JPH0725832Y2 - アップライトピアノの放音構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （考案の属する技術分野） この考案は、アップライトピアノにおける放音構造の改
良に関し、その音響効果を高めることを目的とする。

（従来の技術） 従来のアップライトピアノの構造は、第４図に示すよう
に鍵盤Ｋの押鍵で作動するアクション機構Ａと、このア
クション機構ＡのハンマーＨにより打弦されるフレーム
Ｆに張設された弦Ｓと、この弦振動を拡大伝播する響板
Ｂ等を側板１、上前板２、下前板３及び屋根４等で囲ん
だ箱体に収納している。このため、アクション機構Ａの
ハンマーＨの打弦で生ずる直接音がピアノ前面に放音さ
れず、箱体後方からとピアノの本体が振動で生ずる間接
音を聴くことになる。この間接音は音量が小さくまた低
周波と高周波成分が少なく中音域成分のみが多いこもっ
た音となり、演奏者は弦Ｓを打撃した生の音を聴くこと
ができない欠点がある。

ピアノの屋根４を開放すれば音量が大きく、直接音を聴
くことができるが、全開か全閉のみであり、開閉量を調
整して音量・音色を調整するという機能は有していな
い。

また、一般にアップライトピアノは家庭で使用されるこ
とが多く、屋根４にはカバー、楽譜、メトロノーム等が
置かれ、使用の都度開閉するには不都合である。

そこで、ピアノ前面の上前板２または下前板３に取付具
により隙間を設けたもの（実開昭54−14519号）や上前
板２や側板面１に開閉窓を設けたもの（実開昭57−6359
1号）が提案された。

（考案が解決しようとする問題点） しかし、このように上前板２または下前板３に隙間を設
けたものにおいては多少の音量増加及び直接音を得られ
るが、寸法上隙間幅を大きくすることができず、使用状
態では鍵盤蓋が立設されると隙間部分の1/3が塞がれる
ことになり、屋根を開放した場合と同等な効果が十分に
得られない欠点がある。

また、上前板２前面もしくは側板１に窓を設けたものに
おいても多少の音量増加及び直接音を得られるが、上前
板２前面に窓を設けたものでは、演奏者の面前に内部機
構が丸見えとなって美的感覚が損なわれ、側板１に窓を
設けたものでは側面を壁や棚に接して設置することが出
来ないという不都合を有している。

更に上記の構造のものでは、上前板２及び棚板１に隙間
や窓を設けるため、加工及び組立作業が複雑となり、生
産性が悪いという不利な点がある。

（問題を解決するための手段） この考案に係るピアノの放音構造は上述した問題を解決
すべくなされたもので、鍵盤Ｋを載置する棚板11と下方
の側板１間に横設した前土台９とに垂設される下前板に
おいて、回動可能に軸着した上板3₁と下板3₂とからなる
下前板３と、棚板11下面に設けた操作レバー12を有する
保持機構13と、該操作レバー12と前記上板3₁とを連結す
る連結部材６とからなり、前記操作レバー12の移動によ
り連結部材６を介して上板3₁を下板3₂と垂直もしくは所
要角度に傾斜保持するようにしたものである。

（作用） 分割した上方の下前板を傾斜角度自由に支持するように
したので、打弦による直接音が反射放音され、音色と音
量調節が出来、さらにピアノ本体の美観を損なわない。

（実施例） 以下にこの考案を図面に示す実施例に基づいて詳細に説
明する。

第１図はこの考案に係るスプレッダー装置を具えたアッ
プライトピアノの要部側断面図、第２図は角度調整装置
の側断面図である。

第１図において下前板３は上板3₁と下板3₂とに分割して
なり、蝶番５で回動自在に取着してなる。上板3₁には上
方に連結ワイヤー６の一端が貫通して取着されている。
下板3₂は上方の両端を側板１に設けたスプリングキャッ
チ７等により係合し、下面に設けたダボ８が前土台９の
上面に設けた穴10に係合されている。

前記連結ワイヤー６の他端は、第２図に示すように側板
11下面に設けた操作レバー12に取着され、操作レバー12
は例えば鋸歯を有するレール13にラチェット機構等によ
り係止自由に設けられている。

このような構成からなる放音装置において、通常の使用
状態では前記上板3₁はワイヤー６が操作レバー12により
引張られ、棚板11前方に引出した位置で保持されて下板
3₂に垂直に起立した状態で面一に維持されている。

この状態から音量を増加しようとする場合、前記操作レ
バー12を棚板11後方に移動することによりワイヤー６が
上板3₁を押して後方（図面左方向）に傾斜させる。この
上板3₁の傾斜によりピアノ本体前面に開口部が形成さ
れ、演奏による直接音は上板3₁で反射され、この開口部
を通してピアノの本体前面に放音される。

音量の調整は上板3₁の傾斜角度を操作レバー12で調整し
て保持し、所望音量を得る。

第３図はこの考案の他の実施例を示し、前記上方の下前
板3₁を更に分割し、それぞれ下板3₂に回動自在に取着す
ると共に、ワイヤー６の一端を取着し、他端をそれぞれ
操作レバー12に取着して係止自由に保持するようにした
ものである。

この構成から、上板3₁を個々に傾斜持することが可能と
なり、全音のみならず低音部または高音部のみの調整が
可能となり、より効果的な音量・音色が得られる。

（考案の効果） 以上説明したようにこの考案によれば、分割した上板を
傾斜自由に保持するようにしたので、打弦による直接音
は上板により反射して前方に放音され、豊かな音量と音
色が得られ、上板の傾斜角度を自由に設定できるので演
奏者の好みに応じた音量・音色が得られる効果があり、
上方の下前板を更に分割し、それぞれ傾斜角度を自由に
設定することにより、より繊細な音量・音色調整効果が
得られる利点を有するものである。

また、上方の下前板の傾斜に伴うピアノ本体前面の開口
部は棚板直下の後方に形成されるため、演奏者からは直
接見えず、不快感を与えることがなく、ピアノ全体の美
観を損なわない利点がある。

更に、下前板を上下に分割して回動自在に取着するのみ
であることから、生産性に優れている。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案による放音構造を示す要部側断面図、
第２図は角度調整装置の側断面図、第３図はこの考案に
よる他の実施例伸した前板を示す斜視図、第４図は従来
のアツプライトピアノを示す側断面図である。 １……側板、２……上前板、３……下前板、3₁……上方
の下前板、3₂……下方の下前板、４……屋根、５……蝶
番、６……連結ワイヤー、７……スプリングキャッチ、
８……ダボ、９……前土台、10……穴、11……棚板、12
……操作レバー、13……レール、Ａ……アクション機
構、Ｈ……ハンマー、Ｋ……鍵盤、Ｓ……弦。

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】鍵盤Ｋを載置する棚板11と下方の側板１間
   に横設した前土台９とに垂設される下前板において、回
   動可能に軸着した上板3₁と下板3₂とからなる下前板３の
   下板3₂を前記側板11と前土台９に着脱自在に係合すると
   共に、上板3₁を連結部材６を介して操作レバー12と連結
   し、該操作レバー12を保持し、操作レバー12の移動によ
   り上板3₁を下板3₂と垂直もしくは所要角度に保持する保
   持装置13を棚板下面に設けたことを特徴とするアップラ
   イトピアノの放音構造。
2. 【請求項２】前記下前板３の上板3₁を複数枚に分割する
   と共に下板3₂に回動可能に軸着し、それぞれ下板3₂と垂
   直もしくは所要角度に保持したことを特徴とする実用新
   案登録請求の範囲第１項記載のアップライトピアノの放
   音構造。