JPH07243122A - 耐疲労性に優れた高弾性率ポリビニルアルコール系繊維およびその製造方法 - Google Patents

耐疲労性に優れた高弾性率ポリビニルアルコール系繊維およびその製造方法

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JPH07243122A
JPH07243122A JP3400294A JP3400294A JPH07243122A JP H07243122 A JPH07243122 A JP H07243122A JP 3400294 A JP3400294 A JP 3400294A JP 3400294 A JP3400294 A JP 3400294A JP H07243122 A JPH07243122 A JP H07243122A
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JP
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pva
fiber
polyvinyl alcohol
boric acid
polymerization
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JP3400294A
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Hirofumi Sano
洋文 佐野
Toshimi Yoshimochi
駛視 吉持
Tomoyuki Sano
友之 佐野
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温時や吸湿時の弾性率が高く、耐疲労性に
優れたポリビニルアルコール系繊維を得る。 【構成】 重合度1500以上のアタクチックポリビニ
ルアルコール系重合体に、重合度1000以上のシンジ
オタクチックポリビニルアルコール系重合体を加え、こ
の原料から繊維を製造する工程の途中で微量の硼酸又は
硼酸塩を添加して、繊維構成ポリビニルアルコール分子
を架橋させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐疲労性に優れ、高強
度、高弾性率を有し、特に高温時や湿潤時の弾性率を向
上させた、ポリビニルアルコール(以下PVAと略記)
系繊維及びその製造方法に関するものである。本発明の
繊維はゴム、プラスチック、セメントなどの補強材ある
いはロープ、漁網、テント、土木シートなどの一般産業
資材に適しており、特にタイヤ、ホース、ベルト等のゴ
ム補強材に優れた高性能PVA系繊維である。
【0002】
【従来の技術】従来、PVA系繊維は、強度、弾性率や
耐候性、耐薬品性、接着性などの点でポリアミド、ポリ
エステル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて優れて
おり、産業資材分野を中心に独自の用途を開拓してき
た。最近では耐アルカリ性の特長を生かしたセメント補
強用繊維(アスベスト代替)やアルカリ電池用セパレー
ターなどの分野に対して好適な素材として注目されてい
る。そしてさらなる高強度、高弾性率で耐疲労性良好な
PVA系繊維が開発されればゴムやプラスチックの補強
材として、優れた商品が期待できる。特にゴム補強材で
は、耐疲労性の他に安全性、寸法安全性が必要であり、
高温時や湿熱時に高弾性率でかつ低収縮の繊維が要望さ
れて来た。
【0003】高強力、高弾性率繊維を得る方法は、特開
昭59−130314号公報、特開昭61−28911
2号公報、特開平2−74606号公報などに例示され
ているが、高温時や湿潤時の弾性率低下が大きく、耐疲
労性も十分なものではなかった。また、高温での耐疲労
性や耐湿熱性を向上させる目的でPVA系繊維を架橋さ
せる方法として、特開昭63−120107号公報(ア
セタール化処理)、特開平1−156517号公報(パ
ーオキサイド)、特開平1−207435号公報(イソ
シアネート化合物)、特開平2−84587号公報や特
開平4−100912号公報(酸などによる架橋処理)
などが公知である。しかしこれらの架橋はホウ酸架橋と
異なり、耐湿熱性は向上するが強度や弾性率の低下を招
く事が本発明者らの実験で判明した。
【0004】さらに耐湿熱性は向上しないが架橋時の強
