JP3183479B2 - 高耐湿熱性高強度ポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 - Google Patents

高耐湿熱性高強度ポリビニルアルコール系繊維およびその製造法

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JP3183479B2 JP34628492A JP34628492A JP3183479B2 JP 3183479 B2 JP3183479 B2 JP 3183479B2 JP 34628492 A JP34628492 A JP 34628492A JP 34628492 A JP34628492 A JP 34628492A JP 3183479 B2 JP3183479 B2 JP 3183479B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度で耐湿熱性に優
れたポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)系
繊維とその製造法に関するものである。本発明の繊維
は、高温で長時間使用されるタイヤ、自動車ホース、消
防ホース、コンベアベルト、Vベルトなどのゴム資材の
補強材あるいはプラスチックやセメントの補強材さらに
はロープ、テント、帆布、漁網、テンションメンバーな
どの一般産業資材に適した高強度PVA系繊維である。
【0002】
【従来の技術】従来PVA系繊維は、強度、弾性率、耐
候性、耐薬品性、接着性などの点でポリアミド、ポリエ
ステル、ポリアクリロニトリル系等の繊維に比べて優れ
ており、産業資材分野を中心に独自の用途を開拓してき
た。そしてさらに強度、耐湿熱性、耐ゴム疲労性などの
性能が向上したPVA系繊維が開発されるならばゴムや
プラスチックスの補強材あるいは一般産業資材におい
て、苛酷な条件下での安全性、耐久性、軽量性を満足し
た商品が期待される。
【0003】高重合度PVAを用いて高強力、高弾性率
繊維を得る方法が特開昭59−130314号公報、特
開昭61−289112号公報、特開昭62−8501
3号公報で開示され、強度19〜29g/d、弾性率5
50〜650g/dのPVA繊維が記載されている。実
際本発明者らも実験した結果、重合度が高いほど高強度
になることが判ったが、耐湿熱性(熱水溶断温度:以下
WTbと略記する)は低く、高温時の耐ゴム疲労性や、
長期間熱と水にさらされる時のプラスチック、スレート
板などの補強効果、さらには土木シート、ロープ、漁網
などの強力保持率に対して、十分満足されなかった。な
お、耐湿熱性は、高重合度になるほど少しずつ増大する
がそれでも後述する本発明の〔1〕式を満足することは
到底できなかった。
【0004】一方、耐湿熱性を向上させる為に架橋処理
をすることは公知であり、特開昭63−120107号
公報にはアセタール化処理、特開平1−156517号
公報にはパーオキサイドなどの架橋薬剤処理、特開平1
−207435号公報にはイソシアネート化合物による
架橋処理、特開平2−84587号公報には酸などによ
る架橋処理が示されている。しかし本発明者らが実験し
たところ、これらは架橋の程度を大きくしないと、耐湿
熱性が増大せず、その時はPVA系繊維の着色、分解が
激しく、強度や弾性率が低下した。一方架橋を抑えると
強度や弾性率の低下は少ないが、耐湿熱性が増大しない
という問題点を有していることが判った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上の背景を踏えて、
本発明者らは、如何に強度低下を抑えて耐湿熱性を向上
させるかについて鋭意検討を重ねた結果、PVA系重合
体のOH基と直接架橋し、ラジカル発生による分解(分
子鎖切断や欠陥部生成)をできるだけ抑える架橋剤ある
いはPVA系繊維の表面付与剤としてある種の金属化合
物が極めて優れていることを見い出し本発明に至ったも
のである。すなわち本発明の目的は、高強度で耐湿熱性
に優れる高性能PVA系繊維を提供することにあり、さ
らにはゴム疲労や乾熱老化を抑制し、長期間熱や水に耐
える産業資材用のPVA系繊維を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記化学式3
で表される基を有する化合物により変性されているかま
たは該基を有する化合物が付与されているPVA系繊維
である。
【0007】
【化3】
【0008】但し、上記化学式3中、Mはキレート形成
能を有する金属原子、Rはアルキル基を表す。また本発
明は、PVA系重合体を紡糸して得た紡糸原糸を延伸ま
たは延伸後熱処理するに際し、下記化学式4で表される
化合物が付与された紡糸原糸または延伸糸を150℃な
いし260℃で延伸または熱処理することを特徴とする
PVA系繊維の製造方法である。
【0009】
【化4】
【0010】但し、上記化学式4中、Mはキレート形成
能を有する金属原子、Rはアルキル基、X1、X2
3、X4は同一もしくは異なり、ハロゲン原子または水
酸基を表す。本発明により得られる繊維は、通常、次式
〔1〕で示す耐湿熱性及び〔2〕で示す高強度を同時に
満足することとなる。従来より、耐湿熱性と高強度を同
時に満足するPVA系繊維として種々の繊維が公知であ
るが、次式〔1〕と〔2〕を同時に満足するものは見当
たらず、耐湿熱性と高強度の両方を同時に高度に満足し
ているPVA系繊維としては本発明の繊維が初めてであ
ると言える。 WTb≧1.7(Pa)0.36+116………〔1〕 DT≧7.5(Pa)0.14−7.0…………〔2〕 WTb:200mg/d荷重下の熱水溶断温度(℃) DT:単繊維強度(g/d) Pa:PVA系重合体の重合度
【0011】以下本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明に言うPVA系重合体とは、通常、粘度平均
重合度が1500以上のものであり、ケン化度が98.
