JP3282688B2 - 酸化物超伝導体の製造方法 - Google Patents
酸化物超伝導体の製造方法Info
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- Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超伝導を応用したマグ
ネット、送電線、エネルギー機器及び医療機器等、各種
分野で利用可能な超伝導特性を有する酸化物超伝導体の
製造方法に関する。
ネット、送電線、エネルギー機器及び医療機器等、各種
分野で利用可能な超伝導特性を有する酸化物超伝導体の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年相次いで発見された銅を含む酸化物
超伝導体は、それ以前に知られていたニオブ系等の超伝
導臨界温度(Tc)を大きく上回るTcを持つ為、多く
の分野で応用研究が進められている。この様な銅を含む
酸化物超伝導体の中で、例えば、Sr、Ln(Lnは、
Y、Ca又はランタノイド元素を表す)、Cu及びOか
らなる超伝導体としては、Japanese Journal Applied P
hysics Vol.26 L804(1987)、Solid State Communicatio
ns Vol.63 535(1987) 、及び日本物理学会1990年秋
の分科会講演予稿集第3分冊234頁 2p-PS-30 にある
様に、YSr2Cu3Oy の組成を有する超伝導体が知ら
れている。又、Chemistry of Materials Vol.1 331(198
9)においては、一般式が、YSr2Cu3-xMxOy であ
り、Mが、Al、Fe、Co及びPbのいずれかの元素
であり、且つ0.4≦x≦1.0である組成のものが知
られている。
超伝導体は、それ以前に知られていたニオブ系等の超伝
導臨界温度(Tc)を大きく上回るTcを持つ為、多く
の分野で応用研究が進められている。この様な銅を含む
酸化物超伝導体の中で、例えば、Sr、Ln(Lnは、
Y、Ca又はランタノイド元素を表す)、Cu及びOか
らなる超伝導体としては、Japanese Journal Applied P
hysics Vol.26 L804(1987)、Solid State Communicatio
ns Vol.63 535(1987) 、及び日本物理学会1990年秋
の分科会講演予稿集第3分冊234頁 2p-PS-30 にある
様に、YSr2Cu3Oy の組成を有する超伝導体が知ら
れている。又、Chemistry of Materials Vol.1 331(198
9)においては、一般式が、YSr2Cu3-xMxOy であ
り、Mが、Al、Fe、Co及びPbのいずれかの元素
であり、且つ0.4≦x≦1.0である組成のものが知
られている。
【0003】一方、超伝導材料の実用特性に大きな影響
を与える臨界電流密度(Jc)を向上させる目的で、超
伝導体に非超伝導体を分散させることが行われている
が、この手法としては、YBa2Cu3Oy 系の超伝導体
に微細な非超伝導体Y2 BaCuO5 を分散させる方法
であるQMG法が、Japanese Journal Applied Physics
Vol.28 L1189(1989) に記載されており、又、同様の方
法であるMPMG法がProc.2nd ISS Tsukuba 1989 L285
(Spring-Verlag.1990)に記載されており、既に知られて
いる。又、この場合に非超伝導体としてPt及びRhを
用いる手法についても、上記と同様のYBa2Cu3Oy
系においてPt及びRhを適用するPDMG法が、Phys
ica C Vol.177 L101(1991)に記載されており、既に知ら
れている。又、Agを添加する方法は、従来よりセラミ
ックプロセスにおいて知られている。
を与える臨界電流密度(Jc)を向上させる目的で、超
伝導体に非超伝導体を分散させることが行われている
が、この手法としては、YBa2Cu3Oy 系の超伝導体
に微細な非超伝導体Y2 BaCuO5 を分散させる方法
であるQMG法が、Japanese Journal Applied Physics
Vol.28 L1189(1989) に記載されており、又、同様の方
法であるMPMG法がProc.2nd ISS Tsukuba 1989 L285
(Spring-Verlag.1990)に記載されており、既に知られて
いる。又、この場合に非超伝導体としてPt及びRhを
用いる手法についても、上記と同様のYBa2Cu3Oy
系においてPt及びRhを適用するPDMG法が、Phys
ica C Vol.177 L101(1991)に記載されており、既に知ら
れている。又、Agを添加する方法は、従来よりセラミ
ックプロセスにおいて知られている。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら、前
記した従来例の中で、Japanese Journal Applied Physi
cs Vol.26 L804(1987)、及びSolid State Communicatio
ns Vol.63 535(1987) に記載されている組成において
は、YSr2Cu3Oy で表される単相の良質な試料を合
成することが出来ず、SrCuO2 、Sr2CuO3 、
Y2CuO5 及びSrCu2O2 等が不純物として多量に
析出する為、使用に耐えうるものではなかった。又、前
記した日本物理学会1990年秋の分科会講演予稿集第
3分冊234頁2p−PS−30 に発表された材料
は、70kbar、1380℃という、一般的には得ら
れない特殊な装置を用いて合成している為、応用するに
は適さないという問題があった。又、例えこの様な特殊
な装置において合成したとしても、該試料の抵抗率がゼ
ロになる温度(ゼロ抵抗温度)は20K程度と低いもの
であった。又、前記したChemistry of Materials Vol.1
331(1989)に発表された材料は、MがCo又はFeで超
伝導を示すものの、ゼロ抵抗温度は10K程度と低く、
超伝導体積分率も2%程度であり、超伝導材料としては
使用に適さないものであった。
記した従来例の中で、Japanese Journal Applied Physi
