JPH0711419A - 回転カソードターゲット及びその製造方法 - Google Patents

回転カソードターゲット及びその製造方法

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JPH0711419A
JPH0711419A JP5184530A JP18453093A JPH0711419A JP H0711419 A JPH0711419 A JP H0711419A JP 5184530 A JP5184530 A JP 5184530A JP 18453093 A JP18453093 A JP 18453093A JP H0711419 A JPH0711419 A JP H0711419A
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film
undercoat
rotating cathode
zno
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JP5184530A
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English (en)
Inventor
Otojiro Kida
音次郎 木田
Akira Mitsui
彰 光井
Yoko Suzuki
陽子 鈴木
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AGC Inc
Original Assignee
Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】円筒状ターゲットホルダー上に、ZnOを主成
分とし、Ga23 を1〜10%含有する粉末を、プラ
ズマ溶射することにより形成する回転カソードターゲッ
ト。 【効果】高い耐熱性を有する透明導電膜が容易に得ら
れ、使用中の黒化がほとんどなく長時間使用しても膜の
比抵抗の増加などの経時変化が少なく、安定して成膜で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用方法】本発明は、透明導電膜を形成する
際に用いられる回転カソードターゲット及びその製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】透明導電膜は可視光域で高い透過率と高
い導電性を合わせもつものであり、液晶表示素子、プラ
ズマ発光素子、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)素
子等の表示素子用透明電極や、太陽電池、TFT、その
他各種受光素子の透明電極として利用されている。また
自動車及び建築用の熱線反射膜、フォトマスクその他各
種用途の帯電防止膜、冷凍ショーケースをはじめとする
各種の防曇用の透明発熱体として広く用いられている。
さらに調光ガラスとしてのエレクトロクロミック素子用
基板としても用いられる。
【0003】従来、透明導電膜としてはガラス基板上に
堆積したアンチモンやフッ素をドーパントとして含む酸
化錫(SnO2 )、あるいは、錫をドーパントとして含
む酸化インジウム(In23 )、酸化亜鉛等が知られ
ており、特に錫を添加した酸化インジウム膜(以下IT
O膜とよぶ)は低抵抗膜が容易に得られることから主と
して液晶等の表示素子用電極として広く用いられてい
る。
【0004】現在、ガラス基板上にITO膜を形成する
一般的な方法は、真空蒸着法、またはスパッタリング法
である。しかし、いずれの方法でも出発原料をインジウ
ムとする場合、インジウムは希少金属であるため高価格
であることから、基板の低コスト化には限界がある。ま
たインジウムの資源埋蔵量は他の元素に比べても特に少
なく、亜鉛鉱の精練時の副産物として抽出されるために
その生産量も亜鉛生産量に依存しており、大幅な生産量
の増大は困難である。今後表示素子等の市場規模がさら
に拡大するに伴い透明導電膜の需要が拡大した場合、I