度、弾性率低下を起こさないものとしてホウ酸による架
橋が特開昭62−85013号公報や特開昭62−14
9909号公報に開示されている。しかし、ホウ酸架橋
が多すぎると延伸性が阻害されて性能低下がある事及び
PVA繊維の分子鎖運動性が制限され、疲労性が不十分
となる事が判った。一方、水素結合の強固な高シンジオ
PVA繊維も特開昭61−108713号公報、特開平
4−108109号公報で公知であるが、未だ耐疲労性
や高温湿潤時の弾性率は満足されるものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景を踏まえて
本発明者らは、PVA系繊維の高温時や湿潤時の弾性率
を高め、かつ耐疲労性を向上させる技術について鋭意検
討を重ねた結果、通常のアタクチックPVAに高シンジ
オPVAをブレンドし、かつある微量範囲で繊維の内部
にホウ酸又はホウ酸塩を含有させて、架橋を起こさせ、
高温や吸湿時の分子鎖運動性を適度に抑制する事が有効
であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、粘度
平均重合度が1500以上のアタクチックPVA系重合
体(I)および粘度平均重合度が1000以上でシンジ
オタクチシチィが58%以上のPVA系重合体(II)の
混合物からなり、(I)に対する(II)の割合が5〜7
0重量%で、さらに硼酸又は硼酸塩を(I)と(II)の
合計量に対してホウ素原子換算で5〜500ppm含有
しているPVA系繊維であり、そしてそのような繊維の
製造方法として、PVA系重合体の溶液をノズルより吐
出して糸条を形成し、次いで糸条から溶媒を除去し乾燥
したのち、乾熱延伸してPVA系繊維を製造する方法に
おいて、該PVA系重合体として、粘度平均重合度が1
500以上のアタクチックPVA系重合体(I)と粘度
平均重合度が1000以上でシンジオタクチシティが5
8%以上のPVA系重合体(II)からなり、かつ(I)
に対する(II)の割合が5〜70重量%である混合物を
用い、さらに該乾燥工程までに硼酸又は硼酸塩を添加し
て乾熱延伸後の繊維に(I)と(II)の合計量に対して
ホウ素換算で5〜500ppm存在させることを特徴と
するPVA系繊維の製造方法である。
【0007】本発明のPVA系繊維は、アタクチックP
VA系重合体とシンジオタクチックPVA系重合体の混
合物からなり、かつ微量のホウ酸架橋を有する高弾性率
PVA系繊維であり、産業資材、特にタイヤ、ホース、
ベルト等のゴム補強材に適している。以下本発明の内容
を詳細に説明する。
【0008】本発明に言うアタクチックPVA系重合体
とは、後述するNMRより求めたダイアッド表示で求め
たシンジオタクチシチィS=52〜54%のものであ
り、粘度平均重合度が1500以上、ケン化度が98モ
ル%以上の直鎖状のものである。重合度が高いほど、多
くの結晶を貫通するタイ分子の数が多くなり、高強度、
高弾性率、高耐疲労性が得やすく、好ましくは3000
以上、さらに好ましくは7000以上、工業的に製造さ
れる3万以下である。
【0009】一方、高シンジオPVA系重合体とは、S
が58%以上、好ましくは60%以上であり、粘度平均
重合度が1000以上、好ましくは3000以上、3万
以下で、かつケン化度が98モル%以上のものである。
【0010】両方のPVA系重合度には2重量%以下の
顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを必要に応じて添
加しても支障ない。また本発明で言うPVA系重合体に
は3モル%以下の改質剤を共重合したものも含まれる。
【0011】本発明では、該アタクチックPVA系重合
体に、該シンジオタクチックPVA系重合体が5〜70
重量%混合される。好ましくは10〜40重量%であ
る。本発明で規定するシンジオタクチックPVA系重合
体であっても、シンジオタクチシティが61%以上と高
いPVA系重合体の場合には添加量が5%以上で十分に
本発明の特徴が発揮される。一方、シンジオタクチシテ
ィが58〜61%の場合には添加量は10重量%以上が
好ましい。シンジオタクチックPVA系重合体の添加量
が5重量%未満では、水素結合の強固な結晶核が生成し
ずらいために、高温や湿潤時の弾性率を低下させたり、
高温時のPVA分子運動性が大きく、屈曲疲労時に分子
鎖切断で耐疲労性悪化を招く。70%を越えると、逆に
