JPH0727139A - 転がり軸受 - Google Patents
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- JPH0727139A JPH0727139A JP9892694A JP9892694A JPH0727139A JP H0727139 A JPH0727139 A JP H0727139A JP 9892694 A JP9892694 A JP 9892694A JP 9892694 A JP9892694 A JP 9892694A JP H0727139 A JPH0727139 A JP H0727139A
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Abstract
に混入している条件下において、良好な寸法安定性と長
い転がり寿命との両方を保持できる転がり軸受を提供す
る。 【構成】Cを0.10〜1.00重量%、Crを0.5
0〜3.00重量%、Siを0.15〜1.00重量
%、Mnを0.20〜1.50重量%の各割合で含有す
る合金鋼からなる内輪、外輪、および転動体に、所定の
熱処理を施すことにより、前記内輪と外輪とのうち、少
なくとも内輪の平均残留オーステナイト量を4体積%以
下とし、前記転動体の平均残留オーステナイト量を20
〜30体積%とする。
Description
設機械、および鉄鋼機械等に使用される転がり軸受に関
し、特に、高温且つ異物混入潤滑下(軸受内の潤滑剤中
に異物が混入している状態)において、良好な寸法安定
性と長い転がり寿命とを保持できる、トランスミッショ
ンやエンジン用として好適な転がり軸受に関する。
つとして、例えば、軸受内に供給された潤滑剤中に異物
(金属の切粉、バリ、磨耗粉など)が混入し、軸受が動
いている時に、この異物が内輪、外輪、および転動体に
損傷を与えることが挙げられる。そして、軸受内の潤滑
剤中に異物が混入していると、その軸受の寿命は、異物
の混入がほとんどないものの場合の約10分の1にまで
短くなることがある。
を改善するために、特開昭64−55423号公報に
は、内輪、外輪、および転動体を形成する合金鋼の炭素
量と、各部材における表面層の残留オーステナイト量と
を所定の範囲に限定することが開示されている。一方、
近年、エンジンの高出力化に伴い、トランスミッション
やエンジンに組み込まれた軸受が高温(130〜170
℃程度)となるため、高温下における転がり寿命の長い
軸受が求められている。
い軸受として、特開平3−82736号公報には、低中
炭素鋼に、Si、Cr、Mo、V等の元素を添加した合
金鋼により、内輪、外輪、および転動体の少なくとも一
つを形成し、これに浸炭または浸炭窒化処理を施してか
ら焼入れ,高温焼戻しを行い、平均残留オーステナイト
量を3%以下としたものが開示されている。
で焼戻しをすると、一般に、硬さが低下するが、ここで
は低中炭素鋼にSi、Cr、Mo、V等が添加してある
ため、このような高温焼戻しによる硬さの低下が抑制さ
れる。また、浸炭処理または浸炭窒化処理、焼入れ,焼
戻し後には、合金鋼の表層部にCr、Mo、Vの炭化物
が存在するため、これにより、内輪、外輪、または転動
体の表層部を硬くすることができる。これらのことか
ら、各部材の高温下における耐磨耗性が向上するため、
この軸受は転がり寿命が長いものとなる。
は、中炭素鋼に、Si、Cr、Mn、(Mo)等の元素
を添加した合金鋼により、内輪、外輪、および転動体の
少なくとも一つを形成し、これに浸炭窒化処理を施して
から焼入れ,高温焼戻しを行ったものが開示されてい
る。これによっても、高温焼戻しによる硬さの低下が抑
制されて、各部材の高温下における耐磨耗性が向上する
ため、転がり寿命の長い転がり軸受が得られる。
来の技術のうち、特開昭64−55423号公報に開示
された技術では、異物混入による軸受の寿命低下の改善
を目的とし、特開平3−82736号公報と特開平3−
153842号公報とに開示の技術では、高温下におけ
る転がり寿命の向上を目的としているものであるという
ように、いずれのものも、転がり軸受が高温且つ異物混
入潤滑下で使用される場合を考慮に入れてはいなかっ
た。
するものであり、高温であるとともに、異物が軸受内の
潤滑剤中に混入している条件下において、良好な寸法安
定性と長い転がり寿命との両方を保持できる転がり軸受
を提供することを目的とするものである。
に、本発明の転がり軸受は、合金鋼からなる内輪、外
輪、および転動体が、浸炭処理あるいは浸炭窒化処理さ
れた後に焼入れ,焼戻しされるか、または浸炭処理ある
いは浸炭窒化処理されないで焼入れ,焼戻しされてなる
転がり軸受において、前記合金鋼が、Cを0.10〜
1.00重量%、Crを0.50〜3.00重量%、S
iを0.15〜1.00重量%、Mnを0.20〜1.