TOの場合、原料であるインジウムの安定供給にも問題
がある。
【0005】一方、酸化亜鉛(ZnO)膜を主成分とす
る透明導電膜は亜鉛を主原料とするため、極めて低価格
であり、かつ埋蔵量、生産量ともに極めて多く、資源枯
渇や安定供給の点で心配がない利点を有する。また、比
抵抗値もAl等の不純物を添加することにより10-4Ω
・cm台とITO並みの低抵抗膜が得られることが知ら
れている。このためZnO膜はITO膜に替る低コスト
導電膜として期待されている。
【0006】しかしAl添加の場合、最も一般的なZn
O製膜法であるスパッタ法によりガラス基板上に10-4
Ω・cm台の低抵抗膜を得るためには、例えば(Thin S
olidFilms,124,43,1985 )で明らかにされているよう
に、ターゲットに対して基板を垂直配置する等の特別な
基板配置が必要であったり、外部磁場の印荷等の特別な
工夫が必要であった。
【0007】また低抵抗化のためには製膜後の非酸化性
雰囲気での熱処理も必要とされた。さらにターゲットの
経時変化の影響が大きいため低抵抗膜を再現性良く製造
することは困難であった。これらの低抵抗膜の製膜速度
は5Å/秒程度以下と極めて小さいため、実際の工業生
産においては生産速度が遅いという致命的な問題があ
り、全体としてコスト低減の効果が少なくなるため、原
料コストが安いというZnOと特徴を活かし切れていな
かった。
【0008】表示素子等の電極に透明導電膜を応用する
場合、素子作製プロセスにおいて300℃から500℃
程度の高温での熱処理が行われる。この場合、不活性ガ
ス中での熱処理も可能であるが、雰囲気を保持するため
の設備が必要となるためコスト増加を招く。そこで実際
に工業的には大気中での熱処理が必要とされる。また、
透明導電膜を発熱体として使用する場合、導電膜は大気
中雰囲気で通電加熱された状態で使用される。このた
め、発熱による抵抗値変化が少ないこと、すなわち、酸
化性雰囲気中での耐熱性が要求される。
【0009】熱線反射ガラスとして透明導電膜を応用す
る場合も曲げ加工や強化加工を行う際に、大気中で60
0℃以上の高温熱処理が行われるため、同様な耐熱性が
要求される。このように、透明導電膜を工業分野に応用
する場合には単に非酸化性雰囲気での耐熱性ではなく、
大気中での高い耐熱性が要求される。
【0010】この点でITO膜は充分ではないが大気中
での耐熱性を有している。このためITOは主に液晶表
示素子等に用いられているが、これは300℃付近の比
較的低温での耐熱性しか要求されないからである。これ
に対して、従来のZnO膜(添加物なし)は酸化性雰囲
気における耐熱性がITOに比べると著しく劣っており
酸化性雰囲気での耐熱性向上が実用化における課題であ
った。
【0011】そこでこのZnO膜の耐熱性を改善するた
めに、従来、特公平3−72011号公報に示されてい
るように、ZnOに周期律表第3族の不純物を添加する
ことによって、アルゴン気流中や真空中等の非酸化性雰
囲気における耐熱性が改善されることが示されている。
しかし、3族の不純物を添加した場合で、不活性ガス雰
囲気や還元性ガス雰囲気での耐熱性は向上するが、大気
雰囲気における400℃での高温熱処理では、電気抵抗
が4桁以上も増加するため導電膜としては使用不可能に
なることも同時に知られている(電子通信学会技術報
告、CPM84-8,55(1984))。この大気中での耐熱性の欠如
のために、ZnO膜は透明導電膜としての実用化が遅れ
ている。
【0012】このように表示素子基板、透明発熱体、熱
線反射ガラスとして透明導電膜を応用する場合、透明導
電膜は大気中での高温加熱を経るため、導電膜の電気的
及び光学的特性が損なわれない特性を有することが極め
て重要となる。しかし従来、ZnOを主成分とする透明
導電膜はITOに替る低コスト材料として期待されなが
ら、酸化性雰囲気での耐熱性が不充分なため広範な実用
化、工業化が遅れており、大気中での耐熱性改善がZn
O膜の最大の課題とされてきた。
【0013】これらの要求に対して、本出願人は特願平
