JP2888503B2 - 耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 - Google Patents
耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高温で長時間使用される
タイヤ、ホース、コンベアベルトなどのゴム資材や、プ
ラスチック、セメントなどの補強材さらにはロープ、帆
布、テントなどの産業資材に適した耐湿熱性と耐熱老化
性の優れた高強力ポリビニルアルコール(以下PVAと
略記)系繊維とその製造方法に関する。
タイヤ、ホース、コンベアベルトなどのゴム資材や、プ
ラスチック、セメントなどの補強材さらにはロープ、帆
布、テントなどの産業資材に適した耐湿熱性と耐熱老化
性の優れた高強力ポリビニルアルコール(以下PVAと
略記)系繊維とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来PVA系繊維はポリアミド、ポリエ
ステル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて強度、弾
性率が高く、その主用途である産業資材用繊維として使
用されている。さらにそれ以外にも、ゴム、プラスチッ
ク、セメントなどの補強繊維としても利用されてい来て
いる。最近の技術では、架橋により耐湿熱性を高めよう
とする事が特開平1−156517号、特開平1−20
7435号、特開平2−84587、特開平2−133
605などで例示されている。そこでは、重合度5,0
00以下のPVA繊維に、エポキシ化合物、イソシアネ
ート化合物、有機過酸化物、カルボン酸、リン酸、塩酸
などの架橋剤を付与し架橋させ、耐熱水性を高めると共
に耐ゴム疲労性も向上させることが記載されている。し
かし十分な強度を保持することは出来ず、且つ乾熱老化
性が悪い問題を有していた。
ステル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて強度、弾
性率が高く、その主用途である産業資材用繊維として使
用されている。さらにそれ以外にも、ゴム、プラスチッ
ク、セメントなどの補強繊維としても利用されてい来て
いる。最近の技術では、架橋により耐湿熱性を高めよう
とする事が特開平1−156517号、特開平1−20
7435号、特開平2−84587、特開平2−133
605などで例示されている。そこでは、重合度5,0
00以下のPVA繊維に、エポキシ化合物、イソシアネ
ート化合物、有機過酸化物、カルボン酸、リン酸、塩酸
などの架橋剤を付与し架橋させ、耐熱水性を高めると共
に耐ゴム疲労性も向上させることが記載されている。し
かし十分な強度を保持することは出来ず、且つ乾熱老化
性が悪い問題を有していた。
【0003】一方乾熱延伸時や、乾熱放置時の着色防止
や強力低下を抑えようとする試みは古くから行われ、特
公昭35−1669号、特公昭45−7691、特公昭
47−27048号などで公知である。しかしながらこ
れらの方法を用いても、最近の高重合度で高強力なPV
A繊維では、乾熱老化性を十分向上させる事は出来なか
った。それは、高重合度で高強力なPVA繊維を得るに
は、高温で高倍率に延伸する必要があり、延伸性を阻害
する添加物や付着物は使用出来ないからである。さら
に、機械的、熱的な分子鎖の切断が延伸時に起こり、ラ
ジカルが発生しPVAの分解が進むと共に、その後の実
用途において長時間使用すると、さらに分解が促進され
強力低下を起こしたからである。従って、高重合度なP
VAを用いる場合ほど乾熱老化性が悪い結果となってい
るのである。
や強力低下を抑えようとする試みは古くから行われ、特
公昭35−1669号、特公昭45−7691、特公昭
47−27048号などで公知である。しかしながらこ
れらの方法を用いても、最近の高重合度で高強力なPV
A繊維では、乾熱老化性を十分向上させる事は出来なか
った。それは、高重合度で高強力なPVA繊維を得るに
は、高温で高倍率に延伸する必要があり、延伸性を阻害
する添加物や付着物は使用出来ないからである。さら
に、機械的、熱的な分子鎖の切断が延伸時に起こり、ラ
ジカルが発生しPVAの分解が進むと共に、その後の実
用途において長時間使用すると、さらに分解が促進され
強力低下を起こしたからである。従って、高重合度なP
VAを用いる場合ほど乾熱老化性が悪い結果となってい
るのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、ゴ
ム、セメントの補強材やロープ、あるいは帆布、土木シ
ートなどの産業資材の用途に適した、耐湿熱性と耐乾熱
老化性に優れたPVA繊維を得ようとしたものである。
ム、セメントの補強材やロープ、あるいは帆布、土木シ
ートなどの産業資材の用途に適した、耐湿熱性と耐乾熱
老化性に優れたPVA繊維を得ようとしたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、耐湿熱性と耐
乾熱老化性を同時に満足させる点につき追及し、繊維
に、特にその内部に酸化防止剤を付与し、さらに表面だ
けをある範囲の架橋密度(ゲル弾性率)で架橋させるこ
とにより、目的の繊維が得られることを見い出したもの
である。すなわち本発明は、「1.粘度平均重合度が
3,000以上のポリビニルアルコール系ポリマーから
なる繊維において、ゲル弾性率が0.1×10-2〜1.