50重量%の各割合で含有し、残部がFeおよび不可避
的に混入する不純物であるとともに、前記内輪と外輪と
のうち、少なくとも内輪の平均残留オーステナイト量を
4体積%以下とし、前記転動体の平均残留オーステナイ
ト量を20〜30体積%としたことを特徴とするもので
ある。
は、部材の表層部のみではなく、表面から芯部までの全
体の残留オーステナイト量を部材の全体積で割った値を
いう。また、Cの含有率が0.80重量%未満である合
金鋼で形成された内輪、外輪のうち少なくとも内輪につ
いては、浸炭処理あるいは浸炭窒化処理を行ってから、
焼入れ,高温焼戻しを行うことが好ましい。
輪、外輪、および転動体を形成する合金鋼として、Cを
0.10〜1.00重量%、Crを0.50〜3.00
重量%、Siを0.15〜1.00重量%、Mnを0.
20〜1.50重量%の各割合で含有するものを使用す
るが、その理由は以下の通りである。 <C:0.10〜1.00重量%>これは、通常の軸受
用材料である肌焼鋼や軸受鋼の炭素含有率と同じであ
る。Cの含有率が0.10重量%未満であると、浸炭処
理や浸炭窒化処理にかかる時間が長くなる。Cの含有率
が1.00重量%を超えると、表層部に巨大炭化物が形
成される。
輪を形成する合金鋼については、Cの含有率を0.10
〜0.80重量%とすることにより、平均残留オーステ
ナイト量を小さく抑えることができる。一方、転動体を
形成する合金鋼については、Cの含有率を0.80〜
1.00重量%と高めにすることにより、浸炭処理や浸
炭窒化処理を施さずに、容易且つ低コストな焼入れ,焼
戻しだけで平均残留オーステナイト量を高くすることが
できる。また、このようにして、浸炭処理や浸炭窒化処
理を施さないで平均残留オーステナイト量を高くすれ
ば、表層部と芯部とで残留オーステナイト量にほとんど
差が生じないため、平均残留オーステナイト量の測定の
際に、表層部についての測定のみで平均残留オーステナ
イト量が判定できる。 <Cr:0.50〜3.00重量%>これにより、炭化
物、炭窒化物、およびクロム窒化物を多量に析出させる
ことができるとともに、これらの粒径を微細にすること
ができる。Crの含有率が0.50重量%未満である
と、浸炭や浸炭窒化時に炭化物の巨大化が起こりやす
い。Crの含有率が3.00重量%を超えると、表面に
Cr酸化物が形成されて炭素や窒素が入り難くなること
から、浸炭,浸炭窒化特性が低下する。 <Si:0.15〜1.00重量%>これにより、機械
的性質と熱処理特性とがよいものとなる。Siの含有率
が0.15重量%未満であると芯部の靱性が低下するこ
とになり、1.00重量%を超えると炭素や窒素が表面
から入り難くなって、浸炭,浸炭窒化特性が低下する。 <Mn:0.20〜1.50重量%>これにより焼入れ
性がよくなるため、焼入れ後に靱性の高いものとするこ
とができる。Mnの含有率が0.20重量%未満ではそ
の作用が十分に発揮されず、1.50重量%を超える
と、合金鋼の被切削性と熱間加工性とが低下する。
軸受を構成する軌道輪と転動体とにおいて、軌道輪のう
ちの少なくとも内輪と転動体とについて、その平均残留
オーステナイト量を限定している。残留オーステナイト
は経時的にマルテンサイト化が進むため、残留オーステ
ナイトを含むものには、時間がたつにつれて寸法変化が
生じる。したがって、残留オーステナイト量が大きいも
のを高温下で使用すると、オーステナイトの分解(マル
テンサイト化)が促進されて、生じる寸法変化の量も大
きくなる。
関する次式(1),(2)により、初期の残留オーステ
ナイト量が異なる各合金鋼を一定時間一定温度に保持す
る実験を行い、それぞれの残留オーステナイトの分解量
を算出した。 ΔγR =γR0(1−e-Kt ) ……(1) (ΔγR :残留オーステナイトの分解量 γR0 :初期の平均残留オーステナイト量 t :保持時間 K :オーステナイト分解速度定数) logK=A−(B/T) ……(2) (A,B:合金鋼の化学組成により決まる定数 T:保持温度) その結果、使用する合金鋼の化学組成が、Cを0.10
〜1.00重量%、Crを0.50〜3.00重量%、
