極とN極を前記両ヨー
    クに対向させて設けた磁石と、前記磁石と前記一対のヨ
    ークおよび前記スペーサの根面板側を除いて被冠したキ
    ャップとよりなり、 前記根面板に前記保持板を鋳接するに際し、前記保持板
    に取手を取り付けて鋳接することを特徴とする義歯アタ
    ッチメントの製造方法。
  2. 【請求項2】歯根部に埋設した根面板の磁性体側に接着
    する軟磁性合金からなる保持板であって、上面または側
    面に鋳型内固定用の取手を取付けたことを特徴とする義
    歯アタッチメント用保持板。
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