JP3183483B2 - 耐疲労性良好なポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 - Google Patents

耐疲労性良好なポリビニルアルコール系繊維およびその製造法

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JP3183483B2 JP08464593A JP8464593A JP3183483B2 JP 3183483 B2 JP3183483 B2 JP 3183483B2 JP 08464593 A JP08464593 A JP 08464593A JP 8464593 A JP8464593 A JP 8464593A JP 3183483 B2 JP3183483 B2 JP 3183483B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度を維持させなが
ら、繊維表面にひだ状の横じまをつくり、繊維内部にミ
クロボイドを形成せしめて、圧縮や屈曲により生成する
キンクバンドの増大を抑える事により耐疲労性を向上さ
せたポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)系
繊維とその製造法に関するものである。本発明の繊維
は、特に長時間、圧縮、伸長や屈曲をくり返す、タイ
ヤ、ホース、コンベアベルトなどのゴム補強材やロー
プ、漁網、帆布などの一般産業資材に適したPVA系繊
維である。
【0002】
【従来の技術】従来PVA系繊維はポリアミド、ポリエ
ステル、ポリアクリル系繊維と比べ、高度弾性率が高
く、耐候性、接着性にすぐれている事などから、その特
性を生かし、タイヤ、ホース、ベルトなどのゴム補強材
やセメント補強材、さらには漁網、テント、土木シート
などの一般産業資材用の繊維素材として広く使用されて
きている。そして、さらに屈曲疲労や圧縮疲労などに優
れた高強度PVA繊維が開発されれば、ゴムやプラスチ
ックスの補強材あるいは一般産業資材において苛酷な条
件下での安全性、耐久性、軽量性を満足した商品が期待
される。
【0003】高重合度PVAを用いて、高強度、高弾性
率繊維を得る方法が特開昭59−130314号公報、
特開昭61−289112号公報、特開昭62−850
13号公報に開示され、強度19〜29g/d、弾性率
550〜650g/dのPVA系繊維が記載されてい
る。しかし、これらの繊維は、高延伸により分子鎖の配
向を高めている為機械的性能に優れるが、くり返し屈曲
などの耐久性に劣り、特に耐ゴム疲労性には十分満足さ
れるものではなかった。一方、耐疲労性を向上させる方
法として、本発明者らは延伸後に収縮を入れて非晶の分
子鎖配向を乱す方法を特開平1−192813号公報や
特開平2−210015号公報で開示したが、これらは
いずれも延伸や収縮処理時で高温によるPVAの分解が
起こり、非晶と結晶を結ぶタイ分子の切断が生じる為強
度や耐疲労性の低下を招き易かった。
【0004】さらに、本発明者らは高延伸によりミクロ
ボイドや横じまのある白化したPVA繊維をつくり、ゴ
ムやプラスチックスとの接着性を高めて、耐疲労性を向
上させる方法を特開平2−84504号公報に記載した
が、これも高温延伸時のPVA分解抑制の概念はなく、
さらに熱処理がない為伸度は5%未満で繊維表面の配向
緩和が少なく、くり返し疲労を受けた時のキンクバンド
の増大が生じ易く、疲労性に対し、十分満足したもので
はなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、PVA
繊維の強度をあまり落とさずに耐疲労性を向上させるこ
とを目的に鋭意検討した結果、次の3つの考え方により
目的を達成出来る事が判った。すなわち(1)延伸、収
縮熱処理時に繊維の分解(特にタイ分子の切断)を抑え
る。・・・分解抑制剤の添加。(2)ミクロボイド(横
じま)構造により疲労時のキンクバンド増長を抑える。
・・・高温で切断延伸倍率の0.8〜0.95倍。
(3)繊維表面層の配向を緩和させ疲労時のキンクバン
ド発生を減少させる。・・・定長又は5%以下の収縮熱
処理。であり、これによりPVA分解による強度低下を
抑えると共に、繊維内部のミクロボイド(横じま)と表
面の配向緩和により、繊維の圧縮や伸長時にキンクバン
ドの発生を抑えたり、応力集中によりキンクバンドが増
長するのを抑えて、耐疲労性に優れたPVA繊維を得る
事が可能となった。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、粘
度平均重合度が3,000以上で分解抑制剤を含有して
いるPVA系繊維であって、高温高倍率延伸したあと、
定長又は5%以下の収縮熱処理により、強度と耐疲労性
にすぐれた繊維およびその製造法を提供せんとするもの
である。
【0007】具体的には、本発明は、粘度平均重合度が
3,000以上のPVA繊維から構成され、有機系酸化
防止剤、無機系金属塩およびチッ素含有界面活性剤から
成る分解抑制剤の1種又は2種以上を0.002〜2.
