JPH07258808A - 電子機器用高力高導電性銅合金材の製造方法 - Google Patents
電子機器用高力高導電性銅合金材の製造方法Info
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- JPH07258808A JPH07258808A JP7542794A JP7542794A JPH07258808A JP H07258808 A JPH07258808 A JP H07258808A JP 7542794 A JP7542794 A JP 7542794A JP 7542794 A JP7542794 A JP 7542794A JP H07258808 A JPH07258808 A JP H07258808A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 リ−ド材や高強度ばね材としても十分に適用
可能な強度,ばね特性及び曲げ加工性等を兼備した電子
機器用高導電性金属材料を低コストで製造する手段を確
立する。 【構成】 Cr:0.05〜0.40%,Zr:0.03〜0.25%,Ni:
0.10〜2.0 %,Ti:0.10〜1.0 %を含むか、あるいは更
にZn:0.05〜2.0 %とSn,In,Mn,P,Mg及びSiの1種
以上:総量で0.01〜1%のうちの1種以上を含有すると
共に残部がCuと不可避的不純物から成る銅合金の素材
に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、 最
終加工温度が700℃以上で、加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工
度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効
処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350
〜 700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの順に順次施
す。
可能な強度,ばね特性及び曲げ加工性等を兼備した電子
機器用高導電性金属材料を低コストで製造する手段を確
立する。 【構成】 Cr:0.05〜0.40%,Zr:0.03〜0.25%,Ni:
0.10〜2.0 %,Ti:0.10〜1.0 %を含むか、あるいは更
にZn:0.05〜2.0 %とSn,In,Mn,P,Mg及びSiの1種
以上:総量で0.01〜1%のうちの1種以上を含有すると
共に残部がCuと不可避的不純物から成る銅合金の素材
に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、 最
終加工温度が700℃以上で、加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工
度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効
処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350
〜 700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの順に順次施
す。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、トランジスタや集積
回路(IC)等のような半導体機器のリ−ド材や各種端
子,コネクタ−,スイッチ等における導電性ばね材等と
して好適な、高い強度や電気伝導性等に加えて優れた曲
げ加工性及びエッチング性をも備えた電子機器用高力高
導電性銅合金材の製造方法に関する。
回路(IC)等のような半導体機器のリ−ド材や各種端
子,コネクタ−,スイッチ等における導電性ばね材等と
して好適な、高い強度や電気伝導性等に加えて優れた曲
げ加工性及びエッチング性をも備えた電子機器用高力高
導電性銅合金材の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその課題】近年のICパッケ−ジの動向は
“軽薄短小化”に象徴されてきたが、最近、表面パッケ
−ジの普及によってその傾向は益々促進され、更にIC
チップの高機能化に伴う多ピン化及び低発熱化も同時に
進んでいる。一方、ICパッケ−ジの形態に係る具体的
な変遷過程を見ると、従来はDIPに代表されるピン挿
入型パッケ−ジが多用されてきたが、実装密度向上を目
的とした“表面実装”が主流になるにつれてSOJ,S
OP,QFP等の表面実装型への移行が進んでいる。そ
して、最近では、多ピン化に伴ってリ−ドピッチを縮小
したファインピッチQFPが増加し、更にTSOP,T
QFP等に代表される薄板化が進行している。
“軽薄短小化”に象徴されてきたが、最近、表面パッケ
−ジの普及によってその傾向は益々促進され、更にIC
チップの高機能化に伴う多ピン化及び低発熱化も同時に
進んでいる。一方、ICパッケ−ジの形態に係る具体的
な変遷過程を見ると、従来はDIPに代表されるピン挿
入型パッケ−ジが多用されてきたが、実装密度向上を目
的とした“表面実装”が主流になるにつれてSOJ,S
OP,QFP等の表面実装型への移行が進んでいる。そ
して、最近では、多ピン化に伴ってリ−ドピッチを縮小
したファインピッチQFPが増加し、更にTSOP,T
QFP等に代表される薄板化が進行している。
【0003】ところで、多ピン,狭ピッチのフレ−ムの
大半はエッチング加工により作られるのが一般的である
が、このエッチング加工では狙いとする板厚方向への食
刻のみならず板幅方向へのサイドエッチも起こることか
ら、リ−ド幅やリ−ド間隔に関する加工精度の観点から
素材板厚は薄いほど加工上有利となる。また、パッケ−
ジの薄肉化要求からもリ−ドフレ−ム材を薄くする必要
があり、そのため最近では板厚が0.15mmから0.125 mm、
更には0.10mmへと薄くなる傾向を示している。
大半はエッチング加工により作られるのが一般的である
が、このエッチング加工では狙いとする板厚方向への食
刻のみならず板幅方向へのサイドエッチも起こることか
ら、リ−ド幅やリ−ド間隔に関する加工精度の観点から
素材板厚は薄いほど加工上有利となる。また、パッケ−
ジの薄肉化要求からもリ−ドフレ−ム材を薄くする必要
があり、そのため最近では板厚が0.15mmから0.125 mm、
更には0.10mmへと薄くなる傾向を示している。
【0004】しかし、このようなリ−ドフレ−ムの薄板
化やリ−ドの狭小化はリ−ド強度を低下させ、アセンブ