4−207470にて、新しい透明導電膜用のスパッタ
リングターゲットを提案した。しかしながら、最近で
は、要求されるスパッタリングターゲットも複雑な形状
のものや、ターゲット厚みを部分的に変化させたような
高効率のプレーナーターゲットが必要とされている。前
記の特許の方法では一般的な常圧焼成により焼結体を得
る方法であるため、種々の形状、複雑な構造のターゲッ
トの製作は困難であり、また、原料混合、成形、焼結、
加工、ボンディングと長い工程を通って製作されるの
で、大がかりな装置治具が必要である。このため任意の
形状構造に対応でき、また、大気中での耐熱性や低抵抗
化可能な透明導電膜ターゲットが望まれていた。
【0014】さらに建築用の大面積ガラスのスパッタに
おいては、生産性を上げるため高いスパッタパワーをか
け成膜速度を上げているが、この場合ターゲットの冷却
が成膜速度を制限しており、ターゲットの割れ、剥離等
のトラブルが起きている。
【0015】これらの点を改良した新しいタイプのマグ
ネトロン型回転カソードターゲットが知られている(特
表昭58−500174号公報参照)。これは、円筒状
ターゲットの内側に磁場発生手段を設置し、ターゲット
の内側から冷却しつつ、ターゲットを回転させながらス
パッタを行うものであるため、プレーナ型ターゲットよ
り、単位面積あたり大きなパワーを投入でき、したがっ
て高速成膜が可能とされている。かかるターゲットはほ
とんどがスパッタすべき金属や合金からなる円筒状の回
転カソードである、スパッタすべき物質が、柔らかく、
または脆い金属や合金の場合は円筒上のターゲットホル
ダー上に製作されている。
【0016】しかし金属ターゲットの場合各種のスパッ
タ雰囲気で酸化物、窒化物、炭化物等の多層膜のコート
が可能であるが異種雰囲気によりコート膜が損傷し、目
的の組成のものが得られず、また低融点金属ターゲット
ではパワーをかけすぎると溶融してしまう等の欠点があ
り、セラミックスのターゲットが望まれる。
【0017】特開昭60−181270号に溶射による
スパッタターゲットの製法が提案されているが、セラミ
ックスと金属の熱膨張の差が大きくて溶射膜を厚くでき
ず、また使用時の熱ショックにより密着性が低下し剥離
する等の問題がある。また、セラミックス焼結体を円筒
状に製作してターゲットホルダー金属にIn金属にて接
合する方法もあるが、作りにくくコストもかかる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術が
有していた種々の課題を解決しようとするものであり、
製作面や使用面からも自由度の高い高密度で高速成膜可
能な回転カソードターゲット及びその製造方法の提供を
目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、円筒状ターゲ
ットホルダー上に、ZnOを主成分とし、Ga23
1〜10%含有する粉末を、プラズマ溶射することによ
り形成することを特徴とする回転カソードターゲットを
提供するものである。
【0020】本発明は、また、円筒状ターゲットホルダ
ー上にアンダコートを形成し、次いで、ZnOを主成分
とし、Ga23 を1〜10%含有する粉末を非酸化雰
囲気下の高温ガス中で半溶融状態にしつつ、このガスに
より該アンダコート上に輸送して被膜を形成して製造す
ることを特徴とする回転カソードターゲットの製造方法
を提供するものである。
【0021】本発明の方法は、基本的にセラミックス層
としてGa23 を1〜10wt%含有し、酸化亜鉛を
主成分とする粉末を、例えば、プラズマ溶射装置を用い
て半溶融状態にし、円筒状ターゲットホルダー上に付着
せしめ、直接スパッタリング用ターゲットとなるターゲ
ット層を形成するものである。これによって成形する工
程、焼成する工程、複雑な構造や種々の形状に加工する
工程、ボンディング工程を必要としない。ただ溶射粉末
を得るまでの工程、特に容易に入手できない複雑な化合
物の場合、化学的合成あるいは固相反応を利用して作製
する。この粉末を粉砕または造粒しさらに分級して、溶