5モル%以上、好ましくは99.0モル%以上で分岐度
の低い直鎖状のものである。PVA系重合体の重合度が
高いほど高強度、高耐湿熱性が得やすく、好ましくは
6,000以上、更に好ましくは10,000以上であ
る。
【0012】該PVA系重合体は、実質的にビニルアル
コール単位からなり、かつケン化度が99.0モル%以
上のものが高強力でかつ高耐水性のものが得られる点で
特に好ましいが、10モル%以内であるならば他のビニ
ル化合物、たとえば酢酸ビニル等が共重合されていても
よく、また15重量%以内で、酸化防止剤、顔料、染
料、硼酸、界面活性剤などを含んでいてもよい。ただ
し、強度や耐熱水性を大きく低下させる添加物は好まし
くない。
【0013】このPVA系重合体から紡糸原糸を得る方
法としては、PVA系重合体を溶剤に溶解し、この溶液
をノズルから吐出し、溶剤を除去する方法が用いられ
る。PVA系重合体の溶剤としては、グリセリン、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオ
ールなどの多価アルコールやジメチルスルホキシド(D
MSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イ
ミダゾリジノン、エチレンジアミン、ジエチレントリア
ミンおよび水などが単独または混合して使用される。さ
らに塩化亜鉛、塩化マグネシウム、ロダンカルシウム、
臭化リチウムなどの無機塩水溶液などの該重合体を溶解
するものも使用可能である。これらのうち、冷却でゲル
化するような多価アルコールやそれらと水との混合溶剤
あるいはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド
やそれらと水との混合溶剤などが紡糸安定となり易いの
で好ましい。
【0014】紡糸原液中のPVA系重合体の濃度として
は3〜50重量%が一般的である。特に湿式紡糸方法又
は乾湿式紡糸方法を用いる場合でPVA系重合体として
重合度6000以上のものを用いる場合には、濃度3〜
10%が得られる繊維の性能の点で好ましい。
【0015】紡糸方式として湿式、乾式、乾湿式など一
般に用いられるいずれの方式でも何んら支障ない。中で
も、乾湿式法を用い、PVA系重合体の溶液を紡糸ノズ
ルより吐出させ、直ちに低温のメタノールやエタノール
などアルコール類あるいはそれらと該溶剤との混合液、
さらには無機塩やアルカリを含む水溶液に浸漬して急冷
し均質で透明なゲル繊維を得る方法が好ましい。
【0016】またゲル繊維の断面変形や膠着を防止し、
かつ紡糸時の微結晶を破壊して延伸倍率を向上させるた
めに溶剤を含んだままで2倍以上、好ましくは4倍以上
湿延伸するのが良い。続いてメタノール、エタノールな
どのアルコール類やアセトン、水などの抽出剤で該溶剤
の殆どを除去したあと、乾燥により該抽出剤を蒸発させ
る。このようにして得られた紡糸原糸を乾熱で延伸する
が、本発明では延伸前または延伸後に前記化学式4で表
される化合物を該原糸に付着させ、乾熱延伸または熱処
理を施すことにより、得られるPVA系繊維が耐湿熱性
に優れたものとなる。なお本発明で紡糸原糸とは、通
常、上述したように乾燥後で乾熱延伸前のものを指す
が、これ以外に紡糸した後から乾燥に至るまでの途中の
繊維を包含しており、また延伸糸とは乾熱延伸後の繊維
全てを包含している。したがって前記乾燥前に前記化学
式4で表される化合物を付着させる方法や繊維を糸や布