リ−工程中やデバイス実装時におけるリ−ドの変形を引
き起こす。そこで、このような問題を解決するためには
使用されるリ−ドフレ−ム材料の強度をできるだけ向上
させる必要がある。また、ICの高集積化や多ピン化が
進むと、これに伴い消費電力も大きくなってチップから
発生する熱の放散対策が無視できない重要な問題とな
る。
化やリ−ドの狭小化はリ−ド強度を低下させ、アセンブ
リ−工程中やデバイス実装時におけるリ−ドの変形を引
き起こす。そこで、このような問題を解決するためには
使用されるリ−ドフレ−ム材料の強度をできるだけ向上
させる必要がある。また、ICの高集積化や多ピン化が
進むと、これに伴い消費電力も大きくなってチップから
発生する熱の放散対策が無視できない重要な問題とな
る。
【0005】このように、半導体機器のリ−ド材には一
般に次のような多岐多用な特性が要求されている。 a) リ−ドが容易に変形することがない機械的強度を有
すること, b) リ−ドフレ−ムのパタ−ン形成に必要な優れたエッ
チング性及びプレス加工性を有すること, c) チップの発熱に対して効率良く熱放散させるための
高い熱伝導率を有すること, d) 電気的特性に優れていること, e) デバイス実装時における半田付け性に優れ、かつ半
田接合部の信頼性が高いこと, f) ボンディングのためのAgメッキ性に優れること, g) 加熱工程で表面が酸化することのない優れた耐酸化
性を有していること, h) 繰り返し曲げ性に優れていること, i) 価格が安価であること。
般に次のような多岐多用な特性が要求されている。 a) リ−ドが容易に変形することがない機械的強度を有
すること, b) リ−ドフレ−ムのパタ−ン形成に必要な優れたエッ
チング性及びプレス加工性を有すること, c) チップの発熱に対して効率良く熱放散させるための
高い熱伝導率を有すること, d) 電気的特性に優れていること, e) デバイス実装時における半田付け性に優れ、かつ半
田接合部の信頼性が高いこと, f) ボンディングのためのAgメッキ性に優れること, g) 加熱工程で表面が酸化することのない優れた耐酸化
性を有していること, h) 繰り返し曲げ性に優れていること, i) 価格が安価であること。
【0006】しかしながら、これら各種の要求特性に対
し、従来より使用されてきたりん青銅等の銅合金や42
アロイ(42wt%Ni-Fe)には何れも一長一短があり、前記
特性の全てを満足し得るものはなかった。特に、リ−ド
の多ピン化,小型化の進展に伴って形状の複雑化やピン
の狭小化が進み、リ−ドフレ−ム材料に一層良好な強
度,エッチング性及び曲げ加工性が求められていること
を考慮すれば、上記従来材はこれらの点で十分な性能を
有しているとは言い難かった。
し、従来より使用されてきたりん青銅等の銅合金や42
アロイ(42wt%Ni-Fe)には何れも一長一短があり、前記
特性の全てを満足し得るものはなかった。特に、リ−ド
の多ピン化,小型化の進展に伴って形状の複雑化やピン
の狭小化が進み、リ−ドフレ−ム材料に一層良好な強
度,エッチング性及び曲げ加工性が求められていること
を考慮すれば、上記従来材はこれらの点で十分な性能を
有しているとは言い難かった。
【0007】一方、端子,コネクタ−,リレ−及びスイ
ッチ等の電子機器用ばね材については、従来より比較的
安価な“黄銅”、優れたばね特性を有する“りん青銅”
あるいは優れたばね特性と耐食性を有する“洋白”が適
用されてきた。ところが、黄銅は強度及びばね性が十分
とは言えなかった。また、ばね特性が優れるりん青銅は
多量のSnを含むため、そして強度とばね特性が共に優れ
る洋白は多量のNiを含むため何れも原料コストが高い
上、熱間加工性の悪化から製造時に加工上の制約が加わ
る等の問題もあった。しかも、要求性能が益々高度化し
つつある電気機器部材への適用を考慮した場合、これら
の材料は電気伝導性の点において必ずしも満足できるも
のでないとする声も聞かれるようになってきた。特に、
近年、電気機器類やこれらを使った商品の小型化,薄肉
化傾向が急激に進んだことに伴い材料の加工性が一段と
重視されるようになってきたが、このため優れた導電性
を有することは勿論、ばね特性や曲げ性に優れた安価な
電子機器用合金材料の出現が待たれていた。
ッチ等の電子機器用ばね材については、従来より比較的
安価な“黄銅”、優れたばね特性を有する“りん青銅”
あるいは優れたばね特性と耐食性を有する“洋白”が適
用されてきた。ところが、黄銅は強度及びばね性が十分
とは言えなかった。また、ばね特性が優れるりん青銅は
多量のSnを含むため、そして強度とばね特性が共に優れ
る洋白は多量のNiを含むため何れも原料コストが高い
上、熱間加工性の悪化から製造時に加工上の制約が加わ
る等の問題もあった。しかも、要求性能が益々高度化し
つつある電気機器部材への適用を考慮した場合、これら
の材料は電気伝導性の点において必ずしも満足できるも
のでないとする声も聞かれるようになってきた。特に、
近年、電気機器類やこれらを使った商品の小型化,薄肉
化傾向が急激に進んだことに伴い材料の加工性が一段と
重視されるようになってきたが、このため優れた導電性
を有することは勿論、ばね特性や曲げ性に優れた安価な
電子機器用合金材料の出現が待たれていた。
【0008】このようなことから、本発明が目的とした
のは、益々高度化される半導体機器のリ−ド材や高強度
ばね材としても十分に適用可能な強度,ばね特性及び曲
げ加工性等を兼備した電子機器用高導電性金属材料を低
コストで製造する手段を確立することである。
のは、益々高度化される半導体機器のリ−ド材や高強度
ばね材としても十分に適用可能な強度,ばね特性及び曲
げ加工性等を兼備した電子機器用高導電性金属材料を低
コストで製造する手段を確立することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的
を達成すべく鋭意検討を行ったところ、まず次のような
結論に達した。即ち、元々熱伝導度で42アロイをはる
かに上回る銅をベ−スとした銅合金は熱放散性において
他のリ−ドフレ−ム材料に比べ非常に有利である上、電
気的特性,Agめっき性,半田付け性,耐酸化性,延性等
の面でも比較的良好な特性を確保することができる。従
って、これらの特性を損なうことなく薄板化に対応可能
な強度と繰り返し曲げ性,エッチング性等を付与して従
来の銅合金の持つ欠点を改良できれば、半導体機器のリ
−ドフレ−ム材等として優れた材料を実現できると考え
られる。
を達成すべく鋭意検討を行ったところ、まず次のような
結論に達した。即ち、元々熱伝導度で42アロイをはる
かに上回る銅をベ−スとした銅合金は熱放散性において