射に適当な流動しやすい粒径に揃えることで利用でき
る。
【0022】本発明のセラミックス粉末は、実質的に亜
鉛・ガリウムの酸化物であり、Ga23 として1〜1
0wt%を含有するものである。スパッタすべきターゲ
ットとなるセラミックス層としてGa23 が1%以下
では、成膜した場合、薄膜の結晶性が不充分で高い耐熱
性が得られず、また10%より多いと、薄膜の結晶相が
分離して2相となり低抵抗や高い耐熱性が得られない。
なお、本発明のセラミックス粉末には、他の成分が本発
明の目的、効果を損なわない範囲において含まれても差
し支えないが、可及的に少量にとどめることが望まし
い。
【0023】本発明で用いるセラミックス粉末は次の方
法で作製することができる。即ち、平均粒径が1μm以
下のZnO粉末とGa23 粉末を所定量秤量し、ボー
ルミルを用いて3時間以上、水を溶媒として湿式混合で
泥装を作成し、スプレイドライヤーにて、100〜20
μm程度の粒径に乾燥した溶射粉末を得ることが必要で
ある。
【0024】また、同様にGa23 粉末とZnO粉末
とをボールミルを用いて、アセトンを溶媒として3時間
以上湿式混合し、これをエバポレーターにて乾燥しこの
粉末を1400〜1500℃で焼成して得られる塊状の
粉末を、分級して100〜20μmの粒径の溶射粉末を
得てもよい。これらのセラミックス粉末は、100μm
より大きいと、高温プラズマガス中で半溶融状態にしに
くく、また、20μmより小さいと、プラズマ溶射時
に、高温プラズマガス中に分散してしまいターゲットホ
ルダー上には付着しにくくなる。
【0025】円筒状ターゲットホルダーとしては、ステ
ンレスや銅などの種々の金属が使用できる。ターゲット
材料となるセラミックス粉末のプラズマ溶射に先だっ
て、密着性向上のため、そのターゲットホルダーの表面
を、Al23 やSiCの砥粒を用いてサンドブラスト
するなどにより荒しておくことが必要である。あるいは
また、これらのターゲットホルダーの表面をV溝状やネ
ジ状に加工した後、Al23 やSiC砥粒を用いて、
サンドブラストしてより密着性を向上させることも好ま
しい。
【0026】ターゲットホルダー表面を荒した後に、溶
射するターゲット材料とターゲットホルダーとの熱膨張
差を緩和し、また、機械的、熱的な衝撃による剥離にも
耐えるよう密着力を高めるため、アンダコート層を形成
しておくのが好ましい。
【0027】かかるアンダコートとしては、前記円筒状
ターゲットホルダーの熱膨張係数と、前記被膜の熱膨張
係数との中間の熱膨張係数を有する層(以下A層とい
う)、及び前記被膜に近似した熱膨張係数を有する層
(以下B層という)からなる群から選ばれる少なくとも
1層であることが好ましい。特に両方の層を形成し、タ
ーゲットホルダー/A層/B層/ターゲット材料被膜層
という構成とするのが最適である。
【0028】アンダコート層がA層あるいはB層だけで
あっても、それらが金属や合金である場合は、弾性が高
く、脆さが小さいので、ターゲットとなるセラミックス
被膜層のターゲットホルダーへの密着力を高めることが
できるが、好ましくはB層の熱膨脹係数は、ターゲット
となるセラミックス被膜層の熱膨張係数±2×10-6
℃の範囲内であることが最適である。
【0029】アンダコートの材料としては、Mo、T
i、Ni、Nb、Ta、W、Ni−Al、Ni−Cr、
Ni−Cr−Al、Ni−Cr−Al−Y、Ni−Co
−Cr−Al−Yなどの導電性粉末を用いることができ
る。アンダコートの膜厚は、それぞれ30〜100μm
程度が好ましい。
【0030】具体的には、アンダコートの材料は、Ga
とZnの酸化物セラミックス層の熱膨張係数に応じて変
える必要がある(ターゲットホルダーとして使用可能な
銅やステンレス等の熱膨脹係数は、17〜18×10-6
/℃である)。
【0031】例えば前記セラミックス層の場合(熱膨張
係数5〜6×10-6/℃)では、アンダコートA層の好
ましい熱膨張係数は12〜15×10-6/℃であり、そ
の材料としてNi、Ni−Al、Ni−Cr、Ni−C
r−Al、Ni−Cr−Al−Y、Ni−Co−Cr−
