JPH0726373A - 回転カソードターゲットとその製造方法および該ターゲットを用いて形成される膜 - Google Patents

回転カソードターゲットとその製造方法および該ターゲットを用いて形成される膜

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JPH0726373A
JPH0726373A JP19420893A JP19420893A JPH0726373A JP H0726373 A JPH0726373 A JP H0726373A JP 19420893 A JP19420893 A JP 19420893A JP 19420893 A JP19420893 A JP 19420893A JP H0726373 A JPH0726373 A JP H0726373A
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JP19420893A
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Otojiro Kida
音次郎 木田
Yoko Suzuki
陽子 鈴木
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】円筒状ターゲットホルダー上にSiを主成分と
し、In、Zn、SnおよびGaから選ばれる少なくと
も1種の金属のリン化物を含有するターゲット層がプラ
ズマ溶射により形成されるスパッタターゲットとその製
造方法および該ターゲット用いて形成される膜。 【効果】酸素雰囲気中でのスパッタでも高導電率を有す
るスパッタターゲットを得られ、大面積の成膜が高速で
でき、安定的に低屈折率の透明薄膜を提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低屈折率を有する、酸
化物透明薄膜をスパッタリングにより、形成する際に用
いる回転カソードターゲットとその製造方法および該タ
ーゲットを用いて形成された膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からガラス、プラスチック等の透明
基板に薄膜を形成して光学的機能を付加したものとして
ミラー、熱線反射ガラス、低放射ガラス、干渉フィルタ
ー、カメラレンズやメガネレンズの反射防止コート等が
ある。
【0003】通常のミラーでは無電解メッキ法でAg
が、また、真空蒸着法、スパッタリング法などでAlや
Crなどが形成される。このうちでCr膜は比較的丈夫
なのでコート面が露出した表面鏡として一部用いられて
いる。
【0004】熱線反射ガラスは酸化チタンや酸化スズ等
がスプレー法、CVD法あるいは浸漬法等で形成されて
きた。最近では金属膜、窒化膜、スズをドープした酸化
インジウム(ITO)等がスパッタリング法でガラス表
面に形成されたものが熱線反射ガラスとして使われるよ
うになってきた。スパッタリング法は膜厚コントロール
が容易で、かつ複数の膜を連続して形成でき、透明酸化
膜と組合わせて透過率、反射率、色調などを設計するこ
とが可能である。このため意匠性を重視する建築などに
需要が伸びている。
【0005】室内の暖房機や壁からの輻射熱を室内側に
反射する低反射ガラス(Low Emissivity
ガラス)は銀を酸化亜鉛で挟んだZnO/Ag/ZnO
の3層系またはZnO/Ag/ZnO/Ag/ZnOの
5層系(特開昭63−239043号公報参照)などの
構成をもち、複層ガラスか合せガラスの形で使われる。
近年ヨーロッパの寒冷地での普及が目ざましい。
【0006】レンズ等の反射防止コートは酸化チタン、
酸化ジルコニウム等の高屈折率膜と酸化ケイ素、フッ化
マグネシウム等の低屈折率膜を交互に積層する。通常は
真空蒸着法が用いられ、成膜時は基板加熱して耐擦傷性
の向上を図っている。
【0007】表面鏡や単板の熱線反射ガラスおよびレン