cs Vol.26 L804(1987)、及びSolid State Communicatio
ns Vol.63 535(1987) に記載されている組成において
は、YSr2Cu3Oy で表される単相の良質な試料を合
成することが出来ず、SrCuO2 、Sr2CuO3 、
Y2CuO5 及びSrCu2O2 等が不純物として多量に
析出する為、使用に耐えうるものではなかった。又、前
記した日本物理学会1990年秋の分科会講演予稿集第
3分冊234頁2p−PS−30 に発表された材料
は、70kbar、1380℃という、一般的には得ら
れない特殊な装置を用いて合成している為、応用するに
は適さないという問題があった。又、例えこの様な特殊
な装置において合成したとしても、該試料の抵抗率がゼ
ロになる温度(ゼロ抵抗温度)は20K程度と低いもの
であった。又、前記したChemistry of Materials Vol.1
331(1989)に発表された材料は、MがCo又はFeで超
伝導を示すものの、ゼロ抵抗温度は10K程度と低く、
超伝導体積分率も2%程度であり、超伝導材料としては
使用に適さないものであった。
【0005】又、前記した超伝導体に非超伝導体を分散
させてJcを向上させる手法である、Japanese Journal
Applied Physics Vol.28 L1189(1989) 、及びProc.2nd
ISSTsukuba 1989 L285(Spring-Verlag.1990)に記載さ
れているQMG法及びMPMG法では、共に、使用する
超伝導体をYBa2Cu3Oy に限り、且つ該超伝導体中
に分散させる非超伝導体を微細なY2BaCuO5 とす
るものであった。又、前記したPhysica C Vol.177 L101
(1991)に発表されているPDMG法においても、Pt及
びRhを分散させる超伝導体をYBa2Cu3Oy 系に限
り、又、その手法としては、微細なY2BaCuO5 を
分散させることを目的とし、その結果としてJcを向上
させるものであった。更に、上述した各種の製造方法に
用いられる超伝導体YBa2Cu3Oy は本質的に水に弱
い為、上記の各種の製造方法によりJcを向上させるこ
とが出来たとしても、霜等の水分が付着することにより
劣化が生じ、適用する場所を制約するものであった。
させてJcを向上させる手法である、Japanese Journal
Applied Physics Vol.28 L1189(1989) 、及びProc.2nd
ISSTsukuba 1989 L285(Spring-Verlag.1990)に記載さ
れているQMG法及びMPMG法では、共に、使用する
超伝導体をYBa2Cu3Oy に限り、且つ該超伝導体中
に分散させる非超伝導体を微細なY2BaCuO5 とす
るものであった。又、前記したPhysica C Vol.177 L101
(1991)に発表されているPDMG法においても、Pt及
びRhを分散させる超伝導体をYBa2Cu3Oy 系に限
り、又、その手法としては、微細なY2BaCuO5 を
分散させることを目的とし、その結果としてJcを向上
させるものであった。更に、上述した各種の製造方法に
用いられる超伝導体YBa2Cu3Oy は本質的に水に弱
い為、上記の各種の製造方法によりJcを向上させるこ
とが出来たとしても、霜等の水分が付着することにより
劣化が生じ、適用する場所を制約するものであった。
【0006】従って、本発明の目的は、超伝導転移温度
(Tc)が高く、しかも水分の影響が少なく、超伝導材
料として臨界電流密度(Jc)の高い優れた特性を有す
る超伝導材料が得られる酸化物超伝導体の製造方法を提
供することにある。又、本発明の他の目的は、超高圧状
態を提供する特殊な合成装置を用いることなく、優れた
特性を有する超伝導材料が得られる酸化物超伝導体の製
造方法を提供することにある。
(Tc)が高く、しかも水分の影響が少なく、超伝導材
料として臨界電流密度(Jc)の高い優れた特性を有す
る超伝導材料が得られる酸化物超伝導体の製造方法を提
供することにある。又、本発明の他の目的は、超高圧状
態を提供する特殊な合成装置を用いることなく、優れた
特性を有する超伝導材料が得られる酸化物超伝導体の製
造方法を提供することにある。
【0007】
【問題点を解決するための手段】上記の目的は、以下の
本発明によって達成される。即ち、本発明は、組成式が
ASr2Cu3-xMxOy(Aは、Ca、Y及びランタノイ
ド元素からなる元素群から選ばれる1種類以上の元素又
は原子団であり、且つMは、Ti、V、Ga、Ge、F
e、Co、Mo、W及びReからなる元素群から選ばれ
る1種類以上の元素又は原子団であり、且つx及びyが
夫々0.05≦x≦0.7、6≦y≦9である)で表さ
れる酸化物超伝導体に、該酸化物超伝導体を構成し得る
元素群の一部から構成される非超伝導体及び/又はP
t、Rh及びAgからなる元素群から選ばれる少なくと
も1種類以上の元素を生じる成分が分散されている上記
組成式で表される化合物を主体とする酸化物超伝導体の
成型物を形成させ、しかる後に該酸化物超伝導体の融点
よりも高い融点を有する種結晶と接触させて、上記酸化
物超伝導体を擬単結晶化させることを特徴とする酸化物
超伝導体の製造方法である。
本発明によって達成される。即ち、本発明は、組成式が
ASr2Cu3-xMxOy(Aは、Ca、Y及びランタノイ
ド元素からなる元素群から選ばれる1種類以上の元素又
は原子団であり、且つMは、Ti、V、Ga、Ge、F
e、Co、Mo、W及びReからなる元素群から選ばれ
る1種類以上の元素又は原子団であり、且つx及びyが
夫々0.05≦x≦0.7、6≦y≦9である)で表さ
れる酸化物超伝導体に、該酸化物超伝導体を構成し得る
元素群の一部から構成される非超伝導体及び/又はP
t、Rh及びAgからなる元素群から選ばれる少なくと
も1種類以上の元素を生じる成分が分散されている上記
組成式で表される化合物を主体とする酸化物超伝導体の
成型物を形成させ、しかる後に該酸化物超伝導体の融点
よりも高い融点を有する種結晶と接触させて、上記酸化
物超伝導体を擬単結晶化させることを特徴とする酸化物
超伝導体の製造方法である。
【0008】