帛等の繊維製品とした後のものを用いて、このものに該
化合物を付着させる方法を用いてもよい。要は、繊維表
面あるいは繊維内部に前記化学式4で表される化合物を
付着または浸透させたのち加熱状態に繊維を置くことに
ある。乾燥後が乾熱延伸前に前記化合物を付着させる方
法が、得られる繊維が最も耐湿熱性に優れかつ繊維強度
を大きく低下させないことより最も好ましい。
【0017】本発明の繊維では、前記化学式4で表され
る化合物(以下キレート化合物と称す)により変性(繊
維表面に付与されている状態を含む)されているのであ
るが、1種類のキレート化合物により変性されていても
あるいは2種類以上のキレート化合物により変性されて
いてもよい。キレート化合物において、Rにより示され
るアルキル基は、炭素原子数5〜20の高級アルキル基
であるのが好ましく、特にヘプチル基、ステアリル基が
好ましい。また、キレート形成能を有する金属原子Mと
しては、クロム、鉄、ジルコニウム、コバルト、ニッケ
ル、チタン、アルミニウム、錫等の金属原子を挙げるこ
とができ、特にクロムとアルミニウムが好ましい。金属
原子Mがクロムの場合はキレート化合物の安定性が優れ
たものとなり、アルミニウムの場合は、得られる繊維の
着色がほとんどないため、淡色に染色する繊維には好適
である。無論、金属原子がクロムの場合も淡色に染色可
能ではあるが、アルミニウムに比べると、クロム原子特
有の着色を生じ少し見劣りがする。X1、X2、X3、X4
は塩素、ヨウ素、臭素、フッ素等のハロゲン原子または
水酸基であり、ハロゲン原子の中では塩素が好ましい。
また、X1、X2、X3、X4はすべて同一であってもよ
く、またハロゲン原子と水酸基が混在していてもよい。
キレート化合物の好ましい具体例としては、下記式で表
される化合物が挙げられる。
【0018】
【化5】
【0019】
【化6】 上記化5の化合物のうち、RがC1735である化合物は
一方社油脂(株)より、ゼブランCR−Nの商品名で販
売されている。キレート化合物によって、PVA系繊維
がどのような反応を生じ、その結果変性されることとな
るのかについては必ずしも明確ではないが、例えば、X
1、X2、X3、X4が塩素の場合は、PVA系重合体中の
アルコール系水酸基の水素原子とキレート化合物中の金
属原子に結合しているX1、X2、X3、X4のうちの少な
くとも1個とが、脱塩酸反応を起こして下記式Iとな
り、PVA系重合体に結合しているものと推測される。
【0020】
【化7】 式中、M、Rは前記と同じであり、〜は、残りの結
合手を示す。上記の式Iで表される基において、残りの
結合手〜については、PVA系重合体中の別のアル
コール性水酸基と結合している場合、水酸基である場
合、もう一つの隣のキレート化合物の結合手〜のい
ずれかと結合してキレート化合物の重合物状となってい
る場合、またはそれらが混在している場合が考えられ
る。いずれの場合も、キレート化合物はPVA系重合体
と化学結合して該ポリマー中に強固に結合含有されてお
り、洗濯や染色等の処理を行ってもPVA系重合体から
簡単に離脱しない。そして、キレート化合物がPVA系
重合体中のアルコール性水酸基と結合すると同時に該残
りの結合手〜によりキレート化合物の重合物を形成
している場合には、PVA系繊維の表面にキレート化合
物の被膜が形成されることになる。
【0021】キレート化合物の付着量は、PVA系繊維
に対し金属として0.01〜1.0重量%である。0.