ズ等の反射防止コートなどはコートされた膜が空気中に
露出した状態で使用される。このため化学的な安定性や
耐摩耗性に優れていなければならない。
【0008】一方、低反射ガラスでも複層ガラスまたは
合せガラスになる前の運搬や取り扱い時の傷などにより
不良品が発生する。このため安定で耐摩耗性に優れた保
護膜あるいは保護膜を兼ねた光学薄膜が望まれている。
【0009】耐久性向上のためには通常化学的に安定で
透明な酸化物膜が空気側に設けられる。これらの酸化膜
としては酸化チタン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化ジ
ルコニウム、酸化ケイ素等があり、また、低屈折率を有
する代表的な膜としてフッ化マグネシウム等があり、必
要な性能に応じて選択され使用されてきた。酸化チタ
ン、酸化スズ、酸化タンタル、酸化ジルコニウムは屈折
率が高く、一方酸化ケイ素、フッ化マグネシウムは屈折
率が低い。
【0010】しかし、これらの膜は大面積の基板への成
膜は困難であり、建築用ガラスや自動車用ガラス等の大
面積の成膜が必要なところには対応できなかった。とい
うのは大面積の成膜には直流スパッタリング法が最適で
あるが、低屈折率を有する透明薄膜を提供する適当なタ
ーゲット材がなく、大面積成膜の可能な直流スパッタリ
ング法を用いて所望の薄膜を得ることができなかった。
【0011】例えば酸化ケイ素薄膜を直流スパッタリン
グ法で成膜するには導電性を有するSiターゲットを酸
素を含む雰囲気で反応スパッタして二酸化ケイ素薄膜を
形成する方法が考えられるが、Siターゲットはスパッ
タ中に表面が酸化して導電性が低下し、スパッタを安定
的に持続させることができなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】一方、スパッタ用プレ
ーナ型ターゲットは、無機化合物の原料を混合し成形、
焼成およびスパッタ装置に合った形状上にするための加
工およびボンディングと長い工程を通って作成される。
このなかで成形、焼成、加工、ボンディング等の工程
は、ターゲットが小さい場合には大がかりな治具装置は
必要でないが、大型の生産機用ターゲットでは上記治具
装置は大がかりとなり、またボンディングにおいてもタ
ーゲットをターゲットホルダー金属板に接合する場合分
割して加工接合する等して作製されているが、大がかり
な装置、高価なInハンダを大量に使用する等、労力、
コストがかかる。
【0013】さらに建築用の大面積ガラスのスパッタに
おいては、生産性を上げるため高いスパッタパワーをか
け成膜速度を上げているが、この場合ターゲットの冷却
が成膜速度を制限しており、ターゲットの割れ、剥離等
のトラブルが起きている。これらの点を改良した新しい
タイプのマグネトロン型回転カソードターゲットが知ら
れている(特表昭58−500174号公報参照)。
【0014】これは、円筒状ターゲットの内部に磁場発
生手段を設置し、ターゲットの内側から冷却しつつ、タ
ーゲットを回転させながらスパッタを行うものであるた
め、プレーナ型ターゲットより、単位面積あたり大きな
パワーを投入でき、したがって高速成膜が可能とされて
いる。かかるターゲットはほとんどがスパッタすべき金
属や合金からなる円筒状の回転カソードである、スパッ
タすべき物質が、柔らかく、または脆い金属や合金の場
合は円筒状のターゲットホルダー上に製作されている。
【0015】しかし金属ターゲットの場合各種のスパッ
タ雰囲気で酸化物、窒化物、炭化物等の多層膜のコート
が可能であるが異種雰囲気によりコート膜が損傷し、目
的の組成のものが得られず、また低融点金属ターゲット
ではパワーをかけすぎると溶融してしまう等の欠点があ
る。
【0016】特開昭60−181270号公報に、溶射
によるスパッタターゲットの製法が提案されているが、
ターゲット層と金属の熱膨張の差が大きくて溶射膜を厚
くできず、また使用時の熱ショックにより密着性が低下