【作用】本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解
決すべく鋭意研究の結果、酸化物超伝導体を製造する際
に、一般的には超高圧下の条件でしか合成することが出
来なかったYSr2Cu3Oy と同様の構造を有する酸化
物超伝導体に、特定の非超伝導体を分散させ、且つ特定
の種結晶を用いて該酸化物超伝導体を擬単結晶化するこ
とにより製造すれば、得られる超伝導体の配向性及び密
度を高め、超伝導体材料としての特性の向上が達成され
ることを知見して本発明に至った。尚、YSr2Cu3O
y と同様の構造を有する酸化物超伝導体に、特定の非
超伝導体を微細に分散させることにより、ピンニング力
を高めることが出来、磁場中においても酸化物超伝導体
の劣化を小さくすることが出来る。即ち、酸化物超伝導
体中に非超伝導体を微細に分散させることで、磁束が動
かない様に固定される結果、超伝導体のエネルギーの高
まりが抑えられ、超伝導状態が安定に保たれる。又、上
記の製造方法によれば、他の銅酸化物超伝導体と比較し
て、耐水性に優れた超伝導体が合成される。更に、上記
の製造方法によれば、超高圧条件を用いることなく優れ
た特性の超伝導体が合成される。
決すべく鋭意研究の結果、酸化物超伝導体を製造する際
に、一般的には超高圧下の条件でしか合成することが出
来なかったYSr2Cu3Oy と同様の構造を有する酸化
物超伝導体に、特定の非超伝導体を分散させ、且つ特定
の種結晶を用いて該酸化物超伝導体を擬単結晶化するこ
とにより製造すれば、得られる超伝導体の配向性及び密
度を高め、超伝導体材料としての特性の向上が達成され
ることを知見して本発明に至った。尚、YSr2Cu3O
y と同様の構造を有する酸化物超伝導体に、特定の非
超伝導体を微細に分散させることにより、ピンニング力
を高めることが出来、磁場中においても酸化物超伝導体
の劣化を小さくすることが出来る。即ち、酸化物超伝導
体中に非超伝導体を微細に分散させることで、磁束が動
かない様に固定される結果、超伝導体のエネルギーの高
まりが抑えられ、超伝導状態が安定に保たれる。又、上
記の製造方法によれば、他の銅酸化物超伝導体と比較し
て、耐水性に優れた超伝導体が合成される。更に、上記
の製造方法によれば、超高圧条件を用いることなく優れ
た特性の超伝導体が合成される。
【0009】
【好ましい実施態様】次に、好ましい実施態様を挙げて
本発明を更に詳細に説明する。本発明は、組成式がAS
r2Cu3-xMxOy で表される酸化物超伝導体に分散さ
せる非超伝導体として、該酸化物超伝導体の構成し得る
元素群の一部から構成される非超伝導体と、Pt、Rh
及びAgからなる元素群から選ばれる少なくとも1種類
以上の元素を生じる成分のどちらか一方又は両方を選択
し、且つ特定の種結晶を用いて擬単結晶化させることを
特徴とする製造方法である。即ち、本発明方法では、先
ず、組成式がASr2Cu3-xMxOy で表され、式中の
Aが、Ca、Y及びランタノイド元素からなる元素群か
ら選ばれる1種類以上の元素又は原子団であり、且つM
が、Ti、V、Ga、Ge、Fe、Co、Mo、W及び
Reの元素群から選ばれる1種類以上の元素又は原子団
であり、且つ0.05≦x≦0.7、6≦y≦9である
酸化物超伝導体が用いられる。
本発明を更に詳細に説明する。本発明は、組成式がAS
r2Cu3-xMxOy で表される酸化物超伝導体に分散さ
せる非超伝導体として、該酸化物超伝導体の構成し得る
元素群の一部から構成される非超伝導体と、Pt、Rh
及びAgからなる元素群から選ばれる少なくとも1種類
以上の元素を生じる成分のどちらか一方又は両方を選択
し、且つ特定の種結晶を用いて擬単結晶化させることを
特徴とする製造方法である。即ち、本発明方法では、先
ず、組成式がASr2Cu3-xMxOy で表され、式中の
Aが、Ca、Y及びランタノイド元素からなる元素群か
ら選ばれる1種類以上の元素又は原子団であり、且つM
が、Ti、V、Ga、Ge、Fe、Co、Mo、W及び
Reの元素群から選ばれる1種類以上の元素又は原子団
であり、且つ0.05≦x≦0.7、6≦y≦9である
酸化物超伝導体が用いられる。
【0010】又、本発明方法では、上記した酸化物超伝
導体に分散させる非超伝導体として、上記のASr2C
u3-x MxOy で表される超伝導化合物を構成し得る元
素群の一部から構成される非超伝導体と、Pt、Rh及
びAgからなる元素群から選ばれる少なくとも一種類以
上の元素を生じる成分のどちらか一方又は両方が用いら
れる。又、これらは、酸化物超伝導体に微細に分散され
ていることが好ましいが、非超伝導体が小さければ小さ
い程好ましい。これらの分散させる非超伝導体の酸化物
超伝導体内での夫々の役割は、明確ではないが、これら
のうちPt、Rhは、核となりその周囲の構成元素より
なる非超伝導体の成長を阻害させる効果があるといわれ
ており、分散させる非超伝導体の粒径を小さくするする
役割もあると考えられる。又、分散させる非超伝導体の
うちAgは、材料中の構造欠陥部分等に析出して材料の
安定化を図る役割や酸素を材料中に導入する役割がある
と考えられ、Agを添加すると、超伝導特性が向上す
る。
導体に分散させる非超伝導体として、上記のASr2C
u3-x MxOy で表される超伝導化合物を構成し得る元
素群の一部から構成される非超伝導体と、Pt、Rh及
びAgからなる元素群から選ばれる少なくとも一種類以
上の元素を生じる成分のどちらか一方又は両方が用いら
れる。又、これらは、酸化物超伝導体に微細に分散され
ていることが好ましいが、非超伝導体が小さければ小さ
い程好ましい。これらの分散させる非超伝導体の酸化物
超伝導体内での夫々の役割は、明確ではないが、これら
のうちPt、Rhは、核となりその周囲の構成元素より
なる非超伝導体の成長を阻害させる効果があるといわれ
ており、分散させる非超伝導体の粒径を小さくするする
役割もあると考えられる。又、分散させる非超伝導体の
うちAgは、材料中の構造欠陥部分等に析出して材料の
安定化を図る役割や酸素を材料中に導入する役割がある
と考えられ、Agを添加すると、超伝導特性が向上す
る。
【0011】更に、本発明においては、酸化物超伝導体
中における上記したこれら非超伝導体の分散量を最適化
させることが好ましい。即ち、この際の分散させる量と
