JPH0726374A - 回転カソードターゲット、その製法、および該ターゲットを用いて形成される膜 - Google Patents

回転カソードターゲット、その製法、および該ターゲットを用いて形成される膜

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JPH0726374A
JPH0726374A JP19420993A JP19420993A JPH0726374A JP H0726374 A JPH0726374 A JP H0726374A JP 19420993 A JP19420993 A JP 19420993A JP 19420993 A JP19420993 A JP 19420993A JP H0726374 A JPH0726374 A JP H0726374A
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Otojiro Kida
音次郎 木田
Yoko Suzuki
陽子 鈴木
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】熱間等方圧プレスによりSiを主成分としI
n、Zn、SnおよびGaからなる群から選ばれる少な
くとも1種の金属のリン化物を含有するターゲット層が
形成されてなる回転カソードターゲット。その製造方
法。該ターゲットを用いて形成される膜。 【効果】酸素雰囲気中でのスパッタでも高導電率を有す
るスパッタターゲットを得ることができ、大面積の成膜
が高速ででき、安定的に低屈折率の透明薄膜を提供でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透明導電膜を形成する
際に用いられる回転カソードターゲット、その製造方
法、該回転カソードターゲットを用いて形成される膜に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来からガラス、プラスチック等の透明
基板に薄膜を形成して光学的機能を付加したものとして
ミラー、熱線反射ガラス、低放射ガラス、干渉フィルタ
ー、カメラレンズやメガネレンズの反射防止コート等が
ある。
【0003】通常のミラーでは無電解メッキ法でAg
が、また、真空蒸着法、スパッタリング法などでAlや
Crなどが形成される。これらのなかでCr膜は比較的
丈夫なのでコート面が露出した表面鏡として一部用いら
れている。
【0004】熱線反射ガラスは酸化チタンや酸化スズ等
がスプレー法、CVD法あるいは浸漬法等で形成されて
きた。最近では金属膜、窒化膜、スズをドープした酸化
インジウム(ITO)等がスパッタリング法でガラス表
面に形成されたものが熱線反射ガラスとして使われるよ
うになってきた。スパッタリング法は膜厚コントロール
が容易で、かつ複数の膜を連続して形成でき、透明酸化
膜と組合わせて透過率、反射率、色調などを設計するこ
とが可能である。このため意匠性を重視する建築などに
需要が伸びている。
【0005】室内の暖房機や壁からの輻射熱を室内側に
反射する低反射ガラス(Low Emissivity
ガラス)は銀を酸化亜鉛で挟んだZnO/Ag/ZnO
の3層系またはZnO/Ag/ZnO/Ag/ZnOの
5層系(特開昭63−239043号公報参照)などの
構成をもち、複層ガラスか合せガラスの形で使われる。
近年ヨーロッパの寒冷地での普及が目ざましい。
【0006】レンズ等の反射防止コートは酸化チタン、
酸化ジルコニウム等の高屈折率膜と酸化ケイ素、フッ化
マグネシウム等の低屈折率膜を交互に積層する。通常は
真空蒸着法が用いられ、成膜時は基板加熱して耐擦傷性
の向上を図っている。
【0007】表面鏡や単板の熱線反射ガラスおよびレン
ズ等の反射防止コートなどはコートされた膜が空気中に
露出した状態で使用される。このため化学的な安定性や
耐摩耗性に優れていなければならない。
【0008】一方、低反射ガラスでも複層ガラスまたは
合せガラスになる前の運搬や取り扱い時の傷などにより
不良品が発生する。このため安定で耐摩耗性に優れた保
護膜あるいは保護膜を兼ねた光学薄膜が望まれている。
【0009】耐久性向上のためには通常化学的に安定で
透明な酸化物膜が空気側に設けられる。これらの酸化膜
としては酸化チタン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化ジ
ルコニウム、酸化ケイ素等があり、また、低屈折率を有