他のリ−ドフレ−ム材料に比べ非常に有利である上、電
気的特性,Agめっき性,半田付け性,耐酸化性,延性等
の面でも比較的良好な特性を確保することができる。従
って、これらの特性を損なうことなく薄板化に対応可能
な強度と繰り返し曲げ性,エッチング性等を付与して従
来の銅合金の持つ欠点を改良できれば、半導体機器のリ
−ドフレ−ム材等として優れた材料を実現できると考え
られる。
【0009】そこで、固溶型銅合金に比べ導電率を低下
させずに高強度化が可能な、析出型銅合金の一つである
Cu−Cr−Zr合金に着目して研究を行った結果、「Cu−Cr
−Zr合金にTi及びNiを添加するか、 更にはZn,Sn,In,
Mn,P,MgあるいはSiの1種又は2種以上をも添加する
と共に、 それら各成分の含有量割合を厳密に調整した銅
合金を素材とし、 その熱間加工条件を規制して結晶粒径
を制御した上で、 更に特定条件での冷間加工,時効,最
終冷間加工及び最終焼鈍を施すと、 強度,導電率,曲げ
加工性,ばね特性,Agめっき性,半田接合部の信頼性等
の諸性質が一段と改善された材料を得ることができる」
という知見を得ることができた。
させずに高強度化が可能な、析出型銅合金の一つである
Cu−Cr−Zr合金に着目して研究を行った結果、「Cu−Cr
−Zr合金にTi及びNiを添加するか、 更にはZn,Sn,In,
Mn,P,MgあるいはSiの1種又は2種以上をも添加する
と共に、 それら各成分の含有量割合を厳密に調整した銅
合金を素材とし、 その熱間加工条件を規制して結晶粒径
を制御した上で、 更に特定条件での冷間加工,時効,最
終冷間加工及び最終焼鈍を施すと、 強度,導電率,曲げ
加工性,ばね特性,Agめっき性,半田接合部の信頼性等
の諸性質が一段と改善された材料を得ることができる」
という知見を得ることができた。
【0010】本発明は、上記知見事項等を基にしてなさ
れたもので、 「Cr:0.05〜0.40%(以降、 成分割合を表す%は重量割
合とする),Zr:0.03〜0.25%, Ni:0.10〜2.0 %,
Ti:0.10〜1.0 % を含むか、 あるいは更に Zn:0.05〜2.0 %, Sn,In,Mn,P,Mg及びSiの1種以上:総量で0.01〜1
% のうちの1種又は2種以上を含有すると共に残部がCu及
び不可避的不純物から成る銅合金の素材に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、最終加
工温度が600℃以上で、かつ加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350〜700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの
順に順次施すことによって、 強度,導電率,曲げ加工性
及び半田接合部の信頼性等の諸性質を高いレベルでバラ
ンスさせた電子機器用高力高導電性銅合金材をコスト安
く製造できるようにした点」に大きな特徴を有してい
る。
れたもので、 「Cr:0.05〜0.40%(以降、 成分割合を表す%は重量割
合とする),Zr:0.03〜0.25%, Ni:0.10〜2.0 %,
Ti:0.10〜1.0 % を含むか、 あるいは更に Zn:0.05〜2.0 %, Sn,In,Mn,P,Mg及びSiの1種以上:総量で0.01〜1
% のうちの1種又は2種以上を含有すると共に残部がCu及
び不可避的不純物から成る銅合金の素材に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、最終加
工温度が600℃以上で、かつ加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350〜700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの
順に順次施すことによって、 強度,導電率,曲げ加工性
及び半田接合部の信頼性等の諸性質を高いレベルでバラ
ンスさせた電子機器用高力高導電性銅合金材をコスト安
く製造できるようにした点」に大きな特徴を有してい
る。
【0011】次に、本発明において銅合金素材の成分組
成及び処理条件を前記の如くに数値限定した理由を、そ
の作用と共に詳述する。 A) 成分組成 (a) Cr Crは:合金の溶体化処理に次ぐ時効処理によって母相中
に析出し、その強度及び導電率を向上させる作用を発揮
するが、Cr含有量が0.05%未満では前記作用による所望
の効果が得られない。一方、Cr含有量が0.30%付近を超
えると溶体化処理後にも未溶解Crが母相中に残留するよ
うになり、更にCr含有量が0.40%を超えると粗大介在物
として存在するようになって(圧延垂直断面をエッチン
グした時にヒゲバリ状粗大介在物として現れる)、合金
のエッチング性及び繰り返し曲げ性を劣化する。従っ
て、Cr含有量は0.05〜0.40%と定めた。
成及び処理条件を前記の如くに数値限定した理由を、そ
の作用と共に詳述する。 A) 成分組成 (a) Cr Crは:合金の溶体化処理に次ぐ時効処理によって母相中
に析出し、その強度及び導電率を向上させる作用を発揮
するが、Cr含有量が0.05%未満では前記作用による所望
の効果が得られない。一方、Cr含有量が0.30%付近を超
えると溶体化処理後にも未溶解Crが母相中に残留するよ
うになり、更にCr含有量が0.40%を超えると粗大介在物
として存在するようになって(圧延垂直断面をエッチン
グした時にヒゲバリ状粗大介在物として現れる)、合金
のエッチング性及び繰り返し曲げ性を劣化する。従っ
て、Cr含有量は0.05〜0.40%と定めた。
【0012】(b) Zr Zrは:時効処理によりCuと化合物を形成して母相中に析
出しこれを強化する作用を発揮するが、Zr含有量が0.03
%未満では前記作用による所望の効果が得られず、一
方、0.25%を超えて含有させると溶体化処理後にも未溶
解Zrが母相中に残留し電気伝導度及び曲げ加工性を低下
させることから、Zr含有量は0.03〜0.25%と定めた。
出しこれを強化する作用を発揮するが、Zr含有量が0.03
%未満では前記作用による所望の効果が得られず、一
方、0.25%を超えて含有させると溶体化処理後にも未溶
解Zrが母相中に残留し電気伝導度及び曲げ加工性を低下
させることから、Zr含有量は0.03〜0.25%と定めた。
【0013】(c) Ti Tiは、合金を時効処理した際に母相中にNiとの金属間化
合物を形成し、その結果として合金強度を更に向上させ
る作用を発揮するが、その含有量が0.10%未満では前記
作用による所望の効果が得られず、一方、Ti含有量が1.