しては、酸化物超伝導体の主成分である組成式ASr2
Cu3-xMxOy で表される成分が100に対し、分散さ
れる上記した非超伝導体の重量比を、好ましくは、5〜
30、更に好ましくは10〜25とする。上記した様
に、分散させる非超伝導体の夫々の役割は微妙に異なる
為、使用する酸化物超伝導体や製造条件等により非超伝
導体の夫々の最適な分散量は異なり明確には規定出来な
いが、下記に挙げる傾向がある。先ず、Pt、Rhの分
散量は重量比でせいぜい5%未満としないと、超伝導特
性をかえって悪くする傾向がある。更に、単独で用いて
もその効果は小さい為、SrLn2O4等の非超伝導体と
同時に使用することが所期の目的を達成する上ではより
好ましい。又、分散させるAg及びSrLn2O4等の非
超伝導体の量としては、5〜20%とするのが最も好ま
しい。
中における上記したこれら非超伝導体の分散量を最適化
させることが好ましい。即ち、この際の分散させる量と
しては、酸化物超伝導体の主成分である組成式ASr2
Cu3-xMxOy で表される成分が100に対し、分散さ
れる上記した非超伝導体の重量比を、好ましくは、5〜
30、更に好ましくは10〜25とする。上記した様
に、分散させる非超伝導体の夫々の役割は微妙に異なる
為、使用する酸化物超伝導体や製造条件等により非超伝
導体の夫々の最適な分散量は異なり明確には規定出来な
いが、下記に挙げる傾向がある。先ず、Pt、Rhの分
散量は重量比でせいぜい5%未満としないと、超伝導特
性をかえって悪くする傾向がある。更に、単独で用いて
もその効果は小さい為、SrLn2O4等の非超伝導体と
同時に使用することが所期の目的を達成する上ではより
好ましい。又、分散させるAg及びSrLn2O4等の非
超伝導体の量としては、5〜20%とするのが最も好ま
しい。
【0012】又、本発明において、酸化物超伝導体を擬
単結晶化させる際に用いられる種結晶としては、ASr
2Cu3-xMxOy で表される成分が主体である上記の酸
化物超伝導体と比較して融点が高いものであることが必
要であり、好ましくは、5℃以上、更に好ましくは10
℃以上高いものが好適に用いられる。
単結晶化させる際に用いられる種結晶としては、ASr
2Cu3-xMxOy で表される成分が主体である上記の酸
化物超伝導体と比較して融点が高いものであることが必
要であり、好ましくは、5℃以上、更に好ましくは10
℃以上高いものが好適に用いられる。
【0013】又、本発明においては、上記の様に、酸化
物超伝導体に特定の非超伝導体を分散し、これを特定の
種結晶を用いて擬単結晶化させるが、好適な反応条件と
しては、酸素を5%以上含む雰囲気中で、ASr2Cu
3-xMxOy で表される特定の組成を有する超伝導体の共
晶温度以上包晶温度以下の温度で包晶反応を利用して、
非超伝導体を分散させ且つ種結晶から擬単結晶化させた
後、徐冷する。更に、HIP等の2000気圧程度に容
易に達成し得る圧力下でアニールしてもよい。以上の様
な方法により製造される酸化物超伝導体は、非超伝導体
(特に、SrLn2O4)が分散された場合に包晶反応が
起き、この結果、配向性に優れ、密度が高められた優れ
た特性の超伝導体材料を容易に得ることが出来る。
物超伝導体に特定の非超伝導体を分散し、これを特定の
種結晶を用いて擬単結晶化させるが、好適な反応条件と
しては、酸素を5%以上含む雰囲気中で、ASr2Cu
3-xMxOy で表される特定の組成を有する超伝導体の共
晶温度以上包晶温度以下の温度で包晶反応を利用して、
非超伝導体を分散させ且つ種結晶から擬単結晶化させた
後、徐冷する。更に、HIP等の2000気圧程度に容
易に達成し得る圧力下でアニールしてもよい。以上の様
な方法により製造される酸化物超伝導体は、非超伝導体
(特に、SrLn2O4)が分散された場合に包晶反応が
起き、この結果、配向性に優れ、密度が高められた優れ
た特性の超伝導体材料を容易に得ることが出来る。
【0014】本発明の製造方法は、上記の構成を有する
限りいずれのものでもよいが、好適な態様の一つは、超
伝導体に分散させる非超伝導体が、組成式SrLn2O4
(Lnが、Y、Ho、Dy及びGdのいずれかであ
る)で表される非超伝導体と、Pt、Rh及びAgから
なる元素群から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を
生じる成分のどちらか一方又は両方であり、且つ種結晶
として組成式Ln2CuO4 (Lnが、Sm、Eu及び
Gdのいずれかである)で表される化合物を使用して、
酸化物超伝導体を擬単結晶化させる方法である。
限りいずれのものでもよいが、好適な態様の一つは、超
伝導体に分散させる非超伝導体が、組成式SrLn2O4
(Lnが、Y、Ho、Dy及びGdのいずれかであ
る)で表される非超伝導体と、Pt、Rh及びAgから
なる元素群から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を
生じる成分のどちらか一方又は両方であり、且つ種結晶
として組成式Ln2CuO4 (Lnが、Sm、Eu及び
Gdのいずれかである)で表される化合物を使用して、
酸化物超伝導体を擬単結晶化させる方法である。
【0015】更に、本発明の別の好ましい態様として
は、組成式がASr2Cu3-xMxOyで表される特定の組
成を有する超伝導体に、組成式SrLn2O4 (Ln
が、Y、Ho、Dy及びGdのいずれかである)で表さ
れる非超伝導体と、Pt、Rh及びAgからなる元素群
から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を生じる成分
のどちらか一方又は両方が分散されている成型物を、組
成式BSr2Cu3-xMxOy (Bは、ASr2Cu3-xMx
Oy で表される酸化物超伝導体の組成式中のAとは異な
り、且つBがAと同様に、Ca、Y及びランタノイド元
素からなる元素群から選ばれる1種類以上の元素又は原
子団である)で表され且つASr2Cu3-xMxOy に比
べ融点の高い種結晶を用いて擬単結晶化させる方法であ
る。この際に使用する種結晶としては、融点がASr2
Cu3-xMxOy に比べて、好ましくは5℃以上、更に好
ましくは 10℃以上高いものを用いる。これに対し種