する代表的な膜としてフッ化マグネシウム等があり、必
要な性能に応じて選択され使用されてきた。酸化チタ
ン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化ジルコニウムは屈折
率が高く、一方、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムは屈
折率が低い。
【0010】しかし、これらの膜は大面積の基板への成
膜は困難であり、建築用ガラスや自動車用ガラス等の大
面積の成膜が必要なところには対応できなかった。とい
うのは大面積の成膜には直流スパッタリング法が最適で
あるが、低屈折率を有する透明薄膜を提供する適当なタ
ーゲット材がなく、大面積成膜の可能な直流スパッタリ
ング法を用いて所望の薄膜を得ることができなかったか
らである。
【0011】例えば酸化ケイ素薄膜を直流スパッタリン
グ法で成膜するには導電性を有するSiターゲットを酸
素を含む雰囲気で反応スパッタして二酸化ケイ素薄膜を
形成する方法が考えられるが、Siターゲットはスパッ
タ中に表面が酸化して導電性が低下し、スパッタを安定
的に持続させることができなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】一方、スパッタ用プレ
ーナ型ターゲットは、無機化合物の原料を混合し成形、
焼成およびスパッタ装置に合った形状にするための加工
およびボンディングと長い工程を通って作成される。こ
のうちで成形、焼成、加工、ボンディング等の工程は、
ターゲットが小さい場合には大がかりな治具装置は必要
でないが、大型の生産機用ターゲットでは上記治具装置
は大がかりとなり、またボンディングにおいてもターゲ
ットをターゲットホルダー金属板に接合する場合分割し
て加工接合する等して作製されているが、大がかりな装
置、高価なInハンダを大量に使用する等、労力、コス
トがかかる。
【0013】さらに建築用の大面積ガラスのスパッタに
おいては、生産性を上げるため高いスパッタパワーをか
け成膜速度を上げているが、この場合ターゲットの冷却
が成膜速度を制限しており、ターゲットの割れ、剥離等
のトラブルが起きている。
【0014】これらの点を改良した新しいタイプのマグ
ネトロン型回転カソードターゲットが知られている(特
表昭58−500174号公報参照)。これは、円筒状
ターゲットの内部に磁場発生手段を設置し、ターゲット
の内側から冷却しつつ、ターゲットを回転させながらス
パッタを行うものであるため、プレーナ型ターゲットよ
り、単位面積あたり大きなパワーを投入でき、したがっ
て高速成膜が可能とされている。かかるターゲットはほ
とんどがスパッタすべき金属や合金からなる円筒状の回
転カソードである。スパッタすべき物質が、柔らかく、
または脆い金属や合金の場合は円筒状のターゲットホル
ダー上に製作されている。
【0015】しかし金属ターゲットの場合、各種のスパ
ッタ雰囲気で酸化物、窒化物、炭化物等の多層膜のコー
トが可能であるが、異種雰囲気によりコート膜が損傷
し、目的の組成のものが得られず、また低融点金属ター
ゲットではパワーをかけすぎると溶融してしまう等の欠
点がある。特開昭60−181270号公報に溶射によ
るスパッタターゲットの製法が提案されているが、ター
ゲット層と金属の熱膨張の差が大きくて溶射膜を厚くで
きず、また使用時の熱ショックにより密着性が低下し剥
離する等の問題がある。
【0016】また、ターゲット焼結体を円筒状に製作し
てターゲットホルダー金属にIn金属にて接合する方法
もあるが、作りにくくコストもかかる。このため、ター
ゲットが任意の形状や構造に対応でき、また大面積の基
板への低屈折率透明薄膜を安定して成膜できるターゲッ
トが望まれていた。
【0017】本発明の目的は、従来技術が有していた種
々の問題を解決しようとするものであり、円筒状ターゲ
ットホルダーとターゲット層の密着性を向上し、製作面
や使用面からも自由度の高い高密度で高速成膜可能な回
転カソードスパッタターゲットを提供する。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、円筒状ターゲ
ットホルダー上にアンダコートを形成し、次いで、Si
を主成分としIn、Zn、SnおよびGaからなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を0.01
〜30wt%含有する粉末または該粉末の成形体を配置