分子運動性を押さえ過ぎるために屈曲疲労時にキンクバ
ンドが集中的に起こりやすく耐疲労性が十分に満足され
ない。
【0012】本発明に用いられるPVA系繊維は、この
ようなPVA系重合体を溶剤に溶解し、湿式、乾湿式、
乾式のいずれかの方法により紡糸し、乾熱延伸する事に
より得られる。PVA系重合体の溶剤としては、グリセ
リン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ト
リエチレングリコール、3−メチルペンタン−1,3,
5−トリオールなどの多価アルコールやジメチルスルホ
キシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチル
アセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチ
ル−2−イミダゾリジノン、エチレンジアミン、ジエチ
レントリアミンおよび水などが単独又は混合して使用さ
れる。さらに塩化亜鉛、塩化マグネシウム、ロダンカ
リ、臭化リチウムなどの無機塩水溶液など該重合体を溶
解するものも使用可能である。特に冷却でゲル化するよ
うな多価アルコールやそれらと水との混合溶剤、あるい
はジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドやそれ
らと水との混合溶剤などが紡糸安定となり易いので好ま
しい。
【0013】紡糸方式としては、湿式、乾湿式、乾式な
ど一般に用いられるいずれの方式でも何んら支障ない
が、特に乾湿式法を用い、PVA系重合体の溶液を紡糸
ノズルより気体中へ吐出させ、直ちに低温のメタノール
やエタノールなどのアルコール類あるいはそれらと該溶
剤との混合後、さらには無機塩やアルカリを含む水溶液
に浸漬して急冷し、均質で透明なゲル繊維を得る方法が
好ましい。またゲル繊維の断面変形や膠着を防止し、か
つ紡糸時の微結晶を破壊して、延伸倍率を向上させる為
に、溶剤を含んだまま2倍以上、好ましくは4倍以上湿
延伸するのが良い。続いてメタノールやエタノールなど
のアルコール類あるいはアセトン、水などの抽出剤で該
溶剤のほとんどを除去したあと、乾燥により該抽出剤を
蒸発させる。これにより紡糸原糸が得られる。
【0014】本発明では、該重合体溶解時から紡糸乾燥
直前までの間にホウ酸又はホウ酸塩を添加してホウ素原
子換算で繊維に5〜500ppm含有させる必要があ
る。5ppm未満では、ホウ素を介在したPVA分子間
の架橋点が少なく屈曲疲労による分子鎖切断を抑えるの
が不十分となる。また高温や湿潤時の弾性率低下を起こ
し易い。一方500ppmを越えると架橋点が多くなり
すぎて分子鎖が動きずらく、一番弱い所に応力が集中し
てキンクバンドが成長し、疲労性が悪化する。さらに延
伸性も阻害され配向不十分となって強度、弾性率の低下
を招く。好ましい含有量はホウ素原子換算で20〜20
0ppmである。本発明のホウ素架橋は従来のホルマー
ル化や酸架橋と異なり後述するゲル弾性率はほぼ0で、
熱水溶断温度も高める効果はないが、乾熱高温時の弾性
率や耐疲労性の低下を抑える効果を有する。なお、ホウ
酸又はホウ酸塩を紡糸乾燥後、乾熱延伸直前までに付着
させても繊維内部まで入らず、本発明の効果は十分発揮
されない。
【0015】次に、得られた紡糸原糸を乾熱延伸する
が、この場合220℃以上、好ましくは230℃〜26
0℃の高温で総延伸倍率を17倍以上にするのが良く、
19倍以上が好ましい。220℃未満の温度では、十分
に分子鎖を引き伸ばし配向度を高める事が出来ず、さら
に結晶化も不十分となって、高温時や湿潤時の強度、弾
性率あるいは寸法安定性が低いものとなる。
【0016】延伸温度は、PVA系ポリマーの重合度が
高いほど高くなるが、あまり高温にすると着色分解や分
子鎖のフローが起こって延伸張力の低下、ひいては強
度、弾性率の低下を招くので要注意である。勿論、延伸
性を阻害しない油剤や酸化防止剤を延伸前に付着させて
も何んら支障ない。
【0017】一方、総延伸倍率は湿延伸倍率と乾熱延伸
倍率の積で表されるが、17倍未満では分子鎖の配向が
不十分で強度が低下する。延伸方式は熱風炉や輻射炉を
用いた非接触タイプあるいは熱ローラや熱板、さらには
油浴を用いた接触タイプ、さらにはN2雰囲気下や水蒸
気雰囲気下であっても何んら問題ない。
【0018】本発明により、高温で長時間屈曲疲労され
るタイヤ、ホース、ベルトなどのゴム資材やプラスチッ