5×10-2g/d、熱水溶断温度が150℃以上、ヤー
ン強度が15g/d以上であり、かつ160℃、24時
間乾熱処理後の強力保持率が50%以上であるポリビニ
ルアルコール系繊維。2.粘度平均重合度が3,000
以上のポリビニルアルコール系ポリマーを溶媒に溶解
し、得られた溶液をノズルから吐出して糸条を形成し、
そのま該溶媒を乾燥除去するか、あるいは抽出浴で該溶
媒を抽出除去してから乾燥し、その後、乾燥後の糸状を
総延伸倍率が16倍以上であるように、乾熱延伸するポ
リビニルアルコール系繊維の製造方法において、(1)
乾燥までの工程で酸化防止剤を付与し、乾燥した糸条の
内部および表面に酸化防止剤を0.2〜3重量%保持さ
せると共に、(2)第2溶媒の乾燥工程前から、乾熱延
伸直前までの間の糸条表面に架橋剤を付与し、熱延伸す
ることを特徴とする、ポリビニルアルコール系繊維の製
造法」に関するものである。本発明の如く、酸化防止剤
の付与量を規制し、かつそれを少なくとも繊維内部に含
有せしめた後、架橋剤を繊維表層部に付着させ、ヤーン
強度や酸化防止剤の効果を大きく減少させないで繊維表
層部を架橋させた繊維およびその製造方法は未だ知られ
ていない。
乾熱老化性を同時に満足させる点につき追及し、繊維
に、特にその内部に酸化防止剤を付与し、さらに表面だ
けをある範囲の架橋密度(ゲル弾性率)で架橋させるこ
とにより、目的の繊維が得られることを見い出したもの
である。すなわち本発明は、「1.粘度平均重合度が
3,000以上のポリビニルアルコール系ポリマーから
なる繊維において、ゲル弾性率が0.1×10-2〜1.
5×10-2g/d、熱水溶断温度が150℃以上、ヤー
ン強度が15g/d以上であり、かつ160℃、24時
間乾熱処理後の強力保持率が50%以上であるポリビニ
ルアルコール系繊維。2.粘度平均重合度が3,000
以上のポリビニルアルコール系ポリマーを溶媒に溶解
し、得られた溶液をノズルから吐出して糸条を形成し、
そのま該溶媒を乾燥除去するか、あるいは抽出浴で該溶
媒を抽出除去してから乾燥し、その後、乾燥後の糸状を
総延伸倍率が16倍以上であるように、乾熱延伸するポ
リビニルアルコール系繊維の製造方法において、(1)
乾燥までの工程で酸化防止剤を付与し、乾燥した糸条の
内部および表面に酸化防止剤を0.2〜3重量%保持さ
せると共に、(2)第2溶媒の乾燥工程前から、乾熱延
伸直前までの間の糸条表面に架橋剤を付与し、熱延伸す
ることを特徴とする、ポリビニルアルコール系繊維の製
造法」に関するものである。本発明の如く、酸化防止剤
の付与量を規制し、かつそれを少なくとも繊維内部に含
有せしめた後、架橋剤を繊維表層部に付着させ、ヤーン
強度や酸化防止剤の効果を大きく減少させないで繊維表
層部を架橋させた繊維およびその製造方法は未だ知られ
ていない。
【0006】以下本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明で用いるPVAは、その繊維が産業資材に適
した、より高強度のものとするために、粘度平均重合度
が3,000以上、好ましくは6,000以上、さらに
好ましくは10,000以上のものであり、ケン化度が
98.5モル%以上、好ましくは99.5モル%以上で
分岐度の低い直鎖状のものである。
る。本発明で用いるPVAは、その繊維が産業資材に適
した、より高強度のものとするために、粘度平均重合度
が3,000以上、好ましくは6,000以上、さらに
好ましくは10,000以上のものであり、ケン化度が
98.5モル%以上、好ましくは99.5モル%以上で
分岐度の低い直鎖状のものである。
【0007】本発明の繊維は、その目的からヤーン強度
が15g/d以上のものを対象とするものであるが、そ
の内でも、ゲル弾性率と熱水溶断温度並びに乾熱処理後
の強力保持率が前記の如く、同時に高い値を満足するも
のであることが特徴である。以後の説明で理解されるよ
うに酸化防止剤のみの処理では、ゲル弾性率も熱水溶断
温度も、さらにまた乾熱処理後の強力保持率も、本発明
で規定するが如き高い値を満足し得ず、また架橋剤のみ
の処理でもゲル弾性率や熱水溶断温度の点で本発明の規
定を満足しても乾熱処理後の強力保持率の点で満足のゆ
くものとならないのである。ところが、その両処理を組
合わせることによって、しかもその両処理を巧妙に制御
して組合わせることによって、上記特性を全て同時に満
足するものとなるのである。
が15g/d以上のものを対象とするものであるが、そ
の内でも、ゲル弾性率と熱水溶断温度並びに乾熱処理後
の強力保持率が前記の如く、同時に高い値を満足するも
のであることが特徴である。以後の説明で理解されるよ
うに酸化防止剤のみの処理では、ゲル弾性率も熱水溶断
温度も、さらにまた乾熱処理後の強力保持率も、本発明
で規定するが如き高い値を満足し得ず、また架橋剤のみ
の処理でもゲル弾性率や熱水溶断温度の点で本発明の規
定を満足しても乾熱処理後の強力保持率の点で満足のゆ
くものとならないのである。ところが、その両処理を組
合わせることによって、しかもその両処理を巧妙に制御
して組合わせることによって、上記特性を全て同時に満