0 %を超えると導電率及び曲げ加工性が低下してしま
う。従って、Ti含有量は0.10〜1.0 %と定めた。
合物を形成し、その結果として合金強度を更に向上させ
る作用を発揮するが、その含有量が0.10%未満では前記
作用による所望の効果が得られず、一方、Ti含有量が1.
0 %を超えると導電率及び曲げ加工性が低下してしま
う。従って、Ti含有量は0.10〜1.0 %と定めた。
【0014】(d) Ni Niは、合金を時効処理した際に母相中にTiとの金属間化
合物を形成し合金強度を一層向上させる作用を発揮する
が、その含有量が0.10%未満では前記作用による所望の
効果が得られず、一方、Ni含有量が2.0 %を超えるとや
はり導電率及び曲げ加工性が低下してしまう。従って、
Ni含有量は0.10〜2.0 %と定めた。なお、合金の強度と
導電率はNi/Ti重量比により特性が大きく変化するの
で、強度と導電率を高いレベルでバランスさせるにはNi
/Ti重量比を1〜3、好ましくは1.5 〜2.5 に調整する
のが良い。
合物を形成し合金強度を一層向上させる作用を発揮する
が、その含有量が0.10%未満では前記作用による所望の
効果が得られず、一方、Ni含有量が2.0 %を超えるとや
はり導電率及び曲げ加工性が低下してしまう。従って、
Ni含有量は0.10〜2.0 %と定めた。なお、合金の強度と
導電率はNi/Ti重量比により特性が大きく変化するの
で、強度と導電率を高いレベルでバランスさせるにはNi
/Ti重量比を1〜3、好ましくは1.5 〜2.5 に調整する
のが良い。
【0015】(e) Zn 本発明に係る合金においてZnは半田の耐熱剥離性を向上
させる作用を発揮し、そのため必要に応じて含有せしめ
られる成分であるが、その含有量が0.05%以下では前記
作用による所望の効果が得られず、一方、2.0 %を超え
て含有させると導電率の低下を招くことから、Zn含有量
は0.05〜2.0 %と定めた。
させる作用を発揮し、そのため必要に応じて含有せしめ
られる成分であるが、その含有量が0.05%以下では前記
作用による所望の効果が得られず、一方、2.0 %を超え
て含有させると導電率の低下を招くことから、Zn含有量
は0.05〜2.0 %と定めた。
【0016】(f) Sn,In,Mn,P,Mg及びSi 本発明に係る合金において、Sn,In,Mn,P,Mg及びSi
は何れも合金の導電率を大きく低下させずに主として固
溶強化により強度を向上させる作用を発揮するため、必
要に応じてこれらの1種又は2種以上が添加されるが、
それらの含有量が総量で0.01%未満であると前記作用に
よる所望の効果が得られない。一方、これらの含有量が
総量で1.0 %を超えると合金の導電率及び曲げ加工性が
劣化するようになる。従って、Sn,In,Mn,P,Mgある
いはSiの含有量は総量で0.01〜1%と定めた。
は何れも合金の導電率を大きく低下させずに主として固
溶強化により強度を向上させる作用を発揮するため、必
要に応じてこれらの1種又は2種以上が添加されるが、
それらの含有量が総量で0.01%未満であると前記作用に
よる所望の効果が得られない。一方、これらの含有量が
総量で1.0 %を超えると合金の導電率及び曲げ加工性が
劣化するようになる。従って、Sn,In,Mn,P,Mgある
いはSiの含有量は総量で0.01〜1%と定めた。
【0017】B) 処理条件 (a) 熱間加工 熱間圧延等の熱間加工は、鋳造組織を無くして再結晶組
織を形成するために行われる工程であるが、熱間加工の
終了後に急冷(水冷等)を行うことにより溶体化処理を
兼ねた効果を発揮せしめることが可能である。従って、
この急冷を取り入れた工程により溶体化処理工程を短縮
でき、製造コストを低減することができる。ここで、溶
体化処理では、基本的には溶体化処理温度の高い方がC
r,Zr,Ti及びNiの固溶量が増加するのでその後の時効
による析出強化が大になると期待されるが、溶体化温度
が高すぎると結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣化する
という問題が生じる。しかるに、本発明に係る組成の合
金について種々調査したところ、溶体化処理を兼ねる熱
間加工の開始温度が950℃以上では平均結晶粒径が6
0μmを超える粗粒となって曲げ加工性を著しく劣化
し、また熱間加工開始温度が800℃未満では十分な強
度が得られないことが明らかとなった。そのため、熱間
加工開始温度は800℃以上930℃未満と定めた。一
方、最終加工温度が低いとCr,Zr,Ti及びNiの析出反応
が進行して十分な強化を期待できなくなる。ただ、本発
明に係る組成の合金では、熱間加工開始温度は800℃
以上950℃未満の範囲である限り、最終加工温度が6
00℃以上を満足しておれば強度の大幅な低下を抑止で
きることも分かった。従って、熱間加工における最終加
工温度を600℃以上と定めた。また、熱間加工後の冷
却速度については、析出反応を抑止する速い冷却速度が
要求されるが、本発明に係る組成の合金の場合は冷却速
度が100℃/min以上であれば強度の低下に大きな影響
を及ぼさないことが明らかとなった。それ故、熱間加工
の後は100℃/min以上の冷却速度で冷却することと定
めた。
織を形成するために行われる工程であるが、熱間加工の
終了後に急冷(水冷等)を行うことにより溶体化処理を
兼ねた効果を発揮せしめることが可能である。従って、
この急冷を取り入れた工程により溶体化処理工程を短縮
でき、製造コストを低減することができる。ここで、溶
体化処理では、基本的には溶体化処理温度の高い方がC
r,Zr,Ti及びNiの固溶量が増加するのでその後の時効
による析出強化が大になると期待されるが、溶体化温度
が高すぎると結晶粒が粗大化して曲げ加工性が劣化する
という問題が生じる。しかるに、本発明に係る組成の合
金について種々調査したところ、溶体化処理を兼ねる熱
間加工の開始温度が950℃以上では平均結晶粒径が6
0μmを超える粗粒となって曲げ加工性を著しく劣化
し、また熱間加工開始温度が800℃未満では十分な強
度が得られないことが明らかとなった。そのため、熱間
加工開始温度は800℃以上930℃未満と定めた。一
方、最終加工温度が低いとCr,Zr,Ti及びNiの析出反応