01重量%未満では架橋程度が低く、WTbが〔1〕式
を満足しなくなり耐湿熱性に劣る。1.0重量%を超え
るとPVA系重合体の分解も起こり易く、単繊維強度が
〔2〕式を満足しなくなったり、あるいは、ゴムやプラ
スチックとの接着性や乾熱老化性を変化させる。好まし
い付着量は0.03〜0.5重量%である。
【0022】キレート化合物を付与する時点としては、
例えばPVA系重合体から溶液紡糸によって繊維を製造
し、紡糸原糸の乾熱延伸前またはその後で該化合物を含
有する処理剤を付着せしめるのが一般的であるが、紡糸
性や延伸性に悪影響がなければ該処理剤を紡糸原液や溶
剤抽出浴に入れて行われる。
【0023】通常、該キレート化合物は、水溶液、アル
コール溶液等の状態で用いるのがよく、これら溶液の状
態で用いる場合には、キレート化合物の濃度が0.3〜
3重量%の範囲になるようにするのが好ましい。その場
合に、溶液中に、該キレート化合物と水との反応により
塩酸等が生成する場合には、それを中和するため、また
は生成した塩酸により金属製の処理容器が腐食するのを
防ぐために中和剤を含有させておくと、処理剤の安定性
が増し望ましい。中和剤としては、ヘキサメチレンテト
ラミン、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等を挙げる
ことができ、加熱安定性の点からヘキサメチレンテトラ
ミンが好ましい。中和剤の使用量は、キレート化合物の
重量に基づいて2〜10重量%、特に4〜6重量%とす
るのがよい。
【0024】PVA系繊維等をキレート化合物で変性処
理する際の処理操作は限定されず、PVA系重合体の変
性が円滑に行われる方法であればいずれでも使用でき
る。具体的な処理方法としては、キレート化合物を含有
する処理剤中にPVA系繊維等を浸漬する方法、該繊維
等に該処理剤を塗布する方法、該繊維等に該処理剤を吹
き付ける方法等が挙げられる。
【0025】PVA系繊維の場合、高倍率延伸による高
強力化を目指して通常乾熱延伸温度は、220〜260
℃の高温で延伸倍率として2〜10倍の乾熱延伸を行な
うが、その場合、延伸前の該化合物付着量を少なくした
り、延伸炉の滞留時間を短くして、PVA系重合体の分
解をできるだけ抑えて、延伸するのが良い。延伸後付着
で熱処理する場合は高強度となっているので、架橋が生
成する程度の比較的低い温度、例えば160〜220℃
が好ましいが、220〜260℃で短時間の熱処理も強
度低下が少なければ何ら支障はない。また延伸後付着量
は金属として0.01〜1.0重量%であれば問題な
い。なお熱処理時は強度低下を抑える為0.1%以上の
伸長下で行うのが好ましい。
【0026】高耐湿熱性で高強度なPVA系繊維を得る
為には該キレート化合物の付着量や熱処理の温度、時
間、PVA系重合体の重合度や紡糸条件によって変わる
が、本発明は次式の〔1〕〔2〕を同時に満足する事が
好ましく、延伸温度または熱処理温度として150〜2
60℃の温度が必要である。150℃未満では、架橋や
耐久性ある付着が十分進まず、260℃を超えるとPV
A系重合体の分解や融着による強度低下が激しく好まし
ない。 WTb≧1.7(Pa)0.36+116………〔1〕 DT≧7.5(Pa)0.14−7.0…………〔2〕 WTb、DT、Paは前記と同じである。
【0027】〔1〕、〔2〕式は共に本発明者が実験デ
ータより導いたものであるが、従来の架橋剤処理では、
同一単繊維強度で比較した場合、〔1〕式で示されるW
Tbより少なくとも5℃は低く、また、同一WTbで比
較した場合〔2〕式で示されるDTより少なくとも2g
/dは低くなった。従って〔1〕、〔2〕式を同時に満
足するPVA系繊維は未だ得られていない事が判明し
た。なお総延伸倍率(湿延伸倍率×乾熱延伸倍率)は1
6倍以上、好ましくは18倍以上にして高配向・高結晶
の繊維にするのが良い。
【0028】以下実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものでは
ない。なお実施例中における各種の物性値は以下の方法
により測定された。 1)PVA系重合体の粘度平均重合度(Pa) JIS K 6726に準じて、PVA系重合体を熱水
に溶かして希薄水溶液を作製し、30℃における比粘度
を3点測定し、それらの値から固有粘度〔η〕を求め、
Pa=(〔η〕×104/8.29)1.63により粘度平均
重合度を求めた。
【0029】2)金属含有量 試料約1gを精秤し燃焼法で灰化したあと、硝酸水溶液
で希釈し、原子吸光法にて、検量線より金属含有量を算
出した。
【0030】3)熱水溶断温度(WTb) 単繊維25本にデニール当り200mgの荷重をかけ
て、水を満したガラス製円筒状密封容器の中間に吊し、
周囲より水を1〜2℃/minの速度で加熱昇温させて
いき、繊維が溶断したときの温度を測定した。