足するものとなるのである。
【0008】PVA系ポリマーの溶剤には制限がなく、
例えばグリセリン、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ブタンジオールなどの多価アルコールや、ジメチ
ルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチレント
リアミン、水、およびこれら2種以上の混合溶剤などが
挙げられる。
例えばグリセリン、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ブタンジオールなどの多価アルコールや、ジメチ
ルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチレント
リアミン、水、およびこれら2種以上の混合溶剤などが
挙げられる。
【0009】PVAを溶剤に溶解する際、ホウ酸、顔
料、界面活性剤などを添加しても支障はないが、本発明
に言う湿熱性と熱老化性やヤーン強度を低下させるもの
は好ましくない。
料、界面活性剤などを添加しても支障はないが、本発明
に言う湿熱性と熱老化性やヤーン強度を低下させるもの
は好ましくない。
【0010】紡糸は湿式、乾式、乾湿式いずれの紡糸法
によっても良い。凝固浴はアルコール、アセトン、アル
カリ水溶液、アルカリ金属水溶液など何でも良いが、均
一ゲル繊維の生成し易いアルコール/溶剤混合系が好ま
しい。均一ゲル化を起こすには凝固浴中に10重量%以
上の該溶剤を含有させゆっくりと凝固させるのが好まし
い。さらに凝固温度を20℃以下にして急冷させるのも
均一ゲル繊維を得るのに好ましい。
によっても良い。凝固浴はアルコール、アセトン、アル
カリ水溶液、アルカリ金属水溶液など何でも良いが、均
一ゲル繊維の生成し易いアルコール/溶剤混合系が好ま
しい。均一ゲル化を起こすには凝固浴中に10重量%以
上の該溶剤を含有させゆっくりと凝固させるのが好まし
い。さらに凝固温度を20℃以下にして急冷させるのも
均一ゲル繊維を得るのに好ましい。
【0011】溶剤を含んだ状態での湿延伸は繊維間の膠
着を少なくし、生成した微結晶を壊して非晶化し、その
後の乾熱延伸を容易にする点で3倍以上に行うのが望ま
しい。
着を少なくし、生成した微結晶を壊して非晶化し、その
後の乾熱延伸を容易にする点で3倍以上に行うのが望ま
しい。
【0012】次いで溶剤の抽出を行うが、抽出剤として
はメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコ
ール類や、アセトン、エーテル、水などいずれでも良
い。但し本発明で、抽出工程に酸化防止剤を添加する場
合、酸化防止剤が沈澱したり大径のエマルジョン粒子を
生成するような抽出剤は使えない。
はメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコ
ール類や、アセトン、エーテル、水などいずれでも良
い。但し本発明で、抽出工程に酸化防止剤を添加する場
合、酸化防止剤が沈澱したり大径のエマルジョン粒子を
生成するような抽出剤は使えない。
【0013】本発明に言う酸化防止剤としては、熱、光
安定剤のホスファイト系、チオエーテル系、ベンゾトリ
アゾール系、ヒンダードアミン系など用いても良いが、
好ましくはフェノール系酸化防止剤が良い。フェノール
系酸化防止剤としては、アルキルエステル系、イオウ
系、リン系、酸アミド系あるいはアミン系のモノフェノ
ールあるいはジフェノール化合物などがある。
安定剤のホスファイト系、チオエーテル系、ベンゾトリ
アゾール系、ヒンダードアミン系など用いても良いが、
好ましくはフェノール系酸化防止剤が良い。フェノール
系酸化防止剤としては、アルキルエステル系、イオウ
系、リン系、酸アミド系あるいはアミン系のモノフェノ
ールあるいはジフェノール化合物などがある。
【0014】付与方法は、PVAの紡糸原液に該酸化防
止剤を直接添加するか、あるいPVAの原液溶媒を抽出
する浴に添加し、繊維の内部および表面、特に内部に含
有させることがポイントである。
止剤を直接添加するか、あるいPVAの原液溶媒を抽出
する浴に添加し、繊維の内部および表面、特に内部に含
有させることがポイントである。
【0015】酸化防止剤の保持量は繊維に対して0.2
〜3.0重量%が良く、好ましくは0.5〜1.5重量
%である。0.2重量%未満では架橋処理後の熱老化を
十分に抑えることは出来ない。3.0重量%を越える
と、延伸性を阻害したり、架橋密度をコントロールする
のが難しく好ましくない。
〜3.0重量%が良く、好ましくは0.5〜1.5重量
%である。0.2重量%未満では架橋処理後の熱老化を
十分に抑えることは出来ない。3.0重量%を越える
と、延伸性を阻害したり、架橋密度をコントロールする
のが難しく好ましくない。
【0016】PVAの紡糸原液から抽出浴までの間で酸
化防止剤を含有させると共に、乾熱延伸性を向上させる
ため油剤浴で油剤処理を施し、しかる後、抽出浴の第2
溶媒の乾燥前から延伸直前までの間で架橋剤を付与す
る。
化防止剤を含有させると共に、乾熱延伸性を向上させる