Siを0.15〜1.00重量%、Mnを0.20〜
1.50重量%である場合に、残留オーステナイトの分
解量を所定値より小さくできる初期の平均残留オーステ
ナイト量は、内輪,外輪では4体積%以下であり、転動
体では20〜30体積%であった。また、前記平均残留
オーステナイト量としてより好ましい値は、内輪,外輪
については2〜4体積%であり、転動体については25
〜30体積%であった。
報に開示されているように、異物混入潤滑下で転がり軸
受を使用する場合には、図1に断面図で示すように、異
物との繰り返し接触により軌道面1の表面2に圧痕が生
じ、この圧痕2のエッジ部2aに応力が集中して、ここ
からマイクロクラックが周囲に広がることになる。そし
て、このエッジ部2aの曲率rと圧痕2の半径cとの比
「r/c」が大きいほど、エッジ部2aにおける応力の
集中を緩和できる。
ト量との関係を調べた結果(この公報の第5図を参照)
から、残留オーステナイト量が45体積%以下である場
合に、「r/c」値は残留オーステナイト量が増加する
につれて大きくなるため、残留オーステナイト量を大き
くして「r/c」値を大きくすることにより、エッジ部
2aにおける応力の集中を緩和して、軌道面1に生じる
圧痕ダメージを小さくすることができる。そして、具体
的には、表層部の残留オーステナイト量が20〜45体
積%の範囲であると、異物混入潤滑下において転がり寿
命を長くすることができると開示されている。
高温下の条件で転がり軸受が使用される場合には、当該
転がり軸受を構成する内輪、外輪、および転動体の残留
オーステナイト量が大きいと、前述のように、寸法変化
が大きく生じるため好ましくない。具体的には、内輪の
内径が大きくなることにより、内輪と軸とのはめあいし
ろの不足が生じたり、ラジアル内部すきまが減少するこ
とにより、スムーズな回転ができなくなったりする。し
たがって、高温下での寸法精度を確保するという点から
は、転がり軸受を構成する各部材の平均残留オーステナ
イト量を小さくする必要がある。
うち、特に内輪に関しては寸法変化が厳しく制限される
ことを考慮して、本発明の転がり軸受においては、軌道
輪のうち少なくとも内輪の平均残留オーステナイト量を
4体積%以下と小さくし、転動体の平均残留オーステナ
イト量を20〜30体積%と大きくすることにより、異
物が軌道輪と転動体との間に混入した状態で使用されて
も、軌道輪に生じる圧痕ダメージを小さくできるととも
に、高温下での使用においても寸法変化を小さくできる
ようにした。
る。化学組成が本発明の範囲である下記の表1に示す組
成の鋼A(C含有率0.42重量%)およびB(C含有
率0.96重量%)により、単列深みぞ玉軸受用の内
輪、外輪、および転動体(玉)を形成した。そして、A
鋼で得られた内輪、外輪、および転動体に対しては、図
2に示すように、(a)870〜890℃で4時間、吸
熱型ガスとエンリッチガスと5体積%のNH3 (アンモ
ニア)ガスとで構成される雰囲気炉内で浸炭窒化処理を
施して油焼入れを行った後に、(b)820〜840℃
で30分間の加熱後油焼入れを行った後に、(c)22
0〜240℃で100分間高温焼戻しを行った。また、
鋼Bで得られたものに対しては、図3に示すように、
(b)860〜880℃で30分間の加熱後焼入れを施
した後に、(c)160〜180℃で100分間焼戻し
を行った。
受鋼)により、前記と同様の単列深みぞ玉軸受用の内
輪、外輪、および転動体(玉)を形成し、それぞれ、焼
入れ(加熱温度840℃、加熱時間30分間、油焼入
れ),焼戻し(加熱温度160℃、加熱時間100分
間)を行った。さらに、SUJ2により前記と同様の転
動体を形成して、焼入れ(加熱温度950℃、加熱時間
30分間、油焼入れ),焼戻し(加熱温度160℃、加
熱時間100分間)を行った。この高温焼入れ品をSU
J2* と表示する。加えて、SUJ2により前記と同様
の内輪を形成して、焼入れ(加熱温度840℃、加熱時
間30分間、油焼入れ),焼戻し(加熱温度230℃、
加熱時間100分間)を行った。この高温テンパー品を