し、熱間等方圧プレスを行いターゲット層を形成して製
造することを特徴とする回転カソードターゲットの製造
方法を提供する。
【0019】また、本発明は、円筒状ターゲットホルダ
ー上に、Siを主成分としIn、Zn、SnおよびGa
からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のリン化
物を0.01〜30wt%含有する粉末または該粉末の
成形体を配置し、熱間等方圧プレスを行うことにより形
成されるターゲット層を有することを特徴とする回転カ
ソードターゲットおよび該回転カソードターゲットを用
いて、スパッタリングして形成されることを特徴とする
膜を提供する。
【0020】本発明の方法は、基本的にターゲットとな
る粉末を熱間等方圧プレス(HotIsostatic
Press、以下、HIP処理という)によりターゲ
ットホルダーに焼結・接合せしめ、直接ターゲットとな
る層を形成するものである。これによって従来の金型に
粉末を詰めてプレス成形する工程、それを電気炉中で焼
結する工程、またはホットプレスにより焼結する工程、
適当な形状に加工修正する工程、ターゲット層とホルダ
ーを接合する工程を必要としない。
【0021】本発明による方法は、原料粉末を得る工程
と、円筒形状ターゲットホルダーの外表面をターゲット
層と密着接合させるための表面処理工程と、HIP処理
による焼結と接合を行う工程によって構成されている。
【0022】本発明に用いるターゲットとなる粉末は、
特に容易に入手できない複雑な化合物の場合、化学的合
成あるいは固相反応を利用して作製する。この粉末を粉
砕し、造粒してHIP処理カプセル内に流動して振動充
填しやすい二次粒径に揃えることで利用できる。
【0023】本発明のターゲット層となる粉末は、Si
に対してIn、Zn、SnおよびGaからなる群から選
ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を0.01〜3
0wt%含有するものである。
【0024】スパッタすべきターゲットとなる層が、I
n、Zn、SnおよびGaからなる群から選ばれる少な
くとも1種の金属のリン化物が0.01wt%未満で
は、成膜した場合、アーキングが激しく起こり安定して
成膜できず、30wt%より多いと成膜して得られる薄
膜の屈折率が大きくなり好ましくは、0.01〜10w
t%とすることがアーキングも少なく低屈折率膜を安定
して得られるので望ましい。
【0025】なお、本発明のターゲットとなる粉末に
は、他の成分が本発明の目的効果を損なわない範囲にお
いて含まれても差し支えないが、可及的に少量にとどめ
ることが望ましい。
【0026】本発明で用いるターゲット層となる粉末
は、次の方法で作製することができる。即ち平均粒径が
1μm以下のSi粉末と、In、Zn、SnおよびGa
からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のリン化
物の粉末を所定量秤量し、ボールミルを用いて3時間以
上アセトンを溶媒として湿式混合して、泥漿を作成し、
防爆式スプレイドライヤーにて20〜100μm程度の
粒径に乾燥した溶射粉末を得ることが必要である。
【0027】また、同様に、Si粉末とIn、Zn、S
nおよびGaからなる群から選ばれる少なくとも1種の
金属のリン化物の粉末を、ボールミルを用いてアセトン
を溶媒として3時間以上湿式混合し、これをエバポレー
ターにて乾燥し、この粉末を非酸化雰囲気下の電気炉中
で1000〜1200℃で焼成する。これにより得られ
る塊状の粉末を、粉砕し分級して20〜100μmの粒
径の溶射粉末を得てもよい。
【0028】円筒状ターゲットホルダーとしては、ステ
ンレスや、銅またはターゲット層に近似した熱膨張係数
を有するTi、Moなどが使用でき、ターゲットとなる
粉末のHIP処理に先だって、V溝状やネジ状に加工し
た後、その外表面をAl23 やSiCの砥粒を用いて
サンドブラストする等により、荒しておくことも密着性
向上のためには最適である。また、アンダコート粉末の
溶射に先だって、その外表面をV溝状やネジ状に加工し
た後、Al23 やSiCの砥粒を用いてサンドブラス
トして密着性がよくなるように荒しておくことも好まし
い。
【0029】外表面を荒面加工した円筒状ターゲットホ
ルダーには、ターゲット層とターゲットホルダーとの熱
膨張差を緩和し、またスパッタ時の熱ショックによる剥