ため油剤浴で油剤処理を施し、しかる後、抽出浴の第2
溶媒の乾燥前から延伸直前までの間で架橋剤を付与す
る。
【0017】本発明に言う架橋剤は、リン酸モノアルキ
ル、リン酸ジアルキル、あるいはそれらのアンモニウム
塩やアルキルアミン塩、リン酸1〜3アンモニウム、リ
ン酸尿素、ポリリン酸などのリン化合物、硫酸チタン、
硫酸アルキル、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウ
ムなどのイオウ化合物、さらにはオキシ塩化ジルコニウ
ム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられるが、これに限定
されるものではない。
ル、リン酸ジアルキル、あるいはそれらのアンモニウム
塩やアルキルアミン塩、リン酸1〜3アンモニウム、リ
ン酸尿素、ポリリン酸などのリン化合物、硫酸チタン、
硫酸アルキル、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウ
ムなどのイオウ化合物、さらにはオキシ塩化ジルコニウ
ム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられるが、これに限定
されるものではない。
【0018】付与方法は紡糸抽出後の、乾燥前から延伸
直前までの間で、デイップ方式、ローラータッチ方式、
ギヤポンプオイリング方式などにより付着可能である
が、繊維の表層部のみを架橋するように設定することが
肝要である。
直前までの間で、デイップ方式、ローラータッチ方式、
ギヤポンプオイリング方式などにより付着可能である
が、繊維の表層部のみを架橋するように設定することが
肝要である。
【0019】付与量は架橋剤の種類によって異なるが、
PVA繊維に対して0.01〜5重量%である。
PVA繊維に対して0.01〜5重量%である。
【0020】架橋の密度および分布は架橋剤、付与量の
他に、乾熱延伸の温度、時間、倍率など多数のファクタ
ーが関与するが、本発明では、結果的に、得られた繊維
のゲル弾性率が0.1×10-2〜1.5×10-2g/d
となるように、比較的軽く、即ち前述の如く繊維の表面
層のみが架橋できるように条件設定することが必要であ
る。ゲル弾性率は架橋度を示すパラメーターであるが
0.1×10-2g/d未満では架橋が少なく、耐湿熱性
の向上が低下し産業資材として寿命の短いものとなり好
ましくない。一方1.5×10-2g/dを越えると耐湿
熱性は若干増加するが、強度低下が起こりかつ耐熱老化
性が悪化する問題が生じる。好ましいゲル弾性率は0.
2〜1.0×10-2g/dである。160℃、24時間
乾熱処理後の強力保持率が50%未満では寿命が短く実
用が難しい。
他に、乾熱延伸の温度、時間、倍率など多数のファクタ
ーが関与するが、本発明では、結果的に、得られた繊維
のゲル弾性率が0.1×10-2〜1.5×10-2g/d
となるように、比較的軽く、即ち前述の如く繊維の表面
層のみが架橋できるように条件設定することが必要であ
る。ゲル弾性率は架橋度を示すパラメーターであるが
0.1×10-2g/d未満では架橋が少なく、耐湿熱性
の向上が低下し産業資材として寿命の短いものとなり好
ましくない。一方1.5×10-2g/dを越えると耐湿
熱性は若干増加するが、強度低下が起こりかつ耐熱老化
性が悪化する問題が生じる。好ましいゲル弾性率は0.
2〜1.0×10-2g/dである。160℃、24時間
乾熱処理後の強力保持率が50%未満では寿命が短く実
用が難しい。
【0021】なお、架橋によりPVAの分解ラジカルが
同時に発生し、繊維強度を低下させかつその後の乾熱老
化性も悪くなると思われる。酸化防止剤は分解ラジカル
を抑える効果がありうるが、架橋度が高くなるにつれ
て、その効果が減少する。従って耐湿熱性と高強度で耐
熱老化性を満足させるには、本発明の如く酸化防止剤を
繊維内部に入れて、分解ラジカルを抑えながら繊維表面
を架橋する方法が最も好ましいのである。
同時に発生し、繊維強度を低下させかつその後の乾熱老
化性も悪くなると思われる。酸化防止剤は分解ラジカル
を抑える効果がありうるが、架橋度が高くなるにつれ
て、その効果が減少する。従って耐湿熱性と高強度で耐
熱老化性を満足させるには、本発明の如く酸化防止剤を
繊維内部に入れて、分解ラジカルを抑えながら繊維表面
を架橋する方法が最も好ましいのである。
【0022】乾熱延伸は、少なくともヤーン強度で15
g/d以上の繊維とするために、前記の湿延伸倍率をも
含めて総延伸倍率が16倍以上となるように延伸する。
延伸温度はPVAの重合度によっても異なるが、230
〜260℃が望ましい。
g/d以上の繊維とするために、前記の湿延伸倍率をも
含めて総延伸倍率が16倍以上となるように延伸する。
延伸温度はPVAの重合度によっても異なるが、230
〜260℃が望ましい。
【0023】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明は実施例のみに限定されるものではない。な
お以下に述べる実施例中における各種物性値は、以下の
