JPH07277730A - 高ダンピング酸化物超伝導材料およびその製造方法 - Google Patents

高ダンピング酸化物超伝導材料およびその製造方法

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JPH07277730A
JPH07277730A JP6097933A JP9793394A JPH07277730A JP H07277730 A JPH07277730 A JP H07277730A JP 6097933 A JP6097933 A JP 6097933A JP 9793394 A JP9793394 A JP 9793394A JP H07277730 A JPH07277730 A JP H07277730A
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充 森田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気浮上装置などで振動の減衰のために用い
るダンピング特性の大きい酸化物超伝導材料を提供す
る。 【構成】 RE、Ba、Cuの酸化物を含む前駆体から
成形体を作製し、これを成形体中が211相と液相から
なる半溶融状態に加熱し、その後酸化性雰囲気中で徐冷
することで単結晶状のREBa2 Cu37-x 相中にR
2 BaCuO5が分散した組織または、さらにBaC
uO2 、CuO、またはAgが粒状に分散した組織を有
する超伝導材料を製造し、77K、1TにおいてJC
2000A/cm2 以下である高ダンピング酸化物超伝
導材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は単結晶状のREBa2
37-x (0≦x≦0.3)(以下すべてREはY、
La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、T
m、Yb、Luからなる希土類元素のいずれかまたはこ
れらの組み合わせ)中に少なくともRE2 BaCuO5
を含む酸化物超伝導ダンピング材料およびその製造方法
に関するものであり、主に磁気浮上関連の分野に用いら
れる。
【0002】
【従来の技術】臨界温度が液体窒素温度(77K)を超
える酸化物超伝導材料の発見により、超伝導材料の利用
分野も多岐に亘るようになっている。この中で単結晶状
のREBa2 Cu37-x 中にRE2 BaCuO5 がが
微細分散したバルク超伝導材料(いわゆるQMG材料)
はその高い臨界電流密度(JC )特性のために、磁気浮
上搬送、磁気浮上ベアリング、磁気浮上フライホイール
等へ応用が期待されている。この様な磁気浮上は図2に
原理図を示すが、高いJC を有するQMG材料1と永久
磁石2とを組み合わせ、永久磁石の磁束をQMG材料が
トラップすることによって、安定に浮上させるものであ
る。この様な状態においては、平衡状態からずれた場
合、元の位置に戻そうとする力が働き、この結果高度な
制御機構が無くても安定に浮上させることが可能にな
る。なお図中3は断熱材、4は液体窒素である。
【0003】しかしながら、この様な磁気浮上を上記応
用分野に適用する場合、平衡位置での振動を抑制する必
要がある。例えば磁気浮上搬送では搬送されているもの
が平衡点で長時間振動することになり、位置決め精度が
悪くなる。また磁気浮上ベアリングでは、回転数が固有
振動数に達した時に、共振現象により振動が増大し、回
転軸がはずれてしまうことになる。上記のような振動を
減衰させる機構はダンピングと呼ばれるものであり、十
分に大きなダンピングが磁気浮上応用には必要である。
【0004】磁気的な振動を減衰させる方法には、銅や
銀等の高い電気伝導率を有する金属材料を振動する磁場
空間に配置し、電磁誘導による電流を金属材料中に流
し、ジュール熱にして放出する方法が良く知られてい
る。すなわち金属材料を用い振動のエネルギーを電気エ
ネルギーに変えさらに熱エネルギーに変えてダンピング
させている。この時、電気伝導率の大きなものほどダン