【0031】4)単糸引張強伸度、弾性率 JIS L−1013に準じ、予め調湿された単繊維を
試長10cmになるように台紙に貼り、25℃×60%
で12時間以上放置。次いでインストロン1122の2
kg用チャックを用い、初荷重1/20g/d、引張速
度50%/minにて、破断強伸度および初期弾性率を
求め、n≧20の平均値を採用した。デニールは1/1
0g/d荷重下で30cmにカットし、重量法により求
めた。なおデニール測定後の単繊維を用いて強伸度、弾
性率を測定し1本ずつデニールと対応させた。
【0032】5)耐熱老化性(乾熱処理後の強力保持
率):ヤーンをフリーの状態で熱風炉に入れ、160℃
×24時間あるいは160℃×48時間乾熱処理した後
のヤーン強力を測定し、乾熱処理前のヤーン強力に対す
る強力保持率(%)を算出した。
【0033】6)耐ゴム疲労性 約5000デニールの諸撚コードをRFL処理し、厚さ
0.7mmの生ゴムにコードを20本並べて、その上に
厚さ2.4mmの生ゴムをはる。このような積層物を2
枚用意し、厚さ0.7mmの生ゴム層が内側となるよう
に、中間層にさらに厚さ2.4mmの生ゴムをはさみ、
サンドウィッチ状に積層して加硫し、矩形状のベルトを
作成する。ついでプーリー径25mmのベルト屈曲試験
機で100℃3万回該ベルトを屈曲疲労させたあと、圧
縮部のコードをゴムより取り出し、疲労前後のコード強
力より保持率を算出した。
【0034】実施例1〜3および比較例1、2 粘度平均重合度4,000(実施例1)、8,000
(実施例2)、17,000(実施例3)でケン化度が
いずれも99.8モル%のPVAをそれぞれ濃度11重
量%、7.5重量%、4.5重量%になるようにジメチ
ルスルホキシド(DMSO)に添加し、100℃にて溶
解した。得られた溶液をそれぞれ孔径0.12、0.1
5、0.18mmで150ホールのノズルより吐出さ
せ、乾湿式紡糸によりメタノール/DMSO=7/3重
量比、5℃の凝固浴に落下し、4m/分の速度で引取っ
た。次いで同浴で1.5倍延伸したあと、40℃メタノ
ール浴で合計4倍湿延伸したあと、メタノールで該溶剤
をほとんど全部除去した。
【0035】その後化2でR=C1735、X=OHの化
合物の1%メタノール溶液を、PVA繊維に付着させ9
0℃にて乾燥した。次いで2つの熱風炉を用い乾熱延伸
を行なったが、実施例1は170℃−230℃で総延伸
倍率が21.0倍、実施例2は170−240℃、2
0.1倍、実施例3が180−248℃、19.6倍で
あった。得られた延伸糸のクロム含有量はそれぞれ0.
24重量%、0.15重量%、0.08重量%を示しい
ずれも単糸間の膠着がなかった。また比較例1として、
実施例2で架橋剤を添加しない場合、比較例2として実
施例2でクロム含有量を1.2重量%にした場合を試験
し、表1にこれらの得られた結果を示した。
【0036】
【表1】
【0037】Pa=4,000の実施例1では、単繊維
強度20.1g/d、WTb157℃を示し、〔1〕、
〔2〕式を同時に満足している事が判明した。Pa=
8,000の実施例2では強度、弾性率、WTbがいず
れも〔1〕、〔2〕式を満足し、かつ該化合物を付着し
ていない比較例1より強度は若干劣るもののWTb約3
0℃高く100℃×3万回ベルト屈曲疲労性に優れ、高
付加価値のPVA繊維となった。また比較例2は、クロ
ム含有量を1.2重量%と多くした場合であるが、延伸
時に着色し分解が起こる為か総延伸倍率19.2倍、単
繊維強度18.2g/dにそれぞれ低下し〔2〕式を満
足しなかった。またWTbは174℃と高くなったが乾
熱老化性は分解によるラジカル発生量が多いためか、悪
化し、耐ゴム疲労性も実施例2より劣るものであった。
実施例3はPa=17,000であるが、単繊維強度2
3.6g/d、弾性率530g/d、WTb182℃と
いずれも高く、耐乾熱老化性、耐ゴム疲労性に優れた従
来にないバランスのとれたPVA繊維として産業資材用
途に期待できるものであった。
【0038】実施例4 粘度平均重合度21,000、ケン化度99.9モル%
のPVAを濃度5.0重量%になるようにグリセリンに
添加し、180℃で溶解した、次いで230℃で孔径
0.21mm、400ホールのノズルより吐出させ、乾
湿式紡糸を行なった。凝固浴はメタノール/グリセリン
=8/2、−5℃にて透明なゲル繊維を得たあと40℃
メタノール浴で4倍湿延伸した。その後メタノールでグ
リセリンを抽出し、110℃熱風乾燥して、紡糸原糸を
得た。引続き200℃と261℃の輻射炉を用い総延伸
倍率19.5倍の乾熱延伸を行なった。単繊維強度は2
6.2g/d、弾性率630g/d、WTb150℃で
あり、この延伸糸に化2でR=C1123、X=OHであ
るクロム系キレート化合物を付着せしめ、190℃×1
分間1%伸長下で熱処理した。得られた繊維のクロム含
有量は0.5重量%で膠着もなく単繊維デニール2.