方法で測定されたものである。
が、本発明は実施例のみに限定されるものではない。な
お以下に述べる実施例中における各種物性値は、以下の
方法で測定されたものである。
【0024】 1)PVAの粘度平均重合度(バーPAと記す) JIS K−6726に基づき30℃におけるPVA希
薄水溶液の比粘度ηspを5点測定し、下記数式1より極
限粘度[η]を求め、さらに下記数式2より粘度平均重
合度バーPAを算出した。
薄水溶液の比粘度ηspを5点測定し、下記数式1より極
限粘度[η]を求め、さらに下記数式2より粘度平均重
合度バーPAを算出した。
【0025】
【数1】
【0026】
【数2】
【0027】2)酸化防止剤の付与量 乾燥後の未延伸糸を100〜130℃の熱水に溶解せし
め、NMRによりPVAのCH2基ピークに対する酸化
防止剤のピーク比を算出し、予め作成した検量線より付
与量を求めた。
め、NMRによりPVAのCH2基ピークに対する酸化
防止剤のピーク比を算出し、予め作成した検量線より付
与量を求めた。
【0028】3)架橋剤の付与量 架橋剤を付着した延伸前の未架橋糸を熱水に溶解させ、
NMRや蛍光X線で架橋剤の帰属ピークや特定元素のピ
ークを測定し、検量線より求めた。またリン酸化合物は
未架橋糸を塩酸に溶解し、比色法にて求めた。
NMRや蛍光X線で架橋剤の帰属ピークや特定元素のピ
ークを測定し、検量線より求めた。またリン酸化合物は
未架橋糸を塩酸に溶解し、比色法にて求めた。
【0029】3)ヤーンの引張強伸度、弾性率 JIS L−1013に準じ予め調湿されたヤーンを、
試長20cmで0.25g/dの初期荷重および50%
分の引張速度にて破断伸度および初期弾性率を求め、1
0点以上の平均値を採用した。デニールは重量法により
求めた。
試長20cmで0.25g/dの初期荷重および50%
分の引張速度にて破断伸度および初期弾性率を求め、1
0点以上の平均値を採用した。デニールは重量法により
求めた。
【0030】4)ゲル弾性率(E) 架橋された試料ヤーンに1gの初期荷重をかけ、50
℃、50%ZnCl2水溶液の中に2〜5分間入れて未
架橋部を溶出させる。次いでZnCl2水溶液中、十分
に収縮が起こったところで、試料長L1を読む。読み取
った荷重と試料長の点をグラフにプロットし、L1に対
する100%伸長(2L1)時の荷重Wgを読み取り、
それを処理前ヤーンデニールで除して求めた値で、下記
数式3で計算される。
℃、50%ZnCl2水溶液の中に2〜5分間入れて未
架橋部を溶出させる。次いでZnCl2水溶液中、十分
に収縮が起こったところで、試料長L1を読む。読み取
った荷重と試料長の点をグラフにプロットし、L1に対
する100%伸長(2L1)時の荷重Wgを読み取り、
それを処理前ヤーンデニールで除して求めた値で、下記
数式3で計算される。
【0031】
【数3】
【0032】5)熱水溶断温度(WTb) 単繊維25本にデニール当り200mgの荷重をかけ、
水を満たしたガラス製円筒状密閉容器の中間に吊し、周
囲より水を1〜2℃/分の速度で加熱昇温させていき、
繊維が溶断したときの温度を示す。
水を満たしたガラス製円筒状密閉容器の中間に吊し、周
囲より水を1〜2℃/分の速度で加熱昇温させていき、
繊維が溶断したときの温度を示す。
【0033】 6)乾熱老化性(乾熱処理後の強力保持率) ヤーンをフリーの状態で熱風炉に入れ、160℃、24
時間乾熱処理した後ヤーン強力を測定し、乾熱処理前の
ヤーン強力に対する強力保持率(%)を算出した。
時間乾熱処理した後ヤーン強力を測定し、乾熱処理前の
ヤーン強力に対する強力保持率(%)を算出した。
【0034】実施例1:粘度平均重合度8,800のP
VAを濃度7重量%以上になるように、ジメチルスルホ
キシドに80℃に溶解し、次いで該溶液を500ホール
のノズルより、メタノール/ジメチルスルホキシド=7
/3(重量比)、温度5℃の凝固浴で湿式紡糸した。得
られた原糸は、さらに40℃のメタノール浴中で4倍に
湿延伸した後、3つのメタノール浴槽で該溶剤をほとん
ど全部除去した。3槽目のメタノール抽出浴には、下記
の化学式1で示されるフェノール系酸化防止剤である
4,4−チオビス−(6−tブチル−3−メチルフェノ
ール)が0.4重量%/浴になるように添加され、均一
溶液としてあり、原糸をこの浴に3分間滞留させ、繊維
の内部および表面に前記酸化防止剤を付着させた。次い
で油剤を付与し、90℃にて乾燥してメタノールを除去
した。得られた原糸の酸化防止剤付着量は1.0重量%
であった。
VAを濃度7重量%以上になるように、ジメチルスルホ
キシドに80℃に溶解し、次いで該溶液を500ホール
のノズルより、メタノール/ジメチルスルホキシド=7
/3(重量比)、温度5℃の凝固浴で湿式紡糸した。得
られた原糸は、さらに40℃のメタノール浴中で4倍に
湿延伸した後、3つのメタノール浴槽で該溶剤をほとん
ど全部除去した。3槽目のメタノール抽出浴には、下記
の化学式1で示されるフェノール系酸化防止剤である
4,4−チオビス−(6−tブチル−3−メチルフェノ
ール)が0.4重量%/浴になるように添加され、均一
溶液としてあり、原糸をこの浴に3分間滞留させ、繊維