ピング効率は高くなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、窒素の
沸点や融点等の温度領域では、格子振動が電気抵抗の主
たる要因になるため、焼きなました無酸素銅や高純度の
銀でさえ、107 〔1/Ω・cm〕以下の電気伝導率を
得ることは原理的に不可能であり、ダンピング効率に限
界があった。そこで本発明者は超伝導材料を用いること
ではじめてこの限界を克服し、高ダンピング特性を有す
る超伝導材料およびその製造方法を提供するものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するものであって、単結晶状のREBa2 Cu37- x
相中にRE2 BaCuO5 が分散しており、かつ77
K、1Tにおいて局所のJC が2000A/cm2 以下
であることを特徴とする高ダンピング酸化物超伝導材料
である。
【0007】また、単結晶状のREBa2 Cu37-x
相中にRE2 BaCuO5 が分散し、さらにBaCuO
2 またはCuOが粒状に分散した組織を有することを特
徴とする高ダンピング酸化物超伝導材料である。ここに
おいて、さらにAgが粒状に分散していること、77
K、1Tにおいて局所のJC が500A/cm2 以下で
あることも特徴とする。
【0008】また、77K、1Tにおいて10000A
/cm2 以上の臨界電流密度を有する超伝導材料と前記
いずれかの超伝導材料とが一体となっていることを特徴
とする高ダンピング酸化物超伝導材料である。
【0009】またさらに、RE、Ba、Cuの酸化物を
含む前駆体から成形体を作製し、成形体を種結晶の上に
配置し、これを成形体中が211相と液相からなる半溶
融状態に加熱し、その後酸化性雰囲気中で徐冷すること
で単結晶状のREBa2 Cu37-x 相中にRE2 Ba
CuO5 が微細分散した組織を有する超伝導材料を含
み、77K、1Tにおいて局所のJC が2000A/c
2 以下であることを特徴とする高ダンピング酸化物超
伝導材料の製造方法である。
【0010】また、RE、Ba、Cuの酸化物を含む前
駆体から成形体を作製し、成形体を種結晶の上に配置
し、これを成形体中が211相と液相からなる半溶融状
態に加熱し、その後、酸化性雰囲気中で徐冷することで
単結晶状のREBa2 Cu37-x 相中にRE2 BaC
uO5 が分散し、さらにBaCuO2 またはCuOが粒
状に分散した組織を有する超伝導材料を含むことを特徴
とする高ダンピング酸化物超伝導材料の製造方法であ
る。ここにおいて、前駆体中にAgが添加されているこ
とも特徴とする。
【0011】またさらに、単結晶状のREBa2 Cu3
7-x 相中にRE2 BaCuO5 が分散しており、かつ
0.01〜2.0wt%のPtまたはRhを含む酸化物
超伝導材料と、前記いずれかに記載の高ダンピング酸化
物超伝導材料とを組み合わせ、永久磁石と対向させたこ
とを特徴とする磁気浮上システムである。また、この磁
気浮上システムを含むことを特徴とする軸受けである。
【0012】
【作用】従来のQMG材料は高いJC 特性を得るために
単結晶状の123相中に211相を微細分散させたもの
である。出発組成(RE:Ba:Cu)を1:2:3か
ら211側にずらしかつ微細化させるためにPtやRh
を添加し、77K、1Tで約35000A/cm2 程度
の高いJC を得ている。これに対し本発明者は、高いダ
ンピング特性を得るためには、高いHC2(上部臨界磁
場)と低いJC 特性が必要であることをはじめて認識す
ることによって、上記高JC のQMG材料とは全く逆の
発想および手法により、高ダンピング材を製造し得たも
のである。
【0013】具体的には単結晶状のREBa2 Cu3
7-x 相中に少なくともRE2 BaCuO5 が分散してお
り、約90Kの臨界温度を有し、かつ77K、1Tにお
いて局所のJC が2000A/cm2 以下である酸化物
超伝導材料である。これは123相中の211粒をより
大きくし、かつ211粒の体積率をより少なくするプロ
セスにより製造された。