「SUJ2**」と表示する。
にして浸炭窒化処理,焼入れ,焼戻しを施したものにつ
いて、表面から芯部に向けての残留オーステナイト量の
分布を測定した。その結果を図4にグラフで示す。この
グラフから分かるように、この内輪の表層部における残
留オーステナイト量は26.0体積%であり、この量
が、表面からの距離が0.4mmのところまでは芯部に
向かうにつれて急激に減少し、ここから先は約2.0体
積%で飽和している。そして、全残留オーステナイト量
を内輪の体積で割った値(平均残留オーステナイト量)
は4体積%であった。また、A鋼で形成された外輪およ
び転動体に浸炭窒化処理,焼入れ,焼戻しを施したもの
についても、同様にして平均残留オーステナイト量を算
出した。
輪、転動体に焼入れ,焼戻しを施したもの、およびSU
J2* からなる転動体、SUJ2**からなる内輪につい
ても同様にして平均残留オーステナイト量を算出した。
これらB鋼,SUJ2,SUJ2* ,およびSUJ2**
からなるものについては、浸炭窒化処理を行っていない
ため、残留オーステナイト量は深さ方向においてほぼ一
定なものとなり、表層部における残留オーステナイト量
と平均残留オーステナイト量とはほぼ同じ値となる。
カース硬さHv を測定した。このようにして得られた各
内輪、外輪、および転動体を、以下に挙げる表2,表3
に示すように組み合わせて、実施例1〜4および比較例
1〜7の単列深みぞ玉軸受を組み立てた。この軸受の外
径は62mm、内径は47mm、幅は16mmである。 <寸法安定性試験>下記の表2に示すような組み合わせ
で組み立てられた実施例1,3,4および比較例1,
2,7の各軸受に対して、170℃における寸法安定性
を調べる試験を行った。
に「内部すきま」という)が31μmである軸受を、直
径30mmの軸にしめしろ17μmで圧入したところ、
圧入後のラジアル内部すきまは18μmであった。これ
をテンパー炉内に入れて170℃に1000時間保持し
た後、各軸受の軸に対する圧入状態を調べた。また、試
験後に軸受を軸から取り外し、内輪の内径寸法と内部す
きまとを測定した。
内径寸法に関しては、軸の直径D0を基準と、測定され
た内輪の内径(直径)DN との差「DN −D0 」の値
を、内径差として表2に示している。したがって、この
内径差「DN −D0 」が−17μmであれば内輪の内径
に変化が生じていないことになる。また、軸に対する圧
入状態の結果は、十分な圧入状態であれば「OK」と、
軸が容易に軸受から抜ける状態であれば「抜け」という
ように表示した。また、表中では、「平均残留オーステ
ナイト量」を「平均γR 」と略して記載した。
と比較例2の軸受については、内輪外輪ともに平均残留
オーステナイト量が4体積%以下であるため、内輪の寸
法変化量が少なく軸との圧入状態が保たれていた。これ
に対して、比較例1の軸受では、内輪外輪ともに平均残
留オーステナイト量が4体積%を大きく超えているた
め、内輪の内径が軸の直径に対して+16μmとかなり
大きくなってしめしろがなくなり、軸から軸受が容易に
抜ける状態になっていた。なお、比較例7の軸受につい
ては、内輪外輪ともに平均残留オーステナイト量が4体
積%を超えてはいるが、5体積%であって本発明の範囲
からのずれ量が小さいため、軸から軸受が容易に抜ける
状態にはなっていなかった。しかしながら、後述の寿命
試験で明らかになるように、軸と軸受との間にいわゆる
クリープが生じるような不十分なしめしろとなってい
た。
3,4の軸受は、転動体の平均残留オーステナイト量が
比較的小さいため、内部すきまの変化量を20μm程度
に止めて「プラス」の内部すきまを保持することができ
た。これに対して、比較例2の軸受は、転動体の平均残
留オーステナイト量が30体積%を超えているため、内
部すきまが大きく変化して0μmとなっており、後述の
寿命試験で明らかになるように、軸受の取付状態で予圧
状態となって、軸受のスムーズな回転ができない不具合
を生じることになる。また、比較例7の軸受について
は、転動体の平均残留オーステナイト量は30体積%で
本発明の範囲にあるが、内輪外輪ともに平均残留オース