し剥離する等の問題がある。また、ターゲット焼結体を
円筒状に製作してターゲットホルダー金属にIn金属に
て接合する方法もあるが、作りにくくコストもかかる。
【0017】このため、ターゲットが任意の形状や構造
に対応でき、また大面積の基板への低屈折率透明薄膜を
安定して成膜できるターゲットが望まれていた。
【0018】本発明の目的は、従来技術が有していた種
々の問題点を解決しようとするものであり、円筒状ター
ゲットホルダー上にプラズマ溶射法によりターゲットと
なる層を被膜として実現し、製作面や使用面からも自由
度の高い高密度で高速成膜可能な回転カソードターゲッ
トを提供するにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、円筒状ターゲ
ットホルダー上にアンダコートを形成し、次いで、Si
を主成分とし、In、Zn、SnおよびGaからなる群
から選ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を0.0
1〜30wt%含有する粉末を、高温プラズマガス中で
半溶融状態にしつつ、このプラズマガスにより該アンダ
コート上に輸送してターゲット層を形成して製造するこ
とを特徴とする回転カソードターゲットの製造方法であ
る。
【0020】また、本発明は、円筒状ターゲットホルダ
ー上に、Siを主成分とし、In、Zn、SnおよびG
aからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のリン
化物を0.01〜30wt%含有する粉末を、プラズマ
溶射することにより形成されるターゲット層を有するこ
とを特徴とする回転カソードターゲットおよび該回転カ
ソードターゲットを用いて、スパッタリングして形成さ
れることを特徴とする膜である。
【0021】本発明の方法は、基本的にターゲット層と
してIn、Zn、Sn、Gaのリン化物のうち少なくと
も1種以上を0.01〜30wt%(重量%、以下同
じ)含有し、Siを主成分とする粉末を、例えば、プラ
ズマ溶射装置を用いて半溶融状態にし、ターゲットホル
ダー上に付着せしめ、直接スパッタリング用ターゲット
となるターゲット層を形成するものである。
【0022】これによって成形する工程、焼成する工
程、複雑な構造や種々の形状に加工する工程、ボンディ
ング工程を必要としない。ただ溶射粉末を得る工程、特
に容易に入手できない複雑な化合物の場合、化学的合成
あるいは固相反応を利用して作製する。この粉末を粉砕
または造粒しさらに分級して、溶射に適当な流動しやす
い粒径に揃えることで利用できる。
【0023】本発明のターゲット層となる粉末は、Si
に対してIn、Zn、Sn、Gaのリン化物のうち少な
くとも1種以上を0.01〜30%含有するものであ
る。スパッタすべきターゲットとなる層が、In、Z
n、Sn、Gaのリン化物のうち少なくとも1種以上が
0.01%以下では、成膜した場合、アーキングが激し
く起こり安定して成膜できず、また30%より多いと成
膜して得られる薄膜の屈折率が大きくなり好ましくは、
0.01〜10%とすることがアーキングも少なく低屈
折率膜を安定して得られるので望ましい。
【0024】なお、本発明のターゲットとなる粉末に
は、他の成分が本発明の目的効果を損なわない範囲にお
いて含まれても差し支えないが、可及的に少量にとどめ
ることが望ましい。
【0025】本発明で用いる、ターゲット層となる粉末
は、次の方法で作製することができる。即ち平均粒径が
1μm以下のSi粉末と、In、Zn、Sn、Gaのリ
ン化物のうち少なくとも1種以上の粉末を所定量秤量
し、ボールミルを用いて3時間以上、アセトンを溶媒と
して湿式混合して、泥漿を作成し、防爆式スプレイドラ
イヤーにて20〜100μm程度の粒径に乾燥した溶射
粉末を得ることが必要である。
【0026】また、同様に、Si粉末とIn、Zn、S
n、Gaのリン化物のうち少なくとも1種以上の粉末