結晶の融点が、ASr2Cu3-xMxOy の融点と同様の
値あるいは低い値のものを使用した場合には、種結晶と
して機能し得ず、優れた物性の酸化物超伝導体を得るこ
とが出来ない。
は、組成式がASr2Cu3-xMxOyで表される特定の組
成を有する超伝導体に、組成式SrLn2O4 (Ln
が、Y、Ho、Dy及びGdのいずれかである)で表さ
れる非超伝導体と、Pt、Rh及びAgからなる元素群
から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を生じる成分
のどちらか一方又は両方が分散されている成型物を、組
成式BSr2Cu3-xMxOy (Bは、ASr2Cu3-xMx
Oy で表される酸化物超伝導体の組成式中のAとは異な
り、且つBがAと同様に、Ca、Y及びランタノイド元
素からなる元素群から選ばれる1種類以上の元素又は原
子団である)で表され且つASr2Cu3-xMxOy に比
べ融点の高い種結晶を用いて擬単結晶化させる方法であ
る。この際に使用する種結晶としては、融点がASr2
Cu3-xMxOy に比べて、好ましくは5℃以上、更に好
ましくは 10℃以上高いものを用いる。これに対し種
結晶の融点が、ASr2Cu3-xMxOy の融点と同様の
値あるいは低い値のものを使用した場合には、種結晶と
して機能し得ず、優れた物性の酸化物超伝導体を得るこ
とが出来ない。
【0016】以上の様な本発明の製造方法により得られ
る銅酸化物材料は、製造する際の熱処理条件や使用する
化合物の組成や物性等により、配向性、密度、Tc及び
Jcの異なる酸化物超伝導体が得られる。例えば、組成
式ASr2Cu3-xMxOy で表される超伝導体のMを、
Mo、W及びReからなる元素群から選ばれる1種類以
上の元素又は原子団とし、超伝導体に分散させる非超伝
導体を、Agを生じる成分とSrLn2O4 の両方と
し、種結晶として、Ln2CuO4 或は上記の超伝導体
として用いたASr2Cu3-xMxOy に比べ融点の高い
BSr2Cu3-xMxOy を使用する。この場合、得られ
る酸化物超伝導体の配向性及び密度は高くなり、又、T
c及びJcも高くなる。この際、得られる酸化物超伝導
化合物の配向性及び密度は、分散される非超伝導体の
量、用いる種結晶の種類及び熱処理温度等により異なる
が、配向性はおおむね種結晶の方位と一致しており、密
度も理論密度の95〜99%にまで達する。又、Tc
は、十数〜70Kにまで、Jcは5Kにおいて数千〜1
0000(A/cm2 )になる。
る銅酸化物材料は、製造する際の熱処理条件や使用する
化合物の組成や物性等により、配向性、密度、Tc及び
Jcの異なる酸化物超伝導体が得られる。例えば、組成
式ASr2Cu3-xMxOy で表される超伝導体のMを、
Mo、W及びReからなる元素群から選ばれる1種類以
上の元素又は原子団とし、超伝導体に分散させる非超伝
導体を、Agを生じる成分とSrLn2O4 の両方と
し、種結晶として、Ln2CuO4 或は上記の超伝導体
として用いたASr2Cu3-xMxOy に比べ融点の高い
BSr2Cu3-xMxOy を使用する。この場合、得られ
る酸化物超伝導体の配向性及び密度は高くなり、又、T
c及びJcも高くなる。この際、得られる酸化物超伝導
化合物の配向性及び密度は、分散される非超伝導体の
量、用いる種結晶の種類及び熱処理温度等により異なる
が、配向性はおおむね種結晶の方位と一致しており、密
度も理論密度の95〜99%にまで達する。又、Tc
は、十数〜70Kにまで、Jcは5Kにおいて数千〜1
0000(A/cm2 )になる。
【0017】従って、本発明の製造方法により得られる
酸化物超伝導体は、液体ヘリウム温度での利用は勿論、
簡単な冷却器によっても利用することが出来る。又、本
発明の製造方法により得られる酸化物超伝導体は、水に
対して劣化も少なく安定であり、更に、原料として重金
属等の毒性を有するものを使用していない為、安全性が
高い。更に、本発明の製造方法により得られる酸化物超
伝導体は、密度が約5〜6(g/cm3 )であり、従来
の酸化物超伝導体と比較しても、約2〜3割軽くなって
いる。従って、本発明方法により得られる酸化物超伝導
体をシールドや磁気浮上用のバルク材として利用する場
合に特に有効である。
酸化物超伝導体は、液体ヘリウム温度での利用は勿論、
簡単な冷却器によっても利用することが出来る。又、本
発明の製造方法により得られる酸化物超伝導体は、水に
対して劣化も少なく安定であり、更に、原料として重金
属等の毒性を有するものを使用していない為、安全性が
高い。更に、本発明の製造方法により得られる酸化物超
伝導体は、密度が約5〜6(g/cm3 )であり、従来
の酸化物超伝導体と比較しても、約2〜3割軽くなって
いる。従って、本発明方法により得られる酸化物超伝導
体をシールドや磁気浮上用のバルク材として利用する場
合に特に有効である。
【0018】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説
明する。 (実施例1〜実施例3)先ず、原料として、Y2O3 、
SrCO3 、WO3 及びCuOを用い、重量比におい
て、YSr2Cu2.8W0.2Oy に対して10%のSrY2
O4 が生じる様に、適当な配合比に原料を秤量した後、
乾式混合した。次に、得られた混合物を、950〜11
00℃の温度で、酸素を5%以上含む酸化雰囲気中で反
応させて仮焼きし、降温後粉砕した。更に、この生成物
に、重量比において5%のAgが生ずる様に、原料とし
てAg2Oを適当な混合比に秤量後添加し、乾式混合し
た。次に、得られた混合物を、φ30mm、厚み5mm
のペレット状に加圧成型した後、白金るつぼ内に入れ、
1100〜1400℃の温度で20分間半溶融後、室温
まで速やかに冷却した後、粉砕及び混合した。得られた
混合物を、再び、φ30mm、厚み4mmのペレット状
に加圧成型した。最後に、以上の様にして得られた成型
物に、種結晶をc面で接触させて1000〜1150℃
に加熱後、950〜1000℃まで毎時1〜3℃の割合
で徐冷して、本発明の実施例1〜実施例3の酸化物超伝
導体を夫々合成した。この際に使用した種結晶として
は、実施例1についてはSm2CuO4 、実施例2につ
いてはEu2CuO4 、実施例3についてはGd2CuO