0重量%含有し、かつ繊維軸方向と直角方向の横じまが
10μ長さ当たり少なくとも3本以上存在しており、さ
らに単繊維強度18g/d以上、単繊維伸度5%以上で
ある事を特徴とするPVA系繊維であり、また粘度平均
重合度が3,000以上のPVA系重合体を溶剤に溶解
して紡糸し、得られた紡糸原糸を乾熱延伸する際に、溶
解から乾熱延伸直前までの間で、有機系酸化防止剤、無
機系金属塩あるいはチッ素含有界面活性剤からなる分解
抑制剤の1種又は2種以上を該繊維に添加又は/及び付
着せしめ、230℃以上の温度で総延伸倍率が切断延伸
倍率の0.8〜0.95倍になるように延伸し、次いで
該乾熱延伸温度の±10℃以内の温度範囲で定長又は5
%以下の収縮熱処理を施す事を特徴とするPVA系繊維
の製造方法である。
【0008】以下、本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明に言うPVAとは、粘度平均重合度が3,0
00以上のものであり、ケン化度が98.5モル%以
上、好ましくは99.0モル%以上で分岐度の低い直鎖
状のものである。PVAの重合度が高いほど結晶間を貫
通するタイ分子の数が多く、高強度、高耐疲労性が得ら
れ易い。好ましくは粘度平均重合度が6,000以上、
更に好ましくは10,000以上である。
【0009】PVA系重合体には、3重量%以下の顔
料、紫外線吸収剤、結晶化抑制剤、架橋剤、界面活性剤
(ただし、後述する特定の界面活性剤はここで言う界面
活性剤には入らない)など必要に応じて添加しても支障
ない。
【0010】PVA系重合体の溶剤としては、グリセリ
ン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリ
エチレングリコール、3−メチルペンタン−1,3,5
−トリオールなどの多価アルコールやジメチルスルホキ
シド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルア
セトアミド、N−メチルピロリドン、1,3ジメチル2
−イミダゾリジノン、エチレンジアミン、ジエチレント
リアミンおよび水などが単独または混合して使用され
る。冷却でゲル化するような多価アルコールやそれらと
水との混合溶剤あるいはジメチルスルホキシド、ジメチ
ルホルムアミドやそれらと水との混合溶剤などが紡糸安
定となり易いので好ましい。
【0011】紡糸方式としては湿式、乾式、乾湿式など
一般に用いられるいずれの方式でも何んら支障ない。中
でも、乾湿式法を用い、PVA系重合体の溶液を紡糸ノ
ズルより吐出させ、直ちに低温のメタノールやエタノー
ルなどアルコール類あるいはそれらと該溶剤との混合液
さらには無機塩やアルカリを含む水溶液に浸漬して急冷
し均質な透明なゲル繊維を得る方法が好ましい。
【0012】またゲル繊維の断面変形や膠着を防止し、
かつ紡糸時の微結晶を破壊して延伸倍率を向上させるた
めに溶剤を含んだままで2倍以上、好ましくは4倍以上
湿延伸するのが良い。続いてメタノール、エタノールな
どのアルコール類やアセトン、水などの抽出剤で該溶剤
のほとんど全部を除去し、その後乾燥により該抽出剤を
蒸発させる。
【0013】さらにその後、乾熱延伸するが、本発明で
は紡糸原液から乾熱延伸直前までの間で分解抑制剤を添
加又は/及び付着させ、延伸時やその後の熱処理時にP
VAの分解を抑えるものである。
【0014】本発明に言う分解抑制剤とは、フェノール
系、ホスファイト系、チオエステル系、ベンゾトリアゾ
ール系、ヒンダードアミン系などの有機系酸化防止剤あ
るいはCu,Mn,Ti,Sn,Pb,Zn,Crなど
の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物の無機系金属塩、さら
には次の2つに分類されるチッ素含有界面活性剤が挙げ
られ、これらの1種又は2種以上を用いることが出来