を、ボールミルを用いてアセトンを溶媒として3時間以
上湿式混合し、これをエバポレーターにて乾燥し、この
粉末を非酸化雰囲気下の電気炉中で1000〜1200
℃で焼成する。これにより得られる塊状の粉末を、粉砕
し分級して20〜100μmの粒径の溶射粉末を得ても
よい。
【0027】これらの溶射粉末は、100μmより大き
いと、高温プラズマガス中で半溶融状態にしにくく、ま
た20μmより小さいと、プラズマ溶射時に高温プラズ
マガス中に分散してしまいターゲットホルダー上には付
着しにくくなるため好ましくない。
【0028】円筒状ターゲットホルダーとしては、ステ
ンレスや銅などの種々の金属が使用できる。ターゲット
材料となるターゲット粉末のプラズマ溶射に先だって、
密着性向上のため、そのターゲットホルダーの外表面
を、Al23 やSiCの砥粒を用いてサンドブラスト
するなどにより荒しておくことが必要である。
【0029】あるいは、また、これらのターゲットホル
ダーの表面をV溝状に加工した後、Al23 やSiC
の砥粒を用いてサンドブラストしてより密着性を向上さ
せることも好ましい。
【0030】ターゲットホルダー表面を荒した後に、溶
射するターゲット材料とターゲットホルダーとの熱膨張
差を緩和し、また、機械的、熱的な衝撃による剥離にも
耐えるよう密着力を高めるため、アンダコート層を形成
しておくのが好ましい。
【0031】かかるアンダコートとしては、ターゲット
ホルダーとターゲットとなる材料の中間の熱膨張係数を
有する層(以下A層という)およびターゲットとなる材
料に近い熱膨張係数を有する層(以下B層という)から
選ばれる少なくとも1層であることが好ましい。特に両
方の層を形成し、ターゲットホルダー/A層/B層/タ
ーゲット材料被膜層という構成とするのが最適である。
【0032】アンダコート層がA層あるいはB層だけで
あっても、それらが金属や合金である場合は、弾性が高
く、脆さが小さいので、ターゲットとなる被膜層のター
ゲットホルダーへの密着力を高めることができる。
【0033】B層の熱膨脹係数は、ターゲットとなる被
膜層の熱膨張係数±2×10-6/℃の範囲内であること
が最適である。
【0034】アンダコートの材料としては、Mo、T
i、Ni、Nb、Ta、W、Ni−Al、Ni−Cr、
Ni−Cr−Al、Ni−Cr−Al−Y、Ni−Co
−Cr−Al−Yなどの導電性粉末を用いることができ
る。アンダコートの膜厚は、それぞれ30〜100μm
程度が好ましい。
【0035】具体的には、アンダコートの材料は、ター
ゲットとなる層の熱膨張係数に応じて変える必要がある
(ターゲットホルダーとして使用可能な銅やステンレス
等の熱膨脹係数は、17〜18×10-6/℃である)。
【0036】例えば前記ターゲット層の場合(熱膨張係
数5〜6×10-6/℃)では、アンダコートA層の好ま
しい熱膨張係数は12〜15×10-6/℃であり、その
材料としてNi、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−Cr
−Al、Ni−Cr−Al−、Ni−Co−Cr−Al
−Y等があげられる。
【0037】またアンダコートB層の好ましい熱膨張係
数は5〜8×10-6/℃であり、その材料としてはM
o、W、Ta、Nb等があげられる。またかかるアンダ
コート材料のなかから、ターゲット材料に近い熱膨張係
数をもつアンダコートと、ターゲットホルダーに近い熱
膨脹係数をもつアンダコートとを傾斜組成的に変化させ
たアンダコート層を設けても、より密着性が高くなるの
で好ましい。
【0038】その上に前述のターゲットとなる粉末を、
高温プラズマガス中、好ましくはAr、Ar+H2 など
の非酸化雰囲気下での高温プラズマガス中で半溶融状態
にしつつ、このガスにより、上記アンダコート上に輸送
して付着させ、スパッタすべきターゲットとなる被覆層
を形成する。
【0039】また好ましくは前述のターゲットとなる粉