1、強度24.6g/d、弾性率610g/d、WTb
185℃を示し、従来にない高性能PVA繊維となっ
た。また160℃×24時間および48時間乾熱処理後
の強力保持率はそれぞれ76%、62%と高く100℃
3万回のベルト疲労後も81%の強力を保持した。
【0039】実施例5 粘度平均重合度が1700、ケン化度99.5モル%の
PVAを濃度17重量%になるように水に溶解し、10
5℃で孔径0.08mm、1000ホールのノズルより
吐出させ、湿式紡糸を行なった。凝固浴は6g/lの苛
性ソーダと300g/lの芒硝を含有する75℃水溶液
とし、3倍湿延伸したあと、30℃の硫酸70g/lと
芒硝30g/lの水溶液で中和した。引続き95℃の芒
硝350g/lの水溶液中で1.7倍の湿延伸を行ない
水洗したあと、実施例1と同様のキレート化合物2%水
溶液を付着させ、130℃で乾燥した。得られた紡糸原
糸を180−200−235℃の熱風炉で総延伸倍率2
1.0倍で延伸した。延伸系のクロム含有量は0.62
重量%で単繊維デニール1.8、強度14.9g/d、
WTb146℃を示した。
【0040】実施例6および比較例3 実施例3において、キレート化合物として、化2の化合
物でR=C1123、X=OHのアルミニウム錯塩化合物
を1%濃度でメタノールに溶解した溶液を用い同様の紡
糸延伸を行なった。得られた延伸糸のアルミニウム含有
量は0.11重量%であり、単繊維強度24.8g/
d、弾性率550g/d、WTb177℃と、バランス
のとれた高性能PVA繊維を示した。また160℃×2
4時間乾熱処理後の強力保持率は81%と高く、100
℃3万回のベルト屈曲後も79%の強力を保持し、ゴム
補強材をはじめ一般産業資材として付加価値の高い繊維
となった。比較例3は実施例3において(iC37O)3
Alを1%濃度でメタノールに溶解し紡糸原糸に付着し
て同様の延伸を行なった。得られた延伸糸のアルミニウ
ム含有量は0.15重量%であったが、単糸間の膠着や
茶色の分解色が見られ、WTbは168℃と高いレベル
であったが、単繊維強度は19.5g/d、弾性率41
0g/dと低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(A)は、PVA重合度Paと熱水溶断温
度WTbとの関係を示したものである。図中、斜線部が
本発明の〔1〕式で示される範囲を表わしている。図1
(B)は、PVA重合度Paと単繊維強度DTとの関係
を示している。図中斜線部が本発明の〔2〕式で示され
る範囲を表わしている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/14,11/06 D06M 13/00 - 13/535

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記化学式1で表される基を有する化合
    物により変性されているかまたは該基を有する化合物が
    付与されているポリビニルアルコール系繊維。 【化1】 但し、上記式中、Mはキレート形成能を有する金属原
    子、Rはアルキル基を表す。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系重合体を紡糸し
    て得た紡糸原糸を延伸または延伸後熱処理するに際し、
    下記化学式2で表される化合物が付与された紡糸原糸ま
    たは延伸糸を150℃ないし260℃で延伸または熱処
    理することを特徴とするポリビニルアルコール系繊維の
    製造方法。 【化2】 但し、上記式中、Mはキレート形成能を有する金属原
    子、Rはアルキル基、X1、X2、X3、X4は同一もしく
    は異なり、ハロゲン原子または水酸基を表す。
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