ク、セメントなどの補強材さらには一般産業資材に適し
た従来にみられない高性能なものであった。本発明の繊
維は特に高温時や湿潤時の弾性率が高く、かつ低収縮率
となるのでタイヤ、コンベアベルト、オイルブレーキホ
ースなどに対し寸法安定性、耐屈曲疲労性に優れたもの
となる。
【0019】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではな
い。なお実施例中における各種の物性値、バラメータは
以下の方法で測定された。 (1)アタクチックPVAの粘度平均重合度(Pa) JIS K−6726に準じ30℃水溶液の極限粘度
〔η〕の測定値より、次式により粘度平均重合度を求め
た。 Pa=(〔η〕×104/8.29)1.63 (2)高シンジオPVAの粘度平均重合度(Ps) 高シンジオPVA系重合体を酢化して得た酢酸ビニルの
30℃アセトン中の極限粘度より次式により求めた。 Ps=(〔η〕×1000/7.94)1/0.62
【0020】(3)シンジオタクチシティ(S) 重水素化ジメチルスルホキシド(d6−DMSO)に溶
解したPVA系重合体のプロトンNMR測定値により求
まるトライアッド表示によるシンジオタクチシティ
(T.Moritani etal., Macrom
olecules,5, 577(1972))で、シ
ンジオタクチシティ(S)、ヘテロタクチシティ
(H)、およびアイソタクチシティ(I)から次式によ
り算出される値である。 s=S+H/2(ダイアッド表示によるシンジオタクチ
シティ) i=I+H/2(ダイアッド表示によるアイソタクチシ
ティ)
【0021】(4)ホウ素含有量 PVA系繊維を140℃の水で密閉条件下で溶解しホウ
素と反応し易いマンニット(関東化学製)を添加して、
NaOHの滴定により算出した。
【0022】(5)ヤーン引張強度、初期弾性率 JIS−L1013に準じ、ヤーンに予め80回/mの
撚りをかけ20℃、65%RHに24時間放置後、20
℃、65%RHの標準状態で試長20cm、引張速度1
0cm/min、初荷重1/20g/dにてインストロ
ンTN−M型エアー式コード用グリップを用いて切断強
力及び伸度を測定した。さらに該80回/m撚りのヤー
ンを1/20g/d強力下で90m長のかせ捲きを作り
重量測定によりヤーンデニールを算出し、該切断強力を
デニールで除して強度(g/ar)を求めた。また強力
−伸度曲線の初期勾配より伸度100%に相当する強力
を求め、それを該デニールで除して初期弾性率を求め
た。いずれもn=10の平均値を採用した。高温性能
は、100℃又は150℃の熱風炉の中で20℃標準と
同様に測定した。湿潤性能は、ヤーンを20℃の水に1
2時間以上浸漬したあと、濡れた状態のまま20℃標準
と同様に測定した。
【0023】(6)ゲル弾性率(E) 試料ヤーンに1gの初期荷重をかけ、50℃、50%Z
nCI2水溶液の中に2〜5分間入れて未架橋部を溶出
させる。次いでZnCI2水溶液中、十分に収縮が起こ
ったところで、試料長L1を読む。読み取った荷重と試
料長の点をグラフにプロットし、L1に対する100%
伸長(2L1)時の荷重Wgを読み取り、それを処理前
ヤーンデニールDrで除して求めた値で、下式で計算さ
れる。 E=W/Dr(g/d)
【0024】(7)熱水溶断温度(WTd) 単繊維25本にデニール当たり200mgの荷重をか
け、水を満たしたガラス製円筒状密閉容器の中間に吊
し、周囲より水を1〜2℃/分の速度で加熱昇温させて
いき、繊維が溶断したときの温度を示す。
【0025】(8)耐ゴム疲労性 1500drのPVAヤーンを31t/10cmZ方向
に下撚したあと2本合わせて31t/10cmS方向に
上撚して生コードを作成する。次いでRFL(レゾルシ
ン、ホルマリン、ゴム乳液)を付着してデイプコードを
作成する。次いで圧縮側と伸長側に該コードを20本並
べた2つのコード層を作成し、その中間及び外側にゴム
層を配して、サンドイッチ状の巾25.4mm×長42
0mm×厚さ約8mmのゴムシートを作成したあと、1
50℃×45分90kg/cm2で加硫してベルトを作
成する。該ベルトをプーリー径25mmのベルト屈曲試
験機で100℃×3万回屈曲させたあと、圧縮側のコー
ドをベルトより取出し、屈曲前後のコード強力より、保
持率を求め耐ゴム疲労性を評価した。
【0026】実施例1,2および比較例1,2 粘度平均重合度Pa=4100、ケン化度DS=99.