末を減圧下のAr等の非酸化雰囲気下での高温プラズマ
ガス中で行う減圧プラズマ溶射法により形成する。
【0040】上記アンダコートを挿入することにより2
〜5mm以上の膜厚の安定な密着性の高いターゲット層
を形成することができる。
【0041】また、前述のアンダコートを形成する際
も、非酸化雰囲気下あるいは減圧非酸化雰囲気下の高温
プラズマガス中でのプラズマ溶射法により形成するのが
好ましい。
【0042】ターゲット材料となる被覆層を非酸化雰囲
気下あるいは減圧非酸化雰囲気下(プラズマ溶射機を真
空チャンバー内で50〜300Torrに減圧して、こ
のチャンバー内にArガスを導入した雰囲気下)での高
温プラズマガス中で半溶融状態にしつつ、アンダコート
上に付着させてターゲット被覆層を形成する場合には、
ターゲット層形成中にターゲットとなる粉末の化学組成
や鉱物組成の変動も少なく、酸化も少ないので均質で高
密度な密着性の高いターゲット被覆層を形成することが
できる。
【0043】本発明の回転カソードターゲットを用い
て、Arと酸素の混合雰囲気中で1×10-3〜1×10
-4Torr程度の真空中でスパッタリングすると均一な
膜を製膜できる。本発明のターゲットは、高い導電性を
持ち、しかもスパッタ中にターゲットの表面酸化によっ
ても導電性の低下が少ないため直流スパッタリング法を
用いて成膜でき、大面積にわたり均一な膜を高速にて成
膜できる。
【0044】
【作用】本発明の非酸化物ターゲットにおいて、ターゲ
ット中のIn、Zn、Sn、Gaなどは大部分ケイ素化
合物は作らず単独あるいはリン化物で存在し、Siの粒
界等に偏析することによってターゲットに導電性をもた
せて直流スパッタリングを可能にしている。
【0045】さらにこれらの金属は、酸素雰囲気中での
スパッタによって表面に存在しているうちの一部が酸化
するが、これらの酸化物は導電性を持つことが知られて
おり、表面酸化による導電性の低下を抑制するように働
くと考えられる。
【0046】一方、Pは前述のIn、Zn、Sn、Ga
とリン化物を生成するほか、Siのなかに固溶してSi
に電気導電性を付与しており、ターゲット全体の導電性
をさらに高めている。これらの相乗効果によって本発明
のスパッタターゲットは、直流スパッタに適した高導電
性を有し、アーキングを起こりにくくしていると考えら
れる。
【0047】またこのようにして作成した回転カソード
ターゲットは、ターゲット物質からターゲットホルダ
ー、さらにはカソード電極への熱伝導もよく、また強固
にターゲットホルダー上に密着しているので、成膜速度
を上げるための高いスパッタリングパワーをかけた場合
でも、冷却が十分行われ、急激な熱ショックによるター
ゲット層の剥離、割れもなく、単位面積当たりに大きな
電力を投入することが可能である。
【0048】さらにターゲット被膜層の侵食ゾーンが薄
くなっても、これらの薄くなった部分に、同じ材質のタ
ーゲット被膜層をプラズマ溶射することにより、元の状
態に容易に再生することもできる。
【0049】さらに、ターゲット層の厚みに場所による
分布をもたせることも容易に可能であり、それによっ
て、ターゲット表面での磁界の強さや温度分布をもたせ
て、生成する薄膜の厚み分布をコントロールすることも
できる。
【0050】本発明の回転カソードターゲットは、マグ
ネトロンスパッタリングにてDC、RFの両方のスパッ
ター装置を用いることが可能であり、高速成膜、ターゲ
ット使用効率も大であり安定して高い成膜ができる。
【0051】
【実施例】高純度(99.99%)のSi粉末(平均粒
径1μm以下)と高純度(99.999%)のInP、
Zn32 とZnP2 、SnP、GaPの粉末のうちそ
れぞれを準備し、それぞれ表1の組成になるように秤量
し、ボールミルにて、3時間アセトンを溶媒として湿式
混合し、得られたものを防爆式スプレイドライヤーにて
造粒し20〜100μmの粒径の粉末を得た。