離にも耐えるよう密着力を高めるために、アンダコート
を形成しておくのが好ましい。かかるアンダコートとし
ては、ターゲットホルダーとターゲット材料の中間の熱
膨張係数を有する層(以下、A層という)およびターゲ
ット材料に近い熱膨張係数を有する層(以下、B層とい
う)からなる群から選ばれる少なくとも1層であること
が好ましい。特に両方の層を形成し、ターゲットホルダ
ー/A層/B層/ターゲット材料という構成とするのが
最適である。
【0030】アンダコート層がA層あるいはB層だけで
あっても、それらが金属や合金である場合は、弾性が高
く、脆さが小さいので、ターゲットとなる被膜層のター
ゲットホルダーへの密着力を高めることができる。
【0031】B層の熱膨脹係数は、ターゲットとなる被
膜層の熱膨張係数±2×10-6/℃の範囲内であること
が最適である。
【0032】アンダコートの材料としては、Mo、T
i、Ni、Nb、Ta、W、Ni−Al、Ni−Cr、
Ni−Cr−Al、Ni−Cr−Al−Y、Ni−Co
−Cr−Al−Yなどの導電性粉末を用いることができ
る。アンダコートの膜厚は、それぞれ30〜100μm
程度が好ましい。
【0033】具体的には、アンダコートの材料は、ター
ゲットとなる層の熱膨張係数に応じて変える必要がある
(ターゲットホルダーとして使用可能な銅やステンレス
等の熱膨脹係数は17〜18×10-6/℃である)。
【0034】例えば前記ターゲット層の場合(熱膨張係
数5〜6×10-6/℃)では、アンダコートA層の好ま
しい熱膨張係数は12〜15×10-6/℃であり、その
材料としてNi、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr
−Al、Ni−Cr−Al−Y、Ni−Co−Cr−A
l−Y等があげられる。またアンダコートB層の好まし
い熱膨張係数は5〜8×10-6/℃であり、その材料と
してはMo、W、Ta、Nb等があげられる。
【0035】またかかるアンダコート材料のうちから、
ターゲット材料に近い熱膨張係数をもつアンダコート
と、ターゲットホルダーに近い熱膨脹係数をもつアンダ
コートとを傾斜組成的に変化させたアンダコート層を設
けてもより密着性が高くなるので好ましい。
【0036】次いで、前述のアンダコート処理されたタ
ーゲットホルダーを図1のHIP処理カプセル内に配置
し、前記ターゲットとなる造粒粉末を充填し、HIP処
理にて焼結・接合する。図1によってHIP処理用カプ
セルについて説明する。
【0037】HIP処理用カプセルは底付ステンレス製
カプセル1と、その中に配置した、表面処理を施した銅
製の円筒ターゲットホルダー2によって構成され、これ
らは所定の位置、即ち底付ステンレス製カプセル1の底
部の中心に円筒状ターゲットホルダーを溶接接合し固定
されている。このHIP処理用カプセルは鋼またはステ
ンレス鋼が好ましく、カプセルの厚みは4mm以下が望
ましい。
【0038】また、このHIP処理カプセル1はカプセ
ル内部に充填された前記ターゲットとなる層とのHIP
処理工程の焼結において、反応を抑制するためやHIP
処理後のターゲット層との離型を容易にするためHIP
処理ステンレス製カプセル1内面に0.5mm〜1mm
厚のAl23 ターゲットファイバーペーパー3または
シートを貼り付けておくとよい。
【0039】このステンレス製カプセル1と円筒状ター
ゲットホルダー2に挟まれた部分の間隙に、前記ターゲ
ットとなる粉末4を充填する。予め表面処理された円筒
状ターゲットホルダー2を用いてCIP(冷間静水圧成
形)成形ゴム型内に円筒状ターゲットホルダー2を配置
し、その間隙に前記ターゲットとなる粉末を充填し円筒
形状に予備CIP成形する方法も採用できる。
【0040】上記の方法により、HIP処理用ステンレ
ス製カプセル内に充填されたターゲットとなる粉末、ま
たは円筒状ターゲットホルダー上に予備CIP成形され
たターゲットとなる成形体をHIP処理カプセルに配置
し、このHIP処理用ステンレス製カプセルを10-3
mHg以下に減圧密封する。この減圧密封では10-3
mHg以上ではターゲットとなる原料粉末に付着してい
るガスや成分の除去が十分に行われないためである。
【0041】この減圧密封したステンレス製HIPカプ
セルをHIP装置に配置してHIP処理する。HIP処
理は高温高圧下の不活性ガス(Ar)を圧力媒体として
カプセル内部のターゲットとなる粉末や予備成形された
ターゲットとなる成形体の焼結および前記ターゲットと