4 の夫々の単結晶を、約1mm×1mm×0.3mmの
大きさに切り出して用いた。又、これらの種結晶は、Y
Sr2Cu2.8W0.2Oy と比べて融点が、実施例1につ
いては170℃、実施例2については150℃、実施例
3については110℃、夫々高かった。
明する。 (実施例1〜実施例3)先ず、原料として、Y2O3 、
SrCO3 、WO3 及びCuOを用い、重量比におい
て、YSr2Cu2.8W0.2Oy に対して10%のSrY2
O4 が生じる様に、適当な配合比に原料を秤量した後、
乾式混合した。次に、得られた混合物を、950〜11
00℃の温度で、酸素を5%以上含む酸化雰囲気中で反
応させて仮焼きし、降温後粉砕した。更に、この生成物
に、重量比において5%のAgが生ずる様に、原料とし
てAg2Oを適当な混合比に秤量後添加し、乾式混合し
た。次に、得られた混合物を、φ30mm、厚み5mm
のペレット状に加圧成型した後、白金るつぼ内に入れ、
1100〜1400℃の温度で20分間半溶融後、室温
まで速やかに冷却した後、粉砕及び混合した。得られた
混合物を、再び、φ30mm、厚み4mmのペレット状
に加圧成型した。最後に、以上の様にして得られた成型
物に、種結晶をc面で接触させて1000〜1150℃
に加熱後、950〜1000℃まで毎時1〜3℃の割合
で徐冷して、本発明の実施例1〜実施例3の酸化物超伝
導体を夫々合成した。この際に使用した種結晶として
は、実施例1についてはSm2CuO4 、実施例2につ
いてはEu2CuO4 、実施例3についてはGd2CuO
4 の夫々の単結晶を、約1mm×1mm×0.3mmの
大きさに切り出して用いた。又、これらの種結晶は、Y
Sr2Cu2.8W0.2Oy と比べて融点が、実施例1につ
いては170℃、実施例2については150℃、実施例
3については110℃、夫々高かった。
【0019】以上の様にして合成された実施例1〜実施
例3の酸化物超伝導体について、表面を研磨して、X線
回折により配向性を調べた。その結果、種結晶のc面と
接していた面において、強い(0 0 l(エル))反
射が観測され、同時に種結晶の方位とほぼ一致している
ことを確認した。又、実施例1〜実施例3の酸化物超伝
導体の密度を寸法から求めたところ、いずれも理論密度
の95%以上に相当する約5.7(g/cm3 )であっ
た。この値は、既存の銅酸化物超伝導体YBa2Cu3O
7 と比較しても、比重において2割程度軽くなってい
る。更に、室温から液体ヘリウムの温度範囲で、4端子
法による電気抵抗測定及びSQUIDによる磁化率の測
定を行った。表1に実施例1〜実施例3の酸化物超伝導
体の組成比、種結晶の種類及び臨界電流密度(Jc)を
示した。ここでJcは、磁化ヒステリシスよりBean
モデルを仮定して求めた、ゼロ磁場下、5Kにおける値
を示してある。この結果、実施例1〜実施例3の本発明
の酸化物超伝導体のJcは全て7000(A/cm2 )
以上の高い値を示すことが分かる。
例3の酸化物超伝導体について、表面を研磨して、X線
回折により配向性を調べた。その結果、種結晶のc面と
接していた面において、強い(0 0 l(エル))反
射が観測され、同時に種結晶の方位とほぼ一致している
ことを確認した。又、実施例1〜実施例3の酸化物超伝
導体の密度を寸法から求めたところ、いずれも理論密度
の95%以上に相当する約5.7(g/cm3 )であっ
た。この値は、既存の銅酸化物超伝導体YBa2Cu3O
7 と比較しても、比重において2割程度軽くなってい
る。更に、室温から液体ヘリウムの温度範囲で、4端子
法による電気抵抗測定及びSQUIDによる磁化率の測
定を行った。表1に実施例1〜実施例3の酸化物超伝導
体の組成比、種結晶の種類及び臨界電流密度(Jc)を
示した。ここでJcは、磁化ヒステリシスよりBean
モデルを仮定して求めた、ゼロ磁場下、5Kにおける値
を示してある。この結果、実施例1〜実施例3の本発明
の酸化物超伝導体のJcは全て7000(A/cm2 )
以上の高い値を示すことが分かる。
【0020】
【表1】表1 実施例1〜3における組成式と種結晶の
種類及びJc値
種類及びJc値
【0021】(比較例1)実施例1と同様の原料を夫々
用い、YSr2Cu2.8W0.2Oy に比べ、融点が 90℃
低いYBa2Cu3Oy を種結晶として使用した以外は、
実施例1と同様の方法で比較用の酸化物超伝導体を合成
した。得られた比較用の酸化物超伝導体においては、Y
Ba2Cu3Oy の結晶は種結晶として機能しておらず、
X線回折により配向性を調べたところ、様々な方位の結
晶粒が集合したものであることが判明した。更に、比較
用の酸化物超伝導体について、密度を求めたところ、約
5.5(g/cm3 )であり、実施例1の酸化物超伝導
体に比べて低い値であった。又、Jcも3200(A/
cm2 )と、実施例のものに比べて約1/2〜1/3と
低い値であった。以上の結果から、本発明方法におい
て、種結晶として用いることが出来るものは、酸化物超
伝導体を構成するASr2Cu3-xMxOy に比べて融点
の高いものである必要があり、又、かかる種結晶を用い
ることにより酸化物超伝導体を擬単結晶化することが出
来、この結果、配向性及び密度が上昇し、ひいてはJc
が向上することが分かる。
用い、YSr2Cu2.8W0.2Oy に比べ、融点が 90℃
低いYBa2Cu3Oy を種結晶として使用した以外は、
実施例1と同様の方法で比較用の酸化物超伝導体を合成
した。得られた比較用の酸化物超伝導体においては、Y
Ba2Cu3Oy の結晶は種結晶として機能しておらず、
X線回折により配向性を調べたところ、様々な方位の結
晶粒が集合したものであることが判明した。更に、比較
用の酸化物超伝導体について、密度を求めたところ、約
5.5(g/cm3 )であり、実施例1の酸化物超伝導
体に比べて低い値であった。又、Jcも3200(A/
cm2 )と、実施例のものに比べて約1/2〜1/3と
低い値であった。以上の結果から、本発明方法におい
て、種結晶として用いることが出来るものは、酸化物超
伝導体を構成するASr2Cu3-xMxOy に比べて融点
の高いものである必要があり、又、かかる種結晶を用い
ることにより酸化物超伝導体を擬単結晶化することが出