【0052】内径50.5mmφ×外径67.5mmφ
×長さ406mmの銅製円筒状ターゲットホルダーを旋
盤に取り付け、その外表面をネジ状に加工し、さらに、
Al23 砥粒を用いてサンドブラストにより表面を荒
し粗面の状態にした。
【0053】次にアンダコートとして、Ni−Al
(8:2重量比)の合金粉末を非酸化雰囲気下のプラズ
マ溶射(メトコ溶射機を使用)により、膜厚50μmの
被覆を施した。
【0054】この非酸化雰囲気下のプラズマ溶射は、溶
射ガンとターゲットホルダーを金属製のシールドボック
スにより囲い、その中にArガスをスパイラル状にフロ
ーさせた雰囲気下で行うものであり、プラズマガスに
は、Ar+H2 ガスを用い、毎分42.5リットルの流
量で700A、35kVのパワーで印加を行い、100
00〜20000℃のAr+H2 ガスプラズマによりN
i−Al(8:2)の合金粉末を瞬時的に加熱し、ガス
とともにターゲットホルダー上に輸送し、そこで凝集さ
せて行った。ターゲットホルダーを旋盤にて回転させな
がらプラズマ溶射ガンを左右上下に動かす操作を、何度
も繰り返してアンダコートを形成した。
【0055】次に、Mo金属粉末を用い同様に50μm
の厚みの被覆を形成した。さらに前述のターゲットとな
る粉末を用い、同様のプラズマ溶射法により最終厚み5
mmのターゲット被覆層を形成した。
【0056】次に、この回転カソードターゲットを用
い、マグネトロン直流スパッタ装置の陰極上にセット
し、3mm厚みのソーダライムガラス基板を、真空チャ
ンバー内に入れ、クライオポンプで1×10-6Torr
まで排気し、次にArとO2 の混合ガス(Ar:O2
70:30)を真空チャンバー内に導入し、その圧力が
5×10-3Torrになるように調整する。この状態で
スパッタを行い酸化膜として約1000Åを成膜した。
【0057】表1に本発明の各種ターゲットを用いてA
rとO2 の混合雰囲気中で反応性直流スパッタリングを
行って成膜した膜の屈折率と成膜安定性(耐アーキング
特性)を示した。各種ターゲットを用いて成膜した膜
は、そのターゲット中のSiに対するIn等の構成物質
の組成比が膜中でもほぼ保たれていた。
【0058】また上記ターゲットをホットプレスにて焼
結体を作成し、Inを用いてプレーナ型のバッキングプ
レートに接合し、成膜速度について比較した。
【0059】
【比較例】Siの単結晶(N型、0.1Ω・cm)およ
び本発明の範囲外の組成のターゲットについて行った結
果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】表1に示すように、本発明のターゲットを
用いて成膜した酸化物膜の屈折率は1.46〜1.50
と低く、SiO2 膜とほとんど同じ屈折率を有してい
た。しかも本発明のターゲットを用いて成膜した場合に
は、耐アーキング性はSiターゲット(比較例)と比較
すると格段に改善され、非常に成膜が安定していた。パ
ワーアップしても何らアーキングは発生せず破損や剥離
も認められず安定して高速成膜ができた。
【0062】表1より、Si単結晶や本発明の範囲外の
ターゲットの場合には、アーキングが発生し成膜が安定
してできずまた、膜の屈折率も高くなることがわかっ
た。さらに成膜速度を上げるためのパワーアップによ
り、ターゲット表面に亀裂が発生し、成膜速度を上げる
ことはできなかった。
【0063】
【発明の効果】本発明のターゲットを用いることによ
り、低屈折率の透明薄膜を安定して得ることができる。
特に、SiにIn、Zn、SnおよびGaからなる群か
ら選ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を含むター
ゲットを容易にプラズマ溶射により得ることができ、ま
た酸素雰囲気中でのスパッタでも高導電率を有するスパ
ッタリング用ターゲットを得ることができ、大面積の成
膜が高速でできるとともに安定的に低屈折率の透明薄膜
を提供できる。