【0014】また、単結晶状のREBa2 Cu37-x
相中にRE2 BaCuO5 が分散しさらにBaCuO2
またはCuOが球状に分散した組織を有することを特徴
とする酸化物超伝導材料は、未反応の211相を減らす
ようにBa、Cuを過剰に加え熱処理したときに得られ
るもので、211相が減少した分、複合材として機械的
強度を高めている。そして、77K、1Tにおいて局所
のJC が500A/cm2 以下である酸化物超伝導ダン
ピング材料となる。
【0015】上記のようなダンピング材5を図3のよう
に配置することにより先に図2について述べた振動を減
衰させることができ、安定した磁気浮上システムが得ら
れる。すなわち単結晶状のREBa2 Cu37-x 相中
にRE2 BaCuO5 が分散しており、かつ0.01〜
2.0wt%のPtまたはRhを含む高いJC のすなわ
ち10000A/cm2 以上のJC を有する酸化物超伝
導材料と上記の低いJC の高ダンピング酸化物超伝導材
料とを組み合わせ、永久磁石と対向させることによって
磁気浮上システムとする。なお図3において、ダンピン
グ材5と高JC超伝導材料1とは一体化されていても単
に重なっている時と同様の効果が得られることは、明ら
かである。さらにこの磁気浮上システムは磁気浮上軸受
けにも適用できる。
【0016】超伝導体を用いたダンピングの原理を以下
に述べる。まず、超伝導体内の量子化磁束が変位するこ
とによって電場が形成される。この電場に対応して量子
化磁束内の常伝導電子が流れをつくることになる。その
結果、常伝導電子が結晶格子と相互作用し熱エネルギー
として放出されることになる。このような損失パワー
(W)は、核内と核外での損失パワーに分けて計算さ
れ、それぞれをW1 、W2とすると数1、数2で表され
る。
【0017】
【数1】
【0018】
【数2】
【0019】ここで、 B :磁場 HC2:上部臨界磁場 V :磁束の移動速度 R0 :磁束格子のユニットセル ρn :常伝導比抵抗 μ0 :真空の透磁率 ξ :コヒーレンス長さ である。
【0020】全損失パワー(W1 +W2 )を一つの比抵
抗(フロー比抵抗ρf )をもつ等価な常伝導導体におけ
る損失パワー(πR0 222 /ρf )に等しいとおい
てρf を求めると、数3のようになる。
【0021】
【数3】
【0022】ここで、B≪μ0C2が成り立つ場合、数
4のように近似することができる。
【0023】
【数4】
【0024】この式から、以下のことがわかる。 (1)ある温度において、常伝導材料(高電気伝導率を
有する金属材料等)とある超伝導材料とをダンピング特
性において比較する場合、常伝導材料の比抵抗ρ(M)
と超伝導材料のρf とを比較すれば良いことがわかる。
そして、このことから常伝導材料で不可能なダンピング
を超伝導材料により可能にできうることがわかる。 (2)超伝導ダンピング材料に適した材料は、HC2が大
きくρn が小さな材料であることがわかる。 (3)また、このことから焼結体などの弱結合を多く含
む材料は弱結合部のHC2が小さくなるため、単結晶状の
材料がより望ましいことがわかる。しかしながら、実質
的に単結晶状の材料がいくつか集まった材料でもほぼ同
様の特性が期待できることは明らかである。なお、本発
明において単結晶状というのは完璧な単結晶でなく小傾
角粒界など実用に差支えない欠陥を有するものも包含す
るという意味である。
【0025】次に実際に超伝導体に磁束があり、外部磁
場分布が変化する場合を考える。超伝導体のJC (すな
わちピンニング力)が大きい場合、磁束の動きを止める
力が大きいため、超伝導体内の磁束の変位はJC が小さ
いものに比べて小さくなる。損失パワーは体積に比例す
るため、HC2やρn が同じ材料の場合、結果的にJC
低い材料の方がより高いダンピングを達成することにな
る。
【0026】つぎに上記知見を基に、実際の材料にあて
はめて説明する。本発明の要旨において述べられている
REBa2 Cu37-x 相(123相)およびRE2
aCuO5 相(211相)におけるREは、Y、La、
Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Y
b、Luからなる希土類元素およびそれらの組み合わせ
であり、LaとNdを含む系に関しては1:2:3の化
学量論組成からはずれ、REのサイトにBaが一部置換
した状態になることもある。また211相においてもL
a、NbはY、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、
Tm、Yb、Luとは幾分異なり、金属元素の比が非化
学量論的組成であったり結晶構造が異なっていることが
知られている。
【0027】そしてこの123相は211相とBaとC
uとの複合酸化物からなる液相との包晶反応 211相+液相(BaとCuの複合酸化物)→123相 によりできる。この包晶反応により123相ができる温
度(Tf :123相生成温度)はほぼRE元素のイオン
半径に関連し、イオン半径の減少に伴いTf も低くな
る。
【0028】単結晶状の123相中に211相が微細分
散したQMG材料は123相が結晶成長するさい、未反
応の211粒が123相中に取り残されるためにでき
る。すなわち高ダンピング材QMG材料は、 211相+液相(BaとCuの複合酸化物)→123相
+211相・・(1) または、 211相+液相→123相+211相+BaCuO2
CuO ・・(2) で示される反応によりできる。
【0029】JC を下げる(すなわち、ピン力を低下さ
せる)には、123相中の非超伝導相の粒の体積率を低
下させ、さらに粒径を大きくする必要がある。ピン力を
減らすためには、(2)で示される反応を起すことが有
効である。211相の量を減らすには、液相成分である
Ba、Cuを123組成の近傍もしくは、幾分液相成分
寄りに出発組成を調整し、極力211相と液相成分とを
反応させ123相に変える必要がある。しかしながら、
211相はある程度減少するが全くなくすことは、反応
機構から難しい。逆に211を減らすために過剰に加え
た液相成分がCuOおよびBaCuO2 となって材料中
に分散する。このとき、CuOおよびBaCuO2 は5
0〜100μm程度の粒状になる。211粒の大きさ
は、数十μmであるため、粒状のCuOおよびBaCu
2 は、211粒よりピン力が小さく、JC を更に下げ
る働きがあると言える。このような材料の代表的な組織
のスケッチを図1に示す。またこのような材料の磁化曲
線を高JC 材料の磁化曲線図4(b)と比較して図4
(a)に示す。とくに5000ガウス(0.5T)を超
える外部磁場では極めてJC が低くなり、ピン力が低下
していることがわかる。
【0030】QMG材料中の第2相(211相、CuO
およびBaCuO2 )の分散は、ダンピング向上(JC
の減少)の観点から極めて重要である。これら第2相に
は次のような働きがある。 (1)2次元的な結晶構造を有する123相中に分散す
ることで、極めて劈開しやすい123相を機械的に強化
しバルク材料として成り立たせている。 (2)211相は123相の成長過程において液相中に
不足しているRE成分をファセットを介して供給し12
3相のファセット成長を安定化することにより、123
相の単結晶化に寄与している。 (3)123相中に分散することによって、JC を上げ
る働きをしている。
【0031】また、前駆体の製造工程に約5wt%のA
gを添加した場合、BaCuO2 やCuO中にAgが含
まれたり、比較的純度の高い数100μmのAg粒が分
散する。このような材料もほぼ同等のダンピング特性を
有する。また、Ag添加された材料は123相生成温度
が添加量によって40℃程度低下するので徐冷の温度領
域を幾分低くして、材料を作製する必要がある。
【0032】
【実施例】
実施例1 市販されている純度99.9%の各試薬Y23 、Ba
2 、CuOをY:Ba:Cuの金属元素のモル比が1
1:19:28(すなわち最終組織の123:211の
モル比が9:1)になるように混合した。混合粉は一旦
800℃で8時間仮焼されさらに粉砕された。仮焼粉は
内径60mmの円筒状金型により厚さ約7mmの円盤状
に成形された。