なる層とターゲットホルダーとの接合を同時に行うもの
である。
【0042】このときのHIP処理条件は温度900〜
1000℃、圧力50MPa以上の条件で1時間以上行
うことが望ましい。HIP処理条件で温度900℃未
満、圧力50MPa未満ではターゲット層の密度が低く
ターゲットホルダーとの密着も低く、温度1000℃超
では、ターゲットホルダーとの反応が激しくなる、等の
ため好ましくない。
【0043】このようにしてHIP処理されたステンレ
ス製HIP処理カプセルをHIP装置より取り出し、外
面のステンレス製カプセルを剥離して取り外し回転カソ
ードターゲットを得る。このようにしてターゲット層2
mm以上、10mm以下の緻密でターゲットホルダーと
密着性の高い回転カソードを得ることができる。
【0044】本発明の回転カソードターゲットを用い
て、Arと酸素の混合雰囲気中で1×10-3〜1×10
-4mmHg程度の真空中でスパッタリングすると均一な
膜を製膜できる。本発明のターゲットは、高い導電性を
持ち、しかもスパッタ中にターゲットの表面酸化によっ
ても導電性の低下が少ないため直流スパッタリング法を
用いて成膜でき、大面積にわたり均一な膜を高速にて成
膜できる。
【0045】
【作用】本発明の非酸化物ターゲットにおいて、ターゲ
ット中のIn、Zn、Sn、Gaなどは大部分ケイ素化
合物は作らず単独あるいはリン化物で存在し、Siの粒
界等に偏析することによってターゲットに導電性をもた
せて直流スパッタリングを可能にしている。
【0046】さらにこれらの金属は、酸素雰囲気中での
スパッタによって表面に存在しているうちの一部が酸化
するが、これらの酸化物は導電性を持つことが知られて
おり、表面酸化による導電性の低下を抑制するように働
くと考えられる。
【0047】一方、Pは前述のIn、Zn、Sn、Ga
とリン化物を生成するほか、Siのなかに固溶してSi
に電気導電性を付与しており、ターゲット全体の導電性
をさらに高めている。
【0048】これらの相乗効果によって本発明のスパッ
タターゲットは、直流スパッタに適した高導電性を有
し、アーキングを起こりにくくしていると考えられる。
【0049】このようにして作製した回転カソードター
ゲットはターゲットの化学組成の変動もなく均質であ
り、ターゲット物質からターゲットホルダー、さらには
カソード電極への熱伝導もよく、また強固にターゲット
ホルダーに密着しているので成膜速度を上げるための高
いスパッタパワーをかけた場合でも冷却が十分行われ、
急激な熱ショックによるターゲットの剥離、割れもな
く、単位面積当りに大きな電力を投入することが可能で
ある。
【0050】また、ターゲットの侵食ゾーンが全面にな
るため、ターゲットの利用効率もプレーナ型と比べ高い
という利点がある。また、ターゲットの侵食部分が薄く
なってもターゲット物質が減少した部分に同じ物質のタ
ーゲットとなる粉末を同様の方法にてHIP処理するこ
とにより元の状態に再生することもできる。さらにター
ゲットの厚みに場所による分布をもたせることも容易に
可能であり、それによってターゲット表面での磁界の強
さや温度の分布をもたせて生成する薄膜の厚み分布をコ
ントロールすることもできる。
【0051】さらに、本発明の回転カソードターゲット
は、マグネトロンスパッタにてDC、RFの両者のスパ
ッタリング装置に用いることが可能であり、高速成膜、
ターゲット使用効率も大であり、安定して成膜できる。
【0052】
【実施例】高純度(99.99%)のSi粉末(平均粒
径1μm以下)と高純度(99.999%)のInP、
Zn32 とZnP2 、SnP、GaPの粉末のうちそ
れぞれを準備し、それぞれ表1の組成になるように秤量
し、ボールミルにて、3時間アセトンを溶媒として湿式
混合し、得られたものを防爆式スプレイドライヤーにて
造粒し20〜100μmの粒径の粉末を得た。
【0053】外径67.5mmφ×長さ406mmの銅
製円筒形状ターゲットホルダーを旋盤に取り付け、その
外表面側をネジ状に加工し、さらに、Al23 砥粒を
用いて、サンドブラストにより表面を荒し粗面の状態に
した。
【0054】次にアンダコートとして、第1層Ni−A
l(配合重量比8:2)の合金粉末および第2層として
Moの金属粉末をプラズマ溶射(メトコ溶射機を使用)
し、膜厚をそれぞれ50mmの被覆を形成した。
【0055】この表面処理を施した円筒状ターゲットホ
ルダーを、予め内面がAl23 ファイバーペーパー