【0064】また本発明のターゲットは均質で高密度で
あり熱ショックにも強く、従来のような成形、焼成、加
工、ボンディングなどの工程も必要とせず、容易に短時
間にスパッタリング用ターゲットを任意の形状構造に対
応できる。
【0065】さらに本発明のスパッタリング用ターゲッ
トは、使用後消費した部分に、同組成の新しいターゲッ
ト材質の溶射粉末を同時にプラズマ溶射することにより
ターゲットを再生でき、経済的にも有用である。
【0066】本発明のスパッタリング用ターゲットを用
いれば、スパッタ時の冷却効率も高くスパッタパワーを
高くしても、ターゲットの亀裂や破損がないため、安定
して高速成膜が可能となり建築、自動車用等の大面積ガ
ラスからミラー等の生産性が著しく向上するなどその工
業的価値は多大である。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円筒状ターゲットホルダー上にアンダコー
    トを形成し、次いで、Siを主成分とし、In、Zn、
    SnおよびGaからなる群から選ばれる少なくとも1種
    の金属のリン化物を0.01〜30wt%含有する粉末
    を、高温プラズマガス中で半溶融状態にしつつ、このプ
    ラズマガスにより該アンダコート上に輸送してターゲッ
    ト層を形成して製造することを特徴とする回転カソード
    ターゲットの製造方法。
  2. 【請求項2】前記円筒状ターゲットホルダーの表面が、
    荒れた表面であることを特徴とする請求項1記載の回転
    カソードターゲットの製造方法。
  3. 【請求項3】前記アンダコートが、前記円筒状ターゲッ
    トホルダーの熱膨張係数と、前記ターゲット層の熱膨張
    係数との中間の熱膨張係数を有する層、および前記ター
    ゲット層に近似した熱膨張係数を有する層からなる群か
    ら選ばれる少なくとも1層であることを特徴とする請求
    項1または2記載の回転カソードターゲットの製造方
    法。
  4. 【請求項4】前記アンダコートが、プラズマ溶射法によ
    り形成されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1
    項記載の回転カソードターゲットの製造方法。
  5. 【請求項5】円筒状ターゲットホルダー上に、Siを主
    成分とし、In、Zn、SnおよびGaからなる群から
    選ばれる少なくとも1種の金属のリン化物を0.01〜
    30wt%含有する粉末を、プラズマ溶射することによ
    り形成されるターゲット層を有することを特徴とする回
    転カソードターゲット。
  6. 【請求項6】前記円筒状ターゲットホルダーの表面が、
    荒れた表面であることを特徴とする請求項5記載の回転
    カソードターゲット。
  7. 【請求項7】前記円筒状ターゲットホルダーと、前記タ
    ーゲット層との間にアンダコートを有することを特徴と
    する請求項5または6記載の回転カソードターゲット。
  8. 【請求項8】前記アンダコートが、前記円筒状ターゲッ
    トホルダーの熱膨張係数と、前記ターゲット層の熱膨張
    係数との中間の熱膨張係数を有する層、および前記ター
    ゲット層に近似した熱膨張係数を有する層からなる群か
    ら選ばれる少なくとも1層であることを特徴とする請求
    項5〜7いずれか1項記載の回転カソードターゲット。
  9. 【請求項9】前記アンダコートが、プラズマ溶射法によ
    り形成されることを特徴とする請求項5〜8いずれか1
    項記載の回転カソードターゲットの製造方法。
  10. 【請求項10】請求項5〜9いずれか1項記載の回転カ
    ソードターゲットを用いて、スパッタリングして形成さ
    れることを特徴とする膜。
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