【0033】予め用意しておいた、Sm系種結晶(直径
55mm、厚さ5mm)に乗せ、さらにAl23 の支
持材の上に置き、電気炉内に配置した。種結晶の方位は
c軸が円盤状の前駆体の法線になるように、前駆体の下
に配置した。成形体は大気中において1050℃まで8
時間で昇温、30分保持された後、1005〜980℃
まで100時間かけて徐冷しY系QMG結晶の成長を行
った。室温まで約15時間かけて冷却した。酸素気流中
で約600〜350℃まで50時間で冷却し酸素富化処
理を行った。厚さ約3mmに切りだし、円盤型の単結晶
状のY系QMG結晶を得た。
【0034】得られた材料の微細組織は、5〜20μm
程度の211相が5〜10体積%程度分散していた。数
mm角の小片を切りだし、試料振動型磁束計を用い磁化
曲線から、77K、1Tにおける臨界電流密度(JC
を算出したところ、950A/cm2 であった。
【0035】ダンピング特性を評価するために、次のよ
うな実験を行った。図2の様に、高いJC を有する浮上
用QMG材料の上に10mmのスペーサーをはさんで2
0mm角、厚さ8mmのSm−Co系永久磁石を配置し
た。その後、液体窒素を浮上用QMG材の表面から約3
mmの高さまで注いだ。激しい沸騰が収まり、十分QM
G材が冷却した後、スペーサーをはずしたところ、QM
G材から約8mmの高さに磁石が浮上した。プラスチッ
ク製のピンセットを用い、この磁石を約45度ひねり、
解放したところ、磁石は、ほぼ水平に回転振動した。こ
の振動は約10秒後も肉眼で観察できた。
【0036】そこで、ダンピング材料を浮上用材料と磁
石の間に挿入し、同様の実験を行ったところ、平衡位置
を中心に、約5/4往復して振動が観察されなくなり、
約1秒以内に減衰した。これにより、上記ダンピング材
料は、すぐれたダンピング特性を有していることがわか
った。
【0037】また比較材として厚さ3mm直径50mm
の銅板および同様の形状を有するY系焼結体を用い、そ
れぞれを浮上材料と磁石の間に配置し同様の実験を行っ
た。その結果、銅板は約7/4往復して振動が観察され
なくなった。また、Y系焼結体も7/4往復して振動が
観察されなくなった。これにより、上記ダンピング材料
はCuや焼結体以上のダンピング特性を有することがわ
かった。
【0038】実施例2 実施例1のRE(希土類組成)、金属元素のモル比およ
び熱処理条件を表1のように変え、同様の実験を行っ
た。その結果、JC は表1の様になり、これらのダンピ
ング材料を浮上用材料と磁石の間に挿入し、同様の実験
を行ったところ、平衡位置を中心に、約5/4往復して
振動が観察されなくなり、約1秒以内に減衰した。この
ことから、これらの材料は優れたダンピング特性を有し
ていることがわかった。
【0039】
【表1】
【0040】実施例3 市販されている純度99.9%の各試薬Y23 、Ba
2 、CuOをY:Ba:Cuの金属元素のモル比が1
9:39:58(すなわち最終組織の123:211の
モル比が19:1)になるように混合した。混合粉は一
旦870℃で6時間仮焼されさらに粉砕された。仮焼粉
は内径50mmの円筒状金型により厚さ約9mmの円盤
状に成形された。
【0041】予め用意しておいた、Sm系種結晶〔直径
50mm、厚さ5mm、JC =21000A/cm2
(77K、1T)〕に乗せ、さらにAl23 の支持材
の上に置き、電気炉内に配置した。種結晶の方位はc軸
が円盤状の前駆体の法線になるように、前駆体の下に配
置した。成形体は酸素中において1070℃まで9時間
で昇温、30分保持された後、1035〜990℃まで
40時間かけて冷却しY系QMG結晶の成長を行った。
室温まで約10時間かけて冷却した。この段階で、円盤
型の高いJC を有するSm系超伝導材料と比較的低いJ
C を有するY系超伝導材料が一体になった超伝導材料が
得られた。これからY系超伝導材料を切りだし以下の組
織観察、特性評価を行った。
【0042】得られた材料の微細組織は、5〜20μm
程度の211相が5〜10体積%程度分散しており、ま
た20〜50μm程度のBaCuO2 またはCuOが5