(1mm厚)が貼り付けられたHIP処理用ステンレス
製カプセル内に配置し底部を溶接接合してHIP処理カ
プセルを準備した。このカプセルと円筒形状ターゲット
ホルダーとの間隙に上記のターゲットとなる造粒粉末を
バイブレーターを用いて振動充填した。そしてこのステ
ンレス製カプセル内を10-3mmHg以下に減圧し密封
してHIP処理装置に挿入しHIP処理を行った。
【0056】HIP処理条件は、温度950℃、圧力2
00MPaのArガス(純度99.9%)を圧力媒体と
し、1時間の処理を行った。HIP処理後ステンレス製
カプセルを取り外しターゲット被覆層が形成された円筒
形状のターゲット外表面を平滑になるように加工し、ま
たターゲットホルダーの内面を旋盤にて内径50.5m
mφに加工して、ターゲット層とターゲットホルダーと
が一体に強固に密着したターゲット層5mmの回転カソ
ードターゲットを得た。
【0057】次に、この回転カソードターゲットを用
い、マグネトロン直流スパッタ装置の陰極上にセット
し、3mm厚みのソーダライムガラス基板を、真空チャ
ンバー内に入れ、クライオポンプで1×10-6mmHg
まで排気し、次にArとO2 の混合ガス(Ar:O2
70:30)を真空チャンバー内に導入し、その圧力が
5×10-3mmHgになるように調整する。この状態で
スパッタを行い酸化膜として約1000Åを成膜した。
【0058】表1に本発明の各種ターゲットを用いてA
rとO2 の混合雰囲気中で反応性直流スパッタリングを
行って成膜した膜の屈折率と成膜安定性(耐アーキング
特性)を示した。各種ターゲットを用いて成膜した膜
は、そのターゲット中のSiに対するIn等の構成物質
の組成比として膜中でもほぼ保たれている。また上記タ
ーゲットをホットプレスにて焼結体を作成し、Inを用
いてプレーナ型のバッキングプレートに接合し、成膜速
度について比較した。
【0059】
【比較例】Siの単結晶(N型、0.1Ω・cm)およ
び本発明の範囲外の組成のターゲットについて行った結
果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】表1に示すように、本発明のターゲットは
高密度でこれを用いて成膜した酸化物膜の屈折率は1.
46〜1.50と低く、SiO2 膜とほとんど同じ屈折
率を有していた。しかも本発明のターゲットを用いて成
膜した場合には、耐アーキング性はSiターゲット(比
較例)と比較すると格段に改善され、非常に成膜が安定
していた。パワーアップしても何らアーキングは発生せ
ず破損や剥離も認められず安定して高速成膜ができた。
【0062】また、表1より、Si単結晶や本発明の範
囲外のターゲットの場合には、アーキングが発生し成膜
が安定してできず、また、膜の屈折率も高くなることが
わかった。さらに成膜速度を上げるためのパワーアップ
により、ターゲット表面に亀裂が発生し、成膜速度を上
げることはできなかった。
【0063】
【発明の効果】本発明のターゲットを用いることによ
り、低屈折率の透明薄膜を安定して得ることができる。
特にSiにIn、Zn、Sn、およびGaからなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を含むター
ゲットを容易にHIP処理により得ることができ、また
酸素雰囲気中でのスパッタでも高導電率を有するスパッ
タターゲットを得ることができ、大面積の成膜が高速で
できると共に安定的に低屈折率の透明薄膜を提供でき
る。
【0064】また本発明のターゲットは均質で高密度で
あり熱ショックにも強く、従来のような成形、焼成、加
工、ボンディングなどの工程も必要とせず、容易に短時
間にスパッタターゲットを任意の形状構造に対応でき
る。
【0065】さらに本発明のスパッタターゲットは、使
用後消費した部分に、同組成の新しいターゲット材質の
溶射粉末を同時にプラズマ溶射することによりターゲッ
トを再生でき、経済的にも有用である。
【0066】本発明のスパッタターゲットを用いれば、
スパッター時の冷却効率も高くスパッタパワーを高くし
ても、ターゲットの亀裂や破損がないため、安定して高
速成膜が可能となり建築、自動車用等の大面積ガラスか
らミラー等の生産性が著しく向上するなどその工業的価
値は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるHIP処理用カプセルの一
例の断面図
【符号の説明】