の内部および表面に前記酸化防止剤を付着させた。次い
で油剤を付与し、90℃にて乾燥してメタノールを除去
した。得られた原糸の酸化防止剤付着量は1.0重量%
であった。
【0035】
【化1】
【0036】得られた原糸を乾熱延伸前に、架橋剤が繊
維の表面に付着するようローラータッチ方式で、リン酸
を付着させ、170℃と250℃の熱風炉で、各2.4
倍及び1.875倍に延伸し、総延伸倍率18.0倍に
した。未延伸糸の架橋剤の付着量は0.14重量%であ
った。得られた延伸糸のゲル弾性率は0.5×10-2g
/d、熱水溶断温度は170℃と高く、かつヤーン強度
は17.8g/dであった。次いで該延伸糸を160
℃、24時間乾熱処理した後、強力保持率を測定したと
ころ、78%であり、従来のPVA繊維より数段優れた
高性能PVA繊維となった。この繊維はゴム補強材とし
て適している。
維の表面に付着するようローラータッチ方式で、リン酸
を付着させ、170℃と250℃の熱風炉で、各2.4
倍及び1.875倍に延伸し、総延伸倍率18.0倍に
した。未延伸糸の架橋剤の付着量は0.14重量%であ
った。得られた延伸糸のゲル弾性率は0.5×10-2g
/d、熱水溶断温度は170℃と高く、かつヤーン強度
は17.8g/dであった。次いで該延伸糸を160
℃、24時間乾熱処理した後、強力保持率を測定したと
ころ、78%であり、従来のPVA繊維より数段優れた
高性能PVA繊維となった。この繊維はゴム補強材とし
て適している。
【0037】比較例1:実施例1で前記フェノール系酸
化防止剤および架橋剤を原糸に対して、0.05重量
%、0.005重量%付与させるように処理した以外は
全く同じ条件で繊維を製造した。得られた延伸糸のヤー
ン強度は、実施例1と同程度であったが、熱水溶断温度
145℃、ゲル弾性率0×10-2g/dと低く、また1
60℃、24時間の乾熱処理後の強力保持率は45%と
低く激しく着色した。
化防止剤および架橋剤を原糸に対して、0.05重量
%、0.005重量%付与させるように処理した以外は
全く同じ条件で繊維を製造した。得られた延伸糸のヤー
ン強度は、実施例1と同程度であったが、熱水溶断温度
145℃、ゲル弾性率0×10-2g/dと低く、また1
60℃、24時間の乾熱処理後の強力保持率は45%と
低く激しく着色した。
【0038】実施例2:平均重合度17,000のPV
Aを濃度5重量%になるように、180℃でグリセリン
に溶解し、次いで150ホールのノズルより吐出させ乾
湿式紡糸を行った。凝固浴はメタノール/グリセリン=
8/2(重量比)、温度−10℃であり、透明なゲル繊
維が得られた。該原糸はその後40℃メタノール浴で4
倍湿延伸した。次いでメタノール抽出浴に導き、ここで
グリセリンの抽出を行うと同時に、繊維の内部および表
面に次の酸化防止剤を付着させた。即ち、メタノール抽
出浴はメタノール/エタノール=95/5(重量比)か
らなり、さらに該浴にはフェノール系酸化防止剤である
N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tブチル
−4ヒドロキシ−ヒドロミンナマミド)が0.6重量%
/浴添加し、均一溶液にしてある。その後油剤を付着し
て乾燥したが、得られた乾燥原糸の酸化紡糸剤付着量
は、1.2重量%であった。得られた原糸を乾熱延伸前
に、架橋剤が繊維の表面に付着するようローラータッチ
方式で、C11〜C15モノ及びアルキルホスヘートを0.
2重量%付着させ、170℃、200℃、256℃の3
段熱風炉で総延伸倍率19.0倍に延伸した。未延伸糸
の架橋剤の付着量は0.2重量%であった。得られた延
伸糸のゲル弾性率は0.8×10-2g/d、熱水溶断温
度は180℃と高く、かつヤーン強度は20.0g/d
であった。次いで該延伸糸を160℃、24時間乾熱処
理した後、強力保持率を測定したところ、70%であっ
た。この繊維は、FRP、コンベアベルト、オイルブレ
ーキホース、タイヤコードなどの高温長時間使用にも可
能であることが判明した。
Aを濃度5重量%になるように、180℃でグリセリン
に溶解し、次いで150ホールのノズルより吐出させ乾
湿式紡糸を行った。凝固浴はメタノール/グリセリン=
8/2(重量比)、温度−10℃であり、透明なゲル繊
維が得られた。該原糸はその後40℃メタノール浴で4
倍湿延伸した。次いでメタノール抽出浴に導き、ここで
グリセリンの抽出を行うと同時に、繊維の内部および表
面に次の酸化防止剤を付着させた。即ち、メタノール抽
出浴はメタノール/エタノール=95/5(重量比)か
らなり、さらに該浴にはフェノール系酸化防止剤である
N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tブチル
−4ヒドロキシ−ヒドロミンナマミド)が0.6重量%
/浴添加し、均一溶液にしてある。その後油剤を付着し
て乾燥したが、得られた乾燥原糸の酸化紡糸剤付着量
は、1.2重量%であった。得られた原糸を乾熱延伸前
に、架橋剤が繊維の表面に付着するようローラータッチ
方式で、C11〜C15モノ及びアルキルホスヘートを0.
2重量%付着させ、170℃、200℃、256℃の3
段熱風炉で総延伸倍率19.0倍に延伸した。未延伸糸
の架橋剤の付着量は0.2重量%であった。得られた延
伸糸のゲル弾性率は0.8×10-2g/d、熱水溶断温
度は180℃と高く、かつヤーン強度は20.0g/d
であった。次いで該延伸糸を160℃、24時間乾熱処
理した後、強力保持率を測定したところ、70%であっ
た。この繊維は、FRP、コンベアベルト、オイルブレ
ーキホース、タイヤコードなどの高温長時間使用にも可
能であることが判明した。
【0039】比較例2:実施例2において、該フェノー
ル系酸化防止剤を抽出浴には入れず、油剤浴のみに添加
して繊維表面に1.0重量%付着させた。さらに乾燥原
糸に乾熱延伸前に、該架橋剤をローラータッチ方式で
0.2重量%付着させた。しかしながら乾燥原糸の段階
で、原糸の表面に付着した酸化防止剤の粉末が、延伸時
にガイド、ローラーに脱落し、さらに延伸前の架橋剤付
着時に該酸化防止剤が洗い落とされ、架橋剤も付着しず
らく問題であった。総延伸倍率20.0倍、ヤーン強度
21.2g/dとほぼ実施例2と同程度であったが、酸
化防止剤0.1重量%に減少し、架橋剤の効果もなくゲ
ル弾性率は0×10-2g/d、熱水溶断温度148℃と
低かった。次いで160℃、24時間で乾熱老化性をみ
たところ、強力保持率は42%と低かった。酸化防止剤
は繊維の内部に含有させ、架橋剤を表層部に付着させ架
橋させなければ効果がないことが判明した。
ル系酸化防止剤を抽出浴には入れず、油剤浴のみに添加
して繊維表面に1.0重量%付着させた。さらに乾燥原
糸に乾熱延伸前に、該架橋剤をローラータッチ方式で
0.2重量%付着させた。しかしながら乾燥原糸の段階
で、原糸の表面に付着した酸化防止剤の粉末が、延伸時
にガイド、ローラーに脱落し、さらに延伸前の架橋剤付
着時に該酸化防止剤が洗い落とされ、架橋剤も付着しず
らく問題であった。総延伸倍率20.0倍、ヤーン強度
21.2g/dとほぼ実施例2と同程度であったが、酸
化防止剤0.1重量%に減少し、架橋剤の効果もなくゲ
ル弾性率は0×10-2g/d、熱水溶断温度148℃と
低かった。次いで160℃、24時間で乾熱老化性をみ
たところ、強力保持率は42%と低かった。酸化防止剤
は繊維の内部に含有させ、架橋剤を表層部に付着させ架
橋させなければ効果がないことが判明した。
【0040】実施例3:粘度平均重合度が4,200の
PVAを濃度11重量%になるように170℃のエチレ
ングリコールに溶解し、100ホールのノズルより乾湿
式法にて紡糸した。凝固浴は、エタノール/エチレング
リコール=9/1.0℃として、急冷ゲル化させ湿延伸
を3.5倍施した。次いでエタノール浴に導き、ここで
エチレングリコールの抽出を行うと同時に、繊維の内部
および表面に次の酸化防止剤を付着させた。即ち、エタ
ノール浴には、フェノール系酸化防止剤である4,4−
チオビス−(6−tブチル−3−メチルフェノール)が
1.0重量%/浴に添加されている。その後油剤を付着
して乾燥したが、得られた乾燥原糸の酸化紡糸剤付着量
は、1.9重量%であった。得られた原糸を乾熱延伸前
に、架橋剤が繊維の表面に付着するようローラータッチ
方式で、C11〜C15ホスヘートアミンを2.0重量%付
着させ、170℃と245℃の熱風炉で総延伸倍率1
8.0倍に延伸した。未延伸糸の架橋剤の付着量は1.
8重量%であった。得られた延伸糸のゲル弾性率は0.
3×10-2g/d、熱水溶断温度は167℃と高く、か
つヤーン強度は17.5g/dであった。次いで該延伸
糸を160℃、24時間乾熱処理した後、強力保持率を
測定したところ、80%であり従来にない高温長時間に
耐え得るPVA繊維となった。
PVAを濃度11重量%になるように170℃のエチレ
ングリコールに溶解し、100ホールのノズルより乾湿
式法にて紡糸した。凝固浴は、エタノール/エチレング
リコール=9/1.0℃として、急冷ゲル化させ湿延伸
を3.5倍施した。次いでエタノール浴に導き、ここで
エチレングリコールの抽出を行うと同時に、繊維の内部
および表面に次の酸化防止剤を付着させた。即ち、エタ
ノール浴には、フェノール系酸化防止剤である4,4−
チオビス−(6−tブチル−3−メチルフェノール)が
1.0重量%/浴に添加されている。その後油剤を付着
して乾燥したが、得られた乾燥原糸の酸化紡糸剤付着量
は、1.9重量%であった。得られた原糸を乾熱延伸前
に、架橋剤が繊維の表面に付着するようローラータッチ
方式で、C11〜C15ホスヘートアミンを2.0重量%付
着させ、170℃と245℃の熱風炉で総延伸倍率1
8.0倍に延伸した。未延伸糸の架橋剤の付着量は1.
8重量%であった。得られた延伸糸のゲル弾性率は0.
3×10-2g/d、熱水溶断温度は167℃と高く、か
つヤーン強度は17.5g/dであった。次いで該延伸
糸を160℃、24時間乾熱処理した後、強力保持率を
測定したところ、80%であり従来にない高温長時間に
耐え得るPVA繊維となった。
【0041】比較例3:実施例3で前記フェノール系の
酸化防止剤を紡糸原液に1.0重量%/PVA添加し紡
糸した。その後油剤を付着して乾燥したが、得られた乾
燥原糸の酸化防止剤の付着量は0重量%となり、エタノ
ール浴で脱落した。得られた原糸を実施例3と同様に架
橋剤を付着し、乾熱延伸したところ、総延伸倍率17.
0倍、ヤーン強度17.3g/d、ゲル弾性率1.5×
10-2g/d、熱水溶断温度178℃となった。次いで
該延伸糸を160℃、24時間乾燥処理した後、強力保
持率を測定したところ、25%と低いものであった。こ
れにより酸化防止剤を原液に添加する場合は、脱落に注
意する必要がある。完全に脱落した状態で、架橋だけを
施せば耐熱水性は満足しても、架橋が多くなり、強度低
下や乾熱老化性の低下を招くことが判明した。
酸化防止剤を紡糸原液に1.0重量%/PVA添加し紡
糸した。その後油剤を付着して乾燥したが、得られた乾
燥原糸の酸化防止剤の付着量は0重量%となり、エタノ
ール浴で脱落した。得られた原糸を実施例3と同様に架
橋剤を付着し、乾熱延伸したところ、総延伸倍率17.
0倍、ヤーン強度17.3g/d、ゲル弾性率1.5×
10-2g/d、熱水溶断温度178℃となった。次いで
該延伸糸を160℃、24時間乾燥処理した後、強力保
持率を測定したところ、25%と低いものであった。こ
れにより酸化防止剤を原液に添加する場合は、脱落に注
意する必要がある。完全に脱落した状態で、架橋だけを
施せば耐熱水性は満足しても、架橋が多くなり、強度低
下や乾熱老化性の低下を招くことが判明した。
【0042】比較例4:実施例3で前記フェノール系酸
化防止剤が表面に付着するよう乾熱延伸前に、ローラー
タッチ方式で5.0重量%付着させ、170℃と245
℃の熱風炉で総延伸倍率18.0倍に延伸した。未延伸
糸のフェノール系酸化防止剤の付着量は1.5重量%で
あった。得られた延伸糸のゲル弾性率は0×10-2g/
d、熱水溶断温度は143℃と低く、ヤーン強度は1
7.5g/dであった。次いで該延伸糸を160℃、2
4時間乾熱処理した後、強力保持率を測定したところ、
40%と低いものであった。 これにより酸化防止剤を
表面に付着させただけで、架橋剤なしでは耐熱水性、乾
熱老化性ともに満足しないことが判明した。
化防止剤が表面に付着するよう乾熱延伸前に、ローラー
タッチ方式で5.0重量%付着させ、170℃と245
℃の熱風炉で総延伸倍率18.0倍に延伸した。未延伸
糸のフェノール系酸化防止剤の付着量は1.5重量%で
あった。得られた延伸糸のゲル弾性率は0×10-2g/
d、熱水溶断温度は143℃と低く、ヤーン強度は1
7.5g/dであった。次いで該延伸糸を160℃、2
4時間乾熱処理した後、強力保持率を測定したところ、
40%と低いものであった。 これにより酸化防止剤を
表面に付着させただけで、架橋剤なしでは耐熱水性、乾
熱老化性ともに満足しないことが判明した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D01F 6/14
Claims (2)
- 【請求項1】 粘度平均重合度が3,000以上のポリ
ビニルアルコール系ポリマーからなる繊維において、ゲ
ル弾性率が0.1×10-2〜1.5×10-2g/d、熱
水溶断温度が150℃以上、ヤーン強度が15g/d以
上であり、かつ160℃、24時間乾熱処理後の強力保
持率が50%以上であるポリビニルアルコール系繊維。 - 【請求項2】 粘度平均重合度が3,000以上のポリ
ビニルアルコール系ポリマーを溶媒に溶解し、得られた
溶液をノズルから吐出して糸条を形成し、そのまま該溶
媒を乾燥除去するか、あるいは抽出浴で該溶媒を抽出除
去してから乾燥し、その後、乾燥後の糸条を総延伸倍率
が16倍以上であるように、乾熱延伸するポリビニルア
ルコール系繊維の製造方法において、(1)乾燥までの
工程で酸化防止剤を付与し、乾燥した糸条の内部および
表面に酸化防止剤を0.2〜3重量%保持させると共
に、(2)乾燥工程前から、乾熱延伸直前までの間の糸
条表面に架橋剤を付与し、熱延伸することを特徴とす
る、ポリビニルアルコール系繊維の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26909291A JP2888503B2 (ja) | 1991-09-19 | 1991-09-19 | 耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26909291A JP2888503B2 (ja) | 1991-09-19 | 1991-09-19 | 耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0578907A JPH0578907A (ja) | 1993-03-30 |
JP2888503B2 true JP2888503B2 (ja) | 1999-05-10 |
Family
ID=17467565
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26909291A Expired - Fee Related JP2888503B2 (ja) | 1991-09-19 | 1991-09-19 | 耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2888503B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111058103B (zh) * | 2019-12-26 | 2023-10-10 | 东华大学 | 一种交联大分子氢键复合物纤维的制备方法 |
-
1991
- 1991-09-19 JP JP26909291A patent/JP2888503B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0578907A (ja) | 1993-03-30 |
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