来、この結果、配向性及び密度が上昇し、ひいてはJc
が向上することが分かる。
【0022】(実施例4〜実施例6)原料として、Y2
O3 、SrCO3 、WO3 、ReO3 、MoO3 、Cu
O、及びAg2Oを用い、且つ種結晶として、実施例4
ではGdSr2Cu2.8W0.2Oy を、実施例5ではGd
Sr2Cu2.8Re0.2Oy を、実施例6ではGdSr2C
u2.8Mo0.2Oy を夫々用いて、実施例1〜実施例3と
同様の方法により実施例4〜実施例6の酸化物超伝導体
を合成した。各実施例で使用したこれらの種結晶は、Y
Sr2Cu2.8W0.2Oy と比べて融点が、実施例1につ
いては 15℃、実施例2については10℃、実施例3
については10℃、夫々高かった。上記の様にして得ら
れた夫々の酸化物超伝導体の表面を研磨し、X線回折に
より配向性を調べたところ、種結晶のc面と接していた
面において、強い(0 0l(エル))反射が観測さ
れ、同時に、種結晶の方位とほぼ一致していることが確
認された。又、夫々の酸化物超伝導体の密度を寸法から
求めたところ、いずれも理論密度の95%以上に相当す
る約5.7(g/cm3 )であった。この値は、既存の
銅酸化物超伝導体YBa2Cu3O7 と比較しても、比重
において2割程度軽くなっている。更に、室温から液体
ヘリウムの温度範囲で、4端子法による電気抵抗測定及
びSQUIDによる磁化率の測定を行った。表2に夫々
の例における組成比、種結晶の種類及びJcを示した。
ここでJcは、磁化ヒステリシスよりBeanモデルを
仮定して求めた、ゼロ磁場下、5Kにおける値を示して
ある。表2から、得られた実施例4〜実施例6の酸化物
超伝導体は、全てJcが8000(A/cm2 )以上の
優れた超伝導材料であることが分かる。
O3 、SrCO3 、WO3 、ReO3 、MoO3 、Cu
O、及びAg2Oを用い、且つ種結晶として、実施例4
ではGdSr2Cu2.8W0.2Oy を、実施例5ではGd
Sr2Cu2.8Re0.2Oy を、実施例6ではGdSr2C
u2.8Mo0.2Oy を夫々用いて、実施例1〜実施例3と
同様の方法により実施例4〜実施例6の酸化物超伝導体
を合成した。各実施例で使用したこれらの種結晶は、Y
Sr2Cu2.8W0.2Oy と比べて融点が、実施例1につ
いては 15℃、実施例2については10℃、実施例3
については10℃、夫々高かった。上記の様にして得ら
れた夫々の酸化物超伝導体の表面を研磨し、X線回折に
より配向性を調べたところ、種結晶のc面と接していた
面において、強い(0 0l(エル))反射が観測さ
れ、同時に、種結晶の方位とほぼ一致していることが確
認された。又、夫々の酸化物超伝導体の密度を寸法から
求めたところ、いずれも理論密度の95%以上に相当す
る約5.7(g/cm3 )であった。この値は、既存の
銅酸化物超伝導体YBa2Cu3O7 と比較しても、比重
において2割程度軽くなっている。更に、室温から液体
ヘリウムの温度範囲で、4端子法による電気抵抗測定及
びSQUIDによる磁化率の測定を行った。表2に夫々
の例における組成比、種結晶の種類及びJcを示した。
ここでJcは、磁化ヒステリシスよりBeanモデルを
仮定して求めた、ゼロ磁場下、5Kにおける値を示して
ある。表2から、得られた実施例4〜実施例6の酸化物
超伝導体は、全てJcが8000(A/cm2 )以上の
優れた超伝導材料であることが分かる。
【0023】又、図1に本発明の実施例4で示された酸
化物超伝導体の磁化ヒステリシスより求めたJcの磁場
依存性を示す。図1より、実施例4で得られた酸化物超
伝導体は、5Kの温度下、ゼロ磁場下で10000(A
/cm2 )のJcを示すことが分かる。又、10000
エルステッドの磁場下においても、3000(A/cm
2 )のJcを有することが分かる。尚、他の実施例にお
いても図1と同様の結果が得られた。
化物超伝導体の磁化ヒステリシスより求めたJcの磁場
依存性を示す。図1より、実施例4で得られた酸化物超
伝導体は、5Kの温度下、ゼロ磁場下で10000(A
/cm2 )のJcを示すことが分かる。又、10000
エルステッドの磁場下においても、3000(A/cm
2 )のJcを有することが分かる。尚、他の実施例にお
いても図1と同様の結果が得られた。
【0024】
【表2】表2 実施例4〜実施例6における組成式と種
結晶の種類及びJc値
結晶の種類及びJc値
【0025】更に、実施例4で得られた酸化物超伝導体
について、耐水性試験を行った。この結果、40℃飽和
蒸気圧下において、従来の代表的な超伝導体であるYB
a2Cu3Oy が1週間で原料まで分解してしまったのに
対し、実施例4で示された酸化物超伝導体は、同様の条
件下で3か月放置した後も超伝導特性に殆ど変化が見ら
れなかった。以上のことから、本発明方法により合成さ
れた酸化物超伝導体は、非常に耐水性に優れていること
がわかる。
について、耐水性試験を行った。この結果、40℃飽和
蒸気圧下において、従来の代表的な超伝導体であるYB
a2Cu3Oy が1週間で原料まで分解してしまったのに
対し、実施例4で示された酸化物超伝導体は、同様の条
件下で3か月放置した後も超伝導特性に殆ど変化が見ら
れなかった。以上のことから、本発明方法により合成さ
れた酸化物超伝導体は、非常に耐水性に優れていること
がわかる。
【0026】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明の酸化物超伝
導体の製造方法は、下記に挙げた優れた効果を有する。 (1) 本発明の酸化物超伝導体の製造方法は、特殊な
装置を要する超高圧下の製造条件を必要とせず、大気圧
中で安定に合成することが出来る。 (2) 本発明の製造方法により合成された酸化物超伝
導体は、通常の焼結体と比べて配向性及び密度が高く、
はるかに高い臨界電流密度(Jc)を有し、又、超伝導
臨界温度(Tc)も液体ヘリウム温度をはるかに超えて
いる優れた超伝導特性を有する材料である。従って、本
発明の製造方法により合成される酸化物超伝導体は、簡
易な冷却装置によっても利用することが出来る。又、本
発明の酸化物超伝導体の製造方法により合成された酸化
物超伝導体は、ピンニングを担う特定の非超伝導体が微
細に分散されている為、磁場中においても超伝導特性の