Al−Y等があげられる。またアンダコートB層の好ま
しい熱膨張係数は5〜8×10-6/℃であり、その材料
としてはMo、W、Ta、Nb等があげられる。またか
かるアンダコート材料の中から、ターゲット材料に近い
熱膨張係数をもつアンダコートと、ターゲットホルダー
に近い熱膨脹係数をもつアンダコートとを傾斜組成的に
変化させたアンダコート層を設けてもより密着性が高く
なるので好ましい。
【0032】このアンダコートの上に前述のセラミック
ス粉末を高温プラズマガス中、好ましくはAr、Ar+
2 、などの非酸化雰囲気下の高温プラズマガス中で、
半溶融状態にしつつ、このガスにより、上記アンダコー
ト上に輸送して付着させ、スパッタすべきターゲットと
なる被膜層を形成する。特にこれは高温プラズマガス
中、好ましくは非酸化雰囲気下の高温プラズマガス中で
行うプラズマ溶射法により形成するのが好ましい。上記
アンダコートを挿入することにより、2〜5mm以上の
膜厚の安定なターゲット被膜層を形成することができ
る。
【0033】また、前述のアンダコートを形成する際も
高温プラズマガス中、好ましくは非酸化雰囲気下の高温
プラズマガス中でのプラズマ溶射法により形成するのが
好ましい。ターゲット材料となる被膜層を非酸化雰囲気
下の高温プラズマガス中で半溶融状態にしつつ、アンダ
コート上に付着させてターゲット被膜層を形成する場合
には、ターゲット被膜層形成中にターゲット粉末の化学
組成や鉱物組成の変動も少なく、均質で高密度なターゲ
ット被膜層を形成することができる。
【0034】
【作用】本発明において、ターゲット層となるGa固溶
ZnO相が、プラズマ溶射により超急冷された状態でタ
ーゲット被膜層が形成されるため、スパッタ成膜された
場合、成膜した膜中のGa原子のZn原子位置への置換
が容易になり、原子間に存在するGa原子を少なくでき
るため、極めて結晶性の高い低抵抗の膜が成膜でき、ま
た空気のような酸素を含む雰囲気中においても、高い耐
熱性と低抵抗を有する透明導電膜が得られる。
【0035】またこのようにして作成した回転カソード
スパッタリング用ターゲットは、ターゲット物質からタ
ーゲットホルダー、さらにはカソード電極への熱伝導も
よく、また強固にターゲットホルダー上に密着している
ので、成膜速度を上げるための高いスパッタリングパワ
ーをかけた場合でも、冷却が充分行われ、急激な熱ショ
ックによるターゲット層の剥離、割れもなく、単位面積
当たりに大きな電力を投入することが可能である。
【0036】また、ターゲットの浸食ゾーンが全面にな
るため、ターゲットの利用効率もプレーナ型と比べ高い
という利点がある。また、ターゲットの浸食部分が薄く
なってもターゲット物質が減少した部分に同じ物質の溶
射粉末を溶射することにより、元の状態に再生すること
もできる。さらにターゲットの厚みに場所による分布を
もたせることも容易に可能であり、それによってターゲ
ット表面での磁界の強さや温度の分布をもたせて生成す
る薄膜の厚み分布をコントロールすることもできる。
【0037】さらに、本発明のセラミックス回転カソー
ドターゲットは、マグネトロンスパッタに手DC、RF
の両者のスパッタリング装置に用いることが可能であ
り、高速成膜、ターゲット使用効率も大であり、安定し
て成膜できる。
【0038】
【実施例】高純度のZnO粉末(平均粒径1μm以下)
及びGa23 粉末(平均粒径1μm以下)を準備し、
それぞれの組成になるように秤量し、ボールミルにて、
水を媒体として3時間湿式混合し得られた泥装をスプレ
イドライヤーを用いて造粒し100〜20μmの粒径の
粉末を得た。内径50.5mmφ×外径67.5mmφ
×長さ406mmの銅製円筒状ターゲットホルダーを旋
盤に取り付け、その外表面側をネジ状に加工し、さら
に、Al23 砥粒を用いて、サンドブラストにより表
面を荒し粗面の状態にした。
【0039】次にアンダコートとしてNi−Al(8:
2重量比、以下同じ)の合金粉末を非酸化雰囲気下のプ
ラズマ溶射(メトコ溶射機を使用)により、膜厚50μ