テナイト量が4体積%を超えているため、内部すきまが
大きく変化して0μmとなっている。なお、比較例1の
軸受については、転動体の平均残留オーステナイト量が
小さいことから、内部すきまの変化量が3μmと小さく
なっているが、内輪の平均残留オーステナイト量に起因
して前述のような不具合がある。
ナイト量が4体積%であれば、試験後においても十分な
しめしろが維持され、内輪の平均残留オーステナイト量
が4体積%であって且つ転動体の平均残留オーステナイ
ト量が30体積%以下であれば、内部すきまも十分に残
ることが分かる。 <寿命試験>下記の表3に示すような組み合わせで組み
立てられた実施例1〜4、比較例2〜7の各軸受に対し
て、日本精工(株)製 玉軸受寿命試験機を用いて、下
記の条件により異物混入潤滑下におけるL10寿命を測定
した。
32 軸受回転数:4900rpm 試験温度 :170℃ すなわち、各種類の軸受10個ずつに対して上記条件に
より寿命試験を行い、ワイブル分布関数により、短寿命
側から10%の軸受にフレーキングが発生するまでの総
回転時間を求め、これを寿命とした。その結果を表3に
併せて示す。なお、表中では、「平均残留オーステナイ
ト量」を「平均γR 」と略して記載した。
4の各軸受の寿命は80時間を超える長いものとなって
いる。これに対して、比較例2の軸受は、前述のよう
に、転動体の平均残留オーステナイト量が本発明の範囲
の上限である30体積%を超えているため、内部すきま
が“0”となっており、軸受の取付状態で予圧状態とな
る。そのため、寿命試験の時間が長くなるにしたがって
スムーズな回転ができなくなり、遂には保持器が破損し
て転動体が転がらなくなる「ロック現象」が生じた。
残留オーステナイト量については本発明の範囲内にある
が、転動体の平均残留オーステナイト量が本発明の範囲
の下限である20体積%未満であるため、前述の「r/
c」値(異物との繰り返し接触により軌道面の表面に生
じた圧痕のエッジ部の曲率rと圧痕の半径cとの比)が
小さくなり、圧痕のエッジ部における応力集中の緩和が
十分に行われない。その結果、高温且つ異物混入潤滑下
における転がり寿命が短くなった。
留オーステナイト量が4体積%を超えているため、内輪
の寸法変化量が大きく軸との間のしめしろが不十分とな
っており、寿命試験の時間が長くなるにしたがって軸と
軸受との間にいわゆるクリープが生じ、これに伴って発
生する振動が大きくなったため試験機の作動を停止し
た。
ナイト量と寸法安定性試験後の内径差(前記「DN −D
0 」)との関係について整理したグラフを図5に、転動
体の残留オーステナイト量と寸法安定性試験後の内部す
きまとの関係、および転動体の残留オーステナイト量と
寿命試験により測定された寿命との関係について整理し
たグラフを図6にそれぞれ示す。なお、図5中では、
「平均残留オーステナイト量」を「平均γR 」と略して
記載した。
体の平均残留オーステナイト量が本発明の範囲にある、
表2,3で「実施例」と表記された軸受に関するデータ
であり、「●」は、内輪または転動体のいずれかの平均
残留オーステナイト量が本発明の範囲から外れる、表
2,3で「比較例」と表記された軸受に関するデータで
ある。また、斜線部は、内径差について、軸受と軸との
間に寿命試験時にクリープが発生したり、寸法安定性試
験後に軸から軸受が容易に抜ける状態になる等の不具合
が発生する領域を示している。
均残留オーステナイト量が本発明の範囲である4体積%
以下であれば、内輪の寸法変化が小さく抑えられて、軸
受と軸との間のクリープ発生等の不具合が生じないこと
が明らかである。また、図6において、「○」および
「●」は、寸法安定性試験後の内部すきまに関するデー
タを示し、このうち「○」は、内輪および転動体の平均
残留オーステナイト量が本発明の範囲にある、表2,3
で「実施例」と表記された軸受に関するデータであり、
「●」は、内輪または転動体のいずれかの平均残留オー
ステナイト量が本発明の範囲から外れる、表2,3で
「比較例」と表記された軸受に関するデータである。ま