が進行して十分な強化を期待できなくなる。ただ、本発
明に係る組成の合金では、熱間加工開始温度は800℃
以上950℃未満の範囲である限り、最終加工温度が6
00℃以上を満足しておれば強度の大幅な低下を抑止で
きることも分かった。従って、熱間加工における最終加
工温度を600℃以上と定めた。また、熱間加工後の冷
却速度については、析出反応を抑止する速い冷却速度が
要求されるが、本発明に係る組成の合金の場合は冷却速
度が100℃/min以上であれば強度の低下に大きな影響
を及ぼさないことが明らかとなった。それ故、熱間加工
の後は100℃/min以上の冷却速度で冷却することと定
めた。
【0018】(b) 冷間加工(1回目) 溶体化処理後に冷間加工を行う理由は、高強度化を図る
ために“加工硬化”と“時効工程での析出物の析出速
度”をより促進させることにある。そして、この冷間加
工の加工度を75〜98%と限定したのは、加工度が7
5%未満では冷間加工によって得られる上記効果が不十
分であって所望の強度が得られず、一方、98%を超え
る加工度を加えた場合には曲げ加工性が劣化するためで
ある。
ために“加工硬化”と“時効工程での析出物の析出速
度”をより促進させることにある。そして、この冷間加
工の加工度を75〜98%と限定したのは、加工度が7
5%未満では冷間加工によって得られる上記効果が不十
分であって所望の強度が得られず、一方、98%を超え
る加工度を加えた場合には曲げ加工性が劣化するためで
ある。
【0019】(c) 時効処理 時効処理は材料の強度及び導電性を向上させるために不
可欠の工程であるが、時効条件が最適化されていないと
所望の強度及び導電率が得られない。即ち、熱間圧延直
後に急冷(水冷)を行い、その後75〜98%の冷間加
工を加えた本発明に係る組成の合金材では、時効温度が
300℃未満であると析出反応が殆ど促進されないので
所望の時効処理効果を確保できず、一方、時効温度が6
20℃を超えると軟化が極度に進行して強度低下を招く
ことから、本発明では時効処理温度を300〜620℃
と限定した。
可欠の工程であるが、時効条件が最適化されていないと
所望の強度及び導電率が得られない。即ち、熱間圧延直
後に急冷(水冷)を行い、その後75〜98%の冷間加
工を加えた本発明に係る組成の合金材では、時効温度が
300℃未満であると析出反応が殆ど促進されないので
所望の時効処理効果を確保できず、一方、時効温度が6
20℃を超えると軟化が極度に進行して強度低下を招く
ことから、本発明では時効処理温度を300〜620℃
と限定した。
【0020】なお、上記時効処理は“等温焼鈍(等温時
効)”あるいは“高温から低温に温度を2回以上連続し
て変化させる焼鈍(多段時効)”の何れによって実施し
ても差支えはないが、熱間圧延直後に急冷(水冷)を行
いその後75〜98%の冷間加工を加えた本発明に係る
組成の合金材の示差走査熱量分析測定より、該合金の析
出反応は340〜500℃及び540〜620℃の温度
域で進行することが分かったため、このデ−タを基礎に
して時効条件を以下のように定めるのが良い。イ ) 等温時効を施す場合 等温時効の場合は時効処理温度を330〜620℃に設
定するのが良い。これは、330℃未満では40時間以
上の時効時間が必要となるために現場操業上実際的でな
く、一方、620℃を超えると軟化現象が極度に進行し
強度が低下するためである。ロ ) 多段時効を施す場合 多段時効の場合は、導電率をある程度回復させるために
初段時効は高温とされ、また析出の駆動力を2段目以降
にも残すべく時効時間を短くする。しかも、2段目の時
効温度を初段時効温度より低温にすることにより析出物
サイズ及び分布を細かく制御し、更なる時効硬化の促進
を狙う。なお、この場合も時効処理温度が300℃未満
の温度では析出反応が殆ど進行しないで高温時効後の析
出物サイズ及び分布の制御に長時間を要するので現場操
業上実際的でなく、一方、620℃を超える高温で時効
すると軟化現象が極度に進行し強度が低下するので、時
効処理温度を300〜620℃に設定するのが良い。
効)”あるいは“高温から低温に温度を2回以上連続し
て変化させる焼鈍(多段時効)”の何れによって実施し
ても差支えはないが、熱間圧延直後に急冷(水冷)を行
いその後75〜98%の冷間加工を加えた本発明に係る
組成の合金材の示差走査熱量分析測定より、該合金の析
出反応は340〜500℃及び540〜620℃の温度
域で進行することが分かったため、このデ−タを基礎に
して時効条件を以下のように定めるのが良い。イ ) 等温時効を施す場合 等温時効の場合は時効処理温度を330〜620℃に設
定するのが良い。これは、330℃未満では40時間以
上の時効時間が必要となるために現場操業上実際的でな
く、一方、620℃を超えると軟化現象が極度に進行し
強度が低下するためである。ロ ) 多段時効を施す場合 多段時効の場合は、導電率をある程度回復させるために
初段時効は高温とされ、また析出の駆動力を2段目以降
にも残すべく時効時間を短くする。しかも、2段目の時
効温度を初段時効温度より低温にすることにより析出物
サイズ及び分布を細かく制御し、更なる時効硬化の促進
を狙う。なお、この場合も時効処理温度が300℃未満
の温度では析出反応が殆ど進行しないで高温時効後の析
出物サイズ及び分布の制御に長時間を要するので現場操
業上実際的でなく、一方、620℃を超える高温で時効
すると軟化現象が極度に進行し強度が低下するので、時
効処理温度を300〜620℃に設定するのが良い。
【0021】(d) 冷間圧延(2回目) 時効処理後の冷間加工は、加工硬化と析出物の微細化に
より更に著しい強度上昇が確保されるために実施する。
しかし、この際の加工度が80%を超えると曲げ加工性
が著しく劣化することから、2回目の冷間加工での加工
度80%以下と定めた。
より更に著しい強度上昇が確保されるために実施する。
しかし、この際の加工度が80%を超えると曲げ加工性
が著しく劣化することから、2回目の冷間加工での加工
度80%以下と定めた。
【0022】(e) 歪取り焼鈍 最終冷間加工の後、ばね性を向上させると共に延性を回
復させるために350〜700℃の温度で歪取り焼鈍が
施される。なお、この際の焼鈍温度が350℃未満であ
ると十分なばね性と延性を得るために多大な時間を要す