る。 (1)分子内にアミド結合または尿素結合を有するアン
モニウム化合物、例えば次の化学式1の構造式で表され
るカチオン界面活性剤。
【0015】
【化1】
【0016】(2)分子内にアミド結合又は尿素結合を
有するスルホネート化合物、例えば次の化学式2で表さ
れるアニオン界面活性剤。
【0017】
【化2】
【0018】これら分解抑制剤のなかでも、塩化マンガ
ン、硫酸銅、カチオン系界面活性剤、フェノール系酸化
防止剤が好ましい。これらの分解抑制剤を平滑剤や乳化
剤が入った配合油剤に添加して繊維に付着させてもよい
が、付着斑や紡糸から延伸までにおける脱落、あるいは
延伸性の阻害があるものは好ましくない。
【0019】該分解抑制剤の含有量は、延伸後で繊維に
対し0.002〜2.0重量%である。分解抑制剤の含
有量は種類によって異なるが、有機系酸化防止剤では
0.2〜2重量%が好ましく、無機系金属塩では0.0
05〜0.5重量%が好ましく、チッ素含有界面活性剤
では0.1〜1重量%が好ましい。分解抑制剤の中には
多すぎると逆に分解を促進する事があるので要注意であ
る。分解抑制剤の含有量が0.002重量%未満では分
解抑制効果が少なく、2重量%を越えると紡糸時の糸切
れや延伸倍率の低下、あるいは逆に分解を促進する場合
があり好ましくない。なお、分解抑制剤を2種類以上使
用した時の含有量は総和量を意味する。これら分解抑制
剤を溶解から乾熱延伸直前の間で付着や添加させるので
あるが、好ましくは、紡糸後に湿延伸した後の乾熱延伸
前の繊維に付着させる方法である。
【0020】次に得られた紡糸原糸を乾熱延伸するが、
この場合総延伸倍率を切断延伸倍率×0.8〜0.95
倍にして、本発明に言う繊維軸と直角方向の横じまが1
0μ長さ当たり少なくとも3本以上にする必要がある。
また、この延伸倍率はPVA分子鎖の配向を十分起こさ
せて強度を高める役目もする。従って×0.8倍未満で
は、横じまや強度が不十分であり、×0.95倍を越え
るとタイ分子の切断やマクロボイドが発生して好ましく
ない。ただし総延伸倍率は湿延伸倍率と乾熱延伸倍率の
積で表示される。切断延伸倍率は、湿延伸した繊維を乾
熱延伸し、その乾熱延伸倍率を高めていき、繊維が切断
し始める時の延伸倍率である。
【0021】一方、延伸倍率や結晶化度を高め、かつミ
クロボイドを多く作るためには延伸温度は230℃以上
が必要であり、高重合度ほど伸びずらいため、より高温
にするのが好ましい。但し、あまり高すぎると分子鎖の
フローが起こり、強度低下やPVAの分解を誘発し易
く、また230℃未満では延伸時の張力が高くなりマク
ロボイドの生成や分子鎖の一部が切断して好ましくな
い。好ましくは235℃〜260℃である。なお、ミク
ロボイドや横じまは高温高倍率延伸時に発生し、熱延伸
時の応力緩和によって越えると考えられている。この場
合繊維は白化する。
【0022】次いで、本発明では定長又は5%以下の収
縮熱処理を施して、繊維表面の配向緩和をさらに進め、
かつ非晶部の配向を少し乱す事により圧縮や屈曲に対す
る応力を緩和させ、キンクバンドの発生や増長を抑えて
耐疲労性を向上させる。収縮が5%を越えると強度低下
が大きくなり好ましくない。また熱処理温度は、延伸温
度の±10℃以内の温度が好ましく、この温度範囲をは
ずれると繊維表面の配向緩和が不十分になったりあるい
はPVAの分解が生じ易くなり問題である。
【0023】延伸や熱処理の雰囲気は一般に空気、窒素
などの不活性ガス、水蒸気、油浴などが考えられるが、
操作性、コストなどから考えて、加熱空気が適してい
る。また、熱板や熱ローラを用いた接触タイプと熱風炉
や輻射炉を用いた非接触タイプがあり、どちらも可能で
ある。なお疲労時のキンクバンドは分子鎖やそれから成
るフィブリルの座屈により生じ、通常、繊維軸と45°
方向にハの字形で観察される。
【0024】本発明の特徴は、分解抑制剤を添加し、で