5モル%、シンジオタクティシティS=53.5%のア
タクチックPVAに、実施例1としてPa=1900、
DS=99.8モル%、S=57.2%の高シンジオP
VAを30重量%添加したもの、実施例2としてPs=
4000、DS=99.9モル%、S=61.5%の高
シンジオPVAを8重量%添加したものを用い、いずれ
もPVA濃度が10重量%になるようにジメチルスルホ
キシド(以下DMSOと略記)で110℃にて溶解せし
めた。次いで各溶液を130℃にして孔径0.15m
m、ホール数400のノズルより吐出させ、湿式法にて
固化させた。凝固浴組成はメタノール/DMSO=7/
3重量比であり温度は7℃とした。このあと40℃メタ
ノール中で4倍湿延伸し、次いで3つのメタノール槽に
よりDMSOをほぼ完全に抽出したが、最後のメタノー
ル抽出槽にホウ酸を溶解し、繊維の内部に含有させてか
ら110℃の熱風で乾燥し、ボビンに巻取った。得られ
た紡糸原糸を実施例1は170−250℃の熱風炉で総
延伸倍率21.6倍、実施例2は170−255℃の熱
風炉で20.5倍延伸した。実施例1の延伸糸はホウ素
含有量が53ppmで1550d/400fの20℃ヤ
ーン強度は20.4g/d、弾性率は450g/dと高
いものであった。また100℃高温時のヤーン弾性率は
295g/d、湿潤時のそれは280g/dと高いレベ
ルを維持した。また、耐ゴム疲労性を示す100℃、2
5φ×3万回のベルト屈曲疲労後の強力保持率は64%
と高い値であった。
【0027】実施例2の延伸糸はホウ素含有量が77p
pmで、1490d/400fの20℃ヤーン強度は2
1.0g/d、弾性率は490g/dであった。ヤーン
弾性率は100℃時が320g/d、湿潤時が305g
/dと高く、ベルト屈曲後の強力保持率は71%と耐ゴ
ム疲労性に優れるものであった。
【0028】一方、比較例1としてアタクチックPVA
のみで高シンジオPVAを添加しない場合を実施した。
実施例1と同様に紡糸したあと、170−250℃で延
伸したが単糸同志の膠着と分子鎖フローの為か低張力と
なり20℃のヤーン強度は17g/d、弾性率は345
g/dに低下した。高張力で膠着の生じない温度として
170−238℃を採用し、総延伸倍率19.5倍の1
520d/400f延伸糸を得た。該延伸ヤーンはホウ
酸含有量が60ppmで20℃の強度が17.8g/
d、弾性率が390g/d、100℃の弾性率が210
g/d、疲労後の強力保持率が58%といずれも高シン
ジオPVAを添加した実施例1よりも劣っていた。
【0029】比較例2は、重合度1900の高シンジオ
PVAのみを用いた場合で、PVA濃度15重量%にて
実施例1と同様に紡糸した。次いで170℃〜255
℃、総延伸倍率21倍の延伸を行い、1500d/48
0fの延伸糸を得た。該延伸ヤーンは、ホウ素含有量が
65ppmで、20℃での引張強度は18g/d、弾性
率は450g/dと低重合度にしてはやや高い値を示し
たが、ベルト屈曲後の強度保持率は55%と耐ゴム疲労
性に劣っていた。
【0030】実施例3および比較例3 Pa=8800、DS=99.8モル%、S=53.5
%のアタクチックPVAにPs=10000、DS=9
9.9モル%、S=61.7%の高シンジオPVAを2
0重量%添加し、PVA濃度8.0重量%になるように
110℃DMSOに溶解した。次いで該溶剤を140℃
にして孔径0.12mm、ホール数600のノズルより
吐出させ、メタノール/DMSO=6/4(重量比)、
10℃の凝固浴を用いて、湿式紡糸した。次いで40℃
メタノール中で4.5倍湿延伸しメタノール抽出したあ
と油剤浴にホウ酸ナトリウム塩を添加してdip−ni
p方式により付着させ、120℃熱風乾燥により紡糸原
糸を得た。該原糸を170−220−255℃の熱風炉
にて総延伸倍率19.5倍、ホウ素含有量110ppm
の延伸糸を得た。得られた延伸糸は1470d/600
fで20℃の弾性率が540g/d、100℃が355
g/d、150℃が290g/d、湿潤時の弾性率が3
30g/dといずれも高い値を示した。また、ベルト屈
曲後の強力保持率も75%と高く、かつ200℃×30
分のフリー乾熱収縮率は1.2%と低い為寸法安定性に
優れ、産業資材用として高付加価値な繊維となった。
【0031】また比較例3として実施例3で油剤浴にホ
ウ酸ナトリウムを添加しない場合を実施し、総延伸倍率
19.2倍の1490d/600f延伸糸を得たが、若
干黄色に着色した。20℃の弾性率は530g/dと実
施例3と同等であったが、100℃のそれは305g/
d、150℃は220g/d、湿潤時は290g/dに
低下した。また屈曲後の強力保持率も68%に低下し、
適度のホウ素架橋は高温や吸湿時の弾性率低下を抑え、
かつ耐ゴム疲労性を向上させる事が判明した。なお、熱
水溶断温度WTbは、実施例3と比較例1が各150
℃、152℃と同等であり、かつ両者共ゲル弾性率は0
である事より、ホウ素架橋は、従来の耐湿熱性を向上さ
せる架橋剤(強酸、ホルマリン、イソシアネート、パー
オキサイド、エポキシなど)とは異なる事が判明した。
【0032】実施例4 PA=18000、DS=99.2モル%、S=53.