た、「□」および「■」は寿命試験により測定された寿
命に関するデータを示し、このうち「□」は、内輪およ
び転動体の平均残留オーステナイト量が本発明の範囲に
ある、表2,3で「実施例」と表記された軸受に関する
データであり、「■」は、内輪または転動体のいずれか
の平均残留オーステナイト量が本発明の範囲から外れ
る、表2,3で「比較例」と表記された軸受に関するデ
ータである。
平均残留オーステナイト量が30体積%以下であれば、
内部すきまの減少を比較的小さく抑えることができる。
また、転動体の平均残留オーステナイト量が本発明の範
囲である20〜30体積%であれば、高温且つ異物混入
潤滑下における寿命を長くできることが明らかである。
び転動体を形成する合金鋼に、Moを2.00重量%以
下、Niを1.00重量%以下の各割合で含有すると好
適である。すなわち、Moを含有することにより、焼入
れ性が増進されて靱性を高めることができるが、この含
有率が2.00重量%を超えると表層部に生じる炭化物
の粒径が大きくなる。また、Niを含有することによ
り、焼入れ組織が均質化されて耐衝撃性が向上できる
が、これを1.00重量%を超えて含有させることは不
経済であり、C,Si,Mn,Crを増量した方が経済
的である。このような目的で含有されるMoおよびNi
の含有率は0.08重量%以上とすることが好ましく、
0.08重量%以上含有することにより所定の効果が発
揮され、前記各上限値以下で含有量を高めることにより
前述の効果を高めることができる。
動体の表層部における残留オーステナイト量が20〜4
5体積%であると、異物混入潤滑下での寿命が長くなる
ため好適である。なお、ここでいう表層部は、軌道面の
接触面にかかる接触圧から計算で求められるものであ
り、最大剪断応力位置(表面からの深さ)をZ0 とする
と、表面よりZ0 〜2Z0 の深さまでの部分、例えば、
表面から0.2〜0.5mm程度の深さまでをいう。
80重量%未満であるA鋼に対して浸炭窒化処理を施し
てから焼入れ,焼き戻しを行っているが、浸炭窒化処理
の代わりに浸炭処理(例えば、920〜950℃で3時
間)を行ってから焼入れ,焼き戻しを行ってもよい。さ
らに、前記実施例では、転動体として玉を備えた転がり
軸受について述べられているが、本発明の転がり軸受は
玉軸受に限定されず、各種ころ軸受に対しても適用され
ることは言うまでもない。
ば、高温であるとともに、異物が軸受内の潤滑剤中に混
入している条件下において、良好な寸法安定性と長い転
がり寿命との両方を保持できる転がり軸受を提供するこ
とができる。
入れ,高温焼戻しの条件を示すグラフであり、(a)は
浸炭窒化処理の条件、(b)は焼入れの条件、(c)は
高温焼戻しの条件に相当する。
条件を示すグラフであり、(b)は焼入れの条件、
(c)は高温焼戻しの条件に相当する。
高温焼戻しして得られた内輪における残留オーステナイ
ト量の分布を示すグラフである。
オーステナイト量と寸法安定性試験後の内径差との関係
について整理したグラフである。
ーステナイト量と寸法安定性試験後の内部すきまとの関
係、および転動体の残留オーステナイト量と寿命試験に
より測定された寿命との関係について整理したグラフで
ある。
Claims (1)
- 【請求項1】 合金鋼からなる内輪、外輪、および転動
体が、浸炭処理あるいは浸炭窒化処理された後に焼入
れ,焼戻しされるか、または浸炭処理あるいは浸炭窒化
処理されないで焼入れ,焼戻しされてなる転がり軸受に
おいて、前記合金鋼が、Cを0.10〜1.00重量
%、Crを0.50〜3.00重量%、Siを0.15
〜1.00重量%、Mnを0.20〜1.50重量%の
各割合で含有し、残部がFeおよび不可避的に混入する
不純物であるとともに、前記内輪と外輪とのうち、少な
くとも内輪の平均残留オーステナイト量を4体積%以下
とし、前記転動体の平均残留オーステナイト量を20〜
30体積%としたことを特徴とする転がり軸受。
Priority Applications (1)
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