劣化が少ない。 (3) 又、本発明の製造方法により合成された酸化物
超伝導体は、比重が約5〜6(g/cm3 )であり、既
存の銅酸化物超伝導体と比較しても、約2〜3割程度軽
くなっており、バルク材として利用される場合に特に効
果が高い。 (4) 本発明の製造方法により合成された酸化物超伝
導体は、他の銅酸化物超伝導体と比較して、重金属及び
炭酸バリウム等の毒性の強いものを使用していない為、
安全性に優れる。 (5) 更に、本発明の製造方法により合成された酸化
物超伝導体は、他の銅酸化物超伝導体と比較して、耐水
性に優れている。
導体の製造方法は、下記に挙げた優れた効果を有する。 (1) 本発明の酸化物超伝導体の製造方法は、特殊な
装置を要する超高圧下の製造条件を必要とせず、大気圧
中で安定に合成することが出来る。 (2) 本発明の製造方法により合成された酸化物超伝
導体は、通常の焼結体と比べて配向性及び密度が高く、
はるかに高い臨界電流密度(Jc)を有し、又、超伝導
臨界温度(Tc)も液体ヘリウム温度をはるかに超えて
いる優れた超伝導特性を有する材料である。従って、本
発明の製造方法により合成される酸化物超伝導体は、簡
易な冷却装置によっても利用することが出来る。又、本
発明の酸化物超伝導体の製造方法により合成された酸化
物超伝導体は、ピンニングを担う特定の非超伝導体が微
細に分散されている為、磁場中においても超伝導特性の
劣化が少ない。 (3) 又、本発明の製造方法により合成された酸化物
超伝導体は、比重が約5〜6(g/cm3 )であり、既
存の銅酸化物超伝導体と比較しても、約2〜3割程度軽
くなっており、バルク材として利用される場合に特に効
果が高い。 (4) 本発明の製造方法により合成された酸化物超伝
導体は、他の銅酸化物超伝導体と比較して、重金属及び
炭酸バリウム等の毒性の強いものを使用していない為、
安全性に優れる。 (5) 更に、本発明の製造方法により合成された酸化
物超伝導体は、他の銅酸化物超伝導体と比較して、耐水
性に優れている。
【図1】図1は、本発明の実施例4の酸化物超伝導体の
臨界電流密度の磁場依存性を示すグラフである。
臨界電流密度の磁場依存性を示すグラフである。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 C01G 3/00 C30B 29/22
Claims (5)
- 【請求項1】 組成式がASr2Cu3-xMxOy (A
は、Ca、Y及びランタノイド元素からなる元素群から
選ばれる1種類以上の元素又は原子団であり、且つM
は、Ti、V、Ga、Ge、Fe、Co、Mo、W及び
Reからなる元素群から選ばれる1種類以上の元素又は
原子団であり、且つx及びyが夫々0.05≦x≦0.
7、6≦y≦9である)で表される酸化物超伝導体に、
該酸化物超伝導体を構成し得る元素群の一部から構成さ
れる非超伝導体及び/又はPt、Rh及びAgからなる
元素群から選ばれる少なくとも1種類以上の元素を生じ
る成分が上記酸化物超伝導体に微細に分散されている上
記組成式で表される化合物を主体とする酸化物超伝導体
の成型物を形成させ、しかる後に該酸化物超伝導体の融
点よりも高い融点を有する種結晶と接触させて、上記酸
化物超伝導体を擬単結晶化させることを特徴とする酸化
物超伝導体の製造方法。 - 【請求項2】 組成式ASr2Cu3-xMxOy で表され
る超伝導体を構成する成分と、該酸化物超伝導体を構成
し得る元素群の一部から構成される非超伝導体及び/又
はPt、Rh及びAgからなる元素群から選ばれる少な
くとも1種類以上の元素を生じる成分との重量比が、前
者100に対して後者が5〜30である請求項1に記載
の酸化物超伝導体の製造方法。 - 【請求項3】 非超伝導体が、組成式SrLn2O4(L
nは、Y、Ho、Dy及びGdのいずれかである)で表
される非超伝導体である請求項1に記載の酸化物超伝導
体の製造方法。 - 【請求項4】 種結晶が、組成式BSr2Cu3-xMxOy
(Bは、ASr2Cu3-xMxOy で表される酸化物超伝
導体の組成式中のAとは異なり、且つBがAと同様に、
Ca、Y及びランタノイド元素からなる元素群から選ば
れる1種類以上の元素又は原子団である)で表される酸
化物である請求項1に記載の酸化物超伝導体の製造方
法。 - 【請求項5】 酸素を5%以上含む雰囲気中で、ASr
2Cu3-xMxOy で表される超伝導体の共晶温度以上包
晶温度以下の温度で酸化物超伝導体の製造を行う請求項
1に記載の酸化物超伝導体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06132993A JP3282688B2 (ja) | 1993-02-26 | 1993-02-26 | 酸化物超伝導体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP06132993A JP3282688B2 (ja) | 1993-02-26 | 1993-02-26 | 酸化物超伝導体の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06256021A JPH06256021A (ja) | 1994-09-13 |
JP3282688B2 true JP3282688B2 (ja) | 2002-05-20 |
Family
ID=13167995
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP06132993A Expired - Fee Related JP3282688B2 (ja) | 1993-02-26 | 1993-02-26 | 酸化物超伝導体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3282688B2 (ja) |
-
1993
- 1993-02-26 JP JP06132993A patent/JP3282688B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06256021A (ja) | 1994-09-13 |
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