るため現場操業上実際的ではなく、一方、700℃を超
える高温度域では析出物の再溶解が著しくなり、延性及
びばね限界値を制御するためには焼鈍時間を0.1 〜1秒
の精度で厳しく管理する必要がありやはり現場操業上実
際的でなくなる。
復させるために350〜700℃の温度で歪取り焼鈍が
施される。なお、この際の焼鈍温度が350℃未満であ
ると十分なばね性と延性を得るために多大な時間を要す
るため現場操業上実際的ではなく、一方、700℃を超
える高温度域では析出物の再溶解が著しくなり、延性及
びばね限界値を制御するためには焼鈍時間を0.1 〜1秒
の精度で厳しく管理する必要がありやはり現場操業上実
際的でなくなる。
【0023】なお、上記製造条件の規定は本発明に係る
“熱間加工以降の工程”に関してのものであり、それ以
前の工程における条件は任意のもので構わない。即ち、
本発明で規定する処理(熱間圧延・急冷→冷間加工→時
効処理→冷間加工→焼鈍)の前に溶体化処理,熱間加
工,中間焼鈍,冷間加工等が実施されたとしてもその条
件については何ら規定する必要はない。
“熱間加工以降の工程”に関してのものであり、それ以
前の工程における条件は任意のもので構わない。即ち、
本発明で規定する処理(熱間圧延・急冷→冷間加工→時
効処理→冷間加工→焼鈍)の前に溶体化処理,熱間加
工,中間焼鈍,冷間加工等が実施されたとしてもその条
件については何ら規定する必要はない。
【0024】続いて、本発明の効果を実施例によって更
に具体的に説明する。
に具体的に説明する。
【実施例】電気銅を原料として高周波溶解炉で表1及び
表2に示す各種成分組成の銅合金を1200℃で溶製
し、インゴットに鋳造した。そして、このインゴットを
面削した後、表3及び表4に示す条件で熱間圧延し水冷
して板材とした。次に、この熱延板に表3及び表4に示
す条件の冷間圧延,時効処理,最終冷間圧延及び歪取り
焼鈍を順次施し、 0.125mmの板とした。
表2に示す各種成分組成の銅合金を1200℃で溶製
し、インゴットに鋳造した。そして、このインゴットを
面削した後、表3及び表4に示す条件で熱間圧延し水冷
して板材とした。次に、この熱延板に表3及び表4に示
す条件の冷間圧延,時効処理,最終冷間圧延及び歪取り
焼鈍を順次施し、 0.125mmの板とした。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】次いで、得られたこれら各板材につき、結
晶粒度(平均結晶粒径)を調査すると共に、リ−ドフレ
−ム材としての評価項目として“引張強度", "伸び",
"導電率", "繰り返し曲げ性", "半田付け性", "半田耐
熱剥離性", "Agめっき性" 及び"エッチング性" を調べ
た。
晶粒度(平均結晶粒径)を調査すると共に、リ−ドフレ
−ム材としての評価項目として“引張強度", "伸び",
"導電率", "繰り返し曲げ性", "半田付け性", "半田耐
熱剥離性", "Agめっき性" 及び"エッチング性" を調べ
た。
【0030】ここで、“引張強度" と "伸び" は引張試
験によって測定し、 "電気伝導性"は導電率(%IACS) に
より評価した。"繰り返し曲げ性" は、「(曲げ半径)
/(板厚)=1」の曲げ条件で同一方向の90度繰り返
し曲げ試験を行い、往復を1回と数える方法で破断する
までの回数を数えて評価した。なお、繰り返し曲げ性の
評価基準は、曲げ回数4回以上を可(○)とし、曲げ回
数4回未満を否(×)とした。
験によって測定し、 "電気伝導性"は導電率(%IACS) に
より評価した。"繰り返し曲げ性" は、「(曲げ半径)
/(板厚)=1」の曲げ条件で同一方向の90度繰り返
し曲げ試験を行い、往復を1回と数える方法で破断する
までの回数を数えて評価した。なお、繰り返し曲げ性の
評価基準は、曲げ回数4回以上を可(○)とし、曲げ回
数4回未満を否(×)とした。
【0031】"半田濡れ性" は、ソルダ−チェッカ−を
用いメニスコグラフによる表面張力法でゼロクロス時間
を測定して評価した。なお、半田は 60%Sn-40%Pbを用
い、半田浴槽温度は230±5℃に設定したが、この
時、ゼロクロス時間が1秒未満を可(○)とし、1秒以
上を否(×)と評価した。"半田耐熱剥離性" は、試料
に約5μm厚の 90%Sn-10%Pb半田メッキを施してから1
50℃の大気中で1000時間まで保持し、この間10
0時間毎に取り出して「(曲げ半径)/(板厚)=1」
の曲げ条件で90度曲げを往復一回行い、曲げ部のめっ
き剥離の有無を調べて評価した。なお、半田耐熱剥離性
の評価基準は、剥離開始時間が500時間を超える場合
は可(○)とし、500時間以下を否(×)とした。
用いメニスコグラフによる表面張力法でゼロクロス時間
を測定して評価した。なお、半田は 60%Sn-40%Pbを用
い、半田浴槽温度は230±5℃に設定したが、この
時、ゼロクロス時間が1秒未満を可(○)とし、1秒以
上を否(×)と評価した。"半田耐熱剥離性" は、試料
に約5μm厚の 90%Sn-10%Pb半田メッキを施してから1
50℃の大気中で1000時間まで保持し、この間10
0時間毎に取り出して「(曲げ半径)/(板厚)=1」
の曲げ条件で90度曲げを往復一回行い、曲げ部のめっ
き剥離の有無を調べて評価した。なお、半田耐熱剥離性
の評価基準は、剥離開始時間が500時間を超える場合
は可(○)とし、500時間以下を否(×)とした。
【0032】"銀めっき性" は、試料表面に厚さ約5μ
mの銀めっきを施し、この試料を大気中にて350℃で
3分間加熱した後、銀めっき表面の膨れの有無を観察し
て評価した。なお、銀めっき性の評価基準は、膨れの発
生しなかった場合を可(○)とし、膨れが発生した場合
を否(×)とした。そして、 "エッチング性" は試料を
塩化第二鉄でエッチングして最大介在物サイズを走査型
電子顕微鏡で測定する方法で評価した。なお、エッチン
グ性の評価基準は、最大介在物サイズが5μm未満を可
(○),5μm以上を否(×)とした。これらの評価結
果を、表5及び表6に示す。
mの銀めっきを施し、この試料を大気中にて350℃で
3分間加熱した後、銀めっき表面の膨れの有無を観察し
て評価した。なお、銀めっき性の評価基準は、膨れの発
生しなかった場合を可(○)とし、膨れが発生した場合