1:ステンレス製カプセル 2:表面処理を施した銅製の円筒ターゲットホルダー 3:Al23 ターゲットファイバーペーパー 4:充填されたターゲットとなる粉末

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円筒状ターゲットホルダー上にアンダコー
    トを形成し、次いで、Siを主成分としIn、Zn、S
    nおよびGaからなる群から選ばれる少なくとも1種の
    金属のリン化物を0.01〜30wt%含有する粉末ま
    たは該粉末の成形体を配置し、熱間等方圧プレスを行い
    ターゲット層を形成して製造することを特徴とする回転
    カソードターゲットの製造方法。
  2. 【請求項2】前記円筒状ターゲットホルダーの表面が、
    荒れた表面であることを特徴とする請求項1の回転カソ
    ードターゲットの製造方法。
  3. 【請求項3】前記アンダコートが、前記円筒状ターゲッ
    トホルダーの熱膨張係数と前記ターゲット層の熱膨張係
    数との中間の熱膨張係数を有する層、および該ターゲッ
    ト層に近似した熱膨張係数を有する層からなる群から選
    ばれる少なくとも1層であることを特徴とする請求項1
    または2の回転カソードターゲットの製造方法。
  4. 【請求項4】前記アンダコートが、プラズマ溶射法によ
    り形成されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1
    項の回転カソードターゲットの製造方法。
  5. 【請求項5】円筒状ターゲットホルダー上に、Siを主
    成分としIn、Zn、SnおよびGaからなる群から選
    ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を0.01〜3
    0wt%含有する粉末または該粉末の成形体を配置し、
    熱間等方圧プレスを行うことにより形成されるターゲッ
    ト層を有することを特徴とする回転カソードターゲッ
    ト。
  6. 【請求項6】前記円筒状ターゲットホルダーの表面が、
    荒れた表面であることを特徴とする請求項5の回転カソ
    ードターゲット。
  7. 【請求項7】前記円筒状ターゲットホルダーと、Siを
    主成分としIn、Zn、SnおよびGaからなる群から
    選ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を0.01〜
    30wt%含有する粉末または該粉末の成形体を配置
    し、熱間等方圧プレスを行うことにより円筒状ターゲッ
    トホルダー上に形成されるターゲット層との間にアンダ
    コートを有することを特徴とする請求項5または6の回
    転カソードターゲット。
  8. 【請求項8】前記アンダコートが、前記円筒状ターゲッ
    トホルダーの熱膨張係数と前記ターゲット層の熱膨張係
    数との中間の熱膨張係数を有する層、および前記ターゲ
    ット層に近似した熱膨張係数を有する層からなる群から
    選ばれる少なくとも1層であることを特徴とする請求項
    7の回転カソードターゲット。
  9. 【請求項9】前記アンダコートが、プラズマ溶射法によ
    り形成されることを特徴とする請求項7または8の回転
    カソードターゲット。
  10. 【請求項10】請求項5〜9いずれか1項の回転カソー
    ドターゲットを用いて、スパッタリングして形成される
    ことを特徴とする膜。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008506852A (ja) * 2005-10-14 2008-03-06 プランゼー エスエー 管状ターゲット
JP2014141722A (ja) * 2013-01-25 2014-08-07 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 円筒形Cu−Ga合金スパッタリングターゲット及びその製造方法
CN113463047A (zh) * 2021-08-18 2021-10-01 广东先导稀材股份有限公司 一种靶材制备电动辅助装置
KR20230051755A (ko) 2021-10-11 2023-04-18 츠다코마 고교 가부시키가이샤 직기

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