〜10体積%みられた。数mm角の小片を切りだし、試
料振動型磁束計を用い磁化曲線から、77K、1Tにお
ける臨界電流密度(JC )を算出したところ、300A
/cm2 であった。
【0043】ダンピング特性を評価するために、次のよ
うな実験を行った。図2の様に、高いJC を有する浮上
用QMG材料の上に10mmのスペーサーをはさんで2
0mm角、厚さ8mmのSm−Co系永久磁石を配置し
た。その後、液体窒素を浮上用QMG材の表面から約3
mmの高さまで注いだ。激しい沸騰が収まり、十分QM
G材が冷却した後、スペーサーをはずしたところ、QM
G材から約8mmの高さに磁石が浮上した。プラスチッ
ク製のピンセットを用い、この磁石を約45度ひねり、
解放したところ、磁石は、ほぼ水平に回転振動した。こ
の振動は約10秒後も肉眼で観察できた。
【0044】そこで、ダンピング材料を浮上用材料と磁
石の間に挿入し、同様の実験を行ったところ、平衡位置
を中心に、約3/4往復して振動が観察されなくなり、
約1秒以内に減衰した。これにより、上記ダンピング材
料は、すぐれたダンピング特性を有していることがわか
った。
【0045】また比較材として厚さ3mm直径50mm
の銅板および同様の形状を有するY系焼結体を用い、そ
れぞれを浮上材料と磁石の間に配置し同様の実験を行っ
た。その結果、銅板は約7/4往復して振動が観察され
なくなった。また、Y系焼結体も7/4往復して振動が
観察されなくなった。これにより、上記ダンピング材料
はCuや焼結体以上のダンピング特性を有することがわ
かった。
【0046】実施例4 実施例3のRE(希土類組成)、雰囲気、金属元素のモ
ル比および熱処理条件を表2のように変え、同様の実験
を行った。その結果、JC は表2の様になり、これらの
ダンピング材料を浮上用材料と磁石の間に挿入し、同様
の実験を行ったところ、平衡位置を中心に、約3/4往
復して振動が観察されなくなり、約1秒以内に減衰し
た。このことから、これらの材料は優れたダンピング特
性を有していることがわかった。
【0047】
【表2】
【0048】実施例5 実施例3の記載の製造方法において、混合粉製造工程で
金属Ag粉末を5wt%添加して前駆体を作製し、また
徐冷温度域を990〜940℃に変え、残りは同様の工
程で円盤型の単結晶状のY系QMG結晶を得た。
【0049】得られた材料の微細組織は、5〜20μm
程度の211相が5〜10体積%程度分散しており、ま
た20〜30μm程度のBaCuO2 またはCuOおよ
びAgが5〜10体積%みられた。数mm角の小片を切
りだし、試料振動型磁束計を用い磁化曲線から、77
K、1Tにおける臨界電流密度(JC )を算出したとこ
ろ、300A/cm2 であった。
【0050】ダンピング特性を評価するために、次のよ
うな実験を行った。図2の様に、高いJC を有する浮上
用QMG材料の上に10mmのスペーサーをはさんで2
0mm角、厚さ8mmのSm−Co系永久磁石を配置し
た。その後、液体窒素を浮上用QMG材の表面から約3
mmの高さまで注いだ。激しい沸騰が収まり、十分QM
G材が冷却した後、スペーサーをはずしたところ、QM
G材から約8mmの高さに磁石が浮上した。プラスチッ
ク製のピンセットを用い、この磁石を約45度ひねり、
解放したところ、磁石は、ほぼ水平に回転振動した。こ
の振動は約10秒後も肉眼で観察できた。
【0051】そこで、ダンピング材料を浮上用材料と磁
石の間に挿入し、同様の実験を行ったところ、平衡位置
を中心に、約3/4往復して振動が観察されなくなり、
約1秒以内に減衰した。これにより、上記ダンピング材
料は、すぐれたダンピング特性を有していることがわか
った。
【0052】
【発明の効果】以上詳述したごとく本発明は、高品位の
酸化物超伝導ダンピング材料をおよび磁気浮上システム
を可能にするもので各種分野での応用が可能であり、極
めて工業的効果が大きい。具体例としては、磁気浮上搬
送、磁気浮上ベアリング、磁気浮上フライホイール等が
あげられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダンピング材料の組織のスケッチ図