を否(×)とした。そして、 "エッチング性" は試料を
塩化第二鉄でエッチングして最大介在物サイズを走査型
電子顕微鏡で測定する方法で評価した。なお、エッチン
グ性の評価基準は、最大介在物サイズが5μm未満を可
(○),5μm以上を否(×)とした。これらの評価結
果を、表5及び表6に示す。
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】さて、表5及び表6に示される結果からは
次のことが明らかである。即ち、本発明の規定条件を満
たす試験番号1〜26では、得られる板材は何れも約70
kgf/mm2 以上の引張強度,約40%IACS以上の導電性を
有し、更に繰り返し曲げ性,半田付け性,半田耐熱剥離
性,Agめっき性及びエッチング性の全てに優れているこ
とが分かる。
次のことが明らかである。即ち、本発明の規定条件を満
たす試験番号1〜26では、得られる板材は何れも約70
kgf/mm2 以上の引張強度,約40%IACS以上の導電性を
有し、更に繰り返し曲げ性,半田付け性,半田耐熱剥離
性,Agめっき性及びエッチング性の全てに優れているこ
とが分かる。
【0036】これに対して、比較例27はCr含有量が本発
明で規定する上限値を超えているために得られる板材中
の介在物が5μm以上と粗大化しており、エッチング性
及び繰り返し曲げ性を劣化している。比較例28は、Cr含
有量が本発明で規定する下限値を下回っているために得
られる板材は強度が低い。比較例29は、Zr含有量が本発
明で規定する上限値を超えているために得られる板材の
繰り返し曲げ性が劣っている。また、比較例28,30及び
32は、Cr,ZrあるいはNiの含有量が本発明で規定する下
限値未満であるために得られる板材の強度が低下してい
る。比較例31は、Ti及びNiの各含有量が本発明で規定す
る上限値を超えているために得られる板材の繰り返し曲
げ性及びAgめっき性及びエッチング性が劣化している。
明で規定する上限値を超えているために得られる板材中
の介在物が5μm以上と粗大化しており、エッチング性
及び繰り返し曲げ性を劣化している。比較例28は、Cr含
有量が本発明で規定する下限値を下回っているために得
られる板材は強度が低い。比較例29は、Zr含有量が本発
明で規定する上限値を超えているために得られる板材の
繰り返し曲げ性が劣っている。また、比較例28,30及び
32は、Cr,ZrあるいはNiの含有量が本発明で規定する下
限値未満であるために得られる板材の強度が低下してい
る。比較例31は、Ti及びNiの各含有量が本発明で規定す
る上限値を超えているために得られる板材の繰り返し曲
げ性及びAgめっき性及びエッチング性が劣化している。
【0037】また、比較例33は、Zn含有量が本発明で規
定する上限値を上回っているので得られる板材の導電率
が低くなっている。これに対して、比較例34〜36はZnが
含有されていないため、他の成分の影響はあるものの得
られる板材の半田耐熱剥離時間が500時間以下と劣っ
た結果となっている。また、比較例34〜39は、Sn,In,
Mn,P,Mg及びSiの総量が本発明で規定する上限値が上
回っており、得られる板材の導電率も低下している。
定する上限値を上回っているので得られる板材の導電率
が低くなっている。これに対して、比較例34〜36はZnが
含有されていないため、他の成分の影響はあるものの得
られる板材の半田耐熱剥離時間が500時間以下と劣っ
た結果となっている。また、比較例34〜39は、Sn,In,
Mn,P,Mg及びSiの総量が本発明で規定する上限値が上
回っており、得られる板材の導電率も低下している。
【0038】そして、比較例46は熱間圧延開始温度が本
発明で規定する上限値を超えていて結晶粒が粗大化した
ために得られる板材の繰り返し曲げ性が劣化している。
これに対し、比較例40は熱間圧延終了温度が本発明で規
定する下限値を下回った場合であり、また比較例41は熱
間圧延終了後の冷却速度が100℃/minよりも低い場合
であるが、何れも析出反応が進行して強度が低下してい
る。比較例43及び44は、時効温度が本発明で規定する上
限値を超えているため板材の軟化が進行し、得られる板
材の強度が低下している。比較例45は、焼鈍温度が70
0℃を超えているため再溶解が極度に進行し、得られる
板材の強度及び導電率が共に低下している。
発明で規定する上限値を超えていて結晶粒が粗大化した
ために得られる板材の繰り返し曲げ性が劣化している。
これに対し、比較例40は熱間圧延終了温度が本発明で規
定する下限値を下回った場合であり、また比較例41は熱
間圧延終了後の冷却速度が100℃/minよりも低い場合
であるが、何れも析出反応が進行して強度が低下してい
る。比較例43及び44は、時効温度が本発明で規定する上
限値を超えているため板材の軟化が進行し、得られる板
材の強度が低下している。比較例45は、焼鈍温度が70
0℃を超えているため再溶解が極度に進行し、得られる
板材の強度及び導電率が共に低下している。
【0039】比較例42は、1回目冷間加工の加工度が本
発明で規定する下限値を下回っているために得られる板
材の強度が低下している上に、2回目冷間加工の加工度
が本発明で規定する上限値を超えているため繰り返し曲
げ性も劣化している。
発明で規定する下限値を下回っているために得られる板
材の強度が低下している上に、2回目冷間加工の加工度
が本発明で規定する上限値を超えているため繰り返し曲
げ性も劣化している。
【0040】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、引張強度,伸び,導電率,曲げ加工性,エッチング
性,Agめっき性,半田付け性及び半田耐熱剥離性が高
く、表面特性や信頼性にも優れた“電子機器用のリ−ド
材や導電性ばね材等として好適な高力高導電性銅合金
材”を安定して製造することが可能となり、電子機器の
性能向上に大きく寄与し得るなど、産業上極めて有用な
効果がもたらされる。
ば、引張強度,伸び,導電率,曲げ加工性,エッチング
性,Agめっき性,半田付け性及び半田耐熱剥離性が高
く、表面特性や信頼性にも優れた“電子機器用のリ−ド
材や導電性ばね材等として好適な高力高導電性銅合金
材”を安定して製造することが可能となり、電子機器の