mの被膜を施した。この非酸化雰囲気下のプラズマ溶射
は、溶射ガンと円筒状ターゲットホルダーを金属製のシ
ールドボックスにより囲い、その中にArガスをスパイ
ラル状にフローさせた雰囲気下で行うもので、プラズマ
ガスにAr+H2 ガスを用い、毎分42.5リットルの
流量で700A、35kVのパワーで印加を行い、10
000〜20000℃のAr+H2 ガスプラズマにより
Ni−Alの合金粉末を瞬時に加熱し、ガスとともにタ
ーゲット金属ホルダー上に輸送し、そこで凝集させて行
った。ターゲットホルダーを旋盤にて回転させながらプ
ラズマ溶射ガンを左右に動かす操作を、何度も繰り返し
てアンダコートを形成した。
【0040】次にMo金属粉末を用い、同様に50μm
の厚みの被膜を形成した。さらに前述のGa23 −Z
nOの粉末を用いて、同様のプラズマ溶射法により最終
厚み3mmのGa23 −ZnOセラミックス層を被膜
した回転カソードターゲットを得た。
【0041】次に、この回転カソードターゲットを用い
て、マグネトロンスパッタリング装置を使用して、Ga
23 −ZnO膜の成膜を行った。形成条件は、Ar雰
囲気中で5×10-3Torr程度の真空中でスパッタ
し、基板には、無アルカリガラスコーニング#7059
を用い、膜厚は約500mmとなるように行った。成膜
後、膜厚、シート抵抗を測定し、膜厚、シート抵抗から
膜の比抵抗を計算した。また、成膜した膜を空気中50
0℃で10分保持の条件で熱処理した後の、膜の比抵抗
を測定し、空気中での耐熱性を評価した。なお、表中の
比抵抗値の単位は10-4Ωcmである。また上記ターゲ
ットを従来の方法でプレーナー型ターゲットホルダーに
接合したターゲットと成膜速度についても比較した。こ
れらの結果を表1に示した。
【0042】表1に示したように、本発明の回転ターゲ
ットを用いて形成した膜は、比抵抗も小さく、また、空
気中500℃での熱処理においても、比抵抗は変わらず
低い比抵抗であった。またスパッタ中は、異常放電もな
くターゲットの破損もなく、黒スス(スパッタによりタ
ーゲット表面の酸素量が減少して、ターゲット表面が黒
くなる現象)も発生せず、安定して高速成膜ができた。
【0043】
【比較例】通常の常圧焼結法にて作成したGa23
ZnOと、従来のITO(10wt%SnO2 −90w
t%In23 )及び、AZO(3wt%Al23
97wt%ZnO)のプレーナーターゲットと、Ga2
3 −ZnO系において、本発明の範囲外の組成の回転
カソードターゲットについて行った結果を表1に示し
た。
【0044】表1よりITO、AZOのプレーナーター
ゲット、及び本発明の範囲外のGa23 −ZnO系の
回転カソードターゲットの場合には、空気中500℃で
の熱処理により膜の比抵抗は大きく増加し、耐熱性は低
いことが認められた。またITOは、スパッタ中に黒ス
スが発生し、連続して成膜できなかった。さらに、IT
O、AZOのプレーナーターゲットでは、成膜速度を上
げるためのパワーアップにより、ターゲット表面に亀裂
が発生し、成膜速度を上げることはできなかった。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】上記のことから明らかなように、本発明
のターゲットを用いることにより空気中のような酸素を
含む雰囲気においても、高い耐熱性を有する透明導電膜
が容易に得られる。また、本発明のターゲットは、ター
ゲット中のGa23 がGa固溶ZnO相として存在す
るので使用中の黒化が、ほとんどなく長時間使用しても
膜の比抵抗の増加などの経時変化が少なく、安定して高
速成膜できる。
【0047】また本発明のターゲットは均質で高密度で
あり熱ショックにも強く、従来のような成形、焼成、加
工、ボンディングなどの工程も必要とせず容易に短時間
にスパッタリングターゲットの任意の形状構造に対応で
きる。さらに本発明のスパッタリングターゲットは、使
用後消費した部分に、同組成の新しいターゲット材質の
溶射粉末をプラズマ溶射することによりターゲットを再
生でき、経済的にも有用である。