【図2】ダンピング特性を評価した磁気浮上システムを
示す図
【図3】ダンピング特性を評価した磁気浮上システムを
示す図
【図4】(a)ダンピング材料と、(b)比較材の磁化
曲線を示すグラフ
【符号の説明】
1 高JC 超伝導材料 2 磁石 3 断熱材 4 液体窒素 5 ダンピング材

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単結晶状のREBa2 Cu37-x
    (REはYを含む希土類元素およびそれらの組み合わ
    せ)中にRE2 BaCuO5 が分散しており、かつ77
    K、1Tにおいて局所のJC が2000A/cm2 以下
    であることを特徴とする高ダンピング酸化物超伝導材
    料。
  2. 【請求項2】 単結晶状のREBa2 Cu37-x
    (REはYを含む希土類元素およびそれらの組み合わ
    せ)中にRE2 BaCuO5 が分散し、さらにBaCu
    2 またはCuOが粒状に分散した組織を有することを
    特徴とする高ダンピング酸化物超伝導材料。
  3. 【請求項3】 さらにAgが粒状に分散していることを
    特徴とする請求項2に記載の高ダンピング酸化物超伝導
    材料。
  4. 【請求項4】 77K、1Tにおいて局所のJC が50
    0A/cm2 以下であることを特徴とする請求項2また
    は3に記載の高ダンピング酸化物超伝導材料。
  5. 【請求項5】 77K、1Tにおいて10000A/c
    2 以上の臨界電流密度を有する超伝導材料と請求項1
    ないし4のいずれかに記載の超伝導材料とが一体となっ
    ていることを特徴とする高ダンピング酸化物超伝導材
    料。
  6. 【請求項6】 RE、Ba、Cuの酸化物を含む前駆体
    から成形体を作製し、成形体を種結晶の上に配置し、こ
    れを成形体中が211相と液相からなる半溶融状態に加
    熱し、その後酸化性雰囲気中で徐冷することで単結晶状
    のREBa2Cu37-x 相中にRE2 BaCuO5
    微細分散した組織を有する超伝導材料を含み、77K、
    1Tにおいて局所のJC が2000A/cm2 以下であ
    ることを特徴とする高ダンピング酸化物超伝導材料の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 RE、Ba、Cuの酸化物を含む前駆体
    から成形体を作製し、成形体を種結晶の上に配置し、こ
    れを成形体中が211相と液相からなる半溶融状態に加
    熱し、その後、酸化性雰囲気中で徐冷することで単結晶
    状のREBa 2 Cu37-x 相中にRE2 BaCuO5
    が分散し、さらにBaCuO2 またはCuOが粒状に分
    散した組織を有する超伝導材料を含むことを特徴とする
    高ダンピング酸化物超伝導材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 前駆体中にAgが添加されていることを
    特徴とする請求項7に記載の高ダンピング酸化物超伝導
    材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 単結晶状のREBa2 Cu37-x
    (REはYを含む希土類元素およびそれらの組み合わ
    せ)中にRE2 BaCuO5 が分散しており、かつ0.
    01〜2.0wt%のPtまたはRhを含む酸化物超伝
    導材料と、請求項1ないし5のいずれかに記載の高ダン
    ピング酸化物超伝導材料とを組み合わせ、永久磁石と対
    向させたことを特徴とする磁気浮上システム。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の磁気浮上システムを含
    むことを特徴とする軸受け。
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