性能向上に大きく寄与し得るなど、産業上極めて有用な
効果がもたらされる。
Claims (4)
- 【請求項1】 重量割合にて Cr:0.05〜0.40%, Zr:0.03〜0.25%, Ni:0.
10〜2.0 %,Ti:0.10〜1.0 % を含有すると共に残部がCu及び不可避的不純物から成る
銅合金の素材に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、最終加
工温度が600℃以上で、かつ加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350〜700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの
順に順次施すことを特徴とする、電子機器用高力高導電
性銅合金材の製造方法。 - 【請求項2】 重量割合にて Cr:0.05〜0.40%, Zr:0.03〜0.25%, Ni:0.
10〜2.0 %,Ti:0.05〜1.0 %, Zn:0.05〜2.0 % を含有すると共に残部がCu及び不可避的不純物から成る
銅合金の素材に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、最終加
工温度が600℃以上で、かつ加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350〜700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの
順に順次施すことを特徴とする、電子機器用高力高導電
性銅合金材の製造方法。 - 【請求項3】 重量割合にて Cr:0.05〜0.40%, Zr:0.03〜0.25%, Ni:0.
10〜2.0 %,Ti:0.05〜1.0 % を含み、更に Sn,In,Mn,P,Mg及びSiの1種以上:総量で0.01〜1
% を含有すると共に残部がCu及び不可避的不純物から成る
銅合金の素材に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、最終加
工温度が600℃以上で、かつ加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350〜700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの
順に順次施すことを特徴とする、電子機器用高力高導電
性銅合金材の製造方法。 - 【請求項4】 重量割合にて Cr:0.05〜0.40%, Zr:0.03〜0.25%, Ni:0.
10〜2.0 %,Ti:0.05〜1.0 %, Zn:0.05〜2.0 % を含み、更に Sn,In,Mn,P,Mg及びSiの1種以上:総量で0.01〜1
% を含有すると共に、残部がCu及び不可避的不純物から成
る銅合金の素材に、 1) 加工開始温度が800℃以上950℃未満、最終加
工温度が600℃以上で、かつ加工終了後は100℃/m
in以上の速度で冷却する熱間加工, 2) 75〜98%の加工度での冷間加工, 3) 300〜620℃の温度での時効処理, 4) 80%以下の加工度での冷間加工, 5) 350〜700℃の温度での焼鈍,なる処理をこの
順に順次施すことを特徴とする、電子機器用高力高導電
性銅合金材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7542794A JPH07258808A (ja) | 1994-03-22 | 1994-03-22 | 電子機器用高力高導電性銅合金材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7542794A JPH07258808A (ja) | 1994-03-22 | 1994-03-22 | 電子機器用高力高導電性銅合金材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07258808A true JPH07258808A (ja) | 1995-10-09 |
Family
ID=13575908
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7542794A Pending JPH07258808A (ja) | 1994-03-22 | 1994-03-22 | 電子機器用高力高導電性銅合金材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH07258808A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012211355A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-11-01 | Jx Nippon Mining & Metals Corp | 電子材料用Cu−Ni−Si系銅合金及びその製造方法 |
JP2012211350A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-11-01 | Jx Nippon Mining & Metals Corp | 電子材料用Cu−Ni−Si系銅合金及びその製造方法 |
-
1994
- 1994-03-22 JP JP7542794A patent/JPH07258808A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012211355A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-11-01 | Jx Nippon Mining & Metals Corp | 電子材料用Cu−Ni−Si系銅合金及びその製造方法 |
JP2012211350A (ja) * | 2011-03-30 | 2012-11-01 | Jx Nippon Mining & Metals Corp | 電子材料用Cu−Ni−Si系銅合金及びその製造方法 |
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