4%のアタクチックPVAにPs=15000、DS=
99.7モル%、S=63.1%の高シンジオPVAを
15重量%添加し、同時にホウ酸を4000ppm加え
て、PVA濃度4.8重量%になるように180℃のグ
リセリンに溶解した。次いで該溶液を220℃にして孔
径0.2mm、ホール数200のノズルより吐出させ、
20mm下の凝固浴に落下せしめた。凝固組成はメタノ
ール/グリセリン=7/3重量比であり、温度は0℃に
した。40℃メタノール中で4倍の湿延伸したあと、メ
タノールで抽出したが、最後の抽出浴に酸化防止剤のM
nCI2を30ppm添加させ、紡糸原糸に580pp
m付着させた。次いで該紡糸原糸を3本合わせ190℃
−260℃の輻射炉を用いて総延伸倍率20.5倍で延
伸した。該延伸糸は1500d/600fで、膠着や着
色はなく、ホウ素含有量は270ppmであった。20
℃のヤーン強度は24.1g/d、弾性率は20℃が6
20g/d、100℃が370g/d、150℃が32
0g/d、湿潤時が345g/dといずれも従来のPV
Aに見られない高い値を示した。さらに、200℃×3
0分フリーの乾熱収縮率は0.9%と低くて、かつベル
ト屈曲後の強力保持率は80%と高く、ゴムやプラスチ
ックの補強材として、さらには陸上ネット、ロープ、漁
網、テント、帆布、土木シートなどの一般産業資材とし
て優れたものであった。
【0033】
【発明の効果】通常のPVA系重合体に高シンジオタク
チシティPVA系重合体を混合し、かつ微量のホウ酸架
橋を施すことにより、得られるPVA系繊維の弾性率、
特に高温時や吸湿時の弾性率を高め、かつ耐屈曲疲労性
と寸法安定性を向上させることができる。このようなP
VA系繊維は、特にタイヤ、ベルト、ホースなどのゴム
製品の補強用に優れ、さらに一般産業資材にも特長を発
揮する。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度が1500以上のアタク
    チックポリビニルアルコール系重合体(I)および粘度
    平均重合度が1000以上でシンジオタクチシチィが5
    8%以上のポリビニルアルコール系重合体(II)の混合
    物からなり、(I)に対する(II)の割合が5〜70重
    量%で、さらに硼酸又は硼酸塩を(I)と(II)の合計
    量に対してホウ素原子換算で5〜500ppm含有して
    いるポリビニルアルコール系繊維。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系重合体の溶液を
    ノズルより吐出して糸条を形成し、次いで糸条から溶媒
    を除去し乾燥したのち、乾熱延伸してポリビニルアルコ
    ール系繊維を製造する方法において、該ポリビニルアル
    コール系重合体として、粘度平均重合度が1500以上
    のアタクチックポリビニルアルコール系重合体(I)と
    粘度平均重合度が1000以上でシンジオタクチシチィ
    が58%以上のポリビニルアルコール系重合体(II)か
    らなり、かつ(I)に対する(II)の割合が5〜70重
    量%である混合物を用い、さらに該乾燥工程までに硼酸
    又は硼酸塩を添加して乾熱延伸後の繊維に(I)と(I
    I)の合計量に対してホウ素換算で5〜500ppm存
    在させることを特徴とするポリビニルアルコール系繊維
    の製造方法。
JP3400294A 1994-03-04 1994-03-04 耐疲労性に優れた高弾性率ポリビニルアルコール系繊維およびその製造方法 Pending JPH07243122A (ja)

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