きるだけ非晶と結晶を結ぶタイ分子を切断しないように
して、高温高倍率に延伸し、ミクロボイドや横じまをフ
ィブリル間に生成させたあとさらに定長又は5%以下の
収縮熱処理で繊維表面の配向を緩和させ、圧縮や屈曲時
にキンクバンドの発生や増大を抑制する事により、耐疲
労性を向上させる事にある。これにより、横じまが10
μ長さ当たり少なくとも3本以上存在して単繊維強度1
8g/d以上、単繊維伸度5%以上の高強度高タフネス
なPVA繊維が得られ、従来に見られない耐疲労性、特
に耐ゴム疲労性を示し、産業資材として高付加価値な繊
維となる。
【0025】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではな
い。なお、実施例中における各種の物性値パラメータは
以下の方法で測定された。
【0026】 1)PVAの粘度平均重合度および重合度低下率 JISK−6726に準じ、30℃水溶液の極限粘度
[η]の測定値より数式1により粘度平均重合度を求め
た。また重合度低下率は延伸、熱処理糸を140℃の熱
水に溶解したあと上述と同様に重合度を求め、もとのP
VA重合体の粘度平均重合度に対する低下率より求め
た。
【数1】
【0027】 2)酸化防止剤および界面活性剤の付着量: 乾燥後の未延伸糸を100〜130℃の熱水に溶解せし
め、NMRよりPVAのCH↓2基ピークに対する酸化
防止剤および界面活性剤のピーク比を算出し、予め作成
した検量線より付着量を求めた。
【0028】3)無機金属塩含有量 乾燥後の未延伸糸を100〜130℃の熱水に溶解せし
め、蛍光X線で特定元素のピークを測定し、検量線より
求めた。
【0029】4)単糸引張強伸度、弾性率 JIS L−1013に準じ、予め調湿された単繊維を
試長10cmになるように台紙に貼り、25℃×60%
で12時間以上放置。次いでインストロン1122 2
kg用チャックを用い、初荷重1/20g/d、引張速
度50%/minにて、破断強伸度および初期弾性率を
求め、n≧20平均値を採用した。デニールは1/10
g/d荷重下で30cmにカットし、重量法により求め
た。なおデニール測定後の単繊維を用いて強伸度、弾性
率を測定し1本ずつデニールと対応させた。
【0030】5)横じま数 光顕又は電顕写真により延伸、熱処理後の繊維表面の凸
部の本数を10μ長さ当たりで表した。
【0031】6)ミクロボイド量 小角X線散乱強度より10mμ以下のミクロボイド量を
(I↓E0.2+I↓E0.3)/(I↓M0.2+I↓M0.3)の値
で示した。この値が大きいほどミクロボイドが多い事を
意味する。ここでI↓E:赤道線上の散乱強度(cp
s)、I↓M:子線上の散乱強度(cps)、0.2,
0.3:散乱角(度)を示す。
【0032】7)繊維表面の配向緩和(Δn差) 干渉顕微鏡にて589nmの単色光を用い、干渉縞のズ
レの大きさから繊維半径方向のΔn分布を計算し、Δn
差=(中心部Δn)−(最表層Δn)より表面の配向緩
和を評価した。
【0033】8)耐ゴム疲労性 1,200〜1,800drのPVAヤーンを下撚した
あと、2本又は3本合わせて、逆方向に上撚して、生コ
ードを作成する。次いでRFL処理してディップコード
を作成したあと、厚さ0.3mmの生ゴムで20本並べ
た該ディップコードをはさんで圧縮側のスダレを作る。
同様に1500dのケブラーヤーンよりなるコード層の
伸長側スダレを作る。次いで下より24mm厚さのカバ
ーゴム、0.7mm厚さのクッションゴム、圧縮側スダ
レ、0.7mmクッションゴム、伸長側スダレ、0.7
mmクッションゴム、24mmカバーゴムの順でサンド
イッチ構造の巾70mm×長420mm×厚さ約8mm
の矩形状シートを作成したあと、150℃×45分、ゲ
ージ圧90kg/cm2で加硫させる。その後、該矩形
ベルトをたてに2分割して巾25.4mm×長420m
m×厚約8mmのベルトを作ってプーリー径25mmの