【0048】本発明のスパッタリングターゲットを用い
れば、スパッタ時の冷却効率も高くスパッタパワーを高
くしても、ターゲットの亀裂や破損がないため、低温で
安定して高速成膜が可能となり、各種表示素子や太陽電
池、及び受光素子等の透明電極、建築用及び自動車用の
熱線反射膜、選択透過膜及び電磁波遮蔽膜、さらに、自
動車の防曇、防水用や冷凍ショーケース等や、その他建
築用の透明発熱体、あるいはフォトマスクや建築用等の
帯電防止膜等として最適なものとなり、極めて広範囲の
分野への応用が可能となり、その工業的価値は多大であ
る。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】円筒状ターゲットホルダー上に、ZnOを
    主成分とし、Ga23 を1〜10%含有する粉末を、
    プラズマ溶射することにより形成することを特徴とする
    回転カソードターゲット。
  2. 【請求項2】前記円筒状ターゲットホルダーの表面が、
    荒れた表面であることを特徴とする請求項1記載の回転
    カソードターゲット。
  3. 【請求項3】前記円筒状ターゲットホルダーと、ZnO
    を主成分とし、Ga23 を1〜10%含有する粉末を
    プラズマ溶射することにより円筒状ターゲットホルダー
    上に形成される被膜との間にアンダコートを有すること
    を特徴とする請求項1または2記載の回転カソードター
    ゲット。
  4. 【請求項4】前記被膜が、ZnO中にGa23 が固溶
    されている膜から形成されていることを特徴とする請求
    項3記載の回転カソードターゲット。
  5. 【請求項5】前記アンダコートが、前記円筒状ターゲッ
    トホルダーの熱膨張係数と、前記被膜の熱膨張係数との
    中間の熱膨張係数を有する層、及び前記被膜に近似した
    熱膨張係数を有する層からなる群から選ばれる少なくと
    も1層であることを特徴とする請求項3記載の回転カソ
    ードターゲット。
  6. 【請求項6】円筒状ターゲットホルダー上にアンダコー
    トを形成し、次いで、ZnOを主成分とし、Ga23
    を1〜10%含有する粉末を非酸化雰囲気下の高温ガス
    中で半溶融状態にしつつ、このガスにより該アンダコー
    ト上に輸送して被膜を形成して製造することを特徴とす
    る回転カソードターゲットの製造方法。
  7. 【請求項7】前記円筒状ターゲットホルダーの表面が、
    荒れた表面であることを特徴とする請求項6記載の回転
    カソードターゲットの製造方法。
  8. 【請求項8】前記アンダコートが、前記円筒状ターゲッ
    トホルダーの熱膨張係数と、前記被膜の熱膨張係数との
    中間の熱膨張係数を有する層、及び該混合物に近似した
    熱膨張係数を有する層からなる群から選ばれる少なくと
    も1層であることを特徴とする請求項6または7記載の
    回転カソードターゲットの製造方法。
  9. 【請求項9】前記アンダコートが、プラズマ溶射法によ
    り形成されることを特徴とする請求項6〜8いずれか1
    項記載の回転カソードターゲットの製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100262669B1 (ko) * 1997-12-16 2000-08-01 신현준 아이티오진공증착용타켓의제조방법
WO2006090571A1 (ja) * 2005-02-22 2006-08-31 Konica Minolta Opto, Inc. 発光ダイオードとその製造方法
WO2012005366A1 (ja) * 2010-07-09 2012-01-12 東ソー株式会社 酸化亜鉛系円筒ターゲット及びその製造方法
CN114714257A (zh) * 2022-03-21 2022-07-08 合肥江丰电子材料有限公司 一种靶材的喷砂方法

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