ベルト屈曲試験機で100℃×3万回、該ベルトを屈曲
疲労させたあと、圧縮側のコードをゴムより取出し、屈
曲前後のコード強力より強力保持率(%)を算出して疲
労性を評価した。
【0034】実施例1〜3及び比較例1〜2 粘度平均重合度が4,000(実施例1)、8,000
(実施例2)、17,000(実施例3)、ケン化度が
いずれも99.8モル%のPVAを用い、濃度各10,
7,5.5重量%になるようにジメチルスルホキシドに
て100℃で溶解した。次いでホール数80,孔径0.
15mmのノズルより吐出させメタノール/ジメチルス
ルホキシド=7/3重量比5℃の凝固浴で乾湿式紡糸し
た。さらに40℃メタノール浴で4倍湿延伸したあと、
メタノールで該溶剤をほとんど全部除去したが最後のメ
タノール抽出浴に分解抑制剤であるMnCl2を添加
し、繊維を4分間滞留させて、メタノール含有繊維の内
部及び表面に各々0.012,0.018,0.027
重量%付着させ、100℃にて乾燥した。次いで、第1
熱風炉を170℃にし、第2熱風炉を各々240℃,2
45℃,250℃にして総延伸倍率を切断延伸倍率の
0.9倍になるように各19.1倍,18.4倍,1
7.8倍にして乾熱2段延伸した。さらに該延伸温度と
同じ温度が2%の収縮熱処理を施した。得られた200
〜250d/80fの繊維の構造物性を表1に示した。
また比較例1として実施例1で総延伸倍率を切断延伸倍
率×0.7倍にした場合、比較例2として実施例2で収
縮熱処理をしない場合、比較例3として実施例3で分解
抑制剤を付着させない場合を実施し、それらの結果を表
1に併記した。
【0035】実施例1〜3はいずれも本発明の要件を満
たし、延伸、熱処理後も繊維の着色も見られず重合度低
下率も低いものであった。得られた繊維は白化して強伸
度が高く、かつ横じま、ミクロボイドが多くて繊維表面
の配向緩和(Δn差)も大きくベルト屈曲疲労後の繊維
で大きなキンクバンドは見られず、耐ゴム疲労性に優れ
る事が判明した。比較例1は延伸倍率が低い為、単繊維
強度は15.1g/dと低く、横じまボイドがほとんど
ない為大きなキンクバンドが発生して耐ゴム疲労性に劣
っていた。比較例2は2%収縮熱処理をしない為繊維表
面の配向緩和(Δn差)が小さく、耐ゴム疲労性が低下
した。比較例3は分解抑制剤を添加していない為熱処理
後で繊維の着色が激しく重合度及び強伸度の低下を招く
と共に耐疲労性も不十分であった。
【0036】
【表1】
【0037】実施例4 粘度平均重合度が3,300、ケン化度99.5モル%
のPVAを濃度12重量%になるようにジメチルスルホ
キシドに溶解し、該溶液を300ホール、0.12mm
孔径のノズルよりジメチルスルホキシド/メタノール=
7/3,9℃の凝固浴に吐出させ湿式紡糸した。次いで
メタノール中で3.5倍の湿延伸をし、メタノール浴で
該溶剤を抽出したあと、ステアリルアミドプロピルジメ
チル−β−ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩のカチ
オン界面活性剤を付着させ90℃にて乾燥した。次い
で、カチオン界面活性剤の付着量が0.52重量%の紡
糸原糸を180℃,235℃の輻射炉で総延伸倍率19
倍の乾熱2段延伸を実施した。なお総延伸倍率は切断延
伸倍率×0.85倍に相当した。続いて230℃で定長
熱処理を行ったが単繊維強伸度は、18.5g/d、
5.3%であり、横じまは5本/10μ存在していた。
繊維は着色もなく白化しており、100℃×3万回ベル
ト屈曲後の強力保持率は62%と高いものであった。
【0038】実施例5 粘度平均重合度21,000、ケン化度99.2モル%
のPVAを濃度4.5重量%になるようにグリセリンに
溶解し、その際フェノール系酸化防止剤(イルガノック
ス1098 チバガイギー社製)を0.80重量%添加
した。次いで200℃にて該溶液を200ホール、0.
2mm孔径のノズルよりグリセリン/メタノール=7/
3 −5℃の浴に吐出させ、乾湿式紡糸した。その後、
40℃メタノール中で4倍の湿延伸をし、メタノール浴
で該溶剤のほとんど全部を抽出したあと、ラウリルアミ
ドプロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート
のカチオン系界面活性剤と平滑集束剤のグリセリントリ
オエートを付着させ、190℃と260℃の熱風炉を用
いて総延伸倍率19.5倍の乾熱延伸を行った。総延伸
倍率は切断延伸倍率×0.94倍に相当した。引き続き
265℃で4%収縮熱処理を施したが繊維は着色がなく
て白化しており、横じまは11本/10μであった。な
お分解抑制剤である該酸化防止剤およびカチオン系界面
活性剤の付着量はそれぞれ0.69重量%、0.45重
量%であった。単繊維強度は23.9g/dと高く、伸
度5.3%で高タフネス繊維であった。100℃×3万
回ベルト屈曲後の強力保持率は75%と高く、従来にな
い高付加価値繊維であった。なお対照に芳香族ポリアミ
ド(ケブラー)のベルト屈曲疲労性をみたが同40%と
低く本発明のPVA繊維は耐ゴム疲労性に優れる事を確
認した。
【0039】
【発明の効果】本発明により、高強度で耐疲労性に極め
て優れたPVA系繊維が得られる。本発明により得られ
たPVA系繊維は、高強度と屈曲疲労性が要求される分
野、たとえばタイヤやホース、コンベアベルト等の補強
用繊維として、さらにロープ、漁網、帆布などの産業資
材用として適している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−84504(JP,A) 特開 平4−289215(JP,A) 特開 平4−126830(JP,A) 特開 平3−82815(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度が3,000以上のポリ
    ビニルアルコール系繊維から構成され、有機系酸化防止
    剤、無機系金属塩およびチッ素含有界面活性剤から成る
    分解抑制剤の1種又は2種以上を0.002〜2.0重
    量%含有し、かつ繊維軸方向と直角方向の横じまが10
    μ長さ当たり少なくとも3本以上存在しており、さらに
    単繊維強度18g/d以上、単繊維伸度5%以上である
    事を特徴とするポリビニルアルコール系繊維。
  2. 【請求項2】 粘度平均重合度が3,000以上のポリ
    ビニルアルコール系重合体を溶剤に溶解して紡糸し、得
    られた紡糸原糸を乾熱延伸する際に、溶解から乾熱延伸
    直前までの間で、有機系酸化防止剤、無機系金属塩ある
    いはチッ素含有界面活性剤からなる分解抑制剤の1種又
    は2種以上を該繊維に添加又は/及び付着せしめ230
    ℃以上の温度で総延伸倍率が切断延伸倍率の0.8〜
    0.95倍になるように延伸し、次いで該乾熱延伸温度
    の±10℃以内の温度範囲で定長又は5%以下の収縮熱
    処理を施す事を特徴とするポリビニルアルコール系繊